説明

微生物濃縮方法及び装置

(a)非晶質金属ケイ酸塩を含み、及びX線光電子分光法(XPS)により測定して、0.5未満又はそれに等しい金属原子:ケイ素原子比を有する表面組成を有する濃縮剤を含む、焼結多孔質ポリマーマトッリックスを含む濃縮素子を提供する工程と、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を提供する工程と、(c)濃縮素子と試料を接触させて、少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部が濃縮素子に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、内容が本明細書に参考として組み込まれる、米国特許仮出願第61/166,266号(2009年4月3日出願)の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、微生物が検出又は検査に対して生存可能な状態を保つように、微生物を捕捉又は濃縮するための方法に関するものである。他の態様では、本発明は、また、このような方法の実施において使用する濃縮素子(及びこの素子を含む診断キット)と、素子を作製するための方法と、にも関する。
【背景技術】
【0003】
微生物汚染により生じる食品媒介疾患及び院内感染は、世界中の無数の場所で懸案となっている。したがって、存在する微生物の素性及び/又は量を決定するために、さまざまな医療、食品、環境、又はその他の試料中における、細菌又は他の微生物の存在を検定することがしばしば望ましく、あるいは必要である。
【0004】
例えば、細菌DNA又は細菌RNAを検定して、たとえ他の細菌種の存在においても特定の細菌種の存在又は不在を評価することができる。しかしながら、特定の細菌の存在を検出する能力は、少なくとも部分的に、分析される試料中の細菌の濃度に依存する。細菌試料は、検出に適切な濃度の確保に試料中の細菌の数を増加させるために播種され又は培養されるが、この培養工程はしばしば時間がかかり、評価結果を顕著に遅らせることがある。
【0005】
試料中の細菌を濃縮することで、培養時間を短縮することができ、培養工程の必要性を排除することすら可能になる。このように、菌株に特異的な抗体を使用することによって(例えば、抗体をコーティングした磁性粒子又は非磁性粒子の形態で)、特定の細菌株を分離する(及びこれにより濃縮する)ための方法が開発されている。しかしながらこのような方法は高価であり、少なくとも一部の診断用途に望まれるよりも依然としてやや遅い傾向がある。
【0006】
菌株特異的でない濃縮方法も使用されている(例えば、試料中に存在する微生物のより総合的な評価を得るため)。混合した微生物群を濃縮した後、所望ならば、菌株特異的なプローブを用いることによって特定の菌株の存在を判定することができる。
【0007】
微生物の非特異的な濃縮又は捕捉は、炭水化物とレクチンタンパク質との相互作用に基づいた方法によって達成されている。これまでに非特異的捕捉装置としてキトサンをコーティングした支持体が使用され、微生物の栄養素の役目を果たす物質(例えば、炭水化物、ビタミン、鉄キレート化合物、及びシデロホア)が、微生物の非特異的捕捉を提供するための配位子として有用であることも記述されてきた。
【0008】
さまざまな無機材料(例えばヒドロキシアパタイト及び金属水酸化物)が、細菌を非特異的に結合し濃縮するために使用されてきた。非特異的な捕捉のためには、無機結合剤の使用及び/又は不使用の、物理的な濃縮方法(例えば濾過、クロマトグラフィー、遠心分離、及び重力沈降)も利用されている。このような非特異的濃縮方法は、速度(少なくとも一部の食品試験手順は主な培養増菌段階として少なくとも一夜インキュベーションをなお必要とする)、コスト(少なくとも一部は高価な装置、材料、及び/又は訓練された技能者を必要とする)、試料条件(例えば、試料の性状及び/又は容積制限)、スペースの条件、使用の容易さ(少なくとも一部は複雑な多段階の工程を必要とする)、現場使用への適性、及び/又は有効性の点でさまざまである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、本発明者らは、病原微生物を迅速に検出するための方法に対する切迫したニーズがあると認識している。このような方法は、好ましくは、迅速なだけでなく、低コストで、単純であり(複雑な機器又は手順の必要がない)、及び/又はさまざまな条件下(例えば、さまざまな種類の試料マトリックス及び/又は病原微生物、さまざまな微生物充填量、及びさまざまな試料容量)で有効である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
簡単に言えば、1つの態様では、本発明は、微生物が1つ以上の株の検出又は検定の目的で生存可能な状態を保つように、試料中に存在する微生物株(例えば細菌、真菌類、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、及び細菌内生胞子)を、非特異的に濃縮する方法を提供する。この方法は、(a)非晶質金属ケイ酸塩を含み、及びX線光電子分光法(XPS)により測定して、0.5未満又はそれに等しい金属原子:ケイ素原子比を有する表面組成を有する濃縮剤を含む、焼結多孔質ポリマーマトッリックスを含む濃縮素子を提供する工程と、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料(好ましくは、流体の形の)を提供する工程と、(c)濃縮素子と試料を接触させて(好ましくは、試料を濃縮素子に通すことにより)、少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部分が濃縮素子に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含む。
【0011】
好ましくは、この方法は、少なくとも1つの結合した微生物株の存在を検出する(例えば、培養に基づく検出方法、顕微鏡/画像形成による検出方法、遺伝学的検出方法、発光に基づく検出方法、又は免疫学的検出方法により)工程を更に含む。この方法は、場合によっては、試料から濃縮素子を分離すること及び/又は少なくとも1つの結合した微生物株を培養により増菌する(例えば、一般的又は選択的な微生物増菌が所望されるかどうかによって一般的な又は微生物に特異的な培地中で濃縮素子をインキュベーション又は分離することにより)こと及び/又は濃縮素子から捕捉された微生物(又はその1つ以上の構成要素)を試料の接触後分離する(例えば、溶出剤又は溶解剤を濃縮素子に通すことにより)ことを更に含むことができる。
【0012】
本発明の方法は、特定の微生物株を標的とするものではない。むしろ、焼結多孔質ポリマーマトリックス中に特定の比較的安価な無機材料を含む濃縮素子は、さまざまな微生物の捕捉において驚くほど有効であり得るということ(及び無機材料無しの対応する素子と比較して溶出による捕捉された微生物の単離又は分離において驚くほど有効であるということ)が見出された。このような素子を使用して、1つ以上の微生物株(好ましくは、1つ以上の細菌株)をより容易、かつ迅速に検定することができるように、試料(例えば、食品試料)中に存在する微生物株を、非株特異的な方法で濃縮することができる。
【0013】
本発明の方法は、比較的簡便で、低コスト(複雑な装置又は高価な株特異的な材料を必要としない)であり、かつ比較的速い(好ましい実施形態は、濃縮素子との接触を持たない対応する対照試料に対して、比較的均質な流体試料中に存在する微生物の少なくとも約70パーセント(より好ましくは少なくとも約80パーセント、最も好ましくは少なくとも約90パーセント)を約30分未満に捕捉する)。加えて、この方法は、さまざまな微生物(グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方などの病原体を含む)及びさまざまな試料(異なる試料マトリックス及び、しかも少なくとも一部の従来技術とは違って、微生物含有量が少ない試料及び/又は大量の試料であっても)に有効であり得る。よって、本発明の方法の少なくともいくつかの実施形態は、さまざまな状況下で病原微生物を迅速に検出するための低コストで単純な方法に対する、上述のような緊迫したニーズに対応することができる。
【0014】
この方法で使用される濃縮素子は、アブソルートミクロンフィルターなどの少なくとも一部の濾過素子よりも少なくとも若干大きな詰まりに対する抵抗性を呈することができるので、本発明の方法は、食品試料(例えば、粒子を含有する食品試料、特に比較的粗い粒子を含むもの)中の微生物の濃縮に特に有利であることができる。このことは、より完璧な試料処理(食品試験において誤った陰性の検定を無くすことにおいて必須である)及び比較的大容積の試料の取り扱い(例えば、野外条件下での)を容易とすることができる。
【0015】
別な態様では、本発明は、また、非晶質金属ケイ酸塩を含み、及びX線光電子分光法(XPS)により測定して、0.5未満又はそれに等しい金属原子:ケイ素原子比を有する表面組成を有する濃縮剤を含む、焼結多孔質ポリマーマトッリックスを含む濃縮素子も提供する。本発明は、また、(a)少なくとも1つの本発明の上記濃縮素子、及び(b)上述の濃縮工程の実施において使用するための少なくとも1つの試験容器又は試験試薬を含む、本発明の濃縮工程の実施において使用するための診断キットも提供する。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、(a)(1)少なくとも1つの粒子状焼結型ポリマー(好ましくは、粉末の形の)及び(2)非晶質金属ケイ酸塩を含み、及びX線光電子分光法(XPS)により測定して、0.5未満又はそれに等しい金属原子:ケイ素原子比を有する表面組成を有する少なくとも1つの濃縮剤を含む混合物を提供する工程と、(b)ポリマーの焼結に充分な温度まで混合物を加熱して、粒子状濃縮剤を含む焼結された多孔質ポリマーマトリックスを形成する工程と、を含む濃縮素子を作製する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の「発明を実施するための形態」では、種々の組の数値範囲(例えば、特定の部分における炭素原子の数、又は特定の成分の量など)が記載され、各組内では、範囲の任意の下限を範囲の任意の上限と対にすることができる。
【0018】
定義
本特許出願で使用するとき、
「濃縮剤」は、微生物を濃縮するための組成物を意味する。
「検出」とは、これによりその微生物が存在すると判定させる、微生物の少なくとも構成要素の同定を意味する。
「一般的検出」とは、標的微生物に由来するDNA又はRNAなどの一般的物質の構成要素の同定を意味する。
「免疫学的検出」とは、標的微生物に由来するタンパク質又はプロテオグリカンなどの抗原性物質の同定を意味する。
「微生物」は、分析又は検出に好適な遺伝物質を有する何らかの細胞又は粒子を意味する(例えば、細菌、酵母、ウイルス、及び細菌内生胞子が挙げられる)。
「微生物株」は、検出方法により識別可能な微生物(例えば、異なる属、属内の異なる種、又は種内の異なる隔離体の微生物)の特定のタイプを意味する。
「試料」は、(例えば分析のために)採取される物質又は材料を意味する。
「試料マトリックス」は、試料の微生物以外の構成成分を意味する。
