説明

微生物学的アッセイ

本発明は,核酸配列特異的検出を含む,クラミジア・トラコマチス由来の遺伝物質を検出する方法を提供する。必要に応じて,内部コントロールとしてペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)由来の遺伝物質と共に,特異的なプライマー及びプローブを使用し,さらに関連する産生物及びキットを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む,アッセイの産物,アッセイの使用,及びアッセイの方法に関する。具体的には,クラミジア・トラコマチスのアッセイ及びPCRの改良したコントロールに関する。
【背景技術】
【0002】
クラミジア・トラコマチスは偏性細胞内のヒト病原体である。クラミジア感染症は一般的な性感染症であり,その細菌によって,男性と女性の両方で多数の病状を引き起こす可能性がある。臨床的症状は尿道炎,直腸炎,トラコーマ,不妊症,前立腺炎,精巣上体炎,子宮頸管炎,骨盤内炎症性疾患(PID)及び子宮外妊娠などである。またこれは,新生児への病原体でもあり,目や肺の感染症を引き起こす可能性もある。
【0003】
クラミジア・トラコマチス感染症は,世界中の最も一般的な性的感染症の一つである。米国では,2〜3万人がクラミジアに感染していると推定されている。イギリスでは,性的に活発な25歳未満の若い世代の10人に1人がクラミジアに感染していると推定されている。
【0004】
クラミジア・トラコマチス感染症は,例えば,ドキシサイクリンなどのテトラサイクリンや,アジスロマイシンなどのマクロライド+の抗生物質によって良好に治療することができる。適切な治療が適時に行われるように,クラミジア・トラコマチスによる感染を正確に診断する必要がある。英国など一部の国では,クラミジアスクリーニングの国家プログラムが開始されている。
【0005】
クラミジアの感染単位は,基本小体(EB)である。EBは胞子様小体(“spore−like” body)として機能し,その目的は宿主細胞の外側の非支持的環境でクラミジアの生存を可能にすることである。EBは,感受性宿主細胞に付着し,エンドサイトーシスされるまで,代謝的に不活性であると考えられている。クラミジア・トラコマチスは,例えば,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの核酸増幅法により検出可能である。PCRは,感染された細胞とEBsの両方から核酸を増幅する可能性を有している。クラミジア・トラコマチスは,単一コピーとして存在する染色体と,EBあたり6から10コピー存在するプラスミドの両方に遺伝物質を含んでいる。歴史的に,プラスミドは,EBあたり複数のコピーが存在し,プラスミドベースの標的を検出することによってより大きな感度が得られると推定されることから,核酸増幅検査の好ましい標的として使用されている。しかし,プラスミドの核酸増幅検査の検出システムは,クラミジア・トラコマチスのスウェーデン変異体が発見されたことを受けて,その適合性に疑問が生じている。スウェーデン変異体が,そのプラスミドに377塩基対の欠失を含むことから,スウェーデン変異型クラミジア・トラコマチスに直面した場合に,欠失領域を標的とした検出システムでは偽陰性の結果をもたらすことになる。
【0006】
本発明は,染色体遺伝子が一般的に突然変異が少ないことから,また,ある特定の状況ではプラスミドが完全に失われる可能性があることから,クラミジア・トラコマチス染色体に存在する配列を検出するアッセイが,潜在的により安定しているという認識に基づいている。染色体標的が細胞ごとに単一コピーとしてのみ存在するため,染色体に存在する遺伝子を標的とすることは,不利になることが予想される場合がある。しかし本発明者らは,驚くべきことに,染色体標的がプラスミド標的に匹敵する検出限界(LOD)を提供できることを見いだした。
【0007】
核酸増幅検査(NAATs)
複数の核酸増幅検査(NAAT)方法が本発明の使用に適し,利用できる。それらは,周知のPCR,リガーゼ連鎖反応(LCR),鎖置換増幅(SDA),リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA),転写媒介増幅,核酸配列ベース増幅(NASBA),ヘリカーゼ依存性増幅,ループ媒介等温増幅などである。培養をベースにしたC.トラコマチス検出法は,NAAT法に取って代わっている。その理由として,特に培養をベースにする方法は,哺乳動物細胞又は組織培養の使用を必要とするというさらなる複雑さを伴うためである。NAAT法は例えば,酵素により1つ以上の標的配列を増幅させ,高感度な配列特異的方法で核酸を検出する。
【0008】
NAATsのさらなる詳細については,以下の参考文献を参照されたい。これらは参照により本明細書に組み込まれる。
核酸配列ベース増幅(NASBA)について,
Compton J. Nucleic acid sequence−based amplification
Nature 1991 :350(6313):91−2;
転写媒介増幅について,
Wroblewski J. et al. Comparison of Transcription Mediated Amplification and PCR Assay Results from Various Genital Specimen Types for Detection of Mycoplasma genitalium. J.Clin.
Microbiol. 2006:44(9):3306−3312;
リガーゼ連鎖反応について,
Wiedmann M. et al. Ligase chain reaction (LCR) overview and Applications.
PCR Methods and Applications 1994 3(4)S51−64;
DNAのループ媒介等温増幅について,
Notomi et al. Loop−Mediated isothermal amplification of DNA.
Nucleic Acids. Res. 2000 23 (12):E63;
ヘリカーゼ依存性増幅について,
Vincent M. et al. Helicase−dependent isothermal DNA Amplification
EMBO Rep. 2004 5(8) 795−800;
鎖置換増幅について,
Strand displacement amplification − an isothermal in vitro Amplification technique. Walker et al.
Nucleic Acids Res. 1992. 20(7) 1691−1696;
リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)について,
DNA Amplification and Detection Made Simple (Relatively).Hoff. M.
Public Libr. Sic. 2006: 4(7): e222; and also US Patent 7270981.
【0009】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
PCRは,耐熱性ポリメラーゼ酵素を利用し,反応の温度条件を循環させることにより,1つ以上の標的配列の増幅を含む高感度な配列特異的に核酸を検出する方法である。
【0010】
最も単純な形式では,PCR反応は3つの段階を繰り返す。i)約90℃から100℃の温度で起こる変性段階。この高温で,二本鎖DNAを変成又は“融解(melts)”させ,一本鎖DNAを形成させる。ii)50℃から65℃の典型的な温度でのプライマーのアニーリング。このステップでは,フォワード及びリバースプライマーを,溶液中に存在するいずれかの標的の相補領域とハイブリダイズさせる。iii)通常,50℃から80℃で起こる伸長。これはポリメラーゼ連鎖反応において,溶液中でデオキシヌクレオチド三リン酸の活性によりプライマーの3’末端を伸長させる。通常,このサイクルを25回から45回行う。特定のPCRのプロトコルに従って,アニーリングステップと伸長ステップは,サンプルが90℃から100°C,その後50°Cから80°Cの間隔で2つのステップのプログラムを繰り返すことで,1つにまとめてもよい。理論的計算では,30サイクルのPCR反応により単一の標的分子を268,435,456倍に増幅できることを示している。増幅反応の効率の悪さから,実際の増幅はこれより少なくなる可能性はあるが,それにもかかわらず,PCR反応は通常,検出がさらに容易にできるレベルまで,単一又は非常に少ない数の標的分子を数百万倍に増幅することができる。PCR反応は,例えば,好熱性細菌のサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)から単離されたTaqポリメラーゼの耐熱性DNAポリメラーゼに依存している。他の耐熱性DNAポリメラーゼ,例えばパイロコッカス・フリオサスから単離されたPfuポリメラーゼを,Taqポリメラーゼの代わりに使用することもできる。これは,Taqポリメラーゼには見られないプルーフリーディング活性を有する,忠実度の高い酵素である。
【0011】
ポリメラーゼ連鎖反応の概説は,ほとんどの分子生物学のテキスト,例えばBlackwell Science社発行のOld及びPrimroseによる“Principles of Gene Manipulation − An Introduction to Genetic Engineering”に記載されており,これは参照として本明細書に組み込まれる。様々な“PCR形式”が複数存在する。基本的な要件として,PCR反応は,標的配列の両側にハイブリダイズするように設計されたフォワードプライマーとリバースプライマーを必要とする。2つのプライマーの間に挟まれた配列に関して増幅反応が起こる。増幅したPCR産物の検出は,単に二本鎖核酸の存在を検出する非特異的方法で行ってもよい(例えば,エチジウムブロマイド又はSYBRグリーンなどの二本鎖DNAインターカレート色素を用いて)。あるいは,例えば検出前に反応産物の電気泳動を行い,産物のおおよその分子量を分析することによって産物の半特異的検出を行ってもよい。また,配列特異的検出法が複数存在し,これらは,一般的に増幅領域への配列特異的核酸プローブのハイブリダイゼーションを含むものや,核酸ポリメラーゼの核酸エキソヌクレアーゼ活性を利用して標的配列の増幅に付随するプローブの分解を測定する方法がある。PCRベースによる病原体の検出方法は,通常多くの日数をかける培養やインキュベーションを含む従来の方法よりも速い結果が得られる利点を提供する。PCRの結果は数時間以内に入手することができる。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の側面では,核酸配列の配列特異的検出を含む,クラミジア・トラコマチス由来の遺伝物質をサンプル中で検出する方法が提供される。前記核酸配列は,以下のSEQ ID NO:1又はその相補鎖に含まれる少なくとも10個の連続するヌクレオチド残基を含む。
【0013】
【化1】

この配列は最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0014】
本発明の第2の側面では,以下のSEQ ID NO:15から選択される17個から34個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有するフォワードPCRプライマーが提供される。
【0015】
【化2】

この配列は最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0016】
あるいは,そのプライマーのアニーリング温度を上昇させるステップがとられる場合には,SEQ ID NO:15に由来するプライマーの配列は,より短くてもよい(好ましくは長さが12個から22個又は19個から29個の残基)。
【0017】
本発明の第3の側面では,以下のSEQ ID NO:16から選択される15個から31個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有するリバースPCRプライマーが提供される。
【0018】
【化3】

この配列は最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0019】
あるいは,そのプライマーのアニーリング温度を上昇させるステップがとられる場合には,SEQ ID NO:16に由来するプライマーの配列は,より短くてもよい(好ましくは長さが10個から20個又は16個から26個の残基)。
【0020】
本発明の第4の側面では,以下のSEQ ID NO:4又はその相補鎖に示される18個から28個のヌクレオチド残基を含む核酸配列を有する核酸プローブが提供される。
【0021】
【化4】

