微生物検査装置
【課題】内部に流路を備えた平板状のフローセルと励起光との位置合わせのために、専用の光学系や蛍光微粒子の流動が必要とされる。
【解決手段】微生物検査チップを構成する微生物検出部に励起光を照射した場合に、検出用流路に流れる微生物から発生される蛍光を検出して電気信号に変換する第1の検出器と、同じく検出用流路に流れる微生物から発生される散乱光を検出して電気信号に変換する第2の検出器とを微生物検査装置に搭載する。そして、第1の検出器によって検出された蛍光の光量に基づいて微生物検査チップを搭載するステージを移動制御することにより、励起光の光軸方向に対する検出用流路の位置決めを行う。
【解決手段】微生物検査チップを構成する微生物検出部に励起光を照射した場合に、検出用流路に流れる微生物から発生される蛍光を検出して電気信号に変換する第1の検出器と、同じく検出用流路に流れる微生物から発生される散乱光を検出して電気信号に変換する第2の検出器とを微生物検査装置に搭載する。そして、第1の検出器によって検出された蛍光の光量に基づいて微生物検査チップを搭載するステージを移動制御することにより、励起光の光軸方向に対する検出用流路の位置決めを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生菌数計測の迅速化および簡便化を目的としたさまざまな簡便迅速測定法を実施する計測装置が知られている。特に、生菌数を迅速に直接計測する手法として、蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物測定装置がある。
【0003】
蛍光フローサイトメトリー法は、蛍光色素で染色した細菌、プランクトンなどの微生物を含む検体液の流径を細くすることによって、流路に流れる微生物を一個ずつ計測する方法である。この方法を用いた微生物測定装置には、一分間に一万個以上の微生物を一個ずつ計測できるものもある。また、この方法を用いた微生物測定装置には、検体中の成分が流路壁面に付着しないように検体液とシース液の層流を形成し、二液の圧力差を利用して検体の流径を絞り込む手法が採用されている。
【0004】
さらに、この方法を用いた微生物測定装置の低価格化や洗浄の手間を省略する目的で、蛍光フローサイトメトリー法による測定が行われる流路部分を使い捨てにし、使い捨ての流路内で測定を行う手法が知られている(非特許文献1を参照)。
【0005】
蛍光フローサイトメトリー法においては、検出用の流路と、検体を励起するための励起光の位置調整が重要になる。蛍光フローサイトメトリー法における検出用の流路と励起光の位置合わせは、標識となる蛍光微粒子を検出用の流路に流し、蛍光微粒子が発する蛍光を目印として行うのが一般的である。
【0006】
検出用の流路に標識を流さずに位置あわせを行う例もある。例えば特許文献1には、矩形のガラス管で構成されたフローセルを流れる検体粒子にレーザー光を照射し、検体粒子による散乱光及び蛍光を測光する粒子解析装置についての記載がある。具体的には、合焦検出用の光源から発せられたレーザー光を、光路の中心から片側に偏心したスリットを備えたアパーチャーマスクを経てフローセル内に投影し、フローセルの前面及び後面からの反射光の検知により合焦状態を検出する粒子解析装置が記載されている。
【0007】
また例えば、特許文献2には、平板状フローセルを使用したフローサイトメーターについての記載がある。平板状フローセルとは、一方が溝状の構造をもつ二枚の平板を張り合わせ、内部に矩形の流路を備えた構造をいう。この装置の場合、励起光源からの光ビームは平板状フローセルを照射し、平板状フローセル内の矩形流路と光ビームが交差したときに強い散乱光が生じる。そこで、この装置では、散乱光の出力と平板状フローセル又は光ビームの位置を関連付け、平板状フローセル又は光ビームを移動させることにより位置合わせを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−91836号公報
【特許文献2】特開2004−69634号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Biomolecular Techniques,Vol14,Issue2,pp.119-127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物測定装置では、非常に細く形成された検出用の流路に励起光を照射し、測定対象である微粒子が出す蛍光を検出する。このため、励起光及び検出器の焦点に流路の位置を合わせる必要がある。
【0011】
しかし、励起光及び検出器の焦点の範囲と流路の幅は数ミクロンから数百ミクロンであり、高精度の測定を行うためには数十ミクロンの精度の位置合わせが必要になる。
【0012】
特に、流路部分を使い捨てにする場合には、測定毎に励起光と流路の位置合わせを行う必要がある。このため、発明者は、簡便な位置あわせの方法が必要であると考えるに至った。
【0013】
また、蛍光微粒子を検出用の流路に流し、蛍光微粒子の発する蛍光を目印として位置合わせを行う方法は、前述したように蛍光フローサイトメトリー法における一般的な方法である。しかし、蛍光微粒子が検出用流路の壁面に付着し背景光を増大させることがある。そのような場合には、測定対象の微粒子から発せられる微弱な蛍光が検出できなくなり、測定感度が下がることが予想される。また、測定毎に位置合わせ用の蛍光微粒子を消費するため、測定の単価も上がる。
【0014】
ところで、特許文献1に記載の方法の場合、フローセルの前面及び後面からの反射光を検知することによって励起光の光軸方向の位置合わせを行うが、光源、レンズ、光学フィルタ、光検出器等で構成された微生物検出用の光学系の他に、光源、レンズ、アパーチャー、光アレイセンサ等で構成された合焦用の光学系が別途必要になる。このため、装置構成が複雑になり製作コストも増大する。
【0015】
また、一般的に流路を使い捨てにする場合、作製方法が容易であることから、一方が溝状の構造をもつ二枚の平板を張り合わせることにより、内部に矩形流路を構成した平板状のフローセルを検出用の流路に用いることが多い。例えば特許文献2に記載された方法の場合、流路からの散乱光の光量は励起光と流路が交差したときに急激に増加する。このため、励起光の光軸に垂直な方向について流路と励起光の位置合わせを行うことは可能である。しかし、光軸に平行な方向に流路を移動させても散乱光の光量はほとんど変化しない。従って、特許文献2に記載の方法は、光軸に対して平行な方向について散乱光の光量の変化から流路と励起光の位置合わせを行うことが難しい。
【0016】
本発明は、これらのことを考慮してなされたもので、蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物検査装置における検出用の流路(微生物検出部)と励起光との位置合わせについて、位置合わせ専用の光学系の設置や蛍光微粒子の流動を行わずに、励起光の光軸に対して平行方向について位置合わせできる微生物検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物検査装置において、微生物検出部から検出される蛍光の光量に基づいて、微生物検出部が設けられた微生物検査チップを保持するステージを励起光の光軸方向に移動制御し、励起光の光軸方向に対する微生物検出部(検出用の流路)の位置合わせを行うようにしたものである。
【0018】
また、本発明は、上記目的を達成するため、微生物検出部(検出用の流路)が設けられた微生物検査チップの所定箇所(微生物検出部(検出用の流路)との位置関係が決まっている箇所)に、照射される励起光との相対的な位置関係が変化することにより蛍光の光量が変化する標識を設け、微生物検出部(検出用の流路)の位置合わせを行う際に、この標識に励起光を照射して検出される蛍光の光量に基づいて、微生物検査チップを保持するステージを励起光の光軸方向に移動制御し、励起光の光軸方向に対する微生物検出部(検出用の流路)の位置合わせを行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
微生物検出部(フローセル)から検出される蛍光の光量は、空間上の各点から生じる蛍光の光量と、空間上の各点から生じる光に対する光学系の集光効率に依存する。このため、集光効率が高い空間上の点から生じる蛍光の光量が多くなるほど、検出装置で検出される蛍光の光量は増大する。また、蛍光量子収率は、微生物検出部(フローセル)を構成する部材の方が空気より高く、集光効率は光学系の焦点に近い光点ほど高くなる。このため、微生物検出部(フローセル)が励起光の焦点付近に位置したとき、検出器で検出される蛍光の光量は最も多くなる。
【0020】
以上の理由により、微生物検出部(フローセル)から検出される蛍光の光量と、微生物検出部(フローセル)の励起光に対する位置を関連付けることが可能となり、微生物検出部(フローセル)の位置を調整することが可能になる。この際、微生物検出部(フローセル)の蛍光は微生物を検出するための光学系により検出することができる。従って、位置合わせ専用の光学系が不要となり、装置の複雑化や装置コストの増大を防ぐことができる。また、位置合わせのときに蛍光微粒子を使用しないため、蛍光微粒子の流路壁面への付着による測定感度の悪化を防ぐことができ、更には蛍光微粒子の使用による測定コストの増加も防ぐことができる。
【0021】
これらの作用効果は、微生物検査チップの所定箇所に標識を設け、この標識に励起光を照射して検出される蛍光の光量に基づいて位置合わせを行う場合も同様である。この場合、微生物検査チップの標識を設ける必要があるが、微生物の検査に悪影響を与えることなく、蛍光の光量を増す構造を用いることができ、位置合わせの際の蛍光変化を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る微生物検査装置の概略構成を示す図である。
【図2A】本発明の実施の形態に係る微生物検出チップにおける微生物検出用流路を含む断面例を示す図である。
【図2B】本発明の実施の形態に係る微生物検出チップにおける微生物検出用流路を含む分解構造例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る微生物検査装置における微生物検査チップの位置合わせ手順例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る散乱光を用いた位置調整の仕組みを説明する模式図である。
【図5】本発明の実施の形態における散乱光の光量と微生物検出用流路の変位の関係を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る蛍光を用いた位置調整の仕組みを説明する模式図である。
【図7】本発明の実施の形態における蛍光の光量と微生物検出用流路の変位の関係を説明する図である。
【図8】微生物検出チップにおける微生物検出用流路付近の他の構造例を説明する図である。
【図9】微生物検査装置における分析工程の実施例を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る微生物検査チップの概略構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る微生物検査装置に搭載される検出装置の概略構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、後述する本発明の実施の形態は一例であって、公知又は周知の技術との組み合わせや置換による他の態様も可能である。
【0024】
(A)装置の全体構成例
図1に、本発明の実施の形態に係る微生物検査装置1の構成図を示す。微生物検査装置1は、検体や試薬を内部に保持し、微生物計測に必要な工程を行うための機構を内部に備えた微生物検査チップ10と、微生物計測に必要な工程を行うために、微生物検査チップ10と連結したチップ連結管1441〜1444を介して、微生物検査チップ10内の検体や試薬の搬送を制御するための圧力供給装置14と、微生物検査チップ10を保持し、微生物検査チップ10の位置を調整するX−Y可動ステージ125と、微生物検査チップ10内の微生物に励起光を照射し、微生物からの散乱光及び蛍光を電気信号に変換する検出装置11で構成されている。微生物検査装置1に連結したコンピュータ18は、圧力供給装置14に対する制御信号及びX−Y可動ステージ125に対する制御信号の出力と、検出装置11から入力される電気信号に対する信号処理を実行する。なお、電気信号の処理により得られた計測結果は、コンピュータ18に接続された出力装置19に表示される。
【0025】
