説明

微生物を同定するための培地

カンジダ酵母菌(Candida yeast)を検出および/または同定するための培地であって、色素原、1〜5グラム/リットルの範囲の炭水化物、およびアルコールを含み、該カンジダ酵母菌を適当な条件下で増殖させると、色素原が加水分解されて、標準培地中で色素原を加水分解したときに発生する色とは異なった発色をする発色団を生成させる結果となる培地が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を増殖および/または同定するための培地に関し、また、該培地を使用して、微生物を同定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物を検出および同定することは、感染症の診断や、病気または汚染の発生源の追跡、抗生物質耐性の拡散の検出および追跡など、いくつかの分野で非常に重要である。
【0003】
最近では、PCRなど、洗練された技術を用いて微生物を検出および同定する方法が数多く作出されている。これらは、しばしば迅速で非常に感度が高い。しかしながら、生物を培地(特に固形培地)上で培養することを含む、より従来の方法に対する需要も未だ存在する。これら従来の方法には、目的とする生物を生きた状態で単離でき、他の培地に二次培養され、および/またはさらに分析され得るという大きな利点がある。
【0004】
このような培地に、ある一定の微生物を増殖させたり、増殖を促進したりする一方で、別の微生物の増殖と抑制または阻害できる化合物を含ませることがよく知られている。そのような培地は「選択的」と言われる。例えば、一定の抗生物質を培地に取り込ませて、その用いた抗生物質に対して十分な耐性を持つ微生物を増殖させることが可能である。
【0005】
また、培地(選択的であってもなくてもよい)に、異なった(できれば近縁の)微生物を区別できる物質を含ませることもよく知られている。このような培地は、「確認培地」と表現することができる。
【0006】
このような確認培地は、米国特許第5,716,799号(Rambach)に開示されている。この文献に開示されている培地は、同定すべき特定の微生物がもつ酵素に対する基質である少なくとも1種類以上の色素原を、高濃度(10〜30グラム/リットル)の炭水化物と一緒に含む。この培地は、目的の微生物が存在すると、色素原が加水分解されて、「標準」培地における発色団の基本色とは異なる「派生色」を有する発色団を放出するようになっている。(該文献において、「標準」培地は、「炭水化物が、非常に低いかほぼ0(ゼロ)という濃度で炭素源としての単純な機能を有する、通常の同定用培地である」と定義されている。)
したがって、米国特許第5,716,799号の教示内容は、培地が高濃度(すなわち、10〜30グラム/リットル)の炭水化物を含んでいることが、そこに記載された発明の本質的な特徴であるというものである。米国特許第5,716,799号に開示されている培地はベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、USAから市販されており、CHROMagarTMカンジダとして知られている。
【0007】
米国特許第5,716,799号に開示されている該培地は、カンジダ(Candida)属のさまざまな酵母菌を識別するのに有効である。特に、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)とカンジダの他の種を識別する能力があることに臨床的意義がある。C.アルビカンス(C.albicans)はよく見られるヒトの病原菌であるが、他のカンジダ種も存在する可能性がある。また、さまざまなカンジダ種が、抗真菌治療に対してさまざまな感受性を有するため、カンジダ属のある生物がC.アルビカンスであるか、別のカンジダ種であるかを判定することも重要である。
【0008】
米国特許第5,534,415号(Orenga)もまた、同定培地、特にC.アルビカンスを選択的に同定する培地を開示している。該特許において開示されている培地は、
C.アルビカンスに関連したヘキソサミニダーゼ酵素によって加水分解されうる発色性または蛍光発生性の基質、および少なくとも一つの、ヘキソサミンを含有する「活性因子」化合物(基質に対して異なる)を約1グラム/リットル含む。米国特許第5,534,415号に記載された培地は、(フランスのビオメリュー社(bioMerieux)から)市販されており、カンジダID(Candida ID)として知られている。該培地における色素原の加水分解は派生色を生じさせない(すなわち、発色団は、標準培地におけると同じ色をカンジダID培地においても示す)。
【0009】
Willingerら(2001 J.Clin.Microbiol,39,3793−3795)は、600近くの臨床検体を用いて、CHROMagarTMカンジダとカンジダIDの効率を比較する試験を行った。CHROMagarTMカンジダの培養皿上では、C.アルビカンスのコロニーは緑色であったが、他のカンジダ種のコロニーはピンク色、スミレ色、または白色であった。カンジダIDの培養皿においては、C.アルビカンスのコロニーは青色を呈したが、他のカンジダ種はピンク色または白色であった。
【0010】
