説明

微粒子製造方法

【課題】少ない機能性薬剤の使用量で十分な機能を発揮することができるので薬剤費のコストダウンを図ることができると共に、これを単一のマイクロデバイスで実現できる。
【解決手段】有機顔料を溶媒中に溶解させた顔料溶解液L1と、該顔料溶解液L1中における有機顔料の溶解度を下げて有機顔料の粒子を析出させる貧溶媒L2と、析出される粒子の表面部分で機能を発揮する分散剤を含有させた分散剤溶液L3と、有機顔料に対して良溶媒として作用すると共に貧溶媒に対して略相溶性以上のバッファー液L4とを、それぞれ独立した入口流路16A〜16Eを介して1つの合流領域14で合流させ、該合流領域14から1本の混合流路18を通って流出させると共に、合流領域14では、顔料溶解液L1及び貧溶媒L2とから成る相と、分散剤溶液L3の相との間に、バッファー液L4の相が形成されるように合流させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子製造方法に関し、特に、有機顔料を良溶媒に溶解させた溶解液を、該有機顔料に対する溶解性が低い貧溶媒と混合することにより有機顔料微粒子を製造するビルドアッププロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
顔料は、鮮明な色調と高い着色力とを有していることから、光学材料として、例えば塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルター等の幅広い用途に使用されている。
【0003】
また、ナノサイズの粒子はそのサイズが可視光に比べて十分小さいため、分散性を維持したまま固形化(ハイブリッド化)できれば、可視光に対して透明な材料を得ることが可能である。これを応用して、さまざまな光学特性を有するナノ粒子を樹脂中に凝集させずに分散させることで、ナノ粒子の有する優れた特性を保持した光学材料を得ることができる。
【0004】
例えば、顔料粒子を光学材料としたカラーフィルターの場合、高い波長選択性を持たせることで、高コントラスト(CR)を実現できるが、分散体に数100ナノメートルの顔料粒子が混入すると、コントラストが低下し、商品としての価値を損なうことがわかっている。CRを上げるためには、微細な粒子であることは当然のことながら、粗大な粒子の存在がない高い単分散性を持つ必要がある。
【0005】
ところで、現在、析出タイプの微粒子製造方法、いわゆるビルドアップ法にて、単分散ナノ粒子の顔料微粒子を製造することが可能となってきている。これは、適当な良溶媒にて、有機顔料をいったん分子レベルに溶解し、後に貧溶媒を加えて、溶解度を下げて析出を促すものである。例えば、ビルドアップ法を用いた顔料微粒子の製造方法としては、特開2004−43776号公報がある。
【0006】
この製造方法は、有機顔料と分散剤とを含む顔料溶液を、貧溶媒である水と接触させることにより、顔料粒子を析出させるものである。
【特許文献1】特開2004−43776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の微粒子製造方法は、顔料溶液に含有される分散剤の使用量(含有量)に見合った分散性能がでないという問題がある。この結果、分散性能を十分に発揮させるには分散剤を過剰に使用しなくてはならず薬剤費のコストアップになる。分散剤に限らず、微粒子製造で使用される顔料誘導体や粒子成長抑制剤等の機能性薬剤についても同様の問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、少ない機能性薬剤の使用量で十分な機能を発揮することができるので薬剤費のコストダウンを図ることができると共に、これを単一のマイクロデバイスで実現できるので、装置コストを低減できる微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、微粒子形成材料を溶媒中に溶解させた材料溶解液と、該材料溶解液中における前記微粒子形成材料の溶解度を下げて前記微粒子形成材料の粒子を析出させる貧溶媒と、前記析出される粒子の表面部分で機能を発揮する機能性薬剤を含有させた機能性溶液と、前記微粒子形成材料に対して良溶媒として作用すると共に前記貧溶媒に対して略相溶性以上のバッファー液とを、それぞれ独立した入口流路を介して1つの合流領域で合流させ、該合流領域から1本の混合流路を通って流出させると共に、前記合流領域では、前記材料溶解液及び前記貧溶媒とから成る相と、前記機能性溶液の相との間に、前記バッファー液の相が形成されるように合流させることを特徴とする微粒子製造方法を提供する。
【0010】
本発明において、機能性薬剤は、分散剤、顔料誘導体、粒子成長抑制剤の少なくとも1つであることが好ましい。また、略相溶性以上とは50質量%以上の相溶性があることを言い、80質量%以上であればより好ましく、95質量%以上であれば更に好ましい。
【0011】
