説明

微生物の保存方法及び保存容器

【課題】低コストでかつ簡単な方法で長期間保存が可能な微生物の保存方法及び保存容器を提供する。
【解決手段】細菌,酵母菌等の微生物を生きた状態で保存する方法であって、水分調整機能を有する担体3に予め保護剤5を含浸させ、該担体3の表面に前記微生物6を塗布した後、常温常圧下で保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ関連産業,ライフサイエンス産業,あるいは医療産業等において利用される微生物の保存方法及び保存容器に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌や酵母菌等の微生物を生きたまま保存する場合、培地の上で菌を増殖させ、適宜植え継いでいく植え継ぎ法、菌をガラスアンプル内で凍結乾燥させる凍結乾燥法,あるいは凍結させずに液相状態にてガラスアンプル内で乾燥させるL−乾燥法が一般的に採用されている(例えば、特許文献1参照)。また、植え継ぎ法以外では、グリセリンなどを増殖した培地に加えて冷凍保存する凍結保存法、プラスミドを精製して保存しておき、必要に応じて細菌に戻す方法が採用されている。
【特許文献1】特開2005−168424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来の植え継ぎ法では、植え継ぎの準備を繰り返して行う必要があることから、手間がかかるとともに費用もかかる。前記凍結乾燥法やL−乾燥法では、真空乾燥機,アンプル作製装置等の大掛かりな設備を要し、しかも熟練した技術者を要する。またグリセリンを用いる場合には、凍結させることが必須であり、保存には冷凍庫を要する。このことにより保存スペースや電力コストの面で課題が生じる。また、停電による試料の損失や凍結融解時に菌の性質が変化するリスクを抱えることとなる。さらに一旦プラスミドの形で保存した後に実験を再開するには、まずプラスミドを細菌に導入して必要な性質を持った菌を再構築する必要があり、手間がかかる。
【0004】
このように、前記従来の何れの保存方法においても、手間がかかるとともに、大掛かりな保存設備が必要であり、コストが上昇するという問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、低コストでかつ簡単な方法で長期間保存が可能な微生物の保存方法及び保存容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、細菌,酵母菌等の微生物を生きた状態で保存する方法であって、水分調整機能を有する担体に予め保護剤を含浸させ、該担体の表面に前記微生物を塗布した後、常温常圧下で保存することを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の微生物の保存方法において、前記担体を、乾燥させた後、密閉した状態で保存することを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の微生物の保存方法において、前記担体を、吸湿剤もしくは、吸湿剤および脱酸素剤とともに密閉させた状態で保存することを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1に記載の微生物の保存方法において、前記担体は、吸水性及び蒸発性を有する繊維体,多孔質体から構成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の微生物の保存方法において、前記担体は、濾紙又は不織布であることを特徴としている。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1に記載の微生物の保存方法において、前記微生物は、細菌であり、前記保護剤は、グルタミン酸ナトリウム,アドニトール,システイン−塩酸を所定量配合したものであることを特徴としている。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1に記載の微生物の保存方法において、前記微生物は、酵母菌であり、前記保護剤は、ポリビニルピロリドン,乳糖,アクトコール,グルタミン酸ナトリウムを所定量配合したものであることを特徴としている。
【0013】
請求項8の発明は、細菌,酵母菌等の微生物を生きた状態で保存する保存容器であって、収容部が形成された容器本体と、該収容部内に配設された水分調整機能を有する担体と、該担体に含浸された保護剤と、前記容器本体の収容部を密閉する着脱可能なフィルムとを備え、前記担体の表面に前記微生物が塗布されていることを特徴としている。
【0014】
