説明

微粒子分散物、その製造方法及びインクジェット記録材料

【課題】 微粒子分散物、その製造方法、及びこれを用いた発色性、インク吸収性、光沢性に優れたインクジェットインクジェット記録材料を提供することである。
【解決手段】 遷移金属酸化物前駆体の溶液中にシリカ微粒子粉体を投入して分散し、シリカ微粒子表面を遷移金属酸化物で被覆することを特徴とする微粒子分散物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微粒子分散物、その製造方法、及びこれを用いた発色性、インク吸収性、光沢性に優れたインクジェット記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタの急速な普及や高精細・高速化、さらにはデジタルカメラの登場により、インクジェット記録方式に用いられる記録材料にも高度な特性が要望されるようになっている。すなわち、速いインク吸収性、高い記録濃度、優れた耐水性や保存性等の記録特性、特に、銀塩写真に匹敵する画質、表面光沢及び保存性を兼ね備えたインクジェット記録材料の実現が強く求められている。
【0003】
一般に、インクジェット記録材料に光沢を付与する方法としては、スーパーカレンダー等の装置を用い、圧力や温度をかけたロール間に通紙することによって塗工層表面を平滑化する方法(カレンダー仕上げ)が知られている。しかし、カレンダー仕上げにより得られる記録材料は、光沢度が不十分であるうえに、塗工層の空隙が減少してしまうため、インク吸収性が低下し、結果として印字のにじみを生じやすくなるという問題を有している。
【0004】
このようなカレンダー仕上げの他に、光沢度を向上させるために、光沢を有する平滑なプラスティックフィルムまたは樹脂被覆紙の表面に、澱粉、ゼラチン、水溶性セルロース樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、変性ポリウレタン等のインク吸収性樹脂によるインク受容層を設ける方法も数多く提案されている。しかし、このような方法で得られる記録材料は、ある程度の光沢度は得られるものの、インク吸収性は十分ではなく、インクの乾燥も遅いために、ハンドリングが悪く、インクの吸収ムラが発生しやすく、耐水性やカールも劣るという問題がある。
【0005】
例えば、特許文献1〜5等においては、平均粒子径の小さなコロイダルシリカ等の超微粒子顔料を主成分とした塗工層を設ける方法が提案されている。しかしながら、これらの方法により得られる記録材料は、ある程度の光沢は有しているものの、超微粒子顔料を使用しているために、塗工層に十分な空隙が形成されず、依然として、満足できるインク吸収性は得られなかった。
【0006】
また、特許文献4では、支持体に近い方から、一次粒子の平均粒径が50nm以下の気相法による合成シリカを含有する層及びコロイダルシリカを含有する層を少なくとも有するインクジェット記録用材料が提案されている。しかしながら、光沢性、耐擦傷性は向上するが、コロイダルシリカのような一次粒子体は空隙率が低くなるため、インク吸収性が低下しやすい。インク吸収性を持たせるために塗布量を低下させると、干渉縞を生じて光沢面の品質が低下したり、十分な光沢性が得られない。
【0007】
また、特許文献5では、支持体上に、支持体に近い側から、一次粒子の平均粒子径が30nm以下の気相法による合成シリカを含有する層とカチオン性コロイド粒子を含有する層とを少なくとも有するインクジェット記録用材料が提案されている。カチオン性コロイド粒子を用いることにより、印画後の画像の経時による滲み及び耐水性が改善されるものの、特許文献4と同様にインク吸収性が低下する問題がある。
【0008】
つまり、特許文献1〜5等には、インク吸収速度をなるべく低下させずに光沢性を向上するための方法については何ら記載されていない。
【0009】
その他に光沢を付与する方法として、鏡面を有する加熱した光沢ロールに湿潤塗工層を圧着させ、乾燥することにより、その鏡面を写し取ることによって得られる、いわゆるキャスト塗工法が知られている(例えば、特許文献6及び7参照)。
【0010】
キャスト法にはいくつかの方法があるが、いずれも湿潤可塑化状態にある塗工層表面を、光沢ロールに圧接、乾燥し、加熱光沢ロールから離型して鏡面を写し取る点においては、共通するものである。
【0011】
このようなキャスト法により得られるキャスト塗工紙は、カレンダー仕上げされた通常の記録材料に比較して、高い表面光沢と優れた表面平滑性を有し、優れた印刷効果が得られることから高級印刷物等の用途に専ら利用されている。
【0012】
しかしながら、これらのキャスト塗工紙は、インクジェット記録材料に利用する場合には、種々の難点を抱えている。
【0013】
例えば、上述のようなキャスト塗工紙は、例えば特許文献6に開示されているように、その塗工層を構成する顔料組成物中の接着剤等の成膜性物質が、キャストコーターの光沢ロール表面を写し取ることにより高い光沢を得ているものであり、この成膜性物質の存在によって塗工層の多孔性が失われ、インクジェット記録時のインクの吸収性が極端に低下してしまう。
【0014】
また、キャスト法は、写真品質を有する樹脂被覆紙に適用することができず、また塗工層の多孔性が失われてインク吸収性の大幅な劣化を招きやすい。
【0015】
