説明

微粉炭ボイラの排ガス浄化システム

【課題】ボイラのNOx排出量を著しく低減し、脱硝装置が不要の微粉炭ボイラの排ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】微粉炭ボイラ出口の窒素酸化物濃度が煙突出口の窒素酸化物濃度の規制値以下となる微粉炭ボイラ71と、微粉炭ボイラの下流に設けられたボイラ排ガスとの熱交換により微粉炭ボイラの燃焼用空気を加熱するエアヒータ6と、エアヒータの下流に設けられたボイラ排ガス中の灰分を除去する脱塵装置75と、脱塵装置の下流に設けられたボイラ排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置76を備えた微粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、微粉炭ボイラ71とエアヒータ6の間、あるいは脱塵装置75と脱硫装置76の間に水銀ガスを酸化する触媒装置202を備え、さらに、微粉炭ボイラ71の下流で、かつ、触媒装置の上流にハロゲンガス供給装置201を備えた構成の微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉炭ボイラの排ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラでは、窒素酸化物(NOx)濃度の低減が求められており、この要求に応えるために、さまざまな燃焼方法が提案されている。例えば、特許文献1には、微粉炭を3段階に分けて燃焼させ、第一のゾーンの空気比を0.55−0.75、滞留時間を0.1−0.3秒、第二のゾーンの空気比を0.80−0.99、滞留時間を0.25−0.5秒、第三のゾーンの空気比を1.05−1.25、滞留時間を0.25−0.5秒とする燃焼方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6325003号明細書(特許請求の範囲、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような低NOx燃焼方法を採用しても、煙突出口のNOx値を環境規制値(40ppm)以下にするには、ボイラの下流に脱硝装置を設置する必要があった。
【0005】
本発明の目的は、NOx濃度の更なる低減を図り、脱硝装置なしで煙突出口のNOx濃度が環境規制値を満たすことができるようにした微粉炭ボイラの排ガス浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の微粉炭ボイラの排ガス浄化システムは、微粉炭ボイラ出口のNOx濃度が煙突出口のNOx濃度の規制値以下となる微粉炭ボイラと、前記微粉炭ボイラの下流に設けられたボイラ排ガスとの熱交換により前記微粉炭ボイラの燃焼用空気を加熱するエアヒータと、前記エアヒータの下流に設けられたボイラ排ガス中の灰分を除去する脱塵装置と、前記脱塵装置の下流に設けられたボイラ排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置を備えた微粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、前記微粉炭ボイラと前記エアヒータの間、あるいは前記脱塵装置と前記脱硫装置の間に水銀ガスを酸化する触媒装置を備え、さらに、前記微粉炭ボイラの下流で、かつ、前記触媒装置の上流にハロゲンガス供給装置を備えことを特徴とする。
【0007】
また本発明の微粉炭ボイラの排ガス浄化システムは、微粉炭ボイラ出口の窒素酸化物濃度が煙突出口の窒素酸化物濃度の規制値以下となる微粉炭ボイラと、前記微粉炭ボイラの下流に設けられたボイラ排ガスとの熱交換により前記微粉炭ボイラの燃焼用空気を加熱するエアヒータと、前記エアヒータの下流に設けられたボイラ排ガス中の灰分を除去する脱塵装置と、前記脱塵装置の下流に設けられたボイラ排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置を備えた微粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、前記脱塵装置と前記脱硫装置の間にボイラ排ガスに水銀吸着剤を吹き込む水銀吸着剤吹込み装置と、前記水銀吸着剤が吹き込まれたボイラ排ガス中から前記水銀吸着剤を除去する脱塵装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、火炉から排出されるNOxの濃度を著しく低減でき、現状の環境規制値(40ppm)以下にすることが可能になった。これにより、脱硝装置なしで微粉炭ボイラの排ガス浄化システムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例による微粉炭ボイラの火炉部の断面と、空気及び微粉炭の供給系統を示す図である。