請求項9の発明は、請求項8に記載の微生物の保存容器において、前記収容部は、前記容器本体に2つ以上形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項10の発明は、請求項8に記載の微生物の保存容器において、前記収容部内には、吸湿剤もしくは、吸湿剤および脱酸素剤が配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係る保存方法によれば、水分調整機能を有する担体に保護剤を含浸させ、該担体の表面に微生物を塗布した後、常温常圧下で保存するので、微生物は保護剤中に分散されていないにも関わらず、生存に適した水分環境に保たれ、長期間の保存が可能となる。これにより、大掛かりな設備や手間のかかる作業を不要にでき、低コストでかつ簡単な方法で微生物を保存することが可能となる。
【0017】
請求項2の発明では、担体を乾燥させた後、密閉して保存するので、外部からの影響により微生物が劣化するのを防止でき、保存期間を大幅に延長することができる。
【0018】
請求項3の発明では、担体を吸湿剤,脱酸素剤とともに密閉させて保存するので、容器内を真空状態にせずとも微生物の劣化を防止でき、保存期間の大幅延長が可能となる。
【0019】
請求項4の発明では、担体を、吸水性及び蒸発性を有する繊維体又は多孔質体から構成したので、担体の水分調整機能により微生物の生存に必要な水分環境を保持できる。
【0020】
請求項5の発明では、担体を濾紙又は不織布により構成したので、担体を安価にでき、かつ濾紙,不織布自体が持つ水分調整機能を有効利用して微生物を生存に適した水分環境に保持することができる。
【0021】
請求項6の発明では、保護剤を、グルタミン酸ナトリウム,アドニトール,システイン−塩酸を所定量配合して形成したので、細菌の長期保存に適した環境を構築できる。
【0022】
請求項7の発明では、保護剤を、ポリビニルピロリドン,乳糖,アクトコール,グルタミン酸ナトリウムを所定量配合して形成したので、酵母菌の長期保存に適した環境を構築できる。
【0023】
請求項8の発明にかかる保存容器によれば、容器本体に形成された収容部内に保護剤が含浸された担体を配置し、該担体の表面に微生物を塗布した状態でフィルムにより密閉したので、大掛かりな設備や手間のかかる作業を不要にでき、低コストでかつ誰にでもできる簡単な方法で微生物を保存することができる。
【0024】
請求項9の発明では、容器本体に2つ以上の収容部を形成したので、1つの保存容器に大量の微生物を保存でき、かつ微生物を分類別,種類別に保存することができる。
【0025】
請求項10の発明では、収容部内に吸湿剤もしくは、吸湿剤および脱酸素剤を配置したので、何らかの原因で水分や空気が侵入した場合にも、微生物が死滅するのを防止でき、長期間の保存が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
図1ないし図4は、本発明の一実施形態による微生物の保存容器を説明するための図であり、図1は保存容器の斜視図、図2は保存容器の断面図(図1のII-II線断面図)、図3は保存容器の収容部の拡大図、図4(a),(b)は担体に含浸する保護剤及び担体に塗布された微生物を模式的に示す図である。
【0028】
図において、1は微生物の保存容器を示しており、該保存容器1は、樹脂製の容器本体2と、該容器本体2に所定間隔をあけて凹設された3つの収容部2aと、各収容部2a内に配置され、水分調整機能を有する担体3と、該各収容部2aを独立して密閉する着脱可能なフィルム4とを備えている。
【0029】
前記容器本体2は、厚さが2〜3mm程度の長方形板状のものであり、該容器本体2の長手方向一側には、前記各収容部2aが形成され、他側には、保存する微生物のデータ等を書き込んだラベルを貼り付けるための表示部2bが形成されている。
【0030】
また前記容器本体2には、周辺の湿度を表示するインジケータ部2cが設けられており、さらに容器本体2の各収容部2aに対応する側縁部には、前記各フィルム4を剥がし易くするための切欠き凹部2dが形成されている。
【0031】
前記容器本体2の各収容部2aには、担体3をピンセット等で取り出すときの取り出し口2eが形成されている。
【0032】
前記各担体3は、吸水性及び蒸発性を有するシート状の繊維体,多孔質体からなり、具体的には、セルロース系繊維からなる濾紙又は不織布により構成されている。
【0033】
ここで、担体3に用いる素材としては、濾紙,不織布以外に、パルプ,木片,おが屑,あるいは藁等の採用が可能であり、また発泡させた澱粉や海草抽出物等の多孔質で親水的な表面性状を有するものであれば採用可能である。
【0034】
