説明

微粒子製造装置および微粒子製造方法、並びにトナー製造装置およびトナー製造方法

【課題】吐出圧力が適正に制御され吐出が安定化し、且つ、環境負荷が少なく低コストの微粒子製造装置および微粒子製造方法、並びにトナー製造装置およびトナー製造方法を提供すること。
【解決手段】液滴が固化して微粒子となる微粒子成分含有液14を吐出して液滴21を形成する液滴吐出手段2と、前記液滴吐出手段2に前記微粒子成分含有液14が所望の範囲内の圧力で供給されるように制御する圧力制御手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を製造する微粒子製造装置および微粒子製造方法、特に、微粒子であるトナーを製造するトナー製造装置およびトナー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
均一性を要する樹脂微粒子としては、電子写真用のトナー微粒子、液晶パネルのスペーサー粒子や、電子ペーパー用の着色微粒子、医薬品の薬剤担持体としての微粒子等が様々な用途で利用されている。均一な微粒子を製造する方法として、ソープフリー重合法など、液中で反応を誘起して均一な粒子径の樹脂微粒子を得る方法が知られている。このソープフリー重合法は、総じて小粒径の樹脂微粒子が得易い、粒径分布がシャープ、形状が球形に近い等の利点がある。しかし、その反面、ソープフリー重合法は通常水である溶媒中で樹脂微粒子から脱溶剤を行うためその製造効率が悪い。また、ソープフリー重合法は重合過程に長時間を必要とし、さらに固化終了後溶媒と樹脂微粒子を分離し、その後洗浄乾燥を繰り返す必要があり、その間多くの時間と、多量の水、エネルギーを必要とするなどの問題がある。
【0003】
このような問題に対して、本出願人は、特許文献1に記載されている噴射造粒によるトナー製造方法を提案した。
具体的には、特許文献1に係るトナー製造方法によれば、トナーの原料となるトナー成分液を液滴噴射する液滴噴射ユニットにて、複数のノズルが形成された薄膜を振動発生手段である電気機械変換素子によって振動させることで、上記薄膜が周期的に上下に振動する。これにより、薄膜で一部構成されている液室内の圧力が周期的に変化し、その周期的変化に対応してノズルから液滴がノズル下に広がる気相の空間へ吐出される。そして、吐出されたトナー液滴は気相の空間内に自然落下で同一の進行方向に進み、トナー液滴の列を形成する。気相に吐出されたトナー液滴はトナー組成物自体の液相と気相との表面張力差によって球体状に整形され、その後乾燥固化されトナー化される。
【0004】
また、特許文献2に記載されている噴射造粒によるトナー製造方法は、トナーの原料となる液体を吐出するヘッド部に液体を貯留し、圧力パルスにより液体を吐出し、乾燥固化することでトナー粒子を得る方法が記載されている。
しかしながら、上記特許文献2に記載の方法では、圧力パルスの駆動の際に、ヘッド部に貯留された液体に溶存する気体がミクロな気泡として発生し、吐出不良の原因となるという問題がある。
このような問題に対して、液体に溶存する気体を脱気装置によって除去することでヘッド内の気泡の発生を抑え、吐出を安定化させる方法が知られている。
【0005】
さらに、ヘッド部にかかる液体の圧力が高すぎたり低すぎたりする場合は、ヘッド部の吐出孔から液体の染み出しや空気の混入が起こり、液滴の吐出を不安定にする原因になるという問題がある。
このような問題に対して特許文献3には、インクジェットヘッドに供給する液体を貯留するタンクとタンク内の液体の圧力をモニタする圧力センサを有し、圧力センサの圧力が所望の圧力になるまでタンクの液体を排出することで、ヘッドにかかる圧力を制御する方法が記載されている。
しかしながら、上記特許文献3の方法では、噴射造粒法によるトナー製造装置のように連続的に液滴を吐出し大量の液体を消費する場合、ヘッドにかかる液体の圧力を制御するために大量の液体を排出することになり、環境負荷の増加やコスト増加につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、吐出圧力が適正に制御され吐出が安定化し、且つ、環境負荷が少なく低コストの微粒子製造装置および微粒子製造方法、並びにトナー製造装置およびトナー製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係る微粒子製造装置は、液滴が固化して微粒子となる微粒子成分含有液14を吐出して液滴21を形成する液滴吐出手段2と、前記液滴吐出手段2に前記微粒子成分含有液14が所望の範囲内の圧力で供給されるように制御する圧力制御手段と、を備えたことを特徴とする。
また、上記課題を解決するための本発明に係るトナー製造装置は、上記の微粒子は、トナーであることを特徴とする。
さらに、上記課題を解決するための本発明に係る微粒子製造方法は、微粒子成分含有液を吐出して液滴を形成する液滴吐出工程と、前記液滴吐出工程に前記微粒子成分含有液が所望の範囲内の圧力で供給されるように制御する圧力制御工程と、を備え、前記液滴を固化させて微粒子とすることを特徴とする。
またさらに、上記課題を解決するために本発明に係るトナー製造方法は、上記の微粒子は、トナーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出圧力が適正に制御され吐出が安定化し、且つ、環境負荷が少なく低コストの微粒子製造装置および微粒子製造方法、並びにトナー製造装置およびトナー製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るトナー製造装置の一実施の形態における構成を示す概略図である。
【図2】液柱共鳴液滴形成手段の構成を示す断面図である。
【図3】液柱共鳴液滴ユニットの構成を示す断面図である。
【図4】吐出口の断面図である。
【図5】N=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図6】N=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。
【図7】液柱共鳴液滴形成手段の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子を示す概略図である。
【図8】液柱共鳴液滴形成手段の別構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る微粒子製造装置は、液滴が固化して微粒子となる微粒子成分含有液14を吐出して液滴21を形成する液滴吐出手段2と、前記液滴吐出手段2に前記微粒子成分含有液14が所望の範囲内の圧力で供給されるように制御する圧力制御手段と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明に係る微粒子製造方法は、液滴が固化して微粒子となる微粒子成分含有液14を、液滴吐出手段2により吐出して液滴21を形成する微粒子製造方法であって、液滴吐出手段2に前記微粒子成分含有液14が所望の範囲内の圧力で供給されるように制御することを特徴とする。
【0011】
次に、本発明に係る微粒子製造装置および微粒子製造方法、並びにトナー製造装置およびトナー製造方法についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0012】
〔実施形態1〕
(全体構成の説明)
以下、本発明を適用した微粒子製造装置としてトナー製造装置の実施形態について説明する。
図1は本発明に係るトナー製造装置の一実施の形態における全体構成を示す概略図である。
本発明を適用したトナー製造装置は、主に液滴吐出ユニット、液体供給ユニット、乾燥捕集ユニットによって構成される。それぞれ、液体供給ユニットは液滴吐出ユニットに液体を供給し、液滴吐出ユニットは液体を吐出し液滴を形成し、乾燥捕集ユニットは吐出された液滴を乾燥固化させる。トナー製造装置はこれらの各ユニットにより微粒子としてのトナーを製造するものである。
【0013】
なお、本発明で吐出手段より吐出される液体としては、得ようとしている微粒子の成分が溶解又は分散された状態のものと、吐出させる条件下で液体であれば溶媒を含まなくてもよく、微粒子成分が溶融している状態のものと、を併せて「微粒子成分含有液」と称する。(以下、トナーを製造する場合についての説明のため、「微粒子成分含有液」を「トナー成分液」と記して説明する)
【0014】
(液体供給ユニット)
本実施形態の液体供給ユニットは吐出ユニットに液体を供給するため、トナー成分液14を収容する原料収容器13と、トナー成分液14中の溶存気体を脱気する脱気手段としての脱気装置3と、原料収容器13から脱気装置3にトナー成分液14を供給する供給経路16と、脱気した液体を一時的に貯蔵する一時貯留手段としての一時貯留容器5と、一時貯留容器5にトナー成分液14を供給する供給経路16’と、一時貯留容器5から液滴吐出手段としての吐出ユニット2にトナー成分液14を供給する供給経路16”と、廃液タンク22と、によって構成されている。
【0015】
