説明

微細なカチオン性水性ポリマー分散液、その製造法及びその使用

分散剤としてカチオン性プレポリマーの水溶液中でのエチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって得られる微細なカチオン性水性ポリマー分散液であって、その際、まず、該カチオン性プレポリマーを重合開始剤の存在において:(a)少なくとも2種の異なる、それぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び/又はそれぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミドの混合物15〜40質量%、(b)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン40〜85質量%、(c)酸基を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー0.5〜5質量%及び(d)(b)とは異なる少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマー0〜20質量%、その際、(a)+(b)+(c)+(d)からの合計=100質量%である、を溶液重合において水と部分的にないし完全に混和可能な溶媒中で重合させることによって製造し、該プレポリマーの溶液/分散液に、次いで水を混ぜ、引き続き、該プレポリマーの水溶液中で重合開始剤の存在において(i)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン0〜29質量%、(ii)少なくとも1種のC1〜C18−(メタ)アクリル酸エステル50〜100質量%、(iii)直鎖又は分枝鎖のC1〜C30−カルボン酸の少なくとも1種のビニルエステル0〜30質量%及び(iv)(i)、(ii)及び(iii)とは異なる少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマー0〜30質量%、その際、(i)+(ii)+(iii)+(iv)からの合計=100質量%である、からのモノマー混合物の乳化重合、及び少なくとも1種の重合調節剤0〜10質量%の存在における該溶液重合及び/又は乳化重合を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、第一の重合工程においてカチオン性プレポリマーを分散剤として製造し、引き続き、エチレン性不飽和モノマーの存在におけるこのプレポリマーの水溶液中で乳化重合を実施する、二段階の重合によって得られる微細なカチオン性水性ポリマー分散液、その製造法及び紙、ボール紙及び厚紙用のサイズ剤としてのその使用に関する。
【0002】
DE2452585A1から、水相中での二段階の重合によって得られるコポリマー分散液が公知であり、その際、まず、酸基含有モノマー及び第三級アミノ基又は第四級アミノ基又は窒素を含有する複素環基を有するエチレン性不飽和モノマーからのコポリマーを水相中で共重合させ、次いでさらなる共重合下でスチレン及び/又はアクリロニトリル及び場合により(メタ)アクリル酸エステルならびに場合によりさらなるオレフィン性不飽和モノマーを加え、そして完全に重合させる。そのようにして製造されたポリマー分散液は、紙用のサイズ剤として使用される。
【0003】
DE2454397A1から、乳化共重合によってオレフィン性不飽和モノマーがカチオン性高分子分散剤/保護コロイドの存在において製造される、カチオン性水性コポリマー分散液が公知である。そのために、プレポリマーが、疎水性のエチレン性不飽和モノマーと、第四級窒素又は第三級窒素を含有するモノマーとの、水と混和可能な溶媒、好ましくはアルコール又はアセトン中での溶液重合によって合成される。第三級アミノ基をプロトン化するために水とギ酸を添加した後、引き続き、乳化重合によるプレポリマーの水溶液中で、疎水性モノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル及び/又はブタジエンが、場合により10質量%までのα,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸と共重合される。モノマーは、コポリマーのガラス温度が−15℃〜+60℃の間にあるように選択される。そのようにして得られる分散液は、紙、皮革又はテキスタイル平面構築物用の被覆剤及び紙用のサイズ剤として使用される。
【0004】
EP0051144A1には、二段階の重合によって製造される、両性の微細な水性ポリマー分散液が記載される。製造の第一段階では、水と混和可能な溶媒中での溶液共重合において低分子量のプレポリマーが合成され、その際、使用されるモノマー混合物は、さらなるモノマーの外に、アミノ基及び/又は第四級アミノを有する窒素含有モノマーそのつど1モル当たり0.5モル〜1.5モルのエチレン性不飽和カルボン酸を含有する。プレポリマーは、引き続き水中に分散され、かつ乳化重合において通常の水溶性開始剤の使用下で非イオン性エチレン性不飽和モノマーと反応される。得られた分散液は、紙用の内添サイズ剤及び表面サイズ剤として使用される。
【0005】
EP0058313A1から、紙用のカチオン性サイズ剤が公知であり、該サイズ剤は、まず、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート及び/又はN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、スチレン及びアクリロニトリルから成る水溶性カチオン性ターポリマーをアルコール中での溶液重合によって製造することによって得られる。引き続き行われる四級化反応の後、得られたN,N−ジメチルアミノ基の少なくとも10%が四級化されて、そして余りはプロトン化されて存在することになる。このターポリマーは、乳化剤として、それに引き続いて行われるアクリロニトリル/メタクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステルのモノマー混合物のラジカル開始乳化重合の際に使用される。
【0006】
US4,659,431では、同様に二段階の方法に従って製造される、紙用のカチオン性サイズ剤が記載される。まず、ターポリマーが、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート及び/又はN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、スチレン及びアクリロニトリルから成るモノマー混合物をアルコール中での溶液重合により重合させることによって製造される。続けて、N,N−ジメチルアミノ基の少なくとも10%が四級化され、その一方で、余りはプロトン化された形態で存在する。ターポリマーは、乳化剤として、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを90質量%まで、スチレンを5〜95質量%及び(メタ)アクリル酸エステルを5〜95質量%含有するモノマー混合物のラジカル開始乳化重合の際に使用される。
【0007】
EP1180527A1から、紙用の内添サイズ剤及び表面サイズ剤として使用されるカチオン性の微細な水性ポリマー分散液が公知である。分散液の製造は、同様に二段階の方法において行われ、その際、まず、飽和C1〜C6−カルボン酸中で溶液ポリマーが合成され、該ポリマーは、引き続き、場合により置換されたスチレン及び(メタ)アクリル酸エステルの乳化重合において使用される。乳化重合は、レドックス系と一緒に通常の水溶性開始剤、例えば過酸化物の使用下で実施される。
【0008】
WO05/121195A1から、さらに別の微細な両性の水性ポリマー分散液が公知であり、該分散液は、紙、ボール紙及び厚紙用のサイズ剤として適している。これらの分散液は、同様に二段階の方法において製造される。まず、プレポリマーが、プロトン化及び/又は四級化された遊離アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミド、場合により置換されたスチレン、場合によりアクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル、酸基を含有するエチレン性不飽和モノマーならびに場合によりそれとは異なる非イオン性エチレン性不飽和モノマーから製造される。そのようにして得られたプレポリマーの水溶液が、引き続き、少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマーとの乳化重合に供される。この少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーは、場合により置換されたスチレン、C1〜C18−(メタ)アクリル酸エステル及び場合によりそれとは異なる非イオン性エチレン性不飽和モノマーであってよい。
【0009】