インクジェット記録材料に遷移金属化合物を適用した例としては、特許文献8に0.1μm未満の遷移金属酸化物微粒子を含有させ耐光性を向上する方法、特許文献9に保護層に遷移金属酸化物微粒子及びコロイダルシリカを含有させ塗膜強度、耐光性を向上する方法が開示されているが、いずれも発色性、インク吸収性、生産性に劣る欠点がある。また、特許文献10に表面を不定形シリカで被覆した遷移金属酸化物を含有させ、耐光性、インク吸収を向上する方法が開示されているが、発色性、光沢、インク吸収性に劣る欠点がある。これらの特許文献8〜10では光沢性には全く触れられていない上、さらに次のような欠点を抱え、実用に供するものではなかった。
【0016】
遷移金属微粒子は、高価、生産設備の磨耗または消耗が激しい、インク吸収が低下しやすい、発色性が低下しやすい。
【0017】
また、アモルファスシリカで被覆した遷移金属微粒子は、光沢性が不十分、インク吸収性が低下しやすい、発色性が低下しやすい。
【特許文献1】特開平2−274587号公報
【特許文献2】特開平8−67064号公報
【特許文献3】特開平8−118790号公報
【特許文献4】特開2000−37944号公報
【特許文献5】特開2001−353957号公報
【特許文献6】米国特許第5275846号明細書
【特許文献7】特開平7−89220号公報
【特許文献8】特許第2673840号公報
【特許文献9】特開2001−10212号公報
【特許文献10】特開2001−270225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、微粒子分散物、その製造方法、及びこれを用いた発色性、インク吸収性、光沢性に優れたインクジェット記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0020】
(請求項1)
遷移金属酸化物前駆体の溶液中にシリカ微粒子粉体を投入して分散し、シリカ微粒子表面を遷移金属酸化物で被覆することを特徴とする微粒子分散物。
【0021】
(請求項2)
前記遷移金属酸化物前駆体が、チタン、ジルコニウム、亜鉛、アンチモン、鉛の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散物。
【0022】
(請求項3)
前記遷移金属酸化物前駆体が、加水分解反応により遷移金属酸化物を形成する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子分散物。
【0023】
(請求項4)
前記遷移金属酸化物前駆体が、遷移金属アルコキシド、遷移金属アセチルアセトネート、遷移金属カルボキシレート、遷移金属アシレート、遷移金属硝酸塩、遷移金属オキシ塩化物、遷移金属塩化物から選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【0024】
(請求項5)
前記遷移金属酸化物前駆体の溶液が実質的に水を含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【0025】
(請求項6)
前記遷移金属酸化物中の遷移金属原子(M)とシリカ微粒子中のSi原子のモル比(M/Si)が、0.001〜0.3であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【0026】
(請求項7)
前記シリカ微粒子粉体が気相法シリカであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【0027】
(請求項8)
前記シリカ微粒子粉体が予め相対湿度50%以上の環境下で5時間以上保管したものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【0028】
(請求項9)
前記シリカ微粒子粉体の一次粒径が20nm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【0029】
(請求項10)
支持体上にインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、該インク受容層が請求項1〜9のいずれか1項に記載の微粒子分散物を含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
【0030】
(請求項11)
前記微粒子分散物中の遷移金属酸化物で被覆したシリカ粒子が、インク受容層の表面から50%以上表側に存在することを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録材料。
【0031】
(請求項12)
遷移金属酸化物前駆体の溶液中にシリカ微粒子粉体を投入して分散し、シリカ微粒子表面を遷移金属酸化物で被覆することを特徴とする微粒子分散物の製造方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、微粒子分散物、その製造方法、及びこれを用いた発色性、インク吸収性、光沢性に優れたインクジェット記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明者は鋭意研究の結果、支持体上にインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、該インク受容層が遷移金属酸化物前駆体の溶液中にシリカ微粒子粉体を投入して分散し、シリカ微粒子表面を遷移金属酸化物で被覆した微粒子分散物を含有することにより、発色性、インク吸収性、光沢性に優れたインクジェット記録材料が得られることを見出した。なお、本発明で遷移金属酸化物前駆体とは、シリカ微粒子表面で加水分解反応等により遷移金属酸化物を形成する化合物をいう。