この配列は最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0022】
あるいは,そのプローブのアニーリング温度を上昇させるステップがとられる場合には,SEQ ID NO:4に由来するプローブの配列は,より短くてもよい(好ましくは長さが13個から23個の残基)。
【0023】
本発明の第5の側面では,本発明のフォワードPCRプライマー及びリバースPCRプライマーを含むPCR成分が提供される。
【0024】
本発明の第6の側面では,本発明のPCR成分,及び本発明の方法を実施するための説明書を含むキットが提供される。
【0025】
本発明の第7の側面では,ペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)の染色体に含まれる核酸配列の配列特異的な検出を含む,ペクトバクテリウム・アトロセプティカムに由来する遺伝物質をサンプル中で検出する方法が提供される。
【0026】
本発明の第8,9及び10の側面では,それぞれ,本発明の第5の側面の“第2のフォワードPCRプライマー”として定義されるフォワードPCRプライマーが提供され;本発明の第5の側面の“第2のリバースPCRプライマー”として定義されるリバースPCRプライマーが提供され;本発明の第5の側面の“第2のPCRプローブ”として定義されるPCRプローブが提供される。
【0027】
また本発明は,本発明の第8,9及び10の側面に係るフォワードPCRプライマー,リバースPCRプライマー又はPCRプローブのいずれか1つ以上とPCR反応の1つ以上のさらなる成分を組み合わせたPCR成分を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1aから図1cは,実施例に記載されているように,プラスミド標的アンプリコン3,5,及び7に対して行った検出限界(LOD)決定実験の結果を示している。
【図2】図2aから図2cは,実施例で記載されているように,プラスミド標的アンプリコン9,17,及び18に対して行った検出限界(LOD)決定実験の結果を示している。図2dは,実施例で記載されているように,染色体アンプリコン17の[Mg2+]最適化実験の結果を示している。
【図3】図3は,実施例8に記載の17の染色体アンプリコンの実験の結果を示している。
【図4−5】図4は,デュプレックスPCRによって産生されたクラミジア・トラコマチスのアンプリコンの電気化学的検出による内部コントロール(IC)のプライマー及びDNAの結果を示している(実施例9)。エラーバーはSD(n=3)を示している。4つのグループの各バーの記載は,図5と同様である。“ME17プライマー+20pgのIC DNA”は,各グループの4つの内の最初のバーに対応している。“ME17プライマー;IC DNAなし”は,各グループの4つの内の2番目のバーを指している。“ME17及びICプライマー+200μgのIC DNA”は,各グループの4つの内の3番目のバーを指している。“ME17及びICプライマー;IC DNAなし”は,各グループの4つの内の4番目のバーを指している。
【図6】図6aは,内部コントロールのプライマーセットを含まないクラミジア・トラコマチスの増幅産物のゲル電気泳動を示している。レーン1=100bpラダー,レーン2からレーン4=10000IFU反応(IFU reactions);レーン5からレーン7=1000IFU/反応,レーン8からレーン10=100IFU/反応,レーン11からレーン13=10IFU/反応,レーン14からレーン16=1IFU/反応。図6bは図6aと同様であるが,レーン1=100bpラダーであり,レーン2からレーン4ではIFU/反応はなかった。
【図7】図7aと図7bは図6aと図6bと同様であるが,内部コントロールのプライマーセットを含む反応である。
【図8】図8は,クラミジア・トラコマチス(CT,各ペアの最初のバー)のSEQ ID NO:17及びSEQ ID NO:19のプライマーと,内部コントロール(IC,各ペアの2番目のバー)のプライマーセットによりデュプレックスに増幅したサンプルの電気化学的検出の結果を示している。200pgの内部コントロールDNAを,すべてのケースで加えている。エラーバーはSD(n=3)を示している。
【図9】図9は,実施例10に記載の比較デュプレックス実験(comparative duplex experiments)の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
背景技術の段落で説明したように,PCRは,インビトロでの酵素的複製によってDNAのセグメントを増幅するために分子生物学分野において広く使われている技術である。反応が進行するにつれて,以前の複製によって産生されたDNAは,後の複製の鋳型として使用される。これにより連鎖反応を引き起こし,DNA鋳型が指数関数的又はほぼ指数関数的に増幅する。PCRは,単一の又は非常に少ないコピーの核酸を桁違いに増幅することができ,数百万以上のコピーの産生により容易に検出が可能になる。基本的なPCRのセットアップは,以下の成分を必要とする。i)増幅させるDNA鋳型又はDNA標的;ii)標的領域の5’末端でDNA領域に相補的なフォワードプライマーと,標的領域の3’末端でDNA領域に相補的なリバースプライマーの1対のプライマー;iii)耐熱性DNAポリメラーゼ,例えばTaqポリメラーゼ;iv)デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP),これらはDNAポリメラーゼが新しいDNA鎖を合成するのに欠かせない要素として使用される;v)適当な緩衝液;vi)マグネシウムイオン又は他の適当なカチオン;vii)一価カリウムイオン又は他の適当なカチオン。
【0030】
例えば,多数の異なるPCRが存在する場合,マルチプレックスPCRは,単一の試料容器内の複数の標的を同時に増幅する。またマルチプレックスPCRは,最大12セットのプライマーの独立した作用を含む,デュプレックス及びトリプレックスPCR反応(duplex and triplex PCR reactions)を含む。
【0031】
ネストPCR法は,PCR増幅反応の特異性を高めるために使用することができる技術である。2つのプライマーセットが2つの連続反応に使用される。最初に1対のプライマーにより,完全には特異的でない方法でDNA産物を産生する。それにもかかわらず,最初の反応は標的配列の例を増加させる。第2の反応はより特異的で,最初のプライマーセット内にネストされた配列を増幅する。
【0032】
定量PCR(QPCR)はサンプル中の特定量の標的DNAを測定又は推定するのに使用される。標準的なPCRプロセスは,ある状況下ではほぼ定量的であるが,正確に定量的なPCRの目的は,産生量の真の指数関数的増加期でのみ増幅反応を実行するか又は増幅反応の結果を考慮することによって,その後の増幅の定常期を回避することである。指数関数的増幅期における産生量は,標的の初期量に大抵比例する。サーモサイクラーは増幅中に産生量をモニタリングすることができるように開発されている。現在使用されている一つの方法は,増幅進行時に,増幅産物の量を測定するために,SYBRグリーンなどの蛍光色素,又はTaqManTM(登録商標)システムのような蛍光体を含むDNAプローブを使用する,定量的リアルタイムPCRである。
【0033】
ホットスタートPCRは,プライマーが低温で非特異的な場所に結合するか,又はさらに互いに結合することによって起こり得る問題を回避することができる。ホットスタートPCRは,非特異的なプライマーの結合を防止又は低減する十分に高い反応温度の時に,ハイブリダイゼーションするプライマーのみを解離させる原理に基づいている。この技術は手動で行うことができ,例えば,ポリメラーゼを加える前又はプライマーを加える前に反応成分を変性温度,例えば97℃に加熱する。あるいは,特殊なシステムが開発されており,これは例えば,温度の上昇で解離することになる不活性型の1つ以上の成分を結合させることにより,温度が上昇するまで反応を阻害する。
【0034】
逆転写酵素PCR(RT−PCR)は,RNAを増幅するために使用される方法であり,PCR反応に先立って逆転写酵素による反応で,RNAをcDNAに変換する。2つの反応は十分に両立でき,同一のチューブ内で実行することができ,同一の熱サイクル装置で実施することができる。
【0035】
メチル化特異的PCR(又はMSP)は,重亜硫酸ナトリウムで標的DNAを前処理することを含み,これにより,非メチル化シトシン単位を,DNAプライマーによってチミンとして認識されるウラシルに変換する。2つの増幅は,修飾鋳型と被修飾鋳型を区別するプライマーセットにより,修飾DNA上で行われる。一方のプライマーセットは,DNAのシトシンを認識し,事前に非メチル化したDNAを増幅し,他のセットは,DNAのウラシル又はチミンを認識し,メチル化した標的を増幅する。2つの増幅の相対的な割合を用いて,メチル化の程度に関する情報が得られる。
【0036】
発明の詳細な説明
クラミジア標的配列の選択
クラミジア・トラコマチスは,染色体とプラスミドの両方に遺伝情報を含んでいる。クラミジア・トラコマチスのプラスミドは,8個のオープンリーディングフレームを含み,それが複数のコピー数に存在するため,先行技術の検出方法であるNAATにとって好ましい標的である。しかしながら本発明者らは,これらのオープンリーディングフレームの多くが非常に多くの変異性を有することを明らかにした。少なくとも一塩基多型(SNPs)が,オープンリーディングフレーム2,4,7及び8で検出された。オープンリーディングフレーム1及び3では,挿入と欠失の両方を含むことが示された。したがって,本発明の核酸検出のための標的配列は,クラミジア・トラコマチスの染色体の配列からもたらされるべきであると考えた。クラミジアの染色体に見られ,本明細書では第17染色体の配列として言及するSEQ ID NO:1で同定される推定遺伝子が,本発明の方法の使用に最も適していることを発見した。その理由として,クラミジア・トラコマチス分離株間の変異性がわずかであり,非クラミジア分離株との相同性レベルが低く,そして驚くべきことに,単一のコピー数にもかかわらずPCRアッセイにより検出することができ,少なくともプラスミド標的と同様の良好さで有利な検出限界(LOD)を有するためである。本発明の好ましい側面で使用するPCRプライマーの選択の詳細については,実施例に記載されている。
【0037】
第17染色体の配列は,仮定上の膜結合性タンパク質であることが示唆されているが(仮定上の膜結合タンパク質となるように第17染色体の配列を提案しているが),まだ正式な名前は与えられていない。生物としての機能は,本発明に係る証明された使用適合性に関する限り,重要ではない。
【0038】
本発明の第1の側面では,以下のSEQ ID NO:1又はその相補鎖に示される少なくとも10個の連続する核酸残基を含む核酸配列の配列特異的な検出を含む,クラミジア・トラコマチス由来の遺伝物質をサンプル中で検出する方法が提供される。
【0039】
【化5】

この配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0040】
ある態様では,核酸配列がSEQ ID NO:1の少なくとも15個の連続する核酸残基を含むことが好ましい。
【0041】
ある好ましい態様では,1個,2個,3個又は4個の残基欠失,残基置換又は残基付加があってもよい。
ある好ましい態様では,残基置換は残基欠失又は残基付加よりも好ましい。ある好ましい態様では,置換,欠失又は残基付加は存在しない。さらなる変異に関する同様の好ましい特徴は,本発明の他のすべての側面に適用される。
【0042】
好ましくは,配列特異的検出は,核酸ハイブリダイゼーションのステップを行うことを含む。
【0043】
好ましくは,配列特異的検出は,核酸ハイブリダイゼーションのステップに続いて核酸ハイブリダイゼーションを検出するステップを含む。
【0044】
核酸ハイブリダイゼーションの検出
核酸ハイブリダイゼーションを検出する方法は,非配列特異的に核酸ハイブリダイゼーションを検出する方法を含む。これらの方法は,例えばエチジウムブロマイドやSYBRグリーンなどの核酸インターカレート色素の使用を含む。これらの色素は,二本鎖核酸に結合した時に蛍光シグナルを増加させ,標準的な蛍光検出システムによって検出することができる。代替的な態様では,核酸ハイブリダイゼーションの検出方法は,例えば標識プローブなどの配列特異的な方法でもよい。1つ以上の標識プローブが,配列特異的に標的配列にハイブリダイズされてもよく,(例えば,DNAアレイ又は“チップ”上に)固定化された相補的な配列とハイブリダイゼーションした後に,標的配列が検出されてもよい。核酸プローブは,蛍光的に,放射的に,酵素的に,あるいは本発明の特定の好ましい態様である電気化学的に標識されてもよい。電気化学的標識は,本明細書に開示されている電気化学的な標識を用いることが特に好ましい。
【0045】
ある好ましい態様では,クラミジア・トラコマチスに由来する遺伝物質をサンプル中で検出する方法は,クラミジア・トラコマチスに由来する遺伝物質と以下のSEQ ID NO:4又はその相補鎖に含まれる少なくとも15個の連続する核酸残基を有する核酸配列とのハイブリダイゼーションを含む。
【0046】
【化6】

この配列は最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換により変異させてもよい。ある態様では,1個,2個,3個又は4個の残基付加,残基欠失又は残基置換が存在する。
【0047】
ある好ましい態様では,本方法はクラミジア・トラコマチス由来の遺伝物質と以下のSEQ ID NO:5内の配列又はその相補鎖を含む核酸配列とのハイブリダイゼーションを含む。
【0048】
【化7】

この配列は最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換により変異させてもよい。
【0049】
ある好ましい態様では,さらなる変異は上記で定義したとおりである。
【0050】
ある好ましい態様では,配列特異的検出は,核酸の増幅に続いて行われ,PCR,転写媒介増幅,核酸配列ベース増幅(NASBA),ヘリカーゼ依存性増幅,リコンビナーゼポリメラーゼ増幅,鎖置換増幅又はループ媒介性等温増幅により検出される。核酸の増幅の後に配列特異的検出を行う検出方法によって,より高い感受性と特異性を得ることができる。
【0051】
好ましくは,配列特異的検出方法はPCRによる核酸の増幅に続いて行われる。
【0052】
ポリメラーゼ連鎖反応
ポリメラーゼ連鎖反応は,フォワードPCRプライマー及びリバースPCRプライマーの使用を含む。本発明の第一の側面のある好ましい態様では,ポリメラーゼ連鎖反応は,以下のPCRフォワードプライマー及びリバースPCRプライマーの使用を含む。
【0053】
a)前記フォワードPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:15から選択される17個から34個(例えば24個から34個)の連続するヌクレオチド残基を含むヌクレオチド配列を有する。
【0054】
【化8】

【0055】
b)前記リバースPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:16から選択される15個から31個(例えば21個から31個)の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有する。
【0056】
【化9】

【0057】
あるいは前記フォワードPCRプライマーは,上記b)で部分的に定義されたリバースプライマーの相補鎖である核酸配列を含み,前記リバースPCRプライマーは,上記a)で部分的に定義されたフォワードプライマーの相補鎖である核酸配列を有する。ここで,これらの配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換により変異させてもよい。
【0058】
例えば前記ポリメラーゼ連鎖反応は,以下のPCRフォワードプライマー及びリバースPCRプライマーの使用を含んでもよい。
【0059】
a)前記フォワードPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:2から選択される17個から27個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有する。
【0060】
【化10】

b)前記リバースPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:3から選択される15個から25個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有する。
【0061】
【化11】

