説明

微粉砕機

【課題】固定子と回転子の摩耗を、原料供給側と排出側において平均的に摩耗させ、耐摩耗寿命を延ばすと共に、粉砕動力の変動を無くし、有効消費動力を高め、その結果、処理能力を高めることができる微粉砕機を提供する。
【解決手段】固定子8の放射状粉砕溝8Aは、円弧状底面8cの曲率中心p2を中心として描いた溝内軌跡円c2が、該固定子の内径円8Mから飛び出さない範囲内で形成し、対向する急斜側面8aと緩斜側面8bは、互いに傾斜角度が異なっている。回転子7の放射状粉砕溝7Aは、円弧状底面7cの曲率中心p1を中心として描いた溝内軌跡円c1が、該回転子の外径円7Mから飛び出さない範囲内で形成し、対向する急斜側面7aと緩斜側面7bは、互いに傾斜角度が異なっている。さらに、原料供給側から排出側に向かって、固定子の内接円と回転子の外接円の間隙G、溝内軌跡円の半径、放射状溝のピッチpを段階的に小さく形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、熱可塑性樹脂微粉末、粉体塗料などの微粉を得るための微粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数ミリの原料を数ミクロンから10数ミクロンの微粉に粉砕する、回転式の微粉砕機として、次のものがある(例えば、特許文献1、参照)。
内表面に多数の粉砕溝が形成されている固定子と、該固定子の内側に間隙を介して同心に配設され、その外表面に多数の粉砕溝が形成されている回転子と、を備えた微粉砕機であって;前記固定子の粉砕溝は、固定子の中心線に直角な断面に、互いに対向する急斜側面と緩斜側面と、前記両側面に連続する円弧状底面とを有する放射状粉砕溝であり、前記放射状粉砕溝は、前記円弧状底面の曲率中心を中心として描いた溝内軌跡円が、該固定子の内径円から飛び出さない範囲内で形成されおり、前記急斜側面は、該固定子の中心と該急斜側面の先端とを通る直線に対して、5°〜30°の傾斜で前記溝内軌跡円にかぶさる方向の接線上に位置し、前記緩斜側面は、前記直線に対して30°〜60°の範囲で前記溝内軌跡円から遠ざかる方向の接線上に位置し、前記回転子の粉砕溝は、回転子の中心線に直角な断面に、互いに対向する急斜側面と緩斜側面と、前記両側面に連続する円弧状底面とを有する放射状粉砕溝であり、前記放射状粉砕溝は、前記円弧状底面の曲率中心を中心として描いた溝内軌跡円が、該回転子の外径円から飛び出さない範囲内で形成されおり、前記急斜側面は、該回転子の中心と該急斜側面の先端とを通る直線に対して、5°〜30°の傾斜で前記溝内軌跡円にかぶさる方向の接線上に位置し、前記緩斜側面は、前記直線に対して30°〜60°の範囲で前記溝内軌跡円から遠ざかる方向の接線上に位置し、前記同心に配設された固定子の内径円と回転子の外径円の間隙Gが、前記溝内軌跡円の半径rの1/2から2倍の範囲内である微粉砕機。
【0003】
前記従来例の微粉砕機は、次のような効果を奏する。
(1)従来のジェット気流を利用したジェット気流式粉砕機に比較して、粉砕電力エネルギーを格段に節約できる。
(2)過剰に粉砕される微粉、超微粉の発生が少なく、目的の粒度範囲の製品が得られるために製品収率が向上する。
(3)高速回転する回転子と固定子の壁面に気流に乗った粒子が衝突したり、回転子と固定子内で発生する高速渦流内でせん断作用によって粉砕されるために、粒子の形状が角が取れ 丸みを帯びるために、比表面積が小さくなり、流動性が良好となる。
【0004】
(4)トナーの粉砕においては、1回の粉砕で平均粉砕粒子径が8〜5ミクロンまで可能となり、製品が熱の影響を何度も繰返し受けないため、品質の劣化が進行せず、重合法トナーと同等な粒度のトナーを得る事が出来る。
(5)平均粉砕粒度が8〜5ミクロンまで到達できるため、分級機にかかるエネルギーが少なくなる。
(6)その結果、後工程において充填性に優れ、特に静電荷像現像用トナーにおいては外添加剤の添加量が少なくなる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−21768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記従来例には、次のような問題がある。
