説明

微粒バルーン軽量高強度コンクリートの製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は微粒バルーン軽量高強度コンクリートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】微粒バルーンは、アルミノ珪酸塩ガラスからなり非常に微細で比表面積が大きく適度な粒度分布をもつので、養生によって微粒バルーンの外殻はセメントと反応して強固に結合する。そして、微粒バルーンの痕跡として残された独立気孔は平均径20μm以下と非常に微細であるために破壊の起点になりにくいので、高強度が発現している。この独立気孔が多量に存在するために、軽量性が保たれ、優れた断熱性を有し、結露防止性、防音性、耐火性など優れた機能性を併せ持つ。
【0003】本発明のポイントは、日本特許第2562788号による微粒中空ガラス球状体(以下微粒バルーンと称す)の優れた特性、すなわち、微細性、軽量性、高強度、断熱性、耐熱性、防音性とセメントとの優れた反応性に着目してこれよりもさらに平均粒径の微少なバルーンを用いる点にある。特許第2562788号の特徴は平均20μm以下の火山ガラス質堆積物の微粒子と、この微粒子の親水性を減少させる親水性減少剤との混合物を生成し、流動層式加熱炉を用いることによって、前記混合物を900℃〜1200℃で熱処理する方法を用いている点にある。
【0004】上記特許においては、原料である火山ガラス質堆積物として、鹿児島県吉田町に産し、粒径が比較的微少に揃っている二次堆積シラス(以下では単にシラスと称する)を用いている。また親水性減少剤には、シラスの微粒子の表面水酸基とカップリング反応を生じることにより、シラスの微粒子表面に撥水性を与えるカップリング剤であり、メチルトリメトキシシランを主成分とするシランカップリング剤などを用いて実施している。
【0005】ここで、上記微粒バルーンの代わりに合成樹脂製のビーズやバルーンを用いた場合には、このようなセメントとの反応性がないので、これら粒子とセメント粒子との強固な結合が起こらず、高強度にならない。本発明で用い微粒バルーンとしては、粒径が小さいほど高強度であり、セメントとの反応性も高くなるので、特に平均粒径10μm未満とした場合には、後述する実施例1、2に見られるように、標準砂を用いたコンクリートよりも20%以上軽量化しているにもかかわらず、曲げ強度が著しく向上しており、圧縮強度も同等以上を示した。そして、強度値をコンクリートのカサ比重で割った「比強度」においては、比曲げ強度、比圧縮強度は、共に著しい強度向上を示した。
【0006】また、微粒バルーンを用いる場合、その平均粒径が10μm未満で比表面積が大きいので、混練時に多くの水を必要とする傾向にあるが、減水剤を適量(対セメント比で約4%以下)加えることによって、必要以上の水分を抑えることが可能となった。このことが、微粒バルーンを使いこなす上での重要な点であり、軽量性と高強度を両立させるポイントとなっている。
【0007】そこで、本発明においては微粒バルーンが有する軽量性と高強度さらには断熱性やその他の諸性質を活用できる用途としてコンクリート組成に含有することに着目して鋭意研究を重ね、微粒バルーン軽量高強度コンクリートを提供するに至ったものである。そして本発明は、従来技術では困難であった軽量性と高強度を両立したコンクリートの開発を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明においては微粒バルーンを組成中に包含した微粒バルーン軽量高強度コンクリートの製造方法を提供しようとするものであって、その構成としては、請求項1に記載したように、セメント粒子間の空隙に、火山ガラスの微粉砕粒子を急速加熱して形成した平均粒径10μm未満の微粒バルーンを流入充填させるものであって、セメントの重量1に対して重量比0.5〜1.5の割合で上記平均粒径10μm未満の火山ガラスからなる微粒バルーンを加え、これに水と減水剤を加えて混練し、養生させてコンクリートを製造することを特徴としている。上記した微粒バルーンを含有した軽量高強度コンクリートを製造する本発明方法によると、セメント粒子間に微粒バルーンを充填させるのに好適な製造方法であり、セメント比0.5未満では、高強度になるが、軽量化を達成できない。また、セメント比1.5を越えては、軽量化するが、高強度にならない。本発明に用いる微粒バルーンは、低比重なのでセメント比は上記した0.5〜1.5でも充分軽量化できることになる。
【0009】上記製造方法によって得られた微粒バルーン軽量高強度コンクリートによると、平均粒径10μm未満の微粒バルーンは、特に軽量性と断熱性に優れており、セメントの粒子間の空隙に流入されて空隙を充実させたコンクリートとなり、軽量なコンクリートを形成できるものとなり、軽量で断熱性に優れた屋根瓦、断熱性を必要とするビルの壁や屋根、軽量で浮力を必要とするコンクリートポンツーン等の製品に広く使用できる。
【0010】
【発明の実施の形態】次いで本発明の実施の形態として、セメントと、微粒バルーンと、水および減水剤についての配合例を以下の表1に示す。これらの配合例に基づき何れの場合にも、混練後、養生させるもので、養生後の微粒バルーン軽量高強度コンクリートの強度については以下の表2に示す通りである。
【0011】<実施例および比較例>比較例は、JIS R5201−1997の基本配合を参考にしている。何れも養生は、長期的強度を見るために、促進試験の手法を用いた。具体的には、成形後1日湿気箱中、脱形後に70℃の温水中で9.5日間養生した。
【0012】
【表1】


