説明

微粉状態の固体材料、該材料の製造方法及び太陽電池における該材料の使用

本発明は次の式(A):(Cu+1a−u;Ag+1;Zn+2b−v−(y/2);Cd+2;Sn+4c−w−(y/2)+4+3;S−2d−x;Se−2)の固体材料であって、15nmから400nmの平均相当直径を有する粒子の形態の微粉状態にあり;X線回折による上記固体材料の分析によって、単結晶構造を示し;8より大きいδ値と5より大きいδ値を有する少なくとも一の化合物から形成された、分散液と呼ばれる液体中の式(A)の少なくとも一の固体材料の安定な分散物を形成可能なように適合化されている固体材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、金属カルコゲニド構造を含む微粉状態(divided state)の固体材料(固形材料)、そのような固体材料の製造方法、及び液体、特に極性液体中のそのような固体材料の分散物に関する。本発明は、また光電膜の製造におけるそのような分散物の使用、そのような光電膜の製造方法、及びそのような光電膜を有する太陽電池(光電池)にも関する。
【0002】
そのような固体材料は、クリーンで再生可能なエネルギー、特に太陽エネルギーの利用の分野で、光電変換の太陽電池のための薄い厚みの光電膜の製造のために使用される。
【0003】
そのような固体材料はまた汚染有機調製物の光触媒による分解及び/又は水素製造のための光触媒による水の分解に特に適している光活性触媒材料の製造に使用されうる。
【0004】
光電薄膜の製造に使用される様々な方法及び材料が既に知られている。既知の技術的解決手段の最初のタイプでは、光電性膜がシリコン層から形成される(例えば、"Martinuzzi S., Reflets de la physique, December 2007, 9-13"を参照)。そのような解決手段は、シリカの還元による固体シリコンの製造、固体シリコンの精製、及び精製された固体シリコンからのシリコン薄層の機械加工を必要とする。そのような製造法には、高コスト、特に高エネルギーコストがかかり、これが今は、非常に大きな規模でのシリコン系太陽電池の開発を制限している。そのエネルギーコストのため、そのような製造方法は環境を守らない。
【0005】
FR2922046は、光吸収剤の層が銅、インジウム、セレン及び代わりにはガリウムを含む半導体材料から形成される第二のタイプの既知の解決手段を記載している。吸収剤のそのような連続層は、天然起源の資源であり、枯渇する可能性があるインジウムを必ず含んでいる。更に、そのような光吸収剤の連続層は、減圧下での蒸気層中での材料の蒸着又は電着によって得られる。そのような吸収剤膜を得る方法は、材料の原子スケールでの沈着(deposition)に適合化された複雑な設備を必要とする。
【0006】
Katagiri(Katagiri等, (2008), Applied Physics Express, 1, 041201を参照)は、Cu、SnS及びZnSターゲットを使用する高周波スパッタリングによるCuZnSnS膜の形成を提案している。そのような膜はおよそ6.7%の太陽エネルギーの電気エネルギーへの変換効率を有しており、エネルギーの観点から採算性のある光電センサを工業的規模で生産することは可能にしない。
【0007】
Todorov(Todorov等, (2009), Thin Solid films, 517, 2451-2544を参照)は、アモルファス構造のナノ粒子からのCuZnSnS膜の製造を記載している。そのようなアモルファス材料は、該アモルファス材料の焼結による緻密化とナノ構造の膜の形成中における収縮の制御ができない。
【0008】
Steinhagen(Steinhagen等, (2009), J. Am. Chem. Soc., 131, 12554-12555を参照)は、オレイルアミン中での制御された沈殿によって得られた非常に小さいサイズ−およそ10nm−のCuZnSnS粒子を記載している。そのような方法は、洗浄によるオレイルアミンの除去を必要とし、環境に配慮がなく、10nmより大きい粒子を得ることはできない。更に、そのような粒子は界面活性剤フリーではなく、大きなサイズの結晶ドメインを持たない。更に、そのような粒子は、光起電品質の光電膜の焼結による形成を可能にするように適合化された高い粗密度(raw density)を有する粒子の膜の形成を可能にはしない。
【0009】
Guo(Guo等, (2009), Journal of American Chemical Society, 131, 11672-11673を参照)から、太陽電池のためのCuZnSnSのナノ結晶インクがまた知られている。そのような結晶はオレイルアミン中で合成され、非極性溶媒、特にトルエン中で安定な分散物を形成している。それらは極性液体溶媒中ではそのようなナノ結晶の安定な懸濁物の形成を可能にしない。
【0010】
本発明は、薄い厚みであるが高い光起電力変換効率を有する光吸収膜の製造に使用することができる高純度の固体材料を提供することにより、上述の不具合を解消することを目的とする。
【0011】
特に、本発明は、サブミクロンスケール及びナノメートルスケールの構造化膜の形成を可能にする固体材料に関する。
【0012】
本発明は、その層の焼結によって光電膜の形成を可能にするように適合化された高粗密度を有するサブミクロンサイズの粒子の層の形成を可能にするように適合化された固体材料にまた関する。
【0013】
本発明は、高結晶化度で、両親媒性界面活性(界面活性剤)タイプの炭化水素化合物を実質的に含まない固体材料にまた関する。
【0014】
特に、本発明は、その取得のために、両親媒炭化水素化合物、特に界面活性化合物、特にオレイルアミンタイプの脂肪アミンの使用を必要としないそのような固体材料に関する。よって、本発明は、極性液体溶媒中での分散に適合化させたそのような固体材料に関する。
【0015】
本発明は、低製造コストを有し、一般的な及び/又は安価な化学成分から製造されるそのような固体材料を提案することにより、低コストでその全ての目的を達成することをまた目的とする。
【0016】
本発明は、工業的規模での製造、収益性及び安全性の制約に適合するそのような固体材料の製造方法を提案することをまた目的とする。
【0017】
本発明は、粒子成長阻害化合物、特に両親媒界面活性化合物(界面活性剤)の使用を必要としないそのような方法にまた関する。
【0018】
本発明は、環境に配慮し、持続可能な開発基準を満たすほんの少量の廃棄物しかつくり出さないそのような方法を提案することをまた目的とする。
【0019】
本発明は、使用が容易で、少ない数の操作しか含まない、非雇用者の労働慣例を遵守するそのような方法にまた関する。
【0020】
本発明は、電子トラップを形成しやすい構造的欠陥を実質的に含まないナノ構造光電膜の製造におけるそのような固体材料の使用にまた関する。
【0021】
本発明は、真空内蒸着、特に低圧スパッタリング、プロセス又は電着を何れも必要としないでその固体材料の半導体薄層の形成を可能にするために基板表面にコーティングで塗布可能な液体媒体中のそのような固体材料の分散物にまた関する。
【0022】
本発明は、経時的に安定で、特に沈殿に安定なそのような分散物に更に関する。
【0023】
本発明は、極性液体媒体中において微粉状態(divided state)のそのような固体材料の分散物に特に関する。
【0024】
本発明は、基板、特に複雑な形状の基板、特に非極性基板の表面に塗布される薄膜の製造におけるそのような分散物の使用にまた関する。
【0025】
本発明は、光電膜、特に太陽電池の光電膜の製造におけるそのような分散物の使用に特に関する。
【0026】
本発明は、光触媒材料の光電膜の製造におけるそのような分散物の使用にまた特に関する。
【0027】
よって、本発明は、次の式(A):
(Cu+1a−u;Ag+1;Zn+2b−v−(y/2);Cd+2;Sn+4c−w−(y/2)+4+3;S−2d−x;Se−2) (A)
[上式中、
a、b、c、d、u、v、w、x及びy及びその算術組み合わせは、各数が式(A)において(特に材料の電気的中性を満たすように選択された)関連する各元素の原子分率を表す実数であり、
・ 1.6<a<2.4;
・ 0.6<b<1.2;
・ 0.6<c<1.2;
・ 3.5<d<4.5
であり;
・ u、v、w、x及びyは、互いに独立して、区間[0;0.5[に属する実数の集合に属し、
+4は、チタン(Ti)のカチオン、ジルコニウム(Zr)のカチオン及び鉛(Pb)のカチオンからなる群から選択され、
+3は、ガリウム(Ga)のカチオン、インジウム(In)のカチオン及びイットリウム(Y)のカチオンからなる群から選択される]
の固体材料に関し、該固体材料は、
− 15nmから400nmの平均相当直径を有する粒子の形態の微粉状態にあり、
− X線回折による上記固体材料(1)の分析によって、単結晶構造を示し、かつ
− 8より大きいδ値、特に8から20のδ値を有し、5より大きいδ値、特に5から40のδ値を有する少なくとも一の化合物から形成された、分散液と呼ばれる液体中の式(A)の少なくとも一の固体材料の安定な分散体を形成できるように適合化されて
【0028】
以降、粒子の「相当直径」なる表現は、上記粒子に正接する概念上の面上の上記粒子の正射影と同じ面積の円の直径を示す。特に、粒子の組成物の粒子の「平均相当直径」は、それ自体既知の方法、特に透過電子顕微鏡法又は高分解能電子顕微鏡法によって評価することができる。粒子の組成物の粒子の平均相当直径は、例えば60000から200000の倍率で、透過電子顕微鏡スライド上で可視化した少なくとも50の粒子の直径を測定することにより決定される。測定粒度分布のヒストグラムのメジアンが粒子の組成物の粒子の平均相当直径である。
【0029】
δ及びδのかかる値は当業者に知られている値であり、例えば著作物 "Handbook of solubility parameters and other cohesive parameters, 1983, CRC press, p. 153-157"に記載されている。特にδ及びδはHidelbrandtによって定義された溶解パラメーターであり、パラメーターδは極性相互作用力に関係しており、パラメーターδは水素相互作用力に関係している。
【0030】
有利には、分散液は、8より大きいδ値、特に8から20のδ値を有し、5より大きいδ値、特に5から40のδ値を有する化合物から形成される。
【0031】
有利には、分散液は、その合計(δ+δ)は22より大きい少なくとも一の化合物から形成される。特に、分散液は、合計(δ+δ)が22より大きい単一化合物から形成される。
