説明

微生物感染症の治療

本発明は、改良された微生物抗原ワクチン、医薬組成物、免疫原性組成物および抗体ならびに微生物感染症、特に、細菌由来(ブドウ球菌由来など)のものの治療におけるそれらの使用に向けられる。理想的には、本発明は、治療に用いるための、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントに向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
緒言
本発明は、改良された微生物抗原ワクチン、医薬組成物、免疫原性組成物および抗体ならびに微生物感染症、特に、細菌由来(ブドウ球菌由来など)のものの治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多剤耐性(MDR)は、特に、病院内で、グラム陽性菌において深刻化している問題である。細菌感染症を治療するために抗生物質および他の薬剤が広く用いられていることがそれらの薬剤に耐性を有する細菌の急速な発生につながり、多くの細菌が多剤耐性を有する。そのため、現在、そのような薬剤耐性感染症に対処するための改善された治療法を提供する必要がある。
【0003】
ブドウ球菌(Staphylococci)は球状のグラム陽性菌であり、通常、ブドウのような不規則なクラスターに配列されている。ヒトの皮膚および粘膜の正常細菌叢のメンバーであるものも存在するし、化膿、膿瘍形成、様々な化膿性感染症、さらには致命的敗血症も引き起こすものも存在する。病原性ブドウ球菌は、多くの場合、溶血させ、血漿を凝固させ、様々な細胞外酵素および毒素を産生する。
【0004】
ブドウ球菌属(The genus Staphylococcus)には少なくとも30種存在する。臨床上重要である3つの主な種は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、および腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)である。黄色ブドウ球菌はコアグラーゼ陽性であり、これにより他の種と区別される。黄色ブドウ球菌は、ヒトに対する主要な病原体である。ほとんど全ての人は一生の間に食中毒や軽度の皮膚感染症から生命を脅かす重度感染症にわたる重篤度の何らかの黄色ブドウ球菌感染症にかかる。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌は正常ヒト細菌叢であるが、とりわけ、非常に幼い患者、高齢患者および免疫不全患者において、多くの場合、埋め込み装置に関連して、感染症を引き起こすことがある。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌によって引き起こされる感染症のおよそ75%は表皮ブドウ球菌が原因である。Staphylococcus warneri、Staphylococcus hominis、およびその他の種が原因の感染症はあまり見られない。腐性ブドウ球菌は若い女性において比較的よく見られる尿路感染症の原因である。ブドウ球菌はカタラーゼを産生し、これにより連鎖球菌と区別される。S. lugdunensisも臨床的に関連があり、感染性心内膜炎の症例のおよそ5〜10%において見られる。
【0005】
関節腔内での、コラーゲンを主成分とする関節軟骨への黄色ブドウ球菌の定着は、敗血症性関節炎の発症に関与する重要な因子であるように思われる。血行性感染による細菌性関節炎は依然として深刻な医療問題である。この急速に進行する極めて破壊性の高い関節疾患は根絶することが困難である。一般に、感染した患者の50%未満は回復するが深刻な関節損傷を受ける。黄色ブドウ球菌は、血行性および続発性骨髄炎にかかっている成人患者から単離された主要な病原体である。
【0006】
入院患者において、黄色ブドウ球菌などのブドウ球菌は感染症の主な原因である。傷または留置している医療装置の初期局所感染は、敗血症、骨髄炎、乳腺炎および心内膜炎などのより重篤な侵襲性感染症に至ることがある。医療装置に関連した感染症では、移植の直後にプラスチックおよび金属の表面がフィブリノーゲンおよびフィブロネクチンなどの宿主血漿および基質タンパク質で覆われるようになる。黄色ブドウ球菌および他のブドウ球菌がこれらのタンパク質に付着するこの能力は感染の開始に不可欠である。血管移植片、静脈カテーテル、人工心臓弁、および心臓補助装置は血栓を形成し、細菌が定着しやすい。ブドウ球菌のうち、黄色ブドウ球菌が、一般的に、そのような感染について最も有害な病原体である。
【0007】
世界を通じて病院内で、感染症を治療するために現在利用可能な抗生物質の大部分に対して耐性を示す黄色ブドウ球菌分離株の著しい増加が観察されている。黄色ブドウ球菌と闘うペニシリンの開発は、感染対策および治療における大きな進歩であった。残念なことに、ペニシリン耐性生物が急速に発生し、新しい抗生物質の必要性が重視された。新しい抗生物質が導入されるたびに、黄色ブドウ球菌はβ−ラクタマーゼ、改変ペニシリン結合タンパク質、および突然変異細胞膜タンパク質で対抗し、細菌の存続を可能にしてきた。その結果として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および多剤耐性生物が発生し、世界中の病院や老人ホームに重大な足がかりを築いてきた(Chambers, H.F., Clin Microbiol Rev, 1:173, 1988; およびMulligan, M.E., et al., Am J Med, 94:313, 1993)。今日、院内感染を引き起こすブドウ球菌の菌株の半数近くは、バンコマイシンを除く全ての抗生物質に耐性があるが、バンコマイシンの効果がなくなるのも時間の問題であると思われる。
【0008】
そのため、黄色ブドウ球菌などのブドウ球菌に起因する感染症を治療するための、この細菌の抗生物質耐性菌株に対して効果がある治療用物質の必要性は依然として非常に強く急増している。
【0009】
ブドウ球菌、連鎖球菌および腸球菌などのグラム陽性病原体では、アドヘシンと呼ばれるタンパク質が、例えば、血塊への付着および外傷組織への定着を促すことにより、そのような感染を媒介する。これらの特異的な微生物表面アドヘシンはMSCRAMM(接着性マトリックス分子を認識する微生物表面成分)と呼ばれる(Patti, J., et al., Ann Rev Microbiol, 48:585-617, 1994; Patti, J. and Hook, M., Cur Opin Cell Biol., 6:752-758, 1994)。MSCRAMMは、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、コラーゲン、およびエラスチンなどの細胞外マトリックス(ECM)成分を特異的に認識し、結合する。これらのMSCRAMMは多くのグラム陽性病原体において見られ、それらのアミノ酸配列は関連しており、それらは類似のモジュール設計および共通の結合ドメイン構成を有する。
【0010】
細菌細胞表面のMSCRAMMと宿主組織内のリガンドは、鍵と鍵穴方式で相互作用し、細菌の宿主への付着が起こる。付着は、細菌の生存に必要であることが多く、細菌が宿主防御機構や抗生物質攻撃の回避を助ける。一度細菌が宿主組織への付着および定着に成功したら、それらの生理学は劇的に変化し、毒素や酵素などの損傷性成分が分泌される。さらに、付着細菌は多くの場合バイオフィルムを形成し、ほとんどの抗生物質の致死効果に急速に耐性を示すようになる。
【0011】
細菌は、様々な基質タンパク質を認識するMSCRAMMを発現することができる。MSCRAMMのリガンド結合部位は、アミノ酸配列の比較的短い隣接ストレッチ(モチーフ)によって定義されるように思われる。いくつかの異なる細菌種において類似のモチーフを見つけることができることから、これらの機能的モチーフは種間転移を受けるようである(Patti and Hook, Cur Opin Cell Biol, 6:752-758, 1994)。加えて、1つのMSCRAMMがいくつかのECMリガンドと結合することができることもある。
【0012】
MSCRAMMは、フィブリノーゲン(Fg)および/またはフィブロネクチン(Fn)などを含むタンパク質との結合により感染を媒介することができる。フィブリノーゲンおよびフィブロネクチンは血漿中に見られるタンパク質であり、止血および凝固において重要な役割を果たす。
【0013】
フィブリノーゲンは、6つのポリペプチド鎖、すなわち、2つのAα鎖、2つのBβ鎖および2つのγ鎖からなる。γ鎖のC末端部は生物学的に重要であり、血小板の付着および凝集中に血小板のインテグリンと相互作用する。黄色ブドウ球菌が標的としフィブリノーゲン依存性の細胞凝集および組織付着を起こすのもこの領域である。
【0014】
黄色ブドウ球菌は、血小板の活性化および凝集を刺激するタンパク質が発現されるいくつかの表面を有する。黄色ブドウ球菌のMSCRAMMタンパク質としては、限定されるものではないが、以下:
−フィブリノーゲン結合タンパク質クランピング因子A(ClfA);
−フィブリノーゲン結合タンパク質クランピング因子B(ClfB);
−フィブロネクチン−フィブリノーゲン結合タンパク質A(FnBPA);
−フィブロネクチン−フィブリノーゲン結合タンパク質B(FnBPB);および
−黄色ブドウ球菌表面タンパク質SasA、SasG、SasKなど
が挙げられる。
【0015】
下記の表1は、様々な黄色ブドウ球菌細胞壁アンカー型表面タンパク質の選択の概要を示している。
【表1】

a aa、アミノ酸単位でのタンパク質の長さ。
b タンパク質により認識、結合される分子成分(群)。
c ソルターゼにより認識される、C末端細胞壁選別シグナル中に存在するコンセンサスモチーフ。
d 細胞壁表面タンパク質が基質であるソルターゼ。
e TNFR、腫瘍壊死因子受容体
f 剥離上皮細胞中のタンパク質とも結合する。殺菌性脂質およびラクトフェリンに対する耐性を高める。
g 剥離鼻腔上皮細胞とも結合する。バイオフィルム形成に関与。
【0016】
他のブドウ球菌は、上記のクランピング因子または結合タンパク質と類似している表面発現タンパク質(MSCRAMM)を発現する。これらとしては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:
−表皮ブドウ球菌由来のSdrF、SdrGおよびSdrH(ここで、SdrG/Fはフィブリノーゲンを結合することが分かっている)ならびにコラーゲン。
【0017】
−Staphylococcus lugdunensis由来のFblはフィブリノーゲン結合タンパク質である。Fblは、特徴的なセリン−アスパラギン酸リピート領域を含むブドウ球菌細胞表面タンパク質群であるSdrファミリーのメンバーである。FbIのフィブリノーゲン結合ドメインは、313アミノ酸にマッピングされており、黄色ブドウ球菌由来のクランピング因子A(ClfA)の対応する領域に対して62%同一性を示す。
【0018】
他のリガンド結合タンパク質/アドヘシンには、Isdタンパク質(鉄調節表面決定因子)が含まれ、それらの全てが本質的にMSCRAMMであるわけでないが(例えば、IsdBおよびIsdH)は細菌の細胞外マトリックス成分への付着を促進し、本明細書では「MSCRAMM様タンパク質」と呼んでいる。IsdAは扁平上皮細胞への付着を促進し、フィブリノーゲンおよびフィブロネクチンに対する親和性が弱いため、厳密にはMSCRAMMと定義され得ることは知られている。
【0019】
クランピング因子A(ClfA)は、同定された最初のフィブリノーゲンγ鎖結合黄色ブドウ球菌アドヘシンである。続いて、フィブロネクチン−フィブリノーゲン結合タンパク質A(FnBPA)およびフィブロネクチン−フィブリノーゲン結合タンパク質B(FnBPB)が、Fgのγ鎖の同じC末端ペプチドセグメントを結合することが分かっている二官能性タンパク質として認められた。ClfAおよびFnBPは、ClfBを含む、グラム陽性菌において発現される全ての細胞壁アンカー型タンパク質に共通した構造特性を有している。
【0020】
例えば、クランピング因子A(ClfA)は、黄色ブドウ球菌の表在タンパク質である。ClfAは黄色ブドウ球菌の重要な毒性因子である。ClfAは、敗血症性関節炎および心内膜炎の病因となる。ClfAは、限定されるものではないが、ClfB、SdrD、SdrEなどを含む、類似の構造的/モジュール構成を有する表面結合タンパク質ファミリーの典型である。
【0021】
ClfAは、520アミノ酸のN末端Aドメイン(フィブリノーゲン結合領域)を含み、そして、このAドメインは3つの独立して折り畳まれたサブドメインN1、N2およびN3を含んでなる。このAドメインは、その後にセリン−アスパラギン酸ジペプチドリピート領域と細胞壁−および膜−貫通領域が続き、そして、ソルターゼ促進の細胞壁への固定のためのLPDTG−モチーフを含む。ClfAは、事実上全ての黄色ブドウ球菌菌株に存在する(Peacock SJ, Moore CE, Justice A, Kantzanou M, Story L, Mackie K, O´Neill G, Day NPJ (2002) Virulent combinations of adhesin and toxin genes in natural populations of Staphylococcus aureus. Infect Immun 70:4987-4996)。ClfAは、フィブリノーゲンのγ鎖のC末端と結合し、それによって、フィブリノーゲン液中での細菌の凝集を誘導することができる(McDevitt D, Nanavaty T, House-Pompeo K, Bell E, Turner N, McEntire L, Foster T, Hoeoek M (1997) Characterization of the interaction between the Staphylococcus aureus clumping factor (ClfA) and fibrinogen. Eur J Biochem 247:416-424およびMcDevitt D, Francois P, Vaudaux P, Foster TJ (1994) Molecular characterization of the clumping factor (fibrinogen receptor) of Staphylococcus aureus. Mol Microbiol 11:237-248)。
【0022】
ClfAおよび関連フィブリノーゲン結合タンパク質SdrGおよびClfBの三次元構造解析によって、これら全ての関連タンパク質のリガンド結合Aドメインが全て、3つのサブドメインN1、N2およびN3からなり、領域N2−N3に相当する残基221〜559が、フィブリノーゲンを結合する能力を保有する最も小さなトランケート(the smallest truncate)であるということが分かった。アミノ酸残基532〜538がClfAのラッチングペプチド(the latching peptide)領域に相当することも見い出されている。各サブドメインは、新規IgG型折り畳みを形成する9つのβ鎖を含んでなる。これらのタンパク質のフィブリノーゲンγ鎖ペプチド結合部位は、N2とN3との間の接合部の疎水性溝に存在する。これらのタンパク質の三次元構造間に有意な構造的類似性があることも見出されており、これは、1以上の関連アミノ酸配列、類似のモジュール設計および共通の結合ドメイン構成によるものである。
【0023】
SdrC、SdrD、SdrE、FnBPA−A(7つのアイソフォーム全て)およびFnBPB−B(7つのアイソフォーム全て)は類似のモジュール構成を有するため、PHYRE分子モデリングを用いて、これらのタンパク質は同じ三次元構造を有すると考えられた。