微粒子を製造する際に使用する機能性薬剤の1つである分散剤は、単分散性の良い微粒子を製造するうえで重要な薬剤であるが、分散剤は自由度のある主鎖、側鎖にて、電荷反発あるいは立体反発によってその機能を発揮する。このため、分散剤は、分散機能を発揮する機能部分が粒子の粒子表面に露出していないと、その機能を発揮できない。
【0012】
発明者は、分散剤が使用量に見合った分散性能を発揮しない従来の問題点を鋭意研究した結果、従来のように顔料溶液(材料溶解液)に分散剤(機能性薬剤)を予め含有させておくと、析出によって粒子核が生成される粒子形成初期から分散剤が存在することになり、使用(含有)される分散剤の機能部分が、粒子核の成長過程で粒子内部に取り込まれてしまうという知見を得た。分散剤の機能部分が粒子内部に取り込まれてしまうことは、NMR(核磁気共鳴装置)によるスピン拡散現象により確認できる。
【0013】
なお、粒子内部に取り込まれることで機能を十分に発揮できない機能性薬剤としては、顔料誘導体、粒子成長抑制剤等のように、微粒子の製造において粒子表面で機能を発揮する全ての薬剤を含む。
【0014】
本発明の請求項1によれば、形成される粒子の表面で機能を発揮する機能性薬剤(例えば分散剤)を材料溶解液に含有させないで機能性溶液として別途調製し、材料溶解液、貧溶媒、及び機能性溶液をそれぞれ独立した入口流路を介して1つの合流領域で合流させて1本の混合流路を通って流出させるようにした。更に、微粒子形成材料に対して良溶媒として作用すると共に前記貧溶媒に対して略相溶性以上のバッファー液を別の入口流路から合流領域に合流させて、合流領域において、材料溶解液及び貧溶媒から成る析出のための相と、機能性薬剤(例えば分散剤)を含む機能性溶液の相との間に、バッファー液の相が形成されるようにした。合流した各液は混合流路を流れて相互に混合した後に排出される。
【0015】
これにより、バッファー液の相が、析出する粒子と分散剤とが接触する時期(タイミング)を遅らせることができるので、粒子形成初期の段階で粒子核と分散剤が接触するのを防止し、粒子形成後期、即ち成長後の粒子と分散剤とを接触させて粒子表面に分散剤を吸着することが可能となる。この結果、分散剤の機能部分が粒子内部に取り込まれてしまうことがないので、分散剤の使用量に見合った分散機能を発揮させることができる。粒子と分散剤とが接触する時期をどの程度遅らせるかは、バッファー液の相厚みを変えることで適宜調整できる。
【0016】
従って、本発明の微粒子製造方法を実施することで、少ない機能性薬剤の使用量で十分な機能を発揮することができるので薬剤費のコストダウンを図ることができると共に、これを単一のマイクロデバイスで実現できる。本発明は各種の微粒子製造に適用できるが、特に、有機顔料微粒子を製造する場合に有効である。
【0017】
本発明においては、合流領域では、材料溶解液を貧溶媒で挟み込むことが、一層好ましい。また、前記それぞれ独立した入口流路及び混合流路の等価直径は0.5〜6mmの範囲であることが好ましい。また、材料溶解液と貧溶媒の体積流量比率は、1:0.5〜1:2の範囲であり、材料溶解液と分散剤溶液の体積流量比率は、1:1〜1:100の範囲であり、材料溶解液とバッファー液の体積流量比率は、1:0.5から1:2の範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の微粒子製造方法によれば、少ない機能性薬剤の使用量で十分な機能を発揮することができるので薬剤費のコストダウンを図ることができると共に、単一のマイクロデバイスで実現できるので装置コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明に係る微粒子製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0020】
以下の実施形態では、微粒子形成材料として有機顔料を用いると共に機能性薬剤として分散剤を用いて、有機顔料微粒子を製造する例で説明する。
【0021】
(マイクロデバイス)
まず、本発明の微粒子製造方法を実施するためのマイクロデバイスの好ましい態様について説明する。
【0022】
図1は、マイクロデバイスの装置本体10の横断面図であり、図2はa−a線に沿った縦断面図である。
【0023】
これらの図に示すように、マイクロデバイスの装置本体10は、基板12表面の略中央部に合流領域14が形成され、合流領域14を中心として、5本の入口溝16a、16b、16c、16d、16eと、1本の混合溝18aと、が放射状に形成されている。そして、図2に示すように、基板12上に蓋板20が被せられて一体化されることにより、5本の入口流路16A、16B、16C、16D、16Eと、1本の混合流路18と、が形成される。
【0024】
蓋板20には、入口溝16a〜16eの入口側端部と、混合溝18aの出口側端部とに対応する位置に、厚み方向に貫通する貫通孔が形成される。図2には、貫通孔のうち、入口流路16Cと混合流路18の貫通孔22及び24を示した。
【0025】