原料収容器13は、別工程で調合されたトナー成分液14を収容していて、送液経路16を通じてトナー成分液14を脱気装置3に供給する。この送液経路(供給経路)16にはトナー成分液14が脱気装置3から原料収容器13に逆流することを防止するための逆止弁16aを設けることが好ましい。原料収容器14では、固形成分の沈降を防止するためトナー成分液14を攪拌することが好ましい。
【0016】
脱気装置3は、吐出安定化のためトナー成分液14中の溶存気体を取り除くために使用される。脱気装置3としては、容器内を減圧し液中に溶存する気体を除去する方法や液に超音波をあたえて脱気する方法などが知られていて、公知の脱気手段を使用することができる。本実施形態では、中空糸膜を用いた脱気装置(DIC社製 脱気モジュールSEPARERL PF03DG)を用い、気体透過性を有する中空糸の束にトナー成分液14を通液させ、ポンプ4で中空糸の束の容器内を減圧することで、トナー成分液中の溶存気体のみを除去することができる。
また、脱気装置3はトナー成分液14を閉じた系の中で循環させる循環経路の中に設置することができる。脱気装置3を循環経路内に設置する場合、トナー組成液14を複数回脱気装置に通過することで、1回の通過よりも溶存する気体の残量を低下させることができる。
【0017】
一時貯留容器5は、脱気されたトナー成分液14を外気から遮断した状態で一時的に貯蔵し、吐出ユニット2へトナー成分液14を供給する。なお、吐出安定化には、吐出ユニット2へ供給するトナー成分液14の圧力を適正に制御することが望ましい。本実施形態では、一時貯留容器5はトナー成分液14を内包するシリンダ部5aと、トナー成分液14を圧するピストン部5bから構成される。これにより、外気から遮断する密封容器を構成することができる。さらにピストン部5bを上下に可変することで密封容器内の容積の調整ができる。さらに上記ピストン部5bは、電動シリンダ5cに接続されていて、上下の変位量を制御できる。
【0018】
また、密封容器を構成するシリンダ部5aには、トナー成分液14の流入・排出のための穴が開いていて、三方弁5dが設置されている。脱気装置3から一時貯留容器5への供給経路16’および一時貯留容器5から吐出ユニット2への供給経路16”が三方弁5dを介してシリンダ5a内とつながっている。三方5d弁の経路は、一時貯留容器5へトナー成分液14を入れる際は、脱気装置3からの供給経路16’とシリンダ5aとをつなぐ経路とし、一時貯留容器5から吐出ユニット2へ送液する際は、シリンダ5aから吐出ユニット2へつなぐ供給経路16”とする。吐出ユニットには、上述の供給経路の他に排出経路と廃液タンク22が設置されていて、吐出ユニットから不要なトナー成分液を排出し回収する際に用いられる。なお、廃液タンク22には、トナー成分液の逆流を防止する開閉弁を有していて、不要なトナー成分液の排出時以外は開閉弁が閉じているためトナー成分液が逆流することはない。
【0019】
電動シリンダ5cの変位は、供給経路16”に設置したトナー成分液14の圧力を検知する圧力計P1の計測値に従って、例えば、値を一定にするように不図示の圧力制御手段により制御を行った。具体的には、圧力計P1の値が閾値を下回った場合は、シリンダの容積が減少するようピストンを動かし、同様に閾値を上回る場合はシリンダ容積を増加させる方向の移動量を与える。これにより、液滴吐出ユニットにかかる圧力は、ほぼ一定に制御することができる。液滴吐出ユニットにかかる圧力P1と、乾燥捕集ユニットの圧力P2は、P1≒P2の関係を満たすことが望ましい。P1>P2の関係である場合、トナー成分液14が液滴吐出手段である液滴吐出ヘッド11のノズル孔(吐出孔)19から染み出す恐れがあり、P1<P2の関係である場合には液滴吐出ヘッド11に気体が入り、吐出が停止する恐れがある。
【0020】
(液滴吐出ユニット)
液滴吐出ユニット2には、吐出孔によって外部と連通する液噴射領域を有する液室であって後述する条件下のもとで液柱共鳴定在波が発生する液柱共鳴液室内のトナー成分液を液滴として吐出孔から噴射する液滴化手段である液滴吐出ヘッドを複数配列して構成されている液滴吐出ヘッド11が設けられている。
【0021】
液滴吐出ヘッドは、図2に示すように、液共通供給路17及び液柱共鳴液室(流路)18を含んで構成されている。液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面にトナー液滴21を吐出するトナー吐出孔19と、トナー吐出孔19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生手段20とを有している。なお、振動発生手段20には、図示していない高周波電源が接続され、図2に示す例では気流通路12が液滴21の吐出方向と略平行に形成されていて、この気流通路12を気流が通過する。
【0022】
トナー成分液14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動発生手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅の大きな部分であって圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されている吐出孔19から液滴21が吐出される。
【0023】
この液柱共鳴による定在波の腹となる領域とは、定在波の節以外の領域を意味するものである。好ましくは、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域であり、より好ましくは圧力定在波の振幅が極大となる位置(速度定在波としての節)から極小となる位置に向かって±1/4波長の範囲である。定在波の腹となる領域であれば、吐出孔が複数で開口されていても、それぞれからほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出孔の詰まりも生じ難くなる。なお、液共通供給路17を通過したトナー成分液14は図示されない液戻り管を流れて原料収容器に戻される。
【0024】
液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内のトナー成分液14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路17から供給されるトナー成分液14の流量が増加し、液柱共鳴液室18内にトナー成分液14が補充される。そして、液柱共鳴液室18内にトナー成分液14が補充されると、液共通供給路17を通過するトナー成分液14の流量が元に戻る。
【0025】
液柱共鳴液滴吐出手段11における液柱共鳴液室18は、金属やセラミックス、シリコンなどの駆動周波数において液体の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームがそれぞれ接合されて形成されている。また、図2に示すように、液柱共鳴液室18の長手方向の両端の壁面間の長さLは、後述するような液柱共鳴原理に基づいて決定される。また、図3に示す液柱共鳴液室18の幅Wは、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、液柱共鳴液室18の長さLの2分の1より小さいことが望ましい。更に、液柱共鳴液室18は、生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴吐出ユニット2に対して複数配置されているほうが好ましい。その範囲に限定はないが、100〜2000個の液柱共鳴液室18が備えられた1つの液滴吐出ユニットであれば操作性と生産性が両立でき、もっとも好ましい。また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路17から連通接続され、液共通供給路17には複数の液柱共鳴液室18と連通している。
【0026】
また、液柱共鳴液滴吐出手段11における振動発生手段20は所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を、弾性板9に貼りあわせた形態が望ましい。弾性板は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成している。圧電体は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さいため積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の単結晶などが挙げられる。更に、振動発生手段20は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが望ましい。また、上記の1つの材質のブロック状の振動部材を液柱共鳴液室の配置にあわせて、一部切断し、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるような構成が望ましい。
【0027】
