説明

微細有機顔料の製造方法

【課題】従来のニーダーにおいて課題として挙げられる多大なエネルギーの消費、光沢、着色力等品位および微細化レベルの限界、ロット間の夾雑物混入等を解決する顔料の製造方法を提供する。
【解決手段】有機顔料1重量部に対し、水溶性無機塩を1〜30重量部、水溶性有機液体を0.1〜7重量部含む混合物を、複数のブレード遊星運動するプラネタリー型ミキサーにて混練する際、顔料単位重量(Kg)当たり0.06〜0.72Kw/Kgの範囲でエネルギーを投入することを特徴とする微細有機顔料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色用の粉体の粒子が微細でかつ均一な粒子径に整粒され、ビヒクルに対して分散性が極めて良好な有機顔料を得る際に、結晶転移を伴う微細有機顔料の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、水性フレキソインキ、着色材、水性分散体等のビヒクル中に発色用の粉体の粒子が分散した場合、良好な光沢、高着色力、透明性等を与え、更にはインクジェット用インキやカラーフィルター等のより微細な有機顔料粒子を求められる用途においても、優れた適性を与える微細有機顔料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フタロシアニン顔料に代表される有機顔料は微細化することで色調が美しいこと、着色力が大きいこと、耐候性、耐熱性等の諸性能が良好である機能を発揮し、色材工業の分野において多量に、しかも広範に使用されている。顔料を微細化処理する方法として、現在広く用いられている方法には、ソルベントソルトミリング法がある。
【0003】
ソルベントソルトミリング法は、粗大な顔料粒子を、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の無機塩類と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の粘性の高い水溶性有機溶剤の存在下で、ニーダー等により機械的に摩砕して微細化する方法である。ソルベントソルトミリング法は、顔料粒子を微細化、整粒するのに有効な方法であるが、インクジェットやカラーフィルターにおいてより高い性能発揮を実現させるためには、従来のソルトミリング法で得られていた顔料よりもより微細かつ整粒された顔料を用いる必要性がある。
【0004】
また、従来のバッチ式ニーダー等では、バッチ式に由来する生産スケールの制約、品質のロット毎のバラツキ、開放型であるための異物混入や粉塵発生による作業環境の汚染等の問題があった。
【特許文献1】特開平7−53889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ソルベントソルトミリング法は工業的に有利であるものの、従来広く用いられているニーダーでは有機顔料の微細化に対して多大なエネルギーを使用することや微細化レベルにも限界があった。さらに得られた微細有機顔料に対して水性フレキソインキ、着色材、水性分散体、等のビヒクル中に分散して使用する場合においても展色物への光沢、着色力、透明性等の向上は常に要求される課題であった。更には、インクジェット用インキやカラーフィルター等の用途においては、より微細な顔料粒子が求められるが、前述の方法でこれを得るのは困難であり、多大なエネルギーと時間を要していた。また、ニーダーでは回転軸部に混練物が浸入することまた間隙部等の洗浄性が低いことから、次ロット運転時に前ロットの混練物が混入し、夾雑物の発生等が起こりやすいという問題点があり、多種多様な製品の生産に不向きであった。
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであって、従来のニーダーにおいて課題として挙げられる多大なエネルギーの消費、光沢、着色力等品位および微細化レベルの限界、ロット間の夾雑物混入等を解決する顔料の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の微細有機顔料の製造方法は、複数のブレードが遊星運動するプラネタリー型ミキサーにて混練する際、有機顔料1重量部に対し、水溶性無機塩を1〜30重量部、水溶性有機液体を0.1〜7重量部以下含む混合物を、顔料単位重量(Kg)当たり0.06〜0.72Kw/Kgの範囲でエネルギーを投入することを特徴とする微細有機顔料の製造方法である。
更には、複数のブレード数が3である遊星運動するプラネタリー型ミキサーにて混練することを特徴とすることである。
更には、有機顔料と水溶性無機塩と水溶性有機液体との混合物に、樹脂を含有させることを特徴とすることである。
更には、有機顔料と水溶性無機塩と水溶性有機液体との混合物に、顔料誘導体を含有させることを特徴とすることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来のニーダーを用いたソルトミリング製法に比べ複数のブレード遊星運動するプラネタリー型ミキサーにて混練する際、顔料単位重量(Kg)当たり0.06〜0.72Kw/Kgのエネルギーを投入することで微細な有機顔料を得ることができる。0.06Kw/Kgよりも少ないエネルギーを投入した際、微細な有機顔料を得ることができない。一方、0.72Kw/Kgよりも多いエネルギーを投入した際、混練物の温度上昇に伴い微細な有機顔料を得ることができない。更に、エネルギー効率(単位顔料重量当たりの実効積算電力量)の視点からも効率的に微細な顔料を得ることができる。得られた微細有機顔料を水性フレキソインキ、着色材、水性分散体、等のビヒクル中に分散して使用した場合、展色物に良好な光沢と着色力、透明性の向上等を図ることができる。更にはインクジェット用インキやカラーフィルター等のより微細な顔料粒子を求められる用途においても、優れた適性を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】