回転式微粉砕機においては、回転子が高速で回転することにより粉砕が行われる原理のために、回転子と固定子は原料粉末と激しく接触し、その結果 表面に摩耗が生じる。特に、硬く、かつ、フェライトやシリカなどの無機物が混入している、トナーや粉体塗料などの原料粉を粉砕すると、回転子と固定子で構成される粉砕室の粉砕表面の摩耗が著しく進行する。
そのため、従来は、表面に硬質クロームメッキをコーティングする方法、 タングステンカーバイトにコバルトを十数パーセント含有した粉末を高速フレーム溶射法で溶着する方法、 ニッケルクロム、シリコン、ボロン、鉄、を含有させた粉末を、溶射後加熱炉にいれて溶融密着させる方法、 ニッケルクロム鋼の母材表面に窒化をする方法などが行われてきた。
【0007】
しかし、いずれも磁性粉(フェライト等)が混入しているトナーや無機物の混入している樹脂粉末、粉体塗料などに対しては摩耗の進行が押さえらず、摩耗の進行と共に粉砕機としての性能の低下が著しかった。 また表面にタングステンカーバイトを貼り付けたり、ステライトを溶着した後、表面形状を所望の形状に切削する方法も技術的には可能であるが、コストが飛躍的に増大し、回転式粉砕機の経済的な優位性が損なわれてくるため現実的ではなかった。
【0008】
さらに、粉砕機の固定子と回転子を炭素を触媒とした無水クロム酸結晶水中に浸漬させた電気鍍金法により、その表面に耐摩耗性を有するクロムおよび炭化クロム合金皮膜を20〜100ミクロンの膜厚で、固定子及び回転子表面の形状を損なうことなくコーテングすることにより、固定子及び回転子の表面硬度を、ビッカース硬さ(HV)900から1200として保護する方法も摩耗寿命を延ばすことには効果があるが、いずれの方法によっても、原料供給側から摩耗が進行し、原料排出側は摩耗の進行が遅くなる傾向が顕著であり、原料供給側の部分の固定子と回転子の摩耗により消耗品寿命が決まってしまい、再生処理を行うか、又は消耗した固定子及び回転子を交換しなければならない状況が見られる。
【0009】
また、平均粒径8〜5ミクロンのトナーなど、微粉末製品を得るために、固定子の内接円と回転子の外接円の間隔Gを原料粒径に比較して狭くすると、供給原料と高速回転する回転子との衝撃も大きくなり、上記の摩耗の進行だけでなく、粉砕動力も粉砕領域全体に平均化せず、負荷変動が生じ、総エネルギーコストも高くなる状況が生じる。
【0010】
単純に、上記間隔Gを原料供給側を広くすると、製品粒度が粗くなり、所望の粒度の製品が得られなくなり、原料を粉砕機内を数回通して粉砕チャンスを増やしたり、または、2台以上の微粉砕機を直列に配して使用することが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、内表面に多数の粉砕溝が形成されている固定子と、該固定子の内側に間隙を介して同心に配設され、その外表面に多数の粉砕溝が形成されている回転子と、を備えた微粉砕機において;前記固定子の粉砕溝は、固定子の中心線に直角な断面に、互いに対向する急斜側面と緩斜側面と、前記両側面に連続する円弧状底面とを有する放射状粉砕溝であり、前記放射状粉砕溝は、前記円弧状底面の曲率中心を中心として描いた溝内軌跡円が、該固定子の内径円から飛び出さない範囲内で形成されおり、前記急斜側面と前記緩斜側面は、互いに傾斜角度が異なっており、前記回転子の粉砕溝は、回転子の中心線に直角な断面に、互いに対向する急斜側面と緩斜側面と、前記両側面に連続する円弧状底面とを有する放射状粉砕溝であり、前記放射状粉砕溝は、前記円弧状底面の曲率中心を中心として描いた溝内軌跡円が、該回転子の外径円から飛び出さない範囲内で形成されおり、前記急斜側面と前記緩斜側面は、互いに傾斜角度が異なっており、前記同心に配設された固定子の内径円と回転子の外径円の間隙、前記溝内軌跡円の半径及び放射状粉砕溝のピッチが、原料供給側から排出側に向かって段階的に小さく形成されていることを特徴とする微粉砕機、である。
【0012】
