説明

微生物数測定装置

【課題】本発明は、微生物数測定装置に関するもので、測定精度をさらに高めることを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、攪拌体4により、測定液2を第1の回転数にて懸濁状態で攪拌させ、導電率変化判定部21による導電率変化が所定値よりも小さくなった後、前記攪拌体4により、前記第1の回転数よりも低い第2の回転数で、測定液2を攪拌させ、この状態で微生物数算出部16により、微生物数を算出する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物数測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の微生物数測定装置の構成は、以下のような構成となっていた。
【0003】
すなわち、内部の測定液中に、測定電極と攪拌体を浸漬状態で配置した測定容器と、この測定容器外から、前記攪拌体を回転駆動する回転駆動手段と、前記測定電極に集菌信号を供給する集菌信号生成部と、前記測定電極に測定信号を供給する測定信号生成部と、前記測定液のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、このインピーダンス測定部に接続された微生物数算出部とを備えた構成となっていた。
【0004】
すなわち、インピーダンス測定部で測定したインピーダンスに基づき微生物数算出部により微生物数を算出するようになっていた(例えば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−207431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例における課題は、測定精度をさらに高くすることであった。
【0007】
すなわち、この微生物数測定装置において、口腔内の微生物(細菌)の数を測定しようとした場合、例えば、綿棒のような採取具で口腔内の唾液を採取し、それを測定液中に溶出させた状態で、微生物数の測定を行うのであるが、口腔内の状態により、それが測定液中に溶出する状態(時間)が大きく異なるので、十分に微生物が溶出されていない状態で測定を行った場合、測定精度にばらつきが発生するものとなっていた。
【0008】
そこで本発明は、測定精度をさらに高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、内部の測定液中に、測定電極と攪拌体を浸漬状態で配置した測定容器と、この測定容器外から、前記攪拌体を回転駆動する回転駆動手段と、前記測定電極に集菌信号を供給する集菌信号生成部と、前記測定電極に測定信号を供給する測定信号生成部と、前記測定液のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、このインピーダンス測定部に接続された微生物数算出部と、前記インピーダンス測定部に接続された溶液導電率算出部と、この溶液導電率算出部に接続された導電率変化判定部とを備え、前記攪拌体により、測定液を第1の回転数にて懸濁状態で攪拌させ、前記導電率変化判定部による導電率変化が所定値よりも小さくなった後、前記攪拌体により、前記第1の回転数よりも低い第2の回転数で、測定液を攪拌させ、この状態で前記微生物数算出部により、微生物数を算出する構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、内部の測定液中に、測定電極と攪拌体を浸漬状態で配置した測定容器と、この測定容器外から、前記攪拌体を回転駆動する回転駆動手段と、前記測定電極に集菌信号を供給する集菌信号生成部と、前記測定電極に測定信号を供給する測定信号生成部と、前記測定液のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、このインピーダンス測定部に接続された微生物数算出部と、前記インピーダンス測定部に接続された溶液導電率算出部と、この溶液導電率算出部に接続された導電率変化判定部とを備え、前記攪拌体により、測定液を第1の回転数にて懸濁状態で攪拌させ、前記導電率変化判定部による導電率変化が所定値よりも小さくなった後、前記攪拌体により、前記第1の回転数よりも低い第2の回転数で、測定液を攪拌させ、この状態で前記微生物数算出部により、微生物数を算出する構成としたものであるので、測定精度をさらに高めることができる。
【0011】