Willingerらは、検体の約50%について、カンジダID培養皿上では青色が一般的に35℃で24時間培養した後に現れるのに対し、CHROMagarTMカンジダの培養皿上ではC.アルビカンスのコロニーの緑色は約48時間インキュベートするまで明らかにならないことがあるため、カンジダID培養皿におけるC.アルビカンスの同定の方が、CHROMagarTMカンジダの培養皿におけるよりも速いことを発見した。これによりカンジダID培地が色素原に作用するヘキソサミニダーゼ酵素の誘導を促進すると思われるヘキソサミン活性因子を含むが、CHROMagarTMカンジダ培地がこのような活性因子を含まないことが予想される。しかし、彼らは、「複数種の真菌を含む検体の検出において、カンジダIDはCHROMagarTMカンジダほど有用ではない」ことも発見した。
【0011】
さらに、CHROMagarTMカンジダは、異なるカンジダ種の識別を可能にする能力に関して、カンジダIDよりも優れている。カンジダID培地は、C.アルビカンスと他のカンジダ種を識別する点では非常に有効であるが、例えば、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)と他の非アルビカンス種とを効率的に判別することはできない。これに対し、CHROMagarTMカンジダは、さまざまな種が培地上で異なった「派生」色の変化を生じるため、C.トロピカリスなど多数のカンジダ種の同定を可能にする。カンジダID培地は、基本培地で得られる発色団と異なった「派生」色の発色団を生じない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、微生物用の培地、特に確認培地、および、具体的には、異なったカンジダ種を識別することを可能にする培地に関する。
【0013】
本明細書に記載したすべての刊行物の内容は、特に参照されて本明細書に組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、カンジダ酵母菌、特にC.アルビカンスを検出および/または同定するための培地であって、色素原、1〜5グラム/リットルの範囲の炭水化物、およびアルコールを含み、該カンジダ酵母菌を適当な条件下で増殖させると、色素原が加水分解されて、標準培地中で色素原を加水分解したときに発生する色とは異なった発色をする発色団を生成させる結果となる培地を提供する。
【0015】
本目的に関して、「派生色」は、(本発明に係る培地における色素原の加水分解によって発生する)任意の色であって、主波長が「標準培地」において該色素原の加水分解によって発生する発色団の主波長とは異なった色を意味する。また、本明細書の目的に関して、「標準培地」は、本質的にアルコールを含まない培地である以外は、本発明に係る培地であると定義することができる。特に、派生色は、好ましくは、培地中/上でC.アルビカンスが増殖および/または存在する結果として発色団が加水分解されて発生するため、派生色を示す発色団が培地中に出現することによって、C.アルビカンスが存在することを判定できる。
【0016】
発色団の主波長は、対象物の色を測定する任意の従来技術(例えば、分光比色計)を用いて、国際照明委員会(CIE)によって定義されているように、日光を参照して測定することが可能である。
【0017】
ほとんどの場合、発色団の派生色と該発色団の正常色との色差は、人間である観察者の裸眼にとって容易に明らかである。
【0018】
本培地はC.アルビカンスおよびC.トロピカリス(C. tropicalis)の検出および/または同定、ならびに、特に、C.アルビカンスとそれ以外のカンジダ種との判別を可能にするという点において特に有用である。本培地は、好ましくは固体培地である。都合よく、本培地は、適当な濃度(例えば、10〜20グラム/リットル)の寒天を加えることによって固化することができる。
【0019】
第2の態様において、本発明は、試料(特に、該試料が、酵母菌、および具体的には、他の複数のカンジダ属酵母菌など、他の微生物を含む可能性があるもの)中でカンジダ酵母菌を検出および/または同定する方法を提供する。この方法は本発明の第1の態様の培地の使用を含む。
【0020】
より具体的には、本発明の方法は、適当な条件下で、試料を上記で定義した本発明の第1の態様の培地と接触させて、カンジダ酵母菌の増殖を可能にする工程、および、カンジダ酵母菌の存在を示す色を有する発色団の存在を検出する工程を含む。本発明の方法は、C.アルビカンスを他のカンジダ種と識別するのに特に有用であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0021】
本発明者は、驚くべきことに、米国特許第5,716,799号の教示内容に反して、高濃度の炭水化物を含まない培地を用いて、カンジダ種の識別が可能であることを発見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
炭水化物
本発明の培地に用いる炭水化物は、原則として、カンジダによって炭素源として使用されうる炭水化物であればよい。炭水化物含有量は、好ましくは、少なくとも数種の糖類、特に単糖類または二糖類を含む。具体的には、ペントースまたはヘキソースである単糖類が特に好ましい。最も好適な糖はグルコースである。炭水化物含有量は、高い重合度を有する、より複雑な糖類を、付加的または代替的に含むことができる。好ましい炭水化物源は麦芽抽出物であり、容易に購入できる。一つの実施形態において、該培地は、培地中にグルコースおよび麦芽抽出物を、炭水化物(グルコースに加えて麦芽抽出物、およびペプトン中に(もしあれば)存在する炭水化物)の総濃度が1〜5グラム/リットルの範囲となる量含む。