WO08/071690A1は、同様に紙、ボール紙及び厚紙用のサイズ剤として使用される、さらに別の微細なカチオン性ポリマー分散液を記載する。二段階の方法において、まず、プレポリマーが、(メタ)アクリル酸エステル、場合により置換されたスチレン、場合によりアクリロニトリル又は(メタ)アクリロニトリル、エチレン性不飽和カルボン酸又は無水カルボン酸及び場合によりそれとは異なるエチレン性不飽和モノマーから製造される。プレポリマーの水溶液が、引き続き、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル、C1〜C4−アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、C6〜C14−アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル及び場合によりそれとは異なる非イオン性モノマーとの乳化重合において反応される。
【0010】
しかしながら、紙、ボール紙及び厚紙の製造用の新規の効果的な内添サイズ剤及び表面サイズ剤の絶え間ない需要が製紙工業において存在する。
【0011】
それゆえ本発明が基礎とする課題は、公知のポリマー分散液と比べて、紙用のサイズ剤として改善された効果を有する、さらに別のポリマー分散液を提供することである。
【0012】
課題は本発明により、分散剤としてカチオン性プレポリマーの水溶液中でのエチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって得られる微細なカチオン性水性ポリマー分散液により解決され、その際、まず、カチオン性プレポリマーを重合開始剤の存在において
(a)少なくとも2種の異なる、それぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び/又はそれぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミドの混合物15〜40質量%、
(b)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン40〜85質量%、
(c)酸基を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー0.5〜5質量%及び
(d)(b)とは異なる少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマー0〜20質量%、その際、(a)+(b)+(c)+(d)からの合計=100質量%である、
を溶液重合において水と部分的にないし完全に混和可能な溶媒中で重合させることによって製造し、プレポリマーの溶液/分散液に、次いで水を混ぜ、引き続きプレポリマーの水溶液中で重合開始剤の存在において
(i)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン0〜29質量%、
(ii)少なくとも1種のC1〜C18−(メタ)アクリル酸エステル50〜100質量%、
(iii)直鎖又は分枝鎖のC1〜C30−カルボン酸の少なくとも1種のビニルエステル0〜30質量%及び
(iv)(i)、(ii)及び(iii)とは異なる少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマー0〜30質量%、その際、(i)+(ii)+(iii)+(iv)からの合計=100質量%である、
からのモノマー混合物の乳化重合、及び少なくとも1種の重合調節剤0〜10質量%の存在における溶液重合及び/又は乳化重合を実施する。
【0013】
プレポリマー中に組み込まれるカチオン性及び/又は塩基性のモノマー(a)のモル量は、当然のことながら、アニオン性モノマー(c)の量より常に高く、そのためプレポリマーはカチオン性である。
【0014】
乳化重合用の分散剤としてあるいは保護コロイドとして作用するカチオン性プレポリマーは、重合の第一段階において製造される。これは、場合により比較的長く貯蔵することができる溶液ポリマーである。通常、溶液ポリマーは、その製造直後に重合の第二段階において分散剤として使用される。
【0015】
カチオン性プレポリマーは、上記モノマー混合物(a)、(b)、(c)及び場合により(d)を、少なくとも1種の重合開始剤の存在において重合することによって得られる。
【0016】
プレポリマーの製造のために、群(a)のモノマーとして、少なくとも2種の異なる、それぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有するカチオン性又は塩基性の(メタ)アクリル酸エステル、及び/又はそれぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する異なるカチオン性又は塩基性の(メタ)アクリルアミドの混合物が使用される。
【0017】
当然のことながら、少なくとも2種の異なる(メタ)アクリル酸エステルの混合物のみばかりでなく、少なくとも2種の異なる(メタ)アクリルアミドの混合物も使用することができる。少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル及び少なくとも1種の(メタ)アクリルアミドの混合物を使用することも可能である。
【0018】
第一の重合段階で製造されるプレポリマーは、成分(a)として、アミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する窒素含有モノマーを含有する。
【0019】
アミノ基を有するこの種の化合物は、一般式(I):
【化1】

[式中、
A=O、NH、
B=Cn2n(n=1〜8の範囲の整数)、
1、R2=Cm2m+1(m=1〜4の範囲の整数)及び
3=H、CH3
の化合物である。
【0020】
第四級アンモニウム基を有する化合物は、次の式(II):
【化2】

[式中、
-=OH-、Cl-、Br-、CH3−OSO3-
4=Cm2m+1(m=1〜4の範囲の整数)及び
残りの置換基は、前述の意味を有する]
により特徴付けられることができる。
【0021】
式(II)の化合物は、一般にカチオン性モノマーと呼ばれ、式(I)の化合物は塩基性モノマーと呼ばれる。塩基性のエチレン性不飽和モノマーは、例えば、アミノアルコールのアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、例えばN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピルアクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノネオペンチルアクリレート、アミノ基を含有するアクリルアミド又はメタクリルアミドの誘導体、例えばN,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドである。
【0022】
式(II)の第四級化合物は、式(I)の塩基性モノマーを公知の四級化剤、例えば塩化メチレン、塩化ベンジル、塩化エチル、臭化ブチル、硫酸ジメチル及び硫酸ジエチル又はエピクロロヒドリンと反応させることによって得られる。これらのモノマーは、四級化形態でその塩基特性を失う。例として挙げられるのは:N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートクロリド、N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリド、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルメタクリルアミドクロリド、N,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドクロリド、N,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミドクロリド、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリルアミドクロリド、ならびに相応するメトサルフェート及びサルフェートである。
【0023】
好ましくは、群(a)のモノマーは、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及びN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートから選択されており、それぞれ少なくとも1種の鉱酸又はカルボン酸との塩の形態で及び/又は四級化形態で使用される。有利には考慮に入れられる四級化剤は塩化メチルである。
【0024】
群(a)のモノマーは、プレポリマーの製造の際に、モノマー混合物(a)〜(d)を基準として、15〜40質量%の量で、好ましくは20〜35質量%の量で使用される。
【0025】
プレポリマーの製造のために、群(b)のモノマーとして、場合により置換されたスチレン、例えばスチレン、α−メチルスチレン又はエチルスチレンが使用される。群(b)のモノマーは、(a)〜(d)からのモノマー混合物中に40〜70質量%で、好ましくは50〜70質量%で含有されている。
【0026】
群(c)のモノマーの例は、エチレン性不飽和C3〜C6−カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、エタクリル酸、クロトン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル、例えばマレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、フマル酸モノプロピル、マレイン酸モノ−n−ブチル及びフマル酸モノ−n−ブチルならびにスチレンカルボン酸及びエチレン性不飽和無水物、例えば無水マレイン酸及び無水イタコン酸である。第一の重合段階で使用される溶媒の含水率に依存して、モノマーの無水物基はカルボキシル基に加水分解される。無水物基は、要するに、第一の重合段階で得られたポリマー溶液が水で希釈される場合は、いずれの場合も、第二の重合段階の前に加水分解される。そのうえ、モノマー(c)として、スルホン酸基及びホスホン酸基を含有するモノマー、例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びビニルホスホン酸が適している。酸基を含有するモノマーは、遊離酸基の形態でならびに部分的に又は完全にアルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、アンモニア及び/又はアミンで中和された形態で使用することができる。モノマーの酸基の中和のために、例えば、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン又はジエチレントリアミンが使用される。当然のことながら、2種以上の塩基を中和剤として使用することが可能である。好ましくは、このモノマーの群から、アクリル酸及びメタクリル酸又はアクリル酸とメタクリル酸からの任意の比での混合物が使用される。群(c)のモノマーは、(a)〜(d)からのモノマー混合物中に、0.5〜5質量%、好ましくは0.7〜3.5質量%の量で含有されている。
【0027】
プレポリマーの製造のために使用されるモノマー混合物は、モノマー(b)とは異なっている、場合により非イオン性のエチレン性不飽和モノマー(d)を含有していてよい。かかるモノマーの例は、アミド、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド及びN−エチルメタクリルアミド;ビニル化合物、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル又はビニルホルムアミド;C1〜C18−(メタ)アクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−、イソ-及びtert-ブチルアクリレート、n-、イソ-及びtert-ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n-デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート又は少なくとも1個のエチレンオキシド単位の反応によって製造されたアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステル、例えばヒドロキシエチルメタクリレート又はジエチレングリコールモノメタクリレートである。当然のことながら、上述のモノマーの混合物を使用することも可能である。群(d)のモノマーが使用される場合、それらは、モノマー(a)〜(d)の全量を基準として、20質量%までの量で、たいてい10質量%までの量で、モノマー混合物中に含有されている。
【0028】
モノマー(a)〜(d)についての質量%値の合計は常に100である。
【0029】
有利とされるのは、カチオン性プレポリマーが、
(a)N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及びN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートから選択された少なくとも2種の化合物からの混合物15〜40質量%、
(b)スチレン40〜85質量%、及び
(c)アクリル酸及び/又はメタクリル酸0.5〜5質量%
の重合によって得られる、微細なカチオン性ポリマー分散液である。
【0030】
第一の重合段階では、モノマー(a)〜(d)は、水と部分的にないし完全に混和可能な、水を15質量%まで含有していてよい溶媒中での溶液重合により重合される。好ましくは、実際に無水溶媒が使用される。溶媒は、たいてい水を約1質量%まで含有する。適した溶媒の例は、C1〜C3−カルボン酸、例えばギ酸、酢酸及びプロピオン酸、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール、ケトン、例えばアセトン及びメチルエチルケトン、アミド、例えばジメチルホルムアミドならびにジメチルスルホキシド、カーボネート、例えばプロピレンカーボネート又はエチレンカーボネート及びテトラヒドロフランである。酸基を持たない溶媒が使用される場合、酸基を含有するモノマー(c)が、好ましくは重合前に中和される。第一の重合段階では、好ましくは、無水ギ酸、無水酢酸又はイソプロパノールが使用される。次いで、残りの反応パートナーも同様に、有利には無水形態で使用される。
【0031】
第一の重合段階での溶液重合は、重合条件下でラジカルを形成する重合開始剤の存在において、20〜160℃の範囲の温度で、好ましくは60〜120℃の範囲の温度で行われる。使用される溶媒の沸点より高い重合温度にあるべき場合、重合は昇圧下で、例えば、攪拌機が装着されたオートクレーブ中で実施される。好ましくは、水と混和可能な有機溶媒に溶解する開始剤、例えば、アゾイソ酪酸ジニトリル、tert−ブチルペルオクトエート、tert−ブチルペルベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルピバレート、ラウロイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシドならびに過酸化水素が、場合により重金属カチオン、例えば鉄、セリウム又はマンガンのカチオンの存在において使用される。
【0032】
モノマーは、第一の重合段階で、溶媒を基準として、ポリマー含有率15〜70質量%、好ましくは30〜65質量%を有するポリマー溶液が得られる量で使用される。ポリマーは、水と部分的にないし完全に混和可能な有機溶媒に、好ましくははっきりと溶解性を示す。第一の段階で製造された溶液ポリマーは、分散剤/保護コロイドとして又は場合によっては、続く乳化重合用のシードとして利用されるそのために、プレポリマーの溶液に水を加えるか、あるいはポリマー溶液を水に導入する必要がある。分散割合も含有していてよいポリマー水溶液(コロイド溶液)が得られ、そこから水と部分的にないし完全に混和可能な有機溶媒を、場合によっては減圧下で留去することができる。
【0033】
第一の段階で製造されたカチオン性プレポリマーは、比較的低いモル質量、例えば1000〜100000のMw、好ましくは5000〜50000のMwを有する(光散乱によって測定)。分子量分布及び質量平均分子量の測定は、当業者に公知の方法、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー、光散乱又は超遠心分離によって実施することができる。
【0034】
水が混ぜられたポリマー溶液中での第一の重合段階で製造された溶液ポリマーの濃度は、例えば、2〜35質量%、好ましくは15〜25質量%である。水が混ぜられたプレポリマーの溶液は、次いで重合の第二の段階で、装入物あるいは乳化剤/保護コロイドとして又は場合によっては乳化重合用のシードとして使用される。
【0035】
プレポリマーの水溶液中で、第二の重合段階において、エマルションポリマーの製造が行われる。このために、
(i)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン0〜29質量%、
(ii)少なくとも1種のC1〜C18−(メタ)アクリル酸エステル50〜100質量%、
(iii)直鎖又は分枝鎖のC1〜C30−カルボン酸の少なくとも1種のビニルエステル0〜30質量%及び
(iv)モノマー(i)、(ii)及び(iii)とは異なる非イオン性モノマー0〜30質量%、
その際、(i)+(ii)+(iii)+(iv)からの合計=100質量%である、からのモノマー混合物が重合される。
【0036】
群(i)のモノマーは、カチオン性プレポリマーからの群(b)のモノマーに相当する。
【0037】
群(ii)のモノマーには、C1〜C18−アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが属する。モノマー(ii)は、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、テトラデシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート及びテトラデシルメタクリレートである。モノマーのこの群から、好ましくはn−ブチルアクリレート及びtert−ブチルアクリレートが、それぞれ単独で又は任意の混合物において使用される。n−ブチルアクリレートとtert−ブチルアクリレートからの、かかる混合物において、質量比は、通常、3:1〜1:3である。あるいはまたエチルヘキシルアクリレート及びエチルヘキシルメタクリレートも考慮に入れられる。
【0038】