「焼結」(ポリマー粒子体に関連する)は、熱を加えることにより、完全な粒子の融解を起こさずにポリマー粒子の少なくとも一部の粒子間結合又は接着が生成する(例えば、ポリマー粒子体をポリマーのガラス転移温度と融点の間の温度まで加熱して、粒子の軟化を起こさせることにより)ことを意味する。
「焼結型」(ポリマーと関連する)は焼結可能なポリマーを意味する。
「焼結」(マトリックスに関連する)は、焼結により形成されることを意味する。
「標的微生物」は、検出を所望する任意の微生物を意味する。
「貫通細孔」(多孔質マトリックスに関連する)は、マトリックスを通る通路又はチャンネル(別々の入口及び出口を持つ)を含む細孔を意味する。並びに、
「迂回経路マトリックス」は、少なくとも1つの迂回した貫通細孔を有する多孔質マトリックスを意味する。
【0019】
濃縮剤
本発明の方法の実施における使用に好適な濃縮剤には、金属ケイ酸塩を含み、かつX線光電子分光法(XPS)により定量して、約0.5未満又はそれに等しい(好ましくは、約0.4未満又はそれに等しい、より好ましくは、約0.3未満又はそれに等しい、最も好ましくは、約0.2未満又はそれに等しい)金属原子:ケイ素原子比を有する表面組成を有するものが挙げられる。好ましくは、表面組成は、また、X線により定量して、少なくとも約10平均原子パーセントの炭素(より好ましくは、少なくとも約12平均原子パーセントの炭素、最も好ましくは、少なくとも約14平均原子パーセントの炭素)も含む。光電子分光法(XPS)XPSは、試料表面の最も外側のほぼ3〜10ナノメートル(nm)の元素組成を定量することができ、水素及びヘリウムを除いて周期率表中の全ての元素に感度のある手法である。XPSは、大多数の元素に対して0.1〜1原子パーセント濃度範囲の検出限界を持つ定量的な手法である。XPSに好ましい表面組成評価条件は、±10度の受け取りの立体角と共に試料表面に対して測定して90度のテイクオフ角度を含むことができる。
【0020】
このような濃縮剤を使用した濃縮又は捕捉は一般的に特定の株、種、又は微生物のタイプに対して特異的ではなく、よって、試料内の微生物の全体的な個体群の濃縮を提供する。次いで、株特異的なプローブによる任意の公知の検出方法を用いて、捕捉された微生物の集団から微生物の特定の株を検出することができる。したがって、この濃縮剤は、臨床試料、食品試料、環境試料、又は他の試料中の汚染微生物又は病原体(特に細菌などの食品によって媒介される病原体)の検出に使用することができる。
【0021】
金属ケイ酸塩などの無機材料は、水系に分散又は懸濁されると、その材料及び水系のpHに特徴的な表面電荷を示す。物質−水の界面の両側の電位は「ゼータ電位」と呼ばれ、電気泳動における移動度から(すなわち、水系中に置かれた帯電電極間を物質の粒子が移動する速度から)計算することができる。本発明の方法の実施で使用される濃縮剤は、例えば、通常のタルクなどの普通の金属ケイ酸塩のそれよりも負であるゼータ電位を有する。それにもかかわらず、濃縮剤は、その表面が一般に負帯電である傾向がある、細菌などの微生物の濃縮においてタルクよりも驚くほど有効である。好ましくは、濃縮剤はpHが約7で負のゼータ電位を有する(より好ましくはpHが約7で約−9ミリボルト〜約−25ミリボルトの範囲のスモルコフスキーゼータ電位、更に好ましくはpHが約7でゼータ電位が約−10ミリボルト〜約−20ミリボルトの範囲のスモルコフスキーゼータ電位、最も好ましくはpHが約7でゼータ電位が約−11ミリボルト〜約−15ミリボルトの範囲のスモルコフスキーゼータ電位)。
【0022】
有用な金属ケイ酸塩には、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、チタンなど(好ましくは,マグネシウム,亜鉛、鉄及びチタン、より好ましくは、マグネシウム)など、及びこれらの組み合わせなどの金属の非晶質ケイ酸塩が挙げられる。好ましいのは、少なくとも部分溶融した粒子形状(より好ましくは、非晶質、球体化された金属ケイ酸塩、最も好ましくは、非晶質、球体化されたケイ酸マグネシウム)の非晶質金属ケイ酸塩である。
【0023】
金属ケイ酸塩の非晶質の少なくとも部分溶融した粒子形状は、比較的小さい供給粒子(例えば、約25ミクロンまでの平均粒子サイズ)を、概ね回転楕円体又は球の形状の粒子(すなわち、真に又は実質的に円及び楕円の形状及び任意の他の丸い又は曲がった形状を含む、概ね丸く、鋭利な角又は縁を含まない、拡大された二次元像を有する粒子)を作製するための制御された条件下で融解又は軟化させる既知の方法のいずれによっても作製可能である。このような方法には微粒化、ファイアポリッシュ、直接溶融などが挙げられる。好ましい方法は、固体フィード粒子の直接溶融又はファイアポリッシュにより、少なくとも部分的に溶融した、実質的にガラス状粒子が形成される、火焔溶融(例えば、記述が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,045,913号(Castle)に述べられている方法におけるような)である。最も好ましくは、不規則形状をした供給粒子の実質的な部分(例えば、約15〜約99容積パーセント、好ましくは、約50〜約99容積パーセント、より好ましくは、約75〜約99容積パーセント、最も好ましくは、約90〜約99容積パーセント)を概ね回転楕円体又は球体の粒子に変換することにより、このような方法を使用して、非晶質の球体化された金属ケイ酸塩を製造することができる。
【0024】
ある非晶質金属ケイ酸塩は市販されている。例えば、非晶質の球体化されたケイ酸マグネシウムは、化粧品配合物での使用に市販されている(例えば、3M Company,St.Paul,MNから入手可能な、3M(商標)Cosmetic Microspheres CM−111として)。
【0025】
非晶質金属ケイ酸塩に加えて、濃縮剤が上述の表面組成を有するという前提で、濃縮剤は、金属(例えば、鉄又はチタン)の酸化物、結晶質金属ケイ酸塩、他の結晶質材料などを含む他の材料を更に含むことができる。しかしながら、濃縮剤は、好ましくは本質的に結晶質シリカを含まない。
【0026】
本発明の方法の実施においては、濃縮剤を、粒子状ポリマーとのブレンドにかけ易い、実質的に任意の粒子状の形(好ましくは、比較的乾燥した又は揮発分を含まない形)で使用して、この方法で使用される濃縮素子を形成することができる。例えば、濃縮剤を粉末の形で使用することができるか、又はビーズなどのような粒子状支持体に塗布することができる。
【0027】
好ましくは、濃縮剤は粉末の形で使用される。有用な粉末には、ミクロ粒子(好ましくは約1マイクロメートル(より好ましくは約2マイクロメートル)〜約100マイクロメートル(より好ましくは約50マイクロメートル、更により好ましくは約25マイクロメートル、最も好ましくは約15マイクロメートルの範囲の粒子サイズを有する、ミクロ粒子、ここで任意の下限は上述の範囲の任意の上限と対となすことができる)を含むものが挙げられる。
【0028】
濃縮素子
本発明の方法の実施において使用するのに好適な濃縮素子としては、上述の濃縮剤の少なくとも1つを含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを含むものが挙げられる。例えば、少なくとも1つの粒子状焼結型ポリマー(好ましくは、粉末の形の)と少なくとも1つの粒子状濃縮剤を混合又はブレンドし、次いで得られる混合物をポリマーの焼結に充分な温度まで加熱することにより、このような濃縮素子を作製することができる。この方法、並びに他の既知の又は今後開発される焼結方法を使用して、冷却時に粒子状濃縮剤を含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを用意することができる。
【0029】
例えば、焼結は、ポリマー粒子の接触点における軟化を引き起こし、次いで以降の冷却は粒子の融解を引き起こすことができる。粒子状濃縮剤を含む固化した又は自己支持性の多孔質ポリマー体が生成させることができる(例えば、濃縮剤がポリマー体の表面中又は上に埋め込まれて)。これは、比較的複雑な細孔構造(好ましくは、迂回経路マトリックスを含む濃縮素子)と比較的良好な機械的強度を有する濃縮素子を用意することができる。
【0030】
濃縮素子の作製における使用に好適なポリマーとしては、焼結型ポリマー及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい焼結型ポリマーとしては、熱可塑性ポリマー及びこれらの組み合わせが挙げられる。より好ましくは、比較的高い粘度と比較的低いメルトフローレートを有するには、熱可塑性ポリマーを選択することができる。これによって、焼結過程時の粒子の形状保持の促進ができる。
【0031】
有用な焼結型ポリマーとしては、ポリオレフィン(オレフィンホモポリマー及びコポリマー、並びにオレフィンと他のビニルモノマーのコポリマーを含む)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィドなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用なポリマーの代表的な例としては、エチレンビニルアセテート(EVA)ポリマー、エチレンメチルアクリレート(EMA)ポリマー、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、1,2−ポリ−1,3−ブタジエン、1,4−ポリ−1,3−ブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニリデンクロリド)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
好ましいポリマーとしては、オレフィンホモポリマー及びコポリマー(特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテートポリマー、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。より好ましいポリマーとしては、オレフィンホモポリマー及びこれらの組み合わせ(より好ましくはポリエチレン及びこれらの組み合わせ、最も好ましくは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。有用な超高分子量ポリエチレンとしては、少なくとも約750,000(好ましくは少なくとも約1,000,000、より好ましくは少なくとも約2,000,000、最も好ましくは少なくとも約3,000,000)の分子量を有するものが挙げられる。
【0033】
焼結多孔質ポリマーマトリックスで所望される細孔(例えば、穴、くぼみ、又は、好ましくはチャンネル)のサイズによって、広範囲のポリマー粒子サイズを利用することができる。微細粒子ほど焼結マトリックス中に微細な細孔サイズをもたらすことができる。一般に、ポリマー粒子は、マイクロメートル以下のオーダーの細孔サイズを提供するために、微小粒子(例えば、約1マイクロメートル〜約800マイクロメートル、好ましくは、約5マイクロメートル〜約300マイクロメートル、より好ましくは、約5マイクロメートル〜約200マイクロメートル、最も好ましくは、約10マイクロメートル〜約100又は200マイクロメートルの範囲サイズ又は直径)であることができる。さまざまの平均及び/又はメディアン粒子サイズを使用することができる(例えば、約30マイクロメートル〜約70マイクロメートルの平均粒子サイズは有用であることができる)。所望ならば、高及び低メルトフローレートのポリマーのブレンドを使用することにより、焼結マトリックスの多孔度を変動又は制御することもできる。