【0024】
IsdAおよびIsdBは、ClfまたはSdrタンパク質と同じタイプの構造ではない。これらは、リガンド結合に関与するNEATと呼ばれる新規モチーフを有する。しかしながら、NEATモチーフは、β鎖のサンドイッチ(2枚の五本鎖逆平行βシートからなるβサンドイッチ折り畳み)からなり、Ig−スーパーファミリーのメンバーであるという点においてClfまたはSdrの三次元構造と類似している(Pilpa et al “Solution Structure of the NEAT (NEAr Transported) Domain from IsdH/HarA: the Human Hemoglobin Receptor in Staplococcus aureus” J. Mol. Biol. (2006) 360:435-447)。IsdHのNEATモチーフの三次元構造は解明されており、ループ1b−2の残基は予測されている。
【0025】
黄色ブドウ球菌でのClfAの発現は、マクロファージおよび好中球の両方により食作用を妨げる(Palmqvist N, Patti JM, Tarkowski A, Josefsson E (2004) Expression of staphylococcal clumping factor A impedes macrophage phagocytosis. Microb Infect 6:188-195およびHiggins J, Loughman A, van Kessel KPM, van Strijp JAG, Foster TJ (2006) Clumping factor A of Staphylococcus aureus inhibits phagocytosis by human polymorphonuclear leukocytes. FEMS Microbiol Lett 258:290-296)。好中球ではこれはフィブリノーゲン依存性機構およびフィブリノーゲン非依存性機構の両方によるものである。対照的に、血小板は、ClfAを発現する細菌によってGPIIb/IIIaとのその相互作用を通じて活性化され、凝集に至る。これは、フィブリノーゲンが存在するときに最も効率的に遂行されるが、血小板活性化に関するフィブリノーゲン非依存性経路も存在する(Loughman A, Fitzgerald JR, Brennan MP, Higgins J, Downer R, Cox D, Foster TJ (2005) Roles of fibrinogen, immunoglobulin and complement in platelet activation promoted by Staphylococcus aureus clumping factor A. Mol Microbiol 57:804-818およびO´Brien L, Kerrigan SW, Kaw G., Hogan M., Penades J., Litt D., Fitzgerald D.J., Foster T.J. & Cox D. (2002) Multiple mechanisms for the activation of human platelet aggregation by Staphylococcus aureus: roles for the clumping factors ClfA and ClfB, the serine-aspartate repeat protein SdrE and protein A. Mol Microbiol 44, 1033-1044)。
【0026】
ClfAは、マウスにおいて敗血症性関節炎を誘発する毒性因子である(Josefsson E., Hartford O., O'Brien L, Patti JM, Foster T (2001) Protection against experimental Staphylococcus aureus arthritis by vaccination with clumping factor A, a novel virulence determinant. J Infect Dis 184:1572-1580)。加えて、ClfAをもう1つのフィブリノーゲン結合タンパク質ClfBとともに排除することにより感染初期において全身性炎症が抑えられた(Palmqvist N, Foster T, Fitzgerald R, Josefsson E, Tarkowski A (2005) Fibronectin-binding proteins and fibrinogen-binding clumping factors play distinct roles in staphylococcal arthritis and systemic inflammation. J Inf Dis 191:791-798)。
【0027】
黄色ブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質ClfAは、単離され特徴付けられており、例えば、米国特許第6,008,341号および第6,177,084号の対象である。
【0028】
ClfAとClfBは同一の構造的(三次元)構成を有し、およそ27%のアミノ酸同一性を有する。FnBPAはClfA対しておよそ25%のアミノ酸同一性を有する。
【0029】
現在、MSCRAMMに基づくワクチンは認可されておらず、市場に出ていない。第三相臨床試験ではあまり行われない、Veronate(登録商標)、ドナー選択されたブドウ球菌性の静注用ヒト免疫グロブリン(a donor-selected staphylococcal human immune globulin intravenous)(IGIV)によるClfAおよびSdrGの標的化は試験から外されていた。現在、それは、ブドウ球菌感染症の実行可能な治療であるかどうかを判定するために再評価されている。
【0030】
WO 2005/116064は、黄色ブドウ球菌の多官能性結合タンパク質であるFnBPAに向けられている。FnBPAのN末端AドメインはClfAに似ており、フィブリノーゲンを結合することが分かっている。しかしながら、FnBPAのC末端BCDドメインはフィブロネクチンも結合するため、FnBPAは二官能性MSCRAMMである。
【0031】
WO 2005/116064は、トランスグルタミナーゼの存在下では、細菌アドヘシンFnBPAとその宿主タンパク質フィブロネクチンとの間に共有結合が形成され、その関連性がずっと強くなり本質的に不可逆となるという発見に基づいている。フィブリノーゲンは血液の主成分(約3mg/ml)であり、血液中ではフィブリノーゲンは凝固カスケードの最終標的となっている。フィブロネクチンはあまり多く存在せず、各10〜15のフィブリノーゲンに対してFnは約0.3mg/mlまたは1分子である。フィブリノーゲンとフィブロネクチンは、それらが独立に循環する血液中では関連があるとは考えられていない。
【0032】
重要なことには、WO 2005/116064は、具体的には、第XIIIa因子触媒による共有結合架橋に関する。WO 2005/116064は、正電荷側鎖(すなわち、トランスグルタミナーゼ基質)を有する残基を改変した組換えFnBPAにおいて複数の変異体を単離している。さらに、WO 2005/116064は、フィブリノーゲンでなく改変された共有結合性フィブロネクチン結合特性だけを有する変異体に向けられる。加えて、この文献は、変異タンパク質とそのリガンドの結合が減少したかどうかを実験的にを証明しておらず、裏付ける免疫原性データも示していない。
【0033】
よって、グラム陽性菌の多剤耐性率やこれらの多剤耐性菌に対して好結果を示す治療およびワクチンがないことを考えると、抗生物質を使用せずにそのような細菌感染症に対処することができる代替治療は非常に価値あるものとなるであろう。
【0034】
さらに、公知の治療またはワクチンと比べての効力の改善は、とりわけ、臨床状況において、特に重要であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】米国特許第6,008,341号
【特許文献2】米国特許第6,177,084号
【特許文献3】WO 2005/116064
【非特許文献】
【0036】
【非特許文献1】Chambers, H.F., Clin Microbiol Rev, 1:173, 1988
【非特許文献2】Mulligan, M.E., et al., Am J Med, 94:313, 1993
【非特許文献3】Patti, J., et al., Ann Rev Microbiol, 48:585-617, 1994
【非特許文献4】Patti, J. and Hook, M., Cur Opin Cell Biol., 6:752-758, 1994
【非特許文献5】Peacock SJ, Moore CE, Justice A, Kantzanou M, Story L, Mackie K, O´Neill G, Day NPJ (2002) Virulent combinations of adhesin and toxin genes in natural populations of Staphylococcus aureus. Infect Immun 70:4987-4996
【非特許文献6】McDevitt D, Nanavaty T, House-Pompeo K, Bell E, Turner N, McEntire L, Foster T, Hoeoek M (1997) Characterization of the interaction between the Staphylococcus aureus clumping factor (ClfA) and fibrinogen. Eur J Biochem 247:416-424
【非特許文献7】McDevitt D, Francois P, Vaudaux P, Foster TJ (1994) Molecular characterization of the clumping factor (fibrinogen receptor) of Staphylococcus aureus. Mol Microbiol 11:237-248
【非特許文献8】Pilpa et al “Solution Structure of the NEAT (NEAr Transported) Domain from IsdH/HarA: the Human Hemoglobin Receptor in Staplococcus aureus” J. Mol. Biol. (2006) 360:435-447
【非特許文献9】Palmqvist N, Patti JM, Tarkowski A, Josefsson E (2004) Expression of staphylococcal clumping factor A impedes macrophage phagocytosis. Microb Infect 6:188-195
【非特許文献10】Higgins J, Loughman A, van Kessel KPM, van Strijp JAG, Foster TJ (2006) Clumping factor A of Staphylococcus aureus inhibits phagocytosis by human polymorphonuclear leukocytes. FEMS Microbiol Lett 258:290-296
【非特許文献11】Loughman A, Fitzgerald JR, Brennan MP, Higgins J, Downer R, Cox D, Foster TJ (2005) Roles of fibrinogen, immunoglobulin and complement in platelet activation promoted by Staphylococcus aureus clumping factor A. Mol Microbiol 57:804-818
【非特許文献12】O´Brien L, Kerrigan SW, Kaw G., Hogan M., Penades J., Litt D., Fitzgerald D.J., Foster T.J. & Cox D. (2002) Multiple mechanisms for the activation of human platelet aggregation by Staphylococcus aureus: roles for the clumping factors ClfA and ClfB, the serine-aspartate repeat protein SdrE and protein A. Mol Microbiol 44, 1033-1044
【非特許文献13】Josefsson E., Hartford O., O'Brien L, Patti JM, Foster T (2001) Protection against experimental Staphylococcus aureus arthritis by vaccination with clumping factor A, a novel virulence determinant. J Infect Dis 184:1572-1580
【非特許文献14】Palmqvist N, Foster T, Fitzgerald R, Josefsson E, Tarkowski A (2005) Fibronectin-binding proteins and fibrinogen-binding clumping factors play distinct roles in staphylococcal arthritis and systemic inflammation. J Inf Dis 191:791-798
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
従って、本発明は、そのような細菌感染症の治療のための代替の改善された治療の提供に向けられる。
【課題を解決するための手段】
【0038】
発明の説明
本発明の第1の一般的態様によれば、治療に用いるための、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントが提供される。
【0039】
好ましい実施形態によれば、治療に用いるための、フィブリノーゲンを結合する能力のない、組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合MSCRAMMタンパク質、またはそのフィブリノーゲン結合領域の少なくとも一部を含んでなるそのフラグメントが提供される。
【0040】
本発明の第2の態様によれば、個体において免疫応答を誘導しおよび/または微生物感染症にかかっている患者を治療する方法であって、前記個体に、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメント、あるいは前記組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントを含んでなるワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0041】
本発明の第3の態様によれば、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMタンパク質、またはそのフラグメントを含んでなるワクチンが提供される。
【0042】
本発明の第4の態様によれば、好ましくは、過免疫血清としての、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントに対して惹起された抗体が提供される。
