説明

微生物を解析するためのペプチド核酸プローブ

本発明は、微生物(例えば、エシェリキア・コリ、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ、ストレプトコッカス・アガラクチエ、フンギ、および、アシネトバクター属)を検出、同定、および/または定量するためのPNAプローブを提供する。また、本発明は、本発明のPNAプローブを使用する方法、および、本発明のPNAプローブを含有するキットを、提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、2005年6月2日に仮出願がなされた米国仮特許出願番号第60/687,178、および2005年8月1日に仮出願がなされた米国仮特許出願番号第60/704,552に基づく優先権を主張するものである。なお、これら仮出願のそれぞれの内容全体は、参照によって、本明細書に援用される。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、試料中に存在していてもよい微生物の解析に用いるためのペプチド核酸(PNA)プローブ、PNAプローブセット、および方法に関する。本発明のプローブの対象となる微生物には、エシェリキア・コリ(Escherichia coil)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、アシネトバクター(Acinetobacter)属、ストレプトコッカス・アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)およびそれらの門、ならびにフンギ(菌類(Fungi))が含まれる。さらに、本発明は、そのようなPNAプローブを含む診断キットに関する。
【0003】
〔発明の背景〕
感染症の診断は、例えば、表現型マーカーの培養試験および生化学試験のような、いまだ、古典的な細菌学的手法に基づいて行われることが多い。そして、一般的に、最終的な診断が下されるまでに、1日、2日〜数週間、さらには数ヶ月を要する。その間、患者には、しばしば、予備的な試験結果および臨床的な症状に基づいて、経験的な治療が施され、これによりしばしば、抗生物質の不必要な使用および後遺症が招かれる。
【0004】
微生物を解析するための従来の生化学的手法は、手間がかかるものであり、誤認があることもよく知られている。したがって、最適な抗生物質治療および患者管理を確実に行うためには、微生物を迅速かつ正確に、検出、同定および/または定量するための方法が重要である。
【0005】
その名にもかかわらず、ペプチド核酸(PNA)は、ペプチドでもなく、核酸でもない。また、酸でさえもない。PNAは、ワトソン−クリック塩基対ルールに従って、核酸(DNAおよびRNA)と、配列特異的にハイブリダイズすることが可能で非自然発生的なポリアミドである(米国特許第5,539,082、およびEgholmら, Nature 365:566-568 (1993)を参照)。しかし、核酸は、遺伝的伝達および遺伝的表現の因子として生物の生命において中心的な役割を果たす生物学的材料であるのに対して、PNAは、化学者の心のうちで考えられ、そして、合成有機化学を用いて作られた完全な人工分子として近年開発された。また、PNAは、核酸とは構造的にも異なる。両者は、共通の核酸塩基(A、C、G、T、およびU)を利用するが、これらの分子のバックボーンは、構造的に異なる。RNAおよびDNAのバックボーンは、リボースおよび2‐デオキシリボースのリン酸ジエステル単位の繰り返しからなる。これに対して、最も一般的なPNAのバックボーンは、(アミノエチル)‐グリシンサブユニットからなる。さらに、PNAでは、核酸塩基は、付加的なメチレンカルボニル部分によって、上記バックボーンに連結されている。したがって、PNAは、酸ではない。また、DNAおよびRNAに存在するような電荷をもつ酸基を含まない。バックボーンが電荷をもたないため、PNAプローブは、不安定な条件下で、DNAおよびRNAにハイブリダイズすることができる。また、バックボーンが電荷をもたないため、DNAプローブに接近できないことが知られている高度に構造化されたrRNAおよび2本鎖DNAのような標的に、PNAプローブは接近することができる。また、(Stephano & Hyldig-Nielsen, IBC Library Series Publication #948. International Business Communication, Southborough, MA, pp. 19-37 (1997)を参照)。PNAは、配列特異的に核酸とハイブリダイズするので、プローブベースのハイブリダイゼーションアッセイ系を開発する際、有用な研究対象となりうる。しかしながら、PNAプローブは、構造または機能において核酸プローブと同等の物ではない。
【0006】
リボソームRNA(rRNA)配列または該rRNAに対応するゲノムDNA配列(rDNA)の比較解析は、細菌種間の系統発生の関係を立証するための方法として、広く受け入れられるようになった(Woese, Microbiol. Rev. 51:221-271 (1987)を参照)。Bergeyの体系的な細菌学のマニュアルは、rRNAまたはrDNAの配列比較に基づいて改定された。近縁の種間でのリボソームRNAまたはrDNAの配列の相違によれば、微生物を同定するための特異的なプローブを設計することができる。したがって、診断微生物学を、古典的な微生物学を特徴付けるような一連の表現型マーカー(Delong ら., Science 342:1360-1363 (1989))よりもむしろ1遺伝子マーカーに基づくものにすることができる。
【0007】
特定の微生物を検出するためのPNA蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(PNA FISH)技術は、いくつかの文献に記載されている(例えば、Stender ら, J Clin Microbiol. 1999 Sep;37(9):2760-5; Rigby ら J Clin Microbiol. 2002 Jun;40(6):2182-6;および Oliveira ら J Clin Microbiol. 2002 Jan;40(1 ):247-51.を参照)。また、いくつかのキットが商業的に入手することができる(AdvanDx, Inc, Wobum MA)。その名の通り、PNA FISHは、蛍光標識されたPNAプローブを使用して、PNAプローブが試料中の標的核酸と特異的にハイブリダイズすることに基づいて、該試料を輝かせる。通常、PNAプローブは、リボソームRNAのような高コピー数の標的を検出するために設計される。PNA FISH法は、種レベルで微生物を迅速かつ正確に同定する潜在能力を有するという点において、古典的な微生物学的検出技術を超える改良技術として受け入れられている。PNA FISH技術の1つの制限は、実績のあるプローブ配列の入手可能性にある。新規なプローブを製造し、試験するためには、ある程度の費用を要し、また、プローブの設計にはある程度の技術が必要であるため、有用性が証明された新規なプローブ配列は、あまり記載されていない。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、関心のある試料中に存在していてもよい微生物の解析に有用なPNAプローブ、およびその使用、ならびにキットを対象としている。本発明によれば、PNAプローブは、rRNA、または、該rRNAもしくはその相補体に対応しているゲノム配列(rDNA)を対象としている。好ましい実施の形態において、本発明のプローブは、試料中に存在していてもよい任意の微生物のインサイチュー(in situ)ハイブリダイゼーション解析に使用される。また、最も好ましいインサイチューハイブリダイゼーション解析は、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション解析である。
【0009】
1実施の形態において、本発明は微生物(例えば、エシェリキア・コリ、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ、ストレプトコッカス・アガラクチエ、フンギ、および、アシネトバクター属)を検出、同定および/または定量するためのPNAプローブを対象としている。
【0010】
これらのPNAプローブは、核酸プローブと比較して、物理化学的なPNAプローブの特有の特徴を有しており、たった1つのPNAプローブを使用することで迅速かつ正確な解析を実施することができる。また、多くの微生物は比較的堅い細胞膜を備えており、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション解析に適用された場合に、核酸プローブと比較したときに、前記細胞膜へのPNAプローブの改良された浸入は有利となる。核酸プローブには、架橋剤および/または酵素による、固定化と透過化とが必要とされることに対して(例えば、Kempfら,J.Clin.Microbiol 38:830-838(2000)を参照)、これらのPNAプローブを、実施例1に説明されたような下記の塗沫標本に、直接塗布することができる。
【0011】