【0032】
有利には、式(A)の固体材料は、少なくとも一の極性溶媒化合物から形成された分散液と呼ばれる液体中の安定な分散物を形成することができるように適合化されている。
【0033】
有利には、分散液は、強い極性相互作用(δ)及び強い水素相互作用(δ)を生じる溶媒からなる群から選択される。
【0034】
微粉状態の式(A)のそのような固体材料では、粒子は、粒子の10%未満が粒度分布のメジアンの2倍より大きいサイズを有し、粒子の10%未満が粒度分布のメジアンの半分より小さいサイズを有する統計的粒度分布を示す。以降、粒子なる用語は個別化された固形体を示す。そのような粒子は、個別化された粒子を形成する単一元素の晶子の形態、又は上記個別化粒子内で凝集によって会合した複数の晶子の形態でありうる。何れにせよ、複数の晶子がX線回折により単一構造を示す。
【0035】
X線回折による本発明に係る式(A)の固体材料の構造の解析は、"Joint Committee on Powder Diffraction Standards"においてJCPDS番号00−026−0575で参照されるケステライト(CuZnSnS)のパターンにマッチするX線回折パターンを示す。特に、本発明に係る式(A)の固体材料のX線回折パターンは、CuS(チャルコサイン(chalcosine),JCPDS番号01−072−2276)、CuS(コベライン(coveline),JCPDS番号01−076−1725)、SnS(硫化スズ,JCPDS番号00−040−1465)、CuSnS(ペトルカイト,JCPDS番号00−036−0217)、ZnS(ウルツ鉱,JCPDS番号00−036−1450,JCPDS番号01−072−0163,JCPDS番号01−075−1534)、Cu(ヤロー鉱,JCPDS番号00−036−0379)型の構造に起因する線を示さない。
【0036】
本発明に係る固体材料では、式(A)は該固体材料の単結晶構造を形成する単位格子の化学組成を記述する。そのような化学組成は当業者にそれ自体知られている方法による化学分析によって決定することができる。
【0037】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明に係る式(A)の固体材料の粒子は(好まれる伸長方向のない)略等方性の形状の粒子であり、その平均相当直径は15nmから400nmであり。
【0038】
特に、本発明に係る式(A)の固体材料の粒子は、正規直交空間基準座標系において、同じオーダーの大きさの3つの直交寸法を有している。
【0039】
有利には、本発明によれば、式(A)の固体材料を構成する粒子は、15nmから400nm、特に25nmから300nmの平均相当直径を有する。粒子の平均相当直径は、15nmから300nm、特に15から100nm、好ましくは25nmから100nmでありうる。
【0040】
有利には、本発明によれば、式(A)の固体材料を構成する元素は、式(A)の固体材料中のその酸化数で、元素のそれぞれが、外殻dが空の外殻dか又は満ちた外殻dである、つまり外殻dが10の電子を有している電子分布を有するように選択される。
【0041】
カチオンCd+2+4及び+3は、上記カチオンCd+2+4及び+3の2つの軌道d間に電子遷移を許容しないように適合化された式(A)の固体材料のドーピング元素のカチオンである。
【0042】
カチオンCd+2+4及び+3は、式(A)の固体材料中のカチオンCd+2+4及び+3のそれぞれの酸化数で、各カチオンCd+X+及びX+の電子分布が空の外殻d、特に殻3d、4d及び5dか、又は満ちた外殻、つまり10の電子を有している外殻を有するように選択される。
【0043】
有利には、本発明によれば、粒子は式(A)の固体材料によってのみ構成される。特に、本発明に係る式(A)の固体材料を構成する粒子は界面活性炭化水素化合物を含まず、特に脂肪アミン類、特にオレイルアミン、及び脂肪酸、特にカルボン酸、スルホン酸等を含まない。
【0044】
特に、本発明に係る式(A)の固体材料によって構成される粒子は極性溶媒中に安定な分散物を形成する。実際、分散液中の式(A)の上記固体材料のそのような安定分散物は、式(A)の固体材料の70重量%以上、特に80重量%以上、より好ましくは90重量%以上が、該分散物が撹拌されることなく、2時間、好ましくは6時間の期間後に分散液中に懸濁状態で残るように適合化されている。本発明に係るそのような粒子は、それらが極性分散媒に配されるやいなや−分散液にさらされる粒子の表面積を最小にする傾向がある−凝集物を形成せず、よって2時間、特に6時間の期間、沈殿しない。
【0045】
特に、分散液中の式(A)の上記固体材料のそのような安定分散物は、式(A)の固体材料の70重量%以上、特に80重量%以上、より好ましくは90重量%以上が、該分散物が撹拌されることなく、48時間(2日)、好ましくは96時間(4日)の期間後に分散液中に懸濁状態で残るように適合化されている。
【0046】
本発明者は、本発明に係る式(A)の固体材料の粒子が極性溶媒中で安定な分散物を形成する一方、従来技術の粒子は非極性溶媒、特にトルエン中で分散することを知見し、従来技術のナノ結晶は該ナノ結晶を囲む疎水性及び非極性の性質の表面層を有していることを示している。
【0047】
有利には、本発明によれば、分散液は、エチルアルコール(δ=8.8、δ=19.4)、アセトニトリル(δ=18、δ=6.1)、エチレングリコール(δ=11、δ=26)、ジメチルスルホキシド(δ=16.4、δ=10.2)、プロピレングリコール(δ=9、δ=22)、メタノール(δ=13、δ=21)及びジメチルホルムアミド(δ=14、δ=11)からなる群から選択される少なくとも一の化合物から形成される。
【0048】
有利には、分散液は、エチルアルコール(δ=8.8、δ=19.4)、アセトニトリル(δ=18、δ=6.1)、エチレングリコール(δ=11、δ=26)、ジメチルスルホキシド(δ=16.4、δ=10.2)、プロピレングリコール(δ=9、δ=22)、メタノール(δ=13、δ=21)及びジメチルホルムアミド(δ=14、δ=11)からなる群から選択される化合物から形成される。
【0049】
有利には、分散液は、エチルアルコール(δ=8.8、δ=19.4)、アセトニトリル(δ=18、δ=6.1)、エチレングリコール(δ=11、δ=26)、ジメチルスルホキシド(δ=16.4、δ=10.2)、プロピレングリコール(δ=9、δ=22)、メタノール(δ=13、δ=21)及びジメチルホルムアミド(δ=14、δ=11)からなる群から選択される複数の化合物の混合物によって形成される。
【0050】
有利には、分散液は強い極性相互作用(δ)及び強い水素相互作用(δ)を生じる溶媒からなる群から選択される。従って、より特定的には、エチルアルコール(δ=8.8、δ=19.4)、アセトニトリル(δ=18、δ=6.1)、エチレングリコール(δ=11、δ=26)及びジメチルスルホキシド(δ=16.4、δ=10.2)からなる群からの少なくとも一の溶媒が選択される。
【0051】
有利には、分散液は高純度及び低イオン強度の液体である。
【0052】
有利には、分散液に分散させられた本発明に係る式(A)の固体材料の粒子は表面荷電粒子である。この表面電荷は、電気泳動移動度測定によって当業者に知られた方法で決定される。特に、低イオン強度の分散液は、粒子の電荷に関して遮蔽定数をつくらないように適合化される。
【0053】
有利には、本発明によれば、式(A)の固体材料は、吸光分光法において、0.9eVから2.8eV、特に1.0eVから1.8eV、好ましくは1.3eVから1.6eVの禁制帯域幅を有している。有利には、式(A)の固体材料は、吸光分光法において、実質的におよそ1.5eVの禁制帯域幅を有している。
【0054】
そのような式(A)の固体材料の禁制帯域幅は、UV−VIS−NIR吸光度計、つまり紫外、可視、及び近赤外波長範囲をカバーする分光計によって吸光分光法で決定される。禁制帯域に対応するエネルギー値は、例えば"Material Research Bulletin, (2008), 43, 2742-2750"に記載された方法によって実験的に決定される。このため、粒子の分散物の吸光度の変動をプロットし、吸収係数αの値がそれから決定される。曲線(α.h.υ)がエネルギー(h.υ)の関数としてプロットされ、ここで、
− hはプランク定数であり、
− αは吸収係数であり、
− υは入射放射線の周波数であり、
曲線(α.h.υ)に正接する直線Dが高エネルギーに向けてエネルギー(h.υ)の関数としてプロットされる。直線Dは、禁制帯域に対応するエネルギーの値(Eg)でx軸(エネルギー)に交差する。
【0055】
有利には、そのような式(A)の固体材料の禁制帯域幅は、ガラス基板上の本発明に係る粒子の分散液の周辺温度での蒸発によって得られる粒子の膜で決定される。
【0056】
有利には、その粒径が15nmから400nmである式(A)の固体材料の粒子に対して測定される禁制帯域幅は、0.9eVから2.8eVである。有利には、その粒径が25nmから300nmである式(A)の固体材料の粒子に対して測定される禁制帯域幅は、1.0eVから1.8eVである。有利には、その粒径が25nmから100nmであり、実質的におよそ粒子の平均相当直径の単結晶ドメイン(単結晶粒子)を有する式(A)の固体材の粒子に対して測定される禁制帯域幅は1.3eVから1.6eVである。
【0057】
有利には、本発明によれば、式(A)の固体材料を構成する粒子は、X線回折によって測定して4nmから100nm、特に5nmから80nmの平均サイズを有する結晶ドメインと呼ばれる少なくとも一のドメインを有し、該結晶ドメインは単結晶構造を有している。本発明に係る式(A)の固体材料を形成する粒子の結晶ドメインの平均径は、それ自体知られているX線回折分析法(DRX)、特にデバイ−シェラー式の適用によって、当業者によって決定される。
【0058】
有利には、本発明によれば、式(A)の固体材料は、ラマン分光法によって、310cm−1から340cm−1、特に330cm−1から340cm−1、特に実質的におよそ336cm−1の波数値で最大散乱強度を有する一次線と呼ばれる散乱線を有している。
【0059】
有利には、本発明によれば、一次線は、5cm−1から60cm−1、特に10cm−1から60cm−1の半分の高さでの線幅を有している。
【0060】
有利には、本発明に係る材料の第一変形例では、式(A)の固体材料は多結晶粒子から形成される。 そのような多結晶粒子では、式(A)の固体材料を構成する粒子の結晶ドメインの平均相当直径は、X線回折によって測定して、上記粒子の平均相当直径よりも少ない。
【0061】