【0034】
液相法で遷移金属酸化物を形成する方法としては、遷移金属アルコキシド等の加水分解反応を利用した、いわゆる「ゾル−ゲル法」が知られているが、水とアルコキシドの反応が非常に速いものが多く、加水分解反応に用いる水分量を高度に制御する必要があり、工業的なスケールで実用化することが非常に困難であった。
【0035】
加水分解反応に用いる水分量が多すぎると、遷移金属酸化物のみからなる微粒子やその微粒子を核として成長した粗大粒子が形成されたり、遷移金属酸化物粒子を介して複数のシリカ粒子が連結・凝集した複合粗大粒子が形成されたりして記録材料の光沢度や写像性を低下させてしまったり、シリカ微粒子表面に均一に遷移金属酸化物皮膜を形成することができず、本発明の効果を十分に発現させることができなかった。
【0036】
また、加水分解反応に用いる水分量が少なすぎると、遷移金属酸化物を形成しきれず本発明の効果を十分に発現させることができなかったり、遷移金属酸化物を形成させるのに多大な時間を要して生産性を悪化させたりしてしまう。
【0037】
本発明者らはシリカ微粒子粉体表面に存在する吸着水を利用することによって、シリカ微粒子表面に均一に遷移金属酸化物皮膜を形成することができることを見出し、本発明に至った。シリカ微粒子粉体表面に存在する吸着水を利用することによって、シリカ表面でのみ選択的に遷移金属酸化物形成反応を進ませることができるため、遷移金属酸化物のみからなる微粒子の形成を抑制することができる。また反応場に持ち込む水分量がシリカ比表面積及びシラノール基密度に大きく依存するため、シリカ種の選択により、他の複雑な化学工業的な制御を使用することなく、ほぼ安定的な工業化が可能になる。
【0038】
また、反応速度、反応量等のより緻密な制御も、シリカ粒子を予め調湿した環境に保存し、その微粒子表面の吸着水量を変えることによって可能となるため、大幅な設備投資や他の水分制御用の化学物質が不要となり、安価で高品質なインクジェット記録材料の提供が可能となる。
【0039】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0040】
〔遷移金属酸化物前駆体〕
はじめに、本発明に用いられる遷移金属酸化物前駆体(遷移金属化合物)について説明する。
【0041】
本発明に用いられる遷移金属化合物は、発色性、色調、光沢性、インク吸収性等の観点から、チタン、ジルコニウム、亜鉛、アンチモン、鉛の化合物であることが好ましく、また2種以上の化合物を併用することも好ましい。中でも、色調、光沢、環境適性等の観点からチタンまたはジルコニウムの化合物であることが特に好ましい。
【0042】
本発明に用いられる遷移金属化合物は、シリカ微粒子表面において単一の金属酸化物及び複合酸化物、無機酸や有機酸の単塩及び複合塩、有機金属化合物、金属錯体等、任意の形態で存在することができるが、シリカと化学的な結合を形成して存在することが好ましい。特に、シリカ表面のシラノール基と結合して、単一の金属酸化物もしくは複合酸化物を形成して存在する形態が発色性、インク吸収性、製造安定性等の観点から好ましい。
【0043】
本発明に用いることのできる遷移金属化合物としては、遷移金属アルコキシド、遷移金属アセチルアセトネート、遷移金属カルボキシレート、遷移金属アシレート等の遷移金属有機化合物、硝酸塩、オキシ塩化物、塩化物等の遷移金属無機化合物、遷移金属酸化物微粒子等が好ましく用いられるが、これら以外の化合物を用いることもできる。また、2種以上の遷移金属を併用する場合等、二金属アルコキシドも好ましく用いられる。
【0044】
本発明に用いることのできる遷移金属化合物の具体例としては、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、四塩化チタン等のチタン化合物、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、塩化ジルコニル等のジルコニウム化合物、ジエトキシ亜鉛、ジイソプロポキシ亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、酢酸亜鉛二水和物、乳酸亜鉛三水和物等の亜鉛化合物、トリエトキシアンチモン、トリイソプロポキシアンチモン、三塩化アンチモン等のアンチモン化合物、テトラノルマルプロポキシ鉛、テトラノルマルブトキシ鉛、酢酸鉛三水和物等の鉛化合物等を用いることができるが、これら以外の化合物を用いることもできる。
【0045】
〔微粒子分散物の製造方法〕
本発明の遷移金属酸化物で被覆したシリカ微粒子分散物の製造方法では、前記遷移金属酸化物前駆体の溶液中に撹拌しながらシリカ微粒子粉体を投入して、加水分解反応によりシリカ微粒子表面に遷移金属酸化物を形成する。次に、必要により分散剤、消泡剤、硼酸またはその塩を含む溶液に撹拌しながら添加し、ホモジナイザー等で分散し、シリカ微粒子表面を遷移金属酸化物で被覆した微粒子分散物を得ることができる。
【0046】
