説明

微生物固定化担体

【課題】硝化活性の立ち上がりが早く、しかも優れた担体強度を有する微生物固定化担体、さらにはこれを硝化槽に投入してなる有機性廃水の処理方法を提供する。
【解決手段】水膨潤性粘土鉱物及び水の存在下で、(メタ)アクリルアミド誘導体を含む重合性不飽和モノマーを水膨潤性粘土鉱物と重合性不飽和モノマーの使用比が10/1〜1/30で重合して得られるゲル状物からなる水処理用の固定化担体であって、圧縮(破壊)強度が0.01〜15MPaであり、且つ破断時の圧縮変形率が40〜98%であることを特徴とする微生物固定化担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃水の処理に有用な微生物固定化担体であって、特に硝化活性の立ち上がりが早く、優れた担体強度を有する微生物固定化担体に関する。
【背景技術】
【0002】
生活廃水や工業廃水に含まれる窒素化合物(主にアンモニア、亜硝酸及び硝酸など)は、地下水、河川、湖沼及び内湾などの周辺環境へ排出され、重大な環境問題を引き起こすことがある。そこで廃水処理技術として活性汚泥中に生息する硝化菌や脱窒菌を使った生物学的硝化・脱窒法が開発され、廃水処理施設において利用されている。これらの生物学的硝化・脱窒法においては、増殖速度の遅い硝化菌を処理槽内に保持することが、技術的に重要な課題である。この課題を解決するために、処理槽内に硝化菌を高密度に保持する担体投入型硝化・脱窒法が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
このように担体に硝化菌等の微生物を固定化して処理槽内に充填した、いわゆるバイオリアクターとしては、処理槽の内部に微生物を固定化して使用する固定床型あるいは固定化担体を流動させながら使用する流動床型とがあり、廃水処理においては特に流動床型が用いられる。
【0004】
この流動床型に用いる微生物固定化担体としては、従来、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール等のゲル状担体、あるいはポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、セルロース等の多孔質体などがあるが、ゲル状担体は微生物との親和性には優れているものの、一般に、物理的強度(耐摩耗性能)が劣っており、流動床中での担体同士の摩擦や処理槽の内壁との摩擦により摩耗し易く、担体寿命が短いという欠点がある。また、多孔質体であるセルロースについてはそれ自身が生物分解を受け易く、長期使用において担体が崩壊し易く、寿命が短いという問題があった。さらにこれら公知の有機高分子担体は、処理槽内に担体を投入しても硝化菌が十分に付着するまでに馴養期間を置く必要があり、また処理槽内のアンモニア性窒素不可が低いと硝化活性が低下しやすく、該窒素負荷変動が激しいと即座に硝化活性が追随できないという問題があった。
【0005】
一方、特許文献3には、水溶性有機高分子と層状粘土鉱物とが複合化して形成された三次元網目を有する高分子ヒドロゲルが開示されている。該高分子化合物は優れた吸水性や極めて高い伸張性などの特徴を有する材料であるが、水処理用の固定化担体としての有用性は知られていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−246397号公報
【特許文献2】特開平10−180291号公報
【特許文献3】特開2002−53629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、硝化活性の立ち上がりが早く、しかも優れた担体強度を有する微生物固定化担体、さらにはこれを硝化槽に投入してなる有機性廃水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水膨潤性粘土鉱物及び水の存在下で、(メタ)アクリルアミド誘導体を含む重合性不飽和モノマーを水膨潤性粘土鉱物と重合性不飽和モノマーの使用比が10/1〜1/30で重合して得られるゲル状物からなる水処理用の固定化担体であって、圧縮(破壊)強度が0.01〜15MPaであり、且つ破断時の圧縮変形率が40〜98%であることを特徴とする微生物固定化担体、及びこれを用いた有機性廃水の処理方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の微生物固定化担体によれば、アンモニア性窒素不可が低い処理槽内においても十分な硝化活性を維持できるので、窒素負荷変動への追随に優れ、馴養期間を短くすることができ、しかも優れた担体強度を有するので、特に流動床型の処理槽での使用に非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で使用する水膨潤性粘土鉱物は、水で膨潤する粘土鉱物であり、一層の厚みが50nm以下、好ましくは10nm以下の積層状の結晶構造を有する粘土鉱物である。このような水膨潤性粘土鉱物としては、例えばモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、合成マイカなどを挙げることができる。
