説明

微細印刷装置

【課題】 インキの乾燥を制御することにより、被印刷物に対してインキの受理転移を確実に行い、理想的な印刷環境を提供することのできる微細印刷装置を提供する。
【解決手段】 印刷ロール周囲の雰囲気条件を制御する雰囲気制御手段を備え、印刷ロール周囲の雰囲気を制御することにより、印刷ロールに受理されたインキの表面粘度を制御することにより被印刷物に対するインキの転移率を向上させる。また印刷ロールに巻回されたエストラマーに吸収された溶剤を気化させ、被印刷物に対するインキの転移率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ロール周囲の雰囲気を制御することにより、インキの受理転移を確実にする微細印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高精度を要求される微細印刷では、印刷品質が最終的に目的とする商品の品質に直結することから、安定した印刷、つまりインキやペーストの乾燥を制御する事が非常に重要である。
従来、印刷装置においてインキの乾燥を防止するために、例えば下記特許文献の開示技術が提案されている。
特許文献1の開示技術は、図7に示すように、表面に微細な凹凸が形成され、版胴29に接触して配置された主ロール30と、主ロール30に対して接触配置された補助ロール31との間にインキを補給し、主ロール表面の凹部に溜まったインキを版胴29に移して印刷を行なう印刷装置において、主ロール30又は補助ロール31に接触する希釈液補給ロール32に、補給ロール32表面に希釈液の被膜を形成する様に希釈液を補給し、希釈液補給ロール32と主ロール30の接触回転によって、希釈液の被膜がインキに混じることにより、インキに希釈液を補給してインキの乾燥を防止するものである。
即ち、主ロール30から版胴29へのインキ供給量を調整するため、主ロール30と補助ロール31の周速を相対的に変化させ、インキの絞りを強くした場合、ロール表面が温度上昇し、インキの水分蒸発が助長され、インキの濃度及び粘度が高まり、このために印刷面に色斑が生じる。そこで特許文献1は、インキに必要に応じて水分を補給することにより、インキの濃度及び粘度の高まりを防止できるインキの乾燥防止法及びその装置を提供している。
【特許文献1】特開平07−089052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この特許文献1のインキの乾燥防止装置では、必要に応じてインキに水分を補給するために、補給ロール32と、補給ロール32表面に希釈液の被膜を形成するための希釈液とを備えなければならない。そのため補給ロール32周辺の構造が複雑となる上に、水分量の厳密な制御が要求され、安定した印刷を実現することが困難であった。また乾燥を促進したいインキに対しては対応していないという問題があった。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高精度を要求される微細印刷において、印刷ロール周囲の雰囲気を制御することにより、簡易な方法でインキの乾燥を制御し、これによってインキの受理転移を確実にし、様々な種類のインキに対応して安定した印刷を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、微細印刷装置において、インキを供給するためのインキ供給ロールと、該インキ供給ロールからインキを受理し、被印刷物にインキを転移させるための印刷ロールと、前記印刷ロール周囲の雰囲気条件を制御する雰囲気制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記雰囲気制御手段により制御される雰囲気条件は温度であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記雰囲気制御手段により制御される雰囲気条件は圧力であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記雰囲気制御手段により制御される雰囲気条件は気体の種類であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の発明において、前記気体の種類は、酸化防止用の還元性の気体であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の発明において、前記還元性の気体は不活性ガスであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記雰囲気制御手段は、前記印刷ロール周囲に対して通風を行う送風ファンと排気ファンとであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、前記インキ供給ロール表面との間に隙間を有して、該インキ供給ロール表面を囲繞するカバーと、前記隙間から前記インキ供給ロールにインキを供給するための機構とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明は、印刷ロール周囲の雰囲気条件を制御する雰囲気制御手段を備えたことにより、被印刷物に対して最適な環境で印刷を行うことができる。即ち、微細印刷では高精度の印刷が要求されるが、本発明によれば、印刷ロールに受理されたインキの表面粘度を制御することにより被印刷物に対してインキの転移率を向上させることができる。また印刷ロールに巻回されたエストラマーに吸収された溶剤を気化させることにより、被印刷物に対してインキの転移率を向上させることができる。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記雰囲気制御手段により制御される雰囲気条件は温度であることにより、印刷ロール又はインキ供給ロール周囲の温度を制御することができ、被印刷物に対して適切な印刷環境を提供することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記雰囲気制御手段により制御される雰囲気条件は圧力であることにより、印刷ロール又はインキ供給ロール周囲の圧力を制御することができ、被印刷物に対して適切な印刷環境を提供することができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記雰囲気制御手段により制御される雰囲気条件は気体の種類であることにより、印刷ロール又はインキ供給ロール周囲の気体の種類を制御することができ、被印刷物に対して適切な印刷環境を提供することができる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の発明において、前記気体の種類は、酸化防止用の還元性の気体であることにより、インキの酸化を防ぎたい被印刷物に対して、簡易な方法でインキを酸化させることなく良好な印刷環境を提供することができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の発明において、前記還元性の気体は不活性ガスであることにより、インキの酸化を防ぎたい被印刷物に対して、簡易な方法でインキを酸化させることなく良好な印刷環境を提供することができる。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記雰囲気制御手段は、前記印刷ロール周囲に対して通風を行う送風ファンと排気ファンとであることにより、印刷ロール周囲の雰囲気を自在に制御することができ、最適な印刷環境を提供することができる。即ち、印刷ロール表面の気圧、温度又は気体の種類を制御し、又は局所的に陽圧又は陰圧をかけることにより、印刷ロールに受理されたインキの表面粘度を制御し、被印刷物に対してインキの転移率を向上させることができる。また印刷ロールに巻回されたエストラマーに吸収された溶剤を気化させることで、被印刷物に対してインキの転移率を向上させ、理想的な印刷環境を提供することができる。また、インキの乾燥を促進させたい被印刷物に対して、適切な乾燥通風を行うことにより、インキの乾燥を促進してインキの表面粘度を少し高くすることで、被印刷物に対してインキの転移率を高くし、理想的な印刷環境を提供できる。
【0020】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7いずれかに記載の発明において、前記雰囲気制御手段は、前記インキ供給ロール表面との間に隙間を有して、該インキ供給ロール表面を囲繞するカバーと、前記隙間から前記インキ供給ロールにインキを供給するための機構とを備えたものである。このように、前記機構により可能な限りインキが空気に接触することがなく、適量のインキを供給することができ、インキの乾燥を防ぐことができる。即ち、印刷中にインキ供給ロール表面のインキが乾燥してインキの粘度が高くなることなく、印刷ロールへ取り付けられた凸版やブランケットに定量で安定したインキの転移ができる。また、カバーにより、供給されたインキが可能な限り空気に触れるのを防止し、インキがインキ供給ロール表面において乾燥するのを確実に防ぐことができ、理想的な印刷環境を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態の微細印刷装置1は、研究用装置から生産用装置まで幅広く対応するものであり、半導体パターンのウエハへの直接印刷、導電ペーストによるガラス基材への電極印刷、プリント基板へのダイレクト印刷、及び白色発光ダイオードのダイレクト印刷等に使用が可能である。