この発明は、内表面に多数の粉砕溝が形成されている固定子と、該固定子の内側に間隙を介して同心に配設され、その外表面に多数の粉砕溝が形成されている回転子と、を備えた微粉砕機において;前記固定子の粉砕溝は、固定子の中心線に直角な断面に、互いに対向する急斜側面と緩斜側面と、前記両側面に連続する円弧状底面とを有する放射状粉砕溝であり、前記放射状粉砕溝は、前記円弧状底面の曲率中心を中心として描いた溝内軌跡円が、該固定子の内径円から飛び出さない範囲内で形成されおり、前記急斜側面は、該固定子の中心と該急斜側面の先端とを通る直線に対して、5°〜30°の傾斜で前記溝内軌跡円にかぶさる方向の接線上に位置し、前記緩斜側面は、前記直線に対して30°〜60°の範囲で前記溝内軌跡円から遠ざかる方向の接線上に位置し、前記回転子の粉砕溝は、回転子の中心線に直角な断面に、互いに対向する急斜側面と緩斜側面と、前記両側面に連続する円弧状底面とを有する放射状粉砕溝であり、前記放射状粉砕溝は、前記円弧状底面の曲率中心を中心として描いた溝内軌跡円が、該回転子の外径円から飛び出さない範囲内で形成されおり、前記急斜側面は、該回転子の中心と該急斜側面の先端とを通る直線に対して、5°〜30°の傾斜で前記溝内軌跡円にかぶさる方向の接線上に位置し、前記緩斜側面は、前記直線に対して30°〜60°の範囲で前記溝内軌跡円から遠ざかる方向の接線上に位置し、前記同心に配設された固定子の内径円と回転子の外径円の間隙Gが、前記溝内軌跡円の半径rの1/2から2倍の範囲内であり、前記間隔Gが、原料供給側から排出側にむかって、2.0mmから0.5mmに段階的に小さく形成されていることを特徴とする微粉砕機、である。
【0013】
又、この発明は、原料供給側から排出側に向かって、固定子及び回転子の前記溝内軌跡円の半径rを2.0mmから0.4mm、放射状粉砕溝のピッチpを6.0mmから2.0mmに段階的に小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明の微粉砕機を使用することにより、回転子及び固定子の摩耗進行状況は、従来のように極端に原料供給側が摩耗し、原料排出側が摩耗しない状況がなくなり、原料の接する回転子及び固定子の表面は平均化して摩耗することにより、回転子、固定子全体の寿命が1.2〜1.5倍程度長くなる。
【0015】
この発明の微粉砕機を使用することにより、1mm程度の大きさの原料を投入しても、原料入口側の固定子の内径円と回転子の外径円の間隔G、前記溝内軌跡円の半径r、前記放射状粉砕溝ピッチp各々の数値が排出側に比較して大きく取られているために、スムースに原料が機内に入り、負荷動力の変動もなく、そのために、電動機の使用可能動力一杯まで粉砕に利用できるようになり、処理能力が5〜10%高くなる。
【0016】
また、粉砕後に得られる産物の平均粒子径も、従来のGrpの数値を一定にした固定子と回転子を使用する場合に比較して、原料供給側と排出側の各々異なった数値を平均化した数値の固定子と回転子を使用する場合と同等な粒径の産物が、またはより細かな粒度の産物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本微粉砕機の場合には、回転子は周速が約100m/sec以上で回転するため、その回転子が断面の円の軌跡から遠ざかる方向の側面が第一に気流に接する方向に回転する場合には、回転子と固定子の粉砕溝、即ち、底面と両側面に囲まれた空間、に高速の渦流が発生する。この渦流は、溝内軌跡円、即ち、円弧状底面の曲率半径の軌跡、を有する空間において中心部を除いて、渦なしの回転運動、いわゆる自由渦の状態が生じており、
(速度)×(渦の回転半径)=(一定)、の自由渦の法則の中で粉砕原料が大きなせん断力を受けて細かく粉砕される。
【0018】
従って、粉砕チャンスを多くして細かくするためには、多数の粉砕溝を回転子と固定子に設け、その上で円弧状底面の曲率半径を極力大きくした形状として、回転子を高速で回転させることにより、大きなせん断力を粉砕原料に与えることが出来る。又、高速渦流の中でせん断作用を受けるため粒子の形状はより丸みを帯びたものとなる。
【0019】
但し、この半円径の空間内に生じる高速自由渦を壊さないためには、次の条件を具備する必要がある。
(1)上記の条件である粉砕溝の溝内軌跡円が、回転子の外径円から飛び出さない範囲で極力大きくすること、