好ましい実施の形態において、これらのPNAプローブは、比較的短い核酸塩基配列、例えば8‐17塩基を有しており、より好ましくは、実施例1に説明されたような15核酸塩基である。自然に生じている核酸プローブは、それらの低い融解温度(Tm)値のために、典型的に少なくとも18核酸塩基である(例えば、Kempfら,J.Clin.Microbiol 38:830-838を参照)。この違いにより、これらのPNAプローブに、微生物から得られたrRNAまたはrDNAの解析に必要な、1つのみもしくはごくわずかな核酸塩基の違いを有している非常に密接な非標的配列(標的ではない配列)に対する、より良好な識別力が与えられる。
【0012】
本発明のPNAプローブの核酸塩基は、ACA-CAC-ACT-GAT-TCA(配列番号1)、CAC-CTA-CAC-ACC-AGC(配列番号2)、CAC-TTA-CCA-TCA-GCG(配列番号3)、ACA-CCA-AAC-CTC-AGC(配列番号4)、ACA-CCA-AAC-ATC-AGC(配列番号5)、CCC-TAG-TCG-GCA-TAG(配列番号6)、CCA-AGA-GAT-CCG-TTG(配列番号7)、CCT-CTC-ATC-GCA-TTA-C(配列番号8)、および、GCT-CAC-CAG-TAT-CG(配列番号9)からなる群より選ばれる。1以上のこれらのプローブまたはそれらのプローブの相補体は、本発明の最も好ましいプローブセットに含まれている。
【0013】
本発明の好ましいプローブは、少なくとも1つの検出可能な部分によって標識されている(ここで、検出可能な1以上の部分は、抱合体、分枝検出システム、発色団、蛍光団、スピンラベル、放射性同位体、酵素、ハプテン、アクリジウムエステル、および発光化合物からなる群から選ばれる)。本発明の蛍光標識プローブは自己報告性(self-reporting)であってもよく、最も好ましくは本発明の自己報告性の蛍光プローブは、PNA直鎖ビーコンである。本発明のプローブは、独立した検出が可能な、または同時蛍光(同時発生的な蛍光)による検出が可能な、2以上の蛍光標識を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の他の概念には、プローブに機能を付与する部分を含有しているPNAプローブが含まれる。そのような部分には、スペーサーおよびリンカー基が含まれるが、これらに限定されない。同じように、本発明のPNAプローブは、膜、スライド、アレイ、ビーズ、または粒子などの固体の支持体に結合しているプローブを包含している。
【0015】
本発明のプローブセットは、試料中に存在していてもよい微生物を解析するための2以上のPNAプローブを含んでいる。プローブセットは、好ましくは、検出可能な部分によって標識されている。プローブセットは同じ検出可能な部分によって標識されてもよいし、または、独立したプローブシグナルの解析のために異なって標識されてもよい。また、同時蛍光により第3のシグナルを引き起こすために、プローブセットのうちの2以上異って標識された蛍光プローブを使用してもよいということが、本発明の概念に含まれる。
【0016】
本発明の方法は、試料と1以上の前記PNAプローブとを接触させる工程を含有している。前記方法によれば、適切なハイブリダイゼーション条件下での、前記プローブのプローブする核酸塩基配列の標的配列に対するハイブリダイゼーションに関連付けることにより、(i)試料中の微生物の存在の有無、および/または数を、検出、同定、および/または定量することができ、ならびに/あるいは(ii)抗生物質に対する感受性を決定することができる。したがって、上記解析は、最も確実な成果を有する1つのアッセイ(シングルアッセイ)に基づいている。一方、微生物を解析するための現状の決まりきった方法は、多重検定を必要とする多数の表現型特性に基づいている。
【0017】
好ましい実施の形態において、本発明の方法は、試料中に存在していてもよい微生物を、インサイチューハイブリダイゼーション解析するために用いられる。そして、最も好ましいインサイチューハイブリダイゼーション解析は、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション解析である。本発明の好ましい方法において、試料は、生物試料であり、血液、尿、分泌物、汗、痰、糞便、粘膜、または、それらの培養物などが含まれている。
【0018】
本発明の好ましい方法は、PNAプローブと非標的配列とのハイブリダイゼーションを、減少または除去させるための未標識ブロッキングプローブを、必要に応じて含んでいる。本発明の方法は、ハイブリダイゼーションの前に、架橋試薬または酵素を使用する工程を含んでいない。
【0019】
また、本発明の方法は、反応において、生成、合成、または増幅された標的核酸を検出するために使用してもよい。前記標的核酸を生成、合成、または増幅するための好ましい方法は、PCR、LCR、SDA、TMA、RCA、および、Q‐βレプリカーゼを含んでいる。
【0020】
本発明の方法は、前記標的核酸が膜、スライド、ビーズ、または、粒子などの表面に固定されているものを含んでいる。さらに、そのようなものは、アレイの構成要素であってもよい。必要に応じて、本発明の方法は、膜、スライド、ビーズ、または、粒子などの表面に固定されているPNAプローブを含んでいてもよい。さらに、該PNAプローブは、アレイの構成要素であってもよい。
【0021】
本発明の極めて好ましい実施の形態では、患者への医療は、i)該患者から試料を取得する工程;ii)該試料中の微生物の存在を決定、微生物の量を決定、および/または微生物を同定する工程;ならびにiii)必要に応じて、感染の治療をするために、抗生物質を少なくとも1種投与する工程、を含んでいる。
【0022】
さらにもう1つ別の実施の形態では、本発明は、試料中に存在していてもよい微生物を検出、同定、および/または定量する、ならびに/または抗生物質に対する耐性を決定するアッセイを実施するのに適しているキットを対象としている。本発明のキットは、1以上のPNAプローブ、および、アッセイを実施するために、そうでなければ、アッセイの実施を容易にするように選択される他の試薬または組成物を含有している。好ましいキットの形態は、インサイチューハイブリダイゼーションアッセイを実施するために設計されたキット、およびリアルタイムPCRアッセイを実施するために設計されたキットを含んでいる。好ましいキットは、臨床標本などの試料、またはその培養物を検査するために設計されている。
【0023】
適切なPNAプローブは、効果のあるこれらのプローブする核酸塩基配列を必ずしも厳密に有しているわけではなく、特定のアッセイ条件にしたがって、改変されることがある、ということを技術分野の通常の知識を有する者は正しく理解するであろう。例えば、融解温度を低くする、および/またはストリンフェンシーを調整するために、ハイブリッドの安定性を変更することが必要である場合に、核酸塩基配列を切断することにより、短いPNAプローブを調製することができる。同様に、PNAプローブの配列内に識別する核酸塩基が残る限りは、核酸塩基配列が一端において切断され、かつ、もう一方の端において延長されていてもよい。本明細書に記載のパラメーターの範囲内にある、プローブする核酸塩基配列のそのような変形は、本発明の実施の形態であると考えられる。
【0024】
本発明のPNAプローブ、方法、およびキットは、対象とされている微生物に対する感受性と特異性との両方を立証している。さらに、本明細書に記載のアッセイは迅速(3時間よりも少ない)であり、そして、1つのアッセイにおいて微生物を解析することができる。また、プローブする配列の相補体は、標的rDNAを用いるアッセイ(リアルタイムPCRなど)に同等に適している、ということも、技術分野の通常の知識を有する者は正しく理解するであろう。
【0025】
〔発明の詳細な記述〕
<1.定義>
(a)本明細書で用いられる場合、用語「核酸塩基」とは、自然発生的または非自然発生的な複素環の部分(moiety)であって、核酸技術またはペプチド核酸技術を利用する者に一般的に知られ、核酸に配列特異的に結合することができるポリマーを生じる複素環の部分を意味する。
【0026】
適切な核酸塩基の非限定的な例には、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5‐プロピニル‐ウラシル、2‐チオ‐5‐プロピニル‐ウラシル、5‐メチルシトシン、偽イソシトシン、2‐チオウラシルおよび2‐チオチミン、2‐アミノプリン、N9‐(2‐アミノ‐6‐クロロプリン)、N9‐(2,6‐ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9‐(7‐デアザ‐グアニン)、N9‐(7‐デアザ‐8‐アザ‐グアニン)、ならびにN8‐(7‐デアザ‐8‐アザ‐アデニン)が含まれるが、これらに限定されるものではない。適切な核酸塩基の非限定的なその他の例には、Buchardtら(米国特許第6,357,163号、国際公開公報WO92/20702またはWO92/20703;参照によって本明細書に援用される)の図2(A)および2(B)に記載された核酸塩基が含まれる。
【0027】
(b)本明細書で用いられる場合、用語「核酸塩基配列」は、核酸塩基を含むサブユニットを備えるポリマーのあらゆる断片を意味する。適切なポリマーまたはポリマー断片の非限定的な例には、オリゴデオキシヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチド、ペプチド核酸、核酸類似体(nucleic acid analogs)、核酸模倣体(nucleic acid mimics)、および/またはキメラが含まれる。