圧力供給装置14は、圧力調節装置付のボンベ141を有する。ボンベ141には高圧の空気、不活性気体等が封入されている。ボンベ141と微生物検査チップ10の各通気口1591〜1594(図10)は、チップ連結管1441〜1444によって接続されている。チップ連結管1441〜1444には、バルブ1421〜1424がそれぞれ設けられている。バルブ1421〜1424を開閉することにより、微生物検査チップ10の容器に所定の圧力の気体を供給し、又は、微生物検査チップ10の容器を大気開放する。この圧力の制御により、微生物検査チップ10内における検体や試薬の搬送を実現する。
【0026】
微生物検査チップ10は、検体1511を保持するための検体容器151と、検体中の微生物の染色するための染色液(試薬液)1521を保持し、検体と染色液を混合、反応させる微生物染色液容器152と、希釈液1551を保持し、検体と染色液の混合液を希釈させる希釈液容器155と、励起光源111より励起光113を照射し、微生物を観測するための微生物検出用流路173を内部に備えた微生物検出部17と、微生物検出用流路173を通過した検体1511と染色液1521の混合液を廃棄するための検出液廃棄容器156と、検体容器151、微生物染色液容器152、希釈液容器155、微生物検出用流路173を連結し、検体1511や混合液が流動するための溶液用流路1571〜1574(図8、図10)と、検体1511や混合液を気圧により流動させるため圧力供給装置14と各容器を接続する通気用流路1581〜1584(図10)とで構成されている。この明細書においては、検体液の流れに沿って検体容器151の側を上流側、微生物検出用流路173の側を下流側と定義する。
【0027】
検出装置11は、励起光源111と、散乱光検出部(特許請求の範囲における「第2の検出器」に対応する。)と、蛍光検出部(特許請求の範囲における「第1の検出器」に対応する。)とで構成される。このうち、散乱光検出部は、微生物検出用流路173を通過する微生物からの散乱光124を検出するための散乱光検出器123と、励起光源111からの励起光113が散乱光検出器123に直接入射することを防ぐための遮光板122とから構成される。一方、蛍光検出部は、微生物検出用流路173を通過する微生物からの蛍光121を集光し、平行光にする対物レンズ114と、励起光113を微生物検出部17の方向に反射する一方で蛍光121は透過するダイクロイックミラー112と、蛍光121を通過するバンドパスフィルタ117と、平行光を集光させるための集光レンズ118と、迷光をカットするための空間フィルタとして用いるピンホール119と、バンドパスフィルタ117を通過した光を検出する光検出器120とで構成される。なお、照射部及び検出部は、互いの焦点が重なるように配置され、測定時には微生物検出用流路173を焦点の位置に調整できるように構成されている。
【0028】
検出装置11は、励起光源111から出力された励起光113を微生物検出用流路173に照射し、微生物検出用流路173から生じる散乱光の光量と微生物検出部17から生じる蛍光の光量をそれぞれ検出することにより、X−Yステージ125の可動位置と各光量との関係をプロファイルとして取得する。また、検出装置11は、取得されたプロファイルに基づいてX−Y可動ステージ125を可動制御し、微生物検査チップ10(具体的には、微生物検出用流路173)を検出に適した位置に合わせる。即ち、検出装置11で取得されたプロファイルはコンピュータ18にストックされ、コンピュータ18からX−Y可動ステージ125へ制御信号が出力され、位置合わせが行われる。
【0029】
(B)微生物検査チップの構造例
図2A及び図2Bを用い、微生物検査チップ10のうち微生物検査部17の構造を説明する。図2Aは、微生物検査チップ10の本体15と微生物検出部17の接合部の断面図を示す。図2Bは、微生物検出部17の分解斜視図を示す。
【0030】
なお、本体15と微生物検出部17はそれぞれ別工程で作製され、それぞれを接合する。本実施の形態では、微生物検出部17は内部に流路を備えた平板上のフローセルとして構成されている。まず、微生物検出部17の製造方法を説明する。微生物検出部17はカバー部材171と流路部材172からなり、両者は共に薄い平板からなる。流路部材172には溝1731が形成されており、この溝1731の両端には貫通孔1741、1751が形成されている。溝1731が形成された面が張り合わせ面となるように、カバー部材171と流路部材172を張り合わせる。この貼り合わせにより微生物検出部17が形成される。流路部材172の溝1731とカバー部材171によって微生物検出用流路173が構成される。流路部材172の貫通孔1741、1751によって、微生物検出用流路入口174と微生物検出用流路出口175が構成される。
【0031】
一方、本体15に形成された希釈液容器−微生物検出用流路間流路1573は、その下端にて流路方向を変更し、本体15の表面に開口を形成している。同様に、微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574は、その上端にて流路方向を変更し、本体15の表面に開口を形成している。希釈液保持容器−微生物検出用流路間流路1573の開口は、微生物検出用流路入口174に接続され、微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574の開口は、微生物検出用流路出口175に接続されている。
【0032】
本体15には検出用窓枠部161が形成されている。検出用窓枠部161は、貫通孔、又は、貫通溝である。検出用窓枠部161は、希釈液容器−微生物検出用流路間流路1573の開口と微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574の開口の間に形成されている。製造された微生物検出部17は、前述したように、本体15に装着される。図2Aに示すように、本体15の検出用窓枠部161の上に微生物検出用流路173が配置されるように、微生物検出部17を装着する。
【0033】
本実施の形態の場合、微生物検出用流路173の背後に、本体15の貫通孔又は貫通溝である検出用窓枠部161が設けられる。従って、励起光113は、微生物検出部17のみを照射し、本体15を照射しない。このため、背景光の増加の原因となる本体15からの反射光や自家蛍光は発生しない。微生物検出用流路173を通過した励起光113が、本体15に照射されないためには、検出用窓枠部161を構成する貫通孔の断面は、励起光113の放射方向に沿って増加することが好ましい。
【0034】
カバー部材171の厚さは、例えば0.01μm〜1mmとする。流路部材172の厚さは、例えば0.01μm〜1mmとする。微生物検出用流路173の断面形状は、例えば正方形、長方形、台形に形成する。微生物検出用流路173の断面寸法は、大きいほど圧力損失は小さくなるが、微生物を一個ずつ流すためには小さいほうが良い。微生物検出用流路173の断面の一辺は、例えば1μm〜1mmが好ましく、長さは例えば0.01mm〜10mmが好ましい。微生物検出用流路173に照射する励起光113の光軸は、微生物検出用流路173の方向ベクトルに対して垂直になる。
【0035】
微生物検出部17を構成する材料について説明する。微生物検査チップ10はディスポーザブルである。すなわち、使用後、微生物検出部17は本体15と共に廃棄する。そのため、微生物検出部17に用いる材料は、安価でなければならない。微生物検出部17に用いる材料は、蛍光計測に好適なように、光学特性に優れている必要がある。すなわち、自家蛍光が低く、光透過性、面精度、屈折率などに優れていることが望ましい。微生物からの蛍光の検出を阻害しないためには、微生物検出部17自身が発生する自家蛍光量が、微生物からの蛍光量に比べて十分小さいことが好ましい。
【0036】
微生物検出部17の表面に、曲面、凹凸等が存在すると、表面における光の屈折、又は、乱反射により微生物計測用流路173に照射される励起光113の光量が変動する。そのため、検出される蛍光量も変動し、計測精度が低下する。そのため、微生物検出部17の表面は、所望の平面度を有する必要がある。微生物検出部17は、凹凸が0.1mm以下の平面度を有することが好ましい。
【0037】
このような条件を考慮すると、微生物検出部17に用いる材料には、ガラス、石英、ポリメタクリル酸メチルエステル(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネイト等が考えられる。微生物検出部17は、これらの物質から選択された1種類以上の物質から形成される。
【0038】
カバー部材171は単なる平板であるが、流路部材172は平板に溝及び貫通孔を形成したものである。従って、流路部材172は、微細加工が容易で、且つ、加工費が安価な材料によって形成される。ガラス、及び、石英は、光学特性が優れているが、微細加工が容易でない。すなわち、微細加工を行うと、加工費が高くなる。
【0039】
そこで、この本実施の形態の場合、カバー部材171をガラス又は石英によって構成し、流路部材172をポリメタクリル酸メチルエステル、ポリジメチルシロキサン、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネイトによって構成する。なお好ましくは、流路部材172をポリジメチルシロキサンによって構成する。この場合、カバー部材171と流路部材172の接合には、ポリジメチルシロキサンの自己接着性を利用する。
【0040】
微生物検出部17の自家蛍光量は、材料ばかりでなく、微生物検出部の厚さ寸法にも依存する。自家蛍光量を少なくするには、微生物検出部の厚さ寸法を小さくすれば良い。微生物検出部17の厚さが小さいほど、微生物検出部17から発生する自家蛍光量は少なくなる。しかしながら、カバー部材171及び流路部材172の厚さ寸法を小さくすると、製造が困難になり、平面度が悪化する。必要な平面度を保ち、微生物の蛍光の検出を阻害しないように自家蛍光量を抑制するには、これらの部品の厚さ寸法は、所定の範囲に制限するする必要がある。
【0041】
ガラス、石英、ポリジメチルシロキサンの自家蛍光量はほぼ同等である。そこで、カバー部材171をガラス又は石英によって製造する場合、その厚さは、例えば0.05mm以上1mm以下が好ましい。流路部材172を、ポリジメチルシロキサンによって製造する場合、その厚さは例えば0.1mm以上1mm以下が好ましい。
【0042】
また、カバー部材171及び流路部材172を、シクロオレフィンポリマー、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリエチレンテレフタラート、又は、ポリカーボネイトによって製造しても良い。この場合、ガラス、又は、石英によってカバー部材171を製造し、ポリジメチルシロキサンによって流路部材172を製造する場合より、単位体積当たりの自家蛍光量が約3倍以上増加する。そのため、カバー部材171及び流路部材172の厚さは例えば0.01mm以上0.3mm以下が好ましい。
【0043】
(C)位置合わせ動作
図3に、微生物検査チップ10の位置合わせ手順例を示す。検査装置11は、図3に示す手順例に従い、微生物検出流路173と励起光113との位置合わせを実行する。
【0044】
図4〜図7は、微生物検出用流路173の位置調整の仕組みを説明するための模式図である。なお、カバー部材171はガラスで構成され、流路部材172はカバー部材171より厚く、ポリジメチルシロキサンで構成されているものとする。ポリジメチルシロキサンの方がガラスより単位体積当たりの自家蛍光量は高い。
【0045】
微生物検査チップ10をX−Y可動ステージ125にセットした後、励起光源111からの励起光113を微生物検出用流路173に照射する(S301)。次に、X−Y可動ステージ125により微生物検査チップ10を励起光113の光軸に対し垂直方向(X方向)に動かす(図4)。このとき、微生物検出用流路173の座標中心を(Xc,Yc)とする。
【0046】
本実施の形態では、先ず、X方向の位置合わせを行い、その後Y方向の位置合わせが行われる。本実施の形態では、微生物検出用流路からの散乱光の強度変化でX方向の位置合わせを行っている。尚、X方向の位置合わせについてはこの方法によらず他の方法を用いても良い。
【0047】
励起光113の照射範囲の幅w(励起光113がガウス分布のレーザーであれば、強度が、中心強度をe2 で除算した値(=中心強度/e2 )まで低下する範囲の直径)が微生物検出用流路173の幅dより大きい場合であれば、励起光113の光量は中心が最も多くなる。このため、励起光113の中心に微生物検出用流路173が重なるとき(すなわち、Xc=Xmのとき)、散乱光の光量Iは最も多くなる。このとき微生物検出用流路173のX方向の変位と検出装置11で検出される散乱光の光量Iの関係は図5のようになる。