更に、吐出孔19の開口部の直径は、1[μm]〜40[μm]の範囲であることが望ましい。1[μm]より小さいと、形成される液滴が非常に小さくなるためトナーを得ることができない場合があり、またトナーの構成成分として顔料などの固形微粒子が含有された構成の場合、吐出孔19において閉塞を頻繁に発生して生産性が低下する恐れがある。また、40[μm]より大きい場合、液滴の直径が大きく、これを乾燥固化させて、所望のトナー粒子径3〜6μmを得る場合、有機溶媒でトナー組成を非常に希薄な液に希釈する必要がある場合があり、一定量のトナーを得るために乾燥エネルギーが大量に必要となってしまい、不都合となる。また、図2からわかるように、吐出孔19を液柱共鳴液室18内の幅方向に設ける構成を採用することは、吐出孔19の開口を多数設けることができ、よって生産効率が高くなるために好ましい。また、吐出孔19の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認して適宜決定することが望ましい。
【0028】
吐出孔19の断面形状は図2等において開口部で径が小さくなるようなテーパー形状として記載されているが、適宜断面形状を選択することができる。
図4に吐出孔19の取りうる断面形状を示す。
【0029】
(a)は吐出孔19の接液面から吐出口に向かってラウンド形状を持ちながら開口径が狭くなるような形状を有し、薄膜41が振動した際に吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力が最大となるため、吐出の安定化に際しては最も好ましい形状である。
(b)は吐出孔19の接液面から吐出口に向かって一定の角度を持って開口径が狭くなるような形状を有しており、このノズル角度24は適宜変更することができる。(a)と同様のこのノズル角度によって薄膜41が振動したときの吐出孔19の出口付近で液にかかる圧力を高めることができるが、その範囲60〜90°が好ましい。60°未満では液に圧力がかかりにくく、さらに薄膜41の加工もし難いため好ましくない。ノズル角度24が90°である場合は(c)が相当するが出口に圧力がかかりにくくなるため、90°が最大値となる。90°より大きいと吐出孔19の出口に圧力がかからなくなるため、液滴吐出が非常に不安定化する。
(d)は(a)と(b)を組み合わせた形状である。このように段階的に形状を変更しても構わない。
【0030】
次に、液柱共鳴における液滴形成ユニットによる液滴形成のメカニズムについて説明する。
先ず、図2の液柱共鳴液滴吐出手段11内の液柱共鳴液室18において生じる液柱共鳴現象の原理について説明する。液柱共鳴液室18内のトナー成分液の音速をcとし、振動発生手段20から媒質であるトナー成分液に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、下記式1の関係にある。
【0031】
λ=c/f ・・・(式1)
【0032】
また、図2の液柱共鳴液室18において固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さをLとし、更に液共通供給路17側のフレームの端部の高さh1(=約80[μm])は連通口の高さh2(=約40[μm])の約2倍あり当該端部が閉じている固定端と等価であるとした両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式2で表現される。
【0033】
L=(N/4)λ ・・・(式2)
(但し、Nは偶数)
【0034】
更に、両端が完全に開いている両側開放端の場合にも上記式2が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、上記式2のNが奇数で表現される。
【0035】
最も効率の高い駆動周波数fは、上記式1と上記式2より、下記式3と導かれる。
【0036】
f=N×c/(4L) ・・・(式3)
【0037】
しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式4、式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
【0038】
図5にN=1、2、3の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示し、かつ図6にN=4、5の場合の速度及び圧力変動の定在波の形状(共鳴モード)を示す。本来は疎密波(縦波)であるが、図5及び図6のように表記することが一般的である。実線が速度定在波、点線が圧力定在波である。
【0039】
例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図4の(a)からわかるように、速度分布の場合、閉口端で速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となり、直感的にわかりやすい。液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1〜5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、吐出孔の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。
【0040】
なお、音響学において、開口端とは長手方向の媒質(液)の移動速度がゼロとなる端であり、逆に圧力は極大となる。閉口端においては、逆に媒質の移動速度がゼロとなる端と定義される。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口、もしくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図5及び図6のような形態の共鳴定在波を生じるが、吐出孔数、吐出孔の開口位置によっても定在波パターンは変動し、上記式3より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れるが、適宜駆動周波数を調整することで安定吐出条件を作り出すことができる。例えば、液体の音速cが1,200[m/s]、液柱共鳴液室の長さLが1.85[mm]を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、上記式(2)より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。他の例では、液体の音速cが1,200[m/s]、液柱共鳴液室の長さLが1.85[mm]と、上記と同じ条件を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、上記式(2)より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれ、同じ構成の液柱共鳴液室においても、より高次の共鳴を利用することができる。
【0041】
図2に示す液柱共鳴液滴吐出手段11における液柱共鳴液室は、両端が閉口端状態と等価であるか、吐出孔の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの吐出孔の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図5の(b)及び図6の(a)のような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そして吐出孔側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できるために、好ましい構成である。
【0042】
また、吐出孔の開口数、開口配置位置、吐出孔の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。例えば吐出孔の数を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液供給路側に存在する吐出孔の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、また吐出孔の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚さによる吐出孔の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。このように決定された駆動周波数で振動発生手段に電圧を与えたとき、振動発生手段が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液供給側の端部に最も近い吐出孔までの距離をLeとしたとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記式4及び式5で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出孔から吐出することが可能である。
【0043】
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式4)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式5)