すなわち、本発明においては、前記攪拌体により、測定液を第1の回転数にて懸濁状態で攪拌させ、前記導電率変化判定部による導電率変化が所定値よりも小さくなるまで、つまり、測定液中に微生物がほとんど溶出したことを測定液の導電率変化が所定値よりも小さくなったことで判定し、この判定後に、前記攪拌体により、前記第1の回転数よりも低い第2の回転数で、測定液を攪拌させ、前記溶出した微生物を測定電極に集菌させることにより、前記微生物数算出部により、微生物数を算出する構成としたので、測定精度をさらに高めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の制御ブロック図
【図2】その動作フローチャート
【図3】その動作状態を示す特性図
【図4】本実施形態と従来例の比較を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施形態を添付図面を用いて説明する。
【0014】
図1において、1は上面が開口した円筒状の測定容器で、その内部に入れた測定液(純水)2内に測定電極3と攪拌体4が浸漬状態で配置されている。
【0015】
なお、前記測定電極3は、上記特許文献1と同様に櫛歯状の電極を所定間隔で対向配置したものである。また、測定容器1の上面開口部からは、採取具5の採取部6が測定液2内に挿入されている。
【0016】
前記採取具5は、その採取部6を、例えば、口腔内に挿入し、唾液を付着させることで、微生物を採取するものであって、この図1に示すように、容器1内の底面上で、攪拌体4による回転力、および衝突力を受けることで、採取した微生物を測定液2内に溶出させるようになっている。
【0017】
さて、測定電極3には、この測定電極3に集菌信号を供給するための集菌信号生成部7と、前記測定電極3に測定信号を供給するための測定信号生成部8が加算器9、出力アンプ10を介して接続されている。つまり、集菌信号生成部7からは、たとえば3MHz、測定信号生成部8からは、たとえば800kHzが加算器9で加算され、それが出力アンプ10を介して測定電極3に供給される。
【0018】
また、この測定電極3には、I/Vアンプ11、ゲイン切替アンプ12、A/Dコンバータ13、インピーダンス測定部14、インピーダンス変化検出部15を介して、微生物数算出部16が接続されている。なお、I/Vアンプ11とゲイン切替アンプ12の間には、図示していないがローパスフィルタが介在させられており、上記800kHzの信号だけがインピーダンス測定部14に向けて出力されることになっている。
【0019】
また、インピーダンス測定部14には、溶液導電率算出部17が接続され、この溶液導電率算出部17には、記憶部18が接続されている。
【0020】
記憶部18からは、2方に出力がなされ、その一方は、導電率変化量算出部19と、導電率変化率計算部20に出力がなされる。また、導電率変化量算出部19の出力は、導電率変化率計算部20に出力され、導電率変化率計算部20の出力は、導電率変化判定部21に出力されるようになっている。
【0021】
また、記憶部18の他の出力は、微生物数算出部16のドリフト補正部22に出力されるようになっている。
【0022】
前記導電率変化判定部21は、モータ制御部23に出力され、このモータ制御部23の出力は、モータ駆動部24に出力されるようになっている。モータ駆動部24は、モータ25に取りつけられた磁石板26を回転させるものであり、磁石板26に設けた複数の磁石(図示せず)によって、攪拌体4を回転させるものである。
【0023】
一方、微生物数算出部16は、ドリフト補正部22によるドリフト補正を行った後、微生物数換算部27により、微生物数を算出するものであって、この微生物数算出部16に接続された相関テーブル28は、微生物数の換算のために用いるものである。また、微生物数算出部16の微生物数換算部27によって、算出された微生物数は、表示部29に表示される構成となっている。
【0024】
上記構成において、図2は、制御フローを示している。
【0025】
まず、図2のS1でスタートする。この時、モータ制御部23は、モータ25を3000rpmで回転駆動し、これにより、攪拌体4も3000rpmで回転している。この攪拌体4の強い回転により、測定液2は、強い回転旋回力が与えられ、また、採取部6も強い回転力を受けると共に、攪拌体4の衝突力が加わり、これにより、採取部6から測定液2内に微生物が、どんどん溶出していくことになる(S2)。
【0026】
