説明

微粉化ポリマー粉末およびその化粧品組成物

本発明は、パーソナルケア製品および化粧品で使用される微粉化ポリマー粉末組成物であって、少なくとも1種類のジオールと、炭素原子4〜12個を有する環状および分枝状脂肪族ジカルボン酸および炭素原子8〜12個を有する芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種類のジカルボン酸と、をベースとする少なくとも1種類の熱可塑性ポリエステルを含む微粉化ポリマー粉末組成物を提供する。本発明は、本発明による少なくとも1種類の微粉化ポリマー粉末組成物を含む化粧品組成物も提供する。本発明による組成物は、皮膚表面に微細な傷をつけることなく、かつ刺激を与えることなく、スキンケアおよび化粧品組成物の高性能の穏やかな剥脱性を提供すると同時に、所望のケア特性の範囲をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルケア製品および化粧品における用途のための、少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーから製造された微粉化ポリマー粉末組成物、その微粉化ポリマー粉末組成物を製造する方法、およびその化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微粉化ポリマー粉末は、化粧品産業において添加剤および化合物として広く使用されている。微粉化ポリマー粉末は、それが剥脱性であることから使用される。剥脱とは、皮膚表面で動かしながら、皮膚表面を固体粒子で擦ると、表面から死細胞および不純物が除去されることを意味する。微粉化ポリマー粉末をベースとする製品を用いて、皮膚表面をきれいにすることができ、深部浄化、老化防止の特性が提供されるばかりでなく、より滑らかな、より柔らかな、かつより明るい皮膚表面が提供される。
【0003】
一般に、微粉化ポリマー粉末は、原油をベースとするポリマーから製造される。例えば、ポリエチレンビーズは優れた剥脱性を付与し、かつ堅果殻粉末などの天然材料で剥脱が得られる場合に皮膚に生じ得る微細な傷を防ぐことができる。石油資源の減少、処理費用の増加、エネルギー消費の増加、環境に有害な二酸化炭素の生成のため、石油化学製品の使用は危機的状況にある。原油から製造されるヘルスケア製品および化粧品から生じる健康被害についても一般の関心が寄せられている。
【0004】
他の選択肢は、一般的な天然ベースの杏仁粉末、堅果もしくは堅果殻粉末など、海塩、砂糖、米粉、シリカおよび果物の種をベースとする組成物などの天然ベース(バイオベース)の剥脱性粉末を使用することである。かかる粉末をベースとする製品は、粒が粗いことが知られており、皮膚表面に微細な傷をつけ、皮膚表面を刺激する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、石油化学資源を避けて、天然資源をベースとし、パーソナルケア製品および化粧品における用途のための、改良された微粉化粉末が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1種類のジオールと、炭素原子4〜12個を有する環状および分枝状脂肪族ジカルボン酸、炭素原子8〜12個を有する芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種類のジカルボン酸と、をベースとする少なくとも1種類の熱可塑性ポリエステルを含む、パーソナルケア製品および化粧品で使用される微粉化ポリマー粉末組成物であって、微粉化ポリマー粉末組成物の粒子が、範囲0.1〜1500μmの平均粒径を有する、微粉化ポリマー粉末組成物を提供する。
【0007】
本発明は、本発明による少なくとも1種類の微粉化ポリマー粉末組成物を含む化粧品組成物も提供する。
【0008】
本発明による微粉化ポリマー粉末組成物は、皮膚の表面に微細な傷をつけることなく、かつ刺激を与えることなく、深部浄化、老化防止の特性ならびに滑らかな、柔らかな、かつ明るい皮膚表面などの範囲の所望のケア特性を提供すると同時に、スキンケアおよび化粧品組成物の高性能の穏やかな剥脱性を提供する。化粧品の最終用途に対して明確に定義された平均粒径を有する、本発明による粉末組成物が製造される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のポリマー粉末組成物を含む製品及びポリエチレン成分を含む製品の剥脱作用示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な説明から当業者であれば容易に理解されよう。理解し易いように個々の実施形態の文脈において上記および下記で記述される、本発明のこれらの特定の特徴は、1つの実施形態において組み合わせて提供されてもよいことも理解されたい。逆に、簡略のため、1つの実施形態の文脈において記述される、本発明の様々な特徴もまた、別々に、またはサブコンビネーションで提供されてもよい。さらに、単数形の表現は、別段の指定がない限り、複数形も含んでもよい(例えば、「1つ」および「1種類」とは、1つ(1種類)、あるいは1つまたは複数(1種または複数種)を意味してもよい)。
【0011】
本明細書で参照されるすべての特許、特許出願および特許公開は、その全体が参照により組み込まれる。
【0012】
パーソナルケア製品および化粧品で使用される、本発明の微粉化ポリマー粉末組成物は、少なくとも1種類のジオールと、炭素原子4〜12個を有する環状および分枝状脂肪族ジカルボン酸、炭素原子8〜12個を有する芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種類のジカルボン酸とをベースとする少なくとも1種類の熱可塑性ポリエステルを含む粉末組成物である。