【0048】
検出装置11は、X方向の変位と検出される散乱光の光量Iのプロファイルをコンピュータ18でストックし、散乱光の光量Iが最大となる微生物検出用流路173の中心の位置をXmとし、微生物検出用流路173の中心をXm(=Xc)に移動する(S302)。なお、位置合わせにおいては、Xm(=Xc)の位置に移動させることが望ましいが、ある程度の誤差は許容される。即ち、レーザーのX方向の強度分布が最大の80%以内の範囲に検出用流路が入れば微生物検査においては特に問題がないので、その範囲の誤差は許容される。例えば、レーザーの強度分布が80%以上の範囲がレーザー中心より±30μmの場合、流路幅が40μmであれば、許容範囲は±10μmであり、この位置に少なくとも微生物検出用流路173の中心が入るように位置合わせが行われる。
【0049】
さらに精度向上のため、コンピュータ18は、検出装置11に基づき、Xm−a〜Xm+aの範囲でX−Y可動ステージ125を励起光軸に対して垂直方向(X方向)に動かすように制御する。この検出装置11によるX−Y可動ステージ125の移動は、散乱光の光量の微分値dI/dxが連続して負になる点で終了する(S303)。
【0050】
因みに、励起光113の照射範囲の幅wが微生物検出流路173の幅dより小さい場合には、微生物検出流路173の側面と励起光113の中心が重なるとき、散乱光の光量が最大となる。このため、X方向の変位に対し、検出装置11で検出される蛍光量Iのピークは二つになる。この場合、検出装置11は、二つのピークの中間点をXmとし、微生物検出用流路173と励起光113の中心を重ねるようにX−Y可動ステージ125を可動制御する。
【0051】
次に、Y方向の位置合わせを行う。本実施の形態では流路構成部品からの蛍光の強度変化で位置合わせを行っている。検査装置11は、X−Y可動ステージ125の可動制御を通じ、微生物検査チップ10を励起光113の光軸に対し平行方向(Y方向)に動かす(図6,S304)。微生物検出部17は、励起光113に照射されている箇所から蛍光を発する。このとき、Y方向の変位と検出装置11で検出される蛍光の光量Iの関係は図7に示すようになる。単位体積当たりから発せられる蛍光量は、単位体積に存在する物質の蛍光量子収率と単位体積当たりに照射される励起光113の光量に比例する。また、単位体積当たりに照射される励起光113の光量は光学系の焦点付近が最も多くなる。さらに、検出装置11の光学系の焦点に近い位置にある光点ほど集光効率が高くなる。このため、蛍光量子収率の高い物質が焦点付近に位置したとき、検出装置11で検出される蛍光の光量Iは最も多くなる。流路部材172の材料であるポリジメチルシロキサンのほうがカバー部材171の材料であるガラスより蛍光量子収率が高いため、流路部材172が励起光113の焦点に重なったとき、検出される蛍光の光量Iは最も多くなる。
【0052】
検査装置11は、X方向の場合と同様に、Y方向の変位と検出される蛍光の光量Iのプロファイルをコンピュータ18でストックし、蛍光の光量Iが最大となる微生物検出用流路173の中心の位置を(Ym(=Yc))とする。このときの微生物検出用流路173の中心と励起光113の焦点の距離をAとする(S305)。検査装置11は、微生物検出用流路173の中心と励起光113の焦点をより正確にあわせるためには距離Aだけ補正したYm−Aの位置に微生物検出用流路173を動かす。ここで、蛍光の光量Iが最大となるときの微生物検出部17と励起光113の焦点の位置関係は、励起光113の強度分布、光学系の集光効率、微生物検出部17の構造、部材の蛍光量子収率により決まる。もっとも、屈折の方式を基準にした計算式である光線追跡法により、検出される蛍光の光量Iが最大となる微生物検出部17と励起光113の焦点の位置関係を求め、変位Aを決定しても良い。流路部材172が薄く変位Aが微小の場合には、補正を行わなくても計測に大きな問題は無い。
【0053】
なお、Y方向の位置合わせにおいてもX方向と同様にある程度の誤差は許容される。即ち、取得した蛍光強度が最大の95%以上となる位置をYmとしても、微生物検査においては特に問題がないので、その範囲の誤差は許容される。例えば、本実施の形態の光学系でのYmの許容範囲が±20μmで、流路深さが20μmであれば、位置合わせの許容範囲は±10μmである。
【0054】
さらに精度向上のため、検出装置11は、Ym−b〜Ym+bの範囲でX−Y可動ステージ125を励起光軸に平行方向(Y方向)に動かすように制御する。この検出装置11によるX−Y可動ステージ125の移動は、蛍光の光量Iが最大になる位置Ymで終了する(S306)。
【0055】
なお、X方向とY方向のそれぞれについて、XmとYmを求める処理動作を繰り返す手法を採用すれば、より高精度にて位置合わせを行うことができる。
【0056】
(D)微生物検査チップの他の構造例
図8に、微生物検査チップ10の微生物検出部17の別の実施の形態を示す。図8の場合、微生物検出部17の一部に標識176が組み込まれている。標識176は、散乱光又は反射光又は蛍光の光量を増すための構造であり、微生物検出用流路173の近傍に流路方向と平行になるように配置される。X−Y可動ステージ125(図1)により、微生物検査チップ10を励起光113の光軸に対し垂直方向(X方向)に動かすと、励起光113の中心に標識176が重なるとき(Xm)、散乱光又は反射光又は蛍光の光量が最大になる。標識176と微生物検出用流路173とのX方向の関係の位置関係は設計段階で明らかになっている。従って、散乱光又は反射光又は蛍光の光量が最大となった位置から予め決まった量を移動させることにより微生物検出部のX方向の位置合わせを行う。従って、励起光113に垂直な方向について、微生物検出用流路173と励起光113の位置合わせを行うことが可能になる。
【0057】
散乱光の光量を増すことができる標識176の構造には、例えば無数の細かい突起物又は凹凸を形成した構造や、内部に無数の気泡や微粒子を形成する構造が考えられる。また、同じく反射光の光量を増すことができる標識176の構造には、例えば励起光113の波長に対する反射率の高い物質を内部又は表面に備える構造が考えられる。また、蛍光の光量を増すことができる標識176の構造には、励起光113により蛍光を発する物質を内部又は表面に備える構造が考えられる。
【0058】
また、標識176と微生物検出部(検出用の流路)とのX方向及びY方向との位置関係が正確に決まっていれば、X方向と同様にY方向についても位置合わせを行うことが可能である。即ち、Y方向については、標識176を蛍光の光量を増すための構造(照射される励起光との相対的な位置関係が変化することにより蛍光の光量が変化する標識)とすることにより、上述した検出用流路に励起光を照射して蛍光を検出して位置合わせを行う原理が成立する。位置合わせの際に、蛍光の光量が最大となった位置から予め決まった量を移動させることにより微生物検出部のY方向の位置合わせを行うことができる。
【0059】
(E)微生物の計測
以下、本発明の実施の形態に係る微生物検査装置1を用いて、食品由来の検体中の生菌数を計測する場合の実施例を説明する。図9に、微生物検査チップ10を用いた生菌数計測の工程をフローチャートで示す。また、図10に、微生物検査チップ10の平面図を示す。
【0060】
最初に微生物検査チップ10の構成について説明する。微生物検査チップ10は、検体1511を保持するための検体容器151と、検体中の微生物の染色するための染色液(試薬液)1521を保持するための微生物染色液容器152と、希釈液1551を保持するための希釈液容器155と、検体中に含まれる食品残渣を取り除くためのフィルタである食品残渣除去部160と、外部光源より励起光を照射し、微生物の蛍光を観測するための微生物検出用流路173と、微生物検出用流路173を通過した検体1511、微生物染色液1521、希釈液1551の混合液を廃棄するための検出液廃棄容器156と、検体容器151、食品残渣除去部160、微生物染色液容器152、希釈液容器155、微生物検出用流路173を連結し、検体1511や混合液を流動させるための溶液用流路1571〜1574と、各容器内の検体1511や混合液を気圧により流動させるための通気口1591〜1594と、通気口1591〜1594と各容器を接続する通気用流路1581〜1584とを備える。
【0061】
溶液用流路1571〜1574、通気口1591〜1594及び通気用流路1581〜1584は連結する容器の名称から、検体容器−微生物染色液容器間流路1571、微生物染色液容器−希釈液容器間流路1572、希釈液容器−微生物検出用流路間流路1573、微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574、検体容器通気口1591、微生物染色液容器通気口1592、希釈液容器通気口1593、検出液廃棄容器通気口1594、検体容器通気流路1581、微生物染色液容器通気流路1582、希釈液容器通気流路1583、検出液廃棄容器通気流路1584とする。
【0062】
検体容器1511と、食品残渣除去部160と、微生物染色液容器152と、希釈液容器155と、微生物検出用流路173と、検出液廃棄容器156は、溶液用流路1571〜1574により直列に連結されている。
【0063】
図10の場合、溶液用流路1571〜1574の深さ及び流路幅は例えば10μm〜1mm、通気用流路1581〜1584の深さ及び流路幅は例えば10μm〜1mmの範囲で形成され、溶液用流路1571〜1574の断面積は通気用流路1581〜1584の断面積より大きくなるように形成される。
【0064】
微生物染色液1521は、微生物検査チップ10内に前もって封入されている。検体1511は、検査前に通気口1591から検体容器151に注入し、希釈液1551は検査前に通気口1593から希釈液保持容器155に注入する(S901)。
【0065】
検体容器151の体積は、検体1511の体積より大きい。微生物染色液保持容器152の体積は、検体1511と微生物染色液1521の合計体積より大きい。希釈液保持容器155の体積は、検体1511、微生物染色液1521、希釈液1551の合計体積より大きい。また、検体容器−微生物染色液容器間流路1571の最高点は、検体容器151中の検体1511の水位より高くなるように形成される。これと同様に、微生物染色液容器−希釈液容器間流路1572の最高点は、検体1511と微生物染色色素1521の混合液の水位より高くなるように形成される。さらに、希釈液容器−微生物検出用流路間流路1573の最高点は、検体1511、微生物染色色素1521、希釈液1551の混合液の水位より高くなるように形成される。
【0066】
ここで使用した検体1511は、検査する食品に対し質量比10倍の生理食塩水を加え、ストマッキング処理を行ったものであり、希釈液1551は主に生理食塩水又は純水である。
【0067】
微生物染色液は、死菌を染色するための死菌染色液と全菌を染色するための全菌染色液の混合液であり、死菌染色液には、例えば、PI(プロピディウムイオダイド)(0.1μg/ml〜1mg/ml)を使用し、全菌染色液には、例えば、DAPI(4'、6−ヂアミジン−2'−フェニルインドール)(1μg/ml〜1mg/ml)、AO(アクリジンオレンジ)(1μg/ml〜1mg/ml)、EB(エチジウムブロマイド)(1μg/ml〜1mg/ml)、LDS751(0.1μg/ml〜1mg/ml)などを使用する。
【0068】
微生物検査チップ10を用いた生菌数測定は、図9に示すように、微生物検査チップ10を微生物検査装置(分析装置)1にセットした状態で開始される(S902)。この測定工程は、微生物検査チップ10の位置合わせを行う位置合わせ工程(S907)と、検体から食品残渣を取り除いて検体中の微生物を染色する前処理工程(S903〜S906)と、生菌数を実際に測定する計測工程(S908)とで構成される。
【0069】
位置合わせ工程(S907)と前処理工程(S903〜S906)は独立した工程であるため並列して行い、両工程が終了した段階で計測工程(S908)を行う。続いて、各工程における各液体の移動について説明する。
【0070】
前処理工程では、まず、検体1511が微生物染色液容器152に移動される(S903)。次に、通気口1591を介して検体容器151に対して圧力供給装置14の圧力を加える。これにより、検体容器151内の気圧を上げる。同時に、微生物染色液容器通気口1592を介して微生物染色液容器152の内圧を大気圧に開放する。気圧差により、検体1511は、微生物染色液容器152に入り、微生物染色液1521と混合される。混合には、バブリングを使用する(S904)。検体1511中の死菌は、死菌染色液(ここではPI(ピーク波長532nm)を使用する。)と全菌染色液(ここではLDS751を(ピーク波長710nm)使用する。)により染色され、一方、検体1511中の生菌は全菌染色液のみにより染色される。
