説明

微生物細胞壁の透過性を増大させるための組成物および膜上で前記微生物を検出するための方法

【課題】微生物細胞壁を透過性にするための組成物を提供すること。
【解決手段】この組成物がポリエチレンイミン(PEI)と少なくとも1つのアルコールの組合せを含む。本発明はまた、標的化方式で膜上の微生物を計数および検出するために前記組成物を使用する方法にも関する。本発明はまた、前記方法を実行するために適したキットおよびプローブにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物細胞壁の透過性を増大させるための新規な組成物およびこれらの使用に関し、特に、液体または気体の媒質中での微生物の計数および/または標的識別のための方法におけるこれらの使用に関する。
【0002】
本発明は食品または医薬品用の製造ライン中に含まれる液体および気体の媒質の微生物学的品質の管理に適合する。
【背景技術】
【0003】
この分野では、検出対象となる微生物はしばしば極めて少数で存在し、これらが人間の健康に危険を与えるか否かを判定するために微生物の性質を見分けることが望ましい。実行される管理は製品のどのような汚染も短時間のうちに警告し、適切であれば製造を中止して汚染除去工程を取り入れることを可能にしなければならない。
【0004】
微生物の培養時間を最短にする一方で同時に、或る種の微生物を検索することを可能にするための多くの方法が開発されてきた。
【0005】
これは特に、国際公開第01/59157号パンフレットに述べられた、膜を通して液体を濾過した後に実行される微生物検出のための方法の主題である。この方法によると、液体サンプル中に含まれる微生物は液体を膜に通すことによって前記膜の表面に留められる。これらの微生物が、肉眼では見えない微小コロニーを形成するために必要な時間量で寒天培地と接触させて膜の表面で培養される。次いで、微小コロニーを形成した細胞はアデノシン三リン酸(ATP)および核酸内容物を放出するように溶解処理される。ATPはATP生物発光によって、生細胞を識別および定量化するためのマーカーとして使用される。この検出法は、ATPがすべての生きた微生物に存在するマーカーであるという点で普遍的と称される。結果の読み取りは、前記ATPに特異的である酵素によるATPのフォトンへの変換を含む化学発光反応によって得られる。光信号は適切な映像インターフェース(例えばLCDカメラ)を使用して検出される。得られた画像は、ペトリ皿上の寒天培地で実施される従来の計数と同様の方式で、微生物が増殖した膜上の部位をその場で可視化することを可能にする。
【0006】
ミリポア社で販売されている「Milliflex rapid(登録商標)」システムが上述の原理で動作する。これはプラスチックの支持体に保持されている1つの同じ膜上で濾過および検出工程を実行するように設計された。この支持体は、濾過、微生物の培養、検出試薬による膜の含浸、および映像チャンバへの画像の取り込みに使用される様々な装置に取り付けられるように設計される。
【0007】
この小型化されたシステムは従来式のペトリ皿での検査に比べて明らかな時間的利益を可能にする。さらに、これは得られた画像をデジタルサポートに保存することを可能にし、これは汚染をモニタすることを可能にする(トレーサビリティ)。
【0008】
しかしながら、実用上、膜の表面に存在する微生物の計数が細胞の溶解後に実施されるという事実に起因してこのシステムは或る種の制限を有する。したがって、検出された微生物を正確に同定する目的で同じ膜を再使用することは困難である。
【0009】
しかしながら、或る種の微生物の存在を実証するために、たとえ自然のヌクレオチドであっても他のPNA(ペプチド核酸)タイプであっても標識されたプローブを使用して特異的なハイブリッド形成を実施することが可能である。
【0010】
PNAプローブは自然のペプチドであるという利点を有し、これは或る一定の用途で、オリゴヌクレオチドプローブに都合良く取って代わることを可能にする。
【0011】
概して、インシツープローブハイブリッド形成は細胞の核酸への完全なアクセス可能性を必要とし、そうでなければこの操作は偽陰性を生じさせる。
【0012】
国際公開第2004/050902号パンフレットは、血液サンプルを汚染している微生物の存在を検出することを可能にする膜上での検出のシステムを述べている。
【0013】
このシステムの特異性は、標識試薬の、細胞壁を貫通しての微生物内への透過を通じて微生物が検出されるという事実にある。使用される標識試薬は小分子、特に、核酸(DNA、RNA)を挿入する化合物(例えばシアニン誘導体、ヨウ化プロピジウム、アクリジンオレンジ、または臭化エチジウム)であり、これは微生物内部への透過という点で見るとオリゴヌクレオチドプローブよりも少ない難度を有する。
【0014】
試験対象となる液体サンプルは標識剤および細胞透過性付与試薬を含む透過性付与溶液中に希釈される。細胞がこの透過性付与溶液中でインキュベートされるが、この目的は存在する微生物内部への標識生成物の透過を容易にするために細胞壁の多孔度を高めることである。引き続いてこの透過性付与溶液は含んでいると見込まれる微生物を伴なって膜を通して濾過され、次いで、存在する微生物が膜上で保持され、標識剤を化合物と反応させることによって、および/または蛍光信号の放出を可能にする光源によって検出される。このシステムは検出の前に微生物を溶解しない、または少なくとも可能な限り溶解を制限するという利点を有する。
【0015】
これは結果としてさらに良好な分解能を提供する検出につながる。
【0016】
しかしながら、これらのマーカーは特異的ではないのでこのシステムは検出された微生物の性質を判定することを可能にしない。
【0017】
さらに、そのようなシステムでは、微生物の取り扱いが溶液中で行われ、これはさらに複雑な特定の事前対応措置および機器を必要とする。濾過に先立つ溶液中での生細胞のインキュベーションが、膜上に固定される前に細胞が生育および分裂し続ける可能性があるという欠点を有することに留意すべきであり、これは検査の最終結果にある程度の不確実性を投げ掛ける。
【0018】