【0044】
なお、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLと、液供給側の端部に最も近い吐出孔までの距離Leとの比Le/Lが、Le/L>0.6を満たすことが好ましい。
【0045】
以上説明した液柱共鳴現象の原理を用いて、図2の液柱共鳴液室18において液柱共鳴圧力定在波が形成され、液柱共鳴液室18の一部に配置された吐出孔19において連続的に液滴吐出が発生する。なお、定在波の圧力が最も大きく変動する位置に吐出孔19を配置すると、吐出効率が高くなり、低い電圧で駆動することができる点で好ましい。また、吐出孔19は1つの液柱共鳴液室18に1つでも構わないが、複数個配置することが生産性の観点から好ましい。具体的には、2〜100個の間であることが好ましい。100個を超えた場合、100個を超えた吐出孔19から所望の液滴を形成させようとすると、振動発生手段20に与える電圧を高く設定する必要が生じ、振動発生手段20としての圧電体の挙動が不安定となる。また、複数の吐出孔19を開孔する場合、吐出孔間のピッチは20[μm]以上、液柱共鳴液室の長さ以下であることが好ましい。吐出孔間のピッチが20[μm]より小さい場合、隣り合う吐出孔より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率が高くなり、トナーの粒径分布悪化につながる。
【0046】
次に、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について当該様子を示す図7を用いて説明する。なお、図7において、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を−とする。また、液柱共鳴液室内に記した点線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を+とし、負圧は−とする。また、正圧であれば図7中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図7中の上方向に圧力が加わることになる。更に、図7において、上述したように液共通供給路側が開放されているが液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図2に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図2に示す高さh1)が約2倍以上であるため、液柱共鳴液室18はほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。
【0047】
図7の(a)は液滴吐出時の液柱共鳴液室18内の圧力波形と速度波形を示している。また、図7の(b)は液滴吐出直後の液引き込みを行った後再びメニスカス圧が増加してくる。これら図7の(a),(b)に示すように、液柱共鳴液室18における吐出孔19が設けられている流路内での圧力は極大となっている。その後、図7の(c)に示すように、吐出孔19付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行して液滴21が吐出される。
【0048】
そして、図7の(d)に示すように、吐出孔19付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室18へのトナー成分液14の充填が始まる。その後、図7の(e)に示すように、吐出孔19付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、トナー成分液14の充填が終了する。そして、再び、図7の(a)に示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出孔19から液滴21が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生し、また圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹に相当する液滴吐出領域に吐出孔19が配置されていることから、当該腹の周期に応じて液滴21が吐出孔19から連続的に吐出される。
【0049】
次に、本実施形態で用いた液柱共鳴現象によって液滴が吐出された構成について説明する。図2において液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85[mm]、N=2の共鳴モードであって、第一から第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置し、駆動周波数を330[kHz]のサイン波で行った。なお、吐出孔の開口部の直径は10μmであり、レーザーシャドウグラフィ法にて観察を行った結果、非常に径の揃った、速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現していた。吐出は非常に径の揃った、速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現していた。また、第一〜第四のノズルにおいて駆動周波数が330[kHz]付近では各ノズルからの吐出速度が均一となって、かつ最大吐出速度となっていた。この結果から、液柱共鳴周波数の第二モードである330[kHz]において、液柱共鳴定在波の腹の位置で均一吐出が実現していることがわかる。
【0050】
(乾燥捕集ユニット)
乾燥捕集ユニットは、先に説明した液滴吐出手段から気体中に吐出させたトナー成分液の液滴を固化させた後に、捕集することで微粒子としてのトナーを得ることが出来る。
乾燥捕集ユニット60は、チャンバー、トナー捕集部(固化粒子捕集手段)62及びトナー貯留部(固化粒子貯留部)63を含んで構成されている。チャンバー内では、図示していない搬送気流発生手段によって発生する下降気流の搬送気流が形成されていて、搬送気流導入口64から気流が導入され、搬送気流排出口65から排出される。尚、図2は液滴21の吐出方向に対して略平行な方向に搬送気流を与える構成の模式図を示し、図8は吐出方向に対して略直交する方向に搬送気流を与えた構成の模式図を示す。
【0051】
この図8に示す構成では、搬送気流は液滴吐出手段11からの液滴吐出方向に対して略直交する方向に向いている。搬送気流は液滴吐出手段11からの液滴吐出方向に対して略直交する方向であれば、液滴飛翔速度が上がって液滴の合一を防ぐことができる。液滴吐出ユニットの液滴吐出手段11のトナー吐出孔19から水平方向に噴射されたトナー液滴は、重力よってのみではなく、下降気流の搬送気流によっても下方に向けて搬送されるため、搬送気流の速度成分によって搬送速度が速くなり、噴射されたトナー液滴が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。また、液滴飛翔方向が変わることで各液滴の間隔が広がる。これらにより、噴射されたトナー液滴が空気抵抗によって減速されることを抑制できる。よって、トナー液滴を連続的に噴射したときに前に噴射されたトナー液滴が空気抵抗によって減速し、後に噴射されたトナー液滴が前に噴射されたトナー液滴に追い付くことでトナー液滴同士が合一して一体となりトナー液滴の粒径が大きくなることを、図8に示す構成ではより一層防止できる。
【0052】
搬送気流発生手段として、上流部分に送風機を設けて加圧する方法と、トナー捕集部62より吸引して減圧する方法のいずれを採用することもできる。また、トナー捕集部62によって捕集したトナー粒子はチャンバーと連通するトナー捕集チューブ(図示せず)を通りトナー貯留部63に貯留される。
【0053】
これによって、液滴吐出手段11から吐出された直後の液体の状態から、徐々にトナー成分液中に含まれる揮発溶剤が揮発することで乾燥が進行する。これにより、液滴は液体から固体に変化する。このように固体に変化した状態では、トナー捕集手部62でトナー粉体として捕集することができる。捕集したトナー粉体はその後、トナー貯留部63に格納することができる。なお、トナー貯留部63に格納されたトナーは必要に応じて更に別工程で乾燥される。
【0054】
(トナー)
次に、微粒子の一例としてのトナーについて説明する。
本実施形態に係るトナーは上述した本実施形態に係るトナー製造装置のように、本実施形態を適用したトナーの製造方法により製造されたトナーであり、これによ、粒度分布が単分散なものが得られる。
【0055】
具体的には、上記トナーの粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)としては、1.00〜1.15の範囲内にあるのが好ましい。より好ましくは1.00〜1.05である。また、体積平均粒径としては、1〜20[μm]の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは3〜10[μm]である。