【0013】
かかるポリエステルの例は、ポリアルキレンテレフタレート、例えばトリメチレンテレフタレート、または少なくとも1種類のジオールと、少なくとも1種類のカルボン酸、例えばブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ドデカン二酸、および1,4−シクロ−ヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸との重合によって製造されるポリエステルである。
【0014】
少なくとも1種類のジオールは、炭素原子2〜8個、好ましくは炭素原子2〜5個を有する、直鎖状、環状および/または分枝状脂肪族ジオールであることができる。かかるジオールの例は、エタンジオール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、および1,4−シクロヘキサンジオールである。好ましくは、ジオールは、少なくとも1種類のバイオベースのジオールである。
【0015】
「バイオベースのジオール」という用語は、当技術分野で公知のプロセスによって農業作物トウモロコシから誘導されるジオールを意味する。原則的に、かかるプロセスは、トウモロコシを収穫する工程、そのトウモロコシから糖を得る工程、その糖を発酵によってアルコール(ジオール)に変換する工程を含む。
【0016】
本発明による熱可塑性ポリエステルは、当技術分野で公知のプロセスによって製造することができる。本発明に従って、このポリエステルは、少なくとも1種類のバイオベースのジオールを使用して製造される。
【0017】
少なくとも1種類の熱可塑性ポリエステルにおける少なくとも1種類のバイオベースのジオールの含有率は、ポリエステル中で使用されるジオール成分に対して、10〜100重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で変動する。
【0018】
本発明による微粉化ポリマー粉末組成物は、更なる成分も含有し得る。これらの成分は、例えば、本発明の微粉化粉末組成物に対して0〜10重量%の範囲の着色剤、例えば顔料などの非ポリマー成分であることができる。顔料の例としては、二酸化チタン顔料がある。
【0019】
更なる成分は、例えば、本発明の微粉化粉末に対して0〜30重量%の範囲の、少なくとも1種類の熱可塑性ポリエステルとは異なる更なるポリマーであることができる。
【0020】
本発明による微粉化ポリマー粉末組成物は、最初に粉末組成物の成分を混合し、次いでその混合物を微粉化することによって製造されてもよい。これは、当技術分野で公知のプロセスによって行うことができる。
【0021】
例えば、本発明の粉末組成物は最初に、当技術分野で公知の溶融混合技術を用いて、組成物の成分を合わせることによって、ペレットおよび/または顆粒として製造される。例えば、この組成物のポリマー成分および非ポリマー成分は、当技術分野で公知の溶融混合機、例えば押出機;ブレンダー、ニーダー、ロールミキサー、または他の種類のミキサーに添加され、次いで溶融混合される。本発明の組成物の成分を段階的な方法で添加する場合、組成物の成分の一部が最初に添加され、後に添加される組成物の残りの成分と溶融混合され、十分に混合された組成物が得られるまで、さらに溶融混合される。次いで、当技術分野で公知の微粉化方法を用いて、このようにして得られた配合ペレットおよび/または顆粒を微細粉末へと分粒する。例えば、押出し材料を顆粒化し、次いで室温または低温で微細粉末へと粉砕し、それを所望の粒径に分類する。例えば、配合ペレットは、低温で、好ましくは−120〜−200℃、さらに好ましくは−140〜−180℃で冷却される。次いで、脆く特別に冷たい顆粒を粉砕機に供給し、例えば、当業者に公知の衝撃粉砕または摩擦粉砕を用いて、顆粒を微細粉末へと縮小する。粉砕技術は、磨砕する配合ペレットの延性および目的とされる最終粒径分布に応じて、当業者によって選択される。所望のサイズを得るために、粉砕工程は、大きな粒子および微細なサイズの粒子を除去するふるい分け工程を伴う。
【0022】
微粉化ポリマー粉末組成物の粒子は、平均粒径範囲0.1〜1500μmを有してもよい。平均粒径は、パーソナルケア製品および化粧品における特定の用途に望まれる範囲で選択され得る。例えば、大きな粒子は、10〜1500μm、好ましくは200〜800μmの範囲で、美容スクラブ(シャワージェル、顔用スクラブクレンザー、ハンドソープ、ヘアマスク、足用スクラブ等)における剥脱効果のために選択され得る。小さな粒子は、スキンケアまたは装飾的化粧品(メーキャップ)におけるボリューム効果、ぼかし効果のため、スキンケアまたは装飾的化粧品における皮脂吸収(艶消し効果)のため、装飾的粉末圧縮のプロセスを容易にするため、装飾的粉末の特性を改善し(仕上がり、透明性、取り扱い性、質感および肌触り、皮膚に対する長時間効果等を調節し)、スキンケアおよび装飾的化粧品の肌触り(柔らかい感触)および質感を改善するために、例えば0.1〜100μm、好ましくは1〜20μmの範囲で使用され得る。
【0023】
例えば、本発明の微粉化ポリマー粉末組成物の粒子は、粒径(D90値)300μm以下、さらに好ましくは約200〜約280μmを有する。D90値は、粒子の90重量%がその粒径未満である粒径に相当し、ISO3310−1に記載の基準を満たし、粒径分析はレーザー回折法によって行われる。測定はMalvern Mastersizer2000で行うことができる。
【0024】