【0043】
本発明の第5の態様によれば、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメント、および製薬上許容されるアジュバントを含んでなる免疫原性医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】黄色ブドウ球菌菌株Newman、ならびにclfAPYI、clfAPYII、およびclfAヌル変異体を接種したマウスにおける、関節炎指数として測定した関節炎の重篤度(A)および体重減少(B)を示す図である。3.2x10〜6.0x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株を接種した。データは、中央値(四角または中心線)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。3試験のデータをプールしている。NNewman=27〜30、NclfAPYI=30、NclfAPYII=10、およびNclfA=16〜20。
【図2】3.2x10〜6.0x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株Newman、ならびにclfAPYI、clfAPYII、およびclfAヌル変異体の接種の7〜8日後のマウスにおける腎臓内での細菌増殖を示す図である。データは、腎臓対当たりのcfuとして表している。増殖が検出されない場合には、使用した希釈によりその数を最大数とした。3試験のデータをプールしている。NNewman=26、NclfAPYI=30、NclfAPYII=10、およびNclfA=15。
【図3】5.2、5.1または3.3x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株Newman、clfAPYI変異体またはclfAヌル変異体それぞれの接種後のマウスの生存を示す図である。開始時各群N=10。
【図4】9.4、7.9、10.7または9.8x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株LS−1、ならびにclfAPYI、clfAPYIIまたはclfAヌル変異体それぞれの接種後のマウスの生存を示す図である。開始時各群N=15。
【図5】BSA、組換えClfAまたは組換えClfAPY(すなわち、ClfAPYI組換えタンパク質Aドメイン)により免疫し、2.3x10cfuの黄色ブドウ球菌Newmanを接種したマウスの生存を示す図である。開始時各群N=15。
【図6】3.2x10〜6.0x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株Newman野生型、ならびにclfAPYI、clfAPYII、およびclfAヌル変異体を接種した関節炎マウスの頻度を示す図である。3試験のデータをプールしている。NNewman=27〜30、NclfAPYI=30、NclfAPYII=10、およびNclfA=16〜20。
【図7】5.2、5.1または3.3x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株Newman野生型、clfAPYI変異体またはclfAヌル変異体それぞれを接種したマウスにおける、関節炎指数として測定した関節炎の重篤度を示す図である。データは、中央値(四角)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。NNewman=0〜10、NclfAPYI=9〜10、およびNclfA=0〜10。
【図8】5.2、5.1または3.3x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株Newman野生型、clfAPYI変異体またはclfAヌル変異体それぞれを接種したマウスにおける体重減少を示す図である。データは、中央値(中心線)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。NNewman=0〜10、NclfAPYI=9〜10、およびNclfA=0〜10。
【図9】BSA、組換えClfAまたは組換えClfAPY(すなわち、ClfAPYI組換えタンパク質Aドメイン)により免疫し、4.0x10cfuの黄色ブドウ球菌Newmanを接種したマウスにおける、関節炎指数として測定した関節炎の重篤度を示す図である。データは、中央値(四角)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。開始時各群NBSA=14、NclfAPY=14、およびNclfA=15。
【図10】野生型ClfA Aドメインタンパク質(rClfA)、ドメインN123単独のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す図であり、rClfAPYI/II(配列番号3) を生み出すために以下の実施例において改変する残基(P336およびY338)を強調表示している。以下の実施例においてワクチン接種に用いるのはこの組換えタンパク質Aドメインである。
【図11】FnBPA、ClfB、ClfAおよびSdrGタンパク質の構造の説明図を示している。領域Aはフィブリノーゲン結合領域であり、Sはシグナル配列であり、Wは細胞壁貫通ドメインであり、MはLPXTGモチーフを含む膜アンカーであり、+は正電荷残基を表し、Rはリピート領域である。ClfAでは、領域AはN123を含んでなる(示していない)。FnBPAのBCD領域(およびFnBPBのより短いCD領域−示していない)はフィブロネクチンを結合する。
【図12】第2回目の追加免疫の9日後の、ウシ血清アルブミン(BSA)、組換えClfA40−559(rClfA)、または組換えClfAPY40−559(rClfAPY)により免疫したマウスの血清サンプルにおける、組換えClfAPY40−559に対する特異的抗体応答を示す図である。第2回目の追加免疫は敗血症の誘発のために2.3x10cfu/マウスの黄色ブドウ球菌菌株Newman野生型により感染させる日の前日とした。データは、中央値(中心線)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。NBSA=13〜15、NrClfA=15、およびNrClfAPY=15。
【図13】第2回目の追加免疫の9日後の、ウシ血清アルブミン(BSA)、組換えClfA40−559(rClfA)、または組換えClfAPY40−559(rClfAPY)により免疫したマウスの血清サンプルにおける、組換えClfA40−559に対する特異的抗体応答を示す図である。第2回目の追加免疫は敗血症の誘発のために2.3x10cfu/マウスの黄色ブドウ球菌菌株Newman野生型により感染させる日の前日とした。データは、中央値(中心線)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。NBSA=13〜15、NrClfA=15、およびNrClfAPY=15。
【図14】第2回目の追加免疫の9日後の、ウシ血清アルブミン(BSA)、組換えClfA40−559(rClfA)、または組換えClfAPY40−559(rClfAPY)により免疫したマウスの血清サンプルにおける、組換えClfAPY40−559に対する特異的抗体応答を示す図である。第2回目の追加免疫は敗血症性関節炎の誘発のために4.0x10cfu/マウスの黄色ブドウ球菌菌株Newman野生型により感染させる日の前日とした。データは、中央値(中心線)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。NBSA=14〜15、NrClfA=15、およびNrClfAPY=15。
【図15】第2回目の追加免疫の9日後の、ウシ血清アルブミン(BSA)、組換えClfA40−559(rClfA)、または組換えClfAPY40−559(rClfAPY)により免疫したマウスの血清サンプルにおける、組換えClfA40−559に対する特異的抗体応答を示す図である。第2回目の追加免疫は敗血症性関節炎の誘発のために4.0x10cfu/マウスの黄色ブドウ球菌菌株Newman野生型により感染させる日の前日とした。データは、中央値(中心線)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。NBSA=14〜15、NrClfA=15、およびNrClfAPY=15。
【図16】第2回目の追加免疫の9日後の、ウシ血清アルブミン(BSA)、組換えClfA221−559(rClfA221−559)、または組換えClfAPY221−559(rClfAPY221−559)により免疫したマウスの血清サンプルにおける、組換えClfAPY221−559に対する特異的抗体応答を示す実施例2の図である。データは、中央値(中心線)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。NBSA=15、NrClfA221−559=14〜15、およびNrClfAPY221−559=14〜15。
【図17】第2回目の追加免疫の9日後の、ウシ血清アルブミン(BSA)、組換えClfA221−559(rClfA221−559)、または組換えClfAPY221−559(rClfAPY221−559)により免疫したマウスの血清サンプルにおける、組換えClfA221−559に対する特異的抗体応答を示す実施例2の図である。データは、中央値(中心線)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。NBSA=15、NrClfA221−559=14〜15、およびNrClfAPY221−559=14〜15。
【図18】第2回目の追加免疫の9日後の、組換えClfAPY221−531(rClfAPY221−531)、により免疫したマウスの血清サンプルにおける、組換えClfA221−531に対する特異的抗体応答を示す実施例3の図である。データは、中央値(中心線)、四分位範囲(箱)、および80%中央範囲(ひげ)として表している。NrClfA221−531=14〜15。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
本明細書において、「アドヘシン」、「MSCRAMM」および「細胞壁アンカー型タンパク質」という用語は、互いに代替可能であり、あらゆる微生物由来リガンド結合タンパク質を含むと理解されるであろう。理想的には、これらのタンパク質は、フィブリノーゲン、ヘムまたはヘモグロビン、ハプトグロビン−ヘモグロビン、へミン、コラーゲンなどのリガンドを結合する。「MSCRAMM様」タンパク質という用語は、Isdタンパク質などの、前述のMSCRAMMタンパク質と、関連のアミノ酸配列、類似のモジュール設計および/または共通/類似の結合ドメイン構成を有するタンパク質またはアドヘシンを含むように意図されている。理想的には、MSCRAMM様タンパク質は、類似の結合ドメイン構成/モジュール設計を有する。加えて、MSCRAMM様タンパク質は、MSCRAMMタンパク質と少なくとも50%、好ましくは60%、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは95%、さらに好ましくは99%以上のアミノ酸配列同一性を有し得る。
【0046】
また、本明細書において言及される同一または相同率はいずれも、配列の全長に対し、利用可能な従来の方法を用いて決定されることも理解されるであろう。
【0047】
「微生物(micro-organism)」、「微生物(microbe)」、「微生物の(microbial)」などという用語は、限定されるものではないが、細菌、真菌、ウイルス、酵母および/または糸状菌を含む生物を含む。
【0048】
「免疫学的に有効な量」という用語は、B細胞および/またはT細胞応答を誘導することができる量を含む。
【0049】
本発明の第1の一般的態様によれば、治療に用いるための、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのリガンド結合領域の少なくとも一部を含んでなるそのフラグメントが提供される。そのような組換えタンパク質は、敗血症、敗血症性関節炎および/または心内膜炎またはその他の類似の状態もしくは病状の治療などの微生物感染症の治療に用いてよい。そのような微生物感染症は、理想的には、ブドウ球菌またはその他の類似の微生物(micro-organisms)によって引き起こされ得るものである。
【0050】
本発明のこの態様の1つの特定実施形態によれば、前記組換えMSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントは、その宿主リガンドを非共有結合する能力が低下しているまたはその能力に欠けている。
【0051】
よって、前記組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントは、その宿主リガンドとの結合を減少させ得るまたはその宿主リガンドとの結合を抑制し得ることは理解されるであろう。
【0052】
本発明によれば、ドック、ロックアンドラッチング(Dock, Lock and Latching)(DLL)を介して結合中に起こる、前記MSCRAMMまたはMSCRAMM様タンパク質のそのリガンドとの非共有結合は、減少し得るまたは抑制され得ると仮定される。MSCRAMMのそのリガンドとの結合における第1段階は、DLLモデルを介した非共有相互作用を必要とすることが確認されている。これらはそのリガンドとの一次非共有MSCRAMM相互作用である。MSCRAMM−リガンド結合における最終段階は共有相互作用を必要とする。この特定の実施形態において、前記組換えMSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントは、改変されたドック、ロックアンドラッチングによりその宿主リガンドを非共有結合する能力が低下しているまたはその能力に欠けている。前記ドック、ロックオアラッチング段階の1以上が改変されていてよい。
【0053】
DLLモデルは、そのリガンドとの複合体のSdrGの三次元構造から解明された。ClfAは、DLL機構の軽微な変化によって作用することが現在知られている(Ganech et al (2008) “A structural model of the Staphylococcus aureus Clfa-fibrinogen interaction opens new avenues for the design of anti-staphylococcal therapeutics”. PloS Pathog 4(11); e1000226)。DLLモデルは、具体的には、リガンド結合に関与する非共有相互作用に関する。DLLモデルは、限定されるものではないが、MSCRAMMまたはMSCRAMM様タンパク質を含む、(アミノ酸の類似性/相同性によっても構造的構成相同性によっても)類似の構造様式の他の全てのタンパク質について推論される。
【0054】