群(iii)のモノマーは、直鎖又は分枝鎖のC1〜C30−カルボン酸のビニルエステルである。この種のカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸(ヘキサン酸)、ヘプタン酸、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸、カプリン酸(デカン酸)、ウンデカン酸、ラウリル酸(ドデカン酸)、トリデカン酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸(テトラコサン酸)、セロチン酸、メリシン酸(トリアコンタン酸)のような飽和非分枝鎖である。本発明により、飽和分枝鎖カルボン酸、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸(3−メチル酪酸)及びツベルクロステアリン酸ならびに高度に分枝した飽和カルボン酸も適している。後者は、例えば、ピバリン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオオクタン酸、ネオノナン酸及びネオデカン酸のようなバーサチック酸との用語で公知である。直鎖又は分枝鎖のC1〜C30−カルボン酸の適したビニルエステルは、例えば、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、酢酸ビニル、プロピルヘプタン酸ビニルエステル、ネオデカン酸ビニルエステル(Hexion Specialty Chemicals社のVeoVa(R)10)、ネオノナン酸ビニルエステル(Hexion Specialty Chemicals社のVeoVa(R)9)ならびにペラルゴン酸ビニルである。
【0039】
群(iv)のモノマーとして、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−C1〜C18−アルキルアクリルアミド、N−C1〜C18−アルキルメタクリルアミド、N−ビニルアミド、C1〜C18−アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルエステルならびにモノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びモノエチレン性不飽和ジカルボン酸とC2〜C4−ポリアルキレングリコールのエステルが適している。
【0040】
さらに、群(iv)のモノマーに数えられるのは、すでにa)で挙げられた、水性媒体中でプロトン化可能な少なくとも1個のアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有するモノエチレン性不飽和モノマーである。
【0041】
そのうえ、モノマー(iv)として架橋性モノマーも使用することができる。かかる架橋剤の例は、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、アルコキシル化された二価アルコールのジアクリレート及びジメタクリレート、ジビニル尿素及び/又は共役ジオレフィン、例えばブタジエン又はイソプレンである。
【0042】
使用目的に応じて、群(iv)のモノマーは、いわゆる官能性モノマー、すなわち、重合可能なC=C二重結合の外になお反応性官能基、例えば、オキシラン基、反応性カルボニル基、例えばアセトアセチル基、イソシアネート基、N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基、トリアルキルシリル基、トリアルコキシシリル基又はそれ以外の、求核剤に対して反応性の基も有するモノマーも包含してよい。
【0043】
有利なのは、
(i)スチレン0〜29質量%、
(ii)n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート又は質量比3:1〜1:3のn−ブチルアクリレートとtert−ブチルアクリレートからの混合物71〜100質量%
からのモノマー混合物である。
【0044】
モノマー(i)、(ii)、場合により(iii)及び場合により(iv)の重合は、乳化重合の方法に従って行われ、すなわち、重合されるべきモノマーは、ポリマー混合物中に水性エマルションとして存在する。モノマーエマルションを安定化するために、上記のカチオン性プレポリマーが使用される。
【0045】
乳化重合は、たいてい40〜150℃の温度範囲で、好ましくは60〜90℃の温度範囲で、好ましくは水溶性重合開始剤の通常の量の存在において行われる。たいてい、重合されるべきモノマーを基準として、0.2〜4質量%、好ましくは0.5〜2質量%の少なくとも1種の開始剤が使用される。開始剤として、アゾ化合物、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、無機過酸化物及びレドックス系、例えば、過酸化水素とアスコルビン酸の組み合わせ物又はtert−ブチルヒドロペルオキシとアスコルビン酸の組み合わせ物が考慮に入れられる。レドックス系は、そのうえ活性化のために、なお重金属カチオン、例えばセリウムイオン、マンガンイオン又は鉄(III)イオンを含有することができる。
【0046】
乳化重合の際に、モノマーを直に装入物に配量するか、又はモノマーを水性エマルション又はミニエマルションの形態で重合バッチに供給するかのいずれかを行うことができる。モノマーを水に乳化するために、例えば、第一の重合段階からの水で希釈されたプレポリマーの一部を乳化剤として利用することができるか、又はモノマーを、非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両性の乳化剤により水に乳化することができる。
【0047】
通常の乳化剤は、単に場合により使用されるのみである。使用される量は、例えば、0.05〜3質量%であり、かつ、好ましくは0.5〜2質量%の範囲にある。通常の乳化剤は、文献に詳細に記載されている(例えば、M.Ash,I.Ash,Handbook of Industrial Surfactants,Third Edition,Synapse Information Resources Inc.を参照されたい)。通常の乳化剤の例は、長鎖一価アルコール(C10〜C22−アルカノール)と、アルコール又はエトキシル化フェノール又は硫酸でエステル化されたアルコキシル化アルコール(それらは、たいていアルカリ液で中和された形態で使用される)1モル当たり4〜50モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの反応生成物である。さらに別の通常の乳化剤は、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸エステル、第四級アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩、例えばジメチル−C12〜C18−アルキルベンジルアンモニウムクロリド、第一級、第二級及び第三級の脂肪アミン塩、第四級アミドアミン化合物、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩及びアルキルオキサゾリニウム塩である。有利には、しかしながら、乳化剤は使用されない。
【0048】
乳化重合を実施するためのモノマーの配量は、その際、連続的に又は不連続的に行うことができる。モノマー混合物が使用される場合、モノマーの配量は、混合物として又は別々にあるいは段階手法又は勾配手法のやり方で行うことができる。その際、添加は、配量期間にわたって均等に又は不均等に、すなわち、配量速度を変えながら行うことができる。プレポリマーの水性溶液/分散液を含有する装入物へのモノマーの部分量の添加によって、膨潤手法による配量が可能である。
【0049】
本発明の有利な実施形態では、溶液重合及び/又は乳化重合は、重合調節剤の存在において実施される。例えば、適した調節剤は、メルカプタン、例えばエチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン又はtert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸又は四臭化炭素である。さらに、適した調節剤は、テルペンの類から、有利には単環式テルペンの類から、及びとりわけ有利にはメンタジエンの類から成る。メンタジエンの群の上述の調節剤の中で、テルピノールが極めて有利である。重合調節剤が使用される場合、調節剤の量は、例えば、0.1〜10質量%、有利には0.5〜5質量%である。
【0050】
反応混合物のpH値は、第二の重合段階では、例えば、1〜5の範囲にあり、たいていpH値は2〜4である。
【0051】
余りのモノマーを出来る限り十分にポリマー分散液から除去するために、本来の重合の完了後に、目的に応じて後重合が実施される。このために、ポリマー分散液に、主たる重合の終了後に、例えば、過酸化水素、過酸化物、ヒドロペルオキシド及び/又はアゾ開始剤の群からの開始剤が添加される。開始剤と、適した還元剤、例えば、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムとの組み合わせも同様に可能である。有利には、油溶性の、水に難溶性の開始剤が使用され、例えば通常の有機過酸化物、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド又はビスシクロヘキシルペルオキシジカーボネートが用いられる。後重合のために、反応混合物は、例えば、主たる重合が実施された温度又は20℃までの温度分だけ低い、好ましくは10℃までの温度分だけ低い温度に相当する温度に加熱される。主たる重合は、重合開始剤が消費されている場合、あるいはモノマー変換率が、例えば、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99.5%である場合に終了される。後重合のために、好ましくはtert−ブチルヒドロペルオキシドが使用される。重合は、例えば、40〜110℃、たいてい50〜105℃の温度範囲で実施される。