(2)固定子の粉砕溝の溝内軌跡円も同様に固定子の内径円から飛び出ない範囲で極力大きくすること、
(3)粉砕溝は、互いに傾斜角度の異なる急斜側面と緩斜側面を有する、放射状粉砕溝にすること。
【0020】
微粉砕機の粉砕溝は、円弧状底面と、該円弧状底面に連続する左右の側面と、から構成されているが、両側面が互いに平行であると、この空間に高速の渦流が形成されにくくなり、原料粒子に確実にせん断力が働かず、現在要求される水準の粒度まで細かくならないことと、製品中に粗粒が混入し、粒度分布範囲の狭い製品が得られず、効率の良い粉砕ができなくなる。
【0021】
そこで、固定子の粉砕溝の一方の側面、即ち、回転子の回転方向に対向する方向の側面(急斜側面)を、該側面の先端と固定子の中心とを結ぶ直線に対して5°〜30°の傾斜で前記溝内軌跡円にかぶさる方向の接線上に位置させ、他方の側面、即ち、回転子の回転方向を向いてる側面(緩斜側面)、を前記直線に対して30°〜60°の範囲で前記溝内軌跡円から遠ざかる方向の接線上に位置させ、
又、回転子の一方の側面、即ち、回転子の回転方向に対向する方向の側面(急斜側面)を、該側面の先端と回転子の中心とを結ぶ直線に対して5°〜30°の傾斜で前記溝内軌跡円にかぶさる方向の接線上に位置させ、他方の側面、即ち、回転子の回転方向を向いてる側面(緩斜側面)、を前記直線に対して30°〜60°の範囲で前記溝内軌跡円から遠ざかる方向の接線上に位置させること、により前記問題は解消する。
【0022】
固定子の内面半径R1は、回転子の外面半径R2より、溝内軌跡円の半径rの2倍以下から1/2以上の寸法だけ大きくし、固定子と回転子との間隙を、2r(直径)〜r/2(半径の半分)にする。
【0023】
この間隙が、前記2r(直径)より大きくなると、回転子のなかで生じる1つの高速渦流内で細かくならなかった粒子が、渦流から遠心力を受けて飛び出たときに、固定子側の渦流に入り込むことなく、機外に設置された原料搬送用の送風機により生じる気流に乗って搬送されやすくなり、粉砕チャンスが少なくなり希望の粒度まで粉砕されなくなる現象が生じる。
【0024】
又、前記間隙が、前記1/2r(半径の半分)より小さくなると、粉砕原料搬送気流の流れる断面積が減少して、大きな圧力損失が生じ、送風機が大きな圧力を必要とすること、及びこの間隙が非常に狭くなるため、固定子の円筒中心と回転子の円筒中心が厳密に一致するように工作精度を高めて製作することが求められるため、非常に高価なものとなる。
【0025】
固定子と回転子表面に形成される、上記放射状粉砕溝のピッチは、6.0〜2.0mmの範囲の間隔にする。
【0026】
この自由渦の中で粉砕されて非常に細かくなった原料は、渦の中心部に行き、円筒型回転子と固定子の軸方向に搬送されていく反面、まだ細かくならない原料は、渦の外周に位置してそこから飛び出し、回転子の回転方向に搬送されながら回転速度より遅い速度で回転子の周りを移動して、隣の半円形の溝の中に発生する渦流に入り込み、再度せん断力を受ける。
さらに大きな未粉砕粒子は 回転子の遠心力により固定子側に飛ばされ、固定子の渦流の中で同様にせん断力による粉砕作用を受けて細かくなって行く。
【0027】
この様な回転子や固定子の形状を保持した上で、原料供給側から排出側に向かって固定子の内径円と回転子の外径円の間隔Gを2.0mmから0.5mmに、前記溝内軌跡円の半径rを2.0mmから0.4mmに、放射状粉砕溝ピッチpを6mmから2.0mmに、段階的に小さくすることとした回転子及び固定子で構成する。
【0028】
このように原料供給側Iから排出側Oに向かって前記間隙G,G’、前記半径r、前記ピッチpを段階的に小さくすると、極端に原料供給側が摩耗することが無くなり、原料供給側と排出側が平均的に摩耗するようになるとともに、より粒度が細かく粉砕される。
【0029】
即ち、粉砕溝内に自由渦が発生し、回転子7の回転数が同じであれば、該自由渦の小さい方が速度が大きくなり、前記粉砕溝に入った原料粉体は、大きなせん断力を受けて細かくなる。
【実施例】
【0030】
本発明の第1実施例を図1から図6によって説明する。
微粉砕機1の円筒形外箱1aの中心線A‐A上にあって、軸受2,2’で回転できるように支持されている回転軸3は、その端部に固定されているプーリー4に掛けられた、ベルト(図示せず)により矢印A7方向に高速回転させられている。