MSCRAMM、特に、ClfA/ClfBに関して、最小リガンド結合ドメインが領域A亜領域N1〜N3、具体的には、変異体Dev−IgG Ig折り畳みを含んでなる亜領域N2およびN3を含んでなることも見出されている。変異体Dev−IgG Ig折り畳みは、免疫グロブリンモチーフの新規変異体であり、DE−変異体とも呼ばれる。ClfA/Bの2つのDEv−IgGドメインの間に形成された疎水性ポケットはフィブリノーゲンγ鎖のリガンド結合部位であると仮定される。本質的には、リガンドはN2とN3を分ける疎水性溝と結合する。具体的には、リガンド結合中にリガンドの折り畳まれていないペプチド成分が、N2サブドメインとN3サブドメインとの間に存在するその溝に入る。サブドメインN3のC末端のラッチングペプチドがコンホメーション変化を受け、サブドメインN2の2つのβ鎖の間に入り、このようにして、リガンドが所定位置に固定される。実際、クランピング因子中の残基Tyr256、Pro336、Tyr338およびLys389は、フィブリノーゲンγ鎖の末端残基408AGDV411を接触させるように提案されており、それらの突然変異性置換によって、フィブリノーゲンに対する親和性がないかまたは著しく低下したタンパク質がもたらされた。この特定実施形態のさらなる詳細は後に説明する。
【0055】
これらの教示は、クランピング因子、特に、ClfAに関するものであるが、類似のモジュール結合ドメイン構成を有し同じようにリガンドを結合する他のMSCRAMMおよび/またはMSCRAMM様タンパク質に同じように適用することができる。
【0056】
よって、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントを提供するために、全長タンパク質、リガンド結合ドメイン、最小リガンド結合ドメインまたはそのフラグメントを、その宿主リガンドとの結合を減少させるまたは抑制するように改変してよい。理想的には、ClfA/ClfBおよび他の類似のMSCRAMMまたはMSCRAMM様タンパク質の場合、理想的には変異体Dev−IgG Ig折り畳みを含んでなる領域A亜領域N2およびN3を、その宿主リガンドとの結合を抑制するまたは減少させるように改変してよい。そのような改変は、DLLに必要な最小リガンド結合ドメイン間を分ける疎水性溝とのリガンド結合を抑制するように設計される。
【0057】
リガンド結合ドメインにおけるそのような改変は、全長タンパク質、リガンド結合ドメイン、最小リガンド結合ドメインまたはそのフラグメントのいずれかを用いて、アミノ酸の置換または欠失により、アミノ酸レベルにおいて起こり得る。また、リガンド結合タンパク質と十分に高い相同性を有するタンパク質またはそのフラグメントも用いてよいことは理解されるであろう。本明細書において定義される高い相同性は、少なくとも50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%、さらに好ましくは95%〜99%、さらに好ましくは99%以上のヌクレオチドがDNA配列の全長にわたってマッチする場合、またはアミノ酸配列は同一ではないが、同じ機能および活性を有するタンパク質を産生するときにそのアミノ酸配列に関連して用いられる場合に存在する。高い相同性についてのこれらの説明がタンパク質の三次元構造、すなわち、モジュール結合ドメイン構成に関係することもあることは理解されるであろう。
【0058】
完全なリガンド結合タンパク質、リガンド結合ドメイン、最小リガンド結合ドメインまたはそのフラグメントを用いてよいことは理解されるであろう。
【0059】
リガンド結合ドメイン、最小リガンド結合ドメインなどのリガンド結合タンパク質の末端切断型タンパク質の使用、またはそのフラグメントの使用は、製造を容易にしタンパク質の望ましくない切断などの他の問題を克服するために有利である。例えば、最小リガンド結合ドメイン中に存在するラッチングペプチドを、欠失/除去または改変してよい。例えば、ラッチングペプチドは、ClfAでは領域Aのアミノ酸532〜538に相当し、ClfBでは領域Aのアミノ酸530〜540に相当する(Walsh et al (2004) JBC 279(49): 50691-50699)。DLLを介したMSCRAMMとのリガンド結合を抑制するようにこれらの残基を改変、置換または除去/欠失してよい。このようにして、MSCRAMMのそのリガンドとのDLL「ラッチング」は抑制される。この「ラッチング」は非共有相互作用によって起こる。1つの実施形態において、ラッチングペプチドは残る領域AのC末端アミノ酸残基とともにそのまま除去される。もう1つの実施形態によれば、ラッチングペプチド領域だけが除去される。さらにもう1つの実施形態によれば、ラッチングペプチド領域は、リガンド結合/ラッチングの減少または抑制を生じさせるアミノ酸置換を受ける。これらの説明は、DLLによりリガンドを結合する全てのMSCRAMMまたはMSCRAMM様タンパク質あるいは類似のモデルにも適用することができる。
【0060】
このようにしてMSCRAMMまたはMSCRAMM様タンパク質を改変することにより、そのリガンドを結合する能力のないリガンド結合タンパク質を提供することができ、このタンパク質は免疫化によりその野生型タンパク質よりも大きな免疫応答を刺激する。有利には、このタンパク質は全身性炎症を軽減し、それによって微生物毒性を減少させる。その結果として、そのリガンドを結合する能力に欠けているこの改変リガンド結合MSCRAMMまたはMSRAMM様タンパク質(MSRAMM-like protein)は、有利には、微生物感染症の治療に用いることができる。従って、これらの発見は、野生型タンパク質由来のワクチンまたは免疫化治療用物質と比べてより良い結果をもたらす、細菌感染症に対する新規の有益なワクチン/免疫化治療用物質を提供する。
【0061】
本発明の1つの実施形態によれば、前記リガンドはヘム、ヘモグロビンまたはフィブリノーゲンである。ハプトグロビン-ヘモグロビン、ヘモグロビン、へミン、コラーゲンなどの他のリガンドも意図され得る。
【0062】
本発明のもう1つの実施形態によれば、前記組換えMSCRAMMタンパク質は、
フィブリノーゲン結合タンパク質;または
SdrD、SdrE、SdrGおよび/もしくはSdrF
から選択される。
【0063】
フィブリノーゲン結合タンパク質は上記に詳述しており、これらとしては、限定されるものではないが、ClfA、ClfB、FnBPA、FnBPB、FbI、IsdAなどが挙げられる。SdrG/Fがコラーゲンを結合することは知られている。他のMSCRAMMとしては、SasA、SasG、SasKおよびSdrHが挙げられる。
【0064】
前記組換えMSCRAMM様タンパク質は、
IsdA、IsdB、および/またはIsdH
から選択され得る。
【0065】
フィブリノーゲン結合MSCRAMM ClfAからの発見に基づき、類似の非リガンド結合変異体を、例えば、Isdタンパク質(IsdHおよびIsdBを含む)のNEAT(NEArトランスポーター)モチーフにおいて作製することができる。上記に詳述したように、IsdAおよびIsdBは、ClfまたはSdrタンパク質と同じタイプの構造ではない。しかしながら、IsdのNEATモチーフはリガンド結合(ハプトグロビン−ヘモグロビン、ヘモグロビン、へミン)に直接関与するため、NEATモチーフの改変は、ClfまたはSdrのDLLまたはDLL様宿主−リガンド相互作用を改変するのと同じように、宿主−リガンド相互作用(the host-ligand interation)を抑制するであろう。黄色ブドウ球菌のIsdAをはじめとする多くのNEATドメイン含有タンパク質は、ヘム結合に関係している。IsdAのヘム結合特性はNEATドメイン内に含まれると仮定される。ヘムとの複合体のアポIsdA NEATドメイン結晶構造は、大きな疎水性ヘム結合ポケットを有するクラスリンアダプター様β−サンドイッチ折り畳みを示した。IsdBは2つのNEATモチーフを有し、IsdAは1つのNEATモチーフを有する。Isdタンパク質の非リガンド結合変異体は、リガンド結合について予測される残基を改変することにより、例えば、β鎖間の残基および/または疎水性ポケットを改変することにより単離してよい。加えて、NEATモチーフも、非共有宿主−リガンド相互作用をもたらすように改変してよい。
【0066】
本発明のこの態様のもう1つの実施形態によれば、個体において免疫応答を誘導しおよび/または微生物感染症にかかっている患者を治療する方法であって、前記個体に、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメント、あるいは前記組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントを含んでなるワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0067】
本発明のこの態様のもう1つの実施形態によれば、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントを含んでなるワクチンが提供される。
【0068】
本発明のこの態様のもう1つの実施形態によれば、好ましくは、過免疫血清としての、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントに対して惹起された抗体が提供される。
【0069】
本発明のこの態様のもう1つの実施形態によれば、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメントを含んでなる免疫原性医薬組成物が提供される。
【0070】
本発明の好ましい実施形態によれば、治療に用いるための、フィブリノーゲンを結合する能力のない、組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質、またはフィブリノーゲン結合領域の少なくとも一部を含んでなるそのフラグメントが提供される。
【0071】
前記組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質、またはそのフラグメントを、敗血症、敗血症性関節炎および/または心内膜炎またはその他の類似の状態もしくは病状の治療などの微生物感染症、好ましくは、ブドウ球菌感染症の治療に用いてよいことは理解されるであろう。
【0072】
前記タンパク質のフィブリノーゲン結合領域は、それがフィブリノーゲンをもはや結合しないように改変される。上述のように、この改変は、ヌクレオチドまたはアミノ酸レベルにおいて起こり得る。また、フィブリノーゲン結合タンパク質と十分に高い相同性を有するタンパク質またはそのフラグメントも用いてよいことは理解されるであろう。本明細書において定義される高い相同性は、少なくとも50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%、さらに好ましくは95%〜99%、さらに好ましくは99%のヌクレオチドがDNA配列の全長にわたってマッチする場合またはアミノ酸配列は同一ではないが同じ機能および活性を有するタンパク質を産生するときにそのアミノ酸配列に関連して用いられる場合に存在する。高い相同性についてのこれらの説明がタンパク質の三次元構造に関係することもあることは理解されるであろう。
【0073】
完全なフィブリノーゲン結合タンパク質、フィブリノーゲン結合領域、最小フィブリノーゲン結合領域、またはそのフラグメントを用いてよいことは理解されるであろう。末端切断型タンパク質またはそのフラグメントの使用は、製造を容易にしタンパク質の望ましくない切断などの他の問題を克服するために有利である。これについては以下に詳説する。
【0074】
そのようなフラグメントは、理想的には、MSCRAMMのフィブリノーゲン結合領域の少なくとも一部を含んでなるべきである。末端切断型タンパク質または例えば、リガンド−フィブリノーゲン結合領域の1以上のサブドメインだけを含んでなるそのフラグメントを使用することの利点は、分解なしに高収率でタンパク質を精製可能であることに関係している。ClfAタンパク質フィブリノーゲン結合領域は、A領域とも呼ばれ、3つの亜領域、N1、N2およびN3を含んでなる。そのため、免疫原性フラグメントは、ClfA A領域の亜領域N1、N2および/またはN3もしくはそのフラグメントを含んでなり得る。従って、例えば、ClfAに関して、前記フラグメントは領域Aのサブドメイン、N1、N2またはN3の1以上を含んでなり得る。理想的には、N2およびN3をこのトランケートとして用いてよく、このトランケートはタンパク質分解を受ける可能性が低く(プロテアーゼ切断部位はClfAおよびClfBのN1とN2の間にあると報告されている)、大腸菌(E. coli)においてより高いレベルで発現させることができる。N2およびN3はClfタンパク質の最小フィブリノーゲン結合領域である。
【0075】
次の考察はフィブリノーゲン結合タンパク質ClfAに関するものであるが、これらの説明を、他のMSCRAMM、MSCRAMM様タンパク質、特に、アミノ酸またはタンパク質構造レベルのいずれかにおいてClfAと構造的に類似している、例えば、ClfB、FbIおよびSdrF/G(これらはコラーゲンも結合する)のような他のフィブリノーゲン結合タンパク質に同じように適用することができることは理解されるであろう。さらに、これらの教示はFnBPAおよびFnBPBにも適用することができる。従って、次の説明はフィブリノーゲン結合タンパク質に関するものであるが、フィブリノーゲン以外のリガンドを結合する他のMSCRAMMまたはMSCRAMM様タンパク質に同じように適用することができる。
【0076】
本発明者らは、フィブリノーゲンを結合する能力のない、この改変フィブリノーゲン結合タンパク質、トランケートまたはそのフラグメントは免疫化により、通常フィブリノーゲンと結合するその野生型タンパク質よりも大きな免疫応答を刺激するということを偶然発見した。有利には、この改変フィブリノーゲン結合タンパク質は、黄色ブドウ球菌が発現される際に全身性炎症を誘発せず、それによって微生物毒性を減少させる。その結果として、フィブリノーゲンを結合する能力に欠けているこの改変タンパク質は、有利には、微生物感染症の治療に用いることができる。予想に反して、本発明者らは、この改変フィブリノーゲン結合タンパク質の防御効果が野生型タンパク質よりも大きいことも発見した。本発明者らは、そのような改変組換えタンパク質を含んでなる医薬組成物またはワクチンが、非改変(野生型)形態の同じ組換えタンパク質、例えばClfA、ClfB、SdrGなどを含んでなる医薬組成物またはワクチンよりも効果が高いことも発見した。
【0077】
従って、これらの発見は、ワクチン/免疫化治療用物質としても用いる場合に野生型タンパク質と比べてより良い結果をもたらす、細菌感染症に対する新規の有益なワクチン/免疫化治療用物質を提供する。
【0078】
改変タンパク質は、MSCRAMMまたはMSCRAMM様タンパク質のものでもフィブリノーゲンまたは他のリガンドの結合タンパク質のものでも、そのような微生物感染症の治療に用いるための、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化抗体またはそのフラグメントを含む抗体の作製に用いてよいことは理解されるであろう。それゆえ、そのような抗体、例えば、過免疫血清を含む組成物を提供してよく、これらの組成物をブドウ球菌感染症に感染した患者の治療に用いてもよい。
【0079】
よって、ブドウ球菌の細胞外マトリックス(ECM)との結合を阻害するため、および患者におけるブドウ球菌感染症を予防/治療するために、前記タンパク質またはその活性フラグメントを用いてよい。
【0080】
さらに、前記タンパク質またはその活性フラグメント、および前記タンパク質に対する抗体は、ブドウ球菌感染による感染症の治療に、能動または受動ワクチン接種用のワクチンの開発に有用であり、医薬組成物として傷または医療装置に投与する場合には、前記タンパク質も抗体も微生物感染症を予防する阻止薬として有用である。例えば、これらのタンパク質またはそのフラグメントは能動ワクチンに用いてよく、これらのタンパク質に対する抗体は受動ワクチンに用いてよい。
【0081】
本明細書に記載のこれらのワクチンおよび製品は先行技術に対して著しい改善をもたらし、先行技術では免疫を与えるためのMSCRAMMの一般的使用が教示されているが、本明細書に記載の予想外の改善されたワクチンまたは製品は教示されていない。