【0071】
二液の混合液の水位は、微生物染色液容器152と希釈液容器155を連結する微生物染色液容器−希釈液容器間流路1572の最高点を越えず、さらに微生物染色液容器152中に入っている空気は、微生物染色液容器通気口1592を介して外部に放出される。微生物染色液容器152の気圧は大気圧と等しいため、二液の混合液は希釈液容器155に押し出されず、混合液を反応に必要な時間中、微生物染色液容器152に保持することができる。
【0072】
このとき、混合液の希釈液容器155への流入を防ぐ目的で、各通気口1593〜1594に対して圧力供給装置14からの圧力を加え、検体容器151の気圧より低い範囲まで希釈液容器155と検出液廃液容器156の気圧を上げても良い。
【0073】
なお、染色中は、微生物検査チップ10の温度を一定に保つことにより、温度変化による染色の影響を小さくすることが望ましい。
【0074】
また、検体1511が食品残渣除去部160を経て、微生物染色液保持容器152へ流動する際に、検体1511中の食品残渣は、食品残渣除去部160により検体1511から取り除かれる。
【0075】
次に、検体1511、微生物染色液1521の混合液を、希釈液容器155に移動させる(S905)。希釈液1551が混合液に追加され、混合液中に含まれる未結合色素(微生物を染色しない微生物染色液1521)の濃度を低下させる。なお、混合液と希釈液1551との混合は、バブリング(S906)を使用する。未結合色素の濃度を低下することにより、検出の際にノイズの原因となる未結合色素の発する蛍光量を低減させる。
【0076】
以上で、前処理工程が終了する。また、この前処理工程と並行して、前述した本発明の実施の形態で説明した微生物検査チップ10の位置合わせが実行される。
【0077】
以上の動作が終了すると、検体1511と微生物染色液1521と希釈液1551との混合液が微生物検出用流路173に移動される(S908)。図10の場合、紙面垂直方向より、励起光113が照射される。このため、微生物を染色した色素からの蛍光と、微生物による散乱光が生じる。検出装置11は、生菌については全菌染色液の蛍光のみを検出し、死菌については全菌染色液と死菌染色液の蛍光を検出する。このため、生菌と死菌の判別が可能になる。また、散乱光の光量は菌体の大きさにより変わるため、菌体の大きさの判別も可能になる。
【0078】
(F)検出装置の構成例
以下では図11を参照し、微生物検査装置1を構成する検出装置11の構成例を説明する。検出装置11は、前述したように、食品由来の検体中の生菌数を計測するのに好適である。すなわち、検出装置11を用いれば、生菌数と死菌数を判別することができる。検出装置の光学系は、蛍光色素の励起スペクトルと蛍光スペクトルによって異なる場合もある。ここでは、死菌染色液としてPI(励起波長ピーク532nm、蛍光波長ピーク615nm)を使用し、全菌染色液としてLDS751(励起波長ピーク541nm、蛍光波長ピーク710nm)を使用する場合について説明する。
【0079】
図11における検出装置11の光学系は、2種類の蛍光色素を使用する場合に好適なように構成されている。勿論、3種類以上の蛍光色素を使用する場合には、各色素に応じて光学系を用意する。
【0080】
検出装置11は、励起光源111(波長532nm)と、微生物検出用流路173を通過する微生物からの散乱光124を検出するための散乱光検出器123と、励起光源111からの励起光113が散乱光検出器123に直接入射することを防ぐための遮光板122と、励起光113を反射し、微生物の蛍光を透過する励起光−蛍光分離用ダイクロイックミラー112と、微生物検出用流路173を通過する微生物からの蛍光を集光し、平行光にする対物レンズ114と、波長610nm以下の光を反射し、波長610nm以上の光を通過させる蛍光分離用ダイクロイックミラー115と、ミラー116と、波長610nm近傍の波長の光のみ通過させる短波長用バンドパスフィルタ1171と、波長710nm近傍の波長の光を通過させる長波長用バンドパスフィルタ1172と、平行光を集光させるための短波長用集光レンズ1181、長波長用集光レンズ1182と、迷光をカットするための空間フィルタとして用いる短波長用ピンホール1191、長波長用ピンホール1192と、短波長用バンドパスフィルタ1171を通過した蛍光1211を検出する短波長用光検出器1201と、長波長用バンドパスフィルタ1172を通過した蛍光1212を検出する長波長用光検出器1202とを有する。
【0081】
なお、励起光源111にはレーザー光源を使用し、散乱光用光検出器にはフォトダイオードを使用し、短波長光検出器1201と長波長光検出器1202にはフォトマルチプライヤ(PMT:Photomultiplier)を使用するものとする。上述したように、微生物検査チップ10の微生物検出用流路173の位置合わせは完了しているものとする。すなわち、対物レンズ114の焦点の位置に、微生物検査チップ10の微生物検出用流路173が配置されているものとする。
【0082】
励起光源111から出力された励起光(波長532nm)は、励起光−蛍光分離用ダイクロイックミラー112で反射されて進行方向を変更し、微生物検出用流路173を照射する。この照射により微生物検出用流路173を流れる微生物を染色したPI及びLDS751は励起される。死菌染色液PIからの蛍光1211(PIは中心波長610nm)と全菌染色液LDS751からの蛍光1212(中心波長710nm)は、いずれも対物レンズ114に入射する。
【0083】
死菌染色液PIからの蛍光1211は蛍光分離用ダイクロイックミラー115で反射され、全菌染色液LDS751からの蛍光1212は蛍光分離用ダイクロイックミラー115を通過する。こうして、2つの色素由来の蛍光は波長の違いにより分離できる。死菌染色液PIからの蛍光1211は短波長用バンドパスフィルタ1171を通過し、短波長用集光レンズ1181によって集光され、短波長用ピンホール1191を通過し、短波長用光検出器1201に入射する。全菌染色液LDS751からの蛍光1212は長波長用バンドパスフィルタ1172を通過し、長波長用集光レンズ1182によって集光され、長波長用ピンホール1192を通過し、長波長用光検出器1202に入射する。
【0084】
また、励起光源111から出力された励起光が微生物検出用流路173を流れる微生物に当たることにより散乱光124が生じる。散乱光の光量は微粒子の大きさによって変わるため、微粒子の大きさを計測することができる。微粒子の大きさについて測定情報が得られれば、微生物と食品残渣等のゴミとを判別することができる。
【0085】
短波長用光検出器1201と長波長用光検出器1202で検出された蛍光と、散乱光用光検出器123で検出された散乱光はそれぞれ電気信号に変換された後、コンピュータ18(図1)に送られる。コンピュータ18は、短波長用光検出器1201、長波長用光検出器1202、散乱光用光検出器123から送られた電気信号を処理し、微生物数の情報を検査結果として出力装置19(図1)に出力する。
【0086】
短波長用光検出器1201の出力より、死菌数が得られ、長波長用光検出器1202の出力より全菌数が得られる。また、2つの菌数の差から生菌数が得られる。
【0087】
ところで、微生物検出部17の表面では、励起光源111からの励起光113の一部が反射し、検出装置11に戻る可能性がある。この反射を防止するためには、微生物検出部17の法線ベクトルと励起光113の光軸は平行でないことが好ましい。すなわち、微生物検出部17の法線ベクトルと励起光113の光軸の間の角度αは、α=10〜20°であることが好ましい。図11では、このような取り付け例を表している。
【0088】
図11では、微生物検出部17の表面と励起光113の光軸の成す角をθとして表している。θ+α=90°である。θは90度未満であるが、励起光113が、微生物検出部17の表面で全反射しないように設定する。θは80〜70°であっても良い。なお、微生物検出部17の法線ベクトルと励起光113の光軸が平行とならないように、微生物検出部17を傾斜させるが、励起光は微生物検出用流路173に対して垂直方向より照射する。
【符号の説明】
【0089】
1…微生物検査装置、10…微生物検査チップ、11…検出装置、14…圧力供給装置、17…微生物検出部、18…コンピュータ、19…出力装置、111…励起光源、113…励起光、114…対物レンズ、115…蛍光分離用ダイクロイックミラー、116…ミラー、119…ピンホール、121…蛍光、124…散乱光、125…X−Y可動ステージ、151…検体容器、152…微生物染色液容器、155…希釈液容器、156…検出液廃棄容器、161…検出用窓部、173…微生物検出用流路、1171…短波長バンドパスフィルタ、1172…長波長バンドパスフィルタ、1181、1182…集光レンズ、1191、1192…ピンホール、1201…短波長用光検出器、1202…長波長用光検出器、1211…PIからの蛍光、1212…LDS751からの蛍光、1571〜1574…溶液用流路、1581〜1584…通気用流路、1591〜1594…通気口。
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生菌数計測の迅速化および簡便化を目的としたさまざまな簡便迅速測定法を実施する計測装置が知られている。特に、生菌数を迅速に直接計測する手法として、蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物測定装置がある。
【0003】
蛍光フローサイトメトリー法は、蛍光色素で染色した細菌、プランクトンなどの微生物を含む検体液の流径を細くすることによって、流路に流れる微生物を一個ずつ計測する方法である。この方法を用いた微生物測定装置には、一分間に一万個以上の微生物を一個ずつ計測できるものもある。また、この方法を用いた微生物測定装置には、検体中の成分が流路壁面に付着しないように検体液とシース液の層流を形成し、二液の圧力差を利用して検体の流径を絞り込む手法が採用されている。
【0004】
さらに、この方法を用いた微生物測定装置の低価格化や洗浄の手間を省略する目的で、蛍光フローサイトメトリー法による測定が行われる流路部分を使い捨てにし、使い捨ての流路内で測定を行う手法が知られている(非特許文献1を参照)。
【0005】
蛍光フローサイトメトリー法においては、検出用の流路と、検体を励起するための励起光の位置調整が重要になる。蛍光フローサイトメトリー法における検出用の流路と励起光の位置合わせは、標識となる蛍光微粒子を検出用の流路に流し、蛍光微粒子が発する蛍光を目印として行うのが一般的である。
【0006】
検出用の流路に標識を流さずに位置あわせを行う例もある。例えば特許文献1には、矩形のガラス管で構成されたフローセルを流れる検体粒子にレーザー光を照射し、検体粒子による散乱光及び蛍光を測光する粒子解析装置についての記載がある。具体的には、合焦検出用の光源から発せられたレーザー光を、光路の中心から片側に偏心したスリットを備えたアパーチャーマスクを経てフローセル内に投影し、フローセルの前面及び後面からの反射光の検知により合焦状態を検出する粒子解析装置が記載されている。
【0007】
また例えば、特許文献2には、平板状フローセルを使用したフローサイトメーターについての記載がある。平板状フローセルとは、一方が溝状の構造をもつ二枚の平板を張り合わせ、内部に矩形の流路を備えた構造をいう。この装置の場合、励起光源からの光ビームは平板状フローセルを照射し、平板状フローセル内の矩形流路と光ビームが交差したときに強い散乱光が生じる。そこで、この装置では、散乱光の出力と平板状フローセル又は光ビームの位置を関連付け、平板状フローセル又は光ビームを移動させることにより位置合わせを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−91836号公報
【特許文献2】特開2004−69634号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Biomolecular Techniques,Vol14,Issue2,pp.119-127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物測定装置では、非常に細く形成された検出用の流路に励起光を照射し、測定対象である微粒子が出す蛍光を検出する。このため、励起光及び検出器の焦点に流路の位置を合わせる必要がある。
【0011】
しかし、励起光及び検出器の焦点の範囲と流路の幅は数ミクロンから数百ミクロンであり、高精度の測定を行うためには数十ミクロンの精度の位置合わせが必要になる。