特に、透過性付与剤に概して一層敏感であるグラム陽性細菌と一層耐性のあるグラム陰性細菌を同時に検出することが追求されるとき、国際公開第2004/050902号パンフレットに述べられた方法に従って透過性付与試薬を透過性付与溶液中に適切に秤量することも困難である。
【0019】
透過性付与溶液の組成物の作製に使用できる透過性付与剤は、通常、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ジギトニン、ノネンシン、ヘキサメタリン酸ナトリウムまたは塩化ベンザルコニウムである。
【0020】
ポリエチレンイミン(PEI)を使用することも可能であり、これは細菌の細胞壁を、通常では細胞質細菌の中に透過しない抗生物質のような溶質に対して透過性にすると知られている弱塩基性でポリカチオン性の脂肪族ポリマーである(Helander,I.M.et al.,「Polyethyleneimine is an effective permeabilizer of gram−negative bacteria」,Microbiology(1997),143:3193〜3199)。
【0021】
国際公開第2004/050902号パンフレットに述べられたような透過性付与溶液中のポリエチレンイミンの濃度は概して100μg/ml未満の濃度に限られる。大腸菌(Esherichia coli)のようなグラム陰性細菌に最も適した濃度は約20〜30μg/mlである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第01/59157号
【特許文献2】国際公開第2004/050902号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Helander,I.M.et al.,「Polyethyleneimine is an effective permeabilizer of gram−negative bacteria」,Microbiology(1997),143:3193〜3199
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は上述された既にある膜検出システムの制限に対する解答を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
意外なことに、少なくとも1つのアルコール、特定すると第1級アルコール、さらに特定するとエタノールと組み合わせたポリエチレンイミン(PEI)を使用すると微生物細胞壁を透過性にするためのさらに効果的な組成物を生成することに本発明者らは気付いた。そのような組成物は特に、場合によって標識されるヌクレオチドプローブのような巨大分子が微生物の中に透過する事態を生じさせる。
【0026】
PEIおよび第1級アルコール、特にエタノールを含む組成物中でインキュベートされた微生物が先行技術による組成物中におけるよりも高いPEIの濃度に耐えることが特に明らかになった。第1級アルコールとの組合せは特に、どのような著しい細胞溶解効果も生じさせることなく100μg/mlと1000μg/mlの間の濃度までPEIを使用することを可能にする。
【0027】
本発明では、「微生物」という用語はいずれかの(真核または原核)生細胞、単細胞生物、配偶子、または単層もしくは多層の細胞壁によって形成されたエンベロープ内に含まれた遺伝的形質を有するウィルスを意味する。
【0028】
上記で規定されたような組成物は巨大分子が微生物の中に透過しながら一方で同時にこれらの細胞壁の破壊を制限することを可能にする。
【0029】
巨大分子は多数の単純な分子の組合せから結果として生じる分子、例えばポリペプチド類、タンパク質類、糖タンパク質類、オリゴヌクレオチド類、多糖類、核酸類(DNA、RNA)、抗体類、またはこれらの誘導体として規定される。
【0030】
ポリエチレンイミン(PEI)はいくつかの形で入手可能な可溶性生成物である。モノマーから重合させられ、約750kDaの分子量を有する形は本発明による好ましい形である(CAS No.9002−98−6)。PEIは多くの分野で、特に様々な精製法において溶液中のタンパク質および核酸の凝集のための作用物質として使用される。細胞壁に存在するリン脂質を可逆的に破壊し、したがってこれら細胞壁を通常では細胞内への透過を許容されない作用物質に対して透過性にする特性を有するという事実に起因して透過性付与剤としても使用される。
【0031】
したがって本発明の第1の主題は微生物細胞壁を透過性にするためのポリエチレンイミン(PEI)と少なくとも1つのアルコール、特定すると第1級アルコール、最も特定するとエタノールの組合せを含む組成物である。
【0032】
この組成物はどのような界面活性剤も含まないことが好ましい。
【0033】
透過性付与組成物の中のPEIの濃度は100μg/mlと1000μg/mlの間、概して100μg/mlと900μg/mlの間、好ましくは150μg/mlと900μg/mlの間、さらに好ましくは200μg/mlと800μg/mlの間であることが可能である。
【0034】
本発明によれば、第1級アルコールは5%と95%の間、好ましくは5%と50%の間、さらに好ましくは10%と50%の間の濃度で透過性付与組成物の中に概して存在する。
【0035】
本発明の他の主題は本発明による組成物の使用に関し、さらに特定すると、微生物の中への標識された巨大分子の透過で構成される工程を含む、膜上で微生物を検出するための方法に関する。
【0036】
未だによく知られていない理由のために、PEIと第1級アルコール、特定するとエタノールの混合物はヌクレオチドプローブのような巨大分子の微生物の中への透過を容易にする。
【0037】
本発明に従って好ましいヌクレオチドプローブは微生物のリボソームRNA、特定すると緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の16S RNAまたは23S RNAの特定のハイブリッド形成を可能にする。そのようなプローブは特に、配列番号1、配列番号2または配列番号3に相当する配列を有する。