【0022】
図1は、本実施の形態の微細印刷装置において、後述する凸版ロール等の印刷ロール4上に備えられた雰囲気制御手段(A)と、後述するアニロクスロール又はグラビアロール等のインキ供給ロール3上に備えられたインキ乾燥抑制手段(B)とを設置した状態を示す正面図である。
図2は、本実施の形態による微細印刷装置において、上記印刷ロール4上に備えられた雰囲気制御手段(A)及びインキ供給ロール3上に備えられたインキ乾燥抑制手段(B)を取り外した状態を示す正面図であり、オプションとして乾燥ユニットIIIを備えている。
図2に示すように、本実施の形態による微細印刷装置1は、印刷ユニットI、ワインダーユニットII及び乾燥ユニットIIIの3つに分けられる。
印刷ユニットIは、基材テーブル2と、インキ供給ロール3と、印刷ロール4と、圧胴5と、ピンチロール6と、ドクターブレード7とを備えている。
基材テーブル2は、微細印刷装置1の中央の高さに水平に設けられている。
インキ供給ロール3は、印刷ロールにコントロールされたインキを転移させるためのロールであり、円柱状であって微細印刷装置1の幅方向(紙面垂直方向)に延び、且つ基材テーブル2に対して水平に回転可能に支持され、その円周面にエストラマーが巻回されている。
印刷ロール4は、被印刷物にインキを転着させるロールであり、インキ供給ロール3と同径であって、微細印刷装置1の幅方向に延び、且つ基材テーブル2に対して水平にインキ供給ロール3のやや下方位置に回転可能に支持され、且つインキ供給ロール3にその右側の円周面の一部が当接している。そして、その円周面にエストラマーが巻回されている。
圧胴5は、インキ供給ロール3と同長、且つ小径の円柱状であって、微細印刷装置1の幅方向に延び、且つ基材テーブル2に対して水平、且つ印刷ロール4の左側近傍に、印刷ロール4よりやや上方に回転可能に支持されている。
ピンチロール6は、インキ供給ロール3と同長、且つ圧胴5よりかなり小径の円柱状であって、微細印刷装置1の幅方向に延び、且つ基材テーブル2に対して水平に、圧胴5よりやや下方位置に回転可能に支持され、且つ圧胴5にその右側の円周面の一部が当接している。
ドクターブレード7は、刃先がインキ供給ロール3の上部表面に当接し、インキ供給ロール3が正回転又は逆回転した時に、インキ供給ロール3表面のインキをかき取るものである。
【0023】
ワインダーユニットIIは、支持板8と、ワインダーロール(巻き出しロール)9と、リワインダーロール(巻き取りロール)10と、ガイドロール11とを備えている。
支持板8は、ピンチロール6の左部に所望の距離を空けて、微細印刷装置1の後部(紙面奥側)に、微細印刷装置1の基材テーブル2に対して垂直に固定されている。
ワインダーロール9は、支持板8の下方に、微細印刷装置1の幅方向に延びるように、支持板8に対して垂直に、且つ回転可能に備えられている。
リワインダーロール10は、支持板8の上方に、微細印刷装置1の幅方向に延びるように、支持板8に対して垂直に、且つ回転可能に備えられている。
一対のガイドロール11は、リワインダーロール10の更に上方の左右2点に、微細印刷装置1の幅方向に延びるように、支持板8に対して垂直に固定されている。
このようなワインダーユニットIIを備えたことにより、後述するようにロールtoロールで効率的に被印刷物15にインキを転移させることができる。
【0024】
乾燥ユニットIIIは、オプションとして取り付け可能なものであり、支持板12と、ガイドロール13及び14とを備えている。
支持板12は、ワインダーユニットIIの支持板8の左側に隣接して、設置面に対して垂直に固定されている。
複数のガイドロール13は、微細印刷装置1の幅方向に延びるように、固定板12に対して垂直に備えられており、固定板12の右部上方及び左部において、上方から下方に向かって緩やかな曲線を描くように、所望の間隔を空けて配置されている。