【図2】本発明の一実施例によるバーナの空気流れ方向の断面図である。
【図3】本発明の他の実施例による微粉炭ボイラの火炉部の断面と、空気及び微粉炭の供給系統を示す図である。
【図4】本発明のNOx低減効果を、計算により検証した結果を示す図である。
【図5】火炉空気比とNOxの関係を、最上段バーナから主アフタエアポートまでの燃焼ガスの滞留時間ごとに測定した結果を示す図である。
【図6】最上段バーナから主アフタエアポートまでの燃焼ガスの滞留時間と、アフタエア入口部の燃焼ガス温度の関係を計算した結果を示す図である。
【図7】従来の一般的な微粉炭焚き火力発電システムの機器構成図である。
【図8】本発明の微粉炭燃焼方法を適用した微粉炭焚き火力発電システムである。
【図9】ハロゲンガス供給装置を備えた本発明の実施例に係る微粉炭火力発電システムの機器構成図である。
【図10】水銀酸化触媒装置を備えた本発明の実施例に係る微粉炭火力発電システムの機器構成図である。
【図11】水銀酸化触媒装置を備えた別の実施例に係る微粉炭火力発電システムの機器構成図である。
【図12】水銀酸化触媒装置を備えた別の実施例に係る微粉炭火力発電システムの機器構成図である。
【図13】水銀酸化触媒装置を備えた別の実施例に係る微粉炭火力発電システムの機器構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による微粉炭燃焼方法及び微粉炭ボイラでは、アフタエアポートから供給する空気に、例えば水を事前に混合するなどして空気の比熱を増加させることが望ましい。また、バーナの微粉炭搬送空気と燃焼用空気の一部を、火炉内に噴出する前に事前に混合することが望ましい。さらに、アフタエアポートから供給する空気に、ボイラ燃焼排ガスの一部を混合することが望ましい。これらにより、更なるNOxの低減を図ることができる。
【0011】
また、ボイラ出口のNOx濃度が煙突出口のNOx濃度の規制値以下の場合、ボイラ排ガス中のNOxを低減する脱硝装置が不要になる。脱硝装置はボイラ排ガス中の水銀ガスを酸化する作用がある。酸化した水銀ガスは、燃焼灰への吸着、水への吸収作用があり、灰を取り除く脱塵装置、さらには硫黄酸化物を取り除く脱硫装置で取り除かれていた。脱硝装置不要の場合において、脱硝装置に代わって水銀ガスを酸化する方法が必要になる。その方法として、ハロゲンガスの供給、あるいは水銀酸化触媒装置の設置、あるいは水銀吸着剤の供給が望ましい。
【0012】
以下、火炉での空気比と、最上段バーナから主アフタエアポートまでの燃焼ガスの滞留時間が、NOx濃度に与える影響について説明する。また、本発明の微粉炭燃焼方法を実現するのに好適な微粉炭ボイラの構成と、ボイラ排ガス浄化システムの構成について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る微粉炭焚きボイラの火炉部の断面と、空気及び微粉炭の供給系統を示したものである。
【0014】
火炉100の壁面は、上部の火炉天井84と、下部のホッパ85と、側方の火炉前壁86と、火炉後壁87及び図示しない火炉側壁で囲われ、それぞれの壁面には、図示しない水管が設置される。この水管により、火炉燃焼空間1で発生した燃焼熱の一部が吸収される。火炉燃焼空間1で生成した燃焼気体は下方から上方へ流れ、パネル型熱交換器12で燃焼気体中に含まれる熱がさらに回収される。パネル型熱交換器12で熱回収された燃焼排ガス13は、エアヒータ6で燃焼用の空気を加熱した後、図示しない煙突から排出される。
【0015】
火炉前壁86と火炉後壁87の下部には、対向するように、複数段のバーナ2が設置され、ここで空気不足の状態で微粉炭が燃焼する。各段には、それぞれ複数個のバーナが設置される。石炭は図示しない粉砕器で、およそ150μm以下に粉砕した後、空気でバーナ2に搬送され、1次空気と微粉炭4は、バーナ2から火炉内に噴出される。バーナ用2次と3次空気7は、ウインドボックス9を経て、バーナ2から火炉内に噴出される。
【0016】
バーナ2の上方には、アフタエアポート3が設置される。アフタエアポートは主アフタエアポートのみからなる場合と、主アフタエアポートと副アフタエアポートからなる場合がある。図1では、主アフタエアポートのみからなるボイラを示している。副アフタエアポートは、主アフタエアポート間、或いは主アフタエアポートよりも上方に設置される場合が多い。ここで、アフタエアポートが火炉の上下方向に複数段備えられている場合、流量の多い段を主アフタエアポート、流量の少ない段を副アフタエアポートと定義する。