この第一の変形例において、本発明によれば有利には、式(A)の固体材料は、15nmから400nmの平均相当直径及び4nmから20nmである結晶ドメインの平均サイズを有している粒子から形成される。
【0062】
有利には、本発明に係る材料のこの第一の変形例では、式(A)の固体材料は、ラマン分光法によって、330cm−1から340cm−1、特に実質的におよそ336cm−1の波数値で最大散乱強度を有し、10cm−1から60cm−1の半分の高さでの線幅を有する一次線と呼ばれる散乱線を有している。
【0063】
有利には、本発明の第二の変形例によれば、式(A)の固体材料は、15nmから300nmの平均相当直径を有し、その結晶ドメインの平均サイズが15nmから80nmである多結晶粒子から形成される。
【0064】
そのような多結晶粒子では、式(A)の固体材料を構成する粒子の結晶ドメインの平均直径は、X線回折によって測定して、上記粒子の平均相当直径よりも少ない。
【0065】
有利には、本発明に係る材料のこの第二の変形例では、式(A)の固体材料は、ラマン分光法によって、330cm−1から340cm−1、特に実質的におよそ336cm−1の波数値で最大散乱強度を有し、5cm−1から40cm−1の半分の高さでの線幅を有する一次線と呼ばれる散乱線を有している。
【0066】
有利には、本発明の第三の変形例によれば、X線回折によって測定される式(A)の固体材料を構成する粒子の結晶ドメインの平均サイズは、実質的に上記粒子の平均相当直径の大きさのオーダーである。
【0067】
有利には、本発明に係る式(A)の固体材料のこの第三の変形例では、式(A)の固体材料を構成する粒子は単結晶粒子である。そのような単結晶粒子は、電子顕微鏡によって決定して、X線回折によって決定された結晶ドメインの平均直径の大きさのオーダーであるか又は特に実質的にそれに等しい平均相当直径を有している。有利には、式(A)の固体材料は単結晶粒子から形成される。
【0068】
この第三の変形例において、本発明によれば有利には、式(A)の固体材料は、25nmから100nm、特に30nmから60nmの平均相当直径を有し、その結晶ドメインの平均サイズが25nmから100nmである粒子から形成される。
【0069】
有利には、本発明に係る材料のこの第三の変形例では、式(A)の固体材料は、ラマン分光法によって、330cm−1から340cm−1、特に実質的におよそ336cm−1の波数値で最大散乱強度を有し、5cm−1から18cm−1の半分の高さでの線幅を有する一次線と呼ばれる散乱線を有している。
【0070】
有利には、本発明によれば、 式(A)の固体材料は、ラマン分光法によって、260cm−1から295cm−1、特に260cm−1から285cm−1の波数値で最大散乱強度を有する二次散乱線を有している。
【0071】
有利には、式(A)の固体材料は、ラマン分光法によって、355cm−1から375cm−1、特に360cm−1から370cm−1、好ましくはおよそ365cm−1の波数値で最大散乱強度を有する更なる二次散乱線を有している。
【0072】
有利には、硫黄前駆体の分解産物の残りが存在している場合、式(A)の固体材料の硫黄の含有量dは4よりも大きい場合がありうる。
【0073】
本発明の特定の実施態様では、固体材料は、
・1.6<a<2.4;
・u=0;
・0.6<b<1.2;
・v=0;
・0.6<c<1.2;
・w=0;
・y=0;
・3.5<d<4.5;
・x=0
である式(A)のものである。
【0074】
一実施態様において、本発明に従って有利には、固体材料は、式(A)から誘導された次の式(A):
(Cu+1;Zn+2;Sn+4;S−2) (A
のものであり、ここで、a=2;u=0;b=1;v=0;c=1;w=0;y=0;d=4及びx=0である。
【0075】
本発明の他の特定の実施態様では、固体材料は、
・1.6<a<2.4;
・u=0;
・0.6<b<1.2;
・0≦v<0.5;
・0.6<c<1.2;
・w=0;
・y=0;
・3.5<d<4.5;
・x=0
である式(A)のものである。
【0076】
この実施態様では、本発明によれば有利には、固体材料は、式(A)から誘導された次の式(A):
(Cu+1;Zn+2b−v;Cd+2;Sn+4;S−2) (A
のものであり、ここで、a=2;u=0;0.6<b<1.2;0≦v<0.5;c=1;w=0;y=0;d=4及びx=0である。
【0077】
より特定的には、本発明によれば有利には、固体材料は、
− a=2;
− u=0;
− b=1;
− 0≦v<0.5;
− c=1;
− w=0;
− y=0;
− d=4;
− x=0
である式(A)のドープ材料である。
【0078】
有利には、本発明によれば、固体材料は、式(A)から誘導された式(A):
(Cu+1;Zn+20.75;Cd+20.25;Sn+4;S−2) (A
のドープ材料であり、ここで、a=2;u=0;b=1;v=0.25;c=1;w=0;y=0;d=4及びx=0である。
【0079】
本発明の他の特定の実施態様では、固体材料は、
− 1.6<a<2.4;
− u=0;
− 0.6<b<1.2;
− 0≦v<0.5;
− 0.6<c<1.2;
− w=0;
− 0≦y<0.5;
− 3.5<d<4.5;
− x=0;
+3が、ガリウム(Ga)のカチオン、インジウム(In)のカチオン及びイットリウム(Y)のカチオンからなる群から選択される式(A)のドープ材料である。
【0080】
本発明のこの特定の実施態様では、有利には、ドープ固体材料は、式(A)から誘導された式(A):
(Cu+1;Zn+20.75;Ga+30.5;Sn+40.75;S−2) (A
のものであり、ここで、+3はGa+3;a=2;u=0;b=1;v=0;c=1;w=0;y=0.5;d=4及びx=0である。
【0081】
本発明の他の特定の実施態様では、固体材料は、
− 1.6<a<2.4;
− u=0;
− 0.6<b<1.2;
− v=0;
− 0.6<c<1.2;
− 0≦w<0.5;
− w=0;
− 3.5<d<4.5;
− x=0;
+4がチタン(Ti)のカチオン、ジルコニウム(Zr)のカチオン及び鉛(Pb)のカチオンからなる群から選択される式(A)のドープ材料である。
【0082】
本発明のこの特定の実施態様では、有利には、固体材料は、式(A)から誘導された式(A):
(Cu+1;Zn+2;Sn+4c−w;Zr+4;S−2) (A
のドープ材料であり、ここで、+4はZr+4;a=2;u=0;b=1;v=0;c=1;0≦w<0.5;y=0;d=4及びx=0である。
【0083】
本発明の他の特定の実施態様では、固体材料は、式(A)から誘導された式(A):
(Cu+1a−u;Ag+1;Zn+2;Sn+4;S−2) (A
のドープ材料であり、ここで、1.6<a<2.4;0≦u<0.5;0.6<b<1.2;v=0;0.6<c<1.2;w=0;y=0;3.5<d<4.5及びx=0である。
【0084】
本発明の他の特定の実施態様では、固体材料は、式(A)から誘導された式(A):
(Cu+1;Zn+2;Sn+4;S−2d−x;Se−2) (A
のドープ材料であり、ここで、1.6<a<2.4;u=0;0.6<b<1.2;v=0;0.6<c<1.2;w=0;y=0;3.5<d<4.5及び0≦x<0.5である。
【0085】
有利には、本発明によれば、式(A)の固体材料は、次の特徴の少なくとも一つを有しうる:
− 銅(Cu+1)のカチオンの一部が銀(Ag+1)のカチオンに置き換えられる、
− 亜鉛(Zn+2)のカチオンの一部がカドミウム(Cd+2)のカチオンに置き換えられる、
− スズ(Sn+4)のカチオンの一部がチタン(Ti+4)のカチオン、ジルコニウム(Zr+4)のカチオン又は鉛(Pb+4)のカチオンに置き換えられる、
− 亜鉛(Zn+2)のカチオン及びスズ(Sn+4)のカチオンの同じ部分が、ガリウム(Ga+3)のカチオン、インジウム(In+3)のカチオン及びイットリウム(Y+3)のカチオンからなる群から選択されたカチオンに置き換えられる、
− 硫黄(S−2)のアニオンの一部がセレン(Se−2)のアニオンによって置き換えられる。
【0086】
本発明は、また式(A)の固体材料を得るための方法にも拡張される。
【0087】
本発明はまた本発明に係る式(A)の固体材料(1)を得る方法に関し、該方法は、
− (a)式(A)の固体材料を構成する各元素の少なくとも一つの前駆体を選択する工程;
− (b)前駆体の組成物と呼ばれる固体組成物を、式(A)の固体材料を構成する各元素の前駆体を混合することによって調製する工程;及びついで
− (c)前駆体の組成物をおよそ周辺温度の温度で不活性ガス雰囲気下で容器に配する工程;
− (d)前駆体の組成物を、溶融塩工程と呼ばれる工程中に、0.5℃/分から10.0℃/分であり、容器の温度が250℃から500℃の合成温度に達するように適合化された温度上昇速度で、加熱し、該合成温度が、X線回折によって単一構造を有する再結晶材料を形成するように2時間から36時間の合成期間と呼ばれる期間、維持される工程;ついで
− (e)再結晶化材料の冷却後に、前駆体を含まない式(A)の固体材料の分離処理を実施する工程;
− (f)工程(a)から(e)に続いて、前駆体を含まない式(A)の固体材料にその粒径の低減工程を、特に粉砕により、施す工程;ついで、
− (g)粒径が低減させられた材料の粒子の選択工程をついで実施し、最小の粒径を有する粒子を保持するようにされた工程
を具備する。
【0088】
本発明者は、250℃から500℃、特に350℃から450℃の温度での前駆体の組成物のそのような溶融塩処理が、沈殿又は好ましくは上記前駆体組成物の再結晶化に伴う溶解/再沈殿によって、式(A)の固体材料の結晶及びナノメートルサイズの粒子の形成を可能にすることを知見した。全く驚いたことに、発明者は、前駆体、特に殆ど結晶化されない前駆体の粉末の組成物のそのような溶融塩処理が、粉末の粒子径の実質的な変更を伴わないで、前駆体の組成物を構成する粒子の結晶ドメインのサイズ及び結晶学的品質を増大させることが可能になることを知見した。
【0089】
この現象に対する説明は分からないが、発明者は、上記前駆体の加熱時に、カチオン性及びアニオン性前駆体に構成的に結合した水が、構造的水による溶融反応媒質のバブリング及び反応体積の拡大を伴う再配列を引き起こすと考える。
【0090】
有利には、本発明によれば、かかる方法において、
− 前駆体の組成物を構成する元素Cu、Ag、Zn、Cd、Sn、X及びXの各モル比(a’、u’、b’、v’、c’、y’及びw’)が、式(A)の固体材料の各化学量論比a、u、b、v、c、y及びwであり、