【0011】
上記水膨潤性粘土鉱物は、通常、負電価に帯電した層間を有しており、層間中のアルカリ金属やアルカリ土類金属によって中和されている。この層間は水中で広がり、攪拌により単層まで分散することができる。
【0012】
本発明で使用する重合性不飽和モノマーは、(メタ)アクリルアミド誘導体を含むものであり、必要に応じてその他の重合性不飽和モノマーを含んでいても良い。
【0013】
(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−エトキシエチルメタクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチル−N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0014】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、親水性を示すモノマーが望ましく、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート等のアクリル系モノマー;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基を有するアクリル系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等のスルホン基やカルボキシル基のようなアニオン基を有するアクリル系モノマー;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有するアクリル系モノマー及びこれらの第4級化物;ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレンメタクリレート等のポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド等のカルボニル基を有するアクリル系モノマー;ポリエチレングリコールジアクリレート、N,N´−メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド等の多官能性モノマーなどが挙げられ、これらのうち特にダイアセトンアクリルアミドやN,N´−メチレンビスアクリルアミドが(メタ)アクリルアミド誘導体との相溶性等の点から好適に使用できる。
【0015】
使用する重合性不飽和モノマー中には(メタ)アクリルアミド誘導体を50質量%以上、好ましくは80重量%以上含むことが、得られるゲル状物の物理強度の点から好適である。
【0016】
本発明の固定化担体は、上記水膨潤性粘土鉱物及び水の存在下で、(メタ)アクリルアミド誘導体を含む重合性不飽和モノマーを水膨潤性粘土鉱物と重合性不飽和モノマーの使用比が10/1〜1/30、好ましくは8/1〜1/28で重合して得られるゲル状物からなる。この使用比を外れると得られるゲル状物の物理強度等が低下する恐れがあるので好ましくない。ここで使用する水には、必要に応じて水と混和するアルコール系やケトン系などの有機溶剤を適宜含めても良い。
【0017】
重合反応は、まず、水膨潤性粘土鉱物及び重合性不飽和モノマーを含む溶液中に重合開始剤を添加し、その前後で必要に応じて加温して行なうことができる。重合開始剤としては特に限定はされず、例えば過硫酸塩類、過酸化物、アゾ化合物、レドックス系開始剤などの各種のものを使用できる。過硫酸塩類としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどが好適に使用でき、アゾ化合物としてはアゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4,4´−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2´−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等の水溶性アゾ化合物が好適に使用できる。またレドックス系として過硫酸塩類に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどを組み合わせて使用することもできる。加温条件は重合反応開始剤の添加により重合反応が開始されることを前提として特に制限はないが、通常50〜85℃程度、好ましくは60〜75℃程度が適当である。