【0017】
燃焼用空気は、ブロワ5から供給され、エアヒータ6で加熱された後、バーナ用2次と3次空気7とアフタエア空気8に配分される。
【0018】
パネル型熱交換器12の下流側にはガスサンプル装置14が設けられ、燃焼排ガス13の一部を吸引し、酸素濃度計15で燃焼排ガス13中の酸素濃度を測定する。測定した酸素濃度が予め計画した値になるように、図示しない制御装置から空気流量制御信号16を出力する。本発明では、酸素濃度がおよそ2%になるように空気流量制御信号16を出力する。これは、火炉空気比で1.1に相当する。この空気流量制御信号16に従って空気流量制御装置10を駆動し、アフタエア空気8と、バーナ用2次と3次空気7の一方又は両方の流量を調整する。
【0019】
特許文献1から明らかなように、NOx低減のためには、火炉空気比は低い方が良い。ただし、火炉空気比が低すぎると、CO濃度が高くなる。火炉空気比が1.05より低くなると、平衡濃度のCOが高くなるため、原理的にCOを低減するのが不可能になる。従って、火炉空気比は1.05以上にすべきである。実用的には、空気流量の変動を考慮して、1.05よりやや高い空気比で運転するのがよい。本実施例では、5%の空気流量変動を考慮して、火炉空気比を1.1に設定した。
【0020】
火炉近傍に設置されている工業用水配管19から工業用水を分岐し、ポンプ20を用いてアフタエア空気8の配管へ工業用水21を供給する。図示しない噴霧器を用いて、工業用水21をアフタエア空気8中へ噴霧する。これにより火炉内で燃焼する微粉炭火炎の温度を下げ、NOxをさらに低減できる。
【0021】
NOxを低減するには、最上段バーナとアフタエアポート間の距離17を広げ、NOxが還元される領域を大きくするのが良い。最上段バーナとアフタエアポート間の距離17は、燃焼ガスの滞留時間で1.1〜3.3秒になるように設定するのがよい。滞留時間が1.1秒以下の場合には、火炉空気比を低くしてもNOxが低減されないため、NOx濃度が高くなる。この現象については、図5で詳しく説明する。滞留時間が3.3秒以上の場合には、アフタエアを供給した際の燃焼が困難になる。この現象については、図6で詳しく説明する。
【0022】
最上段バーナから主アフタエアポートまでの燃焼ガスの滞留時間は、最上段バーナから主アフタエアポートまでの距離によって概ね決定されるが、火炉の設計条件を以下のようにすると、よりコントロールしやすくなる。具体的には、最上段バーナとアフタエアポート間の距離17、すなわち最上段バーナから主アフタエアポートまでの距離を、火炉底部からノーズ11までの高さ18の比で、20−30%とする。或いは、最上段バーナから主アフタエアまでの距離を、火炉底部から最初に燃焼ガスが接触するパネル型熱交換器12までの高さ26の比で、20−30%とする。或いは、最上段バーナから主アフタエアまでの距離を、ボイラの高さ27の比で、15−22%とする。
【0023】
図2は、NOx濃度を低減するのに好適なバーナ2の構造を示したものである。
【0024】
燃焼用空気は、1次空気噴出口22と、2次空気噴出口23及び3次空気噴出口24から噴出する。1次空気と微粉炭4は、バーナ中央から噴出する。2次と3次空気の一部25は、バーナ用2次と3次空気7から分岐し、バーナ中央部から1次空気と微粉炭4の流れに混入させる。これにより、微粉炭濃度が薄くなり、NOx濃度が低減される。1次空気と微粉炭4の一部は、仕切り板88で分岐し、仕切り板88の外周側を流す。このとき、仕切り板88の外周側を流れる1次空気と微粉炭4は、2次と3次空気の一部25と混合することがないようにする。例えば、2次と3次空気の一部25の噴出口よりも、仕切り板88の先端部分を前方に設置する。こうすることで、保炎器89の近傍では、微粉炭濃度が薄まることがなくなり、着火性が維持される。
【実施例2】
【0025】
図3は、本発明の他の実施例に係る微粉炭焚きボイラであり、火炉部の構成を示したものである。
【0026】
ここでは、燃焼排ガス13の一部を吸引して、アフタエアポート3から火炉に供給している。燃焼排ガス13は、燃焼排ガス吸引ポンプ40で吸引し、アフタエア空気8に混入する。燃焼排ガス13を混入したアフタエア空気8は、アフタエアポート3から火炉内に放出する。アフタエア空気8に燃焼排ガス13を混入することで、ガスの比熱が大きくなる。また、ガス中の酸素濃度が低くなる。これにより、燃焼温度が低くなり、NOxの生成量が少なくなる。また、排ガスを混入することでアフタエアポートから噴出する気体の流速が速くなり、火炉内での混合が促進され、COも低減される。