【0028】
(c)本明細書で用いられる場合、用語「標的配列」は、アッセイで検出される核酸塩基配列を意味する。
【0029】
(d)本明細書で用いられる場合、用語「プローブ」は、関心のある生物の標的分子の標的配列に、配列特異的にハイブリダイズするように設計されたプローブする核酸塩基配列を有しているポリマー(例えば、DNA、RNA、PNA、キメラ、または連結されたポリマー)を意味する。
【0030】
(e)本明細書で用いられる場合、「解析する」は、検出、同定、および/または定量するため、ならびに/あるいは抗生物質に対する耐性(抗生物質に対する感受性)を決定するために、個々の細菌を特徴づけることを意味する。
【0031】
(f)本明細書で用いられる場合、「ペプチド核酸」または「PNA」は、2以上のPNAサブユニット(残基)を含有している、任意のオリゴマーまたはポリマー断片を意味する。「ペプチド核酸」または「PNA」には、米国特許第5,539,082号、第5,527,675号、第5,623,049号、第5,714,331号、第5,718,262号、第5,736,336号、第5,773,571号、第5,766,855号、第5,786,461号、第5,837,459号、第5,891,625号、第5,972,610号、第5,986,053号、第6,107,470号、第6,201,103号、第6,350,853号、第6,357,163号、第6,395,474号、第6,414,112号、第6,441,130号、第6,451,968号、第6969766号、および第7022851号のうち、任意の1以上において、ペプチド核酸として参照、または請求項に記載された、オリゴマーまたはポリマー断片のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。なお、上記特許文献は、全て、参照によって、本明細書に援用される。また、用語「ペプチド核酸」または「PNA」は、以下の刊行物に記載された核酸模倣体のうち、2以上のサブユニットを含む、任意のオリゴマーまたはポリマー断片に対しても用いられる。
Lagriffoulら, Bioorg & Medical Chemistry Letters 4: 1081-1082 (1994);
Petersenら, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 6: 793-796 (1996);
Diderichsenら, Tett. Lett. 37: 475-478 (1996);
Fujiiら, Bioorg. Med. Chem. Lett. 7: 637-627 (1997);
Jordanら Bioorg. Med. Chem. Lett. 7: 687-690 (1997);
Krotzら, Tett. Lett. 36: 6941-6944 (1995);
Lagriffoulら, Bioorg. Med. Chem. Lett. 4: 1081-1082 (1994);
Diederichsen, U., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 7: 1743-1746 (1997);
Loweら, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 , (1997) 1 : 539-546;
Loweら, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 11 : 547-554 (1997);
Loweら, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 1 :5 55- 560 (1997);
Howarth ら., J. Org. Chem. 62: 5441-5450 (1997);
Altmann, K- Hら, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 7: 1119-1122 (1997);
Diederichsen, U., Bioorganic & Med. Chem. Lett., 8: 165-168 (1998);
Diederichsenら, Angew. Chem. Int. Ed., 37: 302-305 (1998);
Cantinら, Tett. Lett, 38: 4211-4214 (1997);
Ciapettiら, Tetrahedron, 53: 1167-1176 (1997);
Lagriffouleら, Chem. Eur. J., 3: 912-919 (1997);
Kumarら, Organic Letters 3(9): 1269-1272 (2001);ならびに、
国際公開公報WO96/04000に開示されているような、Shahらによるペプチド核酸をもとにする核酸模倣体(ペナム(PENAM))。最も好ましい実施の形態では、PNAサブユニットは、メチレンカルボニル結合によって、N‐[2‐(アミノエチル)]グリシンのバックボーンのアザ窒素原子に結合した、自然発生的または非自然発生的な核酸塩基からなる。
【0032】
(g)本明細書で用いられる場合、用語「標識」および「検出可能な部分」は、同義であり、プローブに結合することができ、ある手段または方法によってプローブを検出可能にする部分を意味する。
【0033】
(h)本明細書で用いられる場合、用語「同時蛍光」は、分離できないほど空間的に十分近くに位置する2以上の標識の発光を同時に検出することにより生じる色の認識を説明するために用いられる。同時蛍光は、目または光を感知する装置のいずれかで検出することができる。
【0034】
<2.説明>
(1)総論
〔PNA合成〕
PNAを化学的に組み立てる方法は、よく知られている(米国特許第5,539,082号、第5,527,675号、第5,623,049号、第5,714,331号、第5,718,262号、第5,736,336号、第5,773,571号、第5,766,855号、第5,786,461号、第5,837,459号、第5,891,625号、第5,972,610号、第5,986,053号、第6,107,470号、第6,201,103号、第6,350,853号、第6,357,163号、第6,395,474号、第6,414,112号、第6,441,130号、第6,451,968号、第6,969,766号、および第7,022,851号を参照)。これら特許文献は、全て、参照によって本明細書に援用される組み込まれる。また、PNAを化学的に組み立てる方法については、PerSeptive Biosystems社および/またはApplied Biosystems社の製品文献も参照されたい。また、PNA合成の方法論の一般的な参考文献として、Nielsen ら., Peptide Nucleic Acids; Protocols and Applications, Horizon Scientific Press, Norfolk England (1999)も参照されたい。
【0035】
ペプチド核酸の化学的な組み立てを自動的に行うことをサポートする薬品および器具は、現在、商業的に入手することができる。同様に、標識または未標識のPNAオリゴマーをカスタムPNAオリゴマーの供給メーカーから商業的に入手することができる。PNAの化学的な組み立ては、固相ペプチド合成に似ている。PNAの化学的な組み立てでは、組み立ての各サイクルで、オリゴマーは、伸長中のポリマーに付加されるための次のシントンと縮合される反応性アルキルアミノ末端を有する。
【0036】
PNAは、サブマイクロモル〜ミリモル、もしくはそれ以上のいかなるスケールで合成されてもよい。PNAは、一般的には、XAL、PAL、またはその他の多くの適切な商業的に入手可能なペプチド合成支援物(support)を用いるExpedite Synthesizer (Applied Biosystems)上でFmoc(Bhoc)保護基モノマーを用いて、2マイクロモルスケールで合成されうる。別の方法として、適切な固体の支持体(例えば、MBHA支持体)を備えるModel 433A Synthesizer (Applied Biosystems)を用いてもよい。さらに、その他の多くの自動化合成装置および合成支援物を用いてもよい。合成は、連続的なフロー法および/またはバッチ法を用いて実施することができる。また、PNAは手動で合成してもよい。
【0037】
〔PNA標識〕
PNAを標識するための好ましい非限定的な方法は、米国特許第6,110,676号、第6,361,942号、第6,355,421号、第6,969,766号、および第7,022,851号、本明細書の後述の実施例に記載されている。または、そうでなければ、PNA合成およびペプチド合成の技術分野でよく知られている。
【0038】
〔標識〕
本発明の実施に使用されるPNAプローブを標識するのに適した検出可能な部分(標識)の非限定的な例には、デキストラン抱合体、分枝核酸検出システム、発色団、蛍光団、スピンラベル、放射性同位体、酵素、ハプテン、アクリジウムエステル、および化学発光化合物が含まれる。その他の適した標識試薬および好ましい連結方法は、PNA合成、ペプチド合成、または核酸合成の技術分野の通常の知識を有する者によって認識されうる。