以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
本発明で使用するプラネタリー型ミキサーを図面に基づいて説明する。プラネタリー型ミキサー本体(1)は、モータ等の駆動源(図示略)により適宜の伝達機構を介して遊星運動する複数本の駆動軸(2)(図面内での例は2本)を有し、該駆動軸(2)にはタンク(3)内に挿入されるようそれぞれブレード(4)が取り付けられている。タンク内に処理材料を投入し、ブレードを降下させて図1に示すような状態にセットし、タンク内で複数本のブレードを遊星運動させると、ブレードとタンクの内壁、底壁間および複数本のブレード間でそれぞれ剪断力を処理材料に与える。
【0011】
本発明のプラネタリー型ミキサーの具体例としては、例えば、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、トリミックス(井上製作所製)があり、トリミックスは大きな剪断力を与えることが可能なことから本発明の目的を達成するのに望ましい。以下、このような混合機によって摩砕混練処理が施される混練組成物について詳細に説明する。
混練組成物に用いられる有機顔料を以下に、カラーインデックス番号で示す。尚、本発明で混練組成物に用いられる有機顔料は以下に示す番号に制限されず、混練機中で微細有機顔料を得る際に結晶転移が起こるものであれば、この限りではない。
【0012】
青色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Blue15:6等の青色顔料を用いることができる。青色着色組成物には、C.I. Pigment Violet23等の紫色顔料を併用することができる。
【0013】
シアン色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Blue15:6等の青色顔料を用いることができる。
【0014】
マゼンタ色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Violet23等の紫色顔料および赤色顔料を用いることができる。マゼンタ色組成物には、黄色顔料を併用することができる。
【0015】
赤色着色組成物には、例えばC.I. Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272等の赤色顔料を用いることができる。赤色着色組成物には、黄色顔料、オレンジ顔料を併用することができる。
【0016】
本発明で使用する水溶性無機塩としては、特に限定されないが、例えば、食塩(塩化ナトリウム)、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛、塩化カルシウムまたはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0017】
混練組成物中の水溶性無機塩の量は、有機顔料1重量部に対し、1重量部〜30重量部である。水溶性無機塩の量が1重量部未満の場合は、有機顔料を微細化し難く、30重量部を超える場合は、微細化した有機顔料を得ることが可能となるが、有機顔料の微細化処理量が少なくなるため、生産性が低下して工業的には不利となるからである。
また、本発明で使用する水溶性有機液体は、有機顔料と水溶性無機塩とが均一な固まりとなるように加えるもので、水と自由に混和するもの、または自由に混ざらないが工業的に水洗により除去できる溶解度をもつものである。水溶性有機液体は、顔料粒子が成長するものであれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇し、有機液体が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。
混練組成物中の水溶性有機液体の量は、有機顔料1重量部に対し、0.1〜7重量部以下であることが好ましく、水溶性無機塩の量と混練組成物の硬さに応じて選択できる。水溶性無機塩の量が0.1重量部未満の場合は、混練組成物が硬くなりすぎて安全運転し難く、7重量部を超える場合は、混練組成物が軟らかくなりすぎて有機顔料の微細化レベルが低下する。
【0018】
水溶性有機溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール、アニリン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0019】
また必要に応じて2種類以上の溶剤を混合して使用してもよい。
有機顔料と水溶性無機塩と水溶性有機液体との混合物を混練する際には、得られる微細有機顔料を顔料担体へ容易に分散できるようにする目的で、樹脂を添加してもよい。
【0020】
樹脂は、水難溶性で、水溶性有機液体に部分的に溶解するものが好ましく、例えば、ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、ロジンアミン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、ロジン金属塩、ロジン変性フェノール樹脂およびロジン変性マレイン樹脂などのロジン系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリアミド樹脂などの合成樹脂、繊維素およびゴムなどから誘導された変性樹脂などがあげられるが、特に添加効果と価格の面からロジン系樹脂が好ましい。