【0023】
炭水化物は、好ましくは2〜4グラム/リットルの濃度で培地に取り込まれる。
【0024】
アルコール
アルコールは、好ましくは、カンジダ酵母菌の増殖に顕著な阻害効果を及ぼさない濃度で培地に存在する。ほとんどのアルコール類にとって適した濃度は、1〜10ml/l、好ましくは2〜8ml/l、より好ましくは5〜7ml/lの範囲内にある。
【0025】
特に、本発明の培地および方法に用いるアルコールは、炭水化物ではないアルコールである。当業者は、炭水化物が「3個以上の炭素原子を有する、ポリヒドロキシ・アルデヒドすなわちH−[CHOH]n−CHO、またはポリヒドロキシ・ケトンすなわちH−[CHOH]n−CO−[CHOH]m−H」または「1個以上の末端基のカルボン酸への酸化によるカルボニル基の還元によって、または1個の水素原子、アミノ基、チオール基または類似のヘテロ芳香族基による1個以上のヒドロキシル基の置換によって、単糖類から誘導される物質」であることを理解している(国際純正応用化学連合[IUPAC]による炭水化物の定義)。
【0026】
従って、例えば、本発明において、アルコールはアルデヒドもしくはケト基を有しないモノアルコール、またはジアルコールであってよい。
【0027】
アルコールは、飽和脂肪族化合物が一般には好適であるが、芳香族、脂環式、または脂肪族の(直鎖または分枝鎖)化合物であってよい。
【0028】
より特別には、該アルコールは、1個から5個の炭素原子、好ましくは2〜4個の炭素原子を含む。エタノール(99.7〜100% v/v)が現在のところ好適なアルコールであるが、約85%のエタノールと約10%のメタノールの混合物を含む工業用変性アルコール(“IMS”)も適しており、純エタノールよりも安価で市販されている。
【0029】
色素原
本発明の培地は、少なくとも1種類の色素原を含むが、必要に応じて2種類以上の色素原を用いることもできる。色素原は、種特異的酵素が存在する場合に適切な条件下で加水分解されて、同じ色素原を含む標準培地において同じ酵母を増殖させると生じる発色団の色と見るからに異なる色をした発色団を放出する化合物である。
【0030】
色素原は、好ましくはヘキソサミニド、最も好ましくはグルコサミニドを含み、一般的には、一般式X−GluNAc(式中、Gluはグルコースであり、NAcはN−アセチル基であり、Xは発色団である)に一致する。多くの適切な色素原が、当業者に知られている。一つの好適な色素原は、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルN−アセチルβ−D−グルコサミニドである。付加的に、または代替的に用いることができる他の色素原は、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルN−アセチルβ−D−グルコサミニド、X−Gal NAc(式中、Galはガラクトース、NAcはN−アセチル基であり、Xは発色団である)、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルリン酸パラトルイジン塩、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸パラトルイジン塩および6−クロロ−3−インドキシルリン酸である。
【0031】
その他の成分
本培地は、通常、寒天、酵母抽出物、塩化ナトリウム、および細菌の増殖を抑制する1種類以上の抗生物質(例えばクロラムフェニコール)など、一般的な通常の酵母用培地に存在する補助的成分を含む。
【0032】
好適な実施形態において、本培地は、以下のものを一つ以上含む。すなわち、リンゴ酸
(約0.1グラム/リットル)、ペプトン(約2.5グラム/リットル)、および緩衝液(例えば約2.0グラム/リットルのKHPO)。
【0033】
本発明の方法は、本発明の第1の態様に従って、試験すべき試料を培地に接触させること、および、もしカンジダ生物が存在していたなら増殖できる条件下で該培地をインキュベートすることを含む。一般的には、試料は、酵母細胞の懸濁液およびその他の材料を含む、例えば患者から採取した臨床試料でもよい。試料は、通常、ペトリ皿や、その他適当な容器の中に入っている固形培地の表面に塗り広げる。そして、試料中の酵母細胞が、色素原の加水分解をもたらすのに十分な程度にまで増殖するのに十分な時間、適当な温度で、試料を塗布した培地をインキュベートしなければならない。一般的には、インキュベーション温度は10〜37℃、より好ましくは、20〜35℃、もっとも好ましくは、25〜30℃の範囲にある。インキュベーションの長さは、少なくとも部分的に、インキュベーション温度に依存するが、25〜30℃のインキュベーション温度では、インキュベーションを24〜48時間持続させることが通常適当である。24時間たっても結果が明らかにならない場合には、単に培養皿をインキュベーターに戻して、例えば36または48時間後に再検査することができる。
【0034】