【0062】
あるいは前記フォワードPCRプライマーは,上記b)で部分的に定義されたリバースプライマーの相補鎖である核酸配列を含み,前記リバースPCRプライマーは,上記a)で部分的に定義されたフォワードプライマーの相補鎖である核酸配列を含む。この配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換により変異させてもよい。
【0063】
さらなる変異は上記のように定義されてもよい。ある態様では,フォワードPCRプライマーは,本発明の第2の態様について定義されているものでもよく,リバースPCRプライマーは,本発明の第3の態様について定義されているものでもよい。
【0064】
ある好ましい態様では,フォワードPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:17,SEQ ID NO:18,又はSEQ ID NO:6に記載される配列を有する核酸を含み,リバースPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:19又はSEQ ID NO:7に記載される配列を有する核酸を含む。
【0065】
【化12】

【0066】
【化13】

【0067】
ある態様では,PCRプライマーの片方又は両方は,ハイブリダイゼーションの検出を支援するために標識されてもよい。標識は,蛍光標識,放射性標識,酵素活性標識又は電気化学的活性標識でもよい。プライマーと標識は,ハイブリダイゼーション後,又はPCR反応に用いるDNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性による分解後にそれらの検出可能なシグナルが増加するように配置させてもよい。例えば,消光分子部分(quencher moiety)が付加されたPCRプライマーに標識を付着させてもよい。PCRプライマーの分解により,消光分子部分と標識は互いに分離し,標識上の消光分子部分の消光活性は減少することになる。
【0068】
核酸プローブ
プローブ
配列特異的な方法でPCR反応の産物を検出するために,核酸プローブを使用してもよい。通常,このようなプローブは,プライマーがアニールする位置の中間地点で標的配列にアニーリングするように設計されている。プローブは検出を支援するために,例えばフルオロフォア,放射性標識,電気化学的活性標識又は酵素標識で標識してもよい。標識は,直接核酸に結合させるか又はリンカー分子部分(linker moiety)によって結合させてもよい。本発明のプローブは,特にTaqMan PCR型が適している。TaqManは,ライフテクノロジーズ社から入手可能なリアルタイム定量PCR法である。TaqMan型では,増幅の実験段階中にPCR産物の蓄積がリアルタイムに測定される。これは,しきい値サイクル,すなわち,シグナルのしきい値レベルが検出されるPCRサイクル数を測定するために行われる。TaqMan型のPCRプローブは,蛍光標識され,2つのプライマーの間に位置するDNA鋳型内の約20個から60個のヌクレオチドのセグメントに相補的である。TaqManシステムの使用に適する蛍光標識は,6−カルボキシ−フルオレセイン(FAM)又はテトラクロロフルオレセイン(TET)などである。TaqManプローブは,通常,フルオロフォアなどで標識され,さらに,例えばテトラメチルローダミン(TAMRA)などの消光分子で標識される。フルオロフォアと消光物質との間の近接は,蛍光色素の蛍光を阻害する。しかし,PCR反応のプライマー伸長段階中に,Taqポリメラーゼが示す5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により,既に鋳型にアニールされたプローブ部分を分解し,プローブから蛍光色素を解離する。蛍光色素が消光物質に近接していないことで,消光効果が減少し,蛍光色素によって生じる蛍光シグナルが増加し,検出されることになる。
【0069】
本発明のある態様では,ポリメラーゼ連鎖反応は,以下のSEQ ID NO:4又はその相補鎖に示される18個から28個の核酸残基を含む核酸配列を有する核酸プローブの使用を含む。
【0070】
【化14】

この配列は,上記で定義される最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0071】
好ましくは,核酸プローブは以下のSEQ ID NO:5に示される核酸配列を有する。
【0072】
【化15】

【0073】
ある態様では,核酸プローブは,例えば蛍光的に,放射性的に,酵素的に標識されてもよく,最も好ましくは電気化学的活性標識で標識されてもよい。本明細書に開示されている電気化学的活性標識が特に好ましい。
【0074】
本発明の第2の側面では,以下のSEQ ID NO:15から選択される17個から34個(例えば,24個から34個)の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有するフォワードPCRプライマーが提供される。
【0075】
【化16】

この配列は,上記で定義されるように必要に応じて,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0076】
ある態様では,以下のSEQ ID NO:2から選択される17個から27個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有するフォワードPCRプライマーが提供される。
【0077】
【化17】

この配列は,上記で定義されるように必要に応じて,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0078】
ある態様では,以下のSEQ ID NO:20から選択される24個から34個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有するフォワードPCRプライマーが提供される。
【0079】
【化18】

この配列は,上記で定義されるように必要に応じて,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0080】
ある態様では,以下のSEQ ID NO:21から選択される24個から24個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有するフォワードPCRプライマーが提供される。
【0081】
【化19】

この配列は,上記で定義されるように必要に応じて,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0082】
ある態様では,核酸配列は,18個から26個,19個から25個,20個から24個,21個から23個,最も好ましくは22個の残基,又は25個から33個,26個から32個,27個から31個,28個から30個,最も好ましくは29個の残基を含む。ある好ましい態様では,フォワードPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:17,SEQ ID NO:18,又はSEQ ID NO:6に示される配列を有する核酸を含む。
【0083】
【化20】

【0084】
本発明の第3の側面では,以下のSEQ ID NO:16から選択される15個から31個(例えば21個から31個)の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有するリバースPCRプライマーが提供される。
【0085】
【化21】

この配列は,上記で定義されるように必要に応じて,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0086】
ある態様では,以下のSEQ ID NO:3から選択される15個から25個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有するリバースPCRプライマーが提供される。
【0087】
【化22】

この配列は,上記で定義されるように必要に応じて,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0088】
ある態様では,核酸配列は,SEQ ID NO:16から選択される22個から30個の連続するヌクレオチド残基を含む。より好ましくは23個から29個,より好ましくは24個から28個,より好ましくは25個から27個,最も好ましくは26個の連続するヌクレオチド残基を含む。
【0089】
ある態様では,核酸配列は,SEQ ID NO:3から選択される16個から24個の連続するヌクレオチド残基を含む。より好ましくは17個から23個,より好ましくは18個から22個,より好ましくは19個から21個,最も好ましくは20個の連続するヌクレオチド残基を含む。
【0090】
ある態様では,残基付加,残基欠失,及び残基置換の数と種類は,フォワードPCRプライマーに関して上記で定義されるとおりでもよい。
【0091】
ある好ましい態様では,リバースPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:19又はSEQ ID NO:7に示される核酸配列を有する。
【0092】
【化23】

【0093】
本発明の第4の側面では,以下のSEQ ID NO:4又はその相補鎖に示される18個から28個の核酸残基を含む核酸配列を有する核酸プローブが提供される。
【0094】
【化24】

この配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0095】
残基付加,残基欠失,残基置換の数と種類は,本発明のプライマーに関して上記で定義されるとおりでもよい。ある好ましい態様の核酸プローブは,SEQ ID NO:4から選択される18個から27個の残基,19個から26個の残基,20個から25個の残基,21個から24個の残基,22個から23個の残基,最も好ましくは23個の残基を含む。
【0096】
ある好ましい態様では,本発明の核酸プローブは以下のSEQ ID NO:5で示される核酸配列を有する。
【0097】
【化25】

【0098】
本発明の第5の側面では,本発明のフォワードPCRプライマー及びリバースPCRプライマーを含むPCR成分が提供される。ある好ましい態様では,PGR成分はさらに本発明の核酸プローブを含む。
【0099】
内部コントロール(internal control)
一般的に,PCRアッセイ又は同様のアッセイの内部コントロールは,一本鎖DNAオリゴヌクレオチドで構成される。これらは簡単に製造することができ,サンプルキャリア上に固定化できるか又はPCR反応の成分に付加することができる。しかしながら,本発明の方法は,基本小体又は臨床的に由来するクラミジア含有物質を精製し,それらからゲノムDNAを精製することを含むサンプル調製ステップから行ってもよい。複数の市販のDNA精製方法及びキット,例えばPromega社のWizardシステムが利用できる。これらの細菌融解及びDNAの精製方法は,カオトロピック塩を含むDNA溶液の使用を含み,例えばシリカベースのメンブレンに結合させ,その後,残融解物を除去し,狭雑物を洗浄する。精製された細菌ゲノムDNAは,その後下流検出アッセイ(downstream detection assay),例えば本発明の第1の側面のアッセイで使用するメンブレンから回収される。このような精製方法では,短い一本鎖DNAオリゴヌクレオチドベースの内部コントロール配列は,ほとんど同時精製されない。例えば,Promega社のWizardキットの精製プロトコルでは,50kbサイズのカットオフを有することを明言している。そのため発明者は,サンプルに含まれるクラミジアゲノムDNAと同時精製する内部コントロールを提供することが有利であることに気付いた。可能な解決策は,クラミジアからゲノムDNAを単離するのに必要な単離条件で同様に融解する別の細菌種由来のゲノムDNAを内部コントロールとして使用することである。安全性の考慮により,内部コントロールの原料は,理想的には非病原性細菌に由来する必要がある。また,それは通常,容易にヒトから発見すべきではなく,研究室で容易に培養する必要がある。本発明は内部コントロールとして,ペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)に由来するゲノムDNAの使用を含む。これは,P.アトロセプティカムが培養可能であり,広く利用でき,容易にDNAを単離でき,クラミジアに由来するそれと同時精製されるためである。それは1つだけ染色体を持っており,固有の種を表わす多くの遺伝子を持っている。さらに,この種(これは温帯地域でジャガイモの軟腐病と黒脚病を引き起こす植物病原体である)がヒトに感染したという報告例はなく,解剖学的部位,又は臨床サンプルで発見されることがほとんどないことを意味している。誤解を避けるために,ペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)は旧名,エルウィニア・カロトヴォラ・サブスピーシーズ・アトロセプティカ(Erwinia carotovora subsp.atroseptica)であることに留意すべきである。本発明の第5の側面のある好ましい態様では,PCR成分は,内部ポジティブコントロールとして使用するペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)由来のゲノムDNAをさらに含む。好ましくは,それは菌株ATCC BAA−672である。
【0100】
本発明のPCR成分は,好ましくは第2のフォワードPCRプライマーと第2のリバースPCRプライマーを含み,前記プライマーは,以下のSEQ ID NO:8又はその相補鎖の核酸配列内に存在する核酸配列とハイブリダイズするように設計されている。
【0101】
【化26】

この配列は,本発明の第1又は第2の側面のPCRプライマーに関して上記した数と種類について定義されるように,最大5個以上の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0102】
第2のフォワードPCRプライマーは,好ましくは以下のSEQ ID NO:9から選択される13個から23個の連続する核酸残基を含む核酸配列を有する。
【0103】
【化27】

【0104】
第2のリバースPCRプライマーは,好ましくはSEQ ID NO:10から選択される15個から25個の連続する核酸残基を含む核酸配列を有する。
【0105】
【化28】

【0106】
あるいは,前記第2のフォワードPCRプライマーは,上記で定義されるリバースプライマーの相補鎖である核酸配列を有し,前記第2のリバースPCRプライマーは,上記で定義されるフォワードプライマーの相補鎖である核酸配列を有する。この配列は,本発明の第1又は第2の側面のプライマーに関して数や種類が定義されるように,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換で変異させてもよい。第2のフォワードPCRプライマーは,好ましくはSEQ ID NO:9から選択される14個から22個,より好ましくは15個から21個,より好ましくは16個から20個,より好ましくは17個から19個,最も好ましくは18個の連続する核酸残基を含む。
【0107】
第2のリバースPCRプライマーは,好ましくはSEQ ID NO:10から選択される16個から24個,より好ましくは17個から23個,より好ましくは18個から22個,より好ましくは19個から21個,最も好ましくは20個の連続する核酸残基を含む。
【0108】
ある好ましい態様では,第2のフォワードPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:11に示される核酸配列を有し,第2のリバースPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:12に示される配列を有する。
【0109】
【化29】

【0110】
ある態様のPCR成分は,SEQ ID NO:13又はその相補鎖に示される18個から28個,より好ましくは19個から27個,より好ましくは20個から26個,より好ましくは21個から25個,より好ましくは22個から24個,最も好ましくは23個の核酸残基を含む核酸配列を有する第2の核酸プローブを含む。
【0111】
【化30】