【0056】
次に、本実施形態で使用できるトナー材料について説明する。先ず、前述したようにトナー組成物を溶媒に分散、溶解させたトナー成分液について説明する。
トナー材料としては、従来の電子写真用トナーと全く同じ物が使用できる。すなわち、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、等の結着樹脂を各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを上記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。
【0057】
上記トナー材料としては、少なくとも結着樹脂、着色剤およびワックスを含有し、必要に応じて、帯電調整剤、添加剤およびその他の成分を含有する。
【0058】
上記結着樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
上記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
【0059】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。また、THF可溶分としては、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂が好ましく、分子量5千〜3万の領域にメインピークを有する結着樹脂がより好ましく、5千〜2万の領域にメインピークを有する結着樹脂が最も好ましい。
【0060】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体のときの酸価としては、0.1[mgKOH/g]〜100[mgKOH/g]であることが好ましく、0.1[mgKOH/g]〜70[mgKOH/g]であることがより好ましく、0.1[mgKOH/g]〜50[mgKOH/g]であることが最も好ましい。
【0061】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60〜100[%]となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
【0062】
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価としては、0.1[mgKOH/g]〜100[mgKOH/g]であることが好ましく、0.1[mgKOH/g]〜70[mgKOH/g]であることがより好ましく、0.1[mgKOH/g]〜50[mgKOH/g]であることが最も好ましい。
【0063】
本実施形態において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0064】
本実施形態に係るトナーに使用できる結着樹脂としては、上記ビニル重合体成分及びポリエステル系樹脂成分の少なくともいずれか中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物、などが挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0065】
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50[mgKOH/g]を有する樹脂を60[質量%]以上有するものが好ましい。
【0066】
本実施形態において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
【0067】
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0[g]を精秤し、重合体成分の重さをW[g]とする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300[ml]のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150[ml]を加え溶解する。
(3)0.1[mol/l]のKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS[ml]とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB[ml]とし、以下の式で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価[mgKOH/g]=[(S−B)×f×5.61]/W
【0068】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が35〜80[℃]であることが好ましく、40〜75[℃]であることがより好ましい。Tgが35[℃]より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなることがある。また、Tgが80[℃]を超えると、定着性が低下することがある。
【0069】
本実施形態で使用できる磁性体としては、例えば、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄、(2)鉄、コバルト、ニッケル等の金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金、(3)及びこれらの混合物、などが用いられる。
【0070】
磁性体として具体的に例示すると、Fe、γ−Fe、ZnFe、YFe12、CdFe、GdFe12、CuFe、PbFe1219、NiFe、NdFe、BaFe1219、MgFe、MnFe、LaFeO、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも特に、四三酸化鉄、γ−三二酸化鉄の微粉末が好適に挙げられる。
【0071】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、などが挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0072】
上記異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させ、pH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0073】
上記磁性体の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましい。これらの磁性体の個数平均粒径としては、0.1〜2[μm]が好ましく、0.1〜0.5[μm]がより好ましい。上記個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0074】
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200[emu/g]、残留磁化2〜20[emu/g]のものが好ましい。上記磁性体は、着色剤としても使用することができる。
【0075】
上記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びこれらの混合物、などが挙げられる。
【0076】
上記着色剤の含有量としては、トナーに対して1〜15[質量%]が好ましく、3〜10[質量%]がより好ましい。
【0077】
本発明におけるトナーで用いる着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた結着樹脂の他に、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0078】
上記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練して得る事ができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いる事ができる。また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の、水を含んだ水性ペーストを、樹脂と有機溶剤とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も、着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため、乾燥する必要がなく、好適に使用される。混合混練するには、3本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に使用される。
【0079】
上記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
【0080】