【0027】
本発明の効果の検証をする。
【0028】
図4は、本発明によるNOxの低減効果を計算で検証した結果である。
【0029】
記号51は、従来技術を用いて火炉空気比1.2で燃焼したときのNOx性能である。記号53は、最上段バーナからアフタエアポートまでの滞留時間を長くして、火炉空気比を1.15としたときのNOxであり、約30%低減された。記号54は、さらに火炉空気比を1.10まで下げたときのNOxである。約50%NOxが低減された。
【0030】
記号55は、最上段バーナからアフタエアポートまでの滞留時間を長くして、火炉空気比を1.14及び1.1とし、さらにバーナを改良して図2の構造のバーナとし、バーナの微粉炭搬送空気と燃焼用空気の一部を、火炉内に噴出する前に事前に混合したときのNOxである。記号56は、図2の構造のバーナを用い、さらにアフタエア空気に水を混入したときのNOxである。記号56の条件では、NOxがさらに低減された。
【0031】
これらの結果から、以下の(1)〜(3)の技術を適用し、さらに火炉空気比を1.14以下にすることで、NOx濃度を煙突出口の規制値より低くし、脱硝装置を省略してコストを低減できることがわかった。
【0032】
(1)最上段バーナからアフタエアポートまでの滞留時間を長くする。
【0033】
(2)バーナの微粉炭搬送空気と燃焼用空気の一部を、火炉内に噴出する前に事前に混合する。
【0034】
(3)アフタエア空気に水を混入する。
【0035】
図5は、最上段バーナからアフタエアポートまでの燃焼ガスの滞留時間を変えて、火炉空気比とNOxの関係を実験で調べた結果である。図5(b)は、最上段バーナからアフタエアポートまでの滞留時間が1.1秒以上の条件で、石炭性状を変えて火炉空気比とNOxの関係を調べた結果である。符号62,63,64の滞留時間はいずれも1.15秒であるが、使用した石炭の種類が異なる。いずれの場合にも、火炉空気比を下げるとNOxが単調に減少する。この結果から、最上段バーナからアフタエアポートまでの燃焼ガスの滞留時間が1.1秒以上の条件では、火炉空気比が1.2よりも、1.14以下の方がNOxを低減できることがわかった。
【0036】
図5(a)は、最上段バーナからアフタエアポートまでの燃焼ガスの滞留時間が0.67−1.0秒の条件で、石炭性状を変えて火炉空気比とNOxの関係を調べた結果である。符号61の滞留時間は0.7秒、符号58,59,60の滞留時間は0.95秒である。この条件では必ずしも火炉空気比を低くすることでNOxを低減できなかった。符号58と符号60では、火炉空気比を低くすることでNOxが低減するが、符号59では火炉空気比を低くすることでNOxが逆に増加する。また、符号61では火炉空気比を変えてもNOxはほとんど変化しない。このように、最上段バーナからアフタエアポートまでの滞留時間が短いときには、火炉空気比を下げても、安定して低NOx性能を得ることはできなかった。
【0037】
これらの結果から、火炉空気比を下げて低NOx燃焼を行うためには、最上段バーナからアフタエアポートまでの燃焼ガスの滞留時間を1.1秒以上にする必要のあることがわかった。
【0038】
図6は、最上段バーナからアフタエアポートまでの燃焼ガスの滞留時間と、アフタエア部の入口ガス温度との関係を計算で調べた結果である。曲線65は、燃焼ガスがアフタエア部入口に到達したときのガス温度であり、曲線66は、アフタエア部入口に到達した燃焼ガスとアフタエア空気とが混合したときの温度である。領域67は、ガスの着火が困難になる温度条件である。アフタエア部入口ガスとアフタエア空気を混合したときの温度が、領域67の温度よりも高くなり、着火温度条件に入ることが、ボイラの燃焼システムを成り立たせる上での必要条件である。
【0039】
最上段バーナからアフタエポートまでの燃焼ガスの滞留時間が長くなると、アフタエア部入口ガス温度は次第に低くなる。これは、サーマルNOxを低減する上では望ましいことである。ただし、アフタエア部入口ガスとアフタエア空気とが混合したときの温度が1000℃以下になると、着火が困難になりシステムが成り立たなくなる。
【0040】
したがって、最上段バーナからアフタエアポートまでの燃焼ガス滞留時間の望ましい値には上限がある。図6の計算結果に基づくと、最上段バーナからアフタエアポート間の滞留時間の上限は、約3.3秒である。
【実施例3】
【0041】
本発明による微粉炭ボイラの排ガス浄化システムの機器構成図を、図8から図13に示した。また、比較例として、従来の一般的な微粉炭ボイラの排ガス浄化システムの機器構成図を図7に示した。