【0038】
これらのプローブが微生物に存在する或る種の核酸とハイブリッド形成可能であるとき、前記方法は液体または気体の媒質中に存在する微生物の(複数の)種類を検出することを可能にする。この方法は結果として、検出される微生物集団のさらに正確な写真が得られることにつながる。
【0039】
巨大分子が抗原類または抗体類で構成されることおよびこれらが免疫タイプの検出に参画することを想定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】気体状のサンプルが本発明の方法に従って試験されることが可能となる方式を示す図である。
【図2】実施例1で実施される本発明による微生物の検出および計数のための方法の様々な工程を例示する図である。
【図3】実施例1に述べられる試験の結果を表わす図である。
【図4】図3に与えられた画像の三次元表現を示す図である。
【図5】実施例2で実施される本発明による微生物の検出および計数のための方法の様々な工程を例示する図である。
【図6】実施例2に述べられる試験の結果を表わす図である。
【図7】図6に与えられた画像の三次元表現を示す図である。
【図8】実施例3で実施されるATP生物発光によって微生物を検出するための方法の様々な工程を例示する図である。
【図9】実施例3b)で実施される試験の結果を表わす図である。
【図10】他の透過性付与溶液(90%エタノール、および25%エタノール+PEI500μg/ml)について図9と同じ事物を表わす図である。
【図11】図8に例示されたATP生物発光手順の前状況で試験された各透過性付与溶液に関して測定された光強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の主題はさらに特定すると、液体または気体の媒質中に最初に存在する微生物を膜上で計数および/または識別するための方法の中での上述のような透過性付与組成物の使用である。
【0042】
本発明の或る特定の形態によると、本方法は以下の工程を含むことを特徴とする。
(a)液体または気体の媒質が、この媒質中に存在する微生物を膜の上または中に留めるように膜を通して濾過される。
(b)この膜および微生物が、ポリエチレンイミンと少なくとも1つのアルコールを含む上述されたような透過性付与組成物と接触させられる。
(c)架橋剤によって細胞が膜に固定される。
(d)微生物が、場合によって標識される1つまたは複数の、微生物細胞壁を横切ることが可能な巨大分子と接触させられる。
(e)微生物の内部に透過した巨大分子が検出される。
【0043】
本発明の方法によって標的にされる微生物はさらに特定すると、環境中で頻繁に遭遇する病原性の微生物であるシュードモナス属、エシェリキア属、レジオネラ属、サルモネラ属、リステリア属、バチルス属、ストレプトコッカス属、ビブリオ属、エルシニア属、ブドウ球菌属、マイコバクテリウム属、シゲラ属、クロストリジウム属、カンピロバクター属またはアエロモナス属のグラム陽性またはグラム陰性の病原性細菌、ジアルディア属、エントアメーバ属、クリプトスポリジウム属またはサイクロスポーラ属の原生動物、マイコプラズマ属またはウレアプラズマ属のマイコプラズマ、アスペルギルス属、カンジダ属またはペニシリウム属の真菌、およびA型肝炎およびB型肝炎ウィルスから選択される。
【0044】
本方法は原理的に、シアノバクテリアのような単細胞の藻類、アメーバのような寄生生物の単細胞形、または線虫、吸虫、または回虫の卵、または花粉や精子といった他の植物や動物の配偶子の検出にも応用可能である。
【0045】
本方法の目的は液体の媒質(例えば水)または気体の媒質(例えば空気)中に存在する微生物を計数しながらその一方で同時に、これらの識別(科、属、種など)を可能な限り判定することである。「液体または気体の媒質」という表現は、概して0.1ミクロンと1.5ミクロンの間、好ましくは0.15ミクロンと0.8ミクロンの間、さらに好ましくは0.2ミクロンと0.6ミクロンの間の平均直径を備えた複数の孔を有する膜を通して圧力差を加えることによって濾過され得るどのような流体も意味するように意図される。このような流体は無菌製剤の製造に含まれる純粋の溶液類だけでなく複合溶液類(飲料水、血清、尿、羊水など)で、または場合によっては大気といった気体混合物で構成されることも可能である。
【0046】
さらに、本方法は動物または患者に起源を発するサンプルの分析のために診断の分野での用途を有する。
【0047】
本願明細書の中の「膜」という用語は2つの面を有する合成支持体を意味し、これらの面の複数の孔は知られている平均直径を有する。
【0048】
本発明の背景で使用される膜は概して高い表面/体積比および好ましくは90ミクロンと200ミクロンの間で一定の厚さを示す。
【0049】
このような膜は単層または多層の膜であることが可能である。概して、これはポリテトラフルオロエチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、アセチルセルロース、およびニトロセルロースから選択される1つまたは複数の材料で構成される。
【0050】
材料は、使用される溶剤、特に本方法の様々な工程で使用される可能性が高いアルコール類およびアルデヒド類と両立するように選択されることが望ましい。
【0051】
上で微生物が検出される膜は主にPVDF(ポリ(フッ化ビニリデン))またはNylon(登録商標)で構成されることが好ましい。これはミリポア社によって商標名Milliflex、および照会名HVWP(登録商標)またはHVMFX(登録商標)で販売されているようなタイプのPVDF濾過膜であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明による方法の工程a)は分析対象となる液体または気体の媒質を、前記媒質中に含まれる微生物を上記で規定されたような膜の表面に留めるようにこの膜を通して濾過する工程で構成される。
【0053】