この配列は,本発明の第3の側面の第1の核酸プローブに関して上記種類及び数が定義されるように,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換で変異させてもよい。
【0112】
ある好ましい態様では,核酸プローブは,SEQ ID NO:14で示される核酸配列を有する。
【0113】
【化31】

【0114】
また本発明は,クラミジア・トラコマチスを検出する産物や方法を欠く場合の,ペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)を含む内部コントロールに関連する産物や方法にも関連する(すなわち,本発明は,クラミジア・トラコマチス由来の核酸以外の核酸を検出するために使用される内部コントロールをも提供する)。特に,本発明は,ペクトバクテリウム・アトロセプティカムのゲノムDNA内に存在する標的核酸配列とハイブリダイズするように設計されたフォワードPCRプライマーと第2のPCRプライマーを意図している。好ましくは,これらのプライマーは,以下のSEQ ID NO:8又はその相補鎖の核酸配列内に存在する標的核酸配列とハイブリダイズするように設計されている。
【0115】
【化32】

この配列は,本明細書の他の部分で定義されているように,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異させてもよい。
【0116】
第2のフォワードPCRプライマーと第2のリバースPCRプライマーのさらなる特徴は,好ましくは本発明の他の側面に関して本明細書で定義されているとおりでもよい。また,本発明は,本発明の他の側面に関して定義されている特徴を有するペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)の内部ポジティブコントロールを検出する核酸プローブも意図している。さらに,本発明は,ペクトバクテリウム・アトロセプティカムのプライマーと任意のプローブの使用,及び本発明の他の方法に関して本明細書で開示されたいずれかの特徴を組み込むことを含む,ペクトバクテリウム・アトロセプティカムを含む内部ポジティブコントロールからのシグナルを検出する方法も意図している。ペクトバクテリウム・アトロセプティカムを含む内部ポジティブコントロールからのシグナルを検出する方法は,本明細書で定義されるように,好ましくはカオトロピック塩及び必要に応じてシリカベースのメンブレンを用いて全てのペクトバクテリウム・アトロセプティカム細菌細胞を融解することを含む,ペクトバクテリウム・アトロセプティカム由来のゲノムDNAを取得する方法から始める。
【0117】
キット
本発明の第6の側面では,本発明の第5の側面のPCR成分,又は第8,第9もしくは第10の側面のPCRプライマーもしくはPCRプローブ,及び本発明の第1の側面の方法を実施するための説明書を含むキットが提供される。キットは,例えば,サンプル容器,パッケージング,PCR酵素,増幅前駆体,サンプルチューブ又は検出器具などのさらなる構成要素を含んでもよい。
【0118】
内部ポジティブコントロール
ある好ましい態様では,本発明の第5の側面のPCR成分は,内部ポジティブコントロールとして使用するペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)に由来するゲノムDNAをさらに含む。検出方法は,本発明の他の側面に関して本明細書に記載されているとおりでもよく,又は本発明の他の側面に関して本明細書に記載の化合物もしくは産物の使用を含んでもよい。
【0119】
本発明の第7の側面では,ペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)の染色体に含まれる核酸配列の配列特異的検出を含む,ペクトバクテリウム・アトロセプティカムに由来する遺伝物質をサンプル中で検出する方法が提供される。前記方法は,本発明の他の側面に関して開示されるいずれかの特徴を組み込んでもよく,必要に応じてサンプルからペクトバクテリウム・アトロセプティカムのゲノムDNA(必要に応じて内部コントロールとしてサンプルに注入される)を抽出することをさらに含んでもよい。前記抽出は,関係のある第2の微生物(例えば病原性微生物)からのゲノムDNAの抽出に付随して行われてもよい。
【0120】
本発明の第8の側面;第9の側面;及び第10の側面では,それぞれ,本発明の第5の側面の“第2のフォワードPCRプライマー”として定義されるフォワードPCRプライマーが提供され;本発明の第5の側面の“第2のリバースPCRプライマー”として定義されるリバースPCRプライマーが提供され;本発明の第5の側面の“第2のPCRプローブ”として定義されるPCRプローブが提供される。
【0121】
また,本発明は,PCR反応の1つ以上のさらなる成分を組み合わせた,本発明の第8,第9又は第10の側面のフォワードPCRプライマー,リバースPCRプライマー又はPCRプローブのいずれか1つ以上を含むPCR成分を提供する。
【0122】
本発明の第1の側面から第6の側面に関連して記載される好ましい又は任意の特徴は,必要に応じて本発明の第7の側面から第10の側面に組み込んでもよく,また,本発明の他の側面に組み込んでもよい。
【0123】
標識
プローブ及び/又はプライマーは,検出を支援するために標識に結合させてもよい。その標識は,放射性,酵素活性,蛍光活性又は電気化学的活性でもよい。クラミジア・トラコマチス由来の核酸を検出するための化合物及び内部ポジティブコントロール由来の核酸を検出するための化合物が存在する態様,又は2つの核酸を同時に検出する方法が存在する態様では,内部ポジティブコントロールの検出及びクラミジア・トラコマチスに由来する核酸の検出に使用される標識は,好ましくは互いに区別することができ,例えば,それらは異なる蛍光色素であってもよく,電気化学的に区別可能な活性を提供する異なる電気化学的に活性な薬剤又は電気化学的な標識であってもよい。
【0124】
本発明は,電気化学的に標識したプローブ及び/又はプライマーの使用が特に適している。特に電気化学的標識は,金属−炭素環のπ錯体(metallo−carbocyclic pi complexes),つまり部分的又は完全に非局在化したπ電子を有する有機錯体を含むものであってもよい。適当なマーカーは,これらの2つの炭素環が平行するサンドイッチ化合物,さらにベント型サンドイッチ化合物(bent sandwiches)(角度型化合物(angular compounds))とモノシクロペンタジエニル(monocyclopentadienyls)を含む。好ましくは,電気化学的に活性なマーカーはメタロセニル標識であり,より好ましくはフェロセニル標識である。
【0125】
本発明のプローブに使用されるフェロセニル標識及びメタロセニル標識は,N置換フェロセン又はメタロセンカルボキサミドが有益である。標識分子部分(labelling moiety)を構成するフェロセン環又はメタロセン環は,置換されていなくてもよい。必要に応じて,フェロセン環又はメタロセン環は1個以上の置換基で置換されてもよく,この機能及び位置はフェロセン分子又はメタロセン分子(ferrocene or metallocene moiety)のレドックス特性に望ましい影響を及ぼすように選択される。フェロセン環又はメタロセン環は,標識の電気化学的感度を本質的に減少させない別の環状置換基で,付加的又は代替的に置換されてもよい。フェロセンカルボキシサミド基又はメタロセンカルボキサミド基は,カルボキサミドの窒素を介してヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドと結合していてもよい。ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドへの結合は,好ましくはリン酸基又はヌクレオチド塩基を介する。結合方法は共に,いずれかのヌクレオチドを介して,標識をオリゴヌクレオチドの長さに沿って付着させることができる。しかし,結合がリン酸基を介している場合は,そのような結合がオリゴヌクレオチドのワトソン・クリックハイブリダイゼーションを立体的に妨げることや,ヌクレアーゼ活性に影響を及ぼすことの可能性を最小限にするために,3’末端又は5’末端リン酸基を介することが望ましい。ワトソン・クリックの塩基対合を伴わない塩基領域を介する結合は,このような塩基対合の分裂が起こりにくいことが予測される。したがって,塩基を介する結合は,末端以外のヌクレオチド部位で標識することがより適している。標識されたオリゴヌクレオチドは,オリゴヌクレオチドと標識分子部分の間にリンカー分子分子(linker moiety)を有してもよい。好ましくは,標識されたオリゴヌクレオチドは,リンカー分子でオリゴヌクレオチドに結合したフェロセニル標識を有している
【0126】
任意の適当なリンカー分子を使用してもよい。適当なリンカー分子は,直鎖状又は分岐鎖状でかつ飽和又は不飽和の脂肪族炭素鎖を含んでもよい。リンカー分子は,4個から20個,好ましくは6個から16個,より好ましくは8個から14個,特に12個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の脂肪族鎖が有利である。アルキレン鎖は,任意の置換基で置換されてもよく,あるいは任意の原子又は分子部分(moiety)により中断されてもよいが,これらの任意の置換基,原子及び分子部分が,標識の電気化学的感度を本質的に低下させないことを条件とする。本発明で使用可能なフェロセニル標識の具体例は,式Iから式IIIがある。式Iaから式IIIaの分子は,対応するフェロセニル標識で標識されたオリゴヌクレオチドである。式IVはヌクレオチド塩基を介して結合できるフェロセニル標識の一例を示し,説明の都合上,式IVにアミノ修飾チミン塩基が含まれている。
【0127】
【化33】

【0128】
【化34】

【0129】
【化35】

【0130】
【化36】

【0131】
【化37】

【0132】
【化38】

【0133】
【化39】

【0134】
【化40】

【0135】
フェロセン標識プローブは,任意の適当な方法で調製されてもよい。例として,オリゴヌクレオチドは末端アミノ基を有する遊離基の導入により修飾されたヌクレオチドでもよい。このようなアミノ修飾ヌクレオチドの具体例は,式Vの修飾ヌクレオチドである。そして,アミノ修飾ヌクレオチドとフェロセンカルボン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(式VI)の反応によりフェロセンが取り込まれ,フェロセン標識されたオリゴヌクレオチドが得られる。
【0136】
【化41】

【0137】
【化42】

【0138】
代替的方法では,フェロセン標識されたオリゴヌクレオチドは,オリゴヌクレオチドの固相合成の過程でフェロセン部分を付加することにより調製されてもよい。フェロセン標識は,以下に説明する2つの一般的方法により,固相合成中にオリゴヌクレオチドに導入することができる。初めに,オリゴヌクレオチドの3’末端でのオリゴヌクレオチドの付加は,適当な樹脂を用いる必要がある。そのような樹脂は,フェロセン誘導体で標識される。オリゴヌクレオチド5’末端又は内部部位でのフェロセンの付加は,固相支持体に結合したオリゴヌクレオチドとカップリングするのに適するカップリング試薬,例えば式IX又は式Xで示されるような,フェロセニル誘導ホスホラミダイトを用いる必要がある。
【0139】
【化43】