【0082】
タンパク質、DNAおよび抗体の調製は当技術分野で周知であり、本明細書では詳細に記載しない。理想的には、これらの分子の作製において従来の技術が用いられる。本発明は、対象となる核酸またはアミノ酸配列を含有する核酸構築物、対象となるタンパク質を発現させるための、そのような核酸構築物を含有する組換え宿主細胞、および免疫原性組成物を含むと理解されるであろう。
【0083】
投与では、前記タンパク質組成物を滅菌等張生理食塩溶液または他の製薬上許容されるアジュバント中に分散させてよい。
【0084】
前記ワクチンがDNAまたはタンパク質ワクチンであってよいことは理解されるであろう。
【0085】
免疫化は、DNA、タンパク質または抗体の注射によって行ってよい。あるいは、DNAを含み発現する弱毒化生物を投与してもよい。
【0086】
投与し得るDNA、タンパク質または抗体の量は、プロモーター強度への依存性、タンパク質発現および発現遺伝子の免疫原性などのいくつかの緩和要素によって決まる。新たな用途ごとに必要な所望の免疫学的有効量が得られるようにこれらを改変してよい。
【0087】
本発明のもう1つの実施形態によれば、個体において免疫応答を誘導しおよび/または微生物感染症にかかっている患者を治療する方法であって、前記個体に、フィブリノーゲンを結合する能力のない、組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質、または少なくともそのフィブリノーゲン結合領域を含んでなるそのフラグメントを投与することを含む方法が提供される。
【0088】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、フィブリノーゲンを結合する能力のない、組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質、またはそのフィブリノーゲン結合領域の少なくとも一部を含んでなるそのフラグメントを含んでなるワクチンが提供される。
【0089】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、好ましくは、過免疫血清としての、フィブリノーゲンを結合する能力のない、組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質、またはそのフィブリノーゲン結合領域の少なくとも一部を含んでなるそのフラグメントに対して惹起された抗体が提供される。
【0090】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、フィブリノーゲンを結合する能力のない、組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質、またはそのフィブリノーゲン結合領域の少なくとも一部を含んでなるそのフラグメント、および製薬上許容されるアジュバントを含んでなる免疫原性医薬組成物が提供される。
【0091】
理想的には、前記組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質またはそのフラグメントは黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌および/またはS. lugdunensis由来のものである。
【0092】
これらの実施形態のフィブリノーゲン結合タンパク質は、次のFbI、SdrF、および/またはSdrG(これらはコラーゲン結合もする)の1つから選択してよい。あるいは、フィブリノーゲン結合タンパク質を、次のフィブリノーゲン結合タンパク質クランピング因子A(ClfA)、フィブリノーゲン結合タンパク質クランピング因子B(ClfB)、フィブロネクチン−フィブリノーゲン結合タンパク質A(FnBPA)、フィブロネクチン−フィブリノーゲン結合タンパク質B(FnBPB)の1つから選択してもよい。IsdAは、付着を促進し、フィブリノーゲンおよびフィブロネクチンに対する親和性が弱いため、厳密にはフィブリノーゲン結合MSCRAMMと定義され得る。
【0093】
そのようなフィブリノーゲン結合タンパク質のフィブリノーゲン結合領域内でのヌクレオチドまたはアミノ酸の置換または欠失により、フィブリノーゲンを結合する能力のない組換えタンパク質がもたらされることは理解されるであろう。
【0094】
ClfA−フィブリノーゲン結合が、SdrGのものと類似のドック、ロックアンドラッチ(DLL)機構により起こることは解明されている。DLLモデルは上記に詳述した。ClfAの領域Aは前記タンパク質−リガンド相互作用に関与する。図11に示されるように、いくつかのフィブリノーゲン結合MSCRAMMのモジュール構造は類似しており、全てClfAと類似している領域Aを含んでいる。
【0095】
フィブリノーゲンγ鎖ペプチド結合部位は、ClfAのN2とN3との間の接合部の疎水性溝に存在する。そのため、上述の置換または欠失は、MSCRAMMタンパク質−リガンド相互作用を改変しClfAのフィブリノーゲンとの非共有結合を抑制するように設計される。
【0096】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、前記組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質はClfAのフィブリノーゲン結合欠損変異体である。この実施形態において、ClfAのフィブリノーゲン結合領域Aは、任意の手段(置換または欠失突然変異など)によってそれがフィブリノーゲンをもはや結合しないように改変される。
【0097】
理想的には、前記フィブリノーゲン結合タンパク質はClfAであるが、ClfAは多くの他のフィブリノーゲン結合タンパク質と三次元構造的類似性を有している。よって、ClfAに関するこれらの説明は、ClfB、FnBPA、FnBPB、FbI、SdrG/F、IsdAなどを含む他のMSCRAMMフィブリノーゲン結合タンパク質に同じように適用することができることは理解されるであろう。これらのタンパク質は全て類似の三次元構造を有しているため、フィブリノーゲン結合領域に対して類似の改変/突然変異を行い、同じ結果を得ることができる。
【0098】
ClfAは、520アミノ酸のフィブリノーゲン結合ドメイン(アミノ酸40〜559)を含んでなる993アミノ酸のタンパク質である。このフィブリノーゲン結合ドメインは、亜領域N1、N2およびN3を含んでなるN末端Aドメインである。本発明において、アミノ酸40〜アミノ酸559のN1〜N3にわたるフィブリノーゲン領域全体を用いてよい。あるいは、N1〜N3領域のトランケート、例えば221〜559(最小フィブリノーゲン結合領域)、221〜531(ラッチングペプチドとそれに続く残基を含まない最小フィブリノーゲン領域)などを用いてもよい。理想的には、亜領域N2およびN3、すなわち、最小フィブリノーゲン結合領域を用いてよく、これはアミノ酸残基221〜559に相当する。あるいは、これらの亜領域のフラグメントを用いてもよい。
【0099】
ClfAのN2およびN3領域を含むアミノ酸残基221〜559は、フィブリノーゲンとの結合において重要な役割を果たし、最小フィブリノーゲン結合領域であることは確認されている。本発明者らはまた、この領域のアミノ酸残基の突然変異によって、その宿主免疫防御によって認識され得る発現タンパク質がもたらされるがフィブリノーゲン結合はないため、関連毒性が減少するということも偶然発見した。ClfAのこの領域(339アミノ酸のフィブリノーゲン結合ドメイン)は、特異的三次元構造、いわゆるDE−変異体IgG折り畳みを有し、(置換または欠失などにより)改変した場合に改善された治療を提供し得る最小Fg−結合トランケートである。
【0100】
フィブリノーゲン結合活性を喪失させる改変は、ヌクレオチドまたはアミノ酸レベルのいずれかにおける置換、付加または挿入または欠失によって行ってよい。理想的には、前記置換は、前記タンパク質またはフラグメントの(例えば、いわゆるDE−変異体IgG折り畳みの)三次元構造に悪影響を与えるため、それはフィブリノーゲンをもはや結合し得ない。
【0101】
理想的には、前記ヌクレオチドまたはアミノ酸の置換は、フィブリノーゲンとの非共有相互作用を、好ましくは、フィブリノーゲン結合タンパク質の領域AのN2とN3とを分ける疎水性ポケットとのリガンド結合を抑制することにより、減少させる。あるいは、リガンド結合を抑制するために、アミノ酸532〜538に相当するラッチングペプチド領域を置換によって改変してもよくまたは欠失させてもよい。加えて、ラッチングペプチド領域と、場合によってはC末端タンパク質残基の残部とを欠いている、すなわち、アミノ酸残基532〜559を欠いているトランケート/フラグメントを用いてもよい。
【0102】
本発明のこの態様の1つの特定の実施形態によれば、ClfAのフィブリノーゲン結合欠損変異体は、アミノ酸P336をセリンとおよび/またはY338をアスパラギン酸とそれぞれ交換することによって構築してよい。残基の選択は、ClfAのX線結晶構造とプロリンまたはチロシンの個々の変化により結合親和性を低下させるという見解に基づいた。驚くべきことに、本発明者らは、この変異型ClfAタンパク質(rClfAP336 S Y338A)は免疫応答を刺激し、ずっと効果の高いワクチンまたは抗体治療の創出に用いることができるということ発見した。この置換は、全長フィブリノーゲン結合タンパク質、フィブリノーゲン結合領域、最小フィブリノーゲン結合領域、またはそのフラグメントにおいて行ってもよい。
【0103】
本発明のこの態様のもう1つの特定の実施形態によれば、ClfAのフィブリノーゲン結合欠損変異体は、アミノ酸P336をアスパラギン酸とおよび/またはY338をセリンとそれぞれ交換することによって構築してよい。前の実施形態と同様に、この変異型ClfAタンパク質(rClfAP336 A Y338S)もずっと効果の高いワクチンまたは抗体治療の創出に用いることができる。
【0104】
あるいは、フィブリノーゲンを非共有結合する能力のない組換えフィブリノーゲン結合タンパク質をもたらすために、前記改変はラッチングペプチド配列(アミノ酸532〜538)を含まないフィブリノーゲン結合領域を含んでなる欠失形態であってもよい。この実施形態においては、ラッチングペプチドとそれに続くC−末端残基とを欠いている、ClfA領域Aのアミノ酸残基221〜531を用いる。また、フィブリノーゲンのDLLを妨げるラッチングペプチドアミノ酸532〜538におけるアミノ酸置換も意図され得る。
【0105】
Clf−Sdrファミリーの全てのタンパク質がDLLモデルによってリガンドを結合することは理解される。その三次元構造のモデリングによって、全長(N1〜N3)または最小リガンド結合トランケートN2−N3、またはそのフラグメントのいずれかにおいて、ラッチングペプチドを予測しそれを欠いたトランケートを作製することができる。
【0106】
本発明者らは、これらの置換rClfAタンパク質が(欠失変異体でも置換体でもトランケートでも)毒性および疾患の転帰を軽減し、驚くべきことに、野生型タンパク質よりも全身性炎症の誘発を減少させるということ発見した。
【0107】
よって、これらの変異タンパク質による免疫化は、検証したタンパク質に基づき、変異型および野生型タンパク質の両方を認識した抗体のレベルを高め、野生型タンパク質よりも大きな免疫応答をもたらすと思われる。
【0108】
よって、フィブリノーゲンをもはや結合しないように改変されたClfAは、能動または受動免疫に有用な治療用物質候補である。このように、改変ClfAタンパク質自体をワクチンとして用いてよく、またはこの改変ClfAタンパク質対して惹起された抗体を用いてもよい。上記のように、前記ワクチンはDNAまたはタンパク質ワクチンであってよい。
【0109】
下記表に概略を示す次の配列を本発明に従って用いてよい。
【0110】

付加N残基(N末端伸長(6xHisタグおよび付加残基)は6つのHis残基の後に続いてGlyおよびSerを含んでなる。付加C末端残基は、Lysの後に続いてLeuを含んでなる(使用するプライマーまたは必要なN/C末端タグに応じて他の付加NおよびC末端残基を用いてよい)
付加N残基(6xHisタグおよび付加残基)は6つのHis残基の後に続いてGlyおよびSerを含んでなる。付加C末端残基は、Argの後に続いてSerを含んでなる(使用するプライマーまたは必要なN/C末端タグに応じて他の付加NおよびC末端残基を用いてよい))
aa残基532〜538に相当するラッチングペプチドと残りのA領域C末端残基とを含まない、すなわち、アミノ酸残基532〜559を欠いている。
【0111】
理想的には、前記組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質は、残基P336および/またはY338がセリンおよび/またはアラニンのいずれかと置換されている配列番号1〜3のいずれかによるアミノ酸配列、またはそのフラグメントを含んでなる。
【0112】
あるいは、前記組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質のフラグメントは、配列番号4〜配列番号14のいずれかによるアミノ酸配列を含んでなる。配列番号4および5は、上記表に概略を示すように、それぞれ、ClfA AドメインN1、N2、N3単独、rClfA P336S Y338AおよびrClfA P336A Y338Sに相当する。
【0113】
また、SdrGにおいて行われるラッチにおける置換に基づき、コンホメーション変化またはβ鎖相補性に欠陥があるラッチにおける置換はリガンド結合にも障害となるとも仮定される。よって、理想的には、前記置換は、ラッチングペプチドに相当するアミノ酸残基532〜538で起こり、ラッチングペプチドがコンホメーション変化を受ける能力またはリガンドを結合する能力あるいは両方に作用する。また、前記改変は、同様の結果を与えるように、アミノ酸残基532〜538(デルタラッチペプチド)を完全に除去することを含み得る。加えて、アミノ酸残基532〜559(ラッチングペプチド残基を含む)を欠いているC末端切断変異体もリガンドとの結合を生じさせるものであろう。
【0114】
しかしながら、上記に具体的に列挙したもの以外の他のアミノ酸残基を置換し得るということも意図されであろう。例えば、前記タンパク質またはそのフラグメントのフィブリノーゲン結合特性を変更するために、Glu 526、Val 527、Tyr 256およびLys 389を置換してよい。このように、結合能力を低下させるいかなる置換も意図され得る。理想的には、そのような置換または欠失は、相同体、ClfAのVal527およびClfBのN526などの疎水性溝においてリガンドを結合するために疎水性ポケットおよび関連機構を生じさせる。ClfBでは、Q235およびN526が研究され、結合を減少させることが示された。FnBPAでも同様の研究が行われ、N304およびF306がFg結合に重要であることが示された。このように、これらのアミノ酸残基における突然変異はリガンド結合に作用するであろう。
【0115】
これらの説明を、ClfB、SdrG、FnBPA、FnBPBなどの他のフィブリノーゲン結合タンパク質に同じように適用することができることは理解されるであろう。よって、前記治療(ワクチン、抗体または医薬組成物など)は、完全フィブリノーゲン結合領域またはそのフラグメントを含んでなり得る。
【0116】
本明細書において、「含んでなる(comprise, comprises, comprised and comprising)」という用語またはそのあらゆる語尾変化および「含む(include, includes, included and including)」という用語またはそのあらゆる語尾変化は完全に互いに代替可能であると考えられ、それら全てには可能な限り広範な解釈が与えられるべきである。