また担体3の形状は、シート状に限るものではなく、裁断された紐状,おが屑状,粉末,粒状でもよい。
【0035】
前記担体3には、保護剤5が含浸されている。該保護剤5は、担体3に浸した後、乾燥させることにより、前記担体3内に浸透し、該担体3の繊維に付着した状態となっている(図4(a),(b)参照)。
【0036】
この保護剤5には、微生物の種類に応じて適宜選定され、微生物が例えば、一般細菌,放線菌の場合には、グルタミン酸ナトリウム,アドニトール,システイン−塩酸を所定量配合したものが採用されている。詳細には、グルタミン酸ナトリウム3g,アドニトール1.5g,システイン−塩酸0.05g,0.1M燐酸緩衝液(pH7.0)100mリットルを配合したものが好ましい。
【0037】
また、微生物が酵母菌の場合には、ポリビニルピロリドン,乳糖,アクトコール,グルタミン酸ナトリウムを所定量配合したものが採用されている。詳細には、ポリビニルピロリドン6g,乳糖5g,アクトコール0.1g,グルタミン酸ナトリウム3g,1M燐酸緩衝剤10mリットル,蒸留水90mリットルを配合したものが好ましい。
【0038】
前記保護剤5の含浸量は、担体3の吸水量を基に決定する。即ち、担体3自体の吸水量と同量の微生物液量を処理できることが必要とされる。保護剤5を濃縮液として用いることにより、製造上の乾燥時間が短縮できる。なお、微生物の水分量が少ない場合は、担体の吸水量の1/20程度まで保護剤を減らすことができる。
【0039】
そして前記担体3の表面には微生物6が塗布されており、該微生物6が塗布された担体3は前記フィルム4により密閉されている。この状態で保存容器1は、常温常圧下で保存される。
【0040】
ここで微生物6は、保護剤5に直接触れた状態、あるいは保護剤5に触れることなく担体3の繊維に付着した状態となっている(図4(a),(b)参照)。
【0041】
前記保存容器1により微生物を保存するには、細菌,酵母菌に応じて準備した保護剤5を予め担体3に含浸させ、乾燥させる。へら等の用具により該担体3の表面に微生物6を塗布し、フィルム4を貼着して収容部2aを密閉する。この状態で、常温常圧下にて保存する。
【0042】
微生物6を取り出す場合には、フィルム4を剥がしてピンセット等により取り出し口2eから担体3を取り出す。このように取り出した担体3の微生物6を、適当な培地に移して増殖させる。また担体3ごと土壌,コンポストに混ぜたり、所定の溶液で希釈して散布したりする。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
〔実験1〕
表1,表2は、本実施形態の保存方法による効果を確認するために行った実験結果を示す表である。
【0047】
この実験では、分類別に選定した25種類の細菌(試料No.〜25)と、2種類の酵母菌(試料No.26,27)を採用し、各試料No.1〜27を前述の保存容器1の担体3に塗布し、フィルム4で密閉した。そして保存温度を−20℃,4℃,室温(RT),37℃とし、0.5ヶ月目,1ヶ月目,3ヶ月目の微生物の生存状態を確認した。生存状態の評価は、良好(○印)、やや良好(△印)、略死滅(×印)で表した。
【0048】
表1からも明らかなように、室温で0.5ヶ月保存した場合には、試料No.3,7,8,13の細菌以外は全て略良好な状態で生存しており、室温で1ヶ月保存した場合でも、試料No.2,3,7,8,10,12,13,以外は全て良好又はやや良好な状態で生存している。
【0049】
一方、室温で3ヶ月保存すると、半数以上の試料が死滅状態となるものの、4℃で保存した場合には、前記試料No.3,8,10,12,13を除く何れの試料も生存状態は良好又はやや良好である。このことから、長期間保存する場合は、冷蔵庫等で低温保存することが好ましいことが分かる。
【0050】
〔実験2〕
表3は、保護剤がある場合とない場合の出芽酵母の生菌数を調べた実験結果を示す表である。この生菌数は、平板培地上で菌集団(コロニー)をいくつ形成できるかで表した(菌集落形成数/マイクロリットル)。なお、代謝測定や染色剤の取り込みなどで生きた菌を数える方法もあるが、生きていても増殖できないこともあるので、厳密には生菌数は同一とならない。
【0051】
表3からも明らかなように、乾燥前は両者とも同じ生菌数であるが、乾燥直後では、保護剤なしが9×105で、保護剤ありが3×104と若干差がでている。そして、37℃の雰囲気下で1ヶ月保存した後では、保護剤がない場合は全滅しているものの、保護剤がある場合は2×105と集落形成数を満足していることが分かる。
【0052】
〔実験3〕
この実験は、図5に示すように、大腸菌が分散された保護剤10と、濾紙11との間に、0.22マイクロメートルのポア径を有するセルロース混合エステルの薄膜(ミリポア社製)12を配置した状態で乾燥保存し、しかる後生菌数を測定した。また比較するために濾紙がない場合も同様の測定を行った。