いったんこれらの微生物が濾過されて膜上に保持されると、場合により加えられる、適切な培地と接触させて微生物を培養する工程で構成される工程が本方法の工程a)とb)の間に含まれることもあり得る。この培地は、濾過の後に膜が上に置かれる寒天培地であることが好ましい。場合によって加えられるこの工程は最初に濾過された各々の微生物のコロニーを得ることを可能にし、それにより、これらをさらに容易に検出することを可能にする。
【0054】
本発明によると、これらの微生物は引き続いて工程b)で本発明による透過性付与組成物中でインキュベートされる。
【0055】
このインキュベーション工程は膜の表面で被膜を形成する少量の溶液で実施される。都合の良いことに、この透過性付与組成物は上に膜が置かれることになる固体の支持体、例えば含浸パッドの中に含まれることが可能であり、この支持体が膜の表面の液体のどのような考え得る移動も、したがって微生物の混ざり合いも制限する。これは5から20分の間、20℃と35℃の間の温度で実施される。
【0056】
本発明による方法は工程c)を含むのでなおさら効果的であり、この工程によって細胞は架橋剤として働く作用物質により膜上に固定される。
【0057】
この工程は膜によって構成される支持体の上に細胞を固定することを可能にする。本発明による好ましい架橋剤はグルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドおよびパラホルムアルデヒドから選択され、パラホルムアルデヒドは少なくとも6個のホルムアルデヒド単位から成る分子として定義される。都合の良いことに、この固定用組成物は上に膜が置かれることになる固体の支持体、例えば含浸パッドの中に含まれることが可能であり、この支持体が膜の表面の液体のどのような考え得る移動も、したがって微生物の混ざり合いも制限する。本発明によれば、この固定工程は5から20分の間、20℃と35℃の間の温度で実施されることが好ましい。
【0058】
この固定工程はまた、UV放射による膜上の微生物の照射によって実施されることも可能である。このとき、膜はNylon(登録商標)で構成されることが好ましい。
【0059】
微生物を、この微生物細胞壁を通り抜けて前記微生物の中に入る1つまたは複数の場合によっては標識される巨大分子との接触に至らせる工程を含む工程d)はインキュベーションおよび固定の工程b)およびc)それぞれの終わりに実施されることが好ましく、なぜならば微生物細胞壁が巨大分子に対して最も透過性であることが観察されたのがこの正確な場合であるからである。
【0060】
本発明の好ましい形態によると、巨大分子は標識されてプローブとして使用される。
【0061】
「プローブ」という用語はここでは微生物の特定の生物学的要素を認識して結合することが可能であり、したがってこれが可視化されることを可能にする巨大分子類を意味するように意図される。
【0062】
本発明のさらに別の好ましい形態によると、プローブは微生物の中に存在するDNAまたはRNA配列とハイブリッド形成し、前記核酸に関してある一定度の特異性を示すことが可能な巨大分子であることが可能である。このとき、核酸プローブに対してこの背景で基準が作成される。本発明は、核酸とハイブリッド形成を生じさせることが可能で当業者に知られているどのようなタイプの核酸プローブも想定しており、これらは例えば単純なオリゴヌクレオチド、2’−O−メチル−RNAタイプのオリゴヌクレオチド、またはPNAタイプのプローブ類(プリンおよびピリミジン塩基で置換されたポリペプチド鎖で構成されたプローブ類)(Nielsen P.E.et al.Science(1991)254:1497〜1500)または欧州特許第1013661号明細書に述べられたようなLNAタイプ(1つまたは複数の2’−O−4’−C−メチレン−β−D−リボフラノシルモノマーを含むオリゴヌクレオチド)である。
【0063】
本発明の好ましい態様によると、緑膿菌のような微生物の標的化された検出の目的で使用されるプローブ類は以下に示される配列、すなわち
5’−TCTACCGCGTCACTTACGTGACACC−3’[配列番号1]
5’−CGACCAGCCAGAGCTTACGGAGTA−3’[配列番号2]
5’−CCCGAGGTGCTGGTAACT−3’[配列番号3]
のうちの1つまたは複数を含む。
【0064】
配列番号1、2および3の配列は緑膿菌の16S RNAまたは23S RNAにそれぞれ特異的で選択的にハイブリッド形成する特異性を有する。実際に本発明者らは、微生物のリボソームRNAとハイブリッド形成することが可能なプローブ類が本発明を実施するために特に有用であることに気付いた。
【0065】
したがって本発明の1つの態様は配列番号1または配列番号2に相当する配列、すなわち上記に示された配列と少なくとも80%、好ましくは90%、さらに好ましくは95%の同一性を示す配列を有するプローブで構成される。そのようなプローブは特に、本発明による計数および/または識別の方法を遂行するために示される。本発明の別の態様によると、微生物の中に透過するように作られ、上述されたプローブ類と同じ性質である可能性の高い巨大分子は微生物中に含まれる核酸類の特異的な増幅で構成される追加的工程を遂行するためのプライマーとして使用される。そのような巨大分子が本発明による方法の中で使用されれば、追加的である、しかしそれでも場合によって行われる工程が本方法の中に工程d)とe)の間で導入される。
【0066】
そのような増幅工程は、検出の目的で利用可能な核酸の量を増加させることにより、微生物の最適な検出のために有用であることを示すことが可能である。この増幅工程が高度に特異的であれば、この工程はさらに選択性を備えて微生物を同定すること、したがって擬陽性の数を減少させることを可能にする。この増幅はNASBAタイプ(Compton,J.,Nature(1991)350:91〜92)またはLAMP−PCRタイプ(Notomi,T.,Nucleic Acids Research(2000),28(12):e63)の増幅であることが好ましい。
【0067】