複数のガイドロール14は、微細印刷装置1の幅方向に延びるように固定板12に対して垂直に備えられており、固定板12の右部において、上方位置と下方位置に夫々複数本ずつ並設されている。
このような乾燥ユニットIIIをオプションとして備えたことにより、後述するように被印刷物に転移されたインキを素早く乾燥させ、作業の効率化を図ることができる。
【0025】
上記のように構成された微細印刷装置1において、ポリイミド等のフィルムである被印刷物15の設置方法について説明する。
ワインダーユニットIIの支持板8の下方に備えられたワインダーロール9に、フィルム15等のロール状に巻回された被印刷物15(以下、フィルム15と称す)の中央に備えられた孔部を差し込み、フィルム15を回転可能に支持する。
次に、フィルム15の端部を引き出し、ピンチロール6の上部の円周面に沿わせて、圧胴5とピンチロール6との間を通過させ、圧胴5の円周面に沿わせながら圧胴5の上方に引き出し、支持板8の上方のガイドロール11の上部でフィルム15が弛まないように張力を加えながら、乾燥ユニットIIIの曲線状のガイドロール13の上方から下方に向けて、各ガイドロール13の左部に沿わせる。
フィルム15が固定板12の左部の最下部のガイドロール13に到達した時点で、固定板12の右部のガイドロール14に上下交互に掛けていき、そして、フィルム15が最右端のガイドロール14に到達した時点で、ワインダーユニットIIの上方のリワインダーロール10に巻回させる。
これにより、連続的にフィルム15を印刷ユニットIに送り込み、また乾燥ユニットIIIを通過させて巻き取ることが可能となる。
【0026】
以下、上記のように、フィルム15を設置した微細印刷装置1について、その基本動作について説明する。
後述するTダイ25(図6参照)によりインキ供給ロール3にインキを供給しながら、インキ供給ロール3を左回りに回転させ、同時にインキ供給ロール3に隣接する印刷ロール4を右回りに回転させて、インキ供給ロール3のインキを印刷ロール4に転移させる。
そして、その円周面右側にフィルム15が巻回された圧胴5を左回りに回転させながら、印刷ロール4に当接させることにより、印刷ロール4のインキをフィルム15に転移させる。その際、ピンチロール6は、圧胴5に沿わせたフィルム15が弛まないように、フィルム15に当接しながら右回りに回転する。このようにして、ワインダーユニットIIの下部に備えられたフィルム15のワインダーロール9から、印刷ユニットIの圧胴5に対してフィルム15を連続的に送り込む。
また、インキが転移されたフィルム15は圧胴5の上部からワインダーユニットIIのガイドロール11に沿って移動し、更に乾燥ユニットIIIの各ガイドロール13及びガイドロール14に沿って移動することにより、十分に乾燥された後、最後にワインダーユニットIIのリワインダーロール10に巻回されることになる。
【0027】
なお、本実施の形態においてはフィルム15に印刷する場合について説明したが、本実施の形態における微細印刷装置によれば、ガラスやシリコンウエハ又はシートフィルム等に微細印刷を行うことも可能である。この場合、基材テーブル2上にガラス、シリコンウエハ又はシートフィルムを設置し、基材テーブル2を水平方向に移動させることにより印刷を行うことが可能である。例えば、シリコンウエハに対して配線を直接印刷することも可能である。
【0028】
印刷ロール4とインキと被印刷物15の受理転移における相性は多様であるため、印刷ロール4周囲における雰囲気の制御は重要である。そこで、本実施の形態における印刷ロール4に備えられた雰囲気制御手段(A)について図3乃至図5を参照して説明する。
図3乃至図5は、印刷ロール4における雰囲気制御手段(A)について示している。
図3乃至図5に示すように、印刷ロール4上に設置された雰囲気制御手段は、一対の送風ファン16と排気ファン17とを備え、送風ファン16及び排気ファン17は夫々パイプ18、19を介して印刷ロール4の上方に備えられた送風ダクト21及び排気ダクト22に接続されている。送風ダクト21及び排気ダクト22には印刷ロール4円周面付近に対して垂直に向かう送風通路23及び排気通路24が接続されている。
このような構成により、送風ファン16からパイプ18、送風ダクト21及び送風通路23を介して印刷ロール4の円周面付近に送風することができる。
また、排気ファン17によりパイプ19、排気ダクト22及び排気通路24を介して印刷ロール4の円周面付近から排気を行うことができる。
送風ファン16はフィルタ20を備えており、印刷ロール4に送られる気体を清浄なものとする。