【0012】
特に、流路部分を使い捨てにする場合には、測定毎に励起光と流路の位置合わせを行う必要がある。このため、発明者は、簡便な位置あわせの方法が必要であると考えるに至った。
【0013】
また、蛍光微粒子を検出用の流路に流し、蛍光微粒子の発する蛍光を目印として位置合わせを行う方法は、前述したように蛍光フローサイトメトリー法における一般的な方法である。しかし、蛍光微粒子が検出用流路の壁面に付着し背景光を増大させることがある。そのような場合には、測定対象の微粒子から発せられる微弱な蛍光が検出できなくなり、測定感度が下がることが予想される。また、測定毎に位置合わせ用の蛍光微粒子を消費するため、測定の単価も上がる。
【0014】
ところで、特許文献1に記載の方法の場合、フローセルの前面及び後面からの反射光を検知することによって励起光の光軸方向の位置合わせを行うが、光源、レンズ、光学フィルタ、光検出器等で構成された微生物検出用の光学系の他に、光源、レンズ、アパーチャー、光アレイセンサ等で構成された合焦用の光学系が別途必要になる。このため、装置構成が複雑になり製作コストも増大する。
【0015】
また、一般的に流路を使い捨てにする場合、作製方法が容易であることから、一方が溝状の構造をもつ二枚の平板を張り合わせることにより、内部に矩形流路を構成した平板状のフローセルを検出用の流路に用いることが多い。例えば特許文献2に記載された方法の場合、流路からの散乱光の光量は励起光と流路が交差したときに急激に増加する。このため、励起光の光軸に垂直な方向について流路と励起光の位置合わせを行うことは可能である。しかし、光軸に平行な方向に流路を移動させても散乱光の光量はほとんど変化しない。従って、特許文献2に記載の方法は、光軸に対して平行な方向について散乱光の光量の変化から流路と励起光の位置合わせを行うことが難しい。
【0016】
本発明は、これらのことを考慮してなされたもので、蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物検査装置における検出用の流路(微生物検出部)と励起光との位置合わせについて、位置合わせ専用の光学系の設置や蛍光微粒子の流動を行わずに、励起光の光軸に対して平行方向について位置合わせできる微生物検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物検査装置において、微生物検出部から検出される蛍光の光量に基づいて、微生物検出部が設けられた微生物検査チップを保持するステージを励起光の光軸方向に移動制御し、励起光の光軸方向に対する微生物検出部(検出用の流路)の位置合わせを行うようにしたものである。
【0018】
また、本発明は、上記目的を達成するため、微生物検出部(検出用の流路)が設けられた微生物検査チップの所定箇所(微生物検出部(検出用の流路)との位置関係が決まっている箇所)に、照射される励起光との相対的な位置関係が変化することにより蛍光の光量が変化する標識を設け、微生物検出部(検出用の流路)の位置合わせを行う際に、この標識に励起光を照射して検出される蛍光の光量に基づいて、微生物検査チップを保持するステージを励起光の光軸方向に移動制御し、励起光の光軸方向に対する微生物検出部(検出用の流路)の位置合わせを行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
微生物検出部(フローセル)から検出される蛍光の光量は、空間上の各点から生じる蛍光の光量と、空間上の各点から生じる光に対する光学系の集光効率に依存する。このため、集光効率が高い空間上の点から生じる蛍光の光量が多くなるほど、検出装置で検出される蛍光の光量は増大する。また、蛍光量子収率は、微生物検出部(フローセル)を構成する部材の方が空気より高く、集光効率は光学系の焦点に近い光点ほど高くなる。このため、微生物検出部(フローセル)が励起光の焦点付近に位置したとき、検出器で検出される蛍光の光量は最も多くなる。
【0020】
以上の理由により、微生物検出部(フローセル)から検出される蛍光の光量と、微生物検出部(フローセル)の励起光に対する位置を関連付けることが可能となり、微生物検出部(フローセル)の位置を調整することが可能になる。この際、微生物検出部(フローセル)の蛍光は微生物を検出するための光学系により検出することができる。従って、位置合わせ専用の光学系が不要となり、装置の複雑化や装置コストの増大を防ぐことができる。また、位置合わせのときに蛍光微粒子を使用しないため、蛍光微粒子の流路壁面への付着による測定感度の悪化を防ぐことができ、更には蛍光微粒子の使用による測定コストの増加も防ぐことができる。
【0021】
これらの作用効果は、微生物検査チップの所定箇所に標識を設け、この標識に励起光を照射して検出される蛍光の光量に基づいて位置合わせを行う場合も同様である。この場合、微生物検査チップの標識を設ける必要があるが、微生物の検査に悪影響を与えることなく、蛍光の光量を増す構造を用いることができ、位置合わせの際の蛍光変化を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る微生物検査装置の概略構成を示す図である。
【図2A】本発明の実施の形態に係る微生物検出チップにおける微生物検出用流路を含む断面例を示す図である。
【図2B】本発明の実施の形態に係る微生物検出チップにおける微生物検出用流路を含む分解構造例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る微生物検査装置における微生物検査チップの位置合わせ手順例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る散乱光を用いた位置調整の仕組みを説明する模式図である。
【図5】本発明の実施の形態における散乱光の光量と微生物検出用流路の変位の関係を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る蛍光を用いた位置調整の仕組みを説明する模式図である。
【図7】本発明の実施の形態における蛍光の光量と微生物検出用流路の変位の関係を説明する図である。
【図8】微生物検出チップにおける微生物検出用流路付近の他の構造例を説明する図である。
【図9】微生物検査装置における分析工程の実施例を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る微生物検査チップの概略構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る微生物検査装置に搭載される検出装置の概略構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、後述する本発明の実施の形態は一例であって、公知又は周知の技術との組み合わせや置換による他の態様も可能である。
【0024】
(A)装置の全体構成例
図1に、本発明の実施の形態に係る微生物検査装置1の構成図を示す。微生物検査装置1は、検体や試薬を内部に保持し、微生物計測に必要な工程を行うための機構を内部に備えた微生物検査チップ10と、微生物計測に必要な工程を行うために、微生物検査チップ10と連結したチップ連結管1441〜1444を介して、微生物検査チップ10内の検体や試薬の搬送を制御するための圧力供給装置14と、微生物検査チップ10を保持し、微生物検査チップ10の位置を調整するX−Y可動ステージ125と、微生物検査チップ10内の微生物に励起光を照射し、微生物からの散乱光及び蛍光を電気信号に変換する検出装置11で構成されている。微生物検査装置1に連結したコンピュータ18は、圧力供給装置14に対する制御信号及びX−Y可動ステージ125に対する制御信号の出力と、検出装置11から入力される電気信号に対する信号処理を実行する。なお、電気信号の処理により得られた計測結果は、コンピュータ18に接続された出力装置19に表示される。
【0025】
圧力供給装置14は、圧力調節装置付のボンベ141を有する。ボンベ141には高圧の空気、不活性気体等が封入されている。ボンベ141と微生物検査チップ10の各通気口1591〜1594(図10)は、チップ連結管1441〜1444によって接続されている。チップ連結管1441〜1444には、バルブ1421〜1424がそれぞれ設けられている。バルブ1421〜1424を開閉することにより、微生物検査チップ10の容器に所定の圧力の気体を供給し、又は、微生物検査チップ10の容器を大気開放する。この圧力の制御により、微生物検査チップ10内における検体や試薬の搬送を実現する。
【0026】
微生物検査チップ10は、検体1511を保持するための検体容器151と、検体中の微生物の染色するための染色液(試薬液)1521を保持し、検体と染色液を混合、反応させる微生物染色液容器152と、希釈液1551を保持し、検体と染色液の混合液を希釈させる希釈液容器155と、励起光源111より励起光113を照射し、微生物を観測するための微生物検出用流路173を内部に備えた微生物検出部17と、微生物検出用流路173を通過した検体1511と染色液1521の混合液を廃棄するための検出液廃棄容器156と、検体容器151、微生物染色液容器152、希釈液容器155、微生物検出用流路173を連結し、検体1511や混合液が流動するための溶液用流路1571〜1574(図8、図10)と、検体1511や混合液を気圧により流動させるため圧力供給装置14と各容器を接続する通気用流路1581〜1584(図10)とで構成されている。この明細書においては、検体液の流れに沿って検体容器151の側を上流側、微生物検出用流路173の側を下流側と定義する。
【0027】
検出装置11は、励起光源111と、散乱光検出部(特許請求の範囲における「第2の検出器」に対応する。)と、蛍光検出部(特許請求の範囲における「第1の検出器」に対応する。)とで構成される。このうち、散乱光検出部は、微生物検出用流路173を通過する微生物からの散乱光124を検出するための散乱光検出器123と、励起光源111からの励起光113が散乱光検出器123に直接入射することを防ぐための遮光板122とから構成される。一方、蛍光検出部は、微生物検出用流路173を通過する微生物からの蛍光121を集光し、平行光にする対物レンズ114と、励起光113を微生物検出部17の方向に反射する一方で蛍光121は透過するダイクロイックミラー112と、蛍光121を通過するバンドパスフィルタ117と、平行光を集光させるための集光レンズ118と、迷光をカットするための空間フィルタとして用いるピンホール119と、バンドパスフィルタ117を通過した光を検出する光検出器120とで構成される。なお、照射部及び検出部は、互いの焦点が重なるように配置され、測定時には微生物検出用流路173を焦点の位置に調整できるように構成されている。
【0028】
検出装置11は、励起光源111から出力された励起光113を微生物検出用流路173に照射し、微生物検出用流路173から生じる散乱光の光量と微生物検出部17から生じる蛍光の光量をそれぞれ検出することにより、X−Yステージ125の可動位置と各光量との関係をプロファイルとして取得する。また、検出装置11は、取得されたプロファイルに基づいてX−Y可動ステージ125を可動制御し、微生物検査チップ10(具体的には、微生物検出用流路173)を検出に適した位置に合わせる。即ち、検出装置11で取得されたプロファイルはコンピュータ18にストックされ、コンピュータ18からX−Y可動ステージ125へ制御信号が出力され、位置合わせが行われる。
【0029】
(B)微生物検査チップの構造例
図2A及び図2Bを用い、微生物検査チップ10のうち微生物検査部17の構造を説明する。図2Aは、微生物検査チップ10の本体15と微生物検出部17の接合部の断面図を示す。図2Bは、微生物検出部17の分解斜視図を示す。
【0030】
なお、本体15と微生物検出部17はそれぞれ別工程で作製され、それぞれを接合する。本実施の形態では、微生物検出部17は内部に流路を備えた平板上のフローセルとして構成されている。まず、微生物検出部17の製造方法を説明する。微生物検出部17はカバー部材171と流路部材172からなり、両者は共に薄い平板からなる。流路部材172には溝1731が形成されており、この溝1731の両端には貫通孔1741、1751が形成されている。溝1731が形成された面が張り合わせ面となるように、カバー部材171と流路部材172を張り合わせる。この貼り合わせにより微生物検出部17が形成される。流路部材172の溝1731とカバー部材171によって微生物検出用流路173が構成される。流路部材172の貫通孔1741、1751によって、微生物検出用流路入口174と微生物検出用流路出口175が構成される。
【0031】