上述されたプローブ類またはプライマー類は唯一またはいくつかの種類の微生物を検出するように設計されることが可能である。この点において、これらは微生物中に存在する複数の生物学的要素に関して異なる特異性の度合いを示す可能性が高い。例えば、これらのプライマー類またはプローブ類が、多数の種の微生物中にその配列が保持されている核酸とハイブリッド形成するように選択された核酸であれば、識別が極めて特異的であることはなく、他方でこれらの配列が少数の種に特異的な配列のみを見分けるように選択されれば、特異性はさらに大きくなる。
【0068】
本発明のなおも別の特定の形態によれば、好都合には、前記微生物の核酸と核酸プローブまたはプライマーの特異的ハイブリッド形成で構成される工程は工程d)よりも後、引き続く検出工程e)よりも前に実行できる。
【0069】
核酸プローブまたはプライマーのハイブリッド形成で構成されるこの工程は、当業者に知られている標準的なハイブリッド形成条件下で実行される。この工程は非特異的なハイブリッド形成を生じさせた核酸プローブまたはプライマーを除去するための洗浄工程を含むことも可能である。
【0070】
検出の目的で、本発明による核酸プローブまたはプライマーは蛍光物質で標識されるか、または場合によっては化学発光反応を達成するために酵素に連結されることが好ましい。
【0071】
微生物検出工程e)は、プローブまたはプライマーの標識に対応して、化学発光反応に起源を発する光信号または蛍光によって得られる発光を適切なインターフェースで検出することによって実施される。
【0072】
本発明のさらに好ましい態様によると、オリゴヌクレオチド類のような核酸プローブがペルオキシダーゼに連結される。ペルオキシダーゼがルミノール(ペルオキシダーゼの基質)と接触させられると、ペルオキシダーゼが後者を分解し、分解産物がフォトンを発してこれらがMilliflexシステムの映像インターフェース(LCDカメラ)で検出される。
【0073】
なおも別の態様によると、本発明はインヴィトロでの診断検査を実施するために上述されたような透過性付与組成物の使用で構成される。
【0074】
インシツーでの検出を実施するために、ヒトまたは動物から得られた細胞または培地に維持された細胞の中に核酸プローブまたはいずれかの他の分子複合体を透過させるように本発明による透過性付与組成物の特定の特性を使用することを想定することが実際に可能である。
【0075】
本発明による透過性付与組成物は医学分野での多くの用途、例えば、抗生物質または抗ウィルス剤などの活性成分に対して細胞または微生物を敏感にするために前記細胞または前記微生物細胞壁の透過性を高めるための薬物補助物質の用途を見出すことも可能である。
【0076】
さらに特定すると、本発明による組成物は、特に遺伝病または或る種の癌の治療において或る種の遺伝子の発現を阻害することが意図される場合に、アンチセンス核酸、特にアンチセンスRNA(RNAi)を細胞の中に透過させるために有用である。
【0077】
本発明はまた、液体または気体の媒質中の微生物を検出および計数するためのキットであり、少なくとも
液体または気体の媒質を濾過するための膜、および
本発明に述べられるような透過性付与組成物、
を含むキットを範囲に入れるように意図される。
【0078】
このキットに含まれる膜は主にPVDFまたはNylon(登録商標)で構成されることが好ましい。
【0079】
都合の良いことに、このようなキットはグルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびパラホルムアルデヒドから選択される架橋剤を含む組成物も含む。この第2の組成物は微生物を膜上に固定することを可能にし、これは、本発明による方法を実施することによってさらに良好な分解能の検出を得ることを可能にする。
【0080】
本発明によるキットは求める微生物の特異的な検出のためのプローブ、特に配列番号1、配列番号2または配列番号3と少なくとも80%の同一性を示す配列を有する上記で規定されたようなプローブを含むことも可能である。
【0081】
以下の実施例の目的は本発明を具体的に示すことである。
【実施例1】
【0082】
オリゴヌクレオチドプローブによる緑膿菌の特異的検出
実施される方法の複数の工程が図2に具体的に示される。
【0083】
この方法の実施は最初に、照会名HVWP(登録商標)またはHVMFX(登録商標)でMilliflex(登録商標)の名称で販売されている装置を使用して100mlの溶液を濾過することにある。この装置は円形のプラスチック構造体上に保持されたPVDFタイプの濾過膜を有する。
【0084】
濾過に続いて、この膜が寒天培地のカセットの上に置かれ、次いで、膜の表面に細菌の微小コロニーが成長することが可能となるように5時間30分間、35℃でインキュベートされる。
【0085】
寒天培地のカセットから膜が分離され、次いで、透過性付与溶液(20%エタノール、PEI200μg/ml)で含浸処理されたセルロースのパッドに接触されて大気温度に10分間置かれる。
【0086】
次いで、この膜は固定用溶液(80%メタノール、1%ホルムアルデヒド、5mMのNaN、0.01%H−尿素)で含浸処理されたセルロースのパッドの上に大気温度で10分間置かれる。
【0087】
引き続いて、上にこの膜が位置しているこのプラスチック構造体が、下側部分が密封されているハイブリッド形成カセットの上に嵌め込まれる。この膜が、2mlの第1の予備ハイブリッド形成溶液(10%PEG、300mMのNaCl、30%ホルムアミド、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.2%PVP、0.2%Ficoll、5mMのEDTA、1%TritonX−100、50mMのTris−HCl(pH7.5))と接触させて30分間、45℃でハイブリッド形成カセットの中でインキュベートされる。第1の溶液が除去されると直ぐに、膜はダイズペルオキシダーゼに結合したオリゴヌクレオチドプローブ100nMを含む同じ量のハイブリッド形成溶液と接触させて60分間、45℃に置かれる。
【0088】
緑膿菌の16S RNAに特異的な使用されたオリゴヌクレオチドプローブは以下の配列(配列番号2)を有する。
5’−CGACCAGCCAGAGCTTACGGAGTA−3’[配列番号2]
【0089】