なお、送風ファン16、排気ファン17、送風ダクト21及び排気ダクト22は、印刷ロール4の後部において、ファン取り付けアームにより固定支持されている。
また、送風ファン16及び排気ファン17により給排気される気体の風圧、風量及び温度は、送風機の回転制御及び温度管理ユニットにより任意の風圧、風量及び温度に設定することが可能であり、これにより被印刷物15におけるインキの転移率を制御することもできる。
また、被印刷物に応じて、インキの酸化を防ぎたい場合は、送風ファン16から還元性のある気体(例えば窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン又はラドン等の不活性ガス)を送風することにより酸化防止を実現できる。
このように、送風ファン16及び排気ファン17により、印刷ロール4表面の気圧、温度又は気体の種類を制御し、又は局所的に陽圧又は陰圧をかけ、印刷ロール4に巻回されているエストラマーに吸収された溶剤を気化させることで、被印刷物に対してインキの転移率を向上させることができる。
また、印刷ロール4は、被印刷物の素材によっては、インキの乾燥を促進してインキの表面粘度を少し高くした方が被印刷物に対してインキの転移率が高くなることがある。従って、上記送風ファン16及び排気ファン17により、印刷ロール4の円周面の全幅に亘り、所望の風圧、温度又は気体の種類を持つ乾燥通風を行うことにより最適な印刷環境を提供することができる。
【0029】
次に、本実施の形態におけるインキ供給ロール3上に備えられたインキ乾燥抑制手段(B)について図6(a)及び図6(b)を参照して説明する。
インキ供給ロール3におけるインキ乾燥抑制手段(B)は、印刷ロール4における雰囲気制御手段(A)と併設されるものである。
図6(a)は図1の(B)部の拡大図であり、図6(b)は図6(a)の側面断面図である。
図6(a)に示すように、本実施の形態においては、インキを供給する機構としてTダイ25を用いる。即ち、インキ供給ロール3の円周面の最上部の近傍に、V字状に先端が細く形成されているTダイ25を、インキ供給路が垂直下方に向くように設置し、インキ供給路からインキ供給ロール3の円周面に対して適量のインキを斑無く供給する。
このように、インキ供給ロール3の円周面に対して、その近傍からインキを供給することにより、可能な限りインキが空気に接触することを防止し、インキの乾燥を抑制してインキの粘度が高くなるのを防ぐことができる。
なお、供給するインキの量については、適宜所望の量に調節できる。
なお、本実施の形態においてはTダイ25によりインキ供給ロール3にインキを供給したが、本発明はこれに限定されるものではなく、シリンジポンプやドクターチャンバー等によりインキを供給することも可能である。
【0030】
また、本実施の形態においては、図6(a)に示すように、インキ供給ロール3の円周面から所定の隙間を空けて外側に、インキ供給ロール3の円周面を囲繞するようにカバー26a,26b及び26cが設置されている。
ここで、Tダイ25によりインキが供給されるインキ供給ロール3の上部、及び印刷ロール4と当接する付近については、カバー26a,26b及び26cで囲繞することのないように、所望の隙間を空けて設置する。
即ち、カバー26aは、インキ供給ロール3の右半分の上部から下部までを囲繞し、カバー26bは、インキ供給ロール3の上部において、カバー26aとの間にTダイ25によりインキを供給するための隙間を空けて、インキ供給ロール3の左上部の印刷ロール4と接しない部分を囲繞し、カバー26cは、インキ供給ロール3の左下部の印刷ロール4と接しない部分とインキ供給ロール3の右下部までを囲繞する。
ここで、カバー26a及び26cは、組付けを簡単にするために分離されたものであり、インキ供給ロール3の右下部において端部を重ねることにより互いに接合させる。
【0031】
図6(b)に示すように、カバー26a,26b及び26cは、その軸方向の長さがインキ供給ロール3よりもやや長いものであり、そのインキ供給ロール3から突出した端部において、周方向に所定の間隔で備えられた複数のビス27aでその端部が互いに固定されている。
また、カバー26a,26b及び26cは、その端部の円周面の中央において、基材テーブル2に対して水平方向に延びる円柱状のカバー取り付けアーム28aに対して、ボルト27bにより固定支持されている。カバー取り付けアーム28aは微細印刷装置1の後部において、垂直に延びる支持部28bにより固定されている。