そして、5本の入口流路16A〜16Eから導入する4つの液体L1〜L4が、図1の左側から順に、有機顔料に対する貧溶媒L2、顔料溶解液L1(材料溶解液)、貧溶媒L2、バッファー液L4、分散剤溶液L3(機能性溶液)となるように、各液体L1〜L4の供給ライン26A、26B、26C、26D、26Eを各貫通孔に接続する。入口流路16A〜16Eへの各液L1〜L4の供給は、不図示の供給手段(例えばマイクロシリンジポンプ等)が使用される。各液体L1〜L4の供給ライン26A〜26Eのうち、少なくともバッファー液L4の供給ライン26Dには、バッファー液L4の供給量を調整するための供給量調整手段28を設けることが好ましい。図1では、バッファー液L4の供給ライン26Dのみに供給量調整手段28を設けたが、他のラインにも設けるようにしてもよい。
【0026】
入口流路16A〜16Eの流路幅は、特に限定はなく、例えば等価直径が1mm以下程度であることが好ましいが、有機顔料を良溶媒に溶解させたスラリー状の溶液である顔料溶解液を流路に詰まらせないように流すことが必要である。例えば、顔料溶解液の粘度は20cP以下であることが好ましく、5cP以下であることが一層好ましい。粘度が20cP以下である場合、入口流路16A〜16Eの流路幅は0.5mm〜6mmの範囲であることが好ましく、0.5mm〜2mmの範囲が一層好ましい。
【0027】
混合流路18の流路幅は、等価直径で0.5mm以上6mm以下、より好ましくは1mm以上6mm以下、特に好ましくは2mm以上6mm以下とすることができる。
【0028】
等価直径(equivalent diameter)は、相当(直)径とも呼ばれ、機械工学の分野で用いられる用語である。任意断面形状の配管(本発明では流路)に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径を等価直径という。等価直径(deq)は、A:配管の断面積、p:配管のぬれぶち長さ(周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、一辺aの正四角形管ではdeq=4a/4a=a、一辺aの正三角形管では、deq=a/√3、流路高さhの平行平板間の流れではdeq=2h、となる(例えば、(社)日本機械学会編「機械工学事典」1997年、丸善(株)参照)。
【0029】
混合流路18の長さL(混合流路18の入口18bから貫通孔24までの長さ)は、粒子の析出から分散までの反応を完全に完了できる長さであることが好ましい。また、合流領域14の幅は最大でも30mmを超えないことが好ましい。
【0030】
入口流路16A〜16E及び混合流路18の断面形状は、矩形に限らず、半円形、円形、V字型、楕円形、台形等であってもよい。
【0031】
マイクロデバイスの装置本体10は、マイクロドリル加工、マイクロ放電加工、めっきを利用したモールディング、射出成形、ドライエッチング、ウエットエッチング、及びホットエンボス加工等の精密加工技術を利用して製作することができる。
【0032】
装置本体10の材質としては、特に限定されるものではなく、使用する各種溶液に対する耐食性を有し、上述の加工技術を適用できるものであればよい。具体的には、金属材料(鉄、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、各種の金属等)、樹脂材料(アクリル樹脂、PDMS等)、ガラス(シリコン、パイレックス(登録商標)、石英ガラス等)や、石英ガラスやパイレックス(登録商標)ガラスにパリレン(パラキシレン蒸着)処理を行ったもの、フッ素系又は炭化水素系のシランカップリング処理を行ったものを好適に使用できる。
【0033】
また、必要に応じて装置本体10を加熱する加熱手段(図示せず)が設けられる。このような加熱手段としては、金属抵抗線やPolysilicon等のヒータ構造を装置本体に作り込む方法等がある。金属抵抗線やPolysilicon等のヒータ構造の場合、加熱についてはこれを使用し、冷却については自然冷却でサーマルサイクルを行うことで温度を制御する。この場合の温度のセンシングについては、金属抵抗線の場合には同じ抵抗線をもう一つ作り込んでおき、その抵抗値の変化に基づいて温度検出を行い、Polysiliconの場合には、熱電対を用いて温度検出を行う方法が一般的に採用されている。また、ペルチェ素子を用いた温度制御機能を装置本体に組み込んでもよい。
【0034】
次に、上記の如く構成されたマイクロデバイスを用いて本発明の微粒子製造方法について説明する。
【0035】
先ず、本発明で使用する各液L1〜L4を調製する。
【0036】
顔料溶解液L1は、有機顔料の固形物を良溶媒で湿らせたスラリー溶液として調製する。微粒子を析出・生成するビルドアッププロセスでは、有機顔料を分子レベルまで完全に溶解させておく必要がある。このため、上記スラリー溶液に酸又はアルカリ剤を添加することで、有機顔料を良溶媒に完全に溶解させた顔料溶解液L1を調製することが好ましい。
【0037】