本発明においては、遷移金属化合物は遷移金属原子とシリカの珪素原子のモル比が0.0001〜1.0となるように用いることが好ましく、特に0.001〜0.3となるように用いることが好ましい。遷移金属原子とシリカの珪素原子のモル比が小さくなるとシリカ表面を十分に遷移金属化合物で被覆しきれなくなり、光沢度を向上させる効果が発現しにくく、遷移金属原子とシリカの珪素原子のモル比が大きくなると必要以上にインク受容層内で光が乱反射して発色性が劣化したり、インク受容層の空隙率が低下してインク吸収性が劣化しやすくなり好ましくない。
【0047】
本発明は、遷移金属酸化物前駆体の溶液が実質的に水を含有しないことを一つの特徴とする。遷移金属酸化物前駆体の溶液中に水分があると、遷移金属酸化物前駆体の加水分解反応が促進されて、遷移金属酸化物のみからなる微粒子やその微粒子を核として成長した粗大粒子が形成されたり、遷移金属酸化物粒子を介して複数のシリカ粒子が連結・凝集した複合粗大粒子が形成されたりして記録材料の光沢度や写像性を低下させてしまったり、シリカ微粒子表面に均一に遷移金属酸化物皮膜を形成することができず、本発明の効果を十分に発現させることが困難になる。
【0048】
本発明においては、遷移金属酸化物前駆体の溶液は遷移金属酸化物前駆体を有機溶媒に溶解させたものであることが好ましい。用いる有機溶媒としては、遷移金属酸化物前駆体を溶解して安定な溶液を形成するものならばいかなるものでも使用可能であるが、最も好ましいのは第1アルコール類である。具体的には、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、n−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、イソアミルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。また、遷移金属酸化物前駆体がこれらの溶媒に十分溶解しない場合は、アセチルアセトン、エチレングリコール類、エタノールアミン類等を補助溶媒として併用することも好ましい。
【0049】
本発明においては、遷移金属酸化物前駆体の反応を促進する等の目的で、酢酸等の酸やアンモニア等を遷移金属酸化物前駆体の溶液中に添加することも好ましい。
【0050】
本発明においては、シリカ粒子表面において遷移金属酸化物皮膜を形成した後、一旦乾燥させ、必要に応じて焼成した後、これを解砕して再度分散して塗工液とすることも好ましいが、主に生産性の観点からシリカ粒子表面において遷移金属酸化物皮膜を形成した後、乾燥過程を経ずに連続して分散、塗工液調整、塗工の各工程を経ることも好ましい。
【0051】
〔シリカ微粒子〕
本発明においては、いかなるシリカ微粒子も使用することができ、シリカ微粒子の形状は、本発明では特に制約を受けず、球状、棒状、針状、平板状、数珠状の物であってもよいが、表面に孤立シラノール基が多く遷移金属酸化物前駆体との反応活性に富むこと、表面に多くの吸着水を保持させることができること等から気相法シリカであることが好ましい。気相法シリカを用いることによってシリカ粒子とその表面に形成される遷移金属酸化物皮膜の接着強度を上げることができ、その後に機械的なせん断応力が作用してもシリカから遷移金属酸化物皮膜が脱離することなく、安定した品質を維持することができる。また、同様に表面に保持できる吸着水を増量させることができるため、用いるシリカ粒子は小粒径のものが好ましく、一次粒径は3〜200nmのものが好ましく、20nm以下のものが最も好ましく用いられる。平均粒径が20nm以下であれば、記録材料の高光沢性を達成することができ、また、表面での乱反射による最高濃度の低下を防いで鮮明な画像を得ることができる。
【0052】
本発明においては、シリカ粒子表面に存在する吸着水により、遷移金属酸化物の反応速度、反応量を制御する。従って、必要に応じてシリカ粒子粉体を適切な湿度環境に保管し、その表面吸着水量を制御することが好ましい。反応を加速して生産効率を向上させたり、より多くの遷移金属酸化物を生成させるために、シリカ粒子粉体を相対湿度50%以上の高湿度環境下で5時間以上保管してから使用することが最も好ましい実施形態の一つである。
【0053】
本発明における遷移金属酸化物で被覆したシリカ微粒子は、インク受容層全体に存在してもその効果を発揮するが、インク受容層の全体の厚みの表面から50%以上表層側に存在することが好ましい。インク受容層の表層近傍に存在させることによって、光散乱による発色性の損失を最小限に抑制しつつ、光沢感を高めることができる。
【0054】
〔インクジェット記録材料〕
本発明のインクジェット記録材料は、前記遷移金属酸化物で被覆したシリカ微粒子の分散液を含有する塗布液を支持体上に塗布、乾燥して塗膜(インク受容層)を形成して得られたものである。
【0055】
(遷移金属酸化物で被覆したシリカ微粒子)
インク受容層に用いられる遷移金属酸化物で被覆したシリカ微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、インク吸収層の空隙率、親水性バインダーの種類に大きく依存するが、一般には記録材料1m2当たり、通常3〜30g、好ましくは5〜25gである。インク受容層に用いられる遷移金属酸化物で被覆したシリカ微粒子と親水性バインダー(例えば、ポリビニルアルコール)の比率は質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。