また、上記マスターバッチ用の樹脂は、酸価が30[mgKOH/g]以下、アミン価が1〜100で、着色剤を分散させて使用することが好ましく、酸価が20[mgKOH/g]以下、アミン価が10〜50で、着色剤を分散させて使用することがより好ましい。酸価が30[mgKOH/g]を超えると、高湿下での帯電性が低下し、顔料分散性も不十分となることがある。また、アミン価が1未満であるとき、及び、アミン価が100を超えるときにも、顔料分散性が不充分となることがある。なお、酸価はJIS K0070に記載の方法により測定することができ、アミン価はJIS K7237に記載の方法により測定することができる。
【0081】
また、分散剤は、顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk−2001」(ビックケミー社製)、「EFKA−4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
【0082】
上記分散剤は、トナー中に、着色剤に対して0.1〜10[質量%]の割合で配合することが好ましい。配合割合が0.1[質量%]未満であると、顔料分散性が不充分となることがあり、10[質量%]より多いと、高湿下での帯電性が低下することがある。
【0083】
上記分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるスチレン換算重量での、メインピークの極大値の分子量で、500〜100000が好ましく、顔料分散性の観点から、3000〜100000がより好ましい。特に、5000〜50000が好ましく、5000〜30000が最も好ましい。分子量が500未満であると、極性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがあり、分子量が100000を超えると、溶剤との親和性が高くなり、着色剤の分散性が低下することがある。
【0084】
上記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。1質量部未満であると分散能が低くなることがあり、200質量部を超えると帯電性が低下することがある。
【0085】
本実施形態で用いるトナー成分液は、結着樹脂、着色剤とともにワックスを含有する。ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができるが、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
【0086】
上記ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸、プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール、ソルビトール等の多価アルコール、リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0087】
より好適な例としては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン、低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン、放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン、高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス、炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス、炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物、これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0088】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0089】
上記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70〜140[℃]であることが好ましく、70〜120[℃]であることがより好ましい。70[℃]未満では耐ブロッキング性が低下することがあり、140[℃]を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなることがある。
【0090】
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現させることができる。可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば融点の低いワックス、分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のもの、などが挙げられる。離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックスが挙げられ、その分子の構造としては、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10[℃]〜100[℃]のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ、などが挙げられる。
【0091】
2種のワックスを選択する際には、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100[℃]の場合に、機能分離が効果的に発現する。10[℃]未満では機能分離効果が表れにくいことがあり、100[℃]を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくいことがある。このとき、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向があることから、少なくとも一方のワックスの融点が70〜120[℃]であることが好ましく、70〜100[℃]であることがより好ましい。
【0092】
上記ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ、ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ、アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ、フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、フィッシャートロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ、パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
【0093】
いずれの場合においても、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなることから、トナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて、70〜110[℃]の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、70〜110[℃]の領域に最大ピークを有していることがより好ましい。
【0094】
上記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0095】
本実施形態ではDSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0096】
上記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418−82に準じて行う。本実施形態に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10[℃/min]で、昇温させた時に測定されるものを用いる。
【0097】
本実施形態におけるトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。この流動性向上剤は、噴射乾燥して得られたトナー粒子表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。
【0098】
上記流動性向上剤としては、例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナ、などが挙げられる。これらの中でも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。
【0099】
上記流動性向上剤の粒径としては、平均一次粒径として、0.001〜2[μm]であることが好ましく、0.002〜0.2[μm]であることがより好ましい。
【0100】