また、顔料溶解液L1の良溶媒に相溶するが有機顔料を溶解しない貧溶媒L2と、分散剤を溶媒を含有させた分散剤溶液L3と、有機顔料に対して良溶媒として作用するが貧溶媒L2に対して略相溶性以上のバッファー液L4と、を用意する。なお、略相溶性以上とは50質量%以上の相溶性があることを言い、80質量%以上であればより好ましく、95質量%以上であれば更に好ましい。
【0038】
そして、図3(A)に示すように、顔料溶解液L1、貧溶媒L2、分散剤溶液L3、及びバッファー液L4を、それぞれの入口流路16A〜16Eから導入させて、合流領域14において、顔料溶解液L1及び貧溶媒L2から成る粒子核析出のための相と、分散剤を含有する分散剤溶液L3の相との間に、バッファー液L4の相が形成されるように合流させる。
【0039】
図3(B)は、合流領域14から混合流路18の入口位置18bでの各液が形成する相を模式的に示したものである。本実施の形態では、5本の入口流路16A〜16Eを用いて、顔料溶解液L1の相の両側を一対の貧溶媒L2の相で挟み込み、一方の貧溶媒L2の相と分散剤溶液L3の相との間にバッファー液L4の相が形成されるようにした。
【0040】
そして、合流した各液L1〜L4は、混合流路18を流れながら相互に混合して微粒子分散液LMを形成し、装置本体10から流出する。即ち、混合流路18において、顔料溶解液L1の相と貧溶媒L2の相とが混合されることにより、顔料溶解液L1中の有機顔料の溶解度が下がるので、顔料粒子の粒子核が析出する(核形成場)。また、顔料溶解液L1及び貧溶媒L2の相とバッファー液L4の相とが混合されることにより、析出した粒子核は、粒子成長しながら有機顔料に対して良溶媒として作用するバッファー液L4に取り込まれる(成長場)。また、バッファー液L4の相と分散剤溶液L3の相とが混合されることにより、成長した粒子と分散剤とが接触して形成された粒子が凝集しないように分散させる(分散場)。
【0041】
混合流路18における各相の混合は同時進行するが、合流領域14において、顔料溶解液L1及び貧溶媒L2の相と、分散剤溶液L3の相との間に、バッファー液L4の相が形成されるように合流させることにより、バッファー液L4の相が、粒子形成初期において析出する粒子核と分散剤とが接触する時期(タイミング)を遅らせることができる。この場合、時期をどの程度遅らせるかは、バッファー液L4の相厚みを制御することで調整する。調整の目安としては、核形成場で形成された粒子核が成長場で成長して分散場において分散剤で分散されるまでの時間が0.1〜10msecの範囲であることが好ましい。これは0.1msec未満では、粒子形成初期の粒子核に分散剤が接触し易くなるので、分散剤が成長した粒子内部に取り込まれ易くなる。また、10msecを超えると、成長した粒子の凝集が促進され、単分散な微粒子化が得られなくなる。
【0042】
これにより、顔料溶解液L1に予め分散剤を含有させた従来のように、分散剤の機能部分が図4(A)に示すように粒子内部に取り込まれてしまうことがなく、図4(B)に示すように粒子表面から露出させることができる。したがって、本発明の微粒子製造方法によれば、使用した分散剤の使用量に見合った分散機能を発揮することができる。
【0043】
また、本発明では、バッファー液L4を用いることで、各液L1〜L4をそれぞれの入口流路16A〜16Eを介して1つの合流領域14で合流させ、該合流領域14から1本の混合流路を通って流出させることができるので、単一のマイクロデバイスで本発明の微粒子製造方法を実現できる。
【0044】
なお、図1の装置本体10では、5本の入口流路と1本の混合流路とが、合流領域を中心として放射状に延びる場合で示したが、これに限定されるものではない。各液L1〜L4を流入させるための少なくとも4本の入口流路と、合流領域と、1本の混合流路があればよく、各流路の関係も放射状でなくてもよい。
【0045】
次に、本実施形態に使用される各種材料について説明する。
【0046】
(有機顔料)
本実施形態に用いられる有機顔料は、色相的に限定されるものではなく、マゼンタ顔料、イエロー顔料、またはシアン顔料であることができる。詳しくは、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンまたはイソビオラントロン系顔料またはそれらの混合物などのマゼンタ顔料、イエロー顔料、またはシアン顔料である。更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料である。
【0047】
特に好ましい顔料は、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、ジスアゾ縮合系、アゾ系、またはフタロシアニン系、ジオキサジン系顔料である。
【0048】
(分散剤)
本実施の形態で使用する分散剤としては、以下のものを使用することができる。
【0049】