一方、本体15に形成された希釈液容器−微生物検出用流路間流路1573は、その下端にて流路方向を変更し、本体15の表面に開口を形成している。同様に、微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574は、その上端にて流路方向を変更し、本体15の表面に開口を形成している。希釈液保持容器−微生物検出用流路間流路1573の開口は、微生物検出用流路入口174に接続され、微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574の開口は、微生物検出用流路出口175に接続されている。
【0032】
本体15には検出用窓枠部161が形成されている。検出用窓枠部161は、貫通孔、又は、貫通溝である。検出用窓枠部161は、希釈液容器−微生物検出用流路間流路1573の開口と微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574の開口の間に形成されている。製造された微生物検出部17は、前述したように、本体15に装着される。図2Aに示すように、本体15の検出用窓枠部161の上に微生物検出用流路173が配置されるように、微生物検出部17を装着する。
【0033】
本実施の形態の場合、微生物検出用流路173の背後に、本体15の貫通孔又は貫通溝である検出用窓枠部161が設けられる。従って、励起光113は、微生物検出部17のみを照射し、本体15を照射しない。このため、背景光の増加の原因となる本体15からの反射光や自家蛍光は発生しない。微生物検出用流路173を通過した励起光113が、本体15に照射されないためには、検出用窓枠部161を構成する貫通孔の断面は、励起光113の放射方向に沿って増加することが好ましい。
【0034】
カバー部材171の厚さは、例えば0.01μm〜1mmとする。流路部材172の厚さは、例えば0.01μm〜1mmとする。微生物検出用流路173の断面形状は、例えば正方形、長方形、台形に形成する。微生物検出用流路173の断面寸法は、大きいほど圧力損失は小さくなるが、微生物を一個ずつ流すためには小さいほうが良い。微生物検出用流路173の断面の一辺は、例えば1μm〜1mmが好ましく、長さは例えば0.01mm〜10mmが好ましい。微生物検出用流路173に照射する励起光113の光軸は、微生物検出用流路173の方向ベクトルに対して垂直になる。
【0035】
微生物検出部17を構成する材料について説明する。微生物検査チップ10はディスポーザブルである。すなわち、使用後、微生物検出部17は本体15と共に廃棄する。そのため、微生物検出部17に用いる材料は、安価でなければならない。微生物検出部17に用いる材料は、蛍光計測に好適なように、光学特性に優れている必要がある。すなわち、自家蛍光が低く、光透過性、面精度、屈折率などに優れていることが望ましい。微生物からの蛍光の検出を阻害しないためには、微生物検出部17自身が発生する自家蛍光量が、微生物からの蛍光量に比べて十分小さいことが好ましい。
【0036】
微生物検出部17の表面に、曲面、凹凸等が存在すると、表面における光の屈折、又は、乱反射により微生物計測用流路173に照射される励起光113の光量が変動する。そのため、検出される蛍光量も変動し、計測精度が低下する。そのため、微生物検出部17の表面は、所望の平面度を有する必要がある。微生物検出部17は、凹凸が0.1mm以下の平面度を有することが好ましい。
【0037】
このような条件を考慮すると、微生物検出部17に用いる材料には、ガラス、石英、ポリメタクリル酸メチルエステル(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネイト等が考えられる。微生物検出部17は、これらの物質から選択された1種類以上の物質から形成される。
【0038】
カバー部材171は単なる平板であるが、流路部材172は平板に溝及び貫通孔を形成したものである。従って、流路部材172は、微細加工が容易で、且つ、加工費が安価な材料によって形成される。ガラス、及び、石英は、光学特性が優れているが、微細加工が容易でない。すなわち、微細加工を行うと、加工費が高くなる。
【0039】
そこで、この本実施の形態の場合、カバー部材171をガラス又は石英によって構成し、流路部材172をポリメタクリル酸メチルエステル、ポリジメチルシロキサン、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネイトによって構成する。なお好ましくは、流路部材172をポリジメチルシロキサンによって構成する。この場合、カバー部材171と流路部材172の接合には、ポリジメチルシロキサンの自己接着性を利用する。
【0040】
微生物検出部17の自家蛍光量は、材料ばかりでなく、微生物検出部の厚さ寸法にも依存する。自家蛍光量を少なくするには、微生物検出部の厚さ寸法を小さくすれば良い。微生物検出部17の厚さが小さいほど、微生物検出部17から発生する自家蛍光量は少なくなる。しかしながら、カバー部材171及び流路部材172の厚さ寸法を小さくすると、製造が困難になり、平面度が悪化する。必要な平面度を保ち、微生物の蛍光の検出を阻害しないように自家蛍光量を抑制するには、これらの部品の厚さ寸法は、所定の範囲に制限するする必要がある。
【0041】
ガラス、石英、ポリジメチルシロキサンの自家蛍光量はほぼ同等である。そこで、カバー部材171をガラス又は石英によって製造する場合、その厚さは、例えば0.05mm以上1mm以下が好ましい。流路部材172を、ポリジメチルシロキサンによって製造する場合、その厚さは例えば0.1mm以上1mm以下が好ましい。
【0042】
また、カバー部材171及び流路部材172を、シクロオレフィンポリマー、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリエチレンテレフタラート、又は、ポリカーボネイトによって製造しても良い。この場合、ガラス、又は、石英によってカバー部材171を製造し、ポリジメチルシロキサンによって流路部材172を製造する場合より、単位体積当たりの自家蛍光量が約3倍以上増加する。そのため、カバー部材171及び流路部材172の厚さは例えば0.01mm以上0.3mm以下が好ましい。
【0043】
(C)位置合わせ動作
図3に、微生物検査チップ10の位置合わせ手順例を示す。検査装置11は、図3に示す手順例に従い、微生物検出流路173と励起光113との位置合わせを実行する。
【0044】
図4〜図7は、微生物検出用流路173の位置調整の仕組みを説明するための模式図である。なお、カバー部材171はガラスで構成され、流路部材172はカバー部材171より厚く、ポリジメチルシロキサンで構成されているものとする。ポリジメチルシロキサンの方がガラスより単位体積当たりの自家蛍光量は高い。
【0045】
微生物検査チップ10をX−Y可動ステージ125にセットした後、励起光源111からの励起光113を微生物検出用流路173に照射する(S301)。次に、X−Y可動ステージ125により微生物検査チップ10を励起光113の光軸に対し垂直方向(X方向)に動かす(図4)。このとき、微生物検出用流路173の座標中心を(Xc,Yc)とする。
【0046】
本実施の形態では、先ず、X方向の位置合わせを行い、その後Y方向の位置合わせが行われる。本実施の形態では、微生物検出用流路からの散乱光の強度変化でX方向の位置合わせを行っている。尚、X方向の位置合わせについてはこの方法によらず他の方法を用いても良い。
【0047】
励起光113の照射範囲の幅w(励起光113がガウス分布のレーザーであれば、強度が、中心強度をe2 で除算した値(=中心強度/e2 )まで低下する範囲の直径)が微生物検出用流路173の幅dより大きい場合であれば、励起光113の光量は中心が最も多くなる。このため、励起光113の中心に微生物検出用流路173が重なるとき(すなわち、Xc=Xmのとき)、散乱光の光量Iは最も多くなる。このとき微生物検出用流路173のX方向の変位と検出装置11で検出される散乱光の光量Iの関係は図5のようになる。
【0048】
検出装置11は、X方向の変位と検出される散乱光の光量Iのプロファイルをコンピュータ18でストックし、散乱光の光量Iが最大となる微生物検出用流路173の中心の位置をXmとし、微生物検出用流路173の中心をXm(=Xc)に移動する(S302)。なお、位置合わせにおいては、Xm(=Xc)の位置に移動させることが望ましいが、ある程度の誤差は許容される。即ち、レーザーのX方向の強度分布が最大の80%以内の範囲に検出用流路が入れば微生物検査においては特に問題がないので、その範囲の誤差は許容される。例えば、レーザーの強度分布が80%以上の範囲がレーザー中心より±30μmの場合、流路幅が40μmであれば、許容範囲は±10μmであり、この位置に少なくとも微生物検出用流路173の中心が入るように位置合わせが行われる。
【0049】
さらに精度向上のため、コンピュータ18は、検出装置11に基づき、Xm−a〜Xm+aの範囲でX−Y可動ステージ125を励起光軸に対して垂直方向(X方向)に動かすように制御する。この検出装置11によるX−Y可動ステージ125の移動は、散乱光の光量の微分値dI/dxが連続して負になる点で終了する(S303)。
【0050】
因みに、励起光113の照射範囲の幅wが微生物検出流路173の幅dより小さい場合には、微生物検出流路173の側面と励起光113の中心が重なるとき、散乱光の光量が最大となる。このため、X方向の変位に対し、検出装置11で検出される蛍光量Iのピークは二つになる。この場合、検出装置11は、二つのピークの中間点をXmとし、微生物検出用流路173と励起光113の中心を重ねるようにX−Y可動ステージ125を可動制御する。
【0051】
次に、Y方向の位置合わせを行う。本実施の形態では流路構成部品からの蛍光の強度変化で位置合わせを行っている。検査装置11は、X−Y可動ステージ125の可動制御を通じ、微生物検査チップ10を励起光113の光軸に対し平行方向(Y方向)に動かす(図6,S304)。微生物検出部17は、励起光113に照射されている箇所から蛍光を発する。このとき、Y方向の変位と検出装置11で検出される蛍光の光量Iの関係は図7に示すようになる。単位体積当たりから発せられる蛍光量は、単位体積に存在する物質の蛍光量子収率と単位体積当たりに照射される励起光113の光量に比例する。また、単位体積当たりに照射される励起光113の光量は光学系の焦点付近が最も多くなる。さらに、検出装置11の光学系の焦点に近い位置にある光点ほど集光効率が高くなる。このため、蛍光量子収率の高い物質が焦点付近に位置したとき、検出装置11で検出される蛍光の光量Iは最も多くなる。流路部材172の材料であるポリジメチルシロキサンのほうがカバー部材171の材料であるガラスより蛍光量子収率が高いため、流路部材172が励起光113の焦点に重なったとき、検出される蛍光の光量Iは最も多くなる。
【0052】
検査装置11は、X方向の場合と同様に、Y方向の変位と検出される蛍光の光量Iのプロファイルをコンピュータ18でストックし、蛍光の光量Iが最大となる微生物検出用流路173の中心の位置を(Ym(=Yc))とする。このときの微生物検出用流路173の中心と励起光113の焦点の距離をAとする(S305)。検査装置11は、微生物検出用流路173の中心と励起光113の焦点をより正確にあわせるためには距離Aだけ補正したYm−Aの位置に微生物検出用流路173を動かす。ここで、蛍光の光量Iが最大となるときの微生物検出部17と励起光113の焦点の位置関係は、励起光113の強度分布、光学系の集光効率、微生物検出部17の構造、部材の蛍光量子収率により決まる。もっとも、屈折の方式を基準にした計算式である光線追跡法により、検出される蛍光の光量Iが最大となる微生物検出部17と励起光113の焦点の位置関係を求め、変位Aを決定しても良い。流路部材172が薄く変位Aが微小の場合には、補正を行わなくても計測に大きな問題は無い。
【0053】
なお、Y方向の位置合わせにおいてもX方向と同様にある程度の誤差は許容される。即ち、取得した蛍光強度が最大の95%以上となる位置をYmとしても、微生物検査においては特に問題がないので、その範囲の誤差は許容される。例えば、本実施の形態の光学系でのYmの許容範囲が±20μmで、流路深さが20μmであれば、位置合わせの許容範囲は±10μmである。
【0054】
さらに精度向上のため、検出装置11は、Ym−b〜Ym+bの範囲でX−Y可動ステージ125を励起光軸に平行方向(Y方向)に動かすように制御する。この検出装置11によるX−Y可動ステージ125の移動は、蛍光の光量Iが最大になる位置Ymで終了する(S306)。
【0055】