【0021】
混練組成物中の樹脂の量は特に制限はないが、有機顔料1重量部に対し、0.001〜〜1.0重量部以下であることが好ましい。樹脂の量が、0.001重量部未満の場合は、分散効果が得られ難く、1.0重量部を超える場合は、添加した分の分散効果が得られない。
また、樹脂と、顔料担体との性質の差異によって樹脂の量を調整することが好ましい。すなわち、差異が大きい場合は樹脂の量を必要最小限に止めて顔料担体の物性への影響を少なくし、一方、差異が小さい場合は樹脂の量を多くして分散効果を十分に発揮させることが好ましい。
また、有機顔料と水溶性無機塩と水溶性有機液体との混合物を混練する際には、有機顔料の結晶成長や結晶転位を防止する目的で、有機顔料、アントラキノン、アクリドンまたはトリアジンに、塩基性または酸性の置換基、あるいはフタルイミドメチル基を導入した各種誘導体を添加してもよい。なかでも、有機顔料に塩基性または酸性の置換基、あるいはフタルイミドメチル基を導入した顔料誘導体を添加することが好ましい。塩基性の置換基としては、下記式(1)〜(4)で示される置換基が挙げられる。酸性の置換基としては、スルホン酸基及びカルボキシル基が挙げられる。
顔料誘導体としては、微粉砕する有機顔料と同一の構造を母体とする顔料誘導体が好ましいが、母体が異なる構造の顔料誘導体であっても良い。
混練組成物中の顔料誘導体の量は、有機顔料1重量部に対し、0.001〜0.3重量部以下であることが好ましい。顔料誘導体の量が、0.001重量部未満の場合は、添加した効果が得られ難い。また、0.3重量部を超える場合は、添加した分の効果が得られないばかりか、得られる微細有機顔料が顔料誘導体との混合物となることから、有機顔料単独の物性との差異が大きくなる。そのため、このような微細有機顔料を含有する着色組成物を用いて形成されるカラーフィルターは、実用上の品質に問題が起きることがある。
【0022】
【化1】

【0023】
(上記式(1)〜(4)において、
Xは、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2−または直接結合を表し、nは、1〜10の整数を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基もしくは置換されていてもよいフェニル基を表すか、またはR1とR2とが結合して更なる窒素、酸素または硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環を形成し、R3は、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表し、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表し、Yは、−NR8−Z−NR9−または直接結合を表し、R8およびR9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキル基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニル基または置換されていてもよいフェニル基を表し、Zは、置換されていてもよい炭素数1〜36のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数2〜36のアルケニレン基、または置換されていてもよいフェニレン基を表し、Rは、下記式(5)で示される置換基、または下記式(6)で示される置換基を表し、Qは、水酸基、アルコキシル基、下記式(5)で示される置換基または下記式(6)で示される置換基を表す。式(5)および式(6)において、R1〜R7およびnは、上に定義した通りのものである。)
【0024】
【化2】

【0025】
顔料誘導体を構成する有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系玩弄、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料が挙げられる。また、上記に示した混練組成物に用いられる顔料でもよい。
【0026】
また、アントラキノン誘導体およびアクリドン誘導体を構成するアントラキノンおよびアクリドンは、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、またはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、または塩素等のハロゲン等の置換基を有していてもよいアントラキノンおよびアクリドンである。
【0027】
また、トリアジン誘導体を構成するトリアジンは、メチル基、エチル基等のアルキル基、アミノ基またはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等のアルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、またはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、塩素等のハロゲン、またはメチル基、メトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、水酸基等で置換されていてもよいフェニル基またはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ニトロ基、水酸基等で置換されていてもよいフェニルアミノ基等の置換基を有していてもよい1,3,5−トリアジンである。