引き続き、膜がハイブリッド形成カセットから分離され、次いで、洗浄液100ml(10mMのCAPSO、0.02%Tween20)と接触させて洗浄槽の中に置かれる。10分間、45℃で3回の洗浄が実施される。
【0090】
この膜が乾燥処理され、次いで、生物発光試薬(ミリポア社カタログ#WBKLS0100)が再構成の後に膜の表面に吹き付けられる。この装置がMilliflex Rapidシステムの中に置かれ、光信号が記録される。
【0091】
膜の表面での緑膿菌の検出の結果が図3に示されている。同じ分析に付随した三次元図が図4に示されており、ここでは各々の緑膿菌の膜局在性が明らかに見分けられる。
【実施例2】
【0092】
PNAタイプのプローブによる緑膿菌の特異的検出
a)20%エタノール、PEI200μg/ml透過性付与溶液の使用
実施される方法の複数の工程は図5に具体的に示される。
【0093】
実施例1の手順に従って実施された濾過の後、膜は寒天培地のカセットの上に置かれ、6時間、35℃でインキュベートされる。
【0094】
寒天培地のカセットから膜が分離され、次いで、透過性付与溶液(20%エタノール、PEI200μg/ml)で含浸処理されたセルロースのパッドの上に大気温度で10分間置かれる。
【0095】
引き続いて、この装置は固定用溶液(80%メタノール、1%ホルムアルデヒド、5mMのNaN、0.01%H−尿素)で含浸処理されたセルロースのパッドの上に大気温度で10分間置かれる。
【0096】
実施例1のように、この膜はダイズペルオキシダーゼに結合したPNAプローブ100nMを含む2mlのハイブリッド形成溶液(10%PEG、10mMのNaCl、30%ホルムアミド、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.2%PVP、0.2%Ficoll、5mMのEDTA、1%TritonX−100、50mMのTris−HCl(pH7.5))と接触させてハイブリッド形成カセットの上に置かれる。このアセンブリが60分間、50℃に置かれる。
【0097】
使用されるPNAプローブは実施例1のオリゴヌクレオチドプローブのように緑膿菌の同じ16S RNA配列とハイブリッド形成することが可能であり、配列配列番号3である。
【0098】
支持体上の膜がハイブリッド形成カセットから分離され、次いで、洗浄液100ml(10mMのCAPSO、0.02%Tween20)と接触されて洗浄槽の中に置かれる。10分間、50℃で3回の洗浄が実施される。
【0099】
この膜が乾燥処理され、次いで、生物発光試薬(ミリポア社カタログ#WBKLS0100)が再構成の後に膜の表面に吹き付けられる。最後に、この膜がMilliflex Rapidシステムの画像解析装置の中に置かれ、ここで光信号が記録される。得られた画像が図6に示されている。同じ分析の三次元図が図7に示されている。
【0100】
この方法は、濾過膜の表面における緑膿菌の存在を特異的に検出することを可能にする。
【0101】
b)PEI単独200μg/ml、PEI単独500μg/ml、または10%エタノールと500μg/mlの濃度のPEIで構成される混合物(EtoH10%−PEI500)を含む透過性付与溶液の使用
上記で述べられたものと同じ手順がPEIのみを含む透過性付与溶液で、次いで10%エタノールと500μg/mlの濃度のPEIで構成された混合物(EtoH10%−PEI500)を含む透過性付与溶液で実施された。
【0102】
濾過に続いて、膜は寒天培地のカセットの上に置かれ、次いで15時間、35℃でインキュベートされた。
【0103】
引き続いて、膜はPEI単独200μg/ml、PEI単独500μg/ml、または10%エタノールと500μg/mlの濃度のPEIで構成された混合物を含む透過性付与溶液で含浸処理されたセルロースのパッドの上に大気温度で10分間置かれ、未処理の膜が比較対照として使用された。
【0104】
引き続いてこの膜が固定用溶液(80%メタノール、1%ホルムアルデヒド、5mMのNaN、0.01%H−尿素)で含浸処理されたセルロースのパッドの上に大気温度で10分間置かれ、次いで、上記に示されたように処理された。
【0105】
様々な濃度のPEIに関して、およびPEIとアルコールの併用にも関して得られた結果が図9に示されている。
【0106】
PEIとEtOHの併用が透過性付与剤の不在下(比較対照)、またはPEIのみの存在下で得られることが可能な信号と比較して強力で正確な信号を得ることを可能にすることがわかる。
【実施例3】
【0107】
ATP生物発光による微生物の非特異的検出
本発明による透過性付与組成物は生きた微生物によって産生されるATPを、先行技術(Alexander,D.N.,G.M.Ederer,and J.M.Matsen.1976.「Evaluation of an adenosine 5’−triphosphate assay as a screening method to detect significant acteriuria」,J.Clin.Microbiol.3:42〜46)から知られている化学発光反応に従って検出するための方法に使用できる。
【0108】
本発明による組成物の使用は微生物細胞壁の、これらのATP内容物の放出という観点でさらに良好な透過性を得ることを可能にする。
【0109】
a)化学発光によるATPの検出の前の90%エタノールまたは25%エタノール−PEI 500μg/mlによる細胞の処理
水中に存在する出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)をATP生物発光(様々な工程は図8に例示されている)によって検出するための方法が試験された。この試験では、化学発光反応の前に細胞が90%エタノール、または25%エタノール−PEI 500μg/mlで透過処理される。
【0110】
手順は先行する実施例のように、Milliflex(登録商標)装置を使用して100mlの溶液を濾過することにある。
【0111】
次いで、膜は膜の表面に吹き付けられる90%エタノール、または25%エタノール−PEI 500μg/mlの溶液40μlで処理され、次いで、再び乾燥処理される。