【0039】
好ましいハプテンには、5‐(6)‐カルボキシフルオレセイン、2,4‐ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、およびビオチンが含まれる。
【0040】
好ましい蛍光色素(蛍光団)には、5‐(6)‐カルボキシフルオロセイン(Flu)、6‐((7‐アミノ‐4‐メチルクマリン‐3‐アセチル)アミノ)ヘキサン酸(Cou)、5(および6)‐カルボキシ‐X‐ローダミン(Rox)、シアニン2(Cy2)ダイ、シアニン3(Cy3)ダイ、シアニン3.5(Cy3.5)ダイ、シアニン5(Cy5)ダイ、シアニン5.5(Cy5.5)ダイ、シアニン7(Cy7)ダイ、シアニン9(Cy9)ダイ(シアニンダイ2、3、3.5、5、および5.5はAmersham, Arlington Heights, ILからNHSエステルとして入手可能である)、JOE、Tamara、またはAlexaダイシリーズ(Molecular Probes, Eugene, OR)が含まれる。
【0041】
好ましい酵素には、ポリメラーゼ(例えば、Taqポリメラーゼ、Klenow PNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、シークエナーゼ、DNAポリメラーゼ1、およびphi29ポリメラーゼ)、アルカリ性ホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、および最も好ましくは、大豆ペルオキシダーゼ(SBP)が含まれる。
【0042】
〔非標識プローブ〕
本発明の実施に用いられるプローブは、本発明の方法(例えば、固体の支持体に結合させるとき)において、作用可能なように、検出可能な部分によって標識されている必要はない。
【0043】
〔自己表示プローブ(self-indicating probe)〕
ビーコンプローブは、ドナー部分およびアクセプター部分を含む自己表示プローブの例である。該ドナー部分およびアクセプター部分は、該アクセプター部分が該ドナー部分から伝達されるエネルギーを受け取ったり、さもなければ、該ドナー部分からのシグナルを消失させたりするように作用する。また、上説した(適切なスペクトル特性を有する)蛍光団は、エネルギー伝達アクセプターとしても作用する。好ましくは、該アクセプター部分は、クエンチャー部分である。好ましくは、該クエンチャー部分は、非蛍光性の芳香部分または複素環部分である。好ましいクエンチャー部分は、4‐((‐4‐(ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸(ダブシル)である。好ましい実施の形態では、上記自己表示ビーコンプローブは、米国特許第6,485,901号により詳しく記載されているようなPNA直鎖ビーコンである。
【0044】
別の実施の形態では、本発明の自己表示プローブは、国際公開公報WO97/45539に記載されているタイプにある。これらの自己表示プローブは、ビーコンプローブと比較したとき、シグナルを生成するために、レポーターが核酸と相互作用しなければならない点において主に異なる。
【0045】
〔スペーサー部分/リンカー部分〕
一般的に、スペーサーは、かさ高い標識試薬がプローブのハイブリダイズ特性に与える不利な効果を最小限にするために使用される。本発明の核酸塩基ポリマーにとって好ましいスペーサー部分/リンカー部分は、1以上のアミノアルキルカルボン酸(例えば、アミノカプロン酸)、アミノ酸側鎖(例えば、リジンまたはオミチン(omithine)の側鎖)、天然アミノ酸(例えば、グリシン)、アミノオキシアルキル酸(例えば、8‐アミノ‐3,6‐ジオキサオクタン酸)、アルキルジ酸(例えば、コハク酸)、アルキルオキシジ酸(例えば、ジグリコール酸)、またはアルキルジアミン(例えば、1,8‐ジアミノ‐3,6‐ジオキサオクタン)からなる。
【0046】
〔ハイブリダイゼーション条件/ストリンジェンシー〕
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを課したり、制御したりするために共通に用いられる因子には、ホルムアミド濃度(またはその他の化学変性剤)、塩濃度(すなわち、イオン強度)、ハイブリダイゼーション温度、界面活性剤濃度、pH、およびカオトロピック試薬の有無が含まれるということを、核酸ハイブリダイゼーションの技術分野の通常の知識を有する者は、認識するだろう。プローブと標的配列との組み合わせに応じた最適なストリンジェンシーは、しばしば、上記のストリンジェンシー因子のいくつかを固定し、ストリンジェンシー因子の1つだけを変化させたときの影響を調べるというよく知られた技術によって見出される。PNAのハイブリダイゼーションはイオン強度には全く依存しないことを除いては、同じストリンジェンシー因子を調整することにより、PNAの核酸に対するハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを制御することができる。あるアッセイに対して最適なストリンジェンシーは、所望の程度の識別が達成されるまで、各ストリンジェンシー因子を試験することにより、実験的に決定することができる。
【0047】
〔適したハイブリダイゼーション条件〕
一般的に、バックグラウンドを引き起こす核酸配列が、標的配列に密接に関連していればしているほど、より注意深くストリンジェンシーを制御しなければならない。また、ストリンジェンシー因子の最適化による識別力の改良可能な限度を越えて、識別力を改良するための手段として、ブロッキングプローブが用いられてもよい。したがって、適したハイブリダイゼーション条件には、あるアッセイによって、(該アッセイにとって望まれる許容範囲内で)正確かつ再現可能な結果が得られるような、所望の程度の識別力を達成する条件が含まれる。本発明は、PNAプローブを使用するため、DNAプローブを用いた従来の方法よりも、著しく優れている。PNAの利点の1つは、PNAは、DNAプローブには好ましくない、または不安定な条件でハイブリダイズすることである。そのような条件としては、例えば、低イオン強度(低塩)条件、および高濃度の低級アルコール(すなわち、50%エタノール)条件が挙げられる。
【0048】
単なる日常的な実験と本明細書の開示内容の助けがあれば、当技術分野の知識を有する者は、本明細書に記載した方法および組成物を用いたアッセイを実施するのに適したハイブリダイゼーション条件を、容易に決定することができるであろう。適切なインサイチューハイブリダイゼーション条件またはPCR条件は、インサイチューハイブリダイゼーションまたはPCRの手順を実施するために適した条件を含む。したがって、適切なインサイチューハイブリダイゼーション条件またはPCR条件は、本明細書の開示内容を用いれば、付加的に日常的な実験を行うにしろ、行わないにしろ、当技術分野の知識を有する者には明らかであるだろう。
【0049】
〔ブロッキングプローブ(blocking probe)〕
ブロッキングプローブは、プローブするポリマーのプローブする核酸塩基配列が非標的配列に結合することを抑制するために用いることが可能な核酸プローブまたは非核酸プローブである。好ましいブロッキングプローブは、PNAプローブである(米国特許第6,110,676号を参照)。ブロッキングプローブは、プローブする核酸塩基配列と非標的配列との間のハイブリダイゼーションによって形成されるというより、非標的配列とハイブリダイズし、より熱力学的に安定な複合体を形成することにより、作用すると考えられている。より安定で好ましい複合体を形成することは、プローブする核酸塩基配列と非標的配列との間でより不安定で好ましくない複合体が形成されることを阻害する。したがって、存在して、該アッセイの能力を妨げる非標的配列に、該プローブが結合することを抑制するために、ブロッキングプローブを、本発明の方法、キット、および組成物に用いることができる。ブロッキングプローブは、特に、系統学的に近縁の種の識別に有利である。
【0050】
〔プローブする核酸塩基配列(probing nucleobase sequence)〕
本発明のプローブのプローブする核酸塩基配列は、該構成物の特異的な配列認識部分である。したがって、プローブする核酸塩基配列は、特定の標的配列にハイブリダイズするように設計された核酸塩基配列である。該プローブする核酸塩基配列によれば、標的配列の存在の有無または量を用いて、試料中の関心のある生物の存在の有無または数を直接または間接的に検出することができる。結果的に、該プローブのプローブする核酸塩基配列の長さおよび配列組成は、一般的に、選択するアッセイの形態において、プローブに要求されることを十分に考えて、例えば、適切なハイブリダイゼーション条件で、標的配列と安定な複合体を形成するように、選択される。
【0051】
エシェリキア・コリの検出、同定、および/または計数に適した、本発明のプローブの好ましいプローブする核酸塩基配列は、ACA-CAC-ACT-GAT-TCA(配列番号1)という核酸塩基配列およびその相補体を含む。
【0052】