【0034】
ポリマー粒子と粒子状濃縮剤(及び湿潤剤又は界面活性剤などの任意の随意の添加物)を一体化し、機械的にブレンド(例えば、商用の混合装置を使用して)して、混合物(好ましくは、均質な混合物)を形成することができる。一般に、粒子状濃縮剤は、混合物中の全粒子の全重量基準で約90重量パーセントまで(好ましくは約5〜約85重量パーセント、より好ましくは約10〜約80重量パーセント、最も好ましくは約15〜約75重量パーセント)の濃度で混合物中に存在することができる。所望ならば、混合物中に慣用の添加物(例えば、湿潤剤、界面活性剤など)を少量(例えば、約5重量パーセントまで)含ませることができる。
【0035】
得られる混合物を型又は他の好適な容器又は基材中に入れることができる。有用な型は、炭素鋼、ステンレス鋼、真鍮、アルミニウムなどででき、単一のキャビティ又は多数個のキャビティを有することができる。処理の完結後焼結内容物を型から除去することができるという前提ならば、キャビティは本質的に、任意の所望の形状のものであることができる。好ましくは、商用の粉末取り扱い及び/又は振動装置を使用することにより、型充填を助けることができる。
【0036】
型に熱を導入する(例えば、電気抵抗加熱、電気誘導加熱、又はスチーム加熱により)ことにより、熱処理を行うことができる。型をポリマーの焼結に充分な温度まで加熱する(例えば、ポリマーの融点の若干下の温度まで加熱することにより)ことができる。焼結方法は既知であり、使用されるポリマーの性状及び/又は形に従って選択可能である。場合によっては、加熱工程時に混合物に圧力を加えることができる。熱処理後、型を外周温度(例えば、約23℃の温度)まで自然に又は任意の好都合な冷却方法又は装置の使用により冷却することができる。
【0037】
粒子及び方法の記述が参照によりこの明細書に組み込まれている、米国特許第7,112,272号、同第7,112,280号、及び同第7,169,304号(Hughesら)に記載されている、ポリマー粒子及び加工方法を使用することにより、好ましい濃縮素子を作製することができる。一方が「ポップコーン形状」(表面渦巻きを有する)であり、他方が実質的に球状である、2つの異なるタイプの超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粒子を一緒にブレンドすることができる。好ましい「ポップコーン形状」及び球状UHMWPEは、Ticona(Celaneseの一部門、Frankfurt,Germanyに本部を置く)からPMX CF−1(0.25〜0.30g/立方センチメートルのかさ密度及び約10マイクロメートル〜約100マイクロメートルの範囲で約30〜40マイクロメートルの平均直径を有する)及びPMX CF−2(0.40〜0.48g/立方センチメートルのかさ密度及び約10マイクロメートル〜約180マイクロメートルの範囲で約55〜65マイクロメートルの平均直径を有する)として入手可能である。相当する形態、かさ密度、及び粒子サイズを有し、かつ約750,000〜約3,000,000の範囲の分子量を有する他のメーカーからのUHMWPEも使用することができる。2つのタイプのUHMWPE粒子を選択して、同一の又は異なる分子量とすることができる(好ましくは、両方とも主張範囲内の同一の分子量を有し、より好ましくは、両方とも約3,000,000の分子量を有する)。
【0038】
2つのタイプのUHMWPE粒子をさまざまな相対量(例えば、等量)で一体化し、次いで上述の比で濃縮剤と更に一体化することができる。濃縮素子の所望の特性によって、UHMWPEのどちらかのタイプを他のタイプよりも少量使用するか、又は混合物から除去することもできる。
【0039】
選択された粒子を一緒にブレンドして、好ましくは均質である混合物を形成することができる。例えば、リボンブレンダーなどを使用することができる。次いで、好ましくは本質的には任意の標準の機械的な振動装置を用いて同時に振動を加えながら、得られる混合物を型キャビティ中に入れることができる。充填及び振動サイクルの終わりに、型をポリマーの焼結に充分な温度(一般に、ポリマーの分子量によって約225°F(107℃)〜375°F(191℃)以上の範囲の温度)まで加熱することができる。
【0040】
冷却時、自己支持性焼結多孔質ポリマーマトリックスを得ることができる。マトリックスは、さまざまな直径の相互連結した、多方向の貫通細孔を含む複雑な内部構造を呈し、このようにして本発明の濃縮過程における濃縮素子として使用するための好ましい迂回経路マトリックスを含むことができる。所望ならば、濃縮素子は、例えば、1つ以上のプレフィルター(例えば、試料を多孔質マトリックスに通す前に試料から比較的大きい食物粒子を除去するための)、装置に圧力差を加えるためのマニホールド(例えば、試料を多孔質マトリックスに通すのを助けるための)、及び/又は外部ハウジング(例えば、多孔質マトリックスを収め及び/又は保護するための使い捨てカートリッジ)などの1つ以上の他の構成要素を更に含むことができる。
【0041】
試料
本発明の方法は、医療、環境、食品、飼料、臨床、及び検査室の試料、及びこれらの組み合わせを含みこれらに限定されない、さまざまなタイプの試料に適用することができる。医療又は獣医試料としては、例えば、臨床診断のために検査される生物源(例えばヒト又は動物)から得た細胞、組織、又は流体を挙げることができる。環境試料は、例えば、医療機関又は獣医機関、産業用設備、土壌、水源、食品調理領域(食品接触及び非接触領域)、検査室、又はバイオテロリズムの対象になり得る領域から得たものであり得る。食品の加工、取扱い、及び調理領域の試料は、細菌病原菌による食品供給汚染に関する懸念が特にしばしばあるためより好適である。
【0042】
液体の形態で得られる試料、又は液体中の固体の分散液又は懸濁液の形態で得られる試料は、直接使用することができ、あるいは濃縮して(例えば遠心分離により)又は希釈して(例えば緩衝(pH調整された)溶液の追加により)使用することができる。固体又は半固体の試料は、直接使用するか、あるいは例えば、所望であれば、流動体媒質(例えば緩衝液)で洗浄若しくはすすぎ、又は流動体媒質中に懸濁若しくは分散させることにより抽出することができ得る。試料は表面から(例えばスワブによる拭き取り又はすすぎにより)採取することができる。好ましくは、試料は流体の形態で使用される(例えば、液体、気体、又は液体中若しくは気体中の固体若しくは液体の分散物若しくは懸濁物)。
【0043】
本発明の方法を実施するのに使用できる試料の例としては、食品(例えば、生鮮農産物又はそのまま食べる昼食若しくは「調理された」食肉)、飲料(例えばジュース又は炭酸飲料)、飲料水、並びに生物学的流動体(例えば全血、又は血漿、血小板の豊富な血液分画、血小板濃縮物、圧縮した赤血球などの血液構成成分、細胞調製物(例えば細胞分散液、骨髄吸引物、又は脊椎骨髄)、細胞懸濁液、尿、唾液、及びその他の体液、骨髄、肺水、脳液、外傷滲出物、外傷生検試料、眼内液、脊髄液など)が挙げられ、また溶解緩衝液の使用などの手順を使用して形成することができる細胞可溶化物などの溶解調製物が挙げられる。好ましい試料としては、食品、飲料、飲料水、生物学的流動体、及びこれらの組み合わせが挙げられる(食品、飲料、飲料水、及びこれらの組み合わせが更に好ましい)。
【0044】
試料の容積は、特定の用途に応じて異なり得る。例えば、本発明の方法を診断又は研究用途に使用する場合には、試料の容積は、通常、マイクロリットルの範囲であり得る(例えば10マイクロリットル以上)。方法が食品病原体試験検査又は飲料水安全性試験のために使用される場合、試料の量は通常、ミリリットル〜リットルの範囲であり得る(例えば100ミリリットル〜3リットル)。例えばバイオ処理又は製剤処方などの産業用途においては、この量は何万リットルであることがある。
【0045】
本発明の方法は、濃縮状態の試料から微生物を分離し、更に、使用される検出手順を阻害し得る試料マトリックス構成成分から微生物を分離することができる。これらすべての場合において、本発明の方法は、他の微生物濃縮方法に追加して、又はその代わりに、使用することができる。よって、所望により、追加の濃縮が望ましい場合には、本発明の方法実施の前又は後に試料からの培養を行うことができる。このような培養増菌は一般的又は一次的(大部分又は本質的に全ての微生物の濃度を増菌)であるか、あるいは特異的又は選択的(1つ以上の選択された微生物のみの濃度を増菌)であることができる。
【0046】
接触
本発明の方法は、2つの物質の間に接触をもたらす、さまざまな既知の方法又は今後開発される方法のいずれによっても実施可能である。例えば、濃縮素子を試料に加えることができ、又は試料を濃縮素子に加えることができる。濃縮素子を試料中に浸漬することができ、試料を濃縮素子の上に注ぐことができ、試料を濃縮素子を入れた管又はウエルの中に注ぐことができ、又は好ましくは、試料を濃縮素子の上又は中に(好ましくは、中に)通すことができる(又は逆も可)。好ましくは、試料が焼結多孔質ポリマーマトリックスの少なくとも1つの細孔の中を(好ましくは、少なくとも1つの貫通細孔の中を)通るような方法で接触を行う。
【0047】
濃縮素子及び試料をさまざまな容器又はホルダー(場合によっては、キャップ付き、密閉又は密封の容器、好ましくは、カラム、注射器筒、又は本質的に試料の漏洩無しで素子を収めるように設計された他のホルダー)のいずれかの中で一体化する(任意の添加順序を用いて)ことができる。本発明の方法を実施する際の使用に好適な容器は、特定の試料によって決められ、量及び性質により大きく異なり得る。例えば、容器は10マイクロリットル容器(例えば試験管又は注射器)などの小さいものであり得、又は100ミリリットルから3リットル容器(例えば、エルレンマイヤーフラスコ又は環状円筒容器)などの大きいものであり得る。
【0048】
容器、濃縮素子、及び試料に直接接触する任意のその他の器具又は添加物を使用前に滅菌(例えば、制御された熱、エチレンオキシドガス、又は放射線によって)して、検出エラーを起こし得る試料のいかなる汚染も低減又は防止することができる。特定の試料の微生物の捕捉又は濃縮に充分な、検出を成功させる濃縮素子中の濃縮剤の量は、場合によって異なり(例えば、濃縮剤及び素子の性状及び形並びに試料の量に依存する)、当業者によって容易に決定可能である。
【0049】
接触は、所望の時間実施可能である(例えば、約100ミリリットル以下の試料容積に対しては、約60分間まで、好ましくは約15秒〜約10分又はそれ以上、より好ましくは、約15秒〜約5分、最も好ましくは約15秒〜約2分の接触が有用であり得る)。随意であるが、微生物と濃縮素子との接触を増大させるために、好まれる方法であり得る、混合(例えば、撹拌、振盪、又は試料の多孔質マトリックス内の通過を促進するための素子内で圧力差の印加)により及び/又はインキュベーション(例えば、外周温度での)により、接触を増強することができる。
【0050】