【0140】
【化44】

【0141】
ある具体的な態様では,電気化学的に活性な標識は以下の化合物であってもよい。
【0142】
【化45】

【0143】
式中,
Mcは,メタロセニル基であって,各環は独立して置換されていても置換されていなくてもよく,
前記メタロセニル基は,鉄,クロム,コバルト,オスミウム,ルテニウム,ニッケル及びチタンからなる群から選択される金属イオンMを含み,
R’は,H又は低級アルキルであり,
Xは,NR’又はOのいずれかであり,
Arは,置換又は非置換のアリール基であり,
nは,0又は1であり,
Lは,リンカー分子であり,
mは,0又は1であり,
Rは,標識される分子部分(moiety)を示している。
【0144】
Mc基は,低級アルキル基(例えば,C1からC4アルキル基),もしくはヒドロキシ基,ハロ基,シアノ基,オキソ基,アミノ基,エステル基,アミド基,他のメタロセン基で置換された低級アルキル基,又は低級アルケニル基,もしくはヒドロキシ基,ハロ基,シアノ基,オキソ基,アミノ基,エステル基,アミド基,他のメタロセン基で置換された低級アルケニル基,又はアリール基,もしくはヒドロキシ基,ハロ基,シアノ基,オキソ基,アミノ基,エステル基,アミド基,他のメタロセン基で置換されたアリール基から選択される1つ以上の基で置換されてもよい。前記他のメタロセン基は,本発明の分子中のMc基の総数が好ましくは4つを超えないことを除いて,Mc基と同様の方法で置換されてもよい。好ましくは,Mc基は置換されない。
【0145】
好ましくは,Mは,鉄,オスミウム,又はルテニウムから選択されるイオンである。最も好ましくは,Mは鉄イオンである。Mが鉄イオンである場合,Mcはフェロセンである。
【0146】
好ましくは,低級アルキル基はC1からC4のアルキル基である。好ましくは,R’は,Hである。各R’は,他のR’とは別個の固有性を有する。
【0147】
好ましくは,XはNHである。
【0148】
Ar基は,低級アルキル基(例えば,C1〜C4アルキル基),もしくはヒドロキシ基,ハロ基,シアノ基,オキソ基,アミノ基,エステル基,アミド基で置換された低級アルキル基,又は低級アルケニル基,もしくはヒドロキシ基,ハロ基,シアノ基,オキソ基,アミノ基,エステル基,アミド基で置換された低級アルケニル基,又はアリール基,もしくはヒドロキシ基,ハロ基,シアノ基,オキソ基,アミノ基,エステル基,アミド基で置換されたアリール基から選択される1つ以上の置換基で置換されてもよい。好ましくは,Ar基は置換されない。
【0149】
好ましくは,n=1であり,m=1である。
【0150】
適当なリンカー分子Lは直鎖状又は分岐鎖状でかつ,飽和又は不飽和の脂肪族鎖を含んでもよい。リンカー分子は,4個から20個,好ましくは6個から16個,より好ましくは8個から14個,特に12個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族鎖であることが有利である。アルキレン鎖は,任意の置換基で置換されてもよく,任意の原子又は基(moiety)で中断されてもよいが,これらの任意の置換基,原子及び分子部分は,標識の電気化学的感度を本質的に低下させないことを条件とする。
【0151】
本発明の化合物は複数のメタロセン基を含む。本発明の化合物において,メタロセン基は,他の電気化学的に活性なマーカーで置換されてもよい。本化合物は,電気化学的に活性であるか,又は部分開裂後に電気化学的に活性になるものでもよい。
【0152】
好ましくは,標識される分子部分は,アミノ酸,ヌクレオチド,オリゴヌクレオチド,ポリヌクレオチド,ヌクレオシド,糖質,炭水化物,ペプチド,タンパク質,又はこれらの分子のいずれかの誘導体である。好ましい態様において,Rはヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドである。ヌクレオチドは,アデノシン,チミジン,グアノシン,シチジン,又はウリジンから選択されてもよい。好ましくは,ヌクレオチドは,ヌクレオチドのリボース基又はデオキシリボース基に付着する基を介して,例えば,2’位,3’位,5’位に付着させる。最も好ましくは,ヌクレオチドは,3’位又は5’位に,例えば,5’位に付着させる。好ましくは,2’位,3’位,又は5’位での付着は酸素原子又は窒素原子を介する。
【0153】
標識試薬は,直接又はリンカーを介して付着させてもよい。リンカーは,初めに標識試薬又は標識される分子に付着させてもよい。リンカーを標識される分子に最初に付着させる場合,リンカーは,例えば標識反応を支援するアミノ基又はチオール基などの基を含む。ここではアミノ基が好ましい。
【0154】
ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは,好ましくは3’末端又は5’末端に標識させる。オリゴヌクレオチドは,標識反応を支援するようにアミノ修飾されてもよい。アミノ修飾オリゴヌクレオチドは,標準的な方法で合成してもよく,例えば,Oswel Scientific社(サウスアンプトン,UK)などから商業的に幅広く入手可能である。アミノ修飾オリゴヌクレオチドは,リンカーモチーフと組み合わせてもよく,例えば,5’アミノへキシル基もしくは3’アミノへキシル基,又は5’−C12アミノ基の付加により修飾されてもよい。標識される分子は好ましくはリンカーを含む。
【0155】
オリゴヌクレオチドの場合,分子のオリゴヌクレオチド部分の配列は,分子が相補的な標的配列とハイブリダイズできるようなものであることが好ましく,したがって,例えば本明細書に開示される核酸の検出法又は定量方法(qualification techniques)の1つである分子生物学的手法においてプローブとして使用できることが好ましい。
【0156】
本発明の標識された生物学的分子は,消化又は非消化のいずれかの状態で電気化学的に活性である。理想的には,電気化学的な活性の程度は消化の程度に応じて変化する。
【0157】
式VIIIは,新規な電気化学的に活性なマーカーが付着したオリゴヌクレオチドのありうる態様を図示したものである。式VIIIの分子は,5’−アミノへキシル修飾オリゴヌクレオチドと式VIIで示される分子との反応で得ることができる。
【0158】
【化46】

【0159】
【化47】

【0160】
4−(3’−フェロセニルレイド)−1−安息香酸のN−ヒドロキシサクシンイミドエステルの詳細と,オリゴヌクレオチドを標識するための前記化合物の使用の詳細は,実施例7及び実施例8に提供されている。しかし,当業者には,そのような標識がオリゴヌクレオチドの適当な位置に付着し,その付着がオリゴヌクレオチドの5’末端に限定されないことが理解できるだろう。上記の電気化学的な標識の合成及び付着の詳細に関しては,EP1481083を参照されたい。これは,参照により本明細書に組み込まれる。
【0161】
短プライマー及び短プローブの使用
ハイブリダイゼーションに関する,本発明のすべての側面のある態様において,特にプライマーのアニーリング温度を上昇させるステップがとられる場合には,プライマー及びプローブは上記で特定したのものよりも短くてもよい(出願人は特に上記した長さ及び範囲よりも短い長さの1,2,3,4,又は5個のヌクレオチド残基を意図している)。
【0162】
短プライマー及び短プローブの使用は,小溝結合剤分子部分(minor groove binder moieties)及びLNA(lock nucleic acids)(固定化核酸(locked nucleic acids)又はLNAsとしても知られている)を利用することによって容易になり,プライマー及びプローブの熱安定性を向上させ,あるいはプライマー又はプローブのアニーリング温度を上昇させる。上記で開示される全ての側面と,また上記に開示されるようなプローブ及びプライマーと組み合わせて,本発明の一部としてそのような修飾を使用することを意図しているが,上記で特定されるものから5残基短縮したオリゴヌクレオチドの長さと範囲とを組み合わせることも意図している。すべての側面において本発明は短プライマー及び短プローブの使用を意図している。これは,小溝結合剤分子部分及び/又はLNAを本明細書に記載のプライマー及びプローブと併用することで熱安定性を容易に向上させる。本明細書に記載のプライマー及びプローブは,小溝結合剤分子部分及び/又はLNAの使用により熱安定性を向上させる専用のプライマー及びプローブほど,小溝結合剤分子部分及び/又はLNAの使用により熱安定性を向上させない。
【0163】
固定化核酸(Locked nucleic acids)
LNAの最近の評論についてはDevor (2005) Integrated DNA technologies technical bulletin “Locked Nucleic Acids (LNAs)”及びそれらの参考文献を参照されたい(これらは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0164】
LNAは,1つ以上の修飾RNA又はDNAヌクレオチド残基を(通常のDNA又はRNA残基と共に)組み込んだ核酸である。修飾残基における過剰な共有結合性架橋は,2’炭素と3’炭素をつなぎ,通常A型RNA及びDNAに見られるような,3’−endoの立体配座にリボース糖を“固定(locks)”する。
【0165】
用語LNAは,一部又はすべての残基位置で固定化残基を組み込んだすべての核酸が含まれる。固定化は,糖部分(sugar moiety)の2’炭素と3’炭素をつなぐ任意の化学的架橋によって達成してもよい。好ましくは,固定化は2’−O,4’−Cメチレン結合により達成される。
【0166】
LNAsは,対応するDNA又はRNAオリゴマーと比較して融解温度を約5℃上昇させても,向上した熱安定性を示す。融解温度を上昇させるため,LNAプライマー及びプローブがヘアピン構造を形成し,効率的なPCR反応に悪影響を及ぼすリスクが増大する。したがって,優れたプライマー及びプローブの設計は,より一層不可欠となり,本願における,SEQ ID NO:5,6,7,11,12,及び14のもので,必要に応じて各末端から1,2,3,4,又は5個の残基を短縮させたものに対応するLNAプライマー及びプローブが,特に好ましい。
【0167】
LNAsは容易に調製することができ,複数の業者が市販している。
【0168】
小溝結合剤分子部分(Minor groove binding moieties;MGB)
本発明は,そのすべての側面において,MGBに結合した核酸プローブ及びプライマー(LNAプローブ及びプライマーを含む)に関連している。
【0169】
MGBは,プローブ又はプライマーと標的の間で形成する二重らせんの副溝に結合する等軸晶構造の基である。それらは二本鎖領域を安定させ,融解温度を上昇させ,プローブ/プライマーの特性を向上させ,より短いプローブ/プライマーの使用を可能にする。MGBと結合方法の詳細については,Katyavin et al. (2000) Nucleic Acid Res. 28(2):655−661,及びその中の参考文献を参照されたい。これらは参照により本明細書に組み込まれる。小溝結合剤分子部分は容易に調製し,プライマー及びプローブに付着させることができ,複数の業者が市販している。
【0170】
サンプル
本発明の様々な側面において,サンプルは組織及び体液などの臨床サンプルを含み,血漿,血清,分泌物,精液,精漿,涙液や唾液に限られない。また,用語“サンプル”は,臨床サンプルの誘導体を含み,例えば,ろ過,凝固,消毒,放射線照射又は分離したサンプル,及び使用した医療器具又は被験者にあらかじめ接触した包帯材も含む。前記被験者は,好ましくはヒトである。
【実施例】
【0171】
本発明を以下の非限定的な実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0172】
実施例1 PCRプライマーの選択
染色体のアンプリコン及びプライマーのBlastn解析
クラミジア・トラコマチスの18個の染色体アンプリコンを同定するBlastn解析を行った。解析したすべてのアンプリコンは,染色体アンプリコン18がクラミジア・ムリダルムに類似性を示したのを除いて,クラミジア・トラコマチス以外少しもヒットを示さなかった。プライマーセットは,他の種といくつかの類似性を示した。これはそのような短い配列を用いて類似性探索を行ったためと予想される。しかし,排他性テストを実施すればこれが重要であるか否かが明らかになる。
【実施例2】
【0173】
実施例2 対称PCRを用いたプライマーの初期テスト
プラスミド標的
プラスミドのアンプリコン(増幅産物)1,3,4,5,6,7及び8用のプライマーセットを得た。これらのプライマーセットをスクリーニングするために,表1のそれぞれのプライマーについて,反応あたり10000EBsを用いる対称PCR反応を3重にセットアップした。
【0174】
[表1]
対称PCR反応のセットアップ

【0175】
3重のそれぞれのプライマーセットにネガティブ反応を含ませた。PCRの反応条件は以下のとおりであった。
1,94°Cを1分
2,94℃を30秒
3,58℃を30秒
4,72℃を1分
5,手順2から4を39サイクル繰り返す
6,72℃を3分
7,16°Cで保持
【0176】
PCRに続いて,それぞれの産物の10μLを,Safeviewで染色した2%アガロースゲルに注入した。電気泳動し,UV光によりゲルを可視化した後,ゲル上に存在するバンドによって示されるように,全てのプライマーセットが,テストした条件下で標的領域を増幅させることが判明した。プラスミドアンプリコン3,5及び7に関する3つのプライマーセットが,最高のバンド強度を与えた。ネガティブ反応はバンドを示さなかった。
【0177】
染色体標的
アンプリコン1,5,9,17及び18用のプライマーセットを得た。これらのプライマーセットをスクリーニングするために,上記表1のそれぞれのプライマーについて,反応あたり10000EBsを用いる対称PCR反応を3重にセットアップした。それぞれのプライマーセットについて,ネガティブ反応を3重に含めた。PCRの反応条件は上記のとおりであった。
【0178】
PCRに続いて,それぞれの産物の10μLを,Safeviewで染色した2%アガロースゲルに注入した。電気泳動し,UV光によりゲルを可視化した後,ゲル上に存在するバンドによって示されるように,全てのプライマーセットが,テストした条件下で標的領域を増幅させることが判明した。アンプリコン9及び19の染色体プライマーセットが最高のバンド強度を与え,残りのセットはやや弱い強度を示し,染色体アンプリコン17はその他のものよりもわずかに優れていた。
【実施例3】
【0179】
実施例3 非対称PCR及び電気化学検出を用いた検出限界(LoD)テスト
プラスミド標的
非対称PCRとそれに続く適切なアンプリコン特異的プローブの付加,T7エキソヌクレアーゼによる消化,及び電気化学的な終点検出にプラスミドのプライマーセット3,5,7を使用して,クラミジア・トラコマチスEBsのLODを測定する実験を行った。下記の表2に従って,反応あたり10倍に希釈した100000EBsから1EBsを用いる非対称PCR反応を,それぞれのプライマーについて3重にセットアップした。
【0180】
[表2]
非対称PCR反応のセットアップ