− 前駆体の組成物を構成する元素S及びSeの各モル比(d’及びx’)が、合計(d’+x’)が5から30、特に8から25であるようなものであり、
− 上記値(a’、u’、b’、v’、c’、y’、w’、d’及びx’)が固体材料(A)の電気的中性の条件を満たすように適合化される。
【0091】
有利には、本発明によれば、
− 銅(Cu)の前駆体は、塩化銅(I)(CuCl)、塩化銅(II)二水和物(CuCl2HO)、硝酸銅(Cu(NO)、酢酸銅((CHCOO)Cu)、新たに調製されたCu水酸化物及び新たに調製されたCu(オキシ)水酸化物からなる群から選択され;
− スズ(Sn)の前駆体が、塩化スズ五水和物(SnCl5HO)、酢酸スズ((CHCOO)Sn)、新たに調製されたSn+4水酸化物及び新たに調製されたSn+4(オキシ)水酸化物からなる群から選択され;
− 亜鉛(Zn)の前駆体が、塩化亜鉛(ZnCl)、酢酸亜鉛((CHCOO)Zn)、新たに調製されたZn+2水酸化物及び新たに調製されたZn+2(オキシ)水酸化物からなる群から選択され;
− アニオンの前駆体が、チオシアン酸カリウム(K−S−C≡N)、チオ尿素(S=C(NH)、硫化ナトリウム水和物(NaS,9HO)、硫化ナトリウム(NaS)、セレノシアン酸カリウム(K−Se−C≡N)及びセレノ尿素(Se=C(NH)からなる群から選択され;
− ドープ剤の前駆体が、硝酸銀(AgNO)、塩化ガリウム(GaCl)、塩化カドミウム(CdCl)、硝酸ガリウム(Ga(NO)、硝酸カドミウム(Cd(NO)、ヨウ化カドミウム(CdI)及び酢酸鉛((CHCOO)Pb)、硝酸イットリウム(Y(NO)、ガリウム(オキシ)水酸化物、鉛(オキシ)水酸化物及びイットリウム(オキシ)水酸化物からなる群から選択される。
【0092】
方法の第一の変形例において、本発明によれば有利には、前駆体の組成物に直接溶融塩工程が施される。
【0093】
本発明に係る方法のこの第一の変形例では、固体材料の前駆体の混合物が調製され、ついで、混合物に本発明に係る溶融塩処理が施される。15nmから400nm、特に25nmから300nm、特に25nmから100nmの平均相当直径を有し、式(A)の固体材料から形成される粒子の組成物が得られ、該固体材料は高度に結晶性である。
【0094】
方法の第二の変形例において、本発明によれば有利には、工程(a)後に、
−前駆体の溶液と呼ばれる溶液を、エチレングリコール、アセトニトリル及びアルコール、特にエチルアルコール及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも一の液体化合物を含む溶媒媒体と呼ばれる液体媒体中で式(A)の固体材料を構成する各元素の前駆体を混合することによって調製し;ついで
−前駆体の上記溶液のソルボサーマル処理と呼ばれる処理を、密閉反応器中において、140℃から250℃、特に180℃から220℃の温度で8時間から24時間、特に12時間から18時間の期間、実施し;ついで
−前駆体の上記溶液におけるソルボサーマル処理中に形成された固体の固/液分離工程を実施し;ついで
−微粉化された粉末を形成するために上記固体の粉砕を実施し;ついで
−微粉化された粉末に溶融塩工程を施す。
【0095】
ソルボサーマル処理では、密閉反応器の内部の圧力は、溶媒媒体中の前駆体の溶液の温度上昇のための自己生成圧力である。
【0096】
前駆体の溶液において、前駆体の溶液を構成する元素Cu、Ag、Zn、Cd、Sn、X及びXの各モル比(a”、u”、b”、v”、c”、y”及びw”)は、式(A)の固体材料の各化学量論比a、u、b、v、c、y及びwであり、
− 前駆体の溶液を構成する元素S及びSeの各モル比(d’及びx’)が、合計(d’+x’)が4から15,特に5から12であるものであり、
− 上記値(a”、u”、b”、v”、c”、y”、w”、d”及びx”)は、満たされるべき本発明に係る方法によって得られる式(A)の固体材料の電気的中性の条件を満たすように適合化される。
【0097】
この第二の変形例では、微粉化された粉末に、ついで、本発明に係る方法の溶融塩処理の継続する次工程(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)を施す。
【0098】
本発明に係る方法のこの第二の変形例では、X線回折によって4nmから12nmの平均サイズの結晶相とある割合のアモルファス材料を有する本発明に係る材料から形成される微粉化された粉末が最初に形成される。微粉化された粉末の粒子は、15nmから400nm、特に25nmから300nm、特に25nmから250nmの平均相当直径を有している。
【0099】
本発明者は、250℃から500℃、特に350℃から450℃の温度でのそのような微粉化された粉末の溶融塩処理が、大きなサイズの単結晶ドメインを有する本発明に係るナノメートルサイズの粒子の形成を可能にすることを知見した。
【0100】
本発明に係る方法のこの第二の変形例では、有利には、80%を越える単結晶粒子の割合を有する式(A)の固体材料が得られ、該粒子は、25nmから100nmの平均相当直径と、25nmから100nmの単結晶ドメインサイズを有する。
【0101】
本発明者は、前駆体の上記溶液のソルボサーマル処理中において硫黄(S)及びセレン(Se)からなる群から選択されるアニオンの高濃度の前駆体が、粒子が小さい平均相当直径であり、RX回折による分析により、小さいサイズの組織化された結晶ドメインを有している微粉化された固体の形成が可能になるように適合化されることを知見した。
【0102】
有利には、前駆体の溶液は、該前駆体の溶液中においてCu++イオンのCuイオンへの還元を可能にするように適合化された少なくとも一つの還元剤、特にアスコルビン酸を、0.5から1.5、好ましくは0.8から1.2のモル比還元剤/銅(Cu)で更に含む。
【0103】
有利には、前駆体の溶液中のCu++イオンのモル濃度は0.02Mから0.2M、好ましくは0.02Mから0.05Mである。
【0104】
有利には、前駆体の溶液は、上記前駆体溶液中において水酸化物イオンを生成可能な所定量の少なくとも一の塩基性化合物を含有する。有利には、塩基性化合物は、水酸化ナトリウム、アンモニア、及び水酸化テトラメチルアンモニウム(TMaOH)からなる群から選択される。
【0105】
有利には、本発明によれば、溶融塩工程中に、上記容器の温度上昇速度が1℃/分から2℃/分であり、合成温度が350℃から460℃である。
【0106】
有利には、本発明によれば、不活性ガスはアルゴン(Ar)及び分子窒素(N)からなる群から選択される。
【0107】
本発明は、本発明の変形例の一つによる方法によって得られた式(A)の固体材料にも関する。
【0108】
本発明は、8より大きいδ値、特に8から20のδ値と、5より大きいδ値、特に5から40のδ値を有する少なくとも一の化合物から形成された、分散液と呼ばれる液体媒体中の式(A)の上記固体材料の分散物が調製される本発明に係る式(A)の固体材料の使用に更に関する。
【0109】
本発明は、8より大きいδ値、特に8から20のδ値と、5より大きいδ値、特に5から40のδ値を有する少なくとも一の化合物から形成された、分散液と呼ばれる液体媒体中の式(A)の上記固体材料の分散物が調製される本発明に係る方法により得られた式(A)のそのような固体材料の使用にまた関する。
【0110】
有利には、本発明によれば、上記分散物は、0.1μmから5μm、特におよそ2μmの厚みを有する粒子の上記分散物の膜を形成するために、固体表面、特に太陽電池の電極材料の外表面に塗布される。
【0111】
有利には、その合計(δ+δ)が22より大きい少なくとも一の化合物から形成される分散液が使用される。特に、分散液はその合計(δ+δ)が22より大きい単一の化合物から形成される。
【0112】
有利には、エチルアルコール、アセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド及び硫黄を含む溶媒からなる群から選択される分散液が使用される。
【0113】
太陽電池用の膜のそのような製造方法では、セレンの分圧を含む不活性ガスの組成物の、不活性ガス雰囲気下で、又は400℃から600℃の温度で不活性ガスの減圧下で上記膜を焼結することにより、緻密化工程を実施することができる。
【0114】
本発明は、そのような分散液中の本発明に係る式(A)の少なくとも一の固体材料の分散物にも拡張される。有利には、本発明によれば、分散液は揮発性溶媒からなる群から選択される。
【0115】
有利には、分散液中の式(A)の上記固体材料の粒子の分散物は、10g/lより多い分散液中の式(A)の上記固体材料の濃度を有している。分散液中の式(A)の上記固体材料のそのような分散物は、上記分散物の撹拌を伴わないで、2時間の期間、特に6時間の期間、特に48時間の期間、好ましくは96時間の期間後に、70重量%以上、特に80重量%以上、好ましくは90重量%以上の式(A)の固体材料が分散液中に懸濁して残るように適合化された安定な分散物である。
【0116】
有利には、分散液中の式(A)の固体材料のそのような分散物は、任意の添加剤、特に有機化合物、特に式(A)の固体材料表面張力を改変し、懸濁中のそのような材料の沈殿を遅延させうる界面活性化合物又は高分子電解質、又は焼結前に膜の機械的強度を改善することが可能な有機バインダーを添加しないで調製される。
【0117】
有利には、分散液は強い極性相互作用(δ)及び強い水素相互作用(δ)を生じる溶媒からなる群から選択される。これらのパラメーターは "Handbook of solubility parameters and other cohesive parameters, 1983, CRC press, p. 153-157"に列挙されている。従って、より詳細には、エチルアルコール(δ=8.8、δ=19.4)、アセトニトリル(δ=18、δ=6.1)、エチレングリコール(δ=11、δ=26)及びジメチルスルホキシド(δ=16.4、δ=10.2)、プロピレングリコール(δ=9、δ=22)、メタノール(δ=13、δ=21)及びジメチルホルムアミド(δ=14、δH=11)からなる群から選択される少なくとも一の溶媒が選択される。
【0118】
有利には、分散液は、100℃以下の大気圧での沸点を有する溶媒、特にエチルアルコール(CH−CH−OH)及びアセトニトリル(CH−C≡N)からなる群から選択される。
【0119】
有利には、本発明によれば、分散液中の式(A)の上記固体材料のそのような分散物は、太陽電池の光吸収膜、特に薄い厚みの光吸収膜、特に実質的に2μmの厚みを有する光吸収膜の製造に使用される。
【0120】