ストレプトコッカス・アガラクチエの検出、同定、および/または計数に適した、本発明のプローブの好ましいプローブする核酸塩基配列は、ACA-CCA-AAC-CTC-AGC(配列番号4)およびACA-CCA-AAC-ATC-AGC(配列番号5)という核酸塩基配列、ならびにそれらの相補体を含む。配列番号4および配列番号5に基づいて設計されたプローブは、たった1塩基対の違いで、ストレプトコッカス・アガラクチエの自然発生的な変異体を検出するために用いられる(Kempf ら 2003)。
【0053】
クレブシエラ・ニューモニエの検出、同定、および/または計数に適した、本発明のプローブの好ましいプローブする核酸塩基配列は、CAC-CTA-CAC-ACC-AGC(配列番号2)という核酸塩基配列およびその相補体を含む。クレブシエラ・オキシトカの検出、同定、および/または計数に適した、本発明のプローブの好ましいプローブする核酸塩基配列は、CAC-TTA-CCA-TCA-GCG(配列番号3)という核酸塩基配列およびその相補体を含む。
【0054】
フンギの検出、同定、および/または計数に適した、本発明のプローブの好ましいプローブする核酸塩基配列は、CCC-TAG-TCG-GCA-TAG(配列番号6)およびCCA-AGA-GAT-CCG-TTG(配列番号7)という核酸塩基配列、ならびにそれらの相補体を含む。配列番号6および配列番号7は、それぞれ、18S rRNA配列および5.8S rRNA配列に対応する真菌(pan-fungal)プローブにあたる。これらの真菌(pan-fungal)プローブは、配列アライメントによって広範囲の真菌ファミリーを検出できるものと予測される。該真菌(pan-fungal)プローブは、子嚢菌および担子菌の門のフンギを特に広くカバーすることができると予測される。
【0055】
アシネトバクター属の検出、同定、および/または計数に適した、本発明のプローブの好ましいプローブする核酸塩基配列は、CCT-CTC-ATC-GCA-TTA-C(配列番号8)およびGCT-CAC-CAG-TAT-CG(配列番号9)という核酸塩基配列、ならびにそれらの相補体を含む。
【0056】
本発明は、これら同定されたプローブする核酸塩基配列の変形は、微生物の解析に適したプローブを提供することが期待される。本明細書に記載のパラメーターの範囲内にある、プローブする核酸塩基配列の変形は、本発明の実施の形態であると考えられる。
【0057】
一般的な変形には、欠失、挿入、およびフレームシフトが含まれる。
【0058】
さらに、より短いプローブする核酸塩基配列は、上記同定された配列を切断することによって生じさせることができる。
【0059】
本発明のプローブは、一般的に、標的配列にまさしく相補的であるプローブする核酸塩基配列を有する。プローブと標的配列との間に1以上の部位変異(塩基ミスマッチ)が存在するプローブを用いた場合、より大きな配列識別力が得られることを実証したので、別の形態として、実質的に相補的なプローブする核酸塩基配列を用いてもよい(Guo ら., Nature Biotechnology 15: 331-335 (1997)を参照)。結果的に、プローブする核酸塩基配列は、上記同定されたプローブする核酸塩基配列とわずか90%のホモロジーしかなくてもよい。上記のパラメーターの範囲に入る実質的に相補的なプローブする核酸塩基配列は、本発明の実施の形態と認められる。
【0060】
検出される標的配列が増幅または複製されると、同定された標的配列の相補体を生じるため、上記プローブする核酸塩基配列の相補体は、本発明の実施の形態と認められる。
【0061】
〔検出、同定、および/または計数〕
検出とは、試料中に存在していてもよい生物の存在の有無を解析することを意味する。また、同定とは、属名および種名による該生物の認識を成し遂げることを意味する。定量とは、試料中の生物を計数することを意味する。あるアッセイの形態では、検出、同定および計数を同時に行う(例えば、Stender, H. ら., J. Microbiol. Methods. 45:31-39 (2001)を参照)。別のアッセイの形態では、検出と同定とを行う(例えば、Stender, H. ら., Int. J. Tuberc. Lung Dis. 3:830-837 (1999)を参照)。さらに別のアッセイの形態では、同定のみを行う(例えば、Oliveira, K ら. J. Clin. Microbiol. 40:247-251 (2002)を参照)。
【0062】
〔抗生物質に対する耐性〕
抗生物質に対する耐性を決定するとは、耐性に関与する特定の遺伝子または変異に基づいて、抗生物質に対する生物の感受性を解析すること、または抗菌物質に対する感受性を解析することを意味する。
【0063】
<II.本発明の好ましい実施の形態>
(a)PNAプローブ
一実施の形態において、本発明のPNAプローブは、微生物を検出、同定および/または定量するために適している。上記解析に適したPNAプローブの一般的な特徴(例えば、長さ、標識、核酸塩基配列、およびリンカー等)は、本明細書に記載されている。本発明のPNAの好ましいプローブする核酸塩基配列は、表1に一覧されている。
【0064】
【表1】

【0065】
本発明のPNAプローブは、(本明細書で既に説明したように、)プローブする核酸塩基配列をたった1つだけ含んでいてもよいし、多くの付加的な部分を含んでいてもよい。付加的な部分の非限定的な例には、検出可能な部分(標識)、リンカー、スペーサー、天然もしくは非天然のアミノ酸、またはPNA、DNAもしくはRNAのその他のサブユニットが含まれる。付加的な部分は、あるアッセイにおいて機能するものであってもよいし、機能しないものであってもよい。しかし、一般的に、付加的な部分は、PNAプローブを用いるアッセイ系の設計の段階で、機能するように選択される。本発明の好ましいPNAプローブは、蛍光団、酵素、およびハプテンからなる群より選択される1以上の検出可能な部分により標識される。
【0066】
好ましい実施の形態では、本発明のプローブは、インサイチューハイブリダイゼーション(ISH)アッセイおよび蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)アッセイに用いられる。バックグラウンドシグナルを越えて、特異的に結合するプローブの検出可能な部分を検出できるように、ISHアッセイまたはFISHアッセイにおいて用いられる過剰なプローブは除去される。なお、上記バックグラウンドシグナルは、存在はするがハイブリダイズはしていないプローブによって生じる。一般的に、過剰なプローブは、試料を一定時間インキュベートした後、洗い流される。しかし、過剰な自己表示プローブは、完全には、試料から除去(洗浄)する必要がなく、また、検出可能なバックグランドが全くもしくはほとんど生じないので、本発明の実施の形態では、自己表示プローブを用いることが好ましい。
【0067】
ISHアッセイまたはFISHアッセイに加えて、本明細書に記載の選択されたプローブする核酸塩基配列を含む自己表示プローブは、特に、リアルタイムPCRと同等のあらゆる種類のアッセイに有効である。また、自己表示装置(例えば、側面フローアッセイ(lateral flow assay)や自己表示アレイにも有効である。
【0068】
(b)PNAプローブセット
本発明のプローブセットは、2以上のPNAプローブを含む。一実施の形態では、プローブセット中のいくつかのPNAプローブは、ブロッキングプローブであってもよい。プローブセットにおいて、本発明の1以上のプローブは、いかなるグループのプローブであってもよい。また、標識プローブまたは未標識プローブのいずれを含んでいてもよい。また、本明細書に具体的には記載されていないプローブを含んでいてもよい。しかし、上記プローブセットは、本発明のプローブを少なくとも1つは含む。好ましいプローブセットには、クレブシエラ属を検出するためのCAC-CTA-CAC-ACC-AGC(配列番号2)およびCAC-TTA-CCA-TCA-GCG(配列番号3);ストレプトコッカス・アガラクチエバリアントを検出するためのACA-CCA-AAC-CTC-AGC(配列番号4)およびACA-CCA- AAC-ATC-AGC(配列番号5);フンギを検出するためのCCC-TAG-TCG-GCA-TAG(配列番号6)およびCCA-AGA-GAT-CCG-TTG(配列番号7);アシネトバクター属を検出するためのCCT-CTC-ATC-GCA-TTA-C(配列番号8)およびGCT-CAC-CAG-TAT-CG(配列番号9)が含まれる。
【0069】
(c)方法
別の実施の形態において、本発明は、試料中に含まれていてもよい微生物を解析するのに適した方法を対象としている。微生物の解析に適したPNAプローブの一般的で特有の特徴は、本明細書で既に説明した。好ましいプローブする核酸塩基配列を表1に一覧している。
【0070】
本発明の試料中の微生物を解析するための方法は、特定の標的配列にハイブリダイズするのに適した1以上のPNAプローブを、試料と接触させることを含む。
【0071】
上記方法によれば、その後、試料中の微生物を検出、同定、および/または定量したり、微生物の抗生物質に対する抵抗性を決定したりすることができる。これは、適切なハイブリダイゼーション条件下で、PNAプローブのプローブする核酸塩基配列が検出対象である微生物の標的配列にハイブリダイズすることを、試料中の該微生物の存在の有無または数と相関付けることにより実現できる。一般的に、この相関付けは、プローブ/標的配列のハイブリッドを直接的または間接的に検出することによって実現できる。