【0056】
シリカ微粒子の添加量に従い、インク吸収容量も増加するが、カールやひび割れ等が悪化しやすいため、空隙率のコントロールにより容量を増加させる方法が好ましい。好ましい空隙率は40〜85%である。空隙率は選択するシリカ微粒子、バインダーの種類によって、あるいはそれらの混合比によって、またはその他の添加剤の量によって調節することができる。
【0057】
ここでいう空隙率とは、空隙層の体積に対する空隙の総体積の比率であり、その層の構成物の総体積と層の厚さから計算で求められる。また空隙の総体積は、ブリストー測定による飽和転移量、吸水量測定等によって簡易に求められる。
【0058】
(親水性バインダー)
次いで、インク受容層に好ましく用いられる親水性高分子(以下、親水性バインダーともいう)について説明する。
【0059】
本発明でいう親水性とは、単に水に可溶である他に、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチル等の水混和性の有機溶媒と水との混合溶媒に可溶であることを言う。この場合、水混和性の有機溶媒の比率は、全溶媒量に対して通常50質量%以下である。また、親水性高分子とは、上記溶媒に室温で通常1質量%以上溶解するものを言い、より好ましくは3質量%以上溶解するものである。
【0060】
インクジェット記録材料に用いられている親水性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の親水性ポリマーが挙げられるが、本発明においてはヒドロキシル基を有する親水性高分子がポリビニルアルコールであることが特に好ましい。
【0061】
このポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0062】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1500〜5000のものが好ましく用いられ、さらに、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0063】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0064】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0065】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0066】
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号及び同63−307979号に記載されているようなビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号の記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0067】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されているような疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0068】
さらに、変性ポリビニルアルコールとして、シリル基で変性したポリビニルアルコールも本発明ではポリビニルアルコールに含まれる。
【0069】
また、ポリビニルアルコールは重合度、ケン化度や変性等の種類違いのものを2種類以上併用してもよい。
【0070】
また、ポリビニルアルコールと共に、ゼラチン、ポリエチレンオキサイドまたはポリビニルピロリドンを併用することもできるが、これらの親水性ポリマーはポリビニルアルコールに対して好ましくは0〜50質量%、特に好ましくは0〜20質量%の範囲で用いることができる。
【0071】
本発明のインクジェット記録材料においては、上記ヒドロキシル基を有する親水性高分子とともに、カチオン性ポリマーを併用することができる。
【0072】
本発明に使用できるカチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、等が挙げられる。
【0073】
または、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマー、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0074】
本発明に使用できるカチオン性ポリマーの平均分子量としては2000〜50万の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、3000〜10万の範囲である。平均分子量とは数平均分子量のことであり、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーから求めたポリエチレングリコール換算値を言う。
【0075】
本発明に使用できるカチオン性ポリマーは、塗布液に添加してから塗布乾燥してもよいし、インク受容層塗布乾燥後の被膜にその水溶液を含浸させて添加してもよい。また、インク受容層塗布後乾燥前に添加する方法も挙げられる。インク受容層塗布後乾燥前に添加する方法としては、カーテン塗布、スプレー塗布、その他の方法が考えられる。
【0076】