【0018】
上記以外の重合反応としては、紫外線等の光照射下で重合を行なう方法が挙げられ、その場合の重合開始剤には各種公知の光開始剤を使用することができる。光開始剤としては、例えば2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)2塩酸塩、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)2塩酸塩等のアミジノ基を有する水溶性アゾ化合物や、一般に紫外線重合に利用される光開始剤または光増感剤(例えばジアセチル、ベンゾイン、ベンジル、アントラキノン、アセトフェノン、ジフェニルジスルフィド、ベンゾフェノン及びこれらの各種誘導体等)が例示できる。光照射の条件は約250〜約600nmの範囲内の波長の光を発する光源を使用して、光源の光の強さ、光源からの距離等に応じて照射時間を調整するのが適当である。
【0019】
上記の通り得られるゲル状物における水膨潤性粘土鉱物の含有量は、3〜20質量%、好ましくは3〜15質量%であることが、合成時の粘度や得られるゲル状物の物理強度の点から望ましい。
【0020】
上記ゲル状物には、必要に応じて比重調整剤を含有せしめることができる。比重調整剤としては、従来公知のものが特に制限なく使用できるが、特に無機質系中空粒子及び/又はポリマー系中空粒子が好適に使用できる。
【0021】
無機質系中空粒子としては、比重0.2〜0.8、好ましくは0.3〜0.6の完全閉鎖型の微小中空ビーズが好ましく、例えばガラスビーズや中空セライトなどが挙げられる。ポリマー系中空粒子としては、例えば、スチレン、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、塩化ビニリデン等の単独重合物あるいは他の単量体との共重合物等が挙げられる。該ポリマー系中空粒子は、単孔又は多孔の完全閉鎖型で、真比重が0.01〜0.95、好ましくは0.02〜0.50の範囲内にあるものが適しており、平均粒子径が5〜200μm程度のものが好ましい。
【0022】
上記比重調整剤は水膨潤性粘土鉱物及び重合性不飽和モノマーを含む溶液中に重合前に添加せしめることが望ましい。また該溶液中には、比重調整剤以外にも必要に応じて他の添加成分、例えば、着色成分や触媒、微生物菌体、酵素などを適宜含有せしめても良い。
【0023】
本発明の固定化担体は、上記の通り得られるゲル状物からなり、例えば前記水膨潤性粘土鉱物及び重合性不飽和モノマーを含む溶液を移動ベルト上に適当な厚さの層状に流下延展させた後、重合させてシート状に成形したり、型枠に入れて成形するなどして得られた成形体を、適宜、切断、裁断、粉砕等の二次加工をして、目的の形状とすることができる。
【0024】
上記の通り得られる本発明の固定化担体は、圧縮(破壊)強度が0.01〜15MPa、好ましくは0.1〜13MPaであり、且つ破断時の圧縮変形率が40〜98%、好ましくは50〜98%である。圧縮(破壊)強度がこの範囲外では、水処理槽の攪拌による衝撃で固定化担体が破壊し易く、破断時の圧縮変形率がこの範囲外では処理液から固定化担体を分離する際の圧縮応力により破壊し易くなるので好ましくない。
【0025】
尚、本発明において「圧縮(破壊)強度」及び「破断時の圧縮変形率」は、次の通り測定される値である。
【0026】
島津製作所製、精密万能試験機Ez−Testを用いて測定した。直径11.75mm、高さ10mmの円筒型担体を作成し、円筒の直径方向に圧縮を行った。その際に担体の固定用治具として、下側を平板、上側をカミソリ(フェザー安全剃刀(株)社製、ハイステンレンス片刃剃刀FHS−5)を用いて行った。圧縮破壊強度は、測定モードとして圧縮、形状を丸棒を選択し、サンプルサイズは11.75mm、圧縮速度10mm/minで測定したときの、破断応力値(MPa)を用いた。
また、圧縮変形率は目視で破断の開始した時点を観察し、そのときのサンプル高さを記録し、下記の計算式で算出した。
【0027】