上記微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0101】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば、AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIE社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)、などが挙げられる。
【0102】
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80[%]の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0103】
有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0104】
流動性向上剤の個数平均粒径としては、5〜100[nm]になるものが好ましく、5〜50[nm]になるものがより好ましい。
【0105】
BET法で測定した窒素吸着による比表面積としては、30[m/g]以上が好ましく、60〜400[m/g]がより好ましい。表面処理された微粉体としては、20[m/g]以上が好ましく、40〜300[m/g]がより好ましい。
【0106】
これらの微粉体の適用量としては、トナー粒子100質量部に対して0.03〜8質量部が好ましい。
【0107】
本実施形態におけるトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体、キャリアの保護、クリーニング性の向上、熱特性、電気特性、物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0108】
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0109】
現像剤を調製する際には、現像剤の流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機を適宜選択して使用することができるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよいし、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよく、はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えても良いし、その逆でも良い。使用できる混合機の例としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、などが挙げられる。
【0110】
得られたトナーの形状をさらに調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、結着樹脂、着色剤からなるトナー材料を溶融混練後、微粉砕したものをハイブリタイザー、メカノフュージョン等を用いて、機械的に形状を調節する方法や、いわゆるスプレードライ法と呼ばれるトナー材料をトナーバインダーが可溶な溶剤に溶解分散後、スプレードライ装置を用いて脱溶剤化して球形トナーを得る方法、水系媒体中で加熱することにより球形化する方法、などが挙げられる。
【0111】
上記外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。上記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などを挙げることができる。
【0112】
上記無機微粒子の一次粒子径としては、5[nm]〜2[μm]であることが好ましく、5[nm]〜500[nm]であることがより好ましい。また、BET法による比表面積としては、20〜500[m/g]であることが好ましい。この無機微粒子の使用割合としては、トナーの0.01〜5[重量%]であることが好ましく、0.01〜2.0[重量%]であることがより好ましい。
【0113】
この他の外添剤、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0114】
このような外添剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても外添剤自身の劣化を防止することができる。上記表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
【0115】
静電潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合によって製造されたポリマー微粒子、などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1[μm]のものが好ましい。
【実施例】
【0116】
次に、実施形態で用いたトナー成分液およびトナー製作について説明する。
【0117】
(実施例1)
−着色剤分散液の調製−
先ず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(RegaL400;Cabot社製)17[質量部]、顔料分散剤3[質量部]を、酢酸エチル80[質量部]に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。該顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ビーズミル(アシザワファインテック社製LMZ型、ジルコニアビーズ径0.3[mm])を用いて強力なせん断力により細かく分散し、5[μm]以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
【0118】
−ワックス分散液の調整−
次にワックス分散液を調整した。
カルナバワックス18[質量部]、ワックス分散剤2[質量部]を、酢酸エチル80[質量部]に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80[℃]まで昇温しカルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ最大径が3[μm]以下となるようワックス粒子を析出させた。ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン−アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。得られた分散液を、更にビーズミル(アシザワファインテック社製LMZ型、ジルコニアビーズ径0.3[mm])を用いて強力なせん断力により細かく分散し、最大径が1[μm]以下なるよう調整した。
【0119】
−溶解乃至分散液の調製−
次に、結着樹脂としての樹脂、上記着色剤分散液及び上記ワックス分散液を添加した下記組成からなるトナー成分液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100[質量部]、上記着色剤分散液30[質量部]、ワックス分散液30[質量部]を、酢酸エチル840[質量部]を、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行い、均一に分散させた。溶媒希釈によるショックで顔料やワックス粒子が凝集することはなかった。
【0120】
−トナー製造−
前述のトナー製造装置を用いて、図2に示す構成の液滴吐出ヘッド11を用いてトナーの製造を行った。
トナー成分液14を、図1に示す液体供給ユニットの構成でトナー成分液を脱気したのち、液体の圧力を制御しつつ液滴吐出ユニットに供給した。このときの脱気装置の圧力は−90kPaであり、循環経路の流量は200[ml/min]とした。トナー成分液は、循環経路を30分循環させ脱気装置に通液し脱気させた後、一時貯留容器に貯留し、ヘッドユニットに供給した。このときヘッドユニットへの供給経路のトナー成分液の溶存酸素量を溶存酸素計(飯島電子工業製 有機溶媒用DO測定装置B506)を用いて測定したところ2.9mg/lであった。溶存酸素量は、液体中の溶存気体の残量をあらわす1つの指標であり、値が小さいほどトナー成分液中の溶存気体が少ない。本実施形態の吐出手段の場合、溶存酸素量は少なければ少ないほど、ヘッド内部でのミクロな気泡の発生確率が減少するため吐出安定化につながり、好ましくは3[mg/l]以下であり、より好ましくは2[mg/l]以下である。
【0121】
液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85[mm]、N=2の共鳴モードであって、第一から第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置したものを用いた。吐出口19は開口径が10.0[μm]であり、断面形状は図4の(a)のようなラウンド形状である。駆動信号発生源はNF社ファンクションジェネレーターWF1973を用い、ポリエチレン被覆のリード線で振動発生手段に接続した。この時の駆動周波数は液共鳴周波数に合わせて330[kHz]とした。また、入力信号は印加電圧サイン波ピーク値12.0[V]とした。上記の条件で液滴を吐出した際の液滴吐出速度は液滴吐出状態の撮影から算出した結果、14[m/s]であった。