アニオン性分散剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アニオン性スルホン酸塩(商品名アクアロンKH10:第一工業製薬)、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カチオン性分散剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
両イオン性分散剤は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。ノニオン性分散剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
有機顔料性分散剤とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される有機顔料性分散剤と定義する。例えば、糖含有有機顔料分散剤、ピペリジル含有有機顔料分散剤、ナフタレン又はペリレン誘導有機顔料分散剤、メチレン基を介して有機顔料親構造に連結された官能基を有する有機顔料分散剤、ポリマーで化学修飾された有機顔料親構造、スルホン酸基を有する有機顔料分散剤、スルホンアミド基を有する有機顔料分散剤、エーテル基を有する有機顔料分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する有機顔料分散剤などがある。
【0052】
高分子分散剤としては、具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール一部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール一部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、スチレン−アクリル酸塩共重合物、スチレン−メタクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル―メタクリル酸塩共重合物、スチレン−イタコン酸塩共重合物、イタコン酸エステル−イタコン酸塩共重合物、ビニルナフタレン−アクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−メタクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−イタコン酸塩共重合物、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドンが好ましい。これら高分子は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、アニオン性分散剤を水性媒体に含有させ、かつノニオン性分散剤および/または高分子分散剤を、有機顔料を溶解した溶液に含有させる態様を挙げることができる。
【0053】
分散剤の配合量は、有機顔料の均一分散性および保存安定性をより一層向上させるために、有機顔料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、更に好ましくは10〜250質量部の範囲である。0.1質量部未満であると有機顔料微粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。
【0054】
なお、上記各実施形態で説明した微粒子の製造方法では、有機顔料微粒子を製造する例で説明したが、本発明の微粒子製造方法及び装置は、各種の反応に適用することができる。他の微粒子形成材料としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化クロム、バナジン酸ビスマス、ルチル型混合相顔料、ハロゲン化銀、シリカ、及びカーボンブラックなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
有機顔料は、アルカリ性又は酸性の水性媒体に均一に溶解されなければならないが、酸性で溶解するかアルカリ性で溶解するかは対象とする顔料がどちらの条件で均一に溶解し易いかで選択される。一般に、分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合は、アルカリ性が用いられる。或いは、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられる。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合系顔料はアルカリ性で、フタロシアニン系顔料は酸性で溶解される。
【0056】
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウム等の無機塩基、又はトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基であるが、好ましくは無機塩基である。
【0057】