【0052】
第二の重合段階では、プレポリマーの組成に基づきカチオン特性を有する微細な水性ポリマー分散液が得られる。分散された粒子の平均粒度は、例えば、5〜250nm、好ましくは<100nm、とりわけ有利には10〜60nmである。平均粒度は、当業者に公知の方法、例えば、レーザー相関分光法、超遠心処理又はCHDFによって測定することができる。分散されたポリマー粒子のさらに別の基準はLD値である。LD値(光透過率)の測定のために、そのつど試験されるべきポリマー分散液が、0.1質量%の水性処方において、2.5cmのエッジ長さを有するセル内で波長600nmの光を用いて測定される。測定値から平均粒度を算出することができる(B.Verner,M.Barta,B.Sedlacek,Tables of Scattering Functions for Spherical Particles,Prag 1976,Edice Marco,Rada D−DATA,SVAZEK D−1を参照されたい)。
【0053】
乳化重合の際に発生する水性分散液のポリマー濃度は、例えば、15〜45質量%、好ましくは25〜35質量%である。
【0054】
本発明の対象はまた、分散剤としてカチオン性プレポリマーの水溶液中でのエチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって得られる微細なカチオン性水性ポリマー分散液であって、その際、まず、該カチオン性プレポリマーを重合開始剤の存在において
(a)少なくとも2種の異なる、それぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び/又はそれぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミドの混合物15〜40質量%、
(b)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン40〜85質量%、
(c)酸基を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー0.5〜5質量%及び
(d)(b)とは異なる少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマー0〜20質量%、その際、(a)+(b)+(c)+(d)からの合計=100質量%である、
を溶液重合において水と部分的にないし完全に混和可能な溶媒中で重合させることによって製造し、該プレポリマーの溶液/分散液に、次いで水を混ぜ、引き続き、該プレポリマーの水溶液中で重合開始剤の存在において
(i)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン0〜29質量%、
(ii)少なくとも1種のC1〜C18−(メタ)アクリル酸エステル50〜100質量%、
(iii)直鎖又は分枝鎖のC1〜C30−カルボン酸の少なくとも1種のビニルエステル0〜30質量%及び
(iv)(i)、(ii)及び(iii)とは異なる少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマー0〜30質量%、その際、(i)+(ii)+(iii)+(iv)からの合計=100質量%である、
からのモノマー混合物の乳化重合、及び少なくとも1種の重合調節剤0〜10質量%の存在における溶液重合及び/又は乳化重合を実施する。
【0055】
上記の微細なカチオン性水性ポリマー分散液は、紙、ボール紙及び厚紙用のサイズ剤として使用される。該ポリマー分散液は、例えば筆記用紙及び印刷用紙ならびに包装用紙及び液体の包装用の紙の、全ての紙種の製造のために使用することができる。該ポリマー分散液は、その際、殊に紙製品の表面サイジング用に適している。その際、本発明による分散液は、表面サイジングの際に適した全ての処理方法により加工することができ、該分散液は、しかしながら、内添サイズにも使用することができる。サイズ剤としての使用のために、水性ポリマー分散液は、水の添加によって、たいてい、例えば0.05〜5質量%のポリマー含有率に希釈される。ポリマー分散液の量は、仕上げ加工されるべき紙又は紙製品の所望のサイズ度に従う。かかる調製溶液は、場合により、さらに別の物質、例えば、デンプン、染料、蛍光増白剤、殺生剤、紙力増強剤、固着剤、泡止め剤、歩留向上剤及び/又は脱水剤を含有してよい。
【0056】
サイズ剤分散液は、サイズプレス又はその他の塗工ユニット、例えばフィルムプレス、スピードサイザー又はゲートロールによって、紙、ボール紙又は厚紙に塗布することができる。そのようにして紙製品の表面に塗工されるポリマーの量は、例えば、0.005〜1.0g/m2、好ましくは0.01〜0.5g/m2である。
【0057】
本発明によるポリマー分散液は、すでに非常に少ない配量で、優れたサイズ効果を、未漂白の軟材、未漂白の闊葉樹材、未漂白の硬材、漂白された軟材、漂白された闊葉樹材、漂白された硬材、脱インキ繊維の様々な繊維型又は種々の繊維型からの混合物により製造された全ての紙に対して示す。さらに、本発明による分散液は、通常のデンプン、例えば、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプンと非常に良好な相容性を示す。そのうえ、本発明による分散液は、紙ウェブの製造及び乾燥の直後に完全なサイズ形成を示す。
【0058】
本発明を、限定するものではない次の実施例を手がかりにして詳細に説明する。
【0059】
実施例
実施例におけるパーセント値は、文脈から明らかではない限り、質量パーセントを意味する。
【0060】
実施例1
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン165g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート10g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド55gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0061】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン40gとtert−ブチルアクリレート225gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合し、かつ70℃に冷却した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液10gを添加し、かつ20分間、後攪拌した。10質量%のアスコルビン酸溶液10gの再度の添加を行った。その後、反応混合物を、20分間、後攪拌した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0062】
30.4質量%の固形分及び92.2%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0063】
実施例2
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン165g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート10g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド55gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0064】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン40gとtert−ブチルアクリレート225gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液5gを添加した。その後、5分間にわたり、5質量%の過酸化水素溶液20gを配量した。引き続き、反応混合物を30分間、後攪拌し、その際、70℃に冷却した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0065】
30.3質量%の固形分及び93.7%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0066】
実施例3