【0053】
その結果、濾紙がない場合は、生菌数が測定できないほど減少していたが、濾紙がある場合は、2×108(集落形成能力)の生存が確認できた。このように大腸菌の近傍に濾紙があることで生存率が高くなることが分かる。
【0054】
〔実験4〕
この実験は、図6に示すように、小さい密閉容器12内に濾紙と、乾燥させた保護剤に分散させた細菌とを直接触れ合うことのないよう配置し、37℃の雰囲気下で1ヶ月保存した後の生菌数を測定した。また比較するために、濾紙のない場合も同様の測定を行った。
【0055】
その結果、濾紙がない場合の生菌数は6×108で、濾紙がある場合の生菌数は2×109であり、何れも集落形成数を満足している。これは、保護剤を乾燥させるとともに、容器に密閉させたことによる効果であると思われる。
【0056】
このように本実施形態によれば、保護剤5が含浸された水分調整機能を有する担体3の表面に微生物6を塗布したので、微生物6は保護剤5中に分散されていないにも関わらず、生存に適した水分環境に保たれることとなり、長期間の保存が可能である。その結果、大掛かりな設備や手間のかかる作業を不要にでき、低コストでかつ簡単な方法で微生物を保存することができる。
【0057】
即ち、凍結乾燥させた微生物は、乾燥し過ぎると死滅し易く、また外部環境によって水分が侵入して湿った状態になると死滅し易くなる。このため、微生物が生存するのに適した水分は、所定の範囲内に調整する必要がある。本実施形態では、水分調整機能としての吸水性及び蒸発性を有する担体3に保護剤5を含浸させておき、該担体3に微生物6を塗布することにより長期間の保存が可能となる。
【0058】
また微生物は、浸透圧の変化にも生存状況が影響され易く、一定範囲内の浸透圧の中でしか生存し続けることができない。本実施形態では、担体3の表面に微生物6だけを塗布するので、試料中に持ち込む培地の量が少なく、浸透圧の変化に晒されるリスクが小さく、長期間の保存が可能となる。
【0059】
前記担体3に塗布された微生物6は、該担体3を介して保護剤5が作用することから、保護剤5に直接触れていなくても高い生存率を有する。即ち、担体に水分調整機能がないものを採用すると、塗布した微生物のうち、保護剤に接触する一部の微生物しか生存できない。これに対して、水分調整機能を有する担体を採用すると、保護剤に接触していない微生物も一様に生存が保護されることとなる。これにより、真空ガラスアンプル作成装置や高度な技術がなくても微生物の長期保存が可能となる。
【0060】
本実施形態では、担体3に水を加えることはないので、乾燥が短時間で済み、かつ乾燥と同時に微生物を安定した状態に保存できる。また、浸透圧やイオン組成の変化がほとんどないことから、微生物の種類ごとに保護剤を準備する必要はなく、少ない種類の保護剤で多種類の微生物に対応できる。
【0061】
本実施形態では、前記担体3を乾燥させた後、フィルム4で密閉して保存したので、外部からの影響により微生物が劣化するのを防止でき、微生物の保存期間を大幅に延長できる。
【0062】
本実施形態では、前記担体3を、吸水性及び蒸発性を有する繊維体,多孔質体からなる濾紙,不織布により構成したので、担体3の水分調整機能を有効利用して微生物を生存に適した水分環境に保持できる。
【0063】
本実施形態では、一般細菌の場合には、保護剤をグルタミン酸ナトリウム,アドニトール,システイン−塩酸を所定量配合したものとしたので、細菌の長期保存に適した環境を形成できる。
【0064】
また、酵母菌の場合は、保護剤をポリビニルピロリドン,乳糖,アクトコール,グルタミン酸ナトリウムを所定量配合したものとしたので、酵母菌の長期保存に適した環境を形成できる。
【0065】
本実施形態の保存容器1によれば、容器本体2に形成された各収容部2a内に保護剤5が含浸された担体3を配置し、該担体3の表面に微生物6を塗布してフィルム4で密閉したので、大掛かりな設備や手間のかかる作業を不要にでき、低コストでかつ誰にでもできる簡単な方法で微生物を保存することができる。
【0066】
本実施形態では、容器本体1に3つの収容部2aを形成したので、1つの保存容器1に微生物を大量に保存でき、かつ分類別,種類別に保存することができる。
【0067】
ここで、容器本体2の収容部2a内に微生物とともに吸湿剤もしくは、吸湿剤および脱酸素剤を配置してもよい。このようにした場合には、保存中に収容部2a内に水分や空気が侵入しても、微生物が死滅するのを防止でき、従来の真空ガラスアンプル作成装置を用いた凍結乾燥法やL−乾燥法に匹敵した長期保存が可能となる。
【0068】