【0112】
引き続いて、膜は膜の表面に吹き付けられる生物発光溶液40μlで処理され、次いで、画像解析装置の中に置かれてここで光信号が記録される。
【0113】
b)化学発光によるATPの検出の前のPEIのみ(100〜500μg/ml)またはエタノール−PEI混合物による処理
上述されたのと同じ手順が実施され、ここではエタノールによる処理はPEIのみ(100−250−500μg/ml)、またはエタノール−PEIの混合物(本発明による組成物)、すなわちEtOH10%−PEI 100μg/ml、EtOH10%−PEI 250μg/ml、EtOH10%−PEI 500μg/ml EtOHで置き換えられた。
【0114】
a)およびb)による様々な処理に関連する結果は図10の表および図11の図に示されている。EtOHとPEIの組合せが、たとえPEI単独が高い濃度で使用されるとしても、EtOH単独またはPEI単独の使用によるよりも明らかに強い信号を得ることを可能にすることがこれらの比較結果から浮かび上がってくる。
【実施例4】
【0115】
DNAインターカレート剤(SYBRgreen)の透過による微生物の非特異的検出
1つの実験は、10%エタノール−PEI 100μg/ml混合物を含む本発明による組成物の溶液中で大腸菌をインキュベートすることにある。
【0116】
25μg/mlまたは100μg/mlの濃度のPEIのみの溶液中で、または透過性付与の不在下(PBS)で細胞をインキュベートすることによって同じ実験が実施された。
【0117】
この実験は上述の作用物質およびDNA挿入剤(SYBRgreen I、1/4000)の存在下で細菌を15分間インキュベートし、次いで、マイクロプレートリーダーを使用して蛍光の存在を測定することにある。
【0118】
結果は下記に示される表1に報告されている。
【0119】
EtOHとPEIの組合せはPEIが単独で使用されるときよりも明らかに強い信号を得ることを可能にする。これは、アルコールをPEIと組み合わせることによってさらに良好な微生物細胞壁の透過性が得られることが可能であることを示している。
【0120】
【表1】

【0121】
図1は、気体または気体混合物が1%ペプトン水のような液体の中に泡立てられることによって気体状のサンプルが本発明の方法に従って試験されることが可能となる方式を示している。液体と接触すると、気体中に含まれる微生物は液体中に捕捉される。次いで、この液体が本願明細書に示されるように濾過される。
【0122】
図2は、実施例1で実施される本発明による微生物の検出および計数のための方法の様々な工程を例示している。標識されたオリゴヌクレオチドプローブによって実施されるこの検出は緑膿菌に特異的である。
【0123】
図3は実施例1に述べられる試験の結果を表わしている。これは、プローブによって放出される光信号の記録およびデジタル処理の後に得られた合成画像としての膜の表現である。
【0124】
図4は図3に与えられた画像の三次元表現である。
【0125】
図5は、実施例2で実施される本発明による微生物の検出および計数のための方法の様々な工程を例示している。標識されたPNAタイプのプローブによって実施されるこの検出は緑膿菌に特異的である。
【0126】
図6は実施例2に述べられる試験の結果を表わしている。これは、プローブによって放出される光信号の記録およびデジタル処理の後に得られた合成画像としての膜の表現である。
【0127】
図7は図6に与えられた画像の三次元表現である。
【0128】
図8は、実施例3で実施されるATP生物発光による微生物検出のための方法の様々な工程を例示している。
【0129】
図9は実施例3b)で実施される試験の結果を表わしており、様々な透過性付与溶液(PEI200μg/ml、PEI500μg/ml、および10%エタノール+PEI500μg/ml)を比較している。これらはATP生物発光によって放出される光信号の記録およびデジタル処理の後に得られた合成画像である。
【0130】
図10は他の透過性付与溶液(90%エタノール、および25%エタノール+PEI500μg/ml)について図9と同じ事物を表わしている。
【0131】
図11は、図8に例示されたATP生物発光手順の状況で試験された各透過性付与溶液に関して測定された光強度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物細胞壁を透過性にするための、ポリエチレンイミン(PEI)と少なくとも1つのアルコールの組合せを含む組成物。
【請求項2】
組成物中のポリエチレンイミンの濃度が100μg/mlと900μg/mlの間であることを特徴とする、微生物細胞壁を透過性にするための、ポリエチレンイミン(PEI)と少なくとも1つのアルコールの組合せを含む組成物。
【請求項3】
組成物中のポリエチレンイミンの濃度が200μg/mlと800μg/mlの間であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
アルコールが第1級アルコールであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
アルコールがエタノールであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
以下の工程、すなわち
(a)液体または気体の媒質が、この媒質中に存在する微生物を膜の上または中に留めるように膜を通して濾過される工程、
(b)この膜および微生物が、ポリエチレンイミンと少なくとも1つのアルコールを含む透過性付与組成物と接触させられる工程、
(c)架橋剤によって細胞が膜に固定される工程、
(d)微生物が、場合によって標識される1つまたは複数の、微生物細胞壁を横切ることが可能な巨大分子と接触させられる工程、および
(e)微生物の内部に透過した巨大分子が検出される工程
を含むことを特徴とする、液体または気体の媒質中に最初に存在する微生物を膜の上で計数および/または同定するための方法。
【請求項7】