本発明に使用できるカチオン性ポリマーは概ね水溶性基を有するために水溶性を示すが、例えば共重合成分の組成によって水に溶解しないことがある。製造の容易性から水溶性であることが好ましいが、水に難溶であっても水混和性有機溶媒を用いて溶解し使用することも可能である。
【0077】
ここで水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等、水に対して概ね10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
【0078】
カチオン性ポリマーはインクジェット記録材料1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0079】
(硼酸またはその塩)
本発明においては、インク受容層が硼酸またはその塩を含有していることが好ましい。
【0080】
本発明に使用される硼酸またはその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩で、具体的にはオルト硼酸、二硼酸、メタ硼酸、四硼酸、五硼酸、八硼酸及びそれらの塩が含まれる。
【0081】
上記硼酸またはその塩の使用量は、ポリビニルアルコールのケン化度や重合度、ポリビニルアルコールに対する比率、カチオン性ポリマーの種類や量、さらには塗布液のpH等により変化するが、通常ポリビニルアルコール1g当たり20〜500mg、好ましくは50〜300mgである。
【0082】
(支持体)
インクジェット記録材料の支持体としては、公知のものを適宜使用できる。透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルムや板、及びガラス板等が挙げられ、この中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、10〜200μmが好ましい。
【0083】
また、透明である必要のない場合に用いる支持体としては、例えば、一般の紙、合成紙、樹脂被覆紙、布、木材、金属等からなるシートや板、及び上記の透光性支持体を公知の手段により不透明化処理したもの等を挙げることができる。不透明の支持体としては、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。支持体とインク受容層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。さらに、本発明のインクジェット記録材料は必ずしも無色である必要はなく、着色された支持体を用いてもよい。
【0084】
本発明のインクジェット記録材料では、紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるので好ましい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0086】
実施例1
〔インクジェット記録材料の作製〕
《インクジェット記録材料1》
予めテトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)を18.92g溶解させた2−プロパノール溶液800gに、室温で2000rpmで攪拌しながら、一次粒子の平均粒径が約0.007μmの気相法シリカ粉体(日本アエロジル社製;アエロジル300)400gを30分かけて加え、40℃で40時間攪拌した。これをカチオン性ポリマー分散剤P−1を40g、n−プロパノールを33g及びエタノールを6.6g、硼酸を4.61g、硼砂を3.46g含有する水溶液C−1(pH2.5、サンノプコ社製の消泡剤SN−381を60g含有)の1000gに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。
【0087】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで3000N/cm2の圧力で分散し、全量を純水で仕上げて、シリカ含有量15%のほぼ透明なシリカ分散液S−1を得た。
【0088】
得られたシリカ分散液S−1 2000gに、ポリビニルアルコール((株)クラレ製:PVA235)8%水溶液750gを攪拌しながら徐々に添加し、純水で3000gに仕上げ、塗布液T−1を得た。
【0089】
得られた塗布液T−1をアドバンテックス東洋社製のTCP−10タイプのフィルターを用いてろ過を行った。
【0090】
次いで、上記調製した塗布液T−1を、厚さ170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したポリエチレンコート紙(インク受容層側のポリエチレン中に8質量%のアナターゼ型酸化チタン含有;インク受容層面側に0.05g/m2のゼラチン下引き層、反対側にTgが約80℃のラテックス性ポリマーをバック層0.2g/m2として有する)に、シリカの付き量で18g/m2となるように塗布し、乾燥してインクジェット記録材料1を得た。
【0091】
【化1】

【0092】
《インクジェット記録材料2》
インクジェット記録材料1の作製において、気相法シリカ粉体(日本アエロジル社製;アエロジル300)400gを相対湿度70%の環境下で72時間攪拌しながら保管した後、予めテトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)を18.92g溶解させた2−プロパノール溶液800gに添加した以外は同様にして、インクジェット記録材料2を作製した。