なお、X方向とY方向のそれぞれについて、XmとYmを求める処理動作を繰り返す手法を採用すれば、より高精度にて位置合わせを行うことができる。
【0056】
(D)微生物検査チップの他の構造例
図8に、微生物検査チップ10の微生物検出部17の別の実施の形態を示す。図8の場合、微生物検出部17の一部に標識176が組み込まれている。標識176は、散乱光又は反射光又は蛍光の光量を増すための構造であり、微生物検出用流路173の近傍に流路方向と平行になるように配置される。X−Y可動ステージ125(図1)により、微生物検査チップ10を励起光113の光軸に対し垂直方向(X方向)に動かすと、励起光113の中心に標識176が重なるとき(Xm)、散乱光又は反射光又は蛍光の光量が最大になる。標識176と微生物検出用流路173とのX方向の関係の位置関係は設計段階で明らかになっている。従って、散乱光又は反射光又は蛍光の光量が最大となった位置から予め決まった量を移動させることにより微生物検出部のX方向の位置合わせを行う。従って、励起光113に垂直な方向について、微生物検出用流路173と励起光113の位置合わせを行うことが可能になる。
【0057】
散乱光の光量を増すことができる標識176の構造には、例えば無数の細かい突起物又は凹凸を形成した構造や、内部に無数の気泡や微粒子を形成する構造が考えられる。また、同じく反射光の光量を増すことができる標識176の構造には、例えば励起光113の波長に対する反射率の高い物質を内部又は表面に備える構造が考えられる。また、蛍光の光量を増すことができる標識176の構造には、励起光113により蛍光を発する物質を内部又は表面に備える構造が考えられる。
【0058】
また、標識176と微生物検出部(検出用の流路)とのX方向及びY方向との位置関係が正確に決まっていれば、X方向と同様にY方向についても位置合わせを行うことが可能である。即ち、Y方向については、標識176を蛍光の光量を増すための構造(照射される励起光との相対的な位置関係が変化することにより蛍光の光量が変化する標識)とすることにより、上述した検出用流路に励起光を照射して蛍光を検出して位置合わせを行う原理が成立する。位置合わせの際に、蛍光の光量が最大となった位置から予め決まった量を移動させることにより微生物検出部のY方向の位置合わせを行うことができる。
【0059】
(E)微生物の計測
以下、本発明の実施の形態に係る微生物検査装置1を用いて、食品由来の検体中の生菌数を計測する場合の実施例を説明する。図9に、微生物検査チップ10を用いた生菌数計測の工程をフローチャートで示す。また、図10に、微生物検査チップ10の平面図を示す。
【0060】
最初に微生物検査チップ10の構成について説明する。微生物検査チップ10は、検体1511を保持するための検体容器151と、検体中の微生物の染色するための染色液(試薬液)1521を保持するための微生物染色液容器152と、希釈液1551を保持するための希釈液容器155と、検体中に含まれる食品残渣を取り除くためのフィルタである食品残渣除去部160と、外部光源より励起光を照射し、微生物の蛍光を観測するための微生物検出用流路173と、微生物検出用流路173を通過した検体1511、微生物染色液1521、希釈液1551の混合液を廃棄するための検出液廃棄容器156と、検体容器151、食品残渣除去部160、微生物染色液容器152、希釈液容器155、微生物検出用流路173を連結し、検体1511や混合液を流動させるための溶液用流路1571〜1574と、各容器内の検体1511や混合液を気圧により流動させるための通気口1591〜1594と、通気口1591〜1594と各容器を接続する通気用流路1581〜1584とを備える。
【0061】
溶液用流路1571〜1574、通気口1591〜1594及び通気用流路1581〜1584は連結する容器の名称から、検体容器−微生物染色液容器間流路1571、微生物染色液容器−希釈液容器間流路1572、希釈液容器−微生物検出用流路間流路1573、微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574、検体容器通気口1591、微生物染色液容器通気口1592、希釈液容器通気口1593、検出液廃棄容器通気口1594、検体容器通気流路1581、微生物染色液容器通気流路1582、希釈液容器通気流路1583、検出液廃棄容器通気流路1584とする。
【0062】
検体容器1511と、食品残渣除去部160と、微生物染色液容器152と、希釈液容器155と、微生物検出用流路173と、検出液廃棄容器156は、溶液用流路1571〜1574により直列に連結されている。
【0063】
図10の場合、溶液用流路1571〜1574の深さ及び流路幅は例えば10μm〜1mm、通気用流路1581〜1584の深さ及び流路幅は例えば10μm〜1mmの範囲で形成され、溶液用流路1571〜1574の断面積は通気用流路1581〜1584の断面積より大きくなるように形成される。
【0064】
微生物染色液1521は、微生物検査チップ10内に前もって封入されている。検体1511は、検査前に通気口1591から検体容器151に注入し、希釈液1551は検査前に通気口1593から希釈液保持容器155に注入する(S901)。
【0065】
検体容器151の体積は、検体1511の体積より大きい。微生物染色液保持容器152の体積は、検体1511と微生物染色液1521の合計体積より大きい。希釈液保持容器155の体積は、検体1511、微生物染色液1521、希釈液1551の合計体積より大きい。また、検体容器−微生物染色液容器間流路1571の最高点は、検体容器151中の検体1511の水位より高くなるように形成される。これと同様に、微生物染色液容器−希釈液容器間流路1572の最高点は、検体1511と微生物染色色素1521の混合液の水位より高くなるように形成される。さらに、希釈液容器−微生物検出用流路間流路1573の最高点は、検体1511、微生物染色色素1521、希釈液1551の混合液の水位より高くなるように形成される。
【0066】
ここで使用した検体1511は、検査する食品に対し質量比10倍の生理食塩水を加え、ストマッキング処理を行ったものであり、希釈液1551は主に生理食塩水又は純水である。
【0067】
微生物染色液は、死菌を染色するための死菌染色液と全菌を染色するための全菌染色液の混合液であり、死菌染色液には、例えば、PI(プロピディウムイオダイド)(0.1μg/ml〜1mg/ml)を使用し、全菌染色液には、例えば、DAPI(4'、6−ヂアミジン−2'−フェニルインドール)(1μg/ml〜1mg/ml)、AO(アクリジンオレンジ)(1μg/ml〜1mg/ml)、EB(エチジウムブロマイド)(1μg/ml〜1mg/ml)、LDS751(0.1μg/ml〜1mg/ml)などを使用する。
【0068】
微生物検査チップ10を用いた生菌数測定は、図9に示すように、微生物検査チップ10を微生物検査装置(分析装置)1にセットした状態で開始される(S902)。この測定工程は、微生物検査チップ10の位置合わせを行う位置合わせ工程(S907)と、検体から食品残渣を取り除いて検体中の微生物を染色する前処理工程(S903〜S906)と、生菌数を実際に測定する計測工程(S908)とで構成される。
【0069】
位置合わせ工程(S907)と前処理工程(S903〜S906)は独立した工程であるため並列して行い、両工程が終了した段階で計測工程(S908)を行う。続いて、各工程における各液体の移動について説明する。
【0070】
前処理工程では、まず、検体1511が微生物染色液容器152に移動される(S903)。次に、通気口1591を介して検体容器151に対して圧力供給装置14の圧力を加える。これにより、検体容器151内の気圧を上げる。同時に、微生物染色液容器通気口1592を介して微生物染色液容器152の内圧を大気圧に開放する。気圧差により、検体1511は、微生物染色液容器152に入り、微生物染色液1521と混合される。混合には、バブリングを使用する(S904)。検体1511中の死菌は、死菌染色液(ここではPI(ピーク波長532nm)を使用する。)と全菌染色液(ここではLDS751を(ピーク波長710nm)使用する。)により染色され、一方、検体1511中の生菌は全菌染色液のみにより染色される。
【0071】
二液の混合液の水位は、微生物染色液容器152と希釈液容器155を連結する微生物染色液容器−希釈液容器間流路1572の最高点を越えず、さらに微生物染色液容器152中に入っている空気は、微生物染色液容器通気口1592を介して外部に放出される。微生物染色液容器152の気圧は大気圧と等しいため、二液の混合液は希釈液容器155に押し出されず、混合液を反応に必要な時間中、微生物染色液容器152に保持することができる。
【0072】
このとき、混合液の希釈液容器155への流入を防ぐ目的で、各通気口1593〜1594に対して圧力供給装置14からの圧力を加え、検体容器151の気圧より低い範囲まで希釈液容器155と検出液廃液容器156の気圧を上げても良い。
【0073】
なお、染色中は、微生物検査チップ10の温度を一定に保つことにより、温度変化による染色の影響を小さくすることが望ましい。
【0074】
また、検体1511が食品残渣除去部160を経て、微生物染色液保持容器152へ流動する際に、検体1511中の食品残渣は、食品残渣除去部160により検体1511から取り除かれる。
【0075】
次に、検体1511、微生物染色液1521の混合液を、希釈液容器155に移動させる(S905)。希釈液1551が混合液に追加され、混合液中に含まれる未結合色素(微生物を染色しない微生物染色液1521)の濃度を低下させる。なお、混合液と希釈液1551との混合は、バブリング(S906)を使用する。未結合色素の濃度を低下することにより、検出の際にノイズの原因となる未結合色素の発する蛍光量を低減させる。
【0076】
以上で、前処理工程が終了する。また、この前処理工程と並行して、前述した本発明の実施の形態で説明した微生物検査チップ10の位置合わせが実行される。
【0077】
以上の動作が終了すると、検体1511と微生物染色液1521と希釈液1551との混合液が微生物検出用流路173に移動される(S908)。図10の場合、紙面垂直方向より、励起光113が照射される。このため、微生物を染色した色素からの蛍光と、微生物による散乱光が生じる。検出装置11は、生菌については全菌染色液の蛍光のみを検出し、死菌については全菌染色液と死菌染色液の蛍光を検出する。このため、生菌と死菌の判別が可能になる。また、散乱光の光量は菌体の大きさにより変わるため、菌体の大きさの判別も可能になる。
【0078】
(F)検出装置の構成例
以下では図11を参照し、微生物検査装置1を構成する検出装置11の構成例を説明する。検出装置11は、前述したように、食品由来の検体中の生菌数を計測するのに好適である。すなわち、検出装置11を用いれば、生菌数と死菌数を判別することができる。検出装置の光学系は、蛍光色素の励起スペクトルと蛍光スペクトルによって異なる場合もある。ここでは、死菌染色液としてPI(励起波長ピーク532nm、蛍光波長ピーク615nm)を使用し、全菌染色液としてLDS751(励起波長ピーク541nm、蛍光波長ピーク710nm)を使用する場合について説明する。
【0079】
図11における検出装置11の光学系は、2種類の蛍光色素を使用する場合に好適なように構成されている。勿論、3種類以上の蛍光色素を使用する場合には、各色素に応じて光学系を用意する。
【0080】
検出装置11は、励起光源111(波長532nm)と、微生物検出用流路173を通過する微生物からの散乱光124を検出するための散乱光検出器123と、励起光源111からの励起光113が散乱光検出器123に直接入射することを防ぐための遮光板122と、励起光113を反射し、微生物の蛍光を透過する励起光−蛍光分離用ダイクロイックミラー112と、微生物検出用流路173を通過する微生物からの蛍光を集光し、平行光にする対物レンズ114と、波長610nm以下の光を反射し、波長610nm以上の光を通過させる蛍光分離用ダイクロイックミラー115と、ミラー116と、波長610nm近傍の波長の光のみ通過させる短波長用バンドパスフィルタ1171と、波長710nm近傍の波長の光を通過させる長波長用バンドパスフィルタ1172と、平行光を集光させるための短波長用集光レンズ1181、長波長用集光レンズ1182と、迷光をカットするための空間フィルタとして用いる短波長用ピンホール1191、長波長用ピンホール1192と、短波長用バンドパスフィルタ1171を通過した蛍光1211を検出する短波長用光検出器1201と、長波長用バンドパスフィルタ1172を通過した蛍光1212を検出する長波長用光検出器1202とを有する。
【0081】