【0122】
図1のトナーの乾燥捕集部のチャンバーは内径φ300[mm]、高さ2000[mm]の円筒形で垂直に固定されており、上端部と下端部は絞られている。上端部には液滴吐出手段11と搬送気流の流路が設置されている。下端部にはトナー捕集部62が設置している。搬送気流の流路は、幅80[mm]、高さ30[mm]の長方形断面の長さ200[mm]とし、気体流入側から50[mm]の位置に液滴吐出手段11を水平方向に設置した。このときの液滴吐出方向と搬送気流の方向とは略直交する関係にある。このときの搬送気流速度は液滴の合一防止のため20[m/s]となるように調整した。
【0123】
前述のトナー製造装置を用いて、作成したトナー成分液を吐出させ、図1のチャンバー内で乾燥固化したトナー粒子をトナー捕集部62で捕集した。
このとき1時間連続でトナー粒子の製造を行ったが吐出孔からの液の染み出しや吐出停止はなかった。
【0124】
このトナーの粒度分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA−3000)で下記に示す測定条件にて測定した。これを3回繰り返したところ、体積平均粒径(Dv)の平均は5.6[μm]、個数平均粒径(Dn)の平均は5.3[μm]であり、Dv/Dnの平均は1.06であった。フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)を使用した測定方法に関して以下に説明する。トナー、トナー粒子及び外添剤のフロー式粒子像分析装置による測定は、例えば、東亜医用電子社(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−3000を用いて測定することができる。
【0125】
測定は、フィルタを通して微細なごみを取り除き、その結果として10−3[cm]の水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60[μm]以上159.21[μm]未満)の粒子数が20個以下の水10[ml]中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬社製コンタミノンN)を数滴加え、更に、測定試料を5[mg]加え、超音波分散器STM社製UH−50で20[kHz],50[W/10cm]の条件で1分間分散処理を行い、さらに、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4000〜8000[個/10−3cm](測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60[μm]以上159.21[μm]未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
【0126】
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200[μm])の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
【0127】
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定できる。結果(頻度%及び累積%)は、0.06−400[μm]の範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60[μm]以上159.21[μm]未満の範囲で粒子の測定を行う。
【0128】
(比較例1)
比較例として、一時貯留容器を取り外し、送液経路を直接液滴吐出ユニットにとりつけた以外は実施例1と同様の操作でトナーの製造を行った。
吐出開始直後に複数の吐出孔から染み出しが発生し、数分後にはほぼすべての吐出孔から吐出が停止したためトナーの捕集にはいたらなかった。
本形態では、吐出孔にかかる圧力を制御できず過度な圧力がかかってしまったため吐出が不安定になったと考えられる。
【0129】
上記実施例1および比較例1について、吐出安定性およびトナー平均粒度分布について評価を行った結果を下記表1に示す。
【0130】
ここで、吐出安定性は、下記表1に記載の条件で60分間連続吐出させたとき、全吐出孔の数に対して60分間が経ったときに吐出が続いている吐出孔の割合を%で表し、下記の評価基準に従って評価した。
【0131】
<吐出安定性評価基準>
◎: 90%以上
○:80%以上90%未満
△:70%以上80%未満
×:70%未満
【0132】
また、捕集されたトナーの粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)は、下記の評価基準に従って評価した。
なお、比較例1ではトナーの捕集にいたらずトナー粒度分布の測定はできなかったため、「−」で評価結果を記した。
【0133】
<粒度分布評価基準>
◎:1.00以上1.07未満
○:1.07以上1.12未満
△:1.12以上1.15未満
×:1.15以上
【0134】
【表1】

【0135】
以上説明したように、本発明によれば、噴射造粒法での微粒子製造方法において、成分液の溶存気体を少ない状態に保ちつつ、吐出圧力を適正に制御することで安定して液滴を吐出でき、且つ、環境負荷が少なく低コストの微粒子製造方法、トナー製造方法、トナー製造装置を提供できる。
【符号の説明】
【0136】
1 トナー製造装置
2 液滴吐出ユニット
3 脱気装置
4 真空ポンプ
5 一時貯留容器
5a シリンダ部
5b ピストン部
5c 電動シリンダ
5d 三方弁
11 液滴吐出ヘッド
12 気流通路
13 原料収容器
14 トナー成分液
15 液循環ポンプ
16,16’,16” 液供給管
17 液共通供給路
18 液柱共鳴液室
19 トナー吐出孔
20 振動発生手段
21 トナー液滴
22 廃液タンク
60 乾燥捕集ユニット
62 トナー捕集部
63 トナー貯留部
P1 液圧力計
P2 チャンバー内圧力計
【先行技術文献】
【特許文献】
【0137】
【特許文献1】特開2008−286947号公報
【特許文献2】特許第3786034号公報
【特許文献3】特開2011―98302号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴が固化して微粒子となる微粒子成分含有液を吐出して液滴を形成する液滴吐出手段と、
前記液滴吐出手段に前記微粒子成分含有液が所望の範囲内の圧力で供給されるように制御する圧力制御手段と、を備えたことを特徴とする微粒子製造装置。
【請求項2】
前記液滴吐出手段に連なり、前記微粒子成分含有液を一時的に貯留する一時貯留手段を備え、
前記一時貯留手段は、容積が可変の密封容器を有し、
前記圧力制御手段は、前記密封容器に一時的に貯留された前記微粒子成分含有液が所望の範囲内の圧力で前記液滴吐出手段に供給されるように当該密封容器の容積を制御することを特徴とする請求項1に記載の微粒子製造装置。
【請求項3】
前記密封容器は、前記微粒子成分含有液を収容するシリンダと、該シリンダに収容された微粒子成分含有液を圧するピストンと、を含むことを特徴とする請求項2に記載の微粒子製造装置。
【請求項4】
前記液滴吐出手段に供給される前記微粒子成分含有液に溶存する溶存気体を脱気する脱気手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項5】
前記液滴吐出手段は、吐出孔が形成された液柱共鳴液室を有し、該液柱共鳴液室内の前記微粒子成分含有液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、
前記吐出孔は、前記定在波の腹となる領域に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項6】
微粒子は、トナーであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の微粒子製造装置。
【請求項7】
液滴が固化して微粒子となる微粒子成分含有液を、液滴吐出手段により吐出して液滴を形成する微粒子製造方法であって、
液滴吐出手段に前記微粒子成分含有液が所望の範囲内の圧力で供給されるように制御することを特徴とする微粒子製造方法。
【請求項8】
前記液滴吐出手段は、吐出孔が形成された液柱共鳴液室を有し、該液柱共鳴液室内の前記微粒子成分含有液に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、
前記吐出孔は、前記定在波の腹となる領域に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の微粒子製造方法。
【請求項9】
微粒子は、トナーであることを特徴とする請求項7または8に記載の微粒子製造方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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