【0031】
この回転軸3には、キー5及びナット6を介して外周半径(外径)R2の回転子7が固定されている。この回転子7の外表面上には、図3、図5に示すように、中心線A−Aに平行な複数の粉砕溝7Aが、周方向に所定ピッチpで配設されている。隣り合う粉砕溝7A、7Aは、突起7dを介して連続している。
【0032】
この粉砕溝7Aは、互いに対向する急斜側面7aと緩斜側面7bと、前記側面7a、7bに連続する円弧状底面7cと、を備えた放射状粉砕溝である。この円弧状底面7cは、曲率半径rの円弧状に形成されている。
【0033】
この粉砕溝7Aでは、円弧状底面7cの曲率中心p1を中心として描いた円の軌跡(以下、「溝内軌跡円」という)c1が、回転子7の外径R2の円の軌跡(以下、「外径円」という)7Mから飛び出さない範囲で、この溝内軌跡円c1が極力大きく取られている。
【0034】
急斜側面7a、即ち、回転子7の溝内の回転方向A7側にある面は、回転子7の中心Oと該急斜側面7aの先端7pを結ぶ直線L1に対して、β=5〜30°の傾斜で溝内軌跡円c1にかぶさる方向の接線7T1上に位置している。
【0035】
緩斜側面7b、即ち、回転子7の溝内の回転方向と逆側にある面は前記直線L1に対して、α=30°〜60°の範囲で前記溝内軌跡円c1から遠ざかる方向の接線7T2上に位置している。
【0036】
一方、外箱1aの内側は、内周半径(内径)R1の固定子8となっている。この固定子8の内表面上には、図3、図5に示すように、中心線A−Aに平行な複数の粉砕溝8Aが、周方向に所定ピッチpで配設されている。隣り合う粉砕溝8A、8Aは、突起8dを介して連続している。
【0037】
この粉砕溝8Aは、互いに対向する急斜側面8aと緩斜側面8bと、前記側面8a、8bに連続する円弧状底面8cと、を備えた放射状粉砕溝である。この円弧状底面8cは、曲率半径rの円弧状に形成されている。この曲率半径rは、前記回転子7の底面7cと同一形状であるが、必ずしも同一寸法である必要はない。
【0038】
この粉砕溝8Aでは、円弧状底面8cの曲率中心p2を中心として描いた円の軌跡(以下、「溝内軌跡円」という)c2が、固定子8の内径R1の円の軌跡(以下、「内径円」という)8Mから飛び出さない範囲で、この構内軌跡円c2が極力大きく取られている。
【0039】
急斜側面8a、即ち、回転子7の回転方向A7を向いている面、は、固定子8の中心Oと該急斜側面8aの先端8pを結ぶ直線L2に対して、β=5〜30°の傾斜で溝内軌跡円c2にかぶさる方向の接線8T1上に位置している。
【0040】
緩斜側面8b、即ち、回転子7の回転方向A7に対向している面、は前記直線L2に対して、α=30°〜60°の範囲で前記溝内軌跡円c2から遠ざかる方向の接線8T2を上に位置している。
前述のように、回転子7の急傾側面7a、緩斜側面7bと固定子8の急斜側面8a、緩斜側面8bとは、互いに逆向きに対向している。
【0041】
前述のように、溝内軌跡円c1、c2が固定子8の内径円8M、回転子7の外径円7Mから各々飛び出ることのない範囲にするのは、前記溝軌跡円c1、c2が飛び出ると、放射状粉砕溝7A,8Aの中で生じる高速渦流に乱れが生じ、自由渦が形成されにくくなり、原料粒子が大きなせん断力を受ける事が出来なくなるからである。
【0042】
固定子8と回転子7の間隙Gは、下記寸法が採用される。
G=R1(固定子8の内径)−R2(回転子7の外径)
=r(溝内軌跡円の半径)×(2〜1/2)
の関係で構成される。
【0043】
さらに、原料供給側から排出側に向かって、この間隔G、半径rは段階的に小さくするが、前記間隙は、2mmから0.5mmに段階的に小さくなり、又、前記半径は、2.0mmから0.4mmに段階的に小さくなる。なお、図5(A)(B)に於いて,Gは原料供給側Iの間隙、G‘は排出側Oの間隙、rは原料供給側Iの半径、r’は排出側Oの半径r’をそれぞれ示す。
【0044】
固定子8、回転子7の多数の放射状粉砕溝7A、8Aは、同じ寸法ピッチpで形成される。このピッチは、2〜6mmの範囲で、適宜選択され、さらに原料供給側から排出側に向かって段階的に小さくするように構成する。なお、図5(A)(B)において、pは原料供給側Iのピッチ、p’は排出側Oのピッチを示す。