好ましくは、試料を少なくとも1回(好ましくは1回のみ)濃縮素子に通す(例えば、ポンプ送液により)ことにより、接触を行うことができる。素子内で圧力差を生じさせるための任意のタイプのポンプ(例えば、蠕動ポンプ)又は他の装置(例えば、注射器又はプランジャー)を使用することができる。1分当り約100ミリリットルまで又はそれ以上の素子を通る試料流速が有効であることができる。好ましくは、1分当り約10〜20ミリリットルの流速を使用することができる。
【0051】
好ましい接触方法としては、試料を濃縮素子に通し(例えば、ポンプ送液により)、次いで微生物含有試料(好ましくは流体)を濃縮素子(例えば、上述の容器の1つの中で)と共にインキュベーションする(例えば、約3時間〜約24時間、好ましくは約4時間〜約20時間)ことが挙げられる。望ましい場合は、1種類以上の添加剤(例えば溶解試薬、生物発光検定試薬、核酸捕捉試薬(例えば磁石ビーズ)、微生物用培地、緩衝液(例えば固体試料を湿らせるための)、微生物染色試薬、洗浄用緩衝液(例えば、結合していない物質を洗い流すための)、溶出試薬(例えば血清アルブミン)、界面活性剤(例えば、Union Carbide Chemicals and Plastics(Houston,TX)から販売されているTriton(商標)X−100非イオン系界面活性剤)、機械的磨耗/溶出試薬(例えば、ガラスビーズ)などが、接触時の濃縮剤及び試薬の組み合わせの中に含まれ得る。
【0052】
本発明の方法は、所望により、得られる微生物結合の濃縮剤と試料の分離を更に含む。分離は、当該技術分野において周知の数多くの方法によって実施可能である(例えば、流体試料を注ぎ出し、デカンテーション、又は吸い上げて、この方法の実施に使用される容器又はホルダー中に微生物と結合した濃縮素子を残すことにより)。濃縮素子から捕捉された微生物(又は1つ以上のその成分)を試料の接触後単離又は分離することも可能である(例えば、溶出剤又は溶解剤を濃縮素子に通すことにより)。
【0053】
本発明の方法は、手動により(例えばバッチ単位による方法で)実施することができ、又は(例えば、連続的又は準連続的処理を実現して)自動化することができる。
【0054】
検出
さまざまな微生物は濃縮可能であるが、場合によっては好ましくは、本発明の方法を用いて検出可能である。この方法には、例えば、細菌、真菌類、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、細菌内生胞子(例えばバチルス(炭疽菌、セレウス菌、及び枯草菌を含む)及びクロストリジウム(ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、及びウェルシュ菌))など、並びにこれらの組み合わせが挙げられる(好ましくは、細菌、酵母、真菌類、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせであり、更に好ましくは、細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせであり、最も好ましくは、グラム陰性菌、グラム陽性菌、非エンベロープ型ウイルス(例えばノロウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、ライノウイルス、及びこれらの組み合わせ)、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせである)。この方法は、病原体の検出における有用性を有し、これは食品安全性又は医療、環境、若しくはテロ対策の理由から非常に重要であり得る。この方法は、病原菌(例えばグラム陰性菌とグラム陽性菌の両方)、並びにさまざまな酵母、カビ、及びマイコプラズマ(及びこれらの任意の組み合わせ)の検出に特に有用であり得る。
【0055】
検出される標的微生物の属には、リステリア属、大腸菌属、サルモネラ属、カンピロバクター属、クロストリジウム属、ヘリコバクター属、マイコバクテリウム属、シゲラ属、ブドウ球菌属、腸球菌属、バチルス属、ナイセリア属、シゲラ属、連鎖球菌属、ビブリオ属、エルシニア属、ボルデテラ属、ボレリア属、シュードモナス属、サッカロミケス属、カンジダ属、及び同様物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。試料には複数の微生物株が含まれることがあり、任意の株を、他の株と独立に検出することができる。検出の標的となり得る具体的な微生物には、大腸菌、腸炎エルシニア菌、エルシニア仮性結核菌、コレラ菌、腸炎ビブリオ菌、ビブリオ・バルニフィカス菌、リステリア・モノサイトゲネス、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、サッカロマイセス・セレヴィシエ、カンジダ・アルビカンス、ブドウ球菌エンテロトキシン亜種、セレウス菌、炭疽菌、バチルス・アトロファエウス、枯草菌、ウェルシュ菌、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、エンテロバクター・サカザキ、緑膿菌など、並びにこれらの組み合わせ(好ましくは、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、サッカロマイセス・セレヴィシエ、バチルス・アトロファエウス、枯草菌、大腸菌、大腸菌バクテリオファージがサロゲートであるヒト感染性非エンベロープ型腸内ウイルス、及びこれらの組み合わせが挙げられる)。
【0056】
濃縮素子により捕捉又は結合された(例えば、吸着又は篩い分けにより)微生物は、現在知られている、又は今後開発される本質的に任意の所望の方法によって検出可能である。このような方法には、例えば、培養による方法(時間が許す場合は好ましいことがある)、顕微鏡(例えば透過光型顕微鏡又はエピ蛍光顕微鏡(蛍光染料で標識した微生物を可視化するのに使用できる))、及びその他の画像手法、免疫学的検出方法、及び遺伝子学的検出方法が挙げられる。微生物捕捉に続く検出プロセスは、場合によっては、試料マトリックス成分を除去するための洗浄、濃縮素子の焼結多孔質ポリマーマトリックスのスライス又は別法による破砕、染色などを含むことができる。
【0057】
免疫学的検出は、標的生物に由来する抗原物質の検出であり、これは一般的に、細菌又はウイルス粒子の表面にあるマーカーとして作用する生物学的分子(例えばタンパク質又はプロテオグリカン)である。抗原物質の検出は、通常、抗体によるものであることができる。抗体は、例えばファージディスプレイなどの方法によって選択されたポリペプチド、又はスクリーニング方法から得られたアプタマーである。
【0058】
免疫学的検出方法は周知であり、例えば免疫沈降及び酵素結合免疫吸着検定(ELISA)が挙げられる。抗体結合は、さまざまな方法で検出することができる(例えば、一次抗体又は二次抗体のいずれかを、蛍光染料により、量子ドットで、又は化学発光若しくは着色基質を生成できる酵素により標識し、プレートリーダー又はラテラルフロー装置のいずれかを用いる)。
【0059】
検出はまた、遺伝子学的検定法(例えば核酸のハイブリダイゼーション又はプライマーを用いた増幅)によって実行することができ、これがしばしば好ましい方法である。捕捉又は結合された微生物は溶解され、検定に利用できる遺伝子学的物質を供給する。溶解方法は周知であり、これには例えば、音波処理、浸透性ショック、高温処理(例えば約50℃〜約100℃)、及びリゾチーム、グルコラーゼ、チモラーゼ(zymolose)、リチカーゼ、プロテイナーゼK、プロテイナーゼE、及びウイルスエンドリシン(enolysins)などの酵素と共にインキュベーションすることが挙げられる。
【0060】
一般的に使用されている遺伝子学的検出検定法の多くは、DNA及び/又はRNAを含む、具体的な微生物の核酸を検出する。遺伝子学的検出方法に使用される条件の厳密性は、検出される核酸配列の変異レベルに相関する。塩濃度及び温度の条件が非常に厳しいと、標的の正確な核酸配列の検出が制限され得る。このように、標的核酸配列に小さな変異を有する微生物株は、非常に厳しい遺伝子学的検定法を使用して区別することができる。遺伝子学的検出は、核酸ハイブリダイゼーションに基づいて行われ、ここにおいて一本鎖核酸プローブが微生物の変性核酸にハイブリッド化して、プローブ鎖を含む二本鎖核酸が生成される。当業者は、ゲル電気泳動、細管式電気泳動、又はその他の分離方法の後でハイブリッドを検出するための、放射性、蛍光、及び化学発光標識などのプローブ標識について熟知するであろう。
【0061】
特に有用な遺伝子学的検出方法は、プライマーを用いた増幅に基づくものである。プライマーを用いた核酸増幅方法には、例えば、熱サイクル方法(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR))、並びに等温方法及び鎖置換増幅(SDA)(及びこれらの組み合わせ、好ましくはPCR又はRT−PCR)が挙げられる。増幅された生成物を検出する方法は、例えばゲル電気泳動分離及び臭化エチジウム染色、並びに生成物中に組み込んだ蛍光標識又は放射性標識の検出が含まれ、これらに限定されない。増幅生成物の検出前に分離工程を必要としない方法(例えば、リアルタイムPCR又はホモジニアス検出法)も使用することができる。
【0062】
生物発光検出法は周知であり、例えば、記述が参考として本明細書に組み込まれる、米国特許第7,422,868号(Fanら)に記述されているものを含むアデノシン(adensosine)三リン酸(ATP)検出方法が挙げられる。他の発光に基づく検出方法も使用することができる。
【0063】
本発明の方法は株特異性ではないため、同じ試料内で、複数の微生物株を検定のための標的にすることができる、一般的な捕捉システムを提供する。例えば、食品試料の汚染について検定を行う場合、同じ試料内でリステリア・モノサイトゲネス、大腸菌、及びサルモネラの全部について試験を行うことが望ましいことがあり得る。捕捉工程を1回行い、次に例えば、これら微生物株それぞれの、異なる核酸配列を増幅するための固有プライマーを使用して、PCR又はRT−PCR検定を行うことができる。したがって、それぞれの株について別々の試料取扱い及び作製手順を行う必要性を回避することができる。
【0064】
診断キット
本発明の濃縮工程の実施において使用するための診断キットは、(a)少なくとも1つの上述の濃縮素子、及び(b)本発明の濃縮工程の実施において使用するための少なくとも1つの試験容器又は試験試薬(好ましくは無菌の試験容器又は試験試薬)を含む。好ましくは、診断キットは、方法を実施するための取り扱い説明書を更に含む。
【0065】
有用な試験容器又はホルダーとしては上述のものが挙げられ、これを例えば、接触、インキュベーション、溶出液の捕集、又は他の所望の工程段階に使用することができる。有用な試験試薬としては、微生物培養又は生長媒体、溶解剤、溶出剤、緩衝液、発光検出アッセイ構成要素(例えば、照度計、溶解剤、ルシフェラーゼ酵素、酵素基質、反応緩衝液など)、遺伝子学的検出アッセイ構成要素など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい溶解試薬は、緩衝液中に供給された溶解酵素又は薬品であり、好ましい遺伝子学的検出検定構成要素としては、標的微生物に固有の1つ以上のプライマーが挙げられる。キットは、場合によっては、無菌のピンセットなどを更に含むことができる。
【実施例】
【0066】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。微生物培養物をThe American Type Culture Collection(ATCC;Manassas,VA)から購入した。