本発明は、太陽電池の光吸収膜に更に関し、該膜は、本発明に係る式(A)の固体材料から形成される。
【0121】
粒子がナノメートルサイズであり、高度の結晶性構造を有しているそのような式(A)の固体材料は、従来技術の太陽電池材料と比較して増加した効率で電気エネルギーへ太陽エネルギーを変換させる光吸収膜の形成を可能にするように適合化される。
【0122】
有利には、本発明によれば、そのような粒子の組成物は光触媒膜の製造に使用される。
【0123】
本発明はまたこれまでに又は以下に記載される特徴の全て又は幾つかを組み合わせることを特徴とする、式(A)の固体材料、そのような材料の製造方法、そのような材料の溶媒中の分散物、及び太陽電池の製造におけるそのような分散物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0124】
本発明の他の目的、特徴及び効果は、本発明の好ましい実施態様を示す添付図面、並びに本発明に係る方法の非限定的な実施例を参照しての次の記載を読むと明らかになろう。
【図1】本発明に係る方法の第一の変形例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る方法の第二の変形例を示す概略図である。
【図3】実施例2に従って得られた式(A)のドープ固体材料のX線回折図である。
【図4】実施例4に従って得られた式(A)の固体材料のX線回折図である。
【図5】実施例7に従って得られた式(A)の固体材料のX線回折図である。
【図6】実施例8に従って得られた式(A)の固体材料のラマンスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0125】
図1に示された本発明に係る方法では、前駆体の組成物15は、銅の前駆体11、スズの前駆体12、亜鉛の前駆体14及び硫黄の前駆体13の混合工程2中に調製される。混合工程2は、粉末形態での固体前駆体の実質的に均一な混合を可能にする当業者に知られた適切な手段によって実施される。
【0126】
図示しない変形例では、混合工程2の間に、銀、ガリウム、インジウム、カドミウム、チタン、ジルコニウム、鉛及びセレンのカチオンの前駆体からなる群から選択されるドーピング元素の少なくとも一の前駆体化合物が加えられる。
【0127】
固体前駆体の組成物15が、不活性ガス組成物の雰囲気下、周辺温度で、容器に配される。上記容器は、溶融塩工程3において、容器中の固体前駆体の組成物15の温度が0.5℃/分から10℃/分の温度上昇速度で合成温度値まで増加し、これが2時間から36時間の期間、維持されるように加熱される。容器の温度を周辺温度まで自然に冷却させた後に、容器内にX線回折で単一線を有する式(A)の再結晶化材料16が得られる。再結晶化材料16に残留前駆体の除去工程3を施し、その間に、再結晶化材料16を溶液中に維持しながら、過剰な残留前駆体11、12、13、14、及び場合によっては形成された副産物を溶解させるように再結晶化材料16が水に取り上げられる。残留前駆体11、12、13、14を実質的に含まない再結晶化材料17がついで固/液分離処理によって回収される。
【0128】
再結晶化材料17に、小粒径の固体材料18を形成するように適合化された上記再結晶化材料17の摩擦粉砕による粉砕工程5を施す。結晶化材料17の粉砕工程5の後に、最小粒径を有する粒子の選択処理6が実施され、その間に、そのサイズの関数として固体材料(1)の粒子の差別沈降を可能にするように適合化された少なくとも一の分画遠心工程が実施される。
【0129】
図2に示す本発明に係る方法では、溶媒媒体20中の銅の前駆体11、スズの前駆体12、亜鉛の前駆体14及び硫黄の前駆体13の溶液22が溶解21によって調製される。溶媒媒体中の前駆体11、12、13、14のこの溶解工程21は、それ自体既知の手段、特に周辺温度に近い温度での磁気撹拌によって実施される。
【0130】
図示しない変形例では、前駆体の溶解工程21の間に、銀、ガリウム、インジウム、カドミウム、チタン、ジルコニウム、鉛及びセレンのカチオンの前駆体からなる群から選択されるドーピング元素の少なくとも一の前駆体化合物が加えられる。
【0131】
図示しない他の変形例では、溶解工程21の間に、前駆体の溶液22中にCu++及びCuイオンの還元を可能にするように適合化された所定量の少なくとも一の還元化合物が添加される。
【0132】
前駆体の溶液22は、撹拌されず、これまでに140℃から250℃の温度まで加熱されている閉められ密封され、特に液密及び気密のオートクレーブ容器に配し、その熱工程23中に、前駆体の溶液22が8時間から24時間、その溶液中に維持される。前駆体の溶液22を周辺温度に戻した後、生じた固体残留物24と液体上清が固/液分離25、特に遠心分離によって分離される。遠心分離によって分離された上清を除去し、上記固体残留物24を周辺温度でエチルアルコールですすぐ。
【0133】
エチルアルコールですすいだ固体残留物24に、固体残留物24の粒径を減じるように適合化された粉砕処理26を施す。この粉砕処理26は、例えば磨砕機タイプの粉砕機のような、それ自体当業者に知られた装置を使用して実施される。固体残留物24にそのような粉砕処理26を施し、エチルアルコール中に懸濁させた固体残留物24を、エチル懸濁液中での固体残留物24の粒径の低減が可能になるように適合化された時間の間、0.3mmの粒径を有する固体材料のビーズの存在下に配する。
【0134】
固体材料のビーズは(特に濾過によって)除去され、微粉化された粉末27が得られ、これに、微粉化された粉末27の粒子の再結晶化の溶融塩工程3が施される。X線回折で単一線を有し、大きな平均結晶ドメインサイズの式(A)の再結晶化材料6が得られる。再結晶化材料16はついで図1に記載された様にして処理される。
【0135】
図示されない変形例では、微粉化された粉末27に、例えば400nmを越える粒径を有する粒子を沈降によって除去し、400nmより小さい粒径の粒子を懸濁状態に維持するように適合化された遠心分離による、最小粒径を有する粒子の選択工程が施される。
【0136】
実施例1−塩化物の形態の金属塩の粉末からのCu、Zn、Sn及びSに基づく固体材料の製造方法
0.674gの塩化銅(I)(CuCl,PROLABO,France,6.8mmol)、0.465gの塩化亜鉛(II)(ZnCl,ALDRICH,France,3.41mmol)、1.196gの塩化スズ(IV)(SnCl5HO,ACROS,France,3.41mmol)及び3.308gのチオシアン酸カリウム(K−S−C≡N,FLUKA ALDRICH,France,34mmol)を含有する粉末組成物が調製される。粉末組成物をミキサーに配し、(2,1,1,10)の(Cu,Zn,Sn,S)のモル比を有する均一混合物を形成する。
【0137】
溶融塩熱処理
粉末組成物がアルミナ坩堝に移され、それがその雰囲気の更新が可能なように適合化された反応容器に配される。上記反応器は縦の管状炉に配される。反応器の雰囲気には窒素ガス(N)がパージされる。周辺温度から400℃まで6時間で容器の温度を増大させるために炉によって坩堝が加熱される。尚も窒素ガス流下で24時間、400℃の温度が反応容器中において維持され、ついで、坩堝が周辺温度まで自然に冷却される。最初の粉末組成物に対して見かけの体積が増加した曝気された固体材料が得られる。
【0138】
固体材料の抽出
曝気された固体材料が、200mlの体積の水に取り上げられる。得られた水性懸濁液が、水中の残留塩及び過剰のチオシアネートを溶解させるために、撹拌しながら1時間、定温放置される。黒色の固体材料が得られ、沈降、特に1720gでの20分の遠心分離によって水性相から分離される。黒色の固体材料を200mlのエチルアルコールの溶液で再び洗浄し、得られた固体材料を空気中で周辺温度で乾燥させる。
【0139】
固体材料の粉砕
上記のようにして得られた10gの乾燥固体材料、およそ0.4mmの粒径を有する結晶性アルミナ(Al)から形成された27gの粉砕ビーズ、及び20mlのエチルアルコールを摩擦粉砕機の(40mm×85mmの有効寸法の)容器に配する。調製物に周辺温度で1時間の粉砕処理を施す。エチルアルコール懸濁液中の固体材料の上記懸濁液を濾過によって分離する。固体材料の上記懸濁液に周辺温度で20分間の1720gでの遠心分離工程を施す。固体材料と、取り除かれる液体上清を含む沈着物(C1)が得られる。先に回収した粉砕ビーズを600mlのエチルアルコールで洗浄し、洗浄懸濁液を形成し、洗浄懸濁液を沈着物(C1)に添加し、エチルアルコール中の固体材料の二次懸濁液を形成する。粉砕ビーズを洗浄する工程を繰り返し、ビーズ洗浄懸濁液を沈着物(C1)に加える。
【0140】
エタノール中の固体材料のこの懸濁液を超音波で処理し、周囲温度で20分間、1720gの速度で遠心分離を実施し、その間に固体材料を形成する粒子が沈降する。遠心分離上清を除去し、沈降した固体材料を1体積のアセトニトリル(CH−C≡N,ALDRICH,France)に分散させる。アセトニトリル中の固体材料の懸濁液を周囲温度で20分間500gで遠心分離する。沈殿物とアセトニトリル中の本発明に係る固体材料を含む黒色懸濁液が得られる。
【0141】
分析
透過電子顕微鏡による固体材料の分析は、その平均見かけ直径がおよそ0.2μmである個別化された粒子を示す。
【0142】
アセトニトリル懸濁液の乾燥後に得られる固体材料のX線回折スペクトルは単一(CuZnSnS)構造の特徴を有する。デバイ−シェラー法によるスペクトルの解析は、その平均見かけサイズがおよそ12nmである組織化された結晶ドメインを示している。
【0143】
実施例2−塩化物形態の金属塩溶液からのCu、Zn、Sn、Ga、Sに基づくドープ固体材料の製造方法
0.348gの塩化亜鉛(II)(ZnCl,ALDRICH,France,2.55mmol)、0.894gの塩化スズ(IV)(SnCl−5HO,ACROS,France,2.55mmol)及び0.672gの塩化銅(I)(CuCl,PROLABO,France,6.8mmol)を、46.1mlのエチルアルコール(0.119gのGaCl,1.705mmol)中の塩化ガリウム(III)(GaCl,ALDRICH,France)の溶液に加える。磁気撹拌と超音波処理によって塩種をエチルアルコールに溶解させる。エチルアルコールを80℃で減圧下で蒸発によって溶液から取り除く。4.95gのチオシアン酸カリウム(K−S−C≡N,51mmol)を、エチルアルコールの蒸発後に得られたペースト状の固体に添加する。混合物中のモル比(Cu、Zn、Sn、Ga、S)は(2、0.75、0.75、0.5、15)である。
【0144】
溶融、抽出及び粉砕工程を、実施例1に記載した実施態様に従って実施する。