【0072】
〔蛍光インサイチューハイブリダイゼーションおよびリアルタイムPCR〕
本発明のPNAプローブ、方法、キット、および組成物は、特に、微生物をプローブを用いて迅速に解析することに有効である。好ましい実施の形態では、インサイチューハイブリダイゼーションまたはPCRは、微生物を解析するためのアッセイ形態として用いられる。最も好ましいアッセイ形態は、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(PNA FISH)またはリアルタイムPCRである(Stender ら. J. Microbiol. Methods 48:1-17 (2002)によって総説)。PNA FISH解析のための顕微鏡用塗布標本は、ハイブリダイゼーションに先立ち、架橋剤または酵素で処理されていないことが好ましい。
【0073】
〔代表的なアッセイ形態〕
PNA FISHを実施するための代表的な方法は、Oliveira et., J. Clin. Microbiol 40:247-251 (2002);Rigby ら., J. Clin. Microbiol. 40:2182-2186 (2002);Stender ら., J. Clin. Microbiol. 37:2760-2765 (1999);Perry- O'Keefe ら., J. Microbiol. Methods 47:281-292 (2001)に見出すことができる。ある方法によれば、試料の顕微鏡用塗布標本(例えば、陽性の血液培養液、ただしこれに限定されない)は、顕微鏡のスライドガラス上で調製され、ハイブリダイゼーション緩衝液に溶解したフルオレセイン標識のPNAプローブの1滴で覆われる。該顕微鏡用塗布標本上に、カバーガラスをのせ、確実に、均等に覆う。続いて、該スライドガラスを、スライドウォーマーまたはインキュベーター上で、55℃で90分間置いておく。ハイブリダイゼーション後、該スライドガラスを、予め温めておいたストリンジェントな洗浄溶液にスライドガラスを沈めることにより、上記カバーガラスを除去する。そして、該スライドガラスを30分間洗浄する。最後に、該顕微鏡用塗布標本を、1滴のマウント液を用いてマウントし、カバーガラスで覆い、蛍光顕微鏡で検査する。
【0074】
本発明のキットに含まれるPNAプローブを用いて解析される試料中に存在していてもよい微生物は、いくつかの器具によって決定される。上記器具としては、例えば、顕微鏡(例えば、Oliveira ら., J. Clin. Microbiol 40:247-251 (2002)を参照)、フィルム(例えば、Perry-O'Keefe ら., J. Appl. Microbiol. 90:180-189 (2001)を参照)、カメラおよびインスタントフィルム(例えば、Stender ら., J. Microbiol. Methods 42:245-253 (2000)を参照)、ルミノメーター(例えば、Stender ら., J. Microbiol. Methods. 46:69-75 (2001)を参照)、レーザースキャン装置(例えば、Stender ら., J. Microbiol. Methods. 45: 31-39 (2001)を参照)、またはフローサイトメーター(例えば、Wordon ら., Appl. Environ. Microbiol. 66:284-289 (2000)を参照)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。自動スライドスキャナーおよびフローサイトメーターは、関心のある試料に存在する微生物の数を迅速に定量する上で、特に有効である。
【0075】
自己報告PNAプローブを用いたリアルタイムPCRを実施するための代表的な方法は、Fiandaca ら., 要約, Nucleic Acid-Based technologies. DNA/RNA/PNA Diagnostics, Washington, DC, May 14-16, 2001、およびPerry-O'Keefe ら ., 要約, International Conference on Emerging Infectious Diseases, Atlanta, 2002に見出すことができる。
【0076】
(d)キット
さらに別の実施の形態において、本発明は、試料中に存在していてもよい微生物を解析するアッセイを実施するのに適したキットを対象としている。微生物の解析に適したPNAプローブの一般的で好ましい特徴は、本明細書に既に記載されている。好ましいプローブする核酸塩基配列は、表1に一覧されている。さらに、試料中の微生物を解析するためのPNAプローブを用いるのに適した方法は、既に明細書に記載されている。
【0077】
本発明のキットは、1以上のPNAプローブ、およびその他の試薬もしくは組成物を含む。それらは、試料中の微生物を解析するために用いられるアッセイを実施するため、さもなければ、アッセイの実施を容易にするように、選択される。
【0078】
上記キットは、例えば、インサイチューアッセイや、核酸増幅技術を用いた用途に用いられる。核酸増幅技術の非限定的な例には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、標準置換増幅(SDA)、転写介在増幅(TMA)、Q‐βレプリカーゼ、および、ローリングサークル増幅(RCA)が含まれるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施の形態では、その他の試薬は、インサイチューアッセイまたは核酸増幅に基づくアッセイを実施するための緩衝液、酵素、および/またはマスターミックスが含まれうる。
【0079】
(e)本発明を用いる代表的な用途
本発明のPNAプローブ、方法、およびキットは、食品、飲料、水、医薬品、パーソナルケア用品、乳製品、または環境試料、ならびにそれらの培養液の中の微生物の解析だけではなく、臨床試料(例えば、尿、血液、傷、唾液、咽喉診察用の綿棒、胃洗浄液、気管支洗浄液、生体組織、呼気、および痰)中の微生物の解析に、特に有効である。
【0080】
〔付加的な検出方法〕
フルオレセインおよびTamraによって標識したプローブについて説明したが、感知可能な第3の色を生成する蛍光標識のあらゆる組み合わせを用いることは、本発明の範疇に含まれる。同様に、複数の感知可能な色を生成する2以上の標識を用いることもまた、想像される。潜在的に蛍光性を有する標識は、本明細書に記載されている。2以上の蛍光部分の同時発生的な蛍光は、色のスペクトルを生成させる上で、有効であることが実証されている(Kool ら JACS 2003)。色の組み合わせは、2以上の蛍光団を混合し、それらの割合を調整することにより実現される。例えば、2つの赤色部分と、1つの緑色部分とを組み合わせると、1つの赤色部分と、2つの緑色部分との組み合わせによる色とは異なる色を生成することができる。これらの様々な色合いの目による正確な感知は、現実的には限界があるが、そのような微妙な色の変化を正確に感知する装置を考えることは困難ではない。
【0081】
〔検出可能な部分および独立して検出可能な部分/多重解析〕
多重ハイブリダイゼーションアッセイは、本発明によれば実施することができる。多重アッセイでは、関心のある多くの条件が、同時に試験される。多重解析は、アッセイ中またはアッセイ完了後に、試料成分を分類する能力、またはそれに関連するデータに依存する。本発明の好ましい実施の形態では、1以上の全く独立して検出可能な部分を用いて、あるアッセイに用いられる2以上の異なるプローブが標識されうる。独立して検出可能な各部分を区別および/または定量する能力は、ハイブリダイゼーションアッセイを多重化するための手段を提供する。全く別々に(独立して)標識された各プローブのハイブリダイゼーションを、特定の核酸配列と関連付けることは、該試料中で検出しようとする各生物の存在の有無、または量の指標となる。
【0082】
結果的に、本発明の多重解析は、同一のアッセイの中で、同一試料中の2以上の異なる生物(例えば、クレブシエラの各種)の存在の有無、または量を同時に検出するために用いることができる。例えば、多重アッセイは、独立して検出可能な蛍光団または独立して検出可能な蛍光団セットを用いて標識された、2以上の各PNAプローブを用いてもよい。
【0083】
したがって、本発明は、一実施の形態として、患者を治療する方法を提供する。該方法は、以下の(a)〜(c)の工程のうち、少なくとも1工程、好ましくは全工程を含む。
(a)患者から生物試料を取得する工程
(b)微生物の存在を決定、微生物の量を決定、および/または微生物を同定する工程、ならびに、
(c)感染症を排除するために、活性を有する抗生物質を、少なくとも1種投与する工程。
【0084】
さらに、本発明は、本明細書に記載した、少なくとも1つ、好ましくは2以上のPNAプローブを含むPNAプローブセットを提供する。上記プローブセットには、同時蛍光によって第3の色を生成するプローブが含まれることが好ましい。
【0085】
本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本明細書で説明した概念を取り込んだその他の実施の形態を用いうることは、当技術分野の技能を有するものには、明らかであるだろう。したがって、これらの実施の形態は、開示した実施の形態に限定されるものではなく、むしろ、特許請求の範囲の精神および範囲によってのみ限定されるべきものである。