【0067】
濃縮剤
結晶質ケイ酸マグネシウム濃縮剤(これ以降、タルク)をMallinckrodt Baker,Inc.(Phillipsburg,NJ)から購入した。
【0068】
非晶質の球体化されたケイ酸マグネシウム濃縮剤(これ以降、As−タルク)を、3M(商標)Cosmetic Microspheres CM−111(むくの球の形状、粒子密度2.3g/立方センチメートル、表面積3.3m/g、粒子サイズ約11ミクロン未満90パーセント、約5ミクロン未満50パーセント、約2ミクロン未満10パーセント、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)として入手した。
【0069】
ゼータ電位測定
TM200自動滴定モジュール、pH電極、及びインライン電導度セルを備えた、Colloidal Dynamics Acoustosizer II(商標)多周波数電気音響スペクトル分析器(Colloidal Dynamics,Warwick,RI)を用いて、タルクとAs−タルク濃縮剤水性ディスパージョン(Millipore Corporation(Bedford,MA)からのMilli−Q(商標)Elix 10(商標)Synthesis A10脱イオンシステムを使用することにより得られる18megaohmの脱イオン水中の5.75重量パーセントタルク及び5.8重量パーセントのAs−タルク)のゼータ電位を、添加した塩酸の関数(pH)として測定した。次の一般的なパラメーターの極性較正及び極性試料設定を用いて、測定を行った。
【0070】
【表1】

【0071】
pH約7で、AS−タルクは約−12mVのスモルコフスキーゼータ電位を呈し、タルクは約−8mVのスモルコフスキーゼータ電位を呈した。
【0072】
表面組成分析
タルク及びAS−タルク濃縮剤の試料の表面組成をX線光電子分光法(XPS、ESCAとしても既知である)により分析した。粉末の試料を、アルミニウム箔上の両面の感圧接着テープに押し付けた。圧縮窒素ガスを吹き付けることにより、過剰の粉末をそれぞれの試料表面から除去した。
【0073】
単色Al−Kα X線励起源(1487eV)及び定パスエネルギーモードで動作する半球状電子エネルギー分析器を有する、Kratos AXIS Ultra(商標)DLD分光計(Kratos Analytical(Manchester,England))を用いて、スペクトルデータを取得した。試料表面に対して測定して90度のテイクオフ角度で±10度の受け取りの立体角により出射光電子を検出した。低エネルギー電子フラッドガンを使用して、表面帯電を最少化した。アノードに対して140ワット電力及び2×10−8Torr(2.7E−6Pascal)チャンバー圧力を用いて、測定を行った。
【0074】
約300マイクロメートル×約700マイクロメートルの寸法のそれぞれの濃縮剤試料の表面積をそれぞれのデータ点に対して分析した。それぞれの試料の3つの面積を分析し、平均して、報告された平均の原子パーセント値を得た。標準のVision2(商標)ソフトウエア(Kratos Analytical,Manchester,England)を用いて、データ処理を行った。結果(XPSにより検出可能なレベルで濃縮剤の表面上に存在する元素)を下記の表Aに示す。
【0075】
【表2】

【0076】
濃縮剤のスクリーニング:微生物濃縮試験方法
単離した微生物コロニーを、5mLのBBL(商標)Trypticase(商標)大豆ブロス(Becton Dickinson,MD)に植菌し、37℃で18〜20時間インキュベーションした。1mL当り〜10コロニー形成単位のこの一夜培養物を、pH 7.2の吸着緩衝液(5mM KCl、1mM CaCl、0.1mM MgCl、及び1mM KHPOを含有する)中で希釈して、1mLの希釈液当り10の微生物を得た。1.1mL容積の微生物希釈液を、10mgの濃縮剤を入れた、別々の、ラベルした5mLの滅菌ポリプロピレン管(BD Falcon(商標),Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)に添加し、それぞれをキャップし、Thermolyne Maximix Plus(商標)渦流ミキサー(Barnstead International,Iowa)上で混合した。それぞれのキャップした管を、Thermolyne Vari MiX(商標)シェーカープラットフォーム(Barnstead International,Iowa)上室温(25℃)で15分間インキュベーションした。インキュベーション後、それぞれの管をラボラトリーベンチ上で10分間静置して、濃縮剤を沈降させた。1.1mLの微生物希釈液を濃縮剤無添加で含有する対照試料管を、同様の方法で処理した。次いで、得られる沈降濃縮剤及び/又は上澄み液(及び対照試料)を分析に使用した。
【0077】
沈降した濃縮剤を、1mLの滅菌バターフィールド緩衝液(pH 7.2±0.2、リン酸一カリウム緩衝液、VWRカタログ番号83008−093、VWR(West Chester,PA))に再び懸濁させ、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates培地(乾燥、脱水可能、3M Company,St.Paul.MN)上でメーカーの使用説明書にしたがって播種した。3M(商標)Petrifilm(商標)Plate Reader(3M Company(St.Paul.MN))を使用して、好気性菌計数値を定量した。次式を使用して結果を算出した。
【数1】


(式中、CFU=コロニー形成単位であり、これは生存している又は生存可能な微生物の単位である)。
【0078】
次いで、下記の式を用いて濃縮剤による微生物のパーセント捕捉率として結果を報告した。
捕捉効率又はパーセント捕捉率=再懸濁濃縮剤中のCFU/mLのパーセント
【0079】
濃縮剤
比較の目的で、少なくともいくつかの場合において1mLの上澄み液を取り出し、非希釈で播種するか、又は1:10でバターフィールド緩衝液で希釈し、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates培地上で播種した。3M(商標)Petrifilm(商標)Plate Reader(3M Company(St.Paul.MN))を使用して、好気性菌計数値を定量した。次式を使用して結果を算出した。
【数2】


(式中、CFU=コロニー形成単位であり、これは生存している又は生存可能な微生物の単位である)。
【0080】
微生物のコロニーと濃縮剤の色が類似している(プレートリーダーに対して殆どコントラストをもたらさない)場合には、結果は上澄み液を基準とし、下記の式を用いて濃縮剤による微生物のパーセント捕捉率により報告された。
捕捉効率又はパーセント捕捉率=100−上澄み液中のCFU/mLパーセンテージ
【0081】
濃縮剤スクリーニング1及び12並びに比較用スクリーニング1及び2
上述の微生物濃度試験方法を用いて、10mgの非晶質の球体化されたケイ酸マグネシウム(上述のように作製した、以降As−タルク)と結晶質(非球体化)のケイ酸マグネシウム(以降、タルク)を標的微生物の、グラム陰性の細菌サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)及びグラム陽性のbacterium Staphylococcus aureus菌(ATCC 6538)に対する細菌濃度について別々に試験した。結果を下記の表1に示す(全ての試料に対する標準偏差は10パーセント未満)。
【0082】
【表3】

【0083】
濃縮剤スクリーニング3〜5及び比較用スクリーニング3〜5
上述の微生物濃度試験方法を用いて、AS−タルク及びタルクの単位容積当りの異なる重量を、標的微生物のサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の細菌濃縮について、別々に試験した。結果を下記の表2に示す(全ての試料に対する標準偏差は10パーセント未満)。
【0084】
【表4】

【0085】
濃縮剤スクリーニング6〜8及び比較用スクリーニング6〜8
上述の微生物濃度試験方法を用いて、10mgのAS−タルク及びタルクを、標的微生物のサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の異なる細菌濃縮に対して別々に試験した。結果を以下の表3に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
濃縮剤スクリーニング9〜11及び比較用スクリーニング9〜11
上述の微生物濃度試験方法を用いて,10mgのAS−タルク及びタルクを、標的微生物のサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の細菌濃縮について5、10、及び15分のインキュベーションに対して別々に試験した。結果を下の表4に示す(全試料の標準偏差は10パーセント未満)。
【0088】
【表6】

【0089】
濃縮剤スクリーニング12及び比較用スクリーニング12
吸着緩衝液の代わりにバターフィールド緩衝液を使用したことを除いて、上述の微生物濃度試験方法を用いて、10mgのAS−タルク及びタルクを、標的微生物のSaccharomyces cerevisiae(10CFU/mL,ATCC 201390)の酵母濃縮について別々に試験した。得られる材料を3M(商標)Petrifilm(商標)Yeast and Mold Count Plate培地(乾燥、再水和可能、3M Company(St.Paul.MN))上で培養し、メーカーの使用説明書に従い5日間インキュベーションした。単離された酵母コロニーを手動で数え、パーセント捕捉率を上述のように計算した。パーセント捕捉率はAS−タルクに対しては97パーセント及びタルクに対して82パーセントであった(全ての試料に対する標準偏差は10パーセント未満)。
【0090】
濃縮剤スクリーニング13〜15
食品試料を地元の食料品店(Cub Foods,St.Paul)から購入した。七面鳥スライス及びアップルジュースの試料(11g)を滅菌されたガラス皿内で計量し、滅菌されたStomacher(商標)ポリエチレンフィルタ袋(Seward Corp(Norfolk,UK))に加えた。サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の18〜20時間の一晩培養物(ストック)を用いて、食品試料に濃度10CFU/mLで菌を加えた。この後に、99mLのバターフィールド緩衝液を、菌を添加した試料に加えた。得られる試料をStomacher(商標)400 Circulator実験用ブレンダー(Seward Corp.(Norfolk,UK))で2分間サイクルでブレンドした。ブレンドした試料を滅菌された50mLの遠心管(BD Falcon(商標)(Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ)))に捕集し、毎分2000rpmで5分間遠心分離にかけて、大きな破片を除去した。得られる上澄み液を更なる試験に試料として使用した。1Nの水酸化ナトリウム(VWR(West Chester,PA))を添加することにより、アップルジュースをベースとする上澄み液のpHを試験前に7.2に調整した。水飲み場の飲料水(100mL)を滅菌された250mLガラス瓶(VWR(West Chester,PA))に採取し、標的微生物のサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)を10CFU/mLで植菌し、手で5回転倒混合し、室温(25℃)で15分間インキュベーションした。この水試料を更なる試験に使用した。