【0145】
分析
透過電子顕微鏡によるこの固体材料の分析は、その平均見かけ直径がおよそ0.2μmであり、およそ25nmのサイズの一次晶子を有する個別化された粒子を示す。固体材料の懸濁液の乾燥後に得られる粉末のX線回折スペクトル(図3)は、線が2θの高い値に向けてオフセットしている単一(CuZnSnS)構造の特徴を有する。デバイ−シェラー法によるモデリングでの解析は、その平均見かけサイズがおよそ16nmである組織化された結晶ドメインを示している。ラマン散乱スペクトルは、その半分の高さでの幅が50cm−1で、330cm−1に中心を置く広い線を示している。
【0146】
更に、アセトニトリル中で調製された分散物のNIR−UV−VISによる分析は、2.23eVの禁制帯域幅を示している。
【0147】
実施例3−塩化物形態の金属塩粉末からのCu、Zn、Cd、Sn、Sに基づくドープ固体材料の製造
0.683gの塩化銅(I)(CuCl,6.9mmol)、0.352gの塩化亜鉛(II)(ZnCl,2.58mmol)、1.212gの塩化スズ(IV)(SnCl−5HO,3.46mmol)、0.189gの塩化カドミウム(II)(CdCl−2HO,0.86mmol)及び6.724gのチオシアン酸カリウム(K−S−C≡N,70mmol)を含有する粉末組成物を調製する。粉末組成物はそれ自体知られた方法によって均質化される。(2、0.75、0.25、1、20)のモル比の(Cu、Zn、Cd、Sn、S)の混合物が得られる。
【0148】
溶融塩処理
溶融塩処理は実施例1に従って実施されるが、合成温度は450℃である。抽出及び粉砕の工程は実施例1に記載された実施態様に従って実施される。
【0149】
分析
透過電子顕微鏡による固体材料の分析は、その平均見かけ直径がおよそ0.2μmであり、その相当直径がおよそ30nmである一次晶子を有する個別化された粒子を示す。
【0150】
乾燥後に得られる固体材料のX線回折スペクトルは、線が2θの低い値に向けてオフセットしている単結晶構造の特徴を有する。
【0151】
実施例4−塩化物の形態の金属前駆体のエタノール溶液のソルボサーマル処理によるCu、Zn、Sn、Sに基づく本発明に係る固体材料の調製
1.577gの塩化スズ(IV)水和物(SnCl 5HO,4.5mmol)、0.614gの塩化亜鉛(II)(ZnCl,4.5mmol)及び1.534gの塩化銅(II)(CuCl−2HO,9mmol)が200mlの無水エチルアルコールに導入される。そのようにして形成された金属塩の懸濁液は、該金属塩が無水エチルアルコールに完全に溶解するまで撹拌される。2.054gのチオ尿素(CS(NH,FLUKA ALDRICH,France,27mmol)がついでSn(IV)、Cu(II)及びZn(II)の溶液に加えられ、該溶液が周囲温度で10分間攪拌される。撹拌しながら周囲温度で、1.584gのアスコルビン酸(C,ALDRICH,France,9mmol)がついで加えられ、溶液の体積が無水エチルアルコールで240mlにされ、混合物が更に20分撹拌される。
【0152】
混合物がテフロン坩堝に配され、200℃の温度で16時間、オートクレーブ(Parrフラスコ)に配される。ついで、オートクレーブは自然の温度減少によって室温まで冷却される。沈殿物が得られ、周囲温度で20分間、1720gでの遠心分離によってエチルアルコールから分離される。沈殿物は240mlのエチルアルコールで2回洗浄され、沈殿物が遠心分離によって回収される。48時間の周囲温度での乾燥後に、沈殿物が計量される(m=1.4g)。
【0153】
固体材料の粉砕
上記のようにして得られた沈殿物、およそ0.3mmの粒径を有する結晶性アルミナ(Al)から形成された27gの粉砕ビーズ、及び15mlのエチルアルコールが摩擦粉砕機の(40mm×85mmの有効寸法の)容器に配される。調製物に、エチルアルコール懸濁液中の固体材料の形成を可能にするように適合化された1時間の粉砕処理が周辺温度で施される。粉砕ビーズ及び上記固体材料の懸濁液が濾過によって分離される。粉砕ビーズがエチルアルコールで洗浄され、その間に懸濁液が超音波及び磁気撹拌で交互に処理される。粉砕ビーズの連続的洗浄によって得られた固体材料を含む懸濁液が組み合わされて、およそ600mlの体積を有する固体材料の懸濁液が形成される。
【0154】
懸濁液が2080gで20分間遠心分離され、得られた沈着物と有色(褐色/黒色)上清が分離される。沈着物が1500mlのエチルアルコールに取り上げられ、懸濁液が超音波と磁気撹拌によって交互に処理され1720gで10分間、遠心分離される。上清が除去され、有色上清と混合され、本発明に係る固体材料の懸濁液が形成される。
【0155】
分析
透過電子顕微鏡による懸濁液のアリコート画分の分析は、実質的におよそ150nmの平均相当直径を有し、およそ10nmの平均相当直径を有する一次結晶の凝集物の形態である個別化物を示す。
【0156】
粒子の懸濁物が乾燥され、エチルアルコールが蒸発除去されて、質量が1.1gの粉末が形成される。粉末のX線回折スペクトル(図4)は、単一(Cu;Zn;Sn;S)構造を示す。デバイ−シェラー法により決定された組織化されたドメインのサイズは、その平均見かけ直径がおよそ10nmである組織化された結晶ドメインを示している。
【0157】
実施例5−多結晶粒子の処理による本発明に係るCu、Zn、Sn、Sに基づく本発明に係る固体材料の製造
実施例4に記載された方法で得られた粒子(Cu;Zn;Sn;S)の0.5gの粉末を1.66gのチオシアン酸カリウムと混合する。混合物中のモル比(S)/(Cu)は7.5である。アルミナ坩堝に配した混合物を、窒素雰囲気下、周囲温度で容器中に導入する。その温度が着実に増加し、150分で400℃に達するように容器を加熱し、ついで、400℃の温度を容器中で16時間維持する。容器を自然冷却させた後、焼成粉末を200mlの脱イオン水に取り上げ、残留チオシアネートが水に溶解するように、懸濁液を30分間の磁気撹拌によって均質化する。そのようにして得られた懸濁液を1700gで20分間遠心分離し、得られた固形物を200mlのエチルアルコールで洗浄する。1720gで20分間遠心分離し、エタノール性上清を除去した後、固体を周囲温度で乾燥させる。
【0158】
分析
粒子組成物の乾燥後に得られた粉末のX線回折スペクトルは、単一(CuZnSnS)構造を示している。デバイ−シェラー法によるモデリングでの分析は、その平均見かけサイズがおよそ60nmである組織化された結晶ドメインを示している。
【0159】
粒子の破砕を実施例1において上述したようにして実施し、粒子を1720gで10分の遠心分離によって選択する。上清を集め、乾燥させて、固体粒子の粉末を形成する。
【0160】
透過電子顕微鏡による固体粒子の粉末の分析は、その平均見かけ直径がおよそ150nmである個別化されたサブミクロンの粒子の組成物を示している。
【0161】
近赤外吸光分光法によって得られたスペクトルデータの分析は1.3eVの禁制帯域幅を示している。
【0162】
実施例6−エチレングリコール中でのソルボサーマル処理及び溶融塩処理による本発明に係るCu、Zn、Sn、Sに基づく本発明に係る固体材料の製造
2.555gの塩化銅(II)(CuCl−2HO;15mmol)、1.020gの塩化亜鉛(II)(ZnCl;7.5mmol)、2.625gの塩化スズ(IV)水和物(SnCl 5HO;7.5mmol)を300mlのエチレングリコール中に導入する。そのようにして形成された金属塩の懸濁液を、上記金属塩がエチレングリコールに完全に溶解するまで10分間撹拌する。5.705gのチオ尿素(CS(NH;75mmol)をついでSn(IV)、Cu(II)及びZn(II)の溶液に加え、上記溶液を周囲温度で20分間撹拌する。撹拌しながら、周囲温度で、6.075mlのメタノール中のTMaOHの溶液(TMaOH;15mmol)をついで加える。混合物を更に20分撹拌する。組成物中のモル比(Cu;Zn;Sn;S;OH)は(2;1;1;10;2)である。
【0163】
混合物を、200℃の温度で16時間、オートクレーブ(Parrフラスコ)に配されたテフロン坩堝に配する。ついで、オートクレーブを自然の温度減少によって周囲温度まで冷却する。沈殿物を得、周囲温度で20分間、1720gでの遠心分離によってエチルアルコールから分離する。沈殿物を300mlの水で3回、ついで300mlのエチルアルコールで1回洗浄する。沈殿物を遠心分離と48時間の周囲温度での乾燥によって回収する。
【0164】
エチルアルコール中の固体材料の粉砕
粉砕を実施例4に記載されているようにして実施する。粉砕ビーズの除去後、粉砕懸濁物を600mlのエチルアルコールに取り上げる。エチル相を吸引により除去し、得られた沈殿物を250mlのエチルアルコールで3回洗浄する。このようにして得られたエチル懸濁液を、最も大きな直径を有する粒子を沈降によって除去するために500gで10分間、遠心分離する。本発明に係る微細粒子を上清中に集める。
【0165】
分析
透過電子顕微鏡による懸濁液のアリコート画分の分析は、実質的におよそ20nmの平均相当直径を有し、およそ10nmの平均相当直径を有する一次結晶の形態である個別化物を示している。
【0166】
粒子の懸濁液を、そのX線回折スペクトルが、その平均見かけ直径がおよそ10nmの組織化されたドメイン示す微細化された粉末を形成するためにエチルアルコールの蒸発によって乾燥させる。
【0167】
実施例7−Cu、Zn、Sn、Sに基づく本発明に係る固体材料の製造
実施例6に記載された方法の終わりに得られた0.4gの粉末(Cu2; Zn; Sn; S4)を1.3 gのチオシアン酸カリウムと混合する。混合物中のモル比(S)/(Cu)は7である。アルミナ坩堝に配した混合物を周囲温度で窒素雰囲気下で容器中に導入する。その温度が着実に増加し、150分で400℃に達するように容器を加熱し、ついで、400℃の温度を容器中で16時間維持する。容器を自然冷却させた後、焼成粉末を300mlの脱イオン水に取り上げ、残留チオシアネートが水に溶解するように、懸濁液を30分間の磁気撹拌によって均質化する。そのようにして得られた懸濁液を1700gで20分間遠心分離し、得られた固形物を300mlのエチルアルコールで洗浄する。1720gで20分間遠心分離し、エタノール性上清を除去した後、固体を周囲温度で乾燥させる。
【0168】
分析
粒子組成物の乾燥後に得られた粉末のX線回折スペクトル(図5)は、単一(CuZnSnS)構造を示している。デバイ−シェラー法によるモデリングでの分析は、その平均見かけサイズがおよそ60nmである組織化された結晶ドメインを示している。
【0169】