工程a)と工程b)の間に、微生物を培養することで構成される追加の工程を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程c)で架橋剤として働く作用物質がグルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドおよびパラホルムアルデヒドから選択されることを特徴とする、請求項6および7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程d)において、使用される巨大分子がPNAタイプのプローブであることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程d)において、使用される巨大分子がオリゴヌクレオチドタイプのプローブであることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程d)において使用されるプローブが配列番号1、配列番号2または配列番号3と少なくとも80%の同一性を示す配列を含むことを特徴とする、請求項9および10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程d)において、プローブまたはプライマーが光信号の放出を可能にする酵素と結合することによって標識されることを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程e)における微生物の検出が、化学発光反応および適切なインターフェースにより放出された光の認識によって実行されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程d)において、プローブまたはプライマーが蛍光分子で標識されることを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程e)における微生物の検出が、プローブまたはプライマーの標識に対応する蛍光放出信号を適切なインターフェースで検出することによって実行されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程d)と工程e)の間に、前記微生物の核酸とプローブまたはプライマーの特異的なハイブリッド形成で構成される追加の工程を含むことを特徴とする、請求項6から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程d)とe)の間に、微生物中に存在する核酸の特異的な増幅で構成される追加の工程を含むことを特徴とする、請求項6から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
上で微生物が検出される膜が、主にPVDFまたはNylon(登録商標)から成ることを特徴とする、請求項6から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程b)で使用される組成物が、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物であることを特徴とする、請求項6から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
微生物細胞壁の透過性を高めるための、アルコールとポリエチレンイミンの組合せを含む組成物の使用。
【請求項21】
微生物を計数および/または同定する方法における、アルコールとポリエチレンイミンの組合せを含む組成物の使用。
【請求項22】
核酸を細胞の中に透過させるための、アルコールとポリエチレンイミンの組合せを含む組成物の使用。
【請求項23】
薬物補助物質として、アルコールとポリエチレンイミンの組合せを含む組成物の使用。
【請求項24】
活性成分を細胞の中に透過させるための、アルコールとポリエチレンイミンの組合せを含む組成物の使用。
【請求項25】
前記組成物が請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物に従うものであることを特徴とする、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
配列番号1、配列番号2または配列番号3と少なくとも80%の同一性を示す配列を含むハイブリッド形成プローブ。
【請求項27】
液体を濾過するための膜、および
ポリエチレンイミンとアルコールの組合せを含む組成物
を含むことを特徴とする、微生物を検出および計数するためのキット。
【請求項28】
前記組成物が請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物に従うものであることを特徴とする、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドおよびパラホルムアルデヒドから選択される架橋剤を含む組成物も含むことを特徴とする、請求項27または28に記載のキット。
【請求項30】
微生物の特異的検出のための少なくとも1つのプローブも含むことを特徴とする、請求項27から29のいずれか一項に記載のキット。
【請求項31】
求める微生物の特異的検出のためのプローブが請求項26に記載の通りであることを特徴とする、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記膜が主にPVDFまたはNylon(登録商標)で構成されることを特徴とする、請求項27から31のいずれか一項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−213724(P2010−213724A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−130826(P2010−130826)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【分割の表示】特願2006−341250(P2006−341250)の分割
【原出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】