本実施形態の保存容器1は、さまざまな用途が考えられ、例えば、担体3に保護剤5含浸させた状態、又は保護剤を乾燥させた状態で販売し、ユーザーが適宜微生物を塗布する。また農園芸で利用される酵母菌を予め塗布した状態で販売することも可能であり、この場合にはそのまま酵母菌を利用できる。
【0069】
また本実施形態の保存容器1は、微生物を密閉した状態で保存することから、多数の保存容器1をケースに収納した状態で遠方に配送したり、ユーザーに配布したりすることができ、取り扱いに対する自由度が高い。
【0070】
なお、前記実施形態では、担体3に濾紙,不織布を採用したが、本発明は、これに限られるものではない。例えば、パーライトのような多孔質体材料や細かく切断した藁に保護剤を含浸させ、これに菌液を散布して混練し、乾燥させた後、密閉包装する。この状態でユーザーに郵送することにより、コンポストの種菌,醗酵生産の種菌として販売することができる。また、澱粉やセルロースパウダーに保護剤を含浸させ、これに微生物を混合し、乾燥させた後、密閉包装する。この状態でユーザーに郵送し、ユーザーが水に溶いて土壌や植物に散布することで、土壌改良菌,病虫害予防菌として販売することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態による微生物の保存容器の斜視図である。
【図2】前記保存容器の断面図(図1のII-II線断面図)である。
【図3】前記保存容器の収容部の拡大斜視図である。
【図4】前記微生物の保存状態の模式図である。
【図5】前記実施形態の効果を確認するために行った実験方法を示す図である。
【図6】前記実施形態の他の実験方法を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 保存容器
2 容器本体
2a 収容部
3 担体
4 フィルム
5 保護剤
6 微生物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌,酵母菌等の微生物を生きた状態で保存する方法であって、
水分調整機能を有する担体に予め保護剤を含浸させ、該担体の表面に前記微生物を塗布した後、常温常圧下で保存することを特徴とする微生物の保存方法。
【請求項2】
請求項1に記載の微生物の保存方法において、
前記担体を、乾燥させた後、密閉した状態で保存することを特徴とする微生物の保存方法。
【請求項3】
請求項1に記載の微生物の保存方法において、
前記担体を、吸湿剤もしくは、吸湿剤および脱酸素剤とともに密閉した状態で保存することを特徴とする微生物の保存方法。
【請求項4】
請求項1に記載の微生物の保存方法において、
前記担体は、吸水性及び蒸発性を有する繊維体,多孔質体から構成されていることを特徴とする微生物の保存方法。
【請求項5】
請求項4に記載の微生物の保存方法において、
前記担体は、濾紙又は不織布であることを特徴とする微生物の保存方法。
【請求項6】
請求項1に記載の微生物の保存方法において、
前記微生物は、細菌であり、前記保護剤は、グルタミン酸ナトリウム,アドニトール,システイン−塩酸を所定量配合したものであることを特徴とする微生物の保存方法。
【請求項7】
請求項1に記載の微生物の保存方法において、
前記微生物は、酵母菌であり、前記保護剤は、ポリビニルピロリドン,乳糖,アクトコール,グルタミン酸ナトリウムを所定量配合したものであることを特徴とする微生物の保存方法。
【請求項8】
細菌,酵母菌等の微生物を生きた状態で保存する保存容器であって、
収容部が形成された容器本体と、該収容部内に配設された水分調整機能を有する担体と、該担体に含浸された保護剤と、前記容器本体の収容部を密閉する着脱可能なフィルムとを備え、前記担体の表面に前記微生物が塗布されていることを特徴とする微生物の保存容器。
【請求項9】
請求項8に記載の微生物の保存容器において、
前記収容部は、前記容器本体に2つ以上形成されていることを特徴とする微生物の保存容器。
【請求項10】
請求項8に記載の微生物の保存容器において、
前記収容部内には、吸湿剤もしくは、吸湿剤および脱酸素剤が配置されていることを特徴とする微生物の保存容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−171922(P2009−171922A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16202(P2008−16202)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(390026413)深江化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】