【0181】
3重のそれぞれのプライマーセットにネガティブ反応を含ませた。PCR反応条件は実施例1で述べたとおりである。
【0182】
PCRに続いて,20μLの反応液を,下記の表3の5μLのマスターミックス(mastermix)に加えた。
【0183】
[表3]
電気化学的検出マスターミックス

【0184】
反応は37℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後,25μLのすべてを,以下のAutolabパラメータ(Autolab parameters)を用いてボルタンメトリーで測定した。
前処理 条件付け電位(V):0,持続時間:0,析出電位:0,持続時間:0,平衡時間:0,
測定 測定後の細胞:X,変調時間(>=0.0025):0.04,間隔時間(>=0.105):0.1,
電位 初期:−0.1,終期:0.5,ステップ:0.003,振幅変調:0.04995,待機電位(V):0,
前処理 しきい値での停止平衡(Stop equilibration):なし,平衡しきい値(A):0.05,
その他 スキャン数:1
【0185】
それぞれのケースで,150から250mVのピーク高さを記録した。
【0186】
プラスミドアンプリコン3,5,及び7に関して得られた電気化学的データは,それぞれ図1a,図1b,及び図1cに示されている。エラーバーはSD(n=3)を示す。
【0187】
得られたネガティブ値は“ピークなし(no peak)”の陰性(negative)であった。プラスミドアンプリコン3及び7に関して,3つとも再現性を盛って陽性を示したが,プラスミドアンプリコン5に関しては,3つの内の1つだけが陽性を示した。したがって,この段階でプラスミドアンプリコン5を除去し,上記のように再度3重にプラスミドアンプリコン3及び7の実験を繰り返した。これらの結果は,上記で得られたものに非常に類似していた。
【0188】
プラスミドアンプリコン7は持続的なピーク高さを示し,プラスミドプライマーセットとして使用するのが最も適していると考えられるが,クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)についても非対称PCR,T7エキソヌクレアーゼの消化,及び電気化学的検出による排他性の実験を行った。プラスミドアンプリコン7のプライマーセットは,クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)に対して陽性シグナル(平均88.05nA)をもたらしたため,クラミジア・トラコマチス特異的プライマーセットとして使用するには不向きであることが判明した。プラスミドアンプリコン3のプライマー及びプローブのセットは,陽性シグナルを示さなかったため,プラスミドクラミジア・トラコマチスの検出のための最有力候補として選定した。
【0189】
染色体標的
非対称PCRとそれに続く適切なアンプリコン特異的プローブの付加,T7エキソヌクレアーゼによる消化,及び電気化学的な終点検出で染色体アンプリコン9,17及び18のプライマーセットを使用した場合に,C.トラコマチスEBsのLODを測定する実験を行った。上記表2に従って,反応あたり10倍に希釈した100000から1EBsを用いる非対称PCR反応を,それぞれのプライマーセットについて3重にセットアップした。PCR後,20μLの反応液を,上記表3に示される5μLのマスターミックスに加えた。反応は37℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後,25μLのすべてを,上記のパラメータを使用してボルタンメトリーで測定した。それぞれのケースで,150から250mVのピーク高さを記録した。
【0190】
染色体アンプリコン9,17,及び18に関して得られた電気化学的データはそれぞれ図2a,図2b,及び図2cに示されている。エラーバーはSD(n=3)を示す。データポイントは,得られたネガティブ値の平均を示している。
【0191】
上記で得られたデータは,テストした全てのアンプリコンについて,反応あたり1000EBs未満の使用まではピーク高さが減少しないことが示された。このレベルに続いて反応あたり100EBでは,染色体アンプリコン8及び18のピーク高さは約半分に減少する。染色体アンプリコン17については,この減少はやや小さくなっている。染色体アンプリコン9のデータは,反応あたり10EBsでのピーク高さがネガティブサンプルに見られるものと類似していることを示している。これらのデータは,ローエンドでの差異に関して,染色体アンプリコン17が染色体アンプリコン18よりも優れた性能を有し,これらのアンプリコンは共に染色体のアンプリコン9よりも高い性能を有することを示している。
【0192】
ローエンドでの検出を向上させるために,本発明者が使用する好ましい方法の1つは,MgClの濃度を変化させることである。この実験は,反応ごとに0.5mMずつ増加させた2.0mMから5.0mMの最終MgCl濃度と,10000のEBsを使用して非対称PCRを行い,次いでプローブの付加,T7による消化及び電気化学的測定を行った。得られたデータは,5.0mMの最終MgCl濃度が,テストした条件下で最大のピーク高さを得ることを示した。このMgCl濃度がすべてのEBレベルにわたって適用されることを確認するために,第2のLOD実験を,5.0mMのMgClを用いて染色体アンプリコン17で行った。結果は,図2dに示されている。エラーバーはSD(n=3)を示す。データポイントは,得られたネガティブ値の平均を示している。
【0193】
データは,反応あたり1000EBsで,5.0mMのMgClを用いてPCRを行う場合,反応当たり10000又は100000EBsの場合と比較して,最適な性能がもたらされることを示している。1000EBsに次いで,1EBではピークの高さは54.97nAの平均値まで減少する。これらをもとに,染色体アンプリコン17(SEQ ID NO:1)のプライマー及びプローブセットを,クラミジア・トラコマチス染色体標的検出の最有力候補として選定した。フォワード及びリバースプライマーとプローブの配列は,それぞれ,SEQ ID NO:6,7,及び5に示されている。
【実施例4】
【0194】
実施例4 排他性と包括性の検証
イントロダクション
クラミジアアッセイはクラミジア・トラコマチスにのみ高い特異性を有し,他の種の細菌や他の生物とは交差反応性が見られないことが必要である。実施例1から実施例3で説明したプライマー及びプローブの設計段階で,生物情報学的に交差反応がなかったことが示されたが,実際の微生物菌株を用いて実証する必要があった。
【0195】
これとは反対に,このアッセイがクラミジア・トラコマチスの生殖器血清型の15種全てを検出できることを示し,さらに他の血清型(眼又は関節炎の病気を引き起こすもの)が,アッセイのプライマーセットで増幅できることも確認する必要があった。
【0196】
細菌パネル由来のDNAサンプルを,プラスミドとゲノムプライマーの両方に対してテストし,PCRとプローブ−T7の終点検出により特異性(排他性)を検証した。
【0197】
次に,包括性を検証するために,クラミジア・トラコマチス血清型の15種すべてを(EBsとして)採取し,そのDNAを抽出し,精製し,定量化した。その後,すべての血清型が同様のLODを有していることを証明するために,プラスミド及びゲノムプライマーセットを用いてDNAのコピーを3重にテストし,続いてプローブ−T7エキソヌクレアーゼによる終点検出を行った。
【0198】
排他性テスト
イントロダクションで記載したDNA群について,ゲノムプライマーセットを2重にテストした。PCRとプローブ−T7の検出後に,シグナルのピーク高さの出力を測定した。テストごとにPCRコントロールを用いて,数回に分けてテストを行った。
【0199】
染色体アンプリコン17の結果
染色体アンプリコン17を標的にするプライマー及びプローブを,ゲノムDNA群に対してテストした。2重実験の結果を以下に示す。
【0200】
【表A】

【0201】
【表B】

【0202】
【表C】

【0203】
【表D】

【0204】
【表E】

【0205】
【表F】

【0206】
【表G】

【0207】
【表H】

【0208】
【表I】

【0209】
【表J】

【0210】
総体的結論−排他性
プライマーセットは共に交差反応を示さず,クラミジアアッセイに非常に特異的であることが示された。
【0211】
包括性テスト
15種のC.トラコマチス血清型(A,B,Ba,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L1,L2,L3)から得られたEBsを融解し,そのDNAを精製し,定量化した。上記したプライマーとプローブ(SEQ ID NO:6,7,及び5)を使用するPCR反応における包括性について,各血清型の50000,500,50,又は5つのゲノムコピーをテストした。プローブ−T7を使用して終点検出した後,シグナルのピーク高さを測定した。
【0212】
染色体アンプリコン17の包括性の結果
[表K]

【0213】
【表L】

【0214】
【表M】

【0215】
総体的結論−包括性
ゲノムのアンプリコン17のプライマー(SEQ ID NO:6及びSEQ ID NO:7)とプローブ(SEQ ID NO:5)によりすべての血清型を増幅させ,5コピーの血清型D,J,及びKを除いて電気化学的に検出することができた。ゲノムのアンプリコン17のプライマー及びプローブセットを用いた血清型Gも同様に記録され,50コピーのD,J及びKは増幅できることを示している。
【実施例5】
【0216】
実施例5−内部コントロールとして使用するペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)標的遺伝子の同定及び特有性
NCBI PubMedのウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/)から,5.064Mbのペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)ゲノム(アクセッション番号:BX950851)をダウンロードした。ペクトバクテリウム・アトロセプティカムゲノムは,仮定的遺伝子や,遺伝子名,機能及び遺伝子位置などで十分にアノテートされている。調査のために3つの遺伝子を選択した。
【0217】
これらは,rfaH(長さ489bpの塩基対位置230144で,リバース方向から開始し,転写活性化タンパク質をコードする)と,mgsA(長さ458bpの塩基対位置2008746で,リバース方向から開始し,メチルグリオキサールシンターゼ(methylgloxal synthase)をコードする)と,長さ387bpの塩基対位置143610で,リバース方向から開始し,仮定上のタンパク質(hypothetical protein),HP1をコードし,指定する遺伝子である。すべてのヌクレオチドコレクションから選別するNCBI’Blastenプログラム(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE=Nucleotides&PROGRAM=blastn&MEGABLAST=on&BLAST_PROGRAMS=megaBlast&PAGE_TYPE=BlastSearch&SHOW_DEFAULTS=on)を利用した遺伝子の照合により,見つかった唯一のヒットは,ペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)自身であり,つまり,これらの遺伝子領域を増幅するために設計したプライマーは,細菌に限らず,他の属の領域を増幅しないことが判明した。
【0218】
プライマー/プローブの設計
クローン・マネージャー・プログラム(Clone Manager program)により,ゲノムから完全長遺伝子の配列を選択した。プログラムのプライマー設計機能により,最適な長さ20塩基(許容範囲18塩基から22塩基)のプライマーセットを選択し,それぞれの遺伝子から90bpから150bpの産物を増幅した。それぞれのプライマーに適用される判定基準は,GC%が50%から60%であること,Tmが50℃から80℃であること,3’末端で3マッチ(match)未満であること,隣接する相同塩基が7個未満であること,5’末端対3’末端の安定性が1.2kcalよりも大きいか又は同等であること,3’末端で少なくとも1つのG又はCを有すること,4塩基未満で実行すること,ジヌクレオチド反復が3個未満であること,及び55℃のアニーリング温度でヘアピンにならないことである。これらの基準に基づいて,3つのプライマーセットを見出し,rfaHから124bp,mgsAから91bp及びHP1から98bpを増幅した。50%から60%のGC%,32℃から100℃のTm,5未満の隣接する相同塩基,4塩基未満の実行,3個未満のジヌクレオチド反復,及び42℃のアニーリング温度でヘアピンにならないことの基準を用いて,クローン・マネージャー・プログラムにより一本鎖DNAプローブを設計した。
【0219】
プライマー/プローブテスト
標的配列の初期増幅
アクセッション番号BAA−672の寄託されたATCC細菌に対応するペクトバクテリウム・アトロセプティカム菌株SCRI1043のゲノムDNAのPCRについて,3つのプライマーセットをテストした。下記の表4に示される反応条件と下記の表5に示されるサイクリング条件により,対称PCRを行った。
【0220】
[表4]
対称PCRテストの反応条件

【0221】
[表5]
PCRのサイクリング条件

【0222】
熱サイクリング後,増幅したPCR産物の10μlを1.5%アガロースゲルに注入した。電気泳動後,このゲルをUV光下で撮影した。対照として100bpのDNAラダーを使用するために,すべてのプライマーセットにより,これらの条件下で所望の産生物を増幅した。同一のPCR反応及びサイクリング条件下,様々な量のペクトバクテリウム・アトロセプティカムゲノムDNAで,検出限界の実験を3重に行った。2ng(366,468コピー)から総DNA量の2pg(366ゲノムコピー)のテストしたすべてのレベルでrfaHを増幅するのに対して,2ngから200fg(37ゲノムコピー)のすべてのレベルでmgsA及びHP1を検出することが判明した。適切にネガティブコントロールを含めた。
【実施例6】
【0223】
実施例6 対称及び非対称の増幅と電気化学的プローブによる検出
3つのプローブ配列のそれぞれにフェロセン標識し電気化学的プローブを合成した。対照PCR条件(上記表5参照)又は下記の表6に示される反応条件の非対照PCR条件下において,rfaH,mgsA,及びHP1のプライマーセットにより,2ナノグラムのペクトバクテリウム・アトロセプティカムゲノムのDNAを3重に増幅した。それぞれの増幅条件に設定したそれぞれのプライマーについて,ネガティブコントロール(水のみ)を3重に加えた。
【0224】
[表6]
非対称PCRテストの反応条件