一般的に、本発明の好適な実施形態による培地について、色素原が5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルN−アセチルβ−D−グルコサミニドである場合、発色団の色は、C.アルビカンスが存在するときには緑色または緑青色、C.トロピカリスが存在するときには紫色または青色、そして、C.クルセイ(C. Krusei)が存在するときにはピンクである。緑色および緑青色が派生色であり、標準培地におけるこの発色団の正常な色は紫色または青色である。これらの色の違いは、裸眼でも容易に見分けられる。所望であれば、例えば、既知のC.アルビカンス菌株および/または既知のC.トロピカリス菌株の対照培養物についても、試験培養物と対比できるように設定することも可能である。
【0035】
誤解を避けるために、本明細書に「好適な」、「好ましい」、「有利な」、「所望の」などと記載されている本発明の特徴はいずれも、本発明において、独立して、または、同様に記載された他の特徴と組み合わせて、文脈上可能な範囲で用いることができると、明確に記述しておく。
【0036】
ここで、具体的な実施例を以て本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
基本的な酵母用培地の処方を、下記の表にしたがって調製した。
【0038】
【表1】

【0039】
この基本処方に以下のように追加して、さまざまな試験用培地(本発明に記載されたもの)または比較用培地(本発明の範囲外)を調製した。
【0040】
【表2】

【0041】
処方A〜CおよびE〜Hの最終pHを、必要に応じてNaOHまたはHClを用いて6.0になるよう調整した。市販のCHROMagarTMカンジダ培地(処方「D’」)は、pH6.03であることが分かっていた。処方I〜KのpHは約5.8であることが分かっていたので、調整は行わなかった。
【0042】
さまざまな培地処方について、オキソイド社の酵母培養株コレクション(Oxoid yeast culture collection(OYC))の中で利用できるものか、または臨床分離株である多くのカンジダ酵母菌株によって派生色の変化を生じることができるかを試験した。以下の表に、(本実施例または後続の実施例で)試験した酵母菌株を示す。
【0043】
【表3】

【0044】
NCPFまたはATCCの対応番号がない菌株はすべて、申し込みをすればオキソイド有限会社(Oxoid Limited)から入手可能である。
【0045】
さまざまな菌株をサブローデキストロース寒天培養皿上で増殖させた。そして、この培養皿で増殖したものを生理食塩水に懸濁させた液を調製して、各懸濁液を1マックファーランド単位(McFarland Unit)の濁度になるよう調整した。次に、これら懸濁液の純粋培養液を、さまざまな寒天処方上にストリークして、30℃にて48時間後までインキュベートした。その結果を以下に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
これらの結果から、アルコール類と低炭水化物濃度を組み合わせたものを含む寒天培養皿だけが、C.アルビカンスに対して派生色の変化を生じさせることができたことは明らかである。コハク酸塩(処方G)、クエン酸塩(処方H)または酢酸エチル(処方I)など、その他の炭素源は有効ではなかった。
【0048】
C.アルビカンスに対して明らかな派生色の変化を生じさせるということに関して、本発明に係る最も効果的な処方は、6ml/lのエタノールおよび4g/mlの炭水化物を含む処方Jであった。したがって、エタノール(および、それよりも低い程度でIMS)が、培地で、また、本発明に係る方法で使用するのに好適なアルコールである。処方Aお
よびBも許容できる結果をもたらした。
【0049】
(実施例2)
本発明に係る培地(本質的には、実施例1に記載されている処方Jに相当する)を、市販の培地であるカンジダIDおよびCHROMagarTMカンジダと比較するために更なる実験を行った。
【0050】
さまざまなC.アルビカンス菌株の純粋培養物をオキソイド社のサブローデキストロース寒天培養皿上で48時間増殖させ、これらを用いて、マックファーランド濁度が標準1に相当する生理食塩水で細胞懸濁液を調製した。そして、この懸濁液をディミニッシング・ストリーク法を用いて試験用培養皿上に画線し、30℃で24時間インキュベートした。
【0051】
24時間後には、通常、培養皿上の最も厚く植菌した部分だけで発色が明らかになった(植菌の第一および第二ゾーン)。すべての培養皿において、シングルコロニーは通常無色であった。その結果を以下に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
本実験で使用した菌株はすべて、請求すればオキソイド社から入手可能である。
これらの結果は、3種類の培地がすべてうまく機能したが、24時間インキュベートした後では、本発明に係る培地の方が、CHROMagarTMカンジダ培地よりも陽性の結果を返したことを示している。また、本発明の培地は、24時間後に得られた陽性の結果に関しては、カンジダID培地に匹敵するか、それよりも僅かに優れている可能性さえあった。これは、カンジダID培地が、関連するヘキソサミニダーゼの誘導を促進するためにヘキソサミニド活性化因子を含んでいることを考えると、(24時間後に正確に同定したところ、カンジダID上で増殖させた335/384 C.アルビカンスが、CHROMagarTMカンジダ上で増殖させた167/370に匹敵することを発見したWillignerらとの関係で)非常に驚くべき予想外のことであった。
【0054】