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン165g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート10g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド55g、アクリル酸5gならびにテルピノール2.5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0067】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン40gとtert−ブチルアクリレート225gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液5gを添加した。その後、5分間にわたり、5質量%の過酸化水素溶液20gを配量した。その後、反応混合物を30分間、後攪拌し、その際、70℃に冷却した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0068】
29.1質量%の固形分及び85.8%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0069】
実施例4
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン165g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート10g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド55gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0070】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン40g、tert−ブチルアクリレート225gならびにテルピノール2.5gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液5gを添加した。その後、5分間にわたり、5質量%の過酸化水素溶液20gを配量した。その後、反応混合物を30分間、後攪拌し、その際、70℃に冷却した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0071】
26.5質量%の固形分及び86,7%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0072】
実施例5
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン155g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート55g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド10gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0073】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び20質量%の還元剤溶液(Brueggemann社のBrueggolit(R)FF6)5gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり75℃で添加した。その後、スチレン35gの添加を行い、かつ即座に、スチレン20gとtert−ブチルアクリレート220gの混合物から成るモノマー供給を開始し、そして120分の時間にわたって配量した。これと平行して、5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって別個の供給において添加した。開始剤供給の終了後、60分間、後重合した。引き続き、20質量%の還元剤溶液((Brueggemann社のBrueggolit(R)FF6)5gならびに市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gを添加し、かつ30分間、後攪拌した。引き続き、再度、20質量%の還元剤溶液((Brueggemann社のBrueggolit(R)FF6)5gを添加し、30分間、後攪拌し、かつ室温に冷却した。
【0074】
30.3質量%の固形分及び91.1質量%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0075】
実施例6
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン165g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート30g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド5g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート30gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0076】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン40gとtert−ブチルアクリレート225gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液5gを添加した。その後、5分間にわたり、5質量%の過酸化水素溶液20gを配量した。その後、反応混合物を30分間、後攪拌し、その際、70℃に冷却した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0077】
30.3質量%の固形分及び93.7%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0078】
実施例7
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン165g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート30g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド5g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート30g、アクリル酸5gならびにテルピノール2.5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0079】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン40gとtert−ブチルアクリレート225gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液5gを添加した。その後、5分間にわたり、5質量%の過酸化水素溶液20gを配量した。その後、反応混合物を30分間、後攪拌し、その際、70℃に冷却した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0080】
28.6質量%の固形分及び82.5%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0081】
実施例8
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン165g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート30g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド5、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート30gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0082】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン40g、tert−ブチルアクリレート225gならびにテルピノール2.5gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液5gを添加した。その後、5分にわたり5%の過酸化水素溶液20gを配量した。その後、反応混合物を30分間、後攪拌し、その際、70℃に冷却した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0083】
26.5質量%の固形分及び88.4%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0084】
実施例9