Y={(X−X)/X}×100
Y:圧縮変形率[%]
:初期のサンプル高さ(11.75mm)
X:破断時のサンプル高さ
【0028】
また本発明の固定化担体は、水膨潤率が50〜1000%、好ましくは100〜600%であることが望ましい。水膨潤率がこの範囲外では強度の低下がみられたり、十分な微生物活性が得られ難く好ましくない。
【0029】
尚、本発明において「水膨潤率」は、次の通り測定される値である。直径11.75mm、高さ10mmの円筒型担体を作成し、これを100mlの20℃の脱イオン水に24時間浸漬し、浸漬前と浸漬後の重量を測定し、下記式より水膨潤率を計算した。
【0030】
Z={(B−B0)/B0}×100
Z:水膨潤率[%]
B0:浸漬前の試料重量[g]
B:浸漬後の試料重量[g]
【0031】
かくして得られた本発明の微生物固定化担体は、常法により微生物を付着・固定させ水処理を行う各種設備で使用することができ、特に流動床型又は攪拌型の処理槽への使用が好適である。使用の条件等も、特に限定されず、従来の固定化担体の使用に従うことができる。本発明の担体は水処理を行う際には、担体養生として事前に汚泥等から微生物を付着させ使用することができる。
【0032】
特に本発明では、硝化槽と脱窒槽との間を循環通水させて生物学的処理を行なう有機性廃水の処理方法において、本発明の固定化担体を硝化槽に投入して処理を行なうことが好適である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0034】
実施例1
内部を窒素置換した、2軸遊星型攪拌機(最大容量1L)に、高純度窒素ガスを3時間以上吹き込んで十分に窒素置換した脱イオン水(456g)と、「ラポナイトRD」(日本シリカ株式会社製、水膨潤性ヘクトライト)(73.2g)、N,N−ジメチルアクリルアミド(118.24g)を加え、十分に攪拌し、無色透明の溶液を得た。次いでこの中に、水溶性アゾ系重合開始剤「VA−057」(和光純薬株式会社製、2,2´−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート)(0.552g)を前記と同様の脱イオン水24gに溶解させたものを、添加し、十分に攪拌して、無色透明の溶液を得た。この溶液を直径4cm、高さ12cmのテフロン製容器及び、直径11.75mm、高さ60mmのガラス容器に入れて、蓋を閉め、68℃の水浴に2時間浸漬することで、透明なゲル状物(G−1)を得た。これをガラス容器から取り出し、高さ10mmに切断して直径11.75mm、高さ10mmの担体として圧縮切断試験及び水膨潤率測定に供した。また同様に、テフロン(登録商標)製容器から取り出したゲル状物をナイフで切断して一辺が2mmの立方体の担体とし、硝化活性試験に供した。
【0035】
実施例2〜10
実施例1で使用した原料を、表1に示した組成にする以外は、全て実施例1と同様の手法でゲル状物(G−2)〜(G−10)を得た後、それぞれ実施例1と同様の大きさの担体として各試験に供した。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例11
上記実施例1と同様の装置に、高純度窒素ガスを3時間以上吹き込んで十分に窒素置換した脱イオン水(456g)と、「ラポナイトRD」(73.2g)、ジメチルアクリルアミド(118.24g)、比重調整剤(「マツモトマイクロスフェアーF-80E」、松本油脂製薬株式会社製、ポリマー系中空粒子)(30g)を加え、十分に攪拌し、無色透明の溶液を得た。次いでこの中に、水溶性アゾ系重合開始剤「VA−057」(0.552g)を前記と同様の脱イオン水24gに溶解させたものを、添加し、十分に攪拌して、無色透明の溶液を得た。この溶液を直径40mm、高さ120mmのテフロン(登録商標)製容器及び、直径11.75mm、高さ60mmのガラス容器に入れて、蓋を閉め、68℃の水浴に2時間浸漬することで、透明なゲル状物(G−11)を得た。これを実施例1と同様の大きさの担体として各試験に供した。
【0038】
実施例12
上記実施例1と同様の装置に、高純度窒素ガスを3時間以上吹き込んで十分に窒素置換した脱イオン水(456g)と、「BENTONE EW」(RHEOX INC製、ヘクトライトクレイ)(73.2g)、ジメチルアクリルアミド(118.24g)を加え、十分に攪拌し、無色透明の溶液を得た。次いでこの中に、水溶性アゾ系重合開始剤「VA−057」(0.552g)を前記と同様の脱イオン水24gに溶解させたものを、添加し、十分に攪拌して、無色透明の溶液を得た。この溶液を直径40mm、高さ120mmのテフロン(登録商標)製容器及び、直径11.75mm、高さ60mmのガラス容器に入れて、蓋を閉め、68℃の水浴に2時間浸漬することで、透明なゲル状物(G−12)を得た。これを実施例1と同様の大きさの担体として各試験に供した。