使用される塩基の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、無機塩基の場合、好ましくは顔料に対して1.0〜30モル当量であり、より好ましくは2.0〜25モル当量であり、さらに好ましくは3〜20モル当量である。有機塩基の場合、好ましくは顔料に対して1.0〜100モル当量であり、より好ましくは5.0〜100モル当量であり、さらに好ましくは20〜100モル当量である。
【0058】
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、もしくは燐酸等の無機酸、又は酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸であるが、好ましくは無機酸である。特に好ましくは硫酸である。
【0059】
使用される酸の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸及び有機酸の場合を問わず、好ましくは顔料に対して3〜500モル当量であり、より好ましくは10〜500モル当量であり、さらに好ましくは30〜200モル当量である。
なお、本実施の形態では、機能性薬剤として分散剤の例で説明したが、粒子表面で機能を発揮する薬剤全てに適用でき、例えば顔料誘導体、粒子成長抑制剤がある。
【0060】
(バッファー液)
バッファー液は、有機顔料に対して良溶媒として作用し、貧溶媒(例えば水)に対しては略相溶性以上の有機溶媒、即ち任意の割合で50質量%以上の相溶性がある有機溶媒が好ましく、80質量%以上であればより好ましく、95質量%以上であれば更に好ましい。例えば、バッファー液としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリルなどの非プロトン性溶媒が好ましい。具体例として、貧溶媒として水を使用する場合には、ジメチルスルホキシド(DMSO)をバッファー液として好適に使用することができる。
【0061】
バッファー液L4と分散剤溶液L3の有機溶剤との相溶性は、少なくとも50質量%の相溶性をもつことが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは、任意の割合で完全混合することが好ましい。例えば、分散剤溶液の有機溶剤としては、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、乳酸エチル、酢酸エチル、MEK(メチルエチルケトン)等が好ましい。
【0062】
(各液の体積流量比率)
顔料溶解液L1、水(貧溶媒)L2、分散剤溶液L3、及びバッファー液L4の体積流量比率は、顔料溶解液L1の流量を1とした場合に、次の関係であることが好ましい。顔料溶解液L1と水(貧溶媒)L2の体積流量比率は、1:0.5〜1:2の範囲が好ましい。また、顔料溶解液L1と分散剤溶液L3の体積流量比率は、1:1〜1:100の範囲が好ましい。更に、顔料溶解液L1とバッファー液L4の体積流量比率は、1:0.5〜1:2の範囲が好ましい。但し、混合に必要な流量(L1〜L3又はL1〜L4の合計)は、各液が合流した時点でのレイノルズ数、つまり混合流路出口のレイノルズ数で規定することが好ましく、出口レイノルズを変化させなければ、体積流量比率を変更することが可能である。なお、出口レイノルズ数は2000以上であることが好ましく、10000以上であることが更に好ましい。
【0063】
マイクロデバイス10は、特に限定しないが、4流路(図1)のマイクロデバイスや6流路(図4)のマイクロデバイスのような複数流路を持つ構造が必要となる。
【実施例】
【0064】
以下の実施例に基づき本発明の微粒子製造方法を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0065】
実施例は、図1に示したマイクロデバイスを用いて有機顔料微粒子の製造を行ったものである。マイクロデバイスは、縦・横ともに0.5mmの矩形状の混合流路を備えた微粒子製造装置を用いた。また、装置本体の蓋板を透明樹脂で形成したものを用いることにより、合流領域及び混合流路での相形成状態を顕微鏡で観察できるようにした。
【0066】
顔料溶解液L1、貧溶媒L2、分散剤溶液L3、及びバッファー液L4は以下のように調製した。
【0067】
(1)顔料溶解液L1の調製方法
顔料はマゼンタの一つであるPR122粉末を用いた。これを良溶媒である非プロトン性溶媒のジメチルスルホキシド(DMSO)にて5質量%になるように溶かしてスラリー状とした。更に、アルカリ剤の一つであるSM28(28質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液)にて完全に分子状態に溶解し、顔料溶解液L1とした。
【0068】
(2)貧溶媒L2として蒸留水を用いた。
【0069】
(3)分散剤溶液L3の調製
分散剤のポリビニルピロリドンK25とソルスパース24000(Avecia社製) を、分散溶媒である有機溶剤PGMEA中に合計質量が5質量%となるように含有させて、分散剤溶液L3とした。
【0070】