【0045】
図6において、9はスクリューフイーダ、20は冷風発生手段を示す。
【0046】
次に本実施例の作動について説明する。
粉体原料Mは、冷風発生装置20を通過した冷風(気流)22と共に微粉砕機1の入口11に入り、ここに設けられた渦巻き室11aにおいて旋回流となり、高速回転している回転子7と固定子8の間に搬送され、回転子の突起7dで加速され、かなり粗いものは打撃され細かくなる。
【0047】
一方、気流は、回転子の緩斜側面7bに沿って乱れを生じること無く流れ、該粉砕溝7Aの突起7dを乗り越えた後、急斜面7aと円弧状底面7cの作る空間に高速の自由渦F1を形成する。
前記粉体原料Mは、該粉砕溝7Aの内部でp1を中心とした空気の旋回流F1の中に入り、渦無しの旋回運動(自由渦)の作用でせん断力を受けて細かくなる。
【0048】
このとき、まだ所望の粒度にならないやや粗い粒径の原料は、旋回流F1の中で遠心力を受け、該粉砕溝7Aから出て、気流に乗り隣の粉砕溝7Aに入り同様な働きを受ける
【0049】
さらに粗い粒径の原料は、同様に旋回流F1の中で大きな遠心力を受け、該粉砕溝7Aから出て、固定子側に飛ばされ、固定子側の粉砕溝8Aの中で同様なせん断作用を受け細かくなる。
【0050】
そして、細かくなった粉体原料は、回転子7、固定子8それぞれの旋回流F1、F2の中心に入ったまま、粉砕溝7A 8Aの中を出口12に向かって流れ、出口12より機外に出る。
【0051】
粉体原料Mは、回転子7、固定子8のそれぞれの粉砕溝7A 8Aに生じる旋回流F1、F2の中で旋回すると同時に、入口11側から出口12側に向かって回転子7、固定子8の表面を転がりながら何度も接触を繰り返して粉砕されるため、球状に近い形となって出口12から排出される。
【0052】
以上の工程において、微粉砕機1により所定の粒度、例えば、平均粒径6μm、に細かく粉砕された粉体原料(製品)は、図6の送風機17により前記入口11側から吸引される空気とともに搬送され、サイクロン13において粉体と空気に分離される。
【0053】
前記製品は、サイクロン13下の製品タンク14に捕集され、空気は集塵器(バグフィルター)15に搬送され、微小な粉塵を取り除いた空気は大気へ放出される。この送風機17の搬送風量と吸引圧力の制御は、風量計10から電気変換された信号を受けて、電動弁16の開度を調整するか、または 送風機自身の回転数を制御して必要な風量と吸引圧力に調整する。
【0054】
この発明の第2実施例を図7により説明するが、図1と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。この実施例と第1実施例との相違点は、図1の回転子7が直径の異なる複数の回転子部を連続させて一本の回転子を形成しているのに対し、第2実施例では、一本の回転子7の外周面に、原料供給側Iから排出側Oに向かって小さくなる段状部を形成したことである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施例を示す微粉砕機の垂直断面図である。
【図2】図1のII‐II線垂直断面図である。
【図3】図1のIII‐III線垂直断面図である。
【図4】図1のV‐V線垂直断面図である。
【図5】図5(A)は図3の拡大断面図、図5(B)は図1のIV‐IV線垂直断面図である。
【図6】図1の微粉砕機を使用した装置全体を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例を示す微粉砕機の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0056】
7 回転子
7A 放射状粉砕溝
7a 急斜側面
7b 緩斜側面
7c 円弧状底面
7d 突起
7T1 接線
7T2 接線
8 固定子
8A 放射状粉砕溝
8a 急斜側面
8b 緩斜側面
8c 円弧状底面
8d 突起
8T1 接線
8T2 接線
A−A 中心線
c1 溝内軌跡円
c2 溝内軌跡円
L1 直線
L2 直線
r 溝円軌跡円の半径
R1 固定子の内周半径