【0039】
比較例1
還流冷却管、温度計、攪拌装置を取り付けた4つ口フラスコを窒素置換させ、分子量約3000のポリプロピレングリコール(60g)、分子量約2000のポリエチレングリコール(760g)を仕込み、60℃まで加熱し、ポリエチレングリコールを完全に融解させた。イソホロンジイソシアネート(44g)、トリレンジイソシアネート(70g)を加え、15分攪拌した後、ジブチル錫ジラウリレート(0.04g)を加えて、2時間反応させた。その後80℃に昇温し、ヒドロキシエチルアクリレート46g、ハイドロキノン(2g)、ジブチル錫ジラウリレート(0.07g)を加えて、2時間反応させた。50℃まで冷却した後、脱イオン水(1475g)を加えて、乳白色の光硬化性樹脂分散体(H−1)を得た。
【0040】
上記と同様の装置を用い、樹脂分散体(H−1)(50g)、脱イオン水20gを加え、十分に攪拌した。さらに4%アルギン酸ナトリウム水溶液(株式会社キミカ製、キミカアルギンB−1Gを脱イオン水に溶解)(30g)、光重合開始剤「ダロキュア1173」(チバ・スペシャルティー・ケミカル社製)(0.2g)を加え、十分に攪拌した。得られた樹脂溶液を直径11.75mm、高さ5mmの上部開放の円筒容器に入れ、2%塩化カルシウム水溶液に沈めてから高圧水銀灯を用いて20秒間照射し重合硬化させて、ゲル状物(H−2)を得た。これを複数作成し容器から取り出して担体とし、圧縮切断試験及び水膨潤率測定にはそのままの大きさで供した。また硝化活性試験には、容器から取り出したゲル状物をナイフで切断して一辺が2mmの立方体の担体として供した。
【0041】
比較例2
上記比較例1と同様の装置を用い、樹脂分散体(H−1)(50g)、脱イオン水20gを加え、十分に攪拌した。さらに4%アルギン酸ナトリウム水溶液(株式会社キミカ製、キミカアルギンB−1Gを脱イオン水に溶解)(30g)、比重調整剤「マツモトマイクロスフェアーF-80E」(1.2g)、光重合開始剤「ダロキュア1173」(0.2g)を加え、十分に攪拌した。得られた樹脂溶液を直径11.75mm、高さ5mmの円筒容器に入れ、2%塩化カルシウム水溶液中に沈めてから高圧水銀灯を用いて20秒間照射し重合硬化させて、ゲル状物(H−3)を得た。これを複数作成し容器から取り出して担体とし、圧縮切断試験及び水膨潤率測定にはそのままの大きさで供した。また硝化活性試験には、容器から取り出したゲル状物をナイフで切断して一辺が2mmの立方体の担体として供した。
【0042】
比較例4
実施例3と同様の組成で「ラポナイトRD」をN,N−ジメチルアクリルアミドに置き換える以外は、全て実施例1と同様の手法でゲル状物(H−4)を得た後、実施例1と同様の大きさの担体として各試験に供した。
【0043】
比較例5
内部を窒素置換した、2軸遊星型攪拌機(最大容量1L)に、高純度窒素ガスを3時間以上吹き込んで十分に窒素置換した脱イオン水(456g)と、「ラポナイトRD」(日本シリカ株式会社製、水膨潤性ヘクトライト)(2.0g)、N,N−ジメチルアクリルアミド(118.24g)を加え、十分に攪拌し、無色透明の溶液を得た。次いでこの中に、水溶性アゾ系重合開始剤「VA−057」(0.552g)を前記と同様の脱イオン水24gに溶解させたものを、添加し、十分に攪拌して、無色透明の溶液を得た。これを実施例1と同様の手法を用いて、透明なゲル状物(H−5)を得た後、実施例1と同様の大きさの担体として各試験に供した。
【0044】
比較例6
内部を窒素置換した、2軸遊星型攪拌機(最大容量1L)に、高純度窒素ガスを3時間以上吹き込んで十分に窒素置換した脱イオン水(456g)と、「ラポナイトRD」(73.2g)、N,N−ジメチルアクリルアミド(5.0g)を加え、十分に攪拌し、無色透明の溶液を得た。次いでこの中に、水溶性アゾ系重合開始剤「VA−057」(0.023g)を前記と同様の脱イオン水24gに溶解させたものを、添加し、十分に攪拌して、無色透明の溶液を得た。これを実施例1と同様の手法を用いて、透明なゲル状物(H−6)を得た後、実施例1と同様の大きさの担体として各試験に供した。
【0045】
試験方法
(※1)圧縮切断試験