図2のS2で、50秒間の懸濁が行われた状態でS3により、測定液2の導電率の測定が行われる。これは、測定電極3間のインピーダンスをインピーダンス測定部14で測定し、それに基づき、溶液導電率算出部17で溶液導電率を測定することで行われる。この時の、溶液導電率は、記憶部18に記憶させられる(図3のbにおけるn−1回部分)。
【0027】
なお、攪拌体4は、例えば、3000rpmという強い回転駆動が行われているので、採取部6から溶出した細菌は、測定電極3部分に留まることができず、よって、この強い回転時には、測定電極3は、測定液2の導電率を測定することになる。もちろん、図3(b)にも示しているが、図3(a)のごとく、微生物が測定液2中に溶出していくと、それに伴って、図3(b)のごとく、溶液導電率も同じように上昇していく。
【0028】
つぎに、図2のS4では、さらに10秒間の懸濁が行われ、その後、S5により、溶液導電率が測定される。
【0029】
図2のS6では、記憶部18に記憶されているS3における溶液導電率とS5における溶液導電率とが導電率変化量算出部19に供給され、S3の溶液導電率とS5の溶液導電率との差である溶液導電率変化量が算出される。
【0030】
つぎに、図2のS7では、導電率変化量算出部19で算出した溶液導電率変化量とS5における溶液導電率とが導電率変化率計算部20に供給され、S5の溶液導電率に対する溶液導電率変化量の変化率を計算する。
【0031】
さらに、図2のS8では、導電率変化率計算部20で計算した導電率変化率が導電率変化判定部21へ供給され、その変化率が5%よりも小さいか否かを判定する。
【0032】
この判定結果により、変化率が5%よりも大きいと、まだ、微生物の溶出状態が不安定であると判定し、再びS3とS4の間に戻る。
【0033】
また、S8において、変化率が5%よりも小さいと判定した場合には、S9において、モータ制御部23において、モータ25の回転数を1200rpmに下げる。この状態になると、測定液2内に溶出した微生物は、誘電泳動により、測定電極3間に集菌されるので、この微生物の量に応じたキャパシタンスの値が得られることになる(S10)。
【0034】
このキャパシタンスの値は、すなわち、インピーダンスの変化であるので、インピーダンス測定部14で測定され、つぎに、インピーダンス変化検出部15でインピーダンス変化量が求められ、このインピーダンス変化の傾斜状態と、相関テーブル28に設けたデータとから、微生物数が算出されることになる。
【0035】
図4(a)(b)は、本実施形態における菌溶出量とキャパシタンスの関係を示すものであり、図4(a)に示す実線の状態でも、破線の状態でも、キャパシタンスの傾斜状態が安定していることが理解される。
【0036】
すなわち、図4(a)における実線は、懸濁完了が遅い状態、つまり、図2のS8からS4への戻り回数が多かったものである。また、図4(a)の破線は、懸濁完了が早い場合、つまり、図2のS8からS4への戻り回数が少なかったものである。
【0037】
本実施形態においては、このように、懸濁完了が早い場合でも遅い場合でも、キャパシタンスの傾斜状態が安定するので、結論として、微生物数算出部16における微生物数に対する測定精度をさらに高めることができるものである。
【0038】
これに対して、図4(c)は、従来例を示し、図4(c)における実線は、懸濁完了が遅い状態。また、図4(c)の破線は、懸濁完了が早い場合である。
【0039】
従来は、この図4(c)のごとく、懸濁完了が遅い場合でも早い場合でも、懸濁完了を一定値にしていたので、いまだ懸濁が完了していない図4(c)の実線では、図4(d)の実線のごとく、破線よりも傾斜状態が小さい状態となる。つまり、図4(d)に示すごとく、キャパシタンスの傾斜状態のばらつきが発生することが、測定精度を高めることができないことにつながってしまうものであった。
【0040】