【0086】
〔実施例〕
本発明について、以下の実施例に基づいて説明するが、本発明を決して限定するものではない。
【0087】
〔実施例1〕
<PNAプローブ配列>
Kpn23S01‐Flu FIu-OO-CACCTACACACCAGC-NH2(配列番号2)
Kox23S01‐Tam Tam-OO-CACTTACCATCAGCG-NH2(配列番号3)
(注釈:上記PNAプローブの末端の説明に用いられる汎用の専門用語に関し、Oは8‐アミノ‐3,6‐ジオキサオクタン酸、fluは5(6)‐カルボキシ‐フルオレセイン、tamは5(6)‐カルボキシテトラメチローダミンである。)
【0088】
<細菌株>
クレブシエラ・ニューモニエおよび クレブシエラ・オキシトカ種を含む様々な典型的なグラム陰性桿菌の寄託株(American Type Culture Collection, Manassas, VA)を一晩培養して準備した。
【0089】
<顕微鏡用塗布標本の作製>
各菌株について、1%(v/v)Triton‐X100を含むリン酸緩衝生理的食塩水1滴と、培養液1滴とを混合することによって、テフロン(登録商標)でコーティングされた顕微鏡スライドガラス(AdvanDx, Woburn, MA)の直径8mmのウェル上に、顕微鏡用塗布標本を作製した。その後、該スライドガラスを55℃のスライドウォーマー上に、20分間置いて、上記顕微鏡用塗布標本を乾燥させた。続いて、該顕微鏡用塗布標本を、96%(v/v)エタノールに5分間〜10分間浸すことにより殺菌し、風乾させた。
【0090】
<蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)>
顕微鏡用塗布標本を、10%(w/v)硫酸デキストラン、10mM NaCl、30%(v/v)ホルムアミド、0.1%(w/v)ピロリン酸ナトリウム、0.2%(w/v)ポリビニルピロリドン、0.2%(w/v)フィコール、5mM NaEDTA、1%(v/v)Triton X‐100、50mM Tris/HCl(pH7.5)、ならびに500nM Kpn23S01‐Fluプローブおよび500nM Kox23S01‐Tamプローブ(Fluは、特徴的な緑色の蛍光を発する蛍光色素であり、Tamは、特徴的な赤色の蛍光を発する蛍光色素である)を含むハイブリダイゼーション液1滴で覆った。上記顕微鏡用塗布標本をハイブリダイゼーション液で確実に、かつ均一に覆うために、上記顕微鏡用塗布標本の上にカバーガラスを置いた。続いて、該スライドガラスをスライドウォーマー(Slidemoat, Boekel, Germany)の上に置いて、55℃で90分間インキュベートした。ハイブリダイゼーション後、該スライドガラスを、ウォーターバス内で、55℃に予め温めておいた25mM Tris(pH10)、137mM NaCl、3mM KCl(スライドガラス1枚あたり約20ml)に沈めることにより、上記カバーガラスを取り除き、30分間洗浄した。最後に、マウティリング溶液(AdvanDx, Woburn, MA)を一滴用いて、各顕微鏡用塗布標本をマウントし、カバーガラスで覆った。顕微鏡試験は、FITC/テキサスレッドの2波長帯フィルターセットを備える蛍光顕微鏡を用いて行った。クレブシエラ・ニューモエは、緑色の蛍光を発する桿菌として同定された。また、クレブシエラ・オキシトカは、赤色の蛍光を発する桿菌として同定された。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
表2によれば、試験した10種のグラム陰性桿菌種のうち、たった2つの種、すなわち、緑色の蛍光を発する桿菌を含むクレブシエラ・ニューモエの試料および赤色の蛍光を発する桿菌を含むクレブシエラ・オキシトカの試料でしか、ポジティブな結果は得られなかった。このポジティブな結果は、試験したプローブ混合物は、クレブシエラ・ニューモニエの緑色およびクレブシエラ・オキシトカの赤色というそれぞれの種に特異的なシグナルを生成することを示している。
【0093】
〔実施例2〕
<PNAプローブ配列>
Saga16S03‐Flu Flu-OO-ACACCAAACCTCAGC(配列番号4)
Saga16S04‐Flu Flu-OO-ACACCAAACATCAGC(配列番号5)
(注釈:上記PNAプローブの末端の説明に用いられる汎用の専門用語に関し、Oは8‐アミノ‐3,6‐ジオキサオクタン酸、fluは、5(6)‐カルボキシ‐フルオレセインである。)
【0094】
<細菌株>
ストレプトコッカス・アガラクチエを含む様々な典型的なグラム陽性球菌の寄託株(American Type Culture Collection, Manassas, VA)を一晩培養して準備した。
【0095】
<顕微鏡用塗布標本の作製>
顕微鏡用塗布標本は、実施例1で説明した通りに作製した。
【0096】
<蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)>
ハイブリダイゼーションは、プローブに、500nM Saga16S03‐Flu、500nM Saga16S04‐Flu、もしくは500nM Saga16S03‐Fluおよび500nM Saga16S04‐Fluの組み合わせ(”デュアルプローブ”)のいずれかを用いたことを除いて、実施例1で説明した通りに行った。顕微鏡試験は、FITC/テキサスレッドの2波長帯フィルターセットを備える蛍光顕微鏡を用いて行った。ストレプトコッカス・アガラクチエは、緑色の蛍光を発する球菌として同定された。結果を表3に示す。
【0097】
【表3】

【0098】
表3によれば、ポジティブな結果は、ストレプトコッカス・アガラクチエを検出するために、Saga16S03プローブ、またはデュアルプローブセットのいずれかを用いた時に見られた。その他の結果は全て、ネガティブであった。このことは、上記プローブおよびプローブセットは、特異的であることを示している。
【0099】
〔実施例3〕
<PNAプローブ配列>
PF‐Adx1 Flu-OO-CCCTAGTCGGCATAG(配列番号6)
PF‐Adx2 Flu-OO-CCAAGAGATCCGTTG(配列番号7)
(注釈:上記PNAプローブの末端の説明に用いられる汎用の専門用語に関し、Oは8‐アミノ‐3,6‐ジオキサオクタン酸、fluは、5(6)‐カルボキシ‐フルオレセインである。)
【0100】
<細菌株および菌類株>
ストレプトコッカス・アガラクチエを含む様々な典型的なグラム陽性球菌の寄託株(American Type Culture Collection, Manassas, VA)を一晩培養して準備した。
【0101】
<顕微鏡用塗布標本の作製>
顕微鏡用塗布標本は、実施例1で説明した通りに作製した。
【0102】
<蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)>
ハイブリダイゼーションは、プローブに、500nM PF‐Adx1、または500nM PF‐Adx2のいずれかを用いたことを除いて、実施例1で説明した通りに行った。顕微鏡試験は、FITC/テキサスレッドの2波長帯フィルターセットを備える蛍光顕微鏡を用いて行った。フンギは、緑色の蛍光を発する球菌または菌糸として同定された。結果を表4に示す。
【0103】
【表4】

【0104】
表4によれば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・カテヌラタ(Candida catenulata)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、およびサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を含め、PF‐Adx1プローブを用いて試験した菌類生物の全てがポジティブであった。試験した細菌種(S. アウレウス(S.aureus)およびエシェリキア・コリ)は、ともにネガティブであった。PF‐Adx2プローブは、カンジダグラブラタがネガティブであったことを除いて、PF‐Adx1の結果と類似するパターンを示した。公開されているカンジダ・グラブラタの5.8S rRNA遺伝子の配列アライメントにより、上記ネガティブな結果の有力な原因となりうる、上記遺伝子における1塩基のミスマッチが存在することが分かった。
【0105】
〔実施例4〕
<PNAプローブ配列>
Eco23S277‐Flu Flu-OO-ACA-CAC-ACT-GAT-TCA(配列番号1)
Abau23S‐03b‐Flu Flu-OO-CCT-CTC-ATC-GCA-TTA-C(配列番号8)
Abau16S‐04c‐Flu Flu-OO-GCT-CAC-CAG-TAT-CG(配列番号9)
(注釈:上記PNAプローブの末端の説明に用いられる汎用の専門用語に関し、Oは8‐アミノ‐3,6‐ジオキサオクタン酸、fluは、5(6)‐カルボキシ‐フルオレセインである。)
【0106】
<細菌株>
様々なグラム陰性桿菌(細菌)全ての様々な典型的な細菌種の寄託株(American Type Culture Collection, Manassas, VA)を一晩培養して準備した。
【0107】
<顕微鏡用塗布標本の作製>