各担体試料について3回ずつ、島津製作所製、精密万能試験機Ez−Testを用いて測定した。測定では担体試料の直径方向に圧縮を行った。その際に担体の固定用治具として、下側を平板、上側をカミソリ(フェザー安全剃刀(株)社製、ハイステンレンス片刃剃刀FHS−5)を用いて行った。圧縮破壊強度は、測定モードとして圧縮、形状を丸棒を選択し、サンプルサイズは11.75mm、圧縮速度10mm/minで測定したときの、破断応力値(MPa)を用いた。また、圧縮変形率は目視で破断の開始した時点を観察し、そのときのサンプル高さを記録し、下記の計算式で算出した。
【0046】
Y={(X−X)/X}×100
Y:圧縮変形率[%]
:初期のサンプル高さ(11.75mm)
X:破断時のサンプル高さ
得られた圧縮破壊強度及び圧縮変形率はそれぞれ3回の平均値を採用した。
【0047】
(※2)水膨潤率測定
各担体試料を100mlの20℃の脱イオン水に24時間浸漬し、浸漬前と浸漬後の重量を測定し、下記式より水膨潤率(%)を計算した。
【0048】
Z={(B−B0)/B0}×100
Z:水膨潤率[%]
B0:浸漬前の試料重量[g]
B:浸漬後の試料重量[g]
【0049】
(※3)硝化活性試験
一辺が2mmの立方体である各担体試料を、大過剰の脱イオン水中に室温で24時間浸漬し、十分に膨潤したものを硝化活性試験の試料として用いた。
【0050】
容積各1リットルの反応槽に160mg/lのアンモニア性窒素を含む無機塩培地を満たし、各担体試料250mL(見かけ体積)をそれぞれ投入した後、アンモニア性窒素負荷が0.1kg/m/日、0.3kg/m/日、0.5kg/m/日、となるように順次培地の流入速度を変化させて連続処理試験を行った。試験期間を通じて培地のpHは7.5〜8.5の範囲、液温は18〜25℃の範囲に調節した。更に曝気を行うことにより培地の溶存酸素濃度を常に5mg/l以上になるようにした。それぞれの負荷で7日間連続処理を行った時点で担体をサンプリングし、50mlの無機塩培地(連続処理に用いたのと同じもの)中に10gの担体を投入し、三角フラスコ中で120rpm、24時間往復振盪した後の、培地中のアンモニア性窒素の減少量から1gの担体当たりの硝化速度を計算して硝化活性を評価した。培地のアンモニア性窒素濃度の定量はインドフェノール法(比色法)を用いて行った。
【0051】
(※4)担体の残存率%
各担体試料について上記硝化活性試験に用いた担体を全て集め、担体の残存率を測定した。残存率は下記の計算式で算出した。硝化試験実施前の担体の固形分率は、試験に用いたものと同ロットの担体約2gを正確に測り取り、105℃で3時間乾燥させた後の重量減少量より求めた。硝化試験実施後の担体の乾燥重量は、集めた担体の全量を105℃で3時間乾燥させた後の重量減少量より求めた。
【0052】
J={K×L/100}/M}×100
J:残存率[%]
K:硝化試験実施前の担体の湿重量[g]
L:硝化試験実施前の担体の固形分率[%]
M:硝化試験実施後の担体の乾燥重量[g]
【0053】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水膨潤性粘土鉱物及び水の存在下で、(メタ)アクリルアミド誘導体を含む重合性不飽和モノマーを水膨潤性粘土鉱物と重合性不飽和モノマーの使用比が10/1〜1/30で重合して得られるゲル状物からなる水処理用の固定化担体であって、
圧縮(破壊)強度が0.01〜15MPaであり、且つ破断時の圧縮変形率が40〜98%であることを特徴とする微生物固定化担体。
【請求項2】
得られるゲル状物における水膨潤性粘土鉱物の含有量が、3〜20質量%である請求項1記載の微生物固定化担体。
【請求項3】
さらに比重調整剤を含む請求項1又は2に記載の微生物固定化担体。
【請求項4】
比重調整剤が、無機質系中空粒子及び/又はポリマー系中空粒子である請求項3記載の微生物固定化担体。
【請求項5】
硝化槽と脱窒槽との間を循環通水させて生物学的処理を行なう有機性廃水の処理方法において、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の固定化担体を硝化槽に投入してなることを特徴とする有機性廃水の処理方法。

【公開番号】特開2010−142723(P2010−142723A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322077(P2008−322077)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】