【0028】
塩基性の置換基を有する顔料誘導体、アントラキノン誘導体およびアクリドン誘導体は、種々の合成経路で合成することができる。例えば、有機顔料、アントラキノンまたはアクリドンに、下記式(7)〜(10)で表される置換基を導入した後、該置換基と反応して一般式(1)〜(4)で表される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミンまたは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等を反応させることによって得られる。
式(7) −SO2Cl
式(8) −COCl
式(9) −CH2NHCOCH2Cl
式(10) −CH2Cl
一般式(7)〜(10)と上記アミン成分の反応時には、一般式(7)〜(10)の一部が加水分解して、塩素が水酸基に置換したものが混在していてもよい。その場合、一般式(7)、一般式(8)はそれぞれスルホン酸基、カルボン酸基となるが、何れも遊離酸のままでもよく、また、1〜3価の金属または上記のモノアミンとの塩であってもよい。
【0029】
有機顔料がアゾ系顔料である場合は、一般式(1)〜(4)で表される置換基をあらかじめジアゾ成分またはカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによって塩基性基を有するアゾ系顔料誘導体を製造することもできる。
【0030】
また、特定の塩基性基を有するトリアジン誘導体も、種々の合成経路で合成することができる。例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に一般式(1)〜(4)で表される置換基を形成するアミン成分、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンまたはN−メチルピペラジン等を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミンまたはアルコール等を反応させることによって得られる。
【0031】
塩基性の置換基を有する誘導体の具体例を以下に示すが、これらに限定されるわけではない。これらの誘導体は、単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
本発明におけるミキサーの運転時における温度条件において、結晶転移と、摩砕及び、水溶性有機溶剤との接触による粒子制御を、いずれも効果的に進行させるため、混練温度は、0〜150℃、特には30〜90℃が好ましい。特に混練摩砕初期段階で70〜90℃の範囲内で混練摩砕処理することで転移させ、その後40〜69℃範囲内で混練摩砕処理することで微細化させることが品質上好ましい。
混練組成物は初期に全量投入する必要はなく、混練組成物の硬さの状況もしくは混練開始後に混練組成物の微細化および整粒度に応じて、水溶性有機溶剤および水溶性無機塩を適宜投入しても良い。
【0043】
混練後の混練組成物は常法により処理される。すなわち、混練組成物を水または鉱酸水溶液で処理し、濾過、水洗により水溶性無機塩および水溶性有機溶剤を除去し微細有機顔料を単離する。得られた微細有機顔料はこのまま湿潤状態で使用することも、乾燥・粉砕により粉末状態で使用することも可能である。必要に応じて樹脂、界面活性剤、その他の添加剤を混練後に加えてもよい。
【0044】
本発明による方法で製造された微細有機顔料の用途は特に限定されないが、一般に用いられる色材用途に加えて、高い光沢や着色力、透明性等を要求される用途にも使うことができ、インクジェット用インキやカラーフィルター等の用途にも適用できる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および従来法による比較例を挙げて本発明を詳しく説明する。但し、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」とは重量部を表し、「%」は重量%を表す。
実施例および比較例の中で、粒子径の測定は、透過型顕微鏡による粒子観察とその画像中の粒子の円相当径を測定・解析することにより行った。
(実施例1)
α型銅フタロシアニンを3〜6%含むε型銅フタロシアニン顔料5000部、塩化ナトリウム50000部、ジエチレングリコール10000部を150000容量部のブレード数3のトリミックス(井上製作所製)に投入し、混合物を磨砕して微細化したε型銅フタロシアニン顔料を製造した。運転条件としては、摩砕温度は70℃で公転13rpm、自転40rpmで稠密な塊状(ドウ)に保持しながら12時間混練した。混練時の顔料単位重量(Kg)当たりの負荷動力は常時0.50kWであった。ここで得られた混練組成物のうち6800部を70℃の1%硫酸水溶液20000部に取り出し、1時間保温攪拌後、濾過、水洗、乾燥した。得られた顔料は、X線回折測定(CuKα1線)によりブラッグ角2θ(許容範囲±0.2度)=9.2度に最も強いピークを有するε型銅フタロシアニン顔料であった。得られたε型銅フタロシアニン顔料を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し画像を解析して粒子径を測定したところ、個数平均径24nmであり、以下に示す比較例1で得られたε型銅フタロシアニン顔料に比較してより微細化していた。また、顔料単位重量(Kg)当たりの実効電力量が6.0kWHであり、混練時の冷却効率を表す総括伝熱係数と冷却面積の積は170W/H・Kであった。