【0117】
本発明は以上に記載した実施形態に限定されず、請求項の範囲内において構成および細部の両方を変更してよい。
【0118】
ここで、以下の限定されない図面および実施例を参照して本発明を説明する。
【0119】
図1〜図15は実施例1の結果を示している。
【実施例】
【0120】
実施例1
N1、N2およびN3を含んでなるrClfA A領域トランケート(アミノ酸40−559)
材料と方法
実施例に示す括弧内の数字で表した参考文献の詳細はこのセクションの最後に記述する。
【0121】
マウス
NMRIマウスは、Scanbur BK(Sollentuna, Sweden)から入手し、動物施設(the Department of Rheumatology, University of Goeteborg, Sweden)において飼育した。試験についてGoeteborg動物実験倫理委員会の承認を受けた。マウスは、12時間の明暗サイクルで1ケージに10動物まで収容し、標準的な研究用食餌および水を自由に摂取させた。試験開始時においてこれらの動物は6〜16週齢であった。
【0122】
細菌株
動物を感染させるために、黄色ブドウ球菌野生型菌株Newman(14)およびLS−1(11)ならびにその構築誘導体を使用した。菌株NewmanにおいてclfA P336SY338A(clfAPYI)およびclfA P336AY338S(clfAPYII)誘導体を構築し、菌株LS−1に形質導入した(下記参照)。欠失変異体Newman clfA2::Tn917変異体DU5876(3)およびLS−1 clfA2::Tn917変異体(J.R. Fitzgerald et al.、非公開)も使用した。細菌を血液寒天培地プレートで48時間増殖させ、回収し、5%(wt/vol)BSA(Sigma Chemicals)および10%(vol/vol)ジメチルスルホキシドを含有するPBS中で−20℃で凍結保存した。動物への注射前に、細菌懸濁液を解凍し、PBSで洗浄し、適当な細胞濃度に調整した。各抗原投与に関し、血液寒天培地プレートで培養しコロニーを計数することにより生存能力のある細菌の数を測定した。
【0123】
黄色ブドウ球菌NewmanおよびLS−1におけるclfAPYIおよびclfAPYII突然変異の構築
この試験では、アミノ酸40〜559に相当する、N1、N2およびN3を含んでなる全長ClfA A領域トランケートを使用した。以下の説明および図面において:
−ClfAは、rClfA40−559(配列番号3)とも呼ばれ得る;
−ClfA P336SY338Aは、clfAPYI、rclfAPYまたはrclfAPYI(すなわち、clfAPYI40−559)(配列番号4)とも呼ばれ得る;および
−ClfA P336AY338Sは、clfAPYII、rclfAPYII(すなわち、clfAPYII40−559)(配列番号5)とも呼ばれ得る。
【0124】
clfAに突然変異P336SおよびY338Aを含むpCF77 PYの1.02kb PstI−BamHIフラグメント(Loughman et al., 2005)をpBluescriptII SK−(Stratagene)にクローニングした。このプラスミドをHindIIIで線状化し、HindIII−cut pTSermC(J. Higgins、非公開)に連結し、P336SおよびY338A置換を含む温度感受性大腸菌−黄色ブドウ球菌シャトルベクターであるプラスミドpARMを作製した。
【0125】
336およびY338を置換することによって機能的または免疫反応性エピトープが偶然にも生み出される危険性を低下させるために、本発明者らは第2の変異体を作製した。この第2の変異体では置換順序を逆にし、P336AおよびY338Sを得た。これを作製するために、pARMと類似しているがP336AおよびY338S置換(the P336A and Y338S subsitutions)を含むプラスミドpJH2を作製した。pCF77 PY(6)を作製するのに使用した同じフランキングプライマーと、異なるオーバーラッピング変異プライマー対:

(突然変異は太字にし下線を施している)を使用してオーバーラッププライマーPCRを利用し、pCF77 PYIIを作製した。このプラスミドの1.02kb PstI−HindIIIフラグメントを上記のように使用し、P336AおよびY338S置換を含む温度感受性大腸菌−黄色ブドウ球菌シャトルベクターであるpJH2を作製した。
【0126】
pARMとpJH2の両方をエレクトロポレーションによりRN4220(15)に導入し、続いてファージ85(16)を使用して黄色ブドウ球菌Newman(14)およびLS−1(11)に形質導入した。これらの菌株において、これらのプラスミドは染色体に挿入された後切除されるように促され、形質転換体の一部の染色体内に突然変異が残り、Newman clfAPYI、Newman clfAPYII、LS−1 clfAPYIおよびLS−1 clfAPYIIが生み出された。形質転換体をプラスミドの喪失およびフィブリノーゲン結合活性の喪失についてスクリーニングした。clfAプローブを使用したサザンハイブリダイゼーションによりclfA遺伝子の完全性を確認した(データは示していない)。抗ClfA領域Aポリクローナルウサギ抗血清を使用したウエスタン免疫ブロット法により免疫反応性タンパク質(ClfAPY)の発現を確認した(データは示していない)。突然変異を、ゲノムDNAのKpnI−BamHIフラグメント全体のPCRおよびそれらの産物の商業的配列決定により確認した。配列決定された菌株LS−1のclfA遺伝子の約700塩基は、菌株NewmanのNewman clfA遺伝子の対応する塩基と同一であった。
【0127】
組換えClfAおよびClfAPYの製造
これまでに報告されているように(17)、His−タグ付き組換えClfA領域A、ドメインN123(アミノ酸40−559)をpCF40から製造し、陰イオン交換カラムによる研磨段階を追加した。プラスミドpCF77 PY(6)を鋳型として使用してclfAPYIドメインN123をpQE30にクローニングし、pCF40PYを作製した。rClfAに関して記載したように、このプラスミドを使用して、組換えClfAPYもニッケルアフィニティークロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィー(anion exchange chromatograpy)により製造した。濃縮および凍結乾燥の前に溶出液をPBSで透析し、PBSを2回交換した。
【0128】
敗血症性関節炎および敗血症試験
試験1〜3では全てのマウス(各群n=10)を菌株Newmanにより感染させ、関節炎を誘発させた。試験4および5では、マウスを菌株NewmanおよびLS−1それぞれにより感染させ、敗血症を誘発させた(各群n=10)。
【0129】
試験1 マウスを3.5x10cfu/マウスの黄色ブドウ球菌菌株Newmanまたは4.3x10cfu/マウスのNewman clfAPYI変異体(両方とも200μl PBS中)の静脈内注射により感染させた。臨床的関節炎および体重変化を第7日目まで追跡調査した。第8日目にマウスを犠牲にし、細菌の腎臓増殖を評価し、血清IL−6および総IgG値を測定した。前後肢の関節において滑膜炎および骨破壊を組織学的に調査した。
【0130】
試験2 マウスを5.0x10cfu、6.0x10cfuまたは4.3x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株Newman、clfAPYI変異体またはNewman clfA::Erm(clfAヌル変異体)それぞれにより感染させた。臨床的関節炎および体重変化を第7日目まで追跡調査した。第7日目にマウスを犠牲にし、細菌の腎臓増殖を評価し、血清IL−6および総IgG値を測定した。前後肢の関節において滑膜炎および骨破壊を組織学的に調査した。
【0131】
試験3 マウスを4.7x10cfu、3.2x10cfu、3.9x10cfuまたは4.8x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株Newman、clfAPYI変異体、Newman clfAPYII変異体またはNewman clfAヌル変異体それぞれにより感染させた。臨床的関節炎および体重変化を第7日目まで追跡調査した。第8日目にマウスを犠牲にし、細菌の腎臓増殖を評価した。
【0132】
試験1〜3の結果はよく似ていたため、データをプールし、合わせて示した。
【0133】
試験4では、マウスに5.2x10cfu、5.1x10cfuまたは3.3x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株Newman、clfAPYI変異体またはclfAヌル変異体それぞれを静脈内注射した。死亡率、体重変化および臨床的関節炎を第10日目まで追跡調査した。
【0134】
試験5では、マウスを9.4x10cfu、7.9x10cfu、10.7x10cfuまたは9.8x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株LS−1、LS−1 clfAPYI変異体、LS−1 clfAPYII変異体、またはLS−1 clfAヌル変異体それぞれにより感染させた。死亡率、臨床的関節炎および体重変化を第16日目まで追跡調査した。
【0135】
細菌の関節内注射
各マウスの1つの膝関節に2.4x10cfu、2.4x10cfu、または3.4x10cfuの菌株Newman 野生型、clfAPYI変異体またはclfAノックアウト変異体それぞれ(20μl PBS中)を注射した。各群N=10。3日後にマウスを犠牲にし、組織病理学的検査のために膝関節を採取した。
【0136】
野生型および変異型組換えClfAによるワクチン接種
精製したrClfA40−559、rClfAPY40−559(すなわち、rClfAPYI)またはBSAを生理食塩水に溶解し、フロインド完全アジュバント(Difco Laboratories)と1:1で乳化させた。第0日目に30μg(=0.53nmol)のタンパク質を含有するエマルジョン200μlを皮下(s.c.)注射した。第11日目にフロインド不完全アジュバント中の生理食塩水中30μgタンパク質による第1回目の追加免疫を行った。第21日目に第2回目の追加免疫を行った。第30日目にマウスから採血し、後で抗体応答を解析するために血清を凍結した。
【0137】
第31日目に、各群14〜15マウスを、敗血症性関節炎の誘発のために4.0x10cfu/マウスのi.v.注射により、または敗血症の誘発のために2.3x10cfu/マウスにより感染させた。臨床的関節炎、体重変化および死亡率をそれぞれ11日間および15日間追跡調査した。腎臓における細菌増殖を敗血症性関節炎試験により評価した。
【0138】
感染マウスの臨床評価
臨床評価を盲検により行った。各肢を目視検査した。この検査により0〜3(0、腫脹および紅斑なし;1、軽度の腫脹および/または紅斑;2、中度の腫脹および/または紅斑;3 著明な腫脹および/または紅斑)のスコアを付けた。動物の四肢全てのスコアを合計することによって関節炎指数とした。各マウスの全身状態も、全身性炎症の徴候、すなわち、体重減少、覚醒状態の低下、および毛の逆立ちを評価することによって検査した。重症の全身感染症の場合、マウスは病気が重くてさらに24時間も生存できないと判断したときにはマウスを頸椎脱臼により死亡させ、敗血症による死亡と判定した。
【0139】
組織学的検査
これまでに報告されている方法(18)の変形(8)を用いて関節の組織学的検査を行った。
【0140】
感染腎臓の細菌学的検査
腎臓を無菌摘出し、氷上で維持し、ホモジナイズし、PBSで連続希釈し、血液寒天培地プレート上に塗布した。37℃で24時間のインキュベーション後に腎臓対当たりのcfu数を決定した。
【0141】
血清IgGの測定
放射免疫拡散法(19)により血清中の総IgG値を測定した。ヤギ抗マウス−IgGおよびマウスIgG標準は、Southern Biotech, Birmingham, ALから購入した。
【0142】
特異的抗体−ELISA
第2回目の追加免疫の9日後に免疫マウスの血清サンプルを得た。ELISAによりrClfAおよびrClfAPYに対する血清特異的抗体応答を測定した。マイクロプレート(96−ウェル;Nunc)をPBS中5μg/mlの組換えタンパク質でコーティングした。ブロッキング剤、血清サンプル、ビオチン化抗体、およびExtrAvidin−proxidaseは全てPBSで希釈した。これまでの報告(8)に従ってこのアッセイを実施した。全ての血清サンプルを1:20000希釈し、抗体応答を405nmにおける吸光度としてモニタリングした。
【0143】
第2回目の実施において、異なる免疫化群における特異的抗体応答をより正確に測定するために、特異的抗体応答をいくつかの血清希釈において決定した。そのため、全ての血清サンプルを1:5000、1:20000、1:80000および1:320000希釈し、抗体応答を405nmにおける吸光度としてモニタリングした。
【0144】
IL−6の解析
これまでに報告されている方法(20)によって血清IL−6を検出した。
【0145】
統計分析
マンホイットニーU検定を用いて統計学的評価を行った。P<0.05を有意と見なした。特に断りのない限り、データは、中央値、四分位範囲、および80%中央範囲として報告している。
【0146】
結果
ClfAがフィブリノーゲンと結合するのに必要な2つのアミノ酸の置換により敗血症性関節炎および敗血症の発症が妨げられる
ClfAによるフィブリノーゲン結合に必要であることが分かっている2つのアミノ酸(P336およびY338)を、細胞表面で非フィブリノーゲン結合ClfAタンパク質を発現する菌株NewmanおよびLS1の変異体を創出するように、対立遺伝子置換により改変した。前記タンパク質の発現レベルおよび完全性をウエスタンブロット法により測定し、細菌表面での変異タンパク質の発現が良好であり、発現されたタンパク質は適正なサイズであることを確認した。
【0147】
Newman野生型およびNewman clfA P336S Y338A(clfAPYI)が敗血症性関節炎を誘発する能力を調査した。敗血症性関節炎は、3.5x10〜5.0x10コロニー形成単位(cfu)および3.2x10〜6.0x10cfuのNewman野生型およびそのclfAPYI変異体それぞれの静脈内接種により誘発した。関節炎の発症を7日間臨床調査した。clfAPYI変異体は、全試験期間中野生型菌株よりもはるかに重症でない関節炎を誘発した(P>0.001、図1A)。関節炎の頻度はほとんどの時点においてNewman clfAPYIの場合よりも低かった(図6)。
【0148】
予想外にも、ClfAPYI分子の新たなアミノ酸組成は宿主の抗細菌防御との相互作用に適しているように思われる。この可能性を確かめるために、P336およびY338の代わりに異なるアミノ酸を用いた新しい構築物を作製した(clfA P336A Y338S:clfAPYII)。3.9x10cfuのNewman clfAPYIIを接種したマウスはclfAPYI変異体と同じ低い程度で(図1A)、同様の頻度で(図6)関節炎を発症した。この結果は、フィブリノーゲン結合の喪失が関節炎レベルの低下に関与することを強く示唆している。
【0149】
ClfAは、フィブリノーゲン結合を必要としない機構により関節炎の発症に関与している可能性がある。これを検証するために、ClfAタンパク質を欠いているClfA欠失変異体を、修飾非フィブリノーゲン結合ClfAタンパク質を発現する変異体と比較した。しかしながら、4.3x10〜4.8x10cfuのclfAヌル変異体により感染させたマウスは、clfAPYIおよびclfAPYII変異体感染マウスと変わらずに関節炎を発症した(図1A)。関節炎の頻度も変わらなかった(図6)。