【0013】
【表2】


【0014】養生方法(全て同じ条件): 成形後1日湿気箱中、脱形後に70℃の温水中で9.5時間養生した。
* 上記の曲げ強度、圧縮強度は平均値(3検体)である。
軽量化率=(1−(微粒バルーンコンクリートのカサ比重/標準砂コンクリートのカサ比重)×100比曲げ強度=各実施例の曲げ強度/各実施例のカサ比重比圧縮強度=各実施例の圧縮強度/各実施例のカサ比重微粒バルーン軽量高強度コンクリートの特徴: 軽量、高強度について曲げ強度、圧縮強度は、標準砂を用いたJIS規格試験体より約25%以上軽量化(コンクリートのカサ比重で比較して)しているにもかかわらず、高強度を示した。それらの比強度は、抜群に優れている。
【0015】特に曲げ強度が優れている。セメントとの反応性がよく強固に結合することと、微粉砕火山ガラスと異なり焼成作用を受けており、中空状が多いが、破片状など複雑形状の粒子が多いと考えられ、その複雑な粒子とセメント粒子が複雑にからみつき、反応して強固に結合し、軽量化しているにもかかわらず、著しい曲げ強度の向上を示したと考えられる。
【0016】
【発明の効果】以上のように本発明による微粒バルーン軽量高強度コンクリートの製造方法によると、平均粒径10μm未満の微粒バルーンセメントの粒子間の空隙内に流入して空隙を充填させ易くなり、コンクリート重量を軽減して軽量性と高強度さらには断熱性を具有するコンクリートを提供でき、種々の用途、例えば軽量性と高強度さらには断熱性とが要求される屋根瓦、ビルの壁や屋根、軽量性で浮力を要求するコンクリートポンツーン等の製品として好適なコンクリートを提供できる方法となる。
【0017】しかも、本発明による微粒バルーンを含有する軽量高強度コンクリートの製造方法によれば、至極簡単でコストメリットをもたらす製造方法となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】セメント粒子間の空隙に、火山ガラスの微粉砕粒子を急速加熱して形成した平均粒径10μm未満の微粒バルーンを流入充填させるものであって、セメントの重量1に対して重量比0.5〜1.5の割合で上記平均粒径10μm未満の火山ガラスからなる微粒バルーンを加え、これに水と減水剤を加えて混練し、養生させてコンクリートを製造することを特徴とする微粒バルーン軽量高強度コンクリートの製造方法。

【特許番号】特許第3137614号(P3137614)
【登録日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【発行日】平成13年2月26日(2001.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−76117
【出願日】平成11年3月19日(1999.3.19)
【公開番号】特開2000−264754(P2000−264754A)
【公開日】平成12年9月26日(2000.9.26)
【審査請求日】平成11年3月24日(1999.3.24)
【出願人】(000247052)株式会社スペーサー工業 (7)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【上記1名の復代理人】
【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【参考文献】
【文献】特開 平7−24299(JP,A)
【文献】特開 平6−191963(JP,A)
【文献】特開 平5−24011(JP,A)