* 過剰なプライマーは,rfaHリバース,mgsAフォワード,及びHP1リバースである。
【0225】
対称PCRについてのみ,各反応容量の10μlを1.5%アガロースゲルに注入し,PCR産物のサイズを可視化した。これにより,PCR産物の存在を確認した。
【0226】
下記の表7に示すように,それぞれのアンプリコンに特異的な14から151のプローブ用に適切なマスターミックスを作成した。
【0227】
[表7]
電気化学検出用マスターミックス

【0228】
5μLの適切なプローブミックスを,20μLのPCR産物に加え,混合物を37℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後,以下のAutolabパラメータを用いて,電気化学的電位を電気化学的に測定した。
前処理 条件付け電位(V):0,持続時間:0秒,析出電位:0,持続時間:0,平衡時間:0,
測定 測定後のセル:X,変調時間(>=0.0025):0.04,間隔時間(>=0.105):0.1,
電位 初期:−0.1,終期:0.5,ステップ:0.003,振幅変調:0.04995,待機電位(V):0,
前処理 しきい値での停止平衡(Stop equilibration):なし,平衡しきい値(A):0.05,
その他 スキャン数:1
【0229】
電気化学的測定値から得られた平均値(n=3)のデータを下記の表8に示す。
【0230】
[表8]
それぞれのアンプリコン/プローブセットで得られた電気化学的データの一覧

【0231】
表8に示すデータは,HP1プローブによって得られたピーク高さ,平均ピーク高さ611.33nA,がテストしたすべての他のものより高かったことを明らかにしている。これはネガティブの平均ピーク高さ53.7と共に,ポジティブシグナルとネガティブシグナルの最大限の差異をもたらしている。非対称条件におけるポジティブHP1サンプルのピーク位置は同一であり,非対称条件におけるネガティブHP1サンプルは低い標準偏差と変動係数をもたらした。mgsAのアンプリコン/プローブセットは,乏しい差異を示し,rfaHのアンプリコン/プローブセットは良好な差異を示したが,これはHP1セットで見られるほどのものではなかった。したがって,内部コントロール目的として,HP1プライマー/プローブセットを選択した。選択したフォワードプライマーはSEQ ID NO:11に対応している。選択したリバースプライマーはSEQ ID NO:12に対応している。選択したプローブは,SEQ ID NO:14に対応している。
【実施例7】
【0232】
実施例7 内部コントロールのプローブ及びプライマーセットにおける排他性の検証
イントロダクション
内部コントロールアッセイは高い特異性を有し,被験者サンプルに存在する他のDNA,例えばヒトDNA及び感染性微生物の核酸などと交差反応を起こさないことが必要である。
【0233】
PCR,プローブT7エキソヌクレアーゼの終点検出により特異性(排他性)をテストするために,SEQ ID NO:14として示されるプローブ配列と内部コントロールプライマー(SEQ ID NO:11及び12)に対して細菌パネル由来のDNAサンプルをテストした。
【0234】
結果に記載されているように,DNA群に対してゲノムのプライマーセットを2重にテストした。PCR及びプローブT7エキソヌクレアーゼ検出後,シグナルの出力によりピーク高さを測定した。テストごとにPCRコントロールを用いて,数回に分けてテストを行った。
【0235】
内部コントロールの結果
ゲノムDNA群に対して,ペクトバクテリウム・アトロセプティカムを標的にするプライマー及びプローブをテストした。2重実験の結果を以下に示す。
【0236】
【表N】

【0237】
【表O】

【0238】
【表P】

【0239】
【表Q】

【0240】
【表R】

【実施例8】
【0241】
実施例8 クラミジア・トラコマチスに対する染色体アンプリコン17のプライマー及びプローブセットのさらなるテスト
以下を組み合わせてPCRマスターミックスを作成した。
【0242】
【表S】

【0243】
マスターミックスを12.5μLのアリコートに分割した。C・トラコマチスの1000EBs,100EBs,10EBs,及び1EBsから抽出したDNAを12.5μL量加えた。次いで,UDG活性及び変性するためにサンプルをインキュベートし,続いて下記のようにPCRを行った。
【0244】
【表T】

【0245】
0.8UのT7エキソヌクレアーゼ及びSEQ ID NO:5の配列を有する9μM(最終反応濃度)の特異的プローブを用いて,増幅したサンプルを検出標的として以下のアッセイを行った。それぞれのサンプルでアッセイを3重に行った。下記を組み合わせることにより検出ミックス(detection mix)を作成した。
【0246】
【表U】

【0247】
以下のAutolabパラメータを用いて新しい電極でボルタンメトリー分析を行う前に,1.325μ1のそれぞれの検出ミックスを,11.175μ1の増幅サンプルに3重に加え,37℃で20分間置いた。
前処理 条件付け電位(V):0,持続時間:0,析出電位0,継続時間:0,平衡時間:0,
測定 測定後のセル:X,変調時間(>=0.0025):0.04,間隔時間(>=0.105):0.1,
電位 初期:−0.1,終期:0.5,ステップ:0.003,振幅変調:0.04995,待機電位(V):0,
前処理 しきい値での停止平衡(Stop equilibration):なし,平衡しきい値(A):0.05,
その他 スキャン数:1
【0248】
およそ150から200mVのピーク高さ及び正確なピーク位置を記録した。結果は図3に示されている。
【0249】
上記実験が,単一のチューブ内で2つの標的を検出するために,クラミジア・トラコマチスと内部コントロールの反応をそれぞれのプローブで同時に行うデュプレックスPCRs(duplex PCRs)の試験ではなかったことから,上記実験データは,開示されるプライマー,プローブ及び方法が“シングレックス(singlex)”反応に用いられる場合に有利であることを証明している。さらに以下の実施例を行った。
【実施例9】
【0250】
実施例9 デュプレックス試験1
方法の概要
標的検体DNAのほかに第2の検体に特異的なプライマーセットを加えて,上記詳述した最適化“シングレックス(singlex)”反応を共に繰り返した。
【0251】
結果
デュプレックス反応混合物(duplex reaction mix)の何かが,クラミジア標的の電気化学的なピーク高さを低減させることが判明した。この効果は,図4に見られる。この実験は,内部コントロールのプライマーセットの存在下及び非存在下で,かつ200pgの内部コントロールのDNAがある場合とない場合とで,ME17クラミジア染色体のプライマーセットにより行った。図4は,内部コントロールのプライマーセットの存在下でのC・トラコマチスの増幅,及び内部コントロールのDNAが存在しない単独での増幅が,C.トラコマチスのプローブによる検出で得られる電気化学的なシグナルに悪影響を与えることを明確に示している。内部コントロールのアンプリコンを電気化学的に検出するために,内部コントロールのプローブを用いて同様の実験を行った。得られたデータは,図5に示されている。
【0252】
図5では,内部コントロールのプライマーと200pgの染色体内部コントロールの標的分子を含む“シングレックス(singlex)”PCRの予想される内部コントロールの電気化学的なシグナルが,通常観察される1000nAを越えるピーク高さよりも劇的に減少していることが示されている。他のデュプレックスアッセイでは標的染色体DNAと内部コントロールとの間で干渉が観察されないことを考えると,これらのデータは興味深かった。総合すると,これらのデータは,C・トラコマチス又は内部コントロールのプライマーセットのいずれかがC・トラコマチス/内部コントロールのデュプレックスアッセイで機能していないことを指摘している。これらのデータを確認するために,内部コントロールのプライマーセットがある場合とない場合とで,C・トラコマチスを増幅させる対照PCRを行い,検出方法としてアガロースゲル電気泳動の実験を行った。ゲルの写真が図6a及び図6b(C・トラコマチスのプライマーセットのみ)と,図7a及び図7b(C・トラコマチス及び内部コントロールのプライマーセット)に示されている。
【0253】
内部コントロールのプライマーセットが他の同一のPCR反応に含まれている場合,1000IFU/反応レベルまでのみ検出でき,内部コントロールのプライマーセットが,C・トラコマチスIFUsの増幅効率を3log低下させることを示した(ゲル電気泳動による測定)。
【0254】
内部コントロールのプライマーがC・トラコマチスの検出を妨害することを証明するために,アガロースゲル電気泳動により検出したアンプリコンでさらなる対称PCR実験を行った。この実験では,内部コントロールのフォワードプライマーの存在下でC・トラコマチスを増幅させた場合に,増幅産物の正確な分子量を,C・トラコマチスの10IFU/反応レベルまで観測できることを示した。しかし,C・トラコマチスの増幅において,内部コントロールのリバースプライマーを含む場合には,C・トラコマチスの増幅の検出限界は,10000IFU/反応にまで増加した。また,ゲルの写真は,ゲル上の低分子量の濃いバンドが示すように,内部コントロールのリバースプライマーとC・トラコマチスのプライマーセットを組み合わせるPCR条件下では,強力なプライマーダイマーを形成することを示唆している。
【0255】
内部コントロールのリバースプライマーと,C・トラコマチスのフォワード及びリバースプライマーのバイオインフォマティクス分析により,アガロースゲル上でプライマーダイマーが観察されたことから,内部コントロールのフォワードプライマーとC・トラコマチスのリバースプライマーの両方の3’末端の5つの末端塩基が相補的であり,デュプレックス増幅による性能は乏しいことを示した。配列相同性を以下に示す。
【0256】
【化48】

配列相同性は,熱サイクル中のプライマーダイマーの形成によって,内部コントロールのリバースプライマーを含むデュプレックス反応ではC・トラコマチスの乏しい増幅及び検出を考慮することが仮定される。
【0257】
3’の相同性を除去するようにプライマーを再設計することなく,プライマーを設計することを決定した。内部コントロールのプライマーセットが他のDNA標的を用いる既存のデュプレックスアッセイで十分に作用することから,C・トラコマチスのリバースプライマーを再設計することを決定した。塩基を付加した後,増加するリバースプライマーのTm値にC・トラコマチスのフォワードプライマーを修正した。新規なC・トラコマチスのフォワード及びリバースプライマーは以下の配列を有していた。
【0258】
【化49】