【0042】
比較例の発電システムでは、ボイラ71に微粉炭74を供給して燃焼させる。微粉炭の燃焼熱により発生した蒸気81を蒸気タービン82へ導き、蒸気タービン82とタービンに接続された発電機83を駆動する。燃焼後の燃焼排ガス13は、まず脱硝装置72へ導く。脱硝装置72では、NOxの濃度が6%O換算値で40ppm以下になるように、アンモニアを供給してNOxを還元する。燃焼排ガス13は、次にエアヒータ6で熱交換により燃焼用の空気73を加熱する。続いて、乾式電気集塵器75で煤塵を除去し、脱硫装置76でSOxを除去する。脱硫装置76で発生するミストを湿式電気集塵器77で除去した後、燃焼排ガス13を煙突78から排出する。
【0043】
図8は、本発明のボイラを用いた発電システムの一実施例である。PRB炭を燃料とした場合、本発明ではボイラ71から発生するNOxを40ppm以下に低くできるため、脱硝装置が不要となる。燃焼排ガス13は直接エアヒータ6に入る。エアヒータ6の下流に乾式電気集塵器75、脱硫装置76、湿式電気集塵器77および煙突78を配置する点は、従来と同じである。
【0044】
脱硝装置内には触媒が挿入されており、アンモニア(NH3)ガスを供給することで、ボイラ排ガス中のNOxをNに還元する。該触媒はボイラ排ガス中の水銀(Hg)ガスとハロゲンガス、例えば、塩化水素(HCl)ガスによりHgガスを酸化し、塩化水銀(HgCl)ガスを生成する。塩化水銀(HgCl)ガスはボイラ排ガス中の灰への吸着性があり、後流の乾式電気集塵器75で灰とともに除去される。さらに、HgClガスは水への吸収性があり、後流の石灰スラリーを使用する脱硫装置で除去される。
【0045】
ここで、脱硝装置が不要となれば、Hgガスを酸化する作用が低減される。そこで、Hgガスの酸化を促進する方法が必要になる。その方法は、Hgガスと反応するハロゲンガスを高濃度にする、Hgガスを酸化する専用の触媒を設置することである。さらに、Hgガスを吸着する吸着剤を供給することにより、ボイラ排ガス中のHgガスを低減する。
【0046】
図9は、本発明のハロゲンガス供給装置を設けた微粉炭ボイラの排ガス浄化システムの機器構成図である。ハロゲンガス供給装置はエアヒータ6の直前、あるいはエアヒータ6と乾式電気集塵器75の間、あるいは乾式電気集塵器75と脱硫装置76の間に設ける。
【0047】
ハロゲンガスとして、HClガスを例にすると、供給したHClガスは、平衡反応により塩素(Cl)ガスを生成し、さらに生成したClガスとHgガスが反応し、HgClガスを生成する。HClガスとClガスの平衡反応は、高温ほどHClガスが多く、温度が低いほどClガスが多くなる。ClガスとHgガスの反応速度は、温度が高いほど速くなる。温度が高すぎれば、Clガスが少ないため、HgClの生成が抑制され、温度が低すぎれば、ClガスとHgガスの反応速度が遅くなるため、HgClの生成が抑制される。したがって、HgClの生成には、最適な温度範囲が存在し、望ましい温度範囲は150〜400℃である。
【0048】
ボイラから出た排ガスの温度遷移は、約400℃でエアヒータ6に入り、熱交換して、乾式電気集塵器75で約150℃に下がる。したがって、ハロゲンガスの供給位置は、エアヒータ6の直前から乾式電気集塵器75の直前となる。
【0049】
図10から13は、本発明の水銀酸化触媒装置を設けた微粉炭ボイラの排ガス浄化システムの機器構成図である。図10は水銀酸化触媒装置202をエアヒータ6の直前に、図11は水銀酸化触媒202をエアヒータ6と乾式電気集塵器75の間に、図12は水銀酸化触媒202を乾式電気集塵器75と脱硫装置76の間に設けている。
【0050】
水銀酸化触媒は、HClガスを例にすると、HClガスからClガスを生成する作用を促進する。触媒を構成する成分によって、使用温度範囲は異なり、150〜400℃の範囲になる。
【0051】
石炭としてPRB炭を用いた場合、石炭中に含まれるCl量が少なく、そのような石炭では、水銀酸化触媒装置と併用して、ハロゲンガスを供給することが望ましい。その場合、水銀酸化触媒装置の上流でハロゲンガスを供給する。
【0052】
図13は、本発明の水銀吸着剤を供給する微粉炭ボイラの排ガス浄化システムの機器構成図である。排ガス中のHgガスおよびHgClガスを吸着させるために、乾式電気集塵器75の下流で活性炭吹き込み装置79を設けた。活性炭は水銀吸着剤である。水銀を吸着した活性炭は、バグフィルタ80で回収する。
【0053】
乾式電気集塵器75で捕集した灰は、セメントなどへ有効利用されており、活性炭が混入すれば、有効利用できなくなる。したがって、乾式電気集塵器75の後流で活性炭を吹き込むことになる。