【0091】
上述の細菌濃縮試験方法を用い、上記のように調製した、それぞれの1mLの試験試料を、10mgのAS−タルクを含んだ試験管に別々に加え、標的微生物である理の珪藻土を含んだ対照用試験管に別々に加え、標的微生物であるサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の細菌濃縮について試験した。結果を下の表5に示す(全試料の標準偏差は10パーセント未満)。
【0092】
【表7】

【0093】
濃縮剤スクリーニング16及び17
AS−タルクを、大容積試料(30mL試料容積当り300mg AS−タルク)からの標的微生物のサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の濃縮について試験した。水飲み場の飲料水(100mL)は、滅菌済み250mLガラス瓶(VWR、ペンシルバニア州ウェストチェスター)に採取し、標的微生物のサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)を10CFU/mLで接種した。得られる植菌した水を手で5回転倒混合し、及び室温(25℃)で15分間インキュベーションした。インキュベートした飲料水試料30mLを、ASタルク300mgが入った滅菌済み50mL円錐形ポリプロピレン製遠心管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))に加え、上記の微生物濃縮試験方法を使用して試験を行った。得られる沈降したAS−Talcを、30mLの滅菌されたバターフィールド緩衝液中に再懸濁させ、1mLの得られる懸濁液を、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates培地上に播種した。パーセント捕捉率は98パーセントであった(標準偏差は10パーセント未満)。
【0094】
地元の食料品店(Cub Foods,St.Paul)からのホールグレープトマト(11g)を、滅菌ペトリ皿に入れ、標的微生物のサルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)により10CFU/mLで植菌し,渦流により5回手で混合し、室温(25℃)で5分間インキュベーションした。99mLのバターフィールド緩衝液を入れた、滅菌されたStomacher(商標)ポリエチレンフィルター袋(Seward Corp(Norfolk,UK))にトマトを加えた。袋の内容物を1分間渦流により混合した。試料30mLを、ASタルク300mgが入った滅菌済み50mL円錐形ポリプロピレン製遠心管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))に加え、上述の微生物濃縮試験方法を使用して細菌濃縮の試験を行った。2000rpmで5分間遠心分離(Eppendorf(Westbury,NY))することによりAs−タルク粒子を沈降させた。沈降した粒子を30mLの滅菌されたバターフィールド緩衝液中で再懸濁し、1mLの得られる懸濁液を3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates培地上に播種した。パーセント捕捉率は99パーセントであった(標準偏差は10パーセント未満)。
【0095】
濃縮剤スクリーニング18及び19
10mgのAS−タルクを標的細菌内生胞子Bacillus atrophaeus(ATCC 9372)及びBacillus subtilis(ATCC 19659)の濃縮について試験した。上述の微生物濃度試験方法を次の改変と共に使用した:一夜の培養物はそれぞれ2×10CFU/mLのBacillus atrophaeus及び7×10CFU/mLのBacillus subtilisを有するものであった:得られる上澄み液を非希釈で播種した:結合したBacillus atrophaeusと共に沈降した濃縮剤を1mLの滅菌されたバターフィールド緩衝液中で再懸濁し、結合したBacillus subtilisと共に沈降した濃縮剤を5mLの滅菌されたバターフィールド緩衝液中で再懸濁し、播種(それぞれ1mL)した。捕捉効率を播種した上澄み液からの計数値に基づいて計算し、結果を下記の表6に示す(全ての試料に対する標準偏差は10パーセント未満)。
【0096】
【表8】

【0097】
濃縮剤スクリーニング20及び21
10mgのAS−タルクを、標的の無エンベロープの細菌感染型ウイルスの大腸菌バクテリオファージMS2(ATCC 15597−B1、これはさまざまなヒト感染型の無エンベロープの腸内ウイルスに対する代わりとしてしばしば使用される)の濃縮について試験した。二層寒天法(下記に記述)を使用して、大腸菌細菌(ATCC 15597)をホストとして使用し、大腸菌バクテリオファージMS2(ATCC 15597−B1)の捕捉に対して検定した。
【0098】
大腸菌バクテリオファージMS2ストックを、pH 7.2の滅菌された1X吸着緩衝液(5mMのKCl、1mMのCaCl、0.1mMのMgCl、及び1mMのKHPOを含む)中で10倍段階希釈し、1ミリリットル当たり10及び10プラーク形成単位(PFU/mL)の2つの希釈物を得た。容積1.0mLの得られたバクテリオファージ希釈液を、10mgの濃縮剤が入った、ラベル付けされ、滅菌された5mLのポリプロピレン試験管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))に加え、Thermolyne Maximix Plus(商標)渦流ミキサー(Barnstead International,Iowa)上で混合した。キャップした試験管をThermolyne Vari Mix(商標)シェイカー・プラットフォーム(Barnstead International,Iowa)上で15分にわたって室温(25℃)でインキュベートした。インキュベーション後、試験管を10分間実験台の上に静置し、濃縮剤を沈降させた。濃縮剤を含まない1.0mLのバクテリオファージ希釈液が入った対照試料試験管を、同じように処理した。インキュベーション後、試験管を10分間実験台の上に静置し、濃縮剤を沈殿させた。
【0099】
濃縮剤を含まない1.0mLのバクテリオファージ希釈液が入った対照試料試験管を、同じように処理した。追加の800マイクロリットルの上澄み液を取り除き、廃棄した。100マイクロリットルの沈降した濃縮剤も、バクテリオファージの検定を行った。
【0100】
二重層寒天法:
大腸菌(ATCC 15597)の単一コロニーを25mLの滅菌3質量パーセントトリプシン大豆ブロス(Bacto(商標)トリプシン大豆ブロス、Becton Dickinson and Company(Sparks,MD);製造者の取扱説明に従って調製)に接種し、250回転/分(rpm)に設定したシェイカー・インキュベーター(Innova(商標)44、New Brunswick Scientific Co.,Inc.(Edison,NJ))内で37℃で一晩インキュベートした。750マイクロリットルのこの一晩培養物を使用して、75mLの滅菌3質量パーセントトリプシン大豆ブロスに接種した。結果として得られた培養物を250rpmに設定したシェイカー・インキュベーター内で37℃でインキュベートして、SpectraMax M5分光光度計(Molecular Devices(Sunnyvale,CA))を使用して550nmにおける吸光度(吸光度値0.3〜0.6)により測定されたとき、対数期にある大腸菌細胞を得た。分析に使用するまで細胞を氷上でインキュベーションした。
【0101】
100マイクロリットルの上記バクテリオファージ試験試料を75マイクロリットルの氷冷インキュベートされた(ice-incubated)大腸菌(宿主細菌)細胞と混合し、室温(25℃)で5分にわたってインキュベートした。結果として得られた試料を5mLの滅菌溶融上層寒天(3質量パーセントのトリプシン大豆ブロス、1.5質量パーセントのNaCl、0.6質量パーセントの寒天;その日に調製し、48℃の水槽中で維持)と混合した。次に、この混合物をペトリ皿内の底部寒天(3質量パーセントのトリプシン大豆ブロス、1.5質量パーセントのNaCl、1.2質量パーセントの寒天)の上に注いだ。この混合物の溶融寒天成分を5分にわたって凝固させ、ペトリ皿又はプレートを反転させ、37℃でインキュベートした。一晩インキュベーションの後、プレートを目視で点検し、これらの沈殿濃縮剤を含むプレートは、(対照プレートと共に)、バクテリオファージプラークの存在を示した。播種した上澄み液からの計数値に基づいて捕捉効率を計算し、10PFU/mL希釈液に対しては72パーセントと求められた(標準偏差は10パーセント未満)。
【0102】
濃縮剤スクリーニング22
アップルジュースを地元の食料品店(Cub Foods,(St.Paul))から購入した。アップルジュース(11g)を滅菌したガラス皿内で計量し、99mLの滅菌したバターフィールド緩衝液を加えた。加えた液を1分間渦流で混合し、サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)及び大腸菌(ATCC 51813)の18〜20時間の一晩培養物(細菌ストック)を用いて、た。これに2つの細菌培養物をそれぞれ1CFU/mLの濃度で添加した。細菌ストックの段階希釈物を上述の1X吸着緩衝液中で作製した。
【0103】
上述の微生物濃縮試験方法を使用して、微生物を添加した10mLのアップルジュース試料を、100mgのAS−タルク−DEを入れた滅菌された50mLの円錐形ポリプロピレン製遠心管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))に加え、15分間インキュベーションして、標的微生物であるサルモネラの細菌捕捉/濃縮(競合微生物である大腸菌の存在下における)について試験を行った。得られる上澄み液を取り出し、沈降した濃縮剤を、2mLの滅菌された3重量パーセントのトリプシン大豆ブロス(Bacto(商標)Tryptic Soy Broth,Becton Dickinson and Company(Sparks,MD);メーカーの使用説明書に従い作製)が入った別の50mLの遠心管に移した。細菌ストックを、上述のように1X吸着緩衝液中で段階希釈した。一夜インキュベーションした後、得られたブロス混合物を、SDI(Strategic Diagnostics,Inc.(Newark,DE))から販売されているRapidChek(商標)サルモネラ・ラテラルフロー・イムノアッセイ試験細片を用いて、サルモネラの存在について試験した。試験細片の目視検査は、これがサルモネラに対して陽性であることを示した。
【0104】