【0259】
CTフォワードプライマーの5’末端に付加した7つの付加塩基対は,C・トラコマチス染色体のDNA鎖の連続する5’の配列になることを意図しており,そのようにプライマーを設計した。しかし,7つの付加塩基が実際には混在物に相補的であったことを意味するように,プライマー設計に誤差があった。それにもかかわらず,これは,それぞれのプライマーのTmsを互いに近づけると同時に,“旧(old)”C・トラコマチスのフォワードプライマー(SEQ ID NO:6)であらかじめ観察された性能を維持するという目的を達成しているように思われる。
【0260】
7つの相補的な塩基の代わりに,フォワードプライマーの5’末端に誤ってこれらに非相補的な7つの塩基を付加したが,内部コントロールのDNAとフォワードプライマー及びリバースプライマーによるデュプレックス反応により,C・トラコマチスのプライマーテストを進めた。最初に,対称PCRによりプライマーの適合性をチェックし,産生したアンプリコンをアガロースゲル電気泳動により分析した。驚くべきことに,この実験は,新規なC・トラコマチスのフォワード及びリバースプライマーが,図6a/bで観察されたものと同等の,1IFUの検出限界をもたらすことを示した。この反応混合物に内部コントロールのプライマーを加えた時,電気泳動による検出限界は10IFUsにわずかに増加した(電気化学的実験では1IFUを検出することが示されている)。これは図7a/bで観察されたものと比較して向上している。さらなる実験において,C・トラコマチス及び内部コントロールのプライマーセットの2つの標的染色体DNAをデュプレックス反応により非対照的に増幅させる性能をテストし,続いて,電気化学的な検出を行った。これらのデータは,図8に示されている。
【0261】
図8に示すデータは,既存の内部コントロールのプライマーセットと組み合わせた場合の修飾されたC・トラコマチスのプライマーセットが,デュプレックスPCRにより,標的との同時増幅及び電気化学的検出を可能にすることを証明している。
【実施例10】
【0262】
実施例10 デュプレックス試験2
標的DNA(18SEQ ID NO:)と完全に相補的な伸長したC・トラコマチスのフォワードプライマーの性能を評価するために追加実験を行った。
【0263】
結果
好ましい内部コントロールと共にSEQ ID NO:19のリバースプライマー及びSEQ ID NO:5のプローブをデュプレックスPCR反応に使用した時,SEQ ID NO:17のフォワードプライマーと同様の機能を有するSEQ ID NO:18のフォワードプライマーを発見した。図9は,3種類のPCRマスターミックス(master mixes)によるデュプレックス実験の比較を示している。“CT”はC・トラコマチスの値を示し,“IC”は内部コントロールの値を示し,“IFU”は感染単位を示している。
【0264】
内部コントロールの反応は,終始,SEQ ID NO:11及び12のプライマーとSEQ ID NO:14のプローブを使用した。
【0265】
C・トラコマチス反応に関して,マスターミックスAには,SEQ ID NO:6及び7のプライマーとSEQ ID NO:5のプローブを使用し,10000IFUから1000IFUの検出限界を示した。
【0266】
C・トラコマチス反応に関して,マスターミックスBには,SEQ ID NO:17及び19のプライマーとSEQ ID NO:5のプローブを使用し,10IFUから1IFUの検出限界を示した。
【0267】
C・トラコマチス反応に関して,マスターミックスCには,SEQ ID NO:18及び19のプライマーとSEQ ID NO:5のプローブを使用し,10IFUから1IFUの検出限界を示した。
【0268】
実施例9及び実施例10に示されるデータは,C・トラコマチスのSEQ ID NO:17及び18のフォワードプライマーとSEQ ID NO:19のリバースプライマーを用いる核酸増幅反応が,内部コントロールの核酸との使用及びデュプレックス反応における本発明の増幅に特に適していることを証明している。SEQ ID NO:17の配列を有するプライマーの良好な性能は,その配列が標的に不完全に相補的であることを考えれば特に驚くべきことである。
【0269】
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸配列の配列特異的検出を含む,クラミジア・トラコマチス由来の遺伝物質をサンプル中で検出する方法であって,
前記核酸配列は,以下の配列番号1(SEQ ID NO:1)又はその相補鎖に含まれる少なくとも10個の連続するヌクレオチド残基を含み,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
検出方法。

【請求項2】
請求項1に記載の方法であって,前記配列特異的検出は,核酸ハイブリダイゼーションステップを行うことを含む,方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって,前記配列特異的検出は,核酸ハイブリダイゼーションステップに続いて核酸ハイブリダイゼーションを検出するステップを行うことを含む,方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の方法であって,前記核酸配列は,前記SEQ ID NO:1に含まれる少なくとも15個の連続するヌクレオチド残基を含む,方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって,
以下のSEQ ID NO:4又はその相補鎖に含まれる少なくとも15個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列とクラミジア・トラコマチス由来の遺伝物質とのハイブリダイゼーションを含み,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
方法。

【請求項6】
請求項5に記載の方法であって,
以下のSEQ ID NO:5又はその相補鎖を有する核酸配列とクラミジア・トラコマチス由来の遺伝物質とのハイブリダイゼーションを含み,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
方法。

【請求項7】
請求項2又は請求項3に記載の方法であって,
以下のSEQ ID NO:4又はその相補鎖に含まれる少なくとも10個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸プローブとクラミジア・トラコマチス由来の遺伝物質とのハイブリダイゼーションを含み,
前記配列は最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能であり,
前記核酸プローブは小溝結合剤分子部分(minor groove binder moiety)を含むか,又はLNAである,
方法。

【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法であって,
前記配列特異的検出方法は,核酸を増幅した後,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR),転写媒介増幅,核酸配列ベース増幅(NASBA),ヘリカーゼ依存性増幅,リコンビナーゼポリメラーゼ増幅,鎖置換増幅,又はループ媒介等温増幅を用いて検出を行う,方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって,
前記配列特異的検出方法は,前記ポリメラーゼ連鎖反応を含む,方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって,
前記ポリメラーゼ連鎖反応は,フォワードPCRプライマー及びリバースPCRプライマーの使用を含み,
a)前記フォワードPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:15から選択される17個から34個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有し,かつ
b)前記リバースPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:16から選択される15個から31個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有するか,又は
前記フォワードPCRプライマーは,前記b)で定義されるリバースプライマーの相補鎖である核酸配列を有し,かつ
前記リバースPCRプライマーは,前記a)で定義されるフォワードプライマーの相補鎖である核酸配列を有するものであり,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
方法。



【請求項11】
請求項10に記載の方法であって,
前記フォワードPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:17,SEQ ID NO:18,又はSEQ ID NO:6に示される配列を有する核酸を含み,
前記リバースPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:19又はSEQ ID NO:7に示される配列を有する核酸を含む,
方法。


【請求項12】
請求項9又は請求項11に記載の方法であって,
前記ポリメラーゼ連鎖反応は,以下のSEQ ID NO:4又はその相補鎖に含まれる18個から28個の核酸残基を含む核酸配列を有する核酸プローブの使用を含み,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
方法。

【請求項13】
請求項12に記載の方法であって,
前記核酸プローブは,以下のSEQ ID NO:5に示される核酸配列を有する,方法。

【請求項14】
請求項9に記載の方法であって,
前記ポリメラーゼ連鎖反応は,フォワードPCRプライマー及びリバースPCRプライマーの使用を含み,
a)前記フォワードPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:15から選択される12個から29個,又は19個から29個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有し,かつ
b)前記リバースPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:16から選択される15個から31個の連続するヌクレオチド残基を含む核酸配列を有するか,又は
前記フォワードPCRプライマーは,前記b)で定義されるリバースプライマーの相補鎖である核酸配列を有し,かつ
前記リバースPCRプライマーは,前記a)で定義されるフォワードプライマーの相補鎖である核酸配列を有するものであり,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能であり,
前記プライマーは,小溝結合剤分子部分を含むか,又はLNAsである,
方法。


【請求項15】
フォワードPCRプライマーであって,
以下のSEQ ID NO:15から選択される17個から34個のヌクレオチド残基を含む核酸配列を有し,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
フォワードPCRプライマー。

【請求項16】
請求項15に記載のフォワードPCRプライマーであって,
以下のSEQ ID NO:17,SEQ ID NO:18,又はSEQ ID NO:6に示される配列を含む,
フォワードPCRプライマー。

【請求項17】
リバースPCRプライマーであって,
以下のSEQ ID NO:16から選択される15個から31個のヌクレオチド残基を含む核酸配列を有し,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
リバースPCRプライマー。

【請求項18】
請求項17に記載のリバースPCRプライマーであって,
以下のSEQ ID NO:19又はSEQ ID NO:7に示される核酸配列を有する,リバースPCRプライマー。

【請求項19】
核酸プローブであって,
以下のSEQ ID NO:4又はその相補鎖に示される18個から28個の核酸残基を含む核酸配列を有し,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
核酸プローブ。

【請求項20】
請求項19に記載の核酸プローブであって,以下のSEQ ID NO:5に示される核酸配列を有する,核酸プローブ

【請求項21】
フォワードPCRプライマーであって,以下のSEQ ID NO:15から選択される19個から29個の連続する核酸残基を含む核酸配列を有し,前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能であるフォワードPCRプライマー,又は
リバースPCRプライマーであって,以下のSEQ ID NO:16から選択される16個から26個の連続する核酸残基を含む核酸配列を有し,前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能であるリバースPCRプライマー,又は
核酸プローブであって,以下のSEQ ID NO:4又はその相補鎖に示される13個から23個の連続する核酸残基を含む核酸配列を有し,前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である核酸プローブであり,
前記フォワードPCRプライマー,前記リバースPCRプライマー,及び前記核酸プローブは,小溝結合剤分子部分を含むか,又はLNAsである,
フォワードPCRプライマー,リバースPCRプライマー,又は核酸プローブ。



【請求項22】
電気化学的に活性な標識に結合した,
請求項15,請求項16又は請求項21に記載のフォワードPCRプライマー,
請求項17,請求項18又は請求項21に記載のリバースPCRプライマー,又は
請求項19,請求項20又は請求項21に記載の核酸プローブ。
【請求項23】
請求項15,請求項16又は請求項21に記載のフォワードPCRプライマー,及び請求項17,請求項18又は請求項21に記載のリバースPCRプライマーを含む,
PCR成分。
【請求項24】
請求項23に記載のPCR成分であって,
請求項19,請求項20又は請求項21に記載の核酸プローブをさらに含む,
PCR成分。
【請求項25】
請求項23又は請求項24に記載のPCR成分であって,
内部ポジティブコントロールとして使用する,ペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)由来のゲノムDNAをさらに含む,
PCR成分。
【請求項26】
請求項25に記載のPCR成分であって,
前記ペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)は菌株ATCC BAA−672である,
PCR成分。
【請求項27】
請求項23から請求項26のいずれかに記載のPCR成分であって,
第2のフォワードPCRプライマー及び第2のリバースPCRプライマーを含み,
前記プライマーは,以下のSEQ ID NO:8又はその相補鎖の核酸配列内に存在する標的核酸配列とハイブリダイズするように設計されており,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
PCR成分。

【請求項28】
請求項27に記載のPCR成分であって,
a)前記第2のフォワードPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:9から選択される13個から23個の連続する核酸残基を含む核酸配列を有し,かつ
b)前記第2のリバースPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:10から選択される15個から25個の連続する核酸残基を含む核酸配列を有するか,又は
前記第2のフォワードPCRプライマーは,前記b)で定義されるリバースプライマーの相補鎖である核酸配列を有し,かつ
前記第2のリバースPCRプライマーは,前記a)で定義されるフォワードプライマーの相補鎖である核酸配列を有するものであり,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
PCR成分。


【請求項29】
請求項28に記載のPCR成分であって,
前記第2のフォワードPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:11に示される配列を有する核酸を含み,
前記第2のリバースPCRプライマーは,以下のSEQ ID NO:7に示される配列を有する核酸を含む,
PCR成分。

【請求項30】
請求項27に記載のPCR成分であって,
前記第2のフォワードPCRプライマー又は前記リバースPCRプライマーは,下記で定義されない場合は請求項項29に記載のものであり,
前記プライマーの少なくとも1つは,
a)以下のSEQ ID NO:9から選択される8個から18個の連続する核酸残基を含む核酸配列を有する,第2のフォワードPCRプライマー,及び
b)以下のSEQ ID NO:10から選択される10個から20個の連続する核酸残基を含む核酸配列を有する,第2のリバースPCRプライマーであり,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能であり,
前記プライマーは,小溝結合剤分子部分を有するか,又はLNA(LNAs)である,
PCR成分。


【請求項31】
請求項25から請求項30のいずれかに記載のPCR成分であって,
前記ポリメラーゼ連鎖反応は,以下のSEQ ID NO:13又はその相補鎖に示される18個から28個の核酸残基を含む核酸配列を有する第2の核酸プローブの使用を伴い,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能である,
PCR成分。

【請求項32】
請求項31に記載のPCR成分であって,
前記核酸プローブは,以下のSEQ ID NO:14に示される核酸配列を有する,PCR成分。

【請求項33】
請求項25から請求項30のいずれかに記載のPCR成分であって
前記ポリメラーゼ連鎖反応は,以下のSEQ ID NO:13又はその相補鎖に示される13個から23個の核酸残基を含む核酸配列を有する第2の核酸プローブの使用を伴い,
前記配列は,最大5個の残基付加,残基欠失,又は残基置換によりさらに変異可能であり,
前記核酸プローブは,小溝結合剤分子部分を有するか,又はLNAである,
PCR成分。

【請求項34】
請求項23から請求項33のいずれかに記載のPCR成分,及び
請求項1から請求項14のいずれかに記載の方法を実施するための説明書を含むキット。
【請求項35】
ペクトバクテリウム・アトロセプティカム(Pectobacterium atrosepticum)の染色体に含まれる核酸配列の配列特異的検出を含む,ペクトバクテリウム・アトロセプティカム由来の遺伝物質をサンプル中で検出する方法。



【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図7a】
image rotate

【図7b】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−514076(P2013−514076A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543913(P2012−543913)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052130
【国際公開番号】WO2011/073675
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(510306890)アトラス ジェネティックス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】