微粉化ポリマー粉末組成物は、パーソナルケアおよび化粧品組成物において剥脱性成分として、化粧品組成物全体に対して、例えば1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%の範囲の量で使用され得る。この量は、特定のパーソナルケアおよび化粧品の最終用途に合わせることができ、例えば、顔用または敏感な身体部分用では2〜5重量%、体用では5〜10重量%である。したがって、本発明は、上述の少なくとも1種類の微粉化ポリマー粉末組成物を含む化粧品組成物にも言及する。
【0025】
本発明はさらに、以下の実施例において定義される。これらの実施例は、単に実例として示されていることを理解されたい。
【実施例】
【0026】
実施例1
本発明の剥脱性成分を含有する化粧品製品および比較用製品の試験
顔用クレンジングジェル製品Aは、剥脱性成分としてポリエチレンビーズ3重量%を含有し、顔用クレンジングジェル製品Bは、剥脱性成分として本発明のポリマー粉末組成物を3重量%含有した。これらの製品の配合は、剥脱性成分の種類を除いて同じであった。製品AおよびBの剥脱性成分は、315μm未満の同じ粒径分布を有した。
【0027】
各製品に対して3日間連続して毎日、パネリストが2種類の顔用クレンジングジェル製品を使用する、パネル試験を行った。パネリストに対する製品分布を無作為化した。パネリストの半分が製品Aの試験を開始し、他の半分が製品Bの試験を開始した。3日後、パネリストは他方の製品(AまたはB)に取り替え、それを試験した。
【0028】
実施例2
試験結果:剥脱能力
試験結果から、本発明のポリマー粉末組成物を含む製品は、ポリエチレン成分を含む製品に対して、優れた剥脱作用を提供することが示されている。図1を参照されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のジオールと、
炭素原子4〜12個を有する環状および分枝状脂肪族ジカルボン酸、および炭素原子8〜12個を有する芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種類のジカルボン酸と、
をベースとする少なくとも1種類の熱可塑性ポリエステルを含むパーソナルケア製品および化粧品で使用される微粉化ポリマー粉末組成物であって、前記微粉化ポリマー粉末組成物の粒子が、範囲0.1〜1500μmの平均粒径を有する、微粉化ポリマー粉末組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリエステルが、少なくとも1種類のジオールと、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ドデカン二酸、1,4−シクロ−ヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種類のジカルボン酸と、をベースとする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ジオールが、エタンジオール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、および1,4−シクロヘキサンジオールからなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ジオールが、少なくとも1種類のバイオベースのジオールである、請求項1〜3に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種類の熱可塑性ポリエステルにおける前記少なくとも1種類のバイオベースのジオールの含有率が、前記ポリエステルにおいて使用されるジオール成分に対して20〜40重量%の範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
A)少なくとも1種類のジオールと、炭素原子4〜12個を有する環状および分枝状脂肪族ジカルボン酸および炭素原子8〜12個を有する芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種類のジカルボン酸と、をベースとする前記少なくとも1種類の熱可塑性ポリエステルを含み、
B)好ましくは0.1〜10重量%の少なくとも1種類の非ポリマー成分が含まれていてもよく、および
C)好ましくは0.1〜30重量%の前記少なくとも1種類の熱可塑性ポリエステルと異なる少なくとも1種類のポリマーが含まれていてもよく、
前記重量%が、組成物(A)〜(C)の全重量に対する量である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
a)前記粉末組成物の成分を混合する工程、および
b)前記混合物を微粉化する工程、
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微粉化ポリマー粉末組成物を製造する方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の微粉化ポリマー粉末組成物を含む、化粧品組成物。
【請求項9】
前記微粉化ポリマー粉末組成物の含有率が、前記化粧品組成物の全重量に対して1〜10重量%の範囲である、請求項8に記載の化粧品組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2012−524109(P2012−524109A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506224(P2012−506224)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/031249
【国際公開番号】WO2010/121032
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】