(4)バッファー液L4として上記ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた
(5)反応条件
i)設定流量…マイクロシリンジポンプ(ハーバード社製)を用いて、溶解液L1を20mL/分、貧溶媒L2を40mL/分、分散剤溶液L3を100mL/分、バッファー液を10mL/分の一定流量で供給した。
【0071】
ii)反応温度…18°Cで、試験を連続して20時間実施した。
【0072】
なお、比較例として、分散剤を顔料溶解液に含有させた場合についてY字流路のマイクロデバイスを使用し、分散剤を含有した顔料溶解液と貧溶媒とをY字流路の上2本の流路から流入させて合流領域で合流させた後、Y字流路の下1本の流路から排出した。
【0073】
実施例及び比較例ともに、分散剤の使用量は同じにした。そして、実施例及び比較例で製造された顔料微粒子の粒径及び単分散度(Mv/Mn)を、日機装株式会社のナノトラックUPA−EX150を用いて測定し、メジアン平均径及び算術標準偏差を測定した。
【0074】
その結果、実施例では、有機顔料微粒子の粒径は20.6nmで、単分散度(Mv/Mn)が1.33であった。
【0075】
また、比較例では、有機顔料微粒子の粒径は35.5nmで、単分散度(Mv/Mn)が1.70であった。
【0076】
また、実施例及び比較例の顔料微粒子をNMRで測定したところ、比較例の場合には、顔料粒子内部に分散剤の機能部分が取り込まれている割合が多かった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明を実施するマイクロデバイスの装置本体の一例を示す平面図である。
【図2】図1のマイクロデバイスのa−a’線断面図である。
【図3】本発明の製造方法の作用を模式的に示す拡大模式図である。
【図4】従来と本発明とにおける粒子と分散剤との関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0078】
10…マイクロデバイスの装置本体、12…基板、14…合流領域、16A〜16E…入口流路、18…混合流路、L1…顔料溶解液、L2…貧溶媒、L3…分散剤溶液、L4…バッファー液、LM…微粒子分散液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子形成材料を溶媒中に溶解させた材料溶解液と、該材料溶解液中における前記微粒子形成材料の溶解度を下げて前記微粒子形成材料の粒子を析出させる貧溶媒と、前記析出される粒子の表面部分で機能を発揮する機能性薬剤を含有させた機能性溶液と、前記微粒子形成材料に対して良溶媒として作用すると共に前記貧溶媒に対して略相溶性以上のバッファー液とを、それぞれ独立した入口流路を介して1つの合流領域で合流させ、該合流領域から1本の混合流路を通って流出させると共に、
前記合流領域では、前記材料溶解液及び前記貧溶媒とから成る相と、前記機能性溶液の相との間に、前記バッファー液の相が形成されるように合流させることを特徴とする微粒子製造方法。
【請求項2】
前記機能性薬剤は、分散剤、顔料誘導体、粒子成長抑制剤の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1の微粒子製造方法。
【請求項3】
前記バッファー液の相厚みを変えることで、前記材料溶解液及び前記貧溶媒の相と前記機能性溶液の相とが混合される時間を制御することを特徴とする請求項1又は2の微粒子製造方法。
【請求項4】
前記合流領域では、前記材料溶解液を前記貧溶媒で挟み込むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1の微粒子製造方法。
【請求項5】
前記それぞれ独立した入口流路及び前記混合流路の等価直径は0.5〜6mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1の微粒子製造方法。
【請求項6】
前記微粒子形成材料は、有機顔料であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の微粒子製造方法。
【請求項7】
前記材料溶解液と前記貧溶媒の体積流量比率は、1:0.5〜1:2の範囲であり、前記材料溶解液と前記分散剤溶液の体積流量比率は、1:1〜1:100の範囲であり、前記材料溶解液と前記バッファー液の体積流量比率は、1:0.5から1:2の範囲であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載の微粒子製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−77365(P2010−77365A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250605(P2008−250605)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】