【0150】
感染関節も組織学的に調査した。試験1および2の両方において、Newman clfAPYI感染マウスの滑膜炎は野生型感染マウスよりも著しく軽度であった(それぞれP=0.02および0.001)。ヒト敗血症性関節炎の続発症の主な原因である骨破壊は、Newman clfAPYI感染サンプルではほとんど見られなかった(試験2、P=0.001)。また、Newman clfAヌル変異体によって誘発された滑膜炎および骨破壊もNewman野生型により感染させたマウスと比べてあまり著明ではなく(それぞれP=0.003および0.006)、それほど著しくはないがNewman clfAPYI群よりもやや重度であった。
【0151】
次に、感染過程に対するclfA突然変異の代謝の影響を解析した。試験期間中に、Newman野生型菌株により感染させたマウスは最大約30%の体重が減少した。フィブリノーゲン結合欠損変異体Newman clfAPYIおよびNewman clfAPYIIにより感染させたマウスは、ほとんど全く体重が減少しなかった(P>0.0001 対野生型)。対照的に、Newman clfAヌル変異体は体重減少に対して中間的な影響を及ぼし、野生型菌株よりもはるかに低いがclfAPYIおよびclfAPYII変異体菌株よりもはるかに高いものであった(ほとんどの場合P≦0.02、図1B)。
【0152】
感染第7日〜第8日目に、全身性炎症応答の尺度であるIL−6の血清濃度を解析した。IL−6発現パターンは体重変化と類似していた。Newman野生型は高濃度の血清IL−6(4.8(2.8、5.7)ng/ml)をもたらし、Newman clfAPYI変異体はかなり低いIL−6(0.2(0.07、2.4)ng/ml、P<0.0001)をもたらし、一方、Newman clfAヌル変異体は中間的な応答(2.5(1.3、3.2)ng/ml)を起こし野生型群およびclfAPYI変異体群の両方と著しく異なっていた(それぞれP=0.009およびP=0.008)(中央値、四分位範囲)。
【0153】
腎臓における細菌増殖は、Newman野生型感染マウスでは、Newman clfAPY変異体およびNewman clfAヌル変異体の両方と比べて著しく多かった(それぞれP<0.0001、P=0.011、およびP=0.005;図2)。Newman clfAヌル変異体感染マウスは、Newman clfAPYI感染マウスよりも腎臓における細菌増殖が著しく多かった(P=0.0005、図2)。
【0154】
感染第7日〜第8日目に、マウスにおいて血清中の総IgGを測定した。Newman clfAPYI−およびNewman clfAヌル変異体に感染した群のいずれにおいても、IgG値の上昇は、野生型菌株により感染させたマウスと比べて著しく低かった(それぞれ3.1(1.2、4.9);2.3(1.0、2.6);および6.4(5.0、11.0)(中央値、四分位範囲);P≦0.0003)。2つの変異体群間に有意差はなかった。
【0155】
Newman野生型感染マウスの死亡率は17%であり、Newman clfAPYIおよびclfAPYII変異体群では0%、Newman clfAヌル変異体群では30%であった。野生型群とclfAPYI群との間、そしてclfAPYI群とclfAヌル変異体群との間には死亡率に有意差があった(それぞれP<0.05およびP<0.01)。
【0156】
全身性炎症の直接および間接徴候は、フィブリノーゲン結合欠損のClfAを発現する黄色ブドウ球菌により感染させたマウスでは低くなっている。予想外にも、ClfA発現が全くない菌株は、ClfAPY変異体発現菌株よりも高い全身性炎症を誘発した。
【0157】
黄色ブドウ球菌の接種量を増やすことによりマウスにおいて敗血症を誘発した。マウスを、5.2x10cfuのNewman野生型、5.1x10cfuのNewman clfAPYI変異体および3.3x10cfuのNewman clfAヌル変異体により感染させた。5日で野生型感染マウスは全て死亡したが、clfAPYI変異体マウスは感染の10日後に10匹のうち1匹だけが死亡した(P<0.0001、図3)。clfAヌル変異体により感染させたマウスの生存期間も、clfAPYI変異体感染マウスよりも著しく短かった(P<0.0001、図3)。この試験において、clfAヌル変異体により抗原投与したマウスは、clfAPYI変異体群よりも著しく高い関節炎を発症し、同時に、それらは体重が著しく大きく減少した(図7および8)。よって、敗血症性関節炎試験における全身性炎症の尺度と同様に、ClfA分子が発現される場合には、それにフィブリノーゲン結合特性がない限り、マウスの生存は長期に及ぶ。
【0158】
関節への細菌の注射
関節における炎症反応がフィブリノーゲン結合に依存しているかどうかを検証するために、Newman野生型、Newman clfAPYIまたはNewman clfAヌルをマウスの膝関節に直接注射し、それによって全身コンパートメントを回避した。3日後、滑膜炎(関節腔の多形核白血球浸潤および骨破壊を含む)を組織学により調査した。マウスには1つの膝に、2.4x10cfuの野生型、2.4x10cfuのclfAヌル変異体、または3.4x10cfuのclfAPYI変異体を施与した。関節腔における滑膜炎および多形核白血球浸潤の組織学的指数は、野生型により感染させた膝では0.25(0、3.0)、clfAヌル変異体では2.38(0.25、3.0)、clfAPYI変異体では0.25(0、0.25)であった(中央値、四分位範囲)。骨破壊の組織学的指数は、野生型では0(0、1.0)、clfAヌル変異体では1.0(0、1.0)、clfAPYI変異体では0(0、0)であった(中央値、四分位範囲;P=0.01 clfAPYI変異体およびclfAヌル変異体間)。clfAPYI変異体は、他の菌株よりも42%多い菌株をマウスに与えたという事実にもかかわらず、滑膜炎および破壊をほとんど引き起こさなかったため、関節内での最大炎症応答にはClfAにより促進されるフィブリノーゲン結合が必要であるという結論に達する。また、ClfA発現の不在もフィブリノーゲン結合欠損ClfA変異体と比べて炎症を高めた。
【0159】
菌株LS−1におけるPY突然変異
ClfAのフィブリノーゲンを結合する能力が他の黄色ブドウ球菌菌株の毒性に作用するかどうかを判定するために、clfAPYI、clfAPYIIおよびclfAヌル突然変異をTSST−1発現黄色ブドウ球菌菌株LS−1に形質導入した。マウスに、9.4x10cfuのLS−1野生型、7.9x10cfuのLS−1 clfAPYI、10.7x10cfuのLS−1 clfAPYII、または9.4x10cfuのLS−1 clfAヌル変異体により抗原投与した。生存率を追跡調査することにより敗血症を調査した。16日後、野生型菌株により抗原投与したマウスで生存しているのはたった40%であった一方で、clfAPYI変異体およびclfAヌル変異体群により抗原投与したマウスの90%およびclfAPYII変異体により感染させたマウスの80%が生存していた(図4)。LS−1のclfAPYI変異体およびclfAヌル変異体は毒性が著しく低かった(それぞれP=0.014、P=0.05およびP=0.03)。
【0160】
組換えClfAタンパク質による免疫化
敗血症性関節炎モデルと敗血症モデルの両方において、組換え野生型ClfA Aドメインタンパク質(rClfA)および変異型ClfAPYIタンパク質(rClfAPY)によるワクチン接種の効果を調査した。マウスを感作した後、対照タンパク質BSA、rClfA、またはrClfAPYにより2回追加免疫し、続いて、4.0x10cfuの黄色ブドウ球菌菌株Newmanにより感染させて敗血症性関節炎を誘発した、または2.3x10cfuの菌株Newmanにより感染させて敗血症を誘発した。rClfAPY(すなわち、ClfAPYI組換えタンパク質Aドメイン)による免疫化は、対照マウスと比べて敗血症死を著しく防いた(P=0.01、図5)が、一方、rClfAによる免疫化では著しい保護は得られなかった。細菌感染の前日、rClfAPYにより免疫したマウスでは、rClfAにより免疫したマウス(A405=0.13(0.07、0.17)および0.15(0.10、0.24)、両方の比較ではP<0.0001(中央値、四分位範囲))と比べて、rClfAPYおよびrClfAの両方に対する特異的血清抗体応答はずっと高かった(A405=0.39(0.33、0.56)および0.71(0.52、0.81))。対照免疫動物はバックグラウンドレベルしか示さなかった(A405nm=0および0.01(0、0.01)(中央値、四分位範囲))。低用量の関節炎細菌により感染させた免疫マウスは、敗血症を誘発したマウスと、rClfAおよびrClfAPYに対して類似の抗体応答を示した(データは示していない)。rClfAおよびrClfAPYの両方による免疫化は、その保護は著しいものではなかったが、関節炎の発症を防いだ(図9)。
【0161】
rClfAPYおよびrClfA免疫マウスでは、感染後第5日〜第9日の間に対照マウスと比べて体重減少が著しく低減した(データは示していない)。
【0162】
感染後第11日目に、rClfAPYまたはrClfAにより免疫したマウスの腎臓における細菌増殖の減少傾向(BSA:38(3、436);rClfAPY:7(2、17);rClfA:10(7、54)x10cfu/腎臓対)が認められた。
【0163】
異なる免疫化群における特異的抗体応答をより正確に測定するために、特異的抗体応答をいくつかの血清希釈において決定した(第2回目の実施)。rClfAPYにより免疫したマウスでは、全ての比較において各血清希釈で吸光度として測定した抗体応答は著しく高かったため、敗血症および関節炎細菌用量それぞれにより感染させた両方のマウスでは、rClfAPYおよびrClfA野生型抗原の両方に対して、rClfAPY免疫マウスの血清にはrClfA野生型免疫マウスの血清よりも高い力価の特異的抗体が存在した可能性が非常に高いことをデータは示している(P<0.0001〜P=0.008、図12〜15)。BSAによる免疫化ではバックグラウンド抗体応答しか起こらなかった。
【0164】
結論
これらの結果は、ClfA−フィブリノーゲン相互作用が細菌の毒性および疾患の転帰に不可欠であるということを強く示唆している。ClfAのフィブリノーゲンを結合する能力は、敗血症死をもたらす能力という観点から毒性の増強に関係している。試験した両方のブドウ球菌菌株では、clfAPY変異体は野生型よりも敗血症死を誘発することは少なかった。また、関節炎の重篤度は非フィブリノーゲン結合clfAPY変異体により感染させたマウスにおいて強く低下した。
【0165】
フィブリノーゲン−細菌細胞表面相互作用による毒性増進の有力な機構は、好中球食作用の阻害である(5)。好中球は黄色ブドウ球菌感染初期の宿主防御に不可欠である(13)。好中球が存在しないと、血液および腎臓において細菌増殖が激しく増加し、関節炎や死亡の頻度が増加する。clfAPY変異体と比べて、野生型黄色ブドウ球菌の毒性がより著明であることは、ClfAによるフィブリノーゲン媒介好中球食作用阻害により少なくとも部分的に説明することができる。フィブリノーゲンとClfAとの結合は、好中球受容体によるオプソニンの付着またはオプソニンへの働きかけを減少させることによって、好中球によるオプソニン食作用を減少させ得る。また、結合したフィブリノーゲンが未知の防御宿主因子と黄色ブドウ球菌との結合を妨げる可能性もある。もう1つの選択肢は、フィブリノーゲン−ClfA相互作用が血管から組織内への細菌の通過を促しまたは組織への定着を促すことである。
【0166】
予想外にも、本発明者らのデータは、ClfAヌル変異体がclfAPY変異体菌株よりも毒性が高かったことも示している。場合により、ClfAタンパク質はフィブリノーゲンとの相互作用以外のin vivo機能も有する。この研究で示されるように、この相互作用は宿主とっって明らかに不利なものである。ClfAの他の機能は現在明確にマッピングされていないが、ClfAによってもたらされる非フィブリノーゲン依存性血小板凝集によって、循環において大量の黄色ブドウ球菌が捕捉され、その後、細菌血小板複合体が細網内皮系を通じて除去されるかもしれない。このような血小板凝集媒介のブドウ球菌除去は野生型およびclfAPY突然変異菌株では起こりやすいがclfAノックアウトでは起こらないであろう。野生型菌株ではフィブリノーゲン相互作用が他の事象より重要であるのに対し、clfAPY変異体では上記のような細菌除去が宿主にとって非常に有益であるかもしれない。
【0167】
clfAノックアウト変異体は、黄色ブドウ球菌菌株LS−1におけるclfAPY突然変異と同程度に敗血症死を防いだが、菌株Newmanではそうであったとしてもあまり防げなかった。細菌毒性に対するClfA発現の全体的影響は、発現レベルや他の毒性因子の存在によって、異なる黄色ブドウ球菌菌株間で差がある。
【0168】
関節腔においてclfAPY変異体が以前の同等以下の毒性を示すかどうかの問題は、炎症を起こした滑液ではフィブリノーゲンおよびフィブリンが豊富であることを考慮すると確かに重要である。本発明者らのデータは、clfAPY変異体が軟骨および骨に対してあまり破壊性がないことを示唆している。
【0169】
組換えClfA Aドメイン非フィブリノーゲン結合P336338変異体の防御効果は、野生型rClfAの場合よりも大きかった。免疫原および野生型ClfAタンパク質の両方に対してより高い特異的抗体応答がもたらされたことから、ClfAPYによる免疫化によってより良好な免疫応答が誘導された可能性が非常に高い。より重要なことには、それによって野生型ClfAよりも大きな、敗血症死に対する防御免疫応答が誘導された。
【0170】
結論として、本発明者らの結果からrClfAPYは野生型組換えClfAよりも良好なワクチン候補であることが分かる。本発明者らは、免疫時の野生型ClfAタンパク質によるフィブリノーゲン結合は、ClfA分子上の重要なエピトープを隠すことから抗原提示を減少させ、それゆえ特異的抗体産生を低下させると仮設する。
【0171】
実施例2
N2およびN3を含んでなるrClfA A領域トランケート(rClfA 221−559)
材料と方法:
この実施例では実施例1に概略を示したプロトコールに従い、
−rClfA221−559(すなわち、アミノ酸220−559に相当するN2およびN3を含んでなるClfA A領域トランケート)
−rClfAPY221−559;および
−BSA
を利用した。
【0172】
各群15匹の雌NMRIマウスとし、それらは試験開始時において8週齢であった。この実施例では、免疫化に使用した構築物はClfA野生型/天然N2N3トランケート、実施例1に定義した突然変異PYを有するClfA N2N3トランケートであった。BSAを対照として用いた。
【0173】
野生型および変異型組換えClfAによるワクチン接種
実施例1のプロトコールに従って、マウスをrClfA221−559、rClfAPY221−559またはBSAにより免疫した。
【0174】
精製したrClfA221−559、rClfAPY221−559(すなわち、ClfAPYI組換えタンパク質AサブドメインN2およびN3)またはBSAをPBSに溶解し、フロインド完全アジュバントと1:1で乳化させた。第0日目に30μg(=0.79nmol)のタンパク質を含有するエマルジョン200μlをs.c.注射した。第12日目にフロインド不完全アジュバント中の生理食塩水中30μgタンパク質による第1回目の追加免疫を行った。第22日目に第2回目の追加免疫を行った。第31日目にマウスから採血し、後で抗体応答(antibody responces)を解析するために血清を凍結した。
【0175】
特異的抗体−ELISA