R2 回転子の外周半径
G 固定子の内径円と回転子の外径円の間隔
G’ 固定子の内径円と回転子の外径円の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内表面に多数の粉砕溝が形成されている固定子と、該固定子の内側に間隙を介して同心に配設され、その外表面に多数の粉砕溝が形成されている回転子と、を備えた微粉砕機において;
前記固定子の粉砕溝は、固定子の中心線に直角な断面に、互いに対向する急斜側面と緩斜側面と、前記両側面に連続する円弧状底面とを有する放射状粉砕溝であり、
前記放射状粉砕溝は、前記円弧状底面の曲率中心を中心として描いた溝内軌跡円が、該固定子の内径円から飛び出さない範囲内で形成されおり、
前記急斜側面と前記緩斜側面は、互いに傾斜角度が異なっており、
前記回転子の粉砕溝は、回転子の中心線に直角な断面に、互いに対向する急斜側面と緩斜側面と、前記両側面に連続する円弧状底面とを有する放射状粉砕溝であり、
前記放射状粉砕溝は、前記円弧状底面の曲率中心を中心として描いた溝内軌跡円が、該回転子の外径円から飛び出さない範囲内で形成されおり、
前記急斜側面と前記緩斜側面は、互いに傾斜角度が異なっており、
前記同心に配設された固定子の内径円と回転子の外径円の間隙、前記溝内軌跡円の半径及び放射状粉砕溝のピッチが、原料供給側から排出側に向かって段階的に小さく形成されていることを特徴とする微粉砕機。
【請求項2】
内表面に多数の粉砕溝が形成されている固定子と、該固定子の内側に間隙を介して同心に配設され、その外表面に多数の粉砕溝が形成されている回転子と、を備えた微粉砕機において;
前記固定子の粉砕溝は、固定子の中心線に直角な断面に、互いに対向する急斜側面と緩斜側面と、前記両側面に連続する円弧状底面とを有する放射状粉砕溝であり、
前記放射状粉砕溝は、前記円弧状底面の曲率中心を中心として描いた溝内軌跡円が、該固定子の内径円から飛び出さない範囲内で形成されおり、
前記急斜側面は、該固定子の中心と該急斜側面の先端とを通る直線に対して、5°〜30°の傾斜で前記溝内軌跡円にかぶさる方向の接線上に位置し、
前記緩斜側面は、前記直線に対して30°〜60°の範囲で前記溝内軌跡円から遠ざかる方向の接線上に位置し、
前記回転子の粉砕溝は、回転子の中心線に直角な断面に、互いに対向する急斜側面と緩斜側面と、前記両側面に連続する円弧状底面とを有する放射状粉砕溝であり、前記放射状粉砕溝は、前記円弧状底面の曲率中心を中心として描いた溝内軌跡円が、該回転子の外径円から飛び出さない範囲内で形成されおり、
前記急斜側面は、該回転子の中心と該急斜側面の先端とを通る直線に対して、5°〜30°の傾斜で前記溝内軌跡円にかぶさる方向の接線上に位置し、
前記緩斜側面は、前記直線に対して30°〜60°の範囲で前記溝内軌跡円から遠ざかる方向の接線上に位置し、
前記同心に配設された固定子の内径円と回転子の外径円の間隙Gが、前記溝内軌跡円の半径rの1/2から2倍の範囲内であり、
前記間隔Gが、原料供給側から排出側にむかって、2.0mmから0.5mmに段階的に小さく形成されていることを特徴とする微粉砕機。
【請求項3】
前記粉砕機の同芯に配置された固定子及び回転子において、前記溝内軌跡円の半径rを、原料供給側から排出側に向かって2.0mmから0.4mmに段階的に小さくしていく事を特徴とする請求項1、又は、2記載の微粉砕機
【請求項4】
前記粉砕機の固定子及び回転子の放射状粉砕溝のピッチpを、原料供給側から排出側に向かって6.0mmから2.0mmまで段階的に小さくしていく事を特徴とする請求項1、2、又は、3記載の微粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−167757(P2007−167757A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368128(P2005−368128)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000108487)ターボ工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】