顕微鏡用塗布標本は、実施例1で説明した通りに作製した。
【0108】
<蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)>
ハイブリダイゼーションは、プローブに、500nM Eco23S277‐Flu、200nM Abau23S‐03b‐Fluまたは200nM Abau16S‐04c‐Fluのいずれかを用いたことを除いて、実施例1で説明した通りに行った。顕微鏡試験は、FITC/テキサスレッドの2波長帯フィルターセットを備える蛍光顕微鏡を用いて行った。緑色の蛍光を発する桿菌(rods)(桿菌(bacilli))をポジティブとして同定した。結果を表4に示す。
【0109】
【表5】

【0110】
表4によれば、ポジティブな結果は、エシェリキア・コリの分離菌に対してEco23S277‐Fluプローブを試験したとき、およびアシネトバクター属に対してAbau23S‐03b‐FluおよびAbu23S‐03bを試験したときに得られた。それ以外の結果は全て、ネガティブであった。このことは、プローブおよびプローブセットは特異的であることを示している。
【0111】
<同等物(Equivalents)>
本発明を具体的に示し、好ましい実施の形態を参照しながら説明したが、特許請求の範囲に定義したように、当技術分野の通常の技能を有する者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、様々な変形例を理解し、改変することができるであろう。当技術分野において通常の技能を有する者は、僅かな日常的な実験を用いて、本明細書に記載した本発明の特定の実施の形態と同等の多くの実施の形態を確認することができる。各請求項の範囲は、このような同等物を含有することを意図するものである。
【0112】
本明細書で述べた全ての参考文献の開示内容は、参照によって援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の解析に適した核酸塩基配列を含有しているPNAプローブであって、
前記PNAプローブが配列番号1、2、3、4、5、6、7、8または9、およびそれらの相補体からなる群から選ばれるPNAプローブ。
【請求項2】
前記プローブの少なくとも一部が、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および9からなる群から選ばれる核酸塩基配列と少なくとも約86%一致している、請求項1に記載のPNAプローブ。
【請求項3】
前記プローブ配列の長さが、8〜18核酸塩基である、請求項2に記載のPNAプローブ。
【請求項4】
配列番号1として示される配列またはその相補体を有している、エシェリキア・コリを検出、同定または定量するためのPNAプローブ。
【請求項5】
配列番号2として示される配列またはその相補体を有している、クレブシエラ・ニューモニエを検出、同定または定量するためのPNAプローブ。
【請求項6】
配列番号3として示される配列またはその相補体を有している、クレブシエラ・オキシトカを検出、同定または定量するためのPNAプローブ。
【請求項7】
配列番号4、配列番号5、およびそれらの相補体からなる群から選ばれる、ストレプトコッカス・アガラクチエを検出、同定または定量するためのPNAプローブ。
【請求項8】
配列番号6、配列番号7、およびそれらの相補体からなる群から選ばれる、フンギを検出、同定および/または定量するためのPNAプローブ。
【請求項9】
配列番号8、配列番号9、およびそれらの相補体からなる群から選ばれる、アシネトバクター属を検出、同定および/または定量するためのPNAプローブ。
【請求項10】
前記プローブが、1以上の検出可能な部分によって標識されている、請求項1に記載の前記PNAプローブ。
【請求項11】
前記1以上の検出可能な部分が、抱合体、分枝検出システム、発色団、蛍光団、スピンラベル、放射性同位体、酵素、ハプテン、アクリジウムエステル、および発光化合物からなる群から選ばれる、請求項10に記載のPNAプローブ。
【請求項12】
前記プローブが自己報告性である、請求項10に記載のPNAプローブ。
【請求項13】
前記プローブがPNA直鎖ビーコンである、請求項12に記載のPNAプローブ。
【請求項14】
前記プローブが標識されていない、請求項1に記載のPNAプローブ。
【請求項15】
前記プローブが支持体に固定されている、請求項1に記載のPNAプローブ。
【請求項16】
前記プローブがスペーサーまたはリンカーをさらに含んでいる、請求項15に記載のPNAプローブ。
【請求項17】
インサイチューハイブリダイゼーションが、試料中に存在していてもよい微生物を解析するために使用される、請求項1に記載のPNAプローブ。
【請求項18】
前記プローブが独立した解析のために異なって標識されている、請求項1に記載のPNAプローブ。
【請求項19】
試料中の微生物を検出、同定または定量するための方法であって;
前記試料に、請求項1に記載のPNAプローブの少なくとも1つを接触させる工程;
試料中の微生物の標的配列に、前記PNAプローブをハイブリダイズさせる工程;ならびに
試料中の微生物の存在、同定および/または量を示すハイブリダイゼーションを検出する工程、を含んでいる方法。
【請求項20】
解析がインサイチューにて行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記解析が、蛍光インサイチューハイブリダイゼーションにより行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、ハイブリダイゼーションの前に、架橋試薬または酵素を使用する工程を含んでいない、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、標的配列を有している核酸を検出するために使用され、前記核酸が反応中に合成または増幅される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
好ましい核酸の合成または増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、標準置換増幅(SDA)、転写介在増幅(TMA)、ローリングサークル増幅(RCA)、および、Q‐βレプリカーゼからなる群から選ばれる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、前記PNAプローブと非標的配列との任意のハイブリダイゼーションを、減少または除去させるためのブロッキングプローブを、少なくとも1つ添加する工程を含んでいる、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記標的配列が表面に固定されている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記PNAプローブが表面に固定されている、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記PNAプローブがアレイの構成要素の1つである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、請求項17〜19の何れかに記載のPNAプローブセットを使用する工程を含んでいる、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記試料が生物試料である、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記生物試料が、血液、尿、分泌物、汗、痰、糞便、粘膜、または、それらの培養物である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1に記載の1以上のPNAプローブおよび使用上の注意を含んでいる、1以上の微生物を検出、同定、または定量するためのキット。
【請求項33】
前記キットが、インサイチューハイブリダイゼーションアッセイに使用される、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記キットが、リアルタイムPCRアッセイに使用される、請求項32に記載のキット。
【請求項35】
前記キットが、臨床標本などの臨床試料またはその培養物を検査するために使用される、請求項32に記載のキット。
【請求項36】
請求項1に記載のPNAプローブの少なくとも1つを有しているPNAプローブセットであって、2以上のプローブが、同時蛍光により第3の色を生成するために使用される、PNAプローブセット。

【公表番号】特表2008−545432(P2008−545432A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514940(P2008−514940)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/021614
【国際公開番号】WO2006/130872
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507394754)アドヴァンディーエックス,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】