このように、インキ供給ロール3がカバー26a,26b及び26cにより囲繞されることにより、Tダイ25によりインキがインキ供給ロール3に供給された時、インキが空気に触れるのを可能な限り防ぐことができ、インキ供給ロール3の円周面の表面のインキの乾燥を抑制することができる。
なお、本実施の形態においては、インキ供給ロール3の円周面と、カバーと26a,26b及び26cとの間を0.3mmから2.00mmに設定することが好ましい。これは、Tダイ25によりインキ供給ロール3の円周表面に供給されたインキを、可能な限り空気に触れないようにし、且つ乾燥を抑制しすぎることなくインキの乾燥度を適当にするためである。
但し、本発明においてインキ供給ロール3とカバー26a,26b及び26cとの隙間は上記値に限定されるものではなく、求められるインキ乾燥抑制の度合いに応じて適宜隙間を設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、高精度を要求される被印刷物、例えばシリコンウエハに配線を印刷する微細印刷において、好適に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】微細印刷装置において、印刷ロール上に備えられた雰囲気制御手段(A)と、インキ供給ロール上に備えられたインキ乾燥抑制手段(B)とを示す正面図である。
【図2】微細印刷装置において、図1の上記(A)及び(B)を取り外した状態を示す正面図である。
【図3】印刷ロールにおける雰囲気制御手段(A)を示す図である。
【図4】雰囲気抑制手段(A)のファン及びダクトを示す図である。
【図5】印刷ロール円周面付近における送風及び排気状態を示す拡大図である。
【図6】(a)インキ供給ロールにおけるインキ乾燥抑制手段を示す(B)部の拡大図であり、(b)インキ供給ロールにおけるカバーのカバー取り付けアームを示す側面断面図である。
【図7】従来のインキ乾燥防止装置を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 微細印刷装置
3 インキ供給ロール
4 印刷ロール
15 フィルム(被印刷物)
16 送風ファン
17 排気ファン
25 Tダイ
26a,26b,26c カバー
A 印刷ロールにおける雰囲気制御手段
B インキ供給ロールにおけるインキ乾燥抑制手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキを供給するためのインキ供給ロールと、
該インキ供給ロールからインキを受理し、被印刷物にインキを転移させるための印刷ロールと、
前記印刷ロール周囲の雰囲気条件を制御する雰囲気制御手段とを備えたことを特徴とする微細印刷装置。
【請求項2】
前記雰囲気制御手段により制御される雰囲気条件は温度であることを特徴とする請求項1に記載の微細印刷装置。
【請求項3】
前記雰囲気制御手段により制御される雰囲気条件は圧力であることを特徴とする請求項1に記載の微細印刷装置。
【請求項4】
前記雰囲気制御手段により制御される雰囲気条件は気体の種類であることを特徴とする請求項1に記載の微細印刷装置。
【請求項5】
前記気体の種類は、酸化防止用の還元性の気体であることを特徴とする請求項4に記載の微細印刷装置。
【請求項6】
前記還元性の気体は不活性ガスであることを特徴とする請求項5に記載の微細印刷装置。
【請求項7】
前記雰囲気制御手段は、前記印刷ロール周囲に対して通風を行う送風ファンと排気ファンとであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の微細印刷装置。
【請求項8】
前記インキ供給ロール表面との間に隙間を有して、該インキ供給ロール表面を囲繞するカバーと、
前記隙間から前記インキ供給ロールにインキを供給するための機構とを備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の微細印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−45865(P2009−45865A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215176(P2007−215176)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(593008427)日本電子精機株式会社 (12)
【Fターム(参考)】