48時間インキュベートした後、試験した20菌株すべてについて、すべての培地が陽性の結果をもたらし、ほとんどの各コロニーが発色した。しかし、カンジダID培地上でのPAD32651の増殖は貧弱で、多くの単一コロニーは無色または僅かに着色しているだけであった。
【0055】
(実施例3)
さまざまなカンジダ種の懸濁混合液を用いて、本発明に係る固形培地(本質的に、実施例1に記載された処方Jに相当する)に植菌して、30℃で48時間インキュベートした。典型的な結果を図1に示す。この図は、植菌材料および分離したコロニーの増殖を示す培養皿の写真である。白黒写真であるが、異なった種のコロニー間の違いは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンジダ酵母菌(Candida yeast)を検出および/または同定するための培地であって、色素原、1〜5グラム/リットルの炭水化物、およびアルコールを含み、該カンジダ酵母菌を適当な条件下で増殖させると、色素原が加水分解されて、標準培地中で色素原を加水分解したときに発生する色とは異なった発色をする発色団を生成させる培地。
【請求項2】
C.アルビカンス(C. albicans)存在下で色素原が加水分解されると、派生色を有する発足団を生じる、請求項1記載の培地。
【請求項3】
2〜4グラム/リットルの炭水化物を含む、請求項1または2記載の培地。
【請求項4】
グルコースを含む、請求項1、2または3記載の培地。
【請求項5】
麦芽抽出物を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の培地。
【請求項6】
アルコールを1〜10ml/lの範囲で含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の培地。
【請求項7】
アルコールを2〜8ml/lの範囲で含む、請求項6記載の培地。
【請求項8】
アルコールを5〜7ml/lの範囲で含む、請求項7記載の培地。
【請求項9】
エタノールを含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の培地。
【請求項10】
5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルN−アセチルβ−D−グルコサミニドまたは5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルリン酸パラトルイジン塩または5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルN−アセチルβ−D−グルコサミニドまたはX−Gal NAc(但し、Galはガラクトース、NAcはN−アセチル基、またXは色素原)または5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸パラトルイジン塩または6−クロロ−3−インドキシルリン酸を含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の培地。
【請求項11】
リンゴ酸、ペプトン、およびKHPOのうち一つ以上を含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の培地。
【請求項12】
試料中でカンジダ酵母菌を検出および/またはする方法であって、該試料を請求項1乃至11のいずれか1項に記載の培地と接触させる工程、適当な条件下で該培地をインキュベートしてカンジダ酵母菌を増殖させる工程、および、該カンジダ酵母菌が存在することを示す派生色を有する発色団の存在を検出する工程を含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載のC.アルビカンスを検出および/または同定する方法。
【請求項14】
培地を30〜37℃の範囲の温度で24時間以上インキュベートする、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
培地を30〜35℃の範囲の温度で24時間以上インキュベートする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
C.アルビカンス、C.トロピカリス(C. tropicalis)、およびC.クルセイ(C. kr
usei)を識別する、請求項12〜15いずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
実質的に以上に記載され、実施例に参照されている培地。
【請求項18】
実質的に以上に記載され、実施例に参照されている方法。

【公表番号】特表2007−534309(P2007−534309A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543613(P2006−543613)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005136
【国際公開番号】WO2005/059169
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(501466776)オクソイド・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】