微生物含有ブロス混合物に対してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸検出も実施した。上述の一晩インキュベーションした1mLの濃縮剤含有ブロスを、試験試料として、Applied Biosystems(Foster City,CA)から販売されているTaqMan(商標)ABIサルモネラ菌検出キットを用いて、サルモネラの存在について検定した。対照試料として、サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の18〜20時間一晩培養物(ストック)1mLも検定した。Stratagene Mx3005P(商標)QPCR(定量PCR)システム(StratageneCorporation,LaJolla,CA)で、45サイクルに対して25℃で30秒間、95℃で10分間、95℃で15秒間、及び60℃で1分間の1サイクル当たりのサイクル条件を用いて、PCR試験を実施した。対照試料について、17.71の平均(n=2)サイクル閾値(CT値)を得た。濃縮剤を含有する試験試料について19.88の平均(n=2)のCT値を得たところ、陽性のPCR反応を示し、サルモネラの存在を確実なものとした。
【0105】
濃縮素子の作製
2つの異なる超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粉末を、Ticona(本部をFrankfurt,Germanyに置くCelaneseの一部門)からPMX1(製品番号GUR(商標)2126、不規則形状、50〜100マイクロメートルのサイズ範囲)及びPMX2(製品番号GUR(商標)4150−3,球状で約40マイクロメートルのメディアン粒子サイズ)として入手した。この粉末をPMX1:PMX2の4:1の比で一体化した。得られる組み合わせ物(これ以降、UHMWPE混合物)を使用して、2つのタイプの濃縮素子を作製した。
【0106】
濃縮素子タイプAに対しては、酸化第二鉄を含む40重量パーセントのAS−タルク濃縮剤(上述の)と60重量パーセントのUHMWPE混合物との混合物を一体化した。濃縮素子タイプB(対照)に対しては、UHMWPE混合物を濃縮剤無添加で使用した。それぞれの濃縮素子に対しては、選択された構成成分を1リットルの円筒容器又はジャーの中に秤りこんだ。次いで、ジャーを7分間激しく振盪するか、あるいは低速(1分当り約10〜15回転(rpm))で回転するローラーミル上に少なくとも2時間置いて、均質なブレンド又はフロックを作製した。
【0107】
次いで、フロックの一部(約6〜10g)を使用して、5mmの深さを有し、フロックの固着を防止し、型面からの伝熱を遅延させるために、ポリテトラフルオロエチレンを含浸したガラス繊維の0.05mm(2mil)厚の円板を底部及び蓋に配置した、50mm直径の円筒型を充填した。フロックを型の中に圧縮し、次いで型を閉じるための位置に型の蓋を押し込んだ。
【0108】
充填した型を渦流ミキサー(IKA(商標)MS3 Digital Vortexer、VWR Scientific(West Chester,PA)から入手可能)の上に10〜20秒間置いて、内容物中のボイド及びクラックを取り除いた。次いで、型を175〜185℃に設定した通気した対流オーブン(Thelco Precision Model 6555、Thermo Fisher Scientific,Inc.(Waltham,MA)から入手可能)中に1時間置いて、フロックを焼結した。室温(約23℃)まで冷却した後、得られた焼結フロックを型から取り出し、パンチングダイを使用して、濃縮素子として使用するための47mmの直径にトリミングした。
【0109】
(実施例1)
サルモネラ菌亜種ネズミチフス菌(ATCC 35987)の単離された細菌コロニーを5mLのBBL(商標)Trypticase(商標)大豆ブロス(Becton Dickinson(Sparks,MD))の中に植菌し、37℃で18〜20時間インキュベーションした。約1×10CFU/mLの濃度のこの一夜培養物をバターフィールド緩衝液(pH 7.2±0.2;一塩基性リン酸カリウム緩衝液溶液;VWRカタログ番号83008−093、VWR(West Chester,PA))中で希釈して、ほぼ1×10CFU/mL植菌材料を得た。
【0110】
容積250mLの飲料水(飲用泉からの)にほぼ1×10CFU/mL植菌材料の1:100希釈液を植菌して、約11CFU/mLの濃度を有する試料を得た。(250mL試料中合計約2600CFU)濃縮素子用にカスタムメイドの試料ホルダー(ホルダーは、47mm直径の濃縮素子用のフリクションフィットをもたらすように機械加工されたプラスチック管付きの上下の流れ分配板からなり、Oリングを使用して、上流及び下流側での漏洩を防止し;通しボルトは閉止圧力を提供した)、蠕動ポンプ(Heidolph(商標)Pump Drive 5201蠕動ポンプ、VWR Scientific(West Chester,PA)から入手可能)、及び3.1mm内径の配管を用いて、試料を、タイプA(As−タルク)の濃縮素子に10mL/分の流速で25分間ポンプ送液した。デジタル圧力センサー(SSI Technologies Model MGI−30−A−9V,Cole−Parmer(VernonHills,Illinois))を試料ホルダーの上流に配置して、圧力低下をモニターした。
【0111】
貫流試料区分(1mL)を、ラベルした、5mLの滅菌ポリプロピレン管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))に25分間5分ごとに捕集し、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates培地(乾燥、再水和型、3M Company(St.Paul,MN))上にメーカーの使用説明書にしたがって播種した。試料を濃縮素子に通した後、濃縮素子を、500微生物/mLのBSA(ウシ血清アルブミン、水中1mg/mLのストック、Sigma Chemicals(St Louis,MO)から購入した粉末)を含む、フィルターで滅菌した20mLのバターフィールド緩衝液により「フラッシュ」して、流れ(5mL/min)を反転することにより細菌を溶出させた。得られる溶出液を滅菌した50mLのポリプロピレン管中に捕集し、本質的に上述のように播種した。
【0112】
フラッシュした後、濃縮素子を、滅菌ピンセットを用いてホルダーから取り出し、100mLの滅菌された3重量パーセントのトリプシン大豆ブロス(メーカーの使用説明書にしたがって作製した、Bacto(商標)大豆ブロス、Becton Dickinson(Sparks,MD)を入れた、滅菌されたStomacher(商標)ポリエチレンフィルター袋(PE−LD Model 400,Seward Corp(Norfolk,UK))中で一夜インキュベーションした。袋をゆるく結び、播種した貫流試料区分及び播種した溶出液と一緒に37℃で18〜20時間インキュベーションした。インキュベーションした播種物を、メーカーの使用説明書にしたがって翌日定量した。
【0113】
下式(式中、CFU=生存している又は生存可能な微生物の単位である、コロニー形成単位)を使用することにより、捕捉効率を貫流試料区分から得られる計数値に基づいて計算した。
【数3】


捕捉効率又はパーセント捕捉=区分中の100−パーセントCFU
【0114】
99パーセント超の捕捉効率を得た。溶出(流れを反転することにより)によって捕捉された植菌材料のほぼ25パーセント(660/2600CFU)が放出された。
【0115】
SDI(Strategic DiagnosticsInc.(Newark,DE))からのSDI RapidChek(登録商標)サルモネララテラルフローイムノアッセイ細片を用いて、濃縮素子を入れた一夜培養したブロスをサルモネラの存在について試験した。濃縮素子を含む一夜培養されたブロスを、バターフィールド緩衝液中で希釈し、3M(商標)Petrifilm(商標)Aerobic Count Plates(3M Company(St.Paul.,MN))の上に播種し、37℃で18〜20時間インキュベーションし、翌日定量した。プレート計数値は、濃縮素子中の捕捉されたサルモネラの数が約2×10CFU/mLの濃度まで増加したことを示した。
【0116】
比較例1
タイプA(AS−Talc)濃縮素子の代わりにタイプB(対照)濃縮素子(濃縮剤無し)を使用し、約13CFU/mL(ほぼ250mLの試料中で合計約3300CFU)を有する植菌した飲料水試料を使用して、実施例1の手順を本質的に繰り返した。99パーセント超の捕捉効率を得、溶出(流れを反転することにより)によって捕捉された植菌材料のほぼ2.4パーセント(80/3300CFU)が放出された(上記の実施例1の溶出パーセントよりも殆ど1桁少ない)。この溶出結果は、本発明の濃縮素子が捕捉された微生物を単離又は分離して、更なる分析を容易にする点で、比較の素子を超える利点をもたらすことができるということを示唆する。
【0117】
実施例2及び3並びに比較例2
(30℃で18時間インキュベーションした、5重量パーセントのヒツジの血液を入れたトリプシン大豆寒天、Hardy Diagnostics(Santa Maria,CA))からのListeria innocua(ATCC 33090)の一夜ストリークした培養物を使用して、0.5McのFarland標準(DensiCHEK(商標)濃度計、bioMerieux,Inc.(Durham,NC)を使用)を、3mLのバターフィールド緩衝液(pH 7.2±0.2、一塩基性リン酸カリウム緩衝溶液、VWRカタログ番号83008−093,VWR(West Chester,PA))中で作製した。1×10CFU/mLを含有する得られた細菌ストックを、バターフィールド緩衝液中で連続して希釈して、ほぼ1×10CFU/mLの植菌物を得た。
【0118】
袋に入れたアイスバーグレタス(実施例2)及び有機ホウレンソウ(実施例3)を地元の食料品店(Cub Foods,St.Paul,MN)から購入した。25グラムのレタス及びホウレンソウ(これ以降、見本試料)を、滅菌されたStomacher(商標)ポリエチレンフィルター袋(Seward Corp(Norfolk,UK))中で別々に秤量した。ほぼ1×10CFU/mLの植菌物の1:1000希釈液を見本試料上で植菌して、1CFU/mLの最終濃度をそれぞれの見本試料中で得た。袋を30秒間振盪することにより、それぞれの植菌した見本試料を混合し、これに室温(23℃)での10分間のインキュベーション時間を続けることによって、細菌を見本に付着させた。
【0119】
225mL容積のバターフィールド緩衝液(pH 7.2±0.2、一塩基性リン酸カリウム緩衝溶液、VWRカタログ番号83008−093、VWR(West Chester,PA))を、それぞれのインキュベーションした見本試料に添加して、約1CFU/mL(ほぼ250mLの見本試料中合計約250CFU)の濃度を有する試料を得た。得られた見本試料を、Stomacher(商標)400サーキュレーター実験室ブレンダー(Seward Corporation(Norfolk,UK))中1分当り200回転(rpm)で1分サイクルの間ブレンドした。ブレンドした見本試料をピペットにより袋から取り出し、別々の滅菌された250mLのガラス瓶(VWR(West Chester,PA))中に捕集した。
【0120】