なお、励起光源111にはレーザー光源を使用し、散乱光用光検出器にはフォトダイオードを使用し、短波長光検出器1201と長波長光検出器1202にはフォトマルチプライヤ(PMT:Photomultiplier)を使用するものとする。上述したように、微生物検査チップ10の微生物検出用流路173の位置合わせは完了しているものとする。すなわち、対物レンズ114の焦点の位置に、微生物検査チップ10の微生物検出用流路173が配置されているものとする。
【0082】
励起光源111から出力された励起光(波長532nm)は、励起光−蛍光分離用ダイクロイックミラー112で反射されて進行方向を変更し、微生物検出用流路173を照射する。この照射により微生物検出用流路173を流れる微生物を染色したPI及びLDS751は励起される。死菌染色液PIからの蛍光1211(PIは中心波長610nm)と全菌染色液LDS751からの蛍光1212(中心波長710nm)は、いずれも対物レンズ114に入射する。
【0083】
死菌染色液PIからの蛍光1211は蛍光分離用ダイクロイックミラー115で反射され、全菌染色液LDS751からの蛍光1212は蛍光分離用ダイクロイックミラー115を通過する。こうして、2つの色素由来の蛍光は波長の違いにより分離できる。死菌染色液PIからの蛍光1211は短波長用バンドパスフィルタ1171を通過し、短波長用集光レンズ1181によって集光され、短波長用ピンホール1191を通過し、短波長用光検出器1201に入射する。全菌染色液LDS751からの蛍光1212は長波長用バンドパスフィルタ1172を通過し、長波長用集光レンズ1182によって集光され、長波長用ピンホール1192を通過し、長波長用光検出器1202に入射する。
【0084】
また、励起光源111から出力された励起光が微生物検出用流路173を流れる微生物に当たることにより散乱光124が生じる。散乱光の光量は微粒子の大きさによって変わるため、微粒子の大きさを計測することができる。微粒子の大きさについて測定情報が得られれば、微生物と食品残渣等のゴミとを判別することができる。
【0085】
短波長用光検出器1201と長波長用光検出器1202で検出された蛍光と、散乱光用光検出器123で検出された散乱光はそれぞれ電気信号に変換された後、コンピュータ18(図1)に送られる。コンピュータ18は、短波長用光検出器1201、長波長用光検出器1202、散乱光用光検出器123から送られた電気信号を処理し、微生物数の情報を検査結果として出力装置19(図1)に出力する。
【0086】
短波長用光検出器1201の出力より、死菌数が得られ、長波長用光検出器1202の出力より全菌数が得られる。また、2つの菌数の差から生菌数が得られる。
【0087】
ところで、微生物検出部17の表面では、励起光源111からの励起光113の一部が反射し、検出装置11に戻る可能性がある。この反射を防止するためには、微生物検出部17の法線ベクトルと励起光113の光軸は平行でないことが好ましい。すなわち、微生物検出部17の法線ベクトルと励起光113の光軸の間の角度αは、α=10〜20°であることが好ましい。図11では、このような取り付け例を表している。
【0088】
図11では、微生物検出部17の表面と励起光113の光軸の成す角をθとして表している。θ+α=90°である。θは90度未満であるが、励起光113が、微生物検出部17の表面で全反射しないように設定する。θは80〜70°であっても良い。なお、微生物検出部17の法線ベクトルと励起光113の光軸が平行とならないように、微生物検出部17を傾斜させるが、励起光は微生物検出用流路173に対して垂直方向より照射する。
【符号の説明】
【0089】
1…微生物検査装置、10…微生物検査チップ、11…検出装置、14…圧力供給装置、17…微生物検出部、18…コンピュータ、19…出力装置、111…励起光源、113…励起光、114…対物レンズ、115…蛍光分離用ダイクロイックミラー、116…ミラー、119…ピンホール、121…蛍光、124…散乱光、125…X−Y可動ステージ、151…検体容器、152…微生物染色液容器、155…希釈液容器、156…検出液廃棄容器、161…検出用窓部、173…微生物検出用流路、1171…短波長バンドパスフィルタ、1172…長波長バンドパスフィルタ、1181、1182…集光レンズ、1191、1192…ピンホール、1201…短波長用光検出器、1202…長波長用光検出器、1211…PIからの蛍光、1212…LDS751からの蛍光、1571〜1574…溶液用流路、1581〜1584…通気用流路、1591〜1594…通気口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を含む検体液を保持する検体容器と、前記検体液と反応する試薬液を保持すると共に前記検体液と前記試薬液とを反応させる反応容器と、前記微生物を検出するための微生物検出部とを有する微生物検査チップと、
前記微生物検査チップと連結され、前記検体液、前記試薬液とを前記微生物検査チップ内にて搬送する圧力供給装置と、
前記微生物検査チップを保持すると共に、前記微生物検査チップを移動させるステージと、
前記微生物検出部に励起光を照射する光源と、前記微生物検出部の検出用流路を流れる微生物からの蛍光を検出して電気信号に変換する第1の検出器と、前記微生物検出部を流れる微生物からの散乱光を検出して電気信号に変換する第2の検出器とを有し、微生物検査チップの位置に応じて変化する前記微生物検出部からの蛍光の検出光量に基づいて前記ステージを可動制御し、前記励起光の光軸方向に対する前記検出用流路の位置を制御する検査装置と
を有する微生物検査装置。
【請求項2】
前記微生物検出部は、
カバー部材と流路部材を有し、
前記流路部材が有する溝は、前記カバー部材と前記流路部材を張り合わせた際に、前記検出用流路を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の微生物検査装置。
【請求項3】
前記検査装置は、前記ステージを通じ、前記検出用流路を励起光の光軸に対して垂直方向に位置合わせする処理と、前記検出用流路を励起光の光軸に対して平行方向に位置合わせする処理とを実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の微生物検査装置。
【請求項4】
前記検査装置は、検出される蛍光量が最大となる前記検出用流路の位置を求めることにより、前記検出用流路を前記励起光の焦点に一致させる
ことを特徴とする請求項3に記載の微生物検査装置。
【請求項5】
前記検査装置は、検出される散乱光の光量が最大となる前記検出用流路の位置を求めることにより、前記検出用流路を前記励起光の光軸に一致させる
ことを特徴とする請求項3に記載の微生物検査装置。
【請求項6】
前記微生物検査チップは、励起光の照射により、散乱光又は反射光又は蛍光の光量を増加させる標識を前記検出用流路の近傍に配置し、この標識からの散乱光又は反射光又は蛍光に基づき前記検出用流路を励起光の光軸に対して垂直方向に位置合わせする処理を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の微生物検査装置。
【請求項7】
蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物検査装置において、
微生物検出部は微生物検査チップに設けられ、前記微生物検査チップは移動ステージに保持されており、前記微生物検査チップは、励起光の照射により、蛍光の光量を増加させる構造であって、前記検出用流路との励起光の光軸方向の位置関係が予め決められた標識を前記検出用流路の近傍に配置し、この標識からの蛍光に基づき前記検出用流路を励起光の光軸方向に対して位置合わせする処理を行う
ことを特徴とする微生物検査装置。
【請求項8】
蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物検査装置における微生物検出部と励起光の位置合わせを行う方法において、
前記微生物検出部は微生物検査チップに設けられ、前記微生物検査チップは移動ステージに保持されており、
前記励起光を前記微生物検出部に照射し、前記微生物検出部から検出される蛍光の光量が最大となる方向に、前記移動ステージを前記励起光の光軸方向に移動制御し、前記励起光の光軸方向に対する前記微生物検出部の位置合わせを行うようにしたことを特徴とする微生物検査装置における微生物検出部と励起光の位置合わせ方法。
【請求項1】
微生物を含む検体液を保持する検体容器と、前記検体液と反応する試薬液を保持すると共に前記検体液と前記試薬液とを反応させる反応容器と、前記微生物を検出するための微生物検出部とを有する微生物検査チップと、
前記微生物検査チップと連結され、前記検体液、前記試薬液とを前記微生物検査チップ内にて搬送する圧力供給装置と、
前記微生物検査チップを保持すると共に、前記微生物検査チップを移動させるステージと、
前記微生物検出部に励起光を照射する光源と、前記微生物検出部の検出用流路を流れる微生物からの蛍光を検出して電気信号に変換する第1の検出器と、前記微生物検出部を流れる微生物からの散乱光を検出して電気信号に変換する第2の検出器とを有し、微生物検査チップの位置に応じて変化する前記微生物検出部からの蛍光の検出光量に基づいて前記ステージを可動制御し、前記励起光の光軸方向に対する前記検出用流路の位置を制御する検査装置と
を有する微生物検査装置。
【請求項2】
前記微生物検出部は、
カバー部材と流路部材を有し、
前記流路部材が有する溝は、前記カバー部材と前記流路部材を張り合わせた際に、前記検出用流路を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の微生物検査装置。
【請求項3】
前記検査装置は、前記ステージを通じ、前記検出用流路を励起光の光軸に対して垂直方向に位置合わせする処理と、前記検出用流路を励起光の光軸に対して平行方向に位置合わせする処理とを実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の微生物検査装置。
【請求項4】
前記検査装置は、検出される蛍光量が最大となる前記検出用流路の位置を求めることにより、前記検出用流路を前記励起光の焦点に一致させる
ことを特徴とする請求項3に記載の微生物検査装置。
【請求項5】
前記検査装置は、検出される散乱光の光量が最大となる前記検出用流路の位置を求めることにより、前記検出用流路を前記励起光の光軸に一致させる
ことを特徴とする請求項3に記載の微生物検査装置。
【請求項6】
前記微生物検査チップは、励起光の照射により、散乱光又は反射光又は蛍光の光量を増加させる標識を前記検出用流路の近傍に配置し、この標識からの散乱光又は反射光又は蛍光に基づき前記検出用流路を励起光の光軸に対して垂直方向に位置合わせする処理を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の微生物検査装置。
【請求項7】
蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物検査装置において、
微生物検出部は微生物検査チップに設けられ、前記微生物検査チップは移動ステージに保持されており、前記微生物検査チップは、励起光の照射により、蛍光の光量を増加させる構造であって、前記検出用流路との励起光の光軸方向の位置関係が予め決められた標識を前記検出用流路の近傍に配置し、この標識からの蛍光に基づき前記検出用流路を励起光の光軸方向に対して位置合わせする処理を行う
ことを特徴とする微生物検査装置。
【請求項8】
蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物検査装置における微生物検出部と励起光の位置合わせを行う方法において、
前記微生物検出部は微生物検査チップに設けられ、前記微生物検査チップは移動ステージに保持されており、
前記励起光を前記微生物検出部に照射し、前記微生物検出部から検出される蛍光の光量が最大となる方向に、前記移動ステージを前記励起光の光軸方向に移動制御し、前記励起光の光軸方向に対する前記微生物検出部の位置合わせを行うようにしたことを特徴とする微生物検査装置における微生物検出部と励起光の位置合わせ方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−256278(P2010−256278A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109153(P2009−109153)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
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