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン165g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート30g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド5g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート30gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0085】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン40gとtert−ブチルアクリレート225gから成る混合物を、120分の時間をかけて配量した。同時に、別個の供給において5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液10gを添加し、かつ20分間、後攪拌した。その後、再度、10質量%のアスコルビン酸溶液10gを加え、かつ20分間、後攪拌した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0086】
29.9質量%の固形分及び84.8%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0087】
実施例10
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン165g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート30g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド5g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート30gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0088】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン53gとtert−ブチルアクリレート212gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において、5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液10gを添加し、かつ20分間、後攪拌した。その後、再度、10質量%のアスコルビン酸溶液10gを加え、かつ20分間、後攪拌した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0089】
30.4質量%の固形分及び82.4%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0090】
実施例11
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン165g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート10g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド55gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0091】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン53gとtert−ブチルアクリレート212gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において、5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合し、かつ70℃に冷却した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液10gを添加し、かつ20分間、後攪拌した。10質量%のアスコルビン酸溶液10gの再度の添加を行った。その後、反応混合物を、20分間、後攪拌した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0092】
29.8質量%の固形分及び93.1%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0093】
実施例12
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン155g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート30g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド5g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート30gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0094】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン55gとtert−ブチルアクリレート220gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において、5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液10gを添加し、かつ20分間、後攪拌した。その後、再度、10質量%のアスコルビン酸溶液10gを加え、かつ20分間、後攪拌した。最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0095】
31.3質量%の固形分及び74.6%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0096】
実施例13
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン155g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート10g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド55gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で60分間、後重合した。
【0097】
均一なポリマー材料に、次いで85℃で脱イオン水870gを混ぜた。10質量%の硫酸鉄(II)溶液1.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液10gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり80℃で添加した。その後、80℃で、スチレン55gとtert−ブチルアクリレート220gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、30分間、後重合し、かつ70℃に冷却した。引き続き、10質量%のアスコルビン酸溶液10gを添加し、かつ20分間、後攪拌した。10質量%のアスコルビン酸溶液10gの再度の添加を行った。その後、反応混合物を、20分間、後攪拌した。
【0098】
最後に、市販の泡止め剤(BASF SEのAfranil(R)T)5gならびに脱イオン水65gを添加し、かつ室温に冷却した。
【0099】
30.4質量%の固形分及び72.6%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0100】
比較例1、WO05/121195A1からの実施例6に応じたもの
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン133g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート57gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で30分間、後重合した。
【0101】
均一なポリマー材料に、次いで60℃で30分にわたり、脱イオン水971.5gを混ぜた。1質量%の硫酸鉄(II)溶液7.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液5gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり添加した。その後、60℃で、スチレン119.2gとtert−ブチルアクリレート119.2gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において、5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、60℃で60分間、後重合し、かつ反応混合物を引き続き冷却した。
【0102】
26.5質量%の固形分及び87.5%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0103】
比較例2、WO05/121195A1からの実施例8に応じたもの
攪拌機及び内部温度測定を備えた2lの平面すり合わせフラスコ中に、無水酢酸(氷酢酸)101.4gを装入し、かつ窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下で、スチレン133g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート57gならびにアクリル酸5gを、45分の時間にわたって105℃で配量した。モノマー供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のtert−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、かつ60分にわたり配量した。反応混合物を、引き続き105℃で30分間、後重合した。