【0054】
図10から図13のボイラ71は本発明のボイラであるが、ボイラ1の出口NOx濃度が煙突78の出口NOx濃度規制値以下となるボイラであればよい。
【0055】
このように、本発明によれば、NOx低減が図れ、脱硝装置なしの微粉炭焚き火力発電システムが提供でき、発電システムのコスト低減が図れる。さらに、脱硝装置なしの場合でも水銀除去性能を確保するボイラ排ガス浄化システムが提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は微粉炭ボイラの排ガス浄化システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…火炉燃焼空間、2…バーナ、3…アフタエアポート、4…1次空気と微粉炭、5…ブロワ、6…エアヒータ、7…バーナ用2次と3次空気、8…アフタエア空気、9…ウインドボックス、10…空気流量制御装置、11…ノーズ、12…パネル型熱交換器、13…燃焼排ガス、14…ガスサンプル装置、15…酸素濃度計、16…空気流量制御信号、17…最上段バーナとアフタエアポート間の距離、18…火炉底部からノーズまでの高さ、19…工業用水配管、20…ポンプ、21…工業用水、22…1次空気噴出口、23…2次空気噴出口、24…3次空気噴出口、25…2次と3次空気の一部、26…火炉底部から最初に燃焼ガスが接触するパネル型熱交換器までの距離、27…ボイラの高さ、40…排ガス吸引ポンプ、71…ボイラ、72…脱硝装置、73…空気、74…微粉炭、75…乾式電気集塵器、76…脱硫装置、77…湿式電気集塵器、78…煙突、79…活性炭吹き込み装置、80…バグフィルタ、81…蒸気、82…蒸気タービン、83…発電機、84…火炉天井、85…ホッパ、86…火炉前壁、87…火炉後壁、88…仕切り板、89…保炎器、100…火炉、201…ハロゲンガス供給装置、202…水銀酸化触媒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭ボイラ出口の窒素酸化物濃度が煙突出口の窒素酸化物濃度の規制値以下となる微粉炭ボイラと、前記微粉炭ボイラの下流に設けられたボイラ排ガスとの熱交換により前記微粉炭ボイラの燃焼用空気を加熱するエアヒータと、前記エアヒータの下流に設けられたボイラ排ガス中の灰分を除去する脱塵装置と、前記脱塵装置の下流に設けられたボイラ排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置を備えた微粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラと前記エアヒータの間、あるいは前記脱塵装置と前記脱硫装置の間に水銀ガスを酸化する触媒装置を備え、さらに、前記微粉炭ボイラの下流で、かつ、前記触媒装置の上流にハロゲンガス供給装置を備えたことを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項2】
微粉炭ボイラ出口の窒素酸化物濃度が煙突出口の窒素酸化物濃度の規制値以下となる微粉炭ボイラと、前記微粉炭ボイラの下流に設けられたボイラ排ガスとの熱交換により前記微粉炭ボイラの燃焼用空気を加熱するエアヒータと、前記エアヒータの下流に設けられたボイラ排ガス中の灰分を除去する脱塵装置と、前記脱塵装置の下流に設けられたボイラ排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置を備えた微粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記脱塵装置と前記脱硫装置の間にボイラ排ガスに水銀吸着剤を吹き込む水銀吸着剤吹込み装置と、前記水銀吸着剤が吹き込まれたボイラ排ガス中から前記水銀吸着剤を除去する脱塵装置とを備えたことを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは、微粉炭を燃焼する火炉と、前記火炉に微粉炭と燃焼用空気を供給し、空気不足の状態で微粉炭を燃焼するバーナと、前記バーナの下流側に設けられた、完全燃焼用の空気を供給するアフタエアポートとを有する微粉炭ボイラであって、前記火炉の最上段に設置された前記バーナから主アフタエアポートまでの距離と、前記火炉の底部からノーズまでの高さとの比が20−30%であることを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは、微粉炭を燃焼する火炉と、前記火炉に微粉炭と燃焼用空気を供給し、空気不足の状態で微粉炭を燃焼するバーナと、前記バーナの下流側に設けられた、完全燃焼用の空気を供給するアフタエアポートと、燃焼ガスの熱を回収するパネル型熱交換器を有する微粉炭ボイラであって、前記火炉の最上段に設置された前記バーナから主アフタエアポートまでの距離と、前記火炉の底部から最初に燃焼ガスが接触する前記パネル型熱交換器までの高さの比が20−30%であることを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは、微粉炭を燃焼する火炉と、前記火炉に微粉炭と燃焼用空気を供給し、空気不足の状態で微粉炭を燃焼するバーナと、前記バーナの下流側に設けられた、完全燃焼用の空気を供給するアフタエアポートとを有する微粉炭ボイラであって、前記火炉の最上段に設置された前記バーナから主アフタエアポートまでの距離と、ボイラの高さの比が15−22%であることを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは、微粉炭を燃焼する火炉と、前記火炉に微粉炭と燃焼用空気を供給し、空気不足の状態で微粉炭を燃焼するバーナと、前記バーナの下流側に設けられた、完全燃焼用の空気を供給するアフタエアポートとを有する微粉炭ボイラであって、前記火炉での空気比を1.05〜1.14とし、最上段に設けられた前記バーナから主アフタエアポートまでの燃焼ガスの滞留時間を1.1〜3.3秒とすることを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項7】
請求項6に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは前記火炉の上下方向に複数段にバーナが設置されていることを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項8】
請求項6に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは少なくとも主アフタエアポートを備えていることを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項9】
請求項6に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは、前記火炉から排出される燃焼排ガスの酸素濃度を測定し、この酸素濃度が予め計画した値になるように、前記バーナに供給する2次及び3次空気と、前記アフタエアポートに供給する空気のうちの少なくとも一方の流量を調整して、前記火炉での空気比が1.05〜1.14に保持されるようにすることを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項10】
請求項6に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは、前記アフタエアポートから供給する空気の比熱を増加させることを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項11】
請求項10に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは、前記アフタエアポートから供給する空気に水を事前に混合して空気の比熱を増加させることを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項12】
請求項6又10に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは、前記バーナの微粉炭搬送空気と燃焼用空気の一部を、火炉内に噴出する前に事前に混合することを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。
【請求項13】
請求項6又は10に記載の粉炭ボイラの排ガス浄化システムにおいて、
前記微粉炭ボイラは、前記アフタエアポートから供給する空気に前記微粉炭ボイラの燃焼排ガスの一部を混合することを特徴とする微粉炭ボイラの排ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−19666(P2013−19666A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204125(P2012−204125)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2009−515165(P2009−515165)の分割
【原出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】