【0093】
《インクジェット記録材料3》
インクジェット記録材料1の作製において、気相法シリカ粉体(日本アエロジル社製;アエロジル300)400gの代わりに、予め均一に分散しておいた気相法シリカ(日本アエロジル社製;アエロジル300)を33.3%含有する水系分散液B1(pH2.6、エタノール0.5%含有)1200gを、予めテトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)を18.92g溶解させた2−プロパノール溶液400gに添加した以外は同様にして、インクジェット記録材料3を作製した。
【0094】
《インクジェット記録材料4》
インクジェット記録材料1の作製において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに、ジルコニウムノルマルブチレート(Zr(OC494)を25.53g用いた以外は同様にして、インクジェットインクジェット記録材料4を得た。
【0095】
《インクジェット記録材料5》
インクジェット記録材料3の作製において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに、ジルコニウムノルマルブチレート(Zr(OC494)を25.53g用いた以外は同様にして、インクジェットインクジェット記録材料5を得た。
【0096】
《インクジェット記録材料6》
インクジェット記録材料1の作製において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(Zr(C5724)を32.42g用いた以外は同様にして、インクジェットインクジェット記録材料6を得た。
【0097】
《インクジェット記録材料7》
インクジェット記録材料3の作製において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(Zr(C5724)を32.42g用いた以外は同様にして、インクジェットインクジェット記録材料7を得た。
【0098】
《インクジェット記録材料8》
インクジェット記録材料1の作製において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに、酢酸亜鉛二水和物を14.61g用いた以外は同様にして、インクジェットインクジェット記録材料8を得た。
【0099】
《インクジェット記録材料9》
インクジェット記録材料3の作製において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gの代わりに、酢酸亜鉛二水和物を14.61g用いた以外は同様にして、インクジェットインクジェット記録材料9を得た。
【0100】
《インクジェット記録材料10》
インクジェット記録材料3の作製において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)18.92gを添加しなかったこと以外は同様にして、インクジェットインクジェット記録材料10を得た。
【0101】
〔測定及び評価〕
《粗大粒子の測定》
上記作製した塗布液15gを採取し、水を用いて100gに仕上げた液に含まれる10μm以上のサイズの粒子の数を、Pacific Scientific社製、HIAC/ROYCO Model8000A Particle Counterを用いて測定した。粗大粒子が多いほど、製造時にフィルタの目詰まり等が発生しやすくなると同時に、光沢度や写像性等のインクジェット記録材料としての品質も劣化しやすい。
【0102】
《写像性の測定》
JIS H8686−2に記載の方法で、スガ試験機(株)製写像性測定器にて、反射45°、2.0mmの光学くしにおける未印字部の写像性を塗工方向がスリットと直角になるように測定した。
【0103】
《60°光沢の測定》
画像形成面をJIS−Z−8741に記載の方法で、日本電色工業(株)製変角光沢度計VGS−1001DPにて、60°鏡面光沢度を測定した。
【0104】
《インク吸収性の評価》
上記作製したインクジェット記録材料について、熊谷理機工業会社製のBristow試験機II型(加圧式)を用いて、接触時間0.04秒における液体転移量(ml/m2)を測定し、下記の基準に則りインク吸収性の評価を行った。
【0105】
AA:液体転位量が12ml/m2以上である
A:液体転位量が10〜12ml/m2未満である
B:液体転位量が8〜10ml/m2未満である
C:液体転位量が8ml/m2未満である
なお、上記ランクにおいて、AA、Aであれば実用上問題はないと判断した。
【0106】
測定及び評価の結果を表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
表1から本発明のインクジェット記録材料は比較例に比べて、粗大粒子が少なく、写像性、60°光沢に優れ、インク吸収性も良好であることが分かる。
【0109】
実施例2
〔インクジェット記録材料の作製〕
《インクジェット記録材料11〜15》
実施例1のインクジェット記録材料1の作製において、テトライソプロピルチタネート(Ti(OC374)の添加量18.92gを、それぞれ1.892g、0.1892g、189.2g、567.6g、946.0gに変えた以外は同様にして、インクジェットインクジェット記録材料11〜15を得た。