【0104】
均一なポリマー材料に、次いで60℃で30分にわたり、脱イオン水971.5gを混ぜた。1質量%の硫酸鉄(II)溶液7.5g及び10質量%のアスコルビン酸溶液5gの添加後、5質量%の過酸化水素溶液20gを、30分にわたり添加した。その後、60℃で、スチレン119.2gとtert−ブチルアクリレート119.2gから成る混合物を、120分の時間にわたって配量した。同時に、別個の供給において、5質量%の過酸化水素溶液80gを、150分の時間にわたって添加した。開始剤供給の終了後、60℃で60分間、後重合し、かつ反応混合物を引き続き冷却した。
【0105】
30.9質量%の固形分及び56.6%のLD値(0.1%)を有する微細なポリマー分散液を得た。
【0106】
実施例及び比較例に従って得られたポリマー分散液の応用技術試験
表面サイズ効果の応用技術試験のために、本発明による分散液ならびに比較分散液を、実験室用サイズプレスによって試験紙(古紙100%、坪量80g/m2、無サイズ)に塗工した。分解トウモロコシデンプンの水溶液を、所望の濃度に調整した。次いでデンプン溶液に、試験されるべき分散液を、サイズプレス液が分解トウモロコシデンプン60g/lならびに分散液0.1〜1.5g/lを含有するように配量した。
【0107】
引き続き、実施例1〜13ならびに比較例1及び2に応じて得られた分散液のサイズ効果を、無サイズ試験紙への表面施与によって調査した。そのために、紙をサイズプレスに2回通し、その際、平均して約65%の質量の増加が達成された。
【0108】
表面サイズ処理された紙の乾燥は、乾燥シリンダーにて90℃で行った。引き続き、紙を空調室内で(23℃、相対湿度50%)一晩中保管し、その後にサイズ度を測定した。
【0109】
表面サイズ処理された紙のサイズ度の測定のために、Cobb60値ならびにCobb120値をDIN53132に従って測定した。Cobb60値として、水との接触及び60秒(あるいはCobb120値の場合では120秒)の接触時間後の紙シートの吸水率がg/m2において定義されている。Cobb値が低ければ低いほど、それだけ一層、使用された分散液のサイズ効果は良好である。試験結果は、次の表の中でまとめられている。
【0110】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤としてカチオン性プレポリマーの水溶液中でのエチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって得られる微細なカチオン性水性ポリマー分散液において、まず、該カチオン性プレポリマーを重合開始剤の存在において
(a)少なくとも2種の異なる、それぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び/又はそれぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミドの混合物15〜40質量%、
(b)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン40〜85質量%、
(c)酸基を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー0.5〜5質量%及び
(d)(b)とは異なる少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマー0〜20質量%、その際、(a)+(b)+(c)+(d)からの合計=100質量%である、を溶液重合において水と部分的にないし完全に混和可能な溶媒中で重合させることによって製造し、該プレポリマーの溶液/分散液に、次いで水を混ぜ、引き続き、該プレポリマーの水溶液中で重合開始剤の存在において
(i)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン0〜29質量%、
(ii)少なくとも1種のC1〜C18−(メタ)アクリル酸エステル50〜100質量%、
(iii)直鎖又は分枝鎖のC1〜C30−カルボン酸の少なくとも1種のビニルエステル0〜30質量%及び
(iv)(i)、(ii)及び(iii)とは異なる少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマー0〜30質量%、その際、(i)+(ii)+(iii)+(iv)からの合計=100質量%である、からのモノマー混合物の乳化重合、及び場合により少なくとも1種の重合調節剤0〜10質量%の存在における該溶液重合及び/又は乳化重合を実施することを特徴とする、微細なカチオン性水性ポリマー分散液。
【請求項2】
前記カチオン性プレポリマーが、
(a)N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及びN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートから選択された少なくとも2種の化合物からの混合物15〜40質量%、
(b)スチレン40〜85質量%、及び
(c)アクリル酸及び/又はメタクリル酸0.5〜5質量%
の重合によって得られることを特徴とする、請求項1記載の微細なカチオン性水性ポリマー分散液。
【請求項3】
前記第二の重合段階で、
(i)スチレン0〜29質量%、
(ii)n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート又は質量比3:1〜1:3のn−ブチルアクリレートとtert−ブチルアクリレートからの混合物71〜100質量%
からのモノマー混合物を前記乳化重合に供することを特徴とする、請求項1又は2記載の微細なカチオン性水性ポリマー分散液。
【請求項4】
前記溶液重合及び/又は乳化重合を、少なくとも1種の重合調節剤0.1〜10質量%の存在において実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の微細なカチオン性水性ポリマー分散液。
【請求項5】
重合調節剤としてテルピノールを使用することを特徴とする、請求項4記載の微細なカチオン性水性ポリマー分散液。
【請求項6】
二段階の重合反応によって請求項1から5までのいずれか1項記載の微細なカチオン性水性ポリマー分散液を製造する方法であって、まず、該カチオン性プレポリマーを重合開始剤の存在において
(a)少なくとも2種の異なる、それぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び/又はそれぞれアミノ基及び/又は第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミドの混合物15〜40質量%、
(b)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン40〜85質量%、
(c)酸基を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー0.5〜5質量%及び
(d)(b)とは異なる少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマー0〜20質量%、その際、(a)+(b)+(c)+(d)からの合計=100質量%である、
を溶液重合において水と部分的にないし完全に混和可能な溶媒中で重合させることによって製造し、該プレポリマーの溶液/分散液に、次いで水を混ぜ、引き続き、該プレポリマーの水溶液中で重合開始剤の存在において
(i)少なくとも1種の場合により置換されたスチレン0〜29質量%、
(ii)少なくとも1種のC1〜C18−(メタ)アクリル酸エステル50〜100質量%、
(iii)直鎖又は分枝鎖のC1〜C30−カルボン酸の少なくとも1種のビニルエステル0〜30質量%及び
(iv)(i)、(ii)及び(iii)とは異なる少なくとも1種の非イオン性エチレン性不飽和モノマー0〜30質量%、その際、(i)+(ii)+(iii)+(iv)からの合計=100質量%である、
からのモノマー混合物の乳化重合、及び少なくとも1種の重合調節剤0〜10質量%の存在における該溶液重合及び/又は乳化重合を実施する、請求項1から5までのいずれか1項記載の微細なカチオン性水性ポリマー分散液を製造する方法。
【請求項7】
紙、ボール紙及び厚紙用のサイズ剤としての、請求項1から5までのいずれか1項記載の微細なカチオン性水性ポリマー分散液の使用。

【公表番号】特表2012−528910(P2012−528910A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513593(P2012−513593)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057615
【国際公開番号】WO2010/139683
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】