(実施例2)
α型銅フタロシアニンを3〜6%含むε型銅フタロシアニン顔料5000部、塩化ナトリウム50000部、ジエチレングリコール10000部を150000容量部のブレード数3のトリミックス(井上製作所製)に投入し、混合物を磨砕して微細化したε型銅フタロシアニン顔料を製造した。運転条件としては、摩砕温度は70℃で公転13rpm、自転40rpmで稠密な塊状(ドウ)に保持しながら5時間混練した後、ジエチレングリコール3000部を追加し、かつ混練物の温度を50℃に低下させ、公転12rpm、自転35rpmで稠密な塊状(ドウ)に保持しながらさらに7時間混練した。混練時の顔料単位重量(Kg)当たりの負荷動力は、冷却前は常時0.50kW、冷却後は常時0.06kWであった。ここで得られた混練組成物のうち6800部を70℃の1%硫酸水溶液20000部に取り出し、1時間保温攪拌後、濾過、水洗、乾燥した。得られた顔料は、X線回折測定(CuKα1線)によりブラッグ角2θ(許容範囲±0.2度)=9.2度に最も強いピークを有するε型銅フタロシアニン顔料であった。得られたε型銅フタロシアニン顔料をTEMで観察し画像を解析して粒子径を測定したところ、個数平均径22nmであり、以下に示す比較例1の製法で得られたε型銅フタロシアニン顔料に比較してより微細化していた。また、顔料単位重量(Kg)当たりの実効電力量は2.9kWHであり、混練時の冷却効率を表す総括伝熱係数と冷却面積の積は190W/H・Kであった。
(実施例3)
α型銅フタロシアニンを3〜6%含むε型銅フタロシアニン顔料(5000部、塩化ナトリウム50000部、ジエチレングリコール9000部を150000容量部のブレード数3のトリミックス(井上製作所製)に投入し、混合物を磨砕して微細化したε型銅フタロシアニン顔料を製造した。運転条件としては、摩砕温度は70℃で公転13rpm、自転40rpmで稠密な塊状(ドウ)に保持しながら12時間混練した。混練時の顔料単位重量(Kg)当たりの負荷動力は常時0.72kWであった。ここで得られた混練組成物のうち6800部を70℃の1%硫酸水溶液20000部に取り出し、1時間保温攪拌後、濾過、水洗、乾燥した。得られた顔料は、X線回折測定(CuKα1線)によりブラッグ角2θ(許容範囲±0.2度)=9.2度に最も強いピークを有するε型銅フタロシアニン顔料であった。得られたε型銅フタロシアニン顔料をTEMで観察し画像を解析して粒子径を測定したところ、個数平均径23nmであり、以下に示す比較例1の製法で得られたε型銅フタロシアニン顔料に比較してより微細化していた。また、顔料単位重量(Kg)当たりの実効電力量は7.2kWHであり、混練時の冷却効率を表す総括伝熱係数と冷却面積の積は170W/H・Kであった。
(比較例1)
α型銅フタロシアニンを3〜6%含むε型銅フタロシアニン5000部、塩化ナトリウム50000部、ジエチレングリコール7500部を150000容量部の双腕型ニーダーに仕込み、70℃で稠密な塊状(ドウ)に保持しながら10時間混練した。混練時の顔料単位重量(Kg)当たりの負荷動力は常時0.89kWであった。ここで得られた混練組成物のうち6800部を70℃の1%硫酸水溶液20000部に取り出し、1時間保温攪拌後、濾過、水洗、乾燥し顔料を得た。得られた顔料は、X線回折測定(CuKα1線)によりブラッグ角2θ(許容範囲±0.2度)=9.2度に最も強いピークを有するε型銅フタロシアニン顔料であり、TEMで観察し画像を解析して粒子径を測定したところ、個数平均径25nmであった。また、顔料単位重量(Kg)当たりの実効電力量は8.9kWHであり、実施例1と比較して48%高いため、生産性が低く、混練時の冷却効率を表す総括伝熱係数と冷却面積の積は140W/H・Kであり、実施例1と比較して82%の冷却効率であった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】プラネタリー型ミキサーの正面図である。
【符号の説明】
【0047】
・ プラネタリー型ミキサー本体、2.駆動軸、3.タンク、4.ブレード











【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブレードを有する遊星運動するプラネタリー型ミキサーにて混練する際、有機顔料1重量部に対し、水溶性無機塩を1〜30重量部、水溶性有機液体を0.1〜7重量部含む混合物を、顔料単位重量(Kg)当たり0.06〜0.72Kw/Kgの範囲でエネルギーを投入することを特徴とする微細有機顔料の製造方法。
【請求項2】
複数のブレードが3である請求項1に記載の微細有機顔料の製造方法。
【請求項3】
樹脂を含有させることを特徴とする請求項1または2記載の微細有機顔料の製造方法。
【請求項4】
顔料誘導体を含有させることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の微細有機顔料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−62466(P2009−62466A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232174(P2007−232174)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】