【0110】
〔測定及び評価〕
実施例1で作製したインクジェット記録材料1と合わせて、実施例1と同様に測定及び評価した。その結果を表2に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
表2から、遷移金属原子とシリカの珪素原子のモル比が小さくなる(0.0001、0.001モル比)とシリカ表面を十分に遷移金属化合物で被覆しきれなくなり、光沢度が低下し、遷移金属原子とシリカの珪素原子のモル比が大きくなる(0.3、0.5モル比)とインク受容層の空隙率が低下してインク吸収性が劣化することが分かる。
【0113】
本発明においては、遷移金属化合物は遷移金属原子とシリカの珪素原子のモル比が0.0001〜1.0となるように用いることが好ましく、特に0.001〜0.3となるように用いることが好ましい。
【0114】
実施例3
〔インクジェット記録材料の作製〕
《インクジェット記録材料16》
実施例1のインクジェット記録材料10の塗布液を下層に用い(シリカの付き量9.0g/m2)、インクジェット記録材料1の塗布液を上層に用い(シリカの付き量9.0g/m2)、同時重層塗布してインク受容層を形成し、インクジェットインクジェット記録材料16を得た。
【0115】
《インクジェット記録材料17》
実施例1のインクジェット記録材料10の塗布液を下層に用い(シリカの付き量13.5g/m2)、インクジェット記録材料1の塗布液を上層に用い(シリカの付き量4.5g/m2)、同時重層塗布してインク受容層を形成し、インクジェットインクジェット記録材料17を得た。
【0116】
〔測定及び評価〕
実施例1で作製したインクジェット記録材料1と合わせて、実施例1と同様に測定及び評価した。その結果を表3に示す。
【0117】
【表3】

【0118】
表3から、遷移金属酸化物で被覆したシリカ粒子が、インク受容層の表面から表側に存在することがインク吸収性について好ましいことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属酸化物前駆体の溶液中にシリカ微粒子粉体を投入して分散し、シリカ微粒子表面を遷移金属酸化物で被覆することを特徴とする微粒子分散物。
【請求項2】
前記遷移金属酸化物前駆体が、チタン、ジルコニウム、亜鉛、アンチモン、鉛の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散物。
【請求項3】
前記遷移金属酸化物前駆体が、加水分解反応により遷移金属酸化物を形成する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子分散物。
【請求項4】
前記遷移金属酸化物前駆体が、遷移金属アルコキシド、遷移金属アセチルアセトネート、遷移金属カルボキシレート、遷移金属アシレート、遷移金属硝酸塩、遷移金属オキシ塩化物、遷移金属塩化物から選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【請求項5】
前記遷移金属酸化物前駆体の溶液が実質的に水を含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【請求項6】
前記遷移金属酸化物中の遷移金属原子(M)とシリカ微粒子中のSi原子のモル比(M/Si)が、0.001〜0.3であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【請求項7】
前記シリカ微粒子粉体が気相法シリカであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【請求項8】
前記シリカ微粒子粉体が予め相対湿度50%以上の環境下で5時間以上保管したものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【請求項9】
前記シリカ微粒子粉体の一次粒径が20nm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の微粒子分散物。
【請求項10】
支持体上にインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、該インク受容層が請求項1〜9のいずれか1項に記載の微粒子分散物を含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
【請求項11】
前記微粒子分散物中の遷移金属酸化物で被覆したシリカ粒子が、インク受容層の表面から50%以上表側に存在することを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録材料。
【請求項12】
遷移金属酸化物前駆体の溶液中にシリカ微粒子粉体を投入して分散し、シリカ微粒子表面を遷移金属酸化物で被覆することを特徴とする微粒子分散物の製造方法。

【公開番号】特開2006−160539(P2006−160539A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350931(P2004−350931)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】