粒子の破砕を実施例1において上述したようにして実施し、粒子を1720gで10分の遠心分離によって選択する。上清を集め、乾燥させて、固体粒子の粉末を形成する。
【0170】
透過電子顕微鏡による固体粒子の粉末の分析は、その平均見かけ直径がおよそ200nmである個別化され結晶化したサブミクロン粒子の組成物を示している。
【0171】
近赤外吸光分光法によって得られたスペクトルデータの分析は0.9eVの禁制帯域幅を示している。
【0172】
実施例8−金属塩化物塩から出発するエチレングリコール中でのソルボサーマル処理と続く溶融塩処理によるCu、Zn、Sn、Sに基づく本発明に係る固体材料の製造
1.73gの塩化スズ(IV)水和物(SnCl 5HO,つまり4.95mmol)、0.8gの塩化亜鉛(II)(ZnCl,5.85mmol)及び1.534gの塩化銅(II)(CuCl−2HO,9mmol)を200mlのエチレングリコール中に導入する。そのようにして形成された金属塩の懸濁液を、上記金属塩がエチレングリコールに完全に溶解するまで周囲温度で撹拌する。3.42gのチオ尿素CS(NH(FLUKA ALDRICH,France,45mmol)をついでSn(IV)、Cu(II)及びZn(II)の溶液に加え、該溶液を周囲温度で10分間撹拌する。3.645mlのメタノールMeOH中の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMaOH)の25%溶液(つまり9mM)を、ついで撹拌しながら周囲温度で加え、撹拌を30分継続する。溶液をエチレングリコール300mlにし、混合物を更に20分撹拌する。溶液中のモル比(Cu;Zn;Sn;S;OH)は(2;1.3;1.1;10;2)である。
【0173】
混合物をテフロン坩堝に配し、これを、撹拌せず、200℃の温度で16時間、容器に配されるオートクレーブ(Parrフラスコ)に配される。ついで、オートクレーブを自然の温度減少によって周囲温度まで冷却する。
【0174】
沈殿物を得、周囲温度で20分間、1720gでの遠心分離によって母液の液体溶液から分離する。沈殿物を300mlの水で洗浄し、沈殿物を周囲温度で20分間、1720gでの遠心分離によって回収する。水での沈殿物のこの洗浄操作は3回繰り返す。沈殿物をエチルアルコールですすぎ、遠心分離によって回収する。
【0175】
実施例8において上述された合成を同一の形で一回繰り返し、得られた二つの沈殿物を集める。周囲温度で48時間の乾燥後、沈殿物を計量する(m=4g)。
【0176】
固体材料の粉砕
上で得られた沈殿物(4g)、ZrO−Yから形成された32gの破砕ビーズ(粒径およそ0.3mm)及び10mlのエチルアルコールを摩擦粉砕機の容器に配する。調製物に周囲温度で4時間の粉砕処理を施す。10mlのエチルアルコールを加え、粉砕を更に4時間継続する。粉砕した固形物の懸濁物を粉砕ビーズの存在下で12時間撹拌し、ついで、粉砕ビーズと上記固体材料の懸濁液を濾過によって分離する。
【0177】
粉砕ビーズをエチルアルコールで数回洗浄し、粉砕ビーズと固体材料の洗浄懸濁液を濾過によって分離する。粉砕ビーズの連続的洗浄によって得られた固体材料を含む懸濁液を組み合わせて、エチルアルコール中の固体材料の懸濁液を形成する。
【0178】
懸濁液の遠心分離を2080gで20分実施し、その間に、固体材料を含む粗固形沈着物と除去される液体上清が分離される。
【0179】
得られた粗固形沈着物を600mlのエチルアルコールに取り上げて懸濁させ、懸濁液を、超音波と磁気撹拌で交互に処理し、1470gで10分間遠心分離する。エチルアルコール中の本発明に係る固体材料の懸濁液からなる残留沈着物と有色(褐色/黒色)上清が得られる。残留沈着物の洗浄操作を連続で2回繰り返す。
【0180】
エチルアルコール中の固体材料の3つの懸濁液(全容量1800ml)を混合する。懸濁液中の微粉状態の固体材料CuZnSnSの濃度は0.8g/lである。懸濁液は密封ボトルに保存したとき4日以上、沈降に対して安定している。
【0181】
透過電子顕微鏡による懸濁液の分析を、上記懸濁液を超音波で処理し、膜に沈着させ、乾燥させた後に実施し、凝集物の形態のおよそ180nmのサイズを有する個別化されたナノ粒子が可視化される。凝集物はおよそ7nmのサイズを有している一次晶子により構成されている。
【0182】
X線回折による懸濁液のナノ粒子の分析は、CuZnSnS構造に起因する線の集合を示している。
【0183】
樹脂に分散させた固体材料の粒子を、5の統計的に代表的な観測場にわたる走査型電子顕微鏡(×2000倍率)(EDS−MEB)でのエネルギー分散型分光法によって分析する。測定したモル比Zn/Cu=1及びSn/Cu=1は、材料の化学量論組成を証明する。
【0184】
溶融塩熱処理
上で得られた0.5gの粒子(Cu;Zn;Sn;S)の粉末を1.66gのKSCNと混合する。混合物中のモル比(S)/(Cu)は7.5である。アルミナ坩堝に配した混合物を、窒素雰囲気下、周囲温度で容器中に導入する。その温度が着実に増加し、150分で500℃に達するように容器を加熱し、ついで、500℃の温度を容器中で6時間維持する。容器を自然冷却させた後、焼成粉末を200mlの脱イオン水に取り上げ、残留KSCNが水に溶解するように、懸濁液を30分間の磁気撹拌によって均質化する。そのようにして得られた懸濁液を1700gで20分間遠心分離し、上清を除去し、得られた固形物を20分の均質化によって200mlの脱イオン水に取り上げる。懸濁液(S1)が形成される。
【0185】
得られた懸濁液(S1)を、固形沈着物(C1)及び有色分散物(D1)を形成するために1720gで20分間遠心分離し、これに8000gで20分の遠心分離を施す。8000gでの遠心分離からの沈着物(C2)を20mlのエチルアルコールに分散させて、エチルアルコール中の本発明に係る固体材料の分散物(D1)を形成する。
【0186】
固形沈着物(C1)を200mlのエチルアルコールに取り上げ、20分間の磁気撹拌によって分散させて、懸濁液(S2)を形成する。1720gでの20分間の懸濁液(S2)の遠心分離により、有色分散液(D2)が形成され、これに8000gで20分間の遠心分離工程を施す。8000gでの遠心分離からの沈着物(C3)を20mlのエチルアルコールに分散させて、エチルアルコール中の本発明に係る固体材料の分散液(D3)を制する。分散液(D2)及び(D3)を混合する。得られた固体材料の粒子がエチルアルコール中で数日にわたって安定している分散液を形成する。
【0187】
透過電子顕微鏡による(D2)及び(D3)の分析は、およそ100nmのサイズを有し、板状及び/又は立方体状の形態を有している完全に個別化された粒子を示している。
【0188】
乾燥後の分散液(D2)及び(D3)のX線回折による分析はCuZnSnSに起因する線を示している。
【0189】
図6に示される分散液(D2)及び(D3)の粒子のラマンスペクトルは、200−400cm−1の領域に335cm−1を中心とする主線と、365及び284cm−1を中心とする二次線を示している。
【0190】
実施例9−金属塩化物塩から出発するイソプロパノール中でのソルボサーマル処理と溶融塩処理による本発明に係るCu、Zn、Sn、Sに基づく本発明に係る固体材料の製造
1.534gの塩化銅(II)(CuCl−2HO,9mmol)、1.577gの塩化スズ(IV)水和物(SnCl 5HO,つまり6.75mmol)及び0.922gの塩化亜鉛(II)(ZnCl,5.85mmol)を、200mlの無水イソプロパノール中に導入する。イソプロパノール中の金属塩の混合物を、上記塩がイソプロパノールに溶解するまで周囲温度でおよそ20分間、撹拌する。4.793gのチオ尿素CS(NH(FLUKA ALDRICH,France,63mmol)をついでSn(IV)、Cu(II)及びZn(II)の溶液に加え、上記溶液を周囲温度で10分間撹拌する。撹拌しながら周囲温度で、メタノール中の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMaOH)(つまり18mM)の7.29mlの25%溶液をついで加え、撹拌を30分継続する。
【0191】
1.584gのアスコルビン酸(C,ALDRICH,France,9mmol)を溶液に加える。溶液を無水イソプロパノールで240mlにし、混合物を更に20分撹拌する。溶液中のモル比(Cu;Zn;Sn;S;OH;アスコルビン酸)は(2;1.5;1;14;4;2)である。
【0192】
溶液を実施例8に記載されたようにオートクレーブで処理する。ついで、オートクレーブを、自然の温度低下によって周囲温度まで冷却する。
【0193】
沈殿物を得、周囲温度で20分間、1720gでの遠心分離によって母液の液体溶液から分離する。沈殿物を240mlの水で洗浄し、沈殿物を周囲温度で20分間、1720gでの遠心分離によって回収する。水での沈殿物のこの洗浄操作は3回繰り返す。沈殿物をエチルアルコールですすぎ、遠心分離によって回収する。
【0194】
実施例8において上述された合成を同一の形で一回繰り返し、得られた二つの沈殿物を集める。周囲温度で48時間の乾燥後、沈殿物を計量する(m=4g)。
【0195】
固体材料の粉砕工程を、実施例8に記載された粉砕方法に従って実施する。最終懸濁液中の微粉状態の固体材料CuZnSnSの濃度は0.8g/lである。懸濁液は密封ボトルで保存したとき、4日以上沈降に対して安定している。
【0196】
上記懸濁液を超音波で処理し、膜に沈着させ、乾燥させた後の透過電子顕微鏡による懸濁液の分析は、凝集物の形態のおよそ150nmのサイズを有する個別化されたナノ粒子を示す。凝集物はおよそ6nmのサイズを有している一次晶子により構成されている。X線回折による懸濁液のナノ粒子の分析は、CuZnSnS構造に起因する線の集合を示している。
【0197】
5の統計的に代表的な観測場にわたる走査型電子顕微鏡(×2000倍率)(EDS−MEB)でのエネルギー分散型分光法によるナノ粒子の分析は、モル比Zn/Cu=0.85及びSn/Cu=1.13を示している。
【0198】
溶融塩熱処理
上で得られた0.5gの粒子(Cu;Zn;Sn;S)の粉末を2.49gのKSCNと混合する。混合物中のモル比(S)/(Cu)は11.25である。アルミナ坩堝に配した混合物を、窒素雰囲気下、周囲温度で容器中に導入する。その温度が着実に増加し、150分で450℃に達するように容器を加熱し、ついで、450℃の温度を容器中で6時間維持する。容器を自然冷却させた後、実施例8に記載された方法による手順に従う。
【0199】
透過電子顕微鏡による(D2)及び(D3)の分析は、およそ150nmのサイズを有し、板状及び/又は立方体状の形態を有する完全に個々化された粒子を示す。