なお、インピーダンス変化検出部15で得られた傾斜状態(たとえば、図4のbのようなもの)にもドリフトが混在しているので、このドリフト補正を行う必要がある。本実施形態においては、記憶部18が、記憶している図4(a)の懸濁完了時における溶液導電率を用い、ドリフト補正部22でインピーダンス変化検出部15の傾斜状態をドリフト補正し、この補正後の傾斜状態と、相関テーブル28の値とから微生物数換算部27により微生物数を換算し、表示部29に、その値を、例えば「2.5E+06CFU/ml」(2.5×10の6乗CFU/ml:CFUとは、コロニーを形成できる微生物の数)と表示する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように本発明は、内部の測定液中に、測定電極と攪拌体を浸漬状態で配置した測定容器と、この測定容器外から、前記攪拌体を回転駆動する回転駆動手段と、前記測定電極に集菌信号を供給する集菌信号生成部と、前記測定電極に測定信号を供給する測定信号生成部と、前記測定液のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、このインピーダンス測定部に接続された微生物数算出部と、前記インピーダンス測定部に接続された溶液導電率算出部と、この溶液導電率算出部に接続された導電率変化判定部とを備え、前記攪拌体により、測定液を第1の回転数にて懸濁状態で攪拌させ、前記導電率変化判定部による導電率変化が所定値よりも小さくなった後、前記攪拌体により、前記第1の回転数よりも低い第2の回転数で、測定液を攪拌させ、この状態で前記微生物数算出部により、微生物数を算出する構成としたものであるので、測定精度をさらに高めることができる。
【0042】
すなわち、本発明においては、前記攪拌体により、測定液を第1の回転数にて懸濁状態で攪拌させ、前記導電率変化判定部による導電率変化が所定値よりも小さくなるまで、つまり、測定液中に微生物がほとんど溶出したことを測定液の導電率変化が所定値よりも小さくなったことで判定し、この判定後に、前記攪拌体により、前記第1の回転数よりも低い第2の回転数で、測定液を攪拌させ、前記溶出した微生物を測定電極に集菌させることにより、前記微生物数算出部により、微生物数を算出する構成としたので、測定精度をさらに高めることができるものである。
【0043】
したがって、微生物数測定装置として、広く活用が期待されるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 測定容器
2 測定液
3 測定電極
4 攪拌体
5 採取具
6 採取部
7 集菌信号生成部
8 測定信号生成部
9 加算器
10 出力アンプ
11 I/Vアンプ
12 ゲイン切替アンプ
13 A/Dコンバータ
14 インピーダンス測定部
15 インピーダンス変化検出部
16 微生物数算出部
17 溶液導電率算出部
18 記憶部
19 導電率変化量算出部
20 導電率変化率計算部
21 導電率変化判定部
22 ドリフト補正部
23 モータ制御部
24 モータ駆動部
25 モータ
26 磁石板
27 微生物数換算部
28 相関テーブル
29 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の測定液中に、測定電極と攪拌体を浸漬状態で配置した測定容器と、
この測定容器外から、前記攪拌体を回転駆動する回転駆動手段と、
前記測定電極に集菌信号を供給する集菌信号生成部と、
前記測定電極に測定信号を供給する測定信号生成部と、
前記測定液のインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、
このインピーダンス測定部に接続された微生物数算出部と、
前記インピーダンス測定部に接続された溶液導電率算出部と、
この溶液導電率算出部に接続された導電率変化判定部とを備え、
前記攪拌体により、測定液を第1の回転数にて懸濁状態で攪拌させ、前記導電率変化判定部による導電率変化が所定値よりも小さくなった後、前記攪拌体により、前記第1の回転数よりも低い第2の回転数で、測定液を攪拌させ、この状態で前記微生物数算出部により、微生物数を算出する構成とした微生物数測定装置。
【請求項2】
溶液導電率算出部の出力側に記憶部を接続し、この記憶部の第1の出力は、導電率変化量算出部と導電率変化率計算部に出力し、前記導電率変化量算出部の出力は導電率変化率計算部に出力し、この導電率変化率計算部の出力は、導電率変化判定部に出力し、この導電率変化判定部の出力は、回転駆動手段に出力し、前記記憶部の第2の出力は、微生物数算出部に出力する構成とした請求項1に記載の微生物数測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−141183(P2011−141183A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1690(P2010−1690)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】