第2回目の追加免疫の9日後に免疫マウスの血清サンプルを得た。ELISAによりrClfA221−559およびrClfAPY221−559に対する血清特異的抗体応答を測定した。マイクロプレート(96−ウェル;Nunc)をPBS中5μg/mlの組換えタンパク質でコーティングした。ブロッキング剤、血清サンプル、ビオチン化抗体、およびExtrAvidin−proxidaseは全てPBSで希釈した。これまでの報告(8)に従ってこのアッセイを実施した。全ての血清サンプルを1:5000、1:20000、1:80000および1:320000希釈し、抗体応答を405nmにおける吸光度としてモニタリングした。
【0176】
結果:
特異的抗体応答:
実施例1のとおり、4つの異なる血清希釈を用いて、ELISAアッセイおいて抗体応答を吸光度により測定した。得られたデータは実施例1のデータと非常に類似していた。rClfAPY221−559により免疫したマウスでは、1つの比較以外の全ての比較において各血清希釈で吸光度として測定した抗体応答は著しく高かったため、rClfAPY221−559による免疫化では、天然rClfA221−559およびrClfAPY221−559の両方に対して、天然rClfA221−599による免疫化と比べて高い力価の特異的抗体をもたらす可能性が非常に高いことが分かった(P=0.001〜0.025、図16および図17参照)。BSAによる免疫化ではバックグラウンドレベルの抗体応答しか起こらなかった。
【0177】
結論
本発明者らは、rClfAPY221−559タンパク質による免疫化は、免疫原および野生型ClfAタンパク質の両方に対して、天然タンパク質による免疫化よりも著しく高い抗体応答をもたらすことを見い出した。
【0178】
これらの発見に基づき、本発明者らは、とにかくPYタンパク質が実施例1のようにアミノ酸40〜550または実施例2のようにアミノ酸221〜559を含んでなるならば、PY−免疫化によって、対応するサイズの天然ClfAによる免疫化よりも良好な免疫応答が誘導されるという結論に達する。
【0179】
実施例3
ClfA A領域トランケート(δ/デルタラッチトランケート)
材料と方法:
この実施例では実施例1に概略を示したプロトコールに従い、以下の構築物を利用した:
rClfA221−531(すなわち、N2およびN3アミノ酸220−559を含んでなるがラッチングペプチドアミノ酸532−538とそれに続くプロリンリッチ残基を含まないrClfA A領域トランケート。
【0180】
群は15匹の雌NMRIマウスとし、それらは試験開始時において8週齢であった。この実施例では、上記構築物を免疫化に使用した。実施例1のプロトコールに従って、マウスを上記トランケートにより免疫した。
【0181】
野生型および変異型組換えClfAによるワクチン接種
精製したrClfA221−531をPBSに溶解し、フロインド完全アジュバントと1:1で乳化させた。第0日目に0.79nmolのタンパク質を含有するエマルジョン200μlをs.c.注射した。第12日目にフロインド不完全アジュバント中の生理食塩水中0.79nmolタンパク質による第1回目の追加免疫を行った。第22日目に第2回目の追加免疫を行った。第31日目にマウスから採血し、後で抗体応答を解析するために血清を凍結した。
【0182】
特異的抗体−ELISA
第2回目の追加免疫の9日後に免疫マウスの血清サンプルを得た。ELISAにより特異的抗体の血清濃度を測定した。マイクロプレート(96−ウェル;Nunc)を4.6μg/mlのrClfA221−531タンパク質(これは実施例1および2の5μg/mlのrClfA221−559およびrClfAPY221−559と等モルである)でコーティングした。ブロッキング剤、血清サンプル、ビオチン化抗体、およびExtrAvidin−proxidaseは全てPBSで希釈した。これまでの報告(8)に従ってこのアッセイを実施した。全ての血清サンプルを1:5000、1:20000、1:80000および1:320000希釈し、抗体応答を405nmにおける吸光度としてモニタリングした。
【0183】
結果:
実施例1のとおり、ELISAアッセイおいて抗体応答を吸光度により測定した。rClfA221−531による免疫化は、特異的抗体応答として測定される免疫応答をもたらすことが分かった(図18)。
【0184】
結論:
本発明者らは、rClfA221−531は特異的抗体応答を引き起こすことからこの抗原が免疫原として働くことを見い出した。
【0185】
参考文献




【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療に用いるための、その宿主リガンドとの結合が減少した、組換えブドウ球菌MSCRAMMタンパク質もしくはMSCRAMM様タンパク質またはそのリガンド結合領域の少なくとも一部を含んでなるそのフラグメント。
【請求項2】
治療に用いるための、その宿主リガンドを非共有結合する能力が低下したまたはその能力に欠けている、請求項1に記載の組換えMSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメント。
【請求項3】
MSCRAMMまたはMSCRAMM様タンパク質のドック、ロックアンドラッチング中に起こるそのリガンドとの非共有結合が減少したまたは抑制された、請求項2に記載の組換えMSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメント。
【請求項4】
前記リガンドがヘム、ヘモグロビン、コラーゲンまたはフィブリノーゲンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換えMSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメント。
【請求項5】
a.フィブリノーゲン結合タンパク質;
b.SdrD、SdrE、SdrG、SdrF;あるいは
c.IsdBおよび/またはIsdH
である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組換えMSCRAMMタンパク質またはMSCRAMM様タンパク質、もしくはそのフラグメント。
【請求項6】
フィブリノーゲンを非共有結合する能力が低下したまたはその能力に欠けている、請求項5に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質、またはそのフィブリノーゲン結合領域の少なくとも一部を含んでなるそのフラグメント。
【請求項7】
疎水性ポケットを形成している2つのDeV−IgGドメインを含んでなり、
前記2つのDev−IgGドメイン間に形成された前記疎水性ポケットがフィブリノーゲン結合を減少させるまたは抑制するように改変され;または
前記フィブリノーゲン結合タンパク質が、前記疎水性溝において前記フィブリノーゲンを覆うラッチングペプチドを含んでなり、前記ラッチングペプチドがフィブリノーゲン結合を減少させるまたは抑制するように改変または除去されている、請求項6に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項8】
前記フィブリノーゲン結合タンパク質がそのフィブリノーゲン結合領域単独またはそのフラグメントを含んでなる、請求項5〜7のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項9】
黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌および/またはS. lugdunensis由来の、請求項5〜8のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項10】
前記フィブリノーゲン結合タンパク質が、以下
a.FbI、SdrFおよび/もしくはSdrG;
b.フィブリノーゲン結合タンパク質クランピング因子A(ClfA)および/またはフィブリノーゲン結合タンパク質クランピング因子B(ClfB);
c.IsdA;あるいは
d.FnBPAおよび/またはFnBPB
のうちの1つから選択される、請求項5〜9のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項11】
フィブリノーゲンを非共有結合する能力が低下していないまたはその能力に欠けていない組換えフィブリノーゲン結合タンパク質をもたらすために、そのフィブリノーゲン結合領域内に少なくとも1つのヌクレオチドまたはアミノ酸残基の置換、挿入、欠失もしくは付加を含んでなる、請求項5〜10のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項12】
前記フィブリノーゲン結合タンパク質のフィブリノーゲン結合領域Aを含んでなり、前記ヌクレオチドまたはアミノ酸の置換、挿入、欠失もしくは付加が、フィブリノーゲンとの非共有相互作用を、好ましくは、前記フィブリノーゲン結合タンパク質の領域A亜領域のN2とN3を分ける疎水性ポケットとのリガンド結合を抑制することまたは減少させることにより、減少させる、請求項11に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項13】
フィブリノーゲンを非共有結合する能力が低下したまたはその能力に欠けている組換えフィブリノーゲン結合タンパク質をもたらすために、前記ラッチングペプチドアミノ酸残基が存在しないフィブリノーゲン結合領域を含んでなる、請求項5〜12のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項14】
前記組換えタンパク質がClfAである、請求項5〜13のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項15】
ClfA Aフィブリノーゲン結合領域(領域A)の疎水性残基が少なくとも1以上の核酸またはアミノ酸の置換、挿入、欠失もしくは付加を受ける、請求項14に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項16】
アミノ酸残基Ala254、Tyr256、Pro336、Tyr338、Ile387、Lys389、Glu526および/またはVal527がAlaまたはSerのいずれかと置換されている、請求項14または請求項15に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項17】
rClfAP336S Y338AまたはrClfAP336 A Y338Sをもたらすために、ClfAのフィブリノーゲン結合領域(領域A)の残基P336および/またはY338がセリンまたはアラニンのいずれかと置換されている、請求項14〜16のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項18】
前記組換えブドウ球菌フィブリノーゲン結合タンパク質が、残基P336および/またはY338がセリンおよび/またはアラニンのいずれかと置換されている配列番号1〜3のいずれかによるアミノ酸配列、またはそのフラグメントを有する、請求項14〜17のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項19】
前記フィブリノーゲン結合タンパク質、そのフィブリノーゲン結合領域、最小フィブリノーゲン結合領域および/またはフラグメントを含んでなる、請求項14〜18のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項20】
フィブリノーゲンを非共有結合する能力が低下したまたはその能力に欠けている前記フィブリノーゲン結合タンパク質の組換えフラグメントをもたらすために、前記フラグメントがそのフィブリノーゲン結合領域の少なくとも一部を含んでなる、請求項14〜19のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項21】
a.亜領域N123、前記フィブリノーゲン結合領域(領域A)のアミノ酸残基40〜559にわたる;
b.亜領域N23、ClfAのフィブリノーゲン結合領域(領域A)のアミノ酸残基221〜559にわたる;および/または
c.前記フィブリノーゲン結合領域(領域A)のアミノ酸残基221〜531
を含んでなる、請求項14〜20のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項22】
配列番号4〜14のいずれかによるアミノ酸配列を含んでなる請求項14〜21のいずれか一項に記載の組換えフィブリノーゲン結合タンパク質。
【請求項23】
好ましくは、Staphylocciによって引き起こされる、敗血症、敗血症性関節炎および/または心内膜炎を含む、微生物感染症の治療または予防に用いるための、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組換えMSCRAMMもしくはMSCRAMM様タンパク質、またはそのフラグメント。
【請求項24】
好ましくは、Staphylocciによって引き起こされる、微生物感染症の治療または予防用の薬剤の製造における、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、またはそのフラグメントの使用。
【請求項25】
個体において免疫応答を誘導する方法であって、前記個体に請求項1〜22のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、またはそのフラグメントを投与することを含む方法。
【請求項26】
微生物感染症にかかっている患者を治療する方法であって、前記患者を前記微生物感染症を治療するように、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組換えタンパク質もしくはそのフラグメント、または前記組換えタンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなるワクチンで治療することを含む、上記方法。
【請求項27】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、またはそのフラグメントを発現する核酸構築物、発現ベクターまたは宿主細胞。
【請求項28】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、またはそのフラグメントを含んでなる、ワクチン。
【請求項29】
好ましくは、過免疫血清としての、請求項1〜22のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、またはそのフラグメントに対して惹起された抗体。
【請求項30】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、またはそのフラグメント、および製薬上許容されるアジュバントを含んでなる、免疫原性医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2011−510952(P2011−510952A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544703(P2010−544703)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051033
【国際公開番号】WO2009/095453
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(310000288)ザ プロボースト,フェローズ アンド スカラーズ オブ ザ カレッジ オブ ザ ホーリー アンド アンディバイディッド トリニティ オブ クイーン エリザベス ニア ダブリン (4)
【Fターム(参考)】