【0200】
乾燥後の分散物(D2)及び(D3)のX線回折による分析はCuZnSnSに起因する線を示している。得られた固体材料の粒子は、エチルアルコール中で数日間安定している分散物を形成している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(A):
(Cu+1a−u;Ag+1;Zn+2b−v−(y/2);Cd+2;Sn+4c−w−(y/2)+4+3;S−2d−x;Se−2) (A)
[上式中、
a、b、c、d、u、v、w、x及びy及びその算術組み合わせは、各数が式(A)において関連する各元素の原子分率を表す実数であり、
・ 1.6<a<2.4;
・ 0.6<b<1.2;
・ 0.6<c<1.2;
・ 3.5<d<4.5
となり;
・ u、v、w、x及びyは、互いに独立して、区間[0;0.5[に属する実数の集合に属し、
+4は、チタン(Ti)のカチオン、ジルコニウム(Zr)のカチオン及び鉛(Pb)のカチオンからなる群から選択され、
+3は、ガリウム(Ga)のカチオン、インジウム(In)のカチオン及びイットリウム(Y)のカチオンからなる群から選択される]
の固体材料(1)であって、
− 15nmから400nmの平均相当直径を有する粒子の形態の微粉状態にあり、
− X線回折による上記固体材料(1)の分析によって、単結晶構造を示し、かつ
− 8より大きいδ値と5より大きいδ値を有する少なくとも一の化合物から形成された、分散液と呼ばれる液体中の式(A)の少なくとも一の固体材料の安定な分散物を形成可能なように適合化されている固体材料(1)。
【請求項2】
分散液が、エチルアルコール、アセトニトリル、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、メタノール及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される請求項1に記載の材料(1)。
【請求項3】
吸光分光法において、0.9eVから2.8eVの禁制帯域幅を有している請求項1又は請求項2に記載の材料(1)。
【請求項4】
固体材料(1)を構成する粒子が、X線回折によって測定して4nmから100nmの平均サイズを有する結晶ドメインと呼ばれる少なくとも一のドメインを有し、該結晶ドメインは単結晶構造を有している請求項1から3の何れか一項に記載の材料(1)。
【請求項5】
多結晶粒子から形成されている請求項1から4の何れか一項に記載の材料(1)。
【請求項6】
式(A)の固体材料を構成する粒子が単結晶粒子である請求項1から4の何れか一項に記載の材料(1)。
【請求項7】
310cm−1から340cm−1の波数値で最大散乱強度を有する一次線と呼ばれる散乱線をラマン分光法によって有している請求項1から6の何れか一項に記載の材料(1)。
【請求項8】
一次線が5cm−1から60cm−1の半分の高さでの線幅を有している請求項7に記載の材料(1)。
【請求項9】
330cm−1から340cm−1の波数値で最大散乱強度を有する一次線と呼ばれる散乱線をラマン分光法によって有している請求項6に記載の材料(1)。
【請求項10】
上記一次線が、5cm−1から18cm−1の半分の高さでの線幅を有している請求項9に記載の材料(1)。
【請求項11】
260cm−1から285cm−1の波数値で最大散乱強度を有する一次線と呼ばれる散乱線をラマン分光法によって有している請求項1から10の何れか一項に記載の材料(1)。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の式(A)の固体材料(1)を得る方法において、
− (a)式(A)の固体材料(1)を構成する各元素の少なくとも一つの前駆体を選択する工程;
− (b)前駆体の組成物(15)と呼ばれる固体組成物を、式(A)の固体材料(1)を構成する各元素の前駆体を混合(2)することによって調製する工程;及びついで
− (c)前駆体の組成物(15)をおよそ周辺温度の温度で不活性ガス雰囲気下で容器に配する工程;
− (d)前駆体の組成物(15)を、溶融塩工程(3)と呼ばれる工程中に、0.5℃/分から10.0℃/分であり、容器の温度が250℃から500℃の合成温度に達するように適合化された温度上昇速度で、加熱し、該合成温度が、X線回折によって単一構造を有する再結晶材料(16)を形成するように2時間から36時間の合成期間と呼ばれる期間、維持される工程;ついで
− (e)再結晶化材料(16)の冷却後に、前駆体を含まない固体材料(17)の分離処理を実施する工程;
− (f)工程(a)から(e)に続いて、前駆体を含まない固体材料(17)にその粒径の低減工程(5)を施す工程;ついで、
− (g)粒径が低減させられた材料(18)の粒子の選択工程(6)を実施し、最小の粒径を有する粒子を保持するようにされた工程
を具備する方法。
【請求項13】
− 前駆体の組成物(15)を構成する元素Cu、Ag、Zn、Cd、Sn、X及びXの各モル比(a’、u’、b’、v’、c’、y’及びw’)が、式(A)の固体材料(1)の各化学量論比a、u、b、v、c、y及びwであり、
− 前駆体の組成物(15)を構成する元素S及びSeの各モル比(d’及びx’)が、合計(d’+x’)が5から30であるものであり、
− 上記値(a’、u’、b’、v’、c’、y’、w’、d’及びx’)が固体材料(1)の電気的中性の条件を満たすように適合化される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
− 銅(Cu)の前駆体が、塩化銅(I)(CuCl)、塩化銅(II)二水和物(CuCl2HO)、硝酸銅(Cu(NO)、酢酸銅((CHCOO)Cu)、新たに調製されたCu水酸化物及び新たに調製されたCu(オキシ)水酸化物からなる群から選択され;
− スズ(Sn)の前駆体が、塩化スズ五水和物(SnCl5HO)、酢酸スズ((CHCOO)Sn)、新たに調製されたSn+4水酸化物及び新たに調製されたSn+4(オキシ)水酸化物からなる群から選択され;
− 亜鉛(Zn)の前駆体が、塩化亜鉛(ZnCl)、酢酸亜鉛((CHCOO)Zn)、新たに調製されたZn+2水酸化物及び新たに調製されたZn+2(オキシ)水酸化物からなる群から選択され;
− アニオンの前駆体が、チオシアン酸カリウム(K−S−C≡N)、チオ尿素(S=C(NH)、硫化ナトリウム水和物(NaS、9HO)、硫化ナトリウム(NaS)、セレノシアン酸カリウム(K−Se−C≡N)及びセレノ尿素(Se=C(NH)からなる群から選択され;
− ドープ剤の前駆体が、硝酸銀(AgNO)、塩化ガリウム(GaCl)、塩化カドミウム(CdCl)、硝酸ガリウム(Ga(NO)、硝酸カドミウム(Cd(NO)、ヨウ化カドミウム(CdI)及び酢酸鉛((CHCOO)Pb)、硝酸イットリウム(Y(NO)、ガリウム(オキシ)水酸化物、鉛(オキシ)水酸化物及びイットリウム(オキシ)水酸化物からなる群から選択される、
請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前駆体の組成物(15)に溶融塩工程(3)を直接施す請求項12から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)後に、
−前駆体の溶液(22)と呼ばれる溶液を、エチレングリコール、アセトニトリル及びアルコールからなる群から選択される少なくとも一の液体化合物を含む溶媒媒体(20)と呼ばれる液体媒体中で式(A)の固体材料(1)を構成する各元素の前駆体を混合(21)することによって調製し;ついで
−前駆体の上記溶液(22)のソルボサーマル処理(23)と呼ばれる処理を、密閉反応器中において、140℃から250℃の温度で8時間から24時間の期間、実施し;ついで
−前駆体の上記溶液(22)におけるソルボサーマル処理(23)中に形成された固体残留物(24)の固/液分離工程(25)を実施し;ついで
−微粉化された粉末(27)を形成するために上記固体(24)の粉砕(26)を実施し;ついで
−微粉化された粉末(27)に溶融塩工程(3)を施す、請求項12から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
溶融塩工程(3)において、上記容器の温度上昇速度が1℃/分から2℃/分であり、合成温度が350℃から460℃である請求項12から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
不活性ガスがアルゴン(Ar)及び分子窒素(N)からなる群から選択される請求項12から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
8より大きいδ値と5より大きいδ値を有する少なくとも一の化合物から形成された、分散液と呼ばれる液体媒体中の上記固体材料の分散物が調製される請求項1から11の何れか一項に記載の固体材料(1)の使用。
【請求項20】
太陽電池の光吸収膜の製造における請求項19に記載の固体材料(1)の使用。
【請求項21】
光触媒膜の製造における請求項19に記載の固体材料(1)の使用。
【請求項22】
分散液と呼ばれる液体媒体中の式(A)の上記固体材料(1)の分散物を調製し、該分散物を、0.1μmから5μmの厚みを有する粒子の上記分散物の膜を形成するために固体表面に塗布する、請求項1から11の何れか一項に記載に記載の固体材料(1)の請求項20又は請求項21に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−504506(P2013−504506A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528422(P2012−528422)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051866
【国際公開番号】WO2011/030055
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510139564)ユニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ トロワ (5)
【出願人】(509016944)セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(シー.エヌ.アール.エス.) (5)
【出願人】(510138888)アンスティチュ ナショナル デ シアンス ザプリケ ドゥ トゥールーズ (3)
【出願人】(512063058)
【Fターム(参考)】