濃縮素子用に上述(実施例1で)のカスタムメイドの試料ホルダー、蠕動ポンプ(Heidolph(商標)Pump Drive 5201蠕動ポンプ、VWR Scientific(West Chester,PA)から入手可能)、及び3.1mm内径の配管を用いて、補集した生成物試料をそれぞれ、タイプA(As−タルク)濃縮素子(2つの素子を本質的に上述したように作製)から10mL/分の流速で25分間ポンプ送液した。
【0121】
全部で250mLのレタス試料を濃縮素子に通した。レタス試料からの貫流区分(1mL)を、ラベルした、5mLの滅菌ポリプロピレン管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))中で25分間5分毎に捕集し、改質Oxford培地プレート(Hardy Diagnostics(Santa Maria,CA))上にスプレッド法により播種(100マイクロリットル)した。プレートを反転し、37℃で18〜20時間インキュベーションした。
【0122】
ホウレンソウ試料からの貫流区分(1mL)を、ラベルした、5mLの滅菌ポリプロピレン管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))中で15分間5分毎に捕集し、改質Oxford培地プレート(Hardy Diagnostics(Santa Maria,CA))上に播種し、同様に処理した。15分後多分濃縮素子の詰まりにより流れが止まったときに、ポンプ送液を停止した。250mLのホウレンソウ試料の半分のみを濃縮素子により処理した。
【0123】
1×10CFU/mLの植菌物の1:10希釈液からの100マイクロリットル容積を、植菌物の対照(非濃縮)として同様に播種した。
【0124】
見本試料を濃縮素子に通した後、濃縮素子を、滅菌スパチュラを用いてホルダーから取り出し、5mLの滅菌された3.7重量パーセントのブレインハートインフージョンブロス(メーカーの使用説明書にしたがって作製した、BBL(商標)Brain Heart Infusion Broth、Becton Dickinson(Sparks,MD))を入れた、滅菌ポリプロピレン培養皿(60mm×15mm、Corningポリプロピレン培養皿、VWR(West Chester,PA)から入手可能、カタログ番号25382−381)の中に入れ、37℃で18〜20時間インキュベーションした。
【0125】
比較のために(比較例2として)、Listeria innocua(本質的に上述したように作製、25グラムを225mlのバターフィールド緩衝液中でブレンド)を加えた、ブレンドしたホウレンソウ試料を、47mm直径、0.45ミクロン細孔サイズの滅菌混合セルロースエステル膜フィルター(カタログ番号HAWP04700、Millipore Corporation(Bedford,MA))から真空濾過により処理した。多分濃縮素子の詰まりにより流れが止まる前に、250mL試料の約8mLの容積を処理した。処理を停止した。
【0126】
インキュベーションした改質Oxford培地プレートを手での計数により翌日定量した。下式(式中、CFU=生存している又は生存可能な微生物の単位である、コロニー形成単位)を使用することにより、捕捉効率を貫流試料区分から得られる計数値に基づいて計算した。
【数4】


捕捉効率又はパーセント捕捉=区分中の100−パーセントCFU
【0127】
レタス試料の濃縮に使用される素子に対して99パーセント超の捕捉効率を得た。ホウレンソウ試料の5分、10分、及び15分の貫流区分中で細菌コロニーは観察されなかった。コロニー計数値に基づいて、植菌したレタス及びホウレンソウ試料は、それぞれ、合計500CFUを含有していた。
【0128】
3Mからの3M(商標)Tecra(商標)Listeria目視イムノアッセイキット(3M Australia Pty Ltd.(Frenchs Forest,Australia)から入手可能)を用いて、濃縮素子を入れた両方の一夜培養したブロスを、Listeriaの存在についてメーカーの使用説明書にしたがって試験した。レタス及びホウレンソウ試料の両方に対して陽性の結果を得た(二重試験した、それぞれの試料の414ナノメートルにおける吸光度は、0.2超であり、陰性の対照のそれは0.2未満(0.055の実際の吸光度)であった)。
【0129】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対するさまざまな予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、ただし、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した請求項によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)非晶質金属ケイ酸塩を含み、X線光電子分光法(XPS)により測定して、0.5未満又はそれに等しい金属原子:ケイ素原子比を有する表面組成を有する少なくとも1つの濃縮剤を含む、焼結多孔質ポリマーマトリックスを含む濃縮素子を用意する工程と、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を用意する工程と、(c)前記濃縮素子を前記試料を接触させて、少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部が前記濃縮素子に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が、少なくとも1つの結合した微生物株の存在を検出する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出が、培養に基づく方法、顕微鏡及びその他の画像形成手法、遺伝子学的検出方法、免疫学的検出方法、生物発光に基づく検出方法、及びこれらの組み合わせから選択される方法によって実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記試料から前記濃縮素子を分離すること及び/又は少なくとも1つの結合した微生物株を培養により増菌すること及び/又は前記濃縮素子から少なくとも1つの結合した微生物株の少なくとも一部を分離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記焼結多孔質ポリマーマトリックスが、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーが、オレフィンホモポリマー、オレフィンコポリマー、オレフィンと他のビニルモノマーのコポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマーが、オレフィンホモポリマー及びこれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オレフィンホモポリマーがポリエチレンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記濃縮素子が迂回経路マトリックスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記表面組成が0.4未満又はそれに等しい金属原子:ケイ素原子比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記表面組成が少なくとも10平均原子パーセント炭素である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記濃縮剤がpH 7で負のゼータ電位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記金属がマグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、チタン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記金属がマグネシウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記濃縮剤が少なくとも部分溶融した粒子形状の非晶質金属ケイ酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記濃縮剤が非晶質の球体化されたケイ酸マグネシウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記試料が流体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記微生物株が、細菌、真菌、酵母、原生動物、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記微生物株が、細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記接触が、前記試料を前記濃縮素子に通すことにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
(a)非晶質の球体化されたケイ酸マグネシウムを含み、X線光電子分光法(XPS)により測定して、0.5未満又はそれに等しい金属原子:ケイ素原子比を有する表面組成を有する少なくとも1つの濃縮剤を含む、焼結ポリエチレン迂回経路マトッリックスを含む濃縮素子を用意する工程と、(b)細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つの微生物株を含む流体試料を用意する工程と、(c)前記濃縮素子に前記流体試料を通して、前記少なくとも1つの微生物株のうち少なくとも一部が前記濃縮素子に結合又は捕捉されるようにする工程と、を含む、方法。
【請求項22】
前記方法が、少なくとも1つの結合した微生物株の存在を検出する工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
非晶質金属ケイ酸塩を含み、X線光電子分光法(XPS)により測定して、0.5未満又はそれに等しい金属原子:ケイ素原子比を有する表面組成を有する少なくとも濃縮剤を含む、焼結多孔質ポリマーマトリックスを含む、濃縮素子。
【請求項24】
(a)請求項23に記載の少なくとも1つの濃縮素子と、(b)請求項1に記載の方法の実施において使用するための少なくとも1つの試験容器又は試験試薬と、を含む、キット。
【請求項25】
(a)(1)少なくとも1つの粒子状焼結型ポリマーと、(2)非晶質金属ケイ酸塩を含み、X線光電子分光法(XPS)により測定して、0.5未満又はそれに等しい金属原子:ケイ素原子比を有する表面組成を有する少なくとも1つの粒子状濃縮剤と、を含む混合物を用意する工程と、(b)ポリマーの焼結に充分な温度まで混合物を加熱して、前記粒子状濃縮剤を含む焼結多孔質ポリマーマトリックスを形成する工程と、を含む濃縮素子を作製する方法。

【公表番号】特表2012−522984(P2012−522984A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503491(P2012−503491)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/028122
【国際公開番号】WO2010/114727
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】