微細構造体の製造方法
【課題】解像度の高い微細構造体を実現し得る技術を提供すること。
【解決手段】(a)2本のレーザービーム(B1,B2)を交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、(b)熱的非線形性を有する対象物(19)に対して上記第1の光を照射することにより、上記第1の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域(21)と非変性領域とを上記対象物に形成すること、(c)上記対象物に対してエッチングを行い、上記変性領域又は上記非変性領域のいずれかを選択的に除去すること、を含む、微細構造体の製造方法である。
【解決手段】(a)2本のレーザービーム(B1,B2)を交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、(b)熱的非線形性を有する対象物(19)に対して上記第1の光を照射することにより、上記第1の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域(21)と非変性領域とを上記対象物に形成すること、(c)上記対象物に対してエッチングを行い、上記変性領域又は上記非変性領域のいずれかを選択的に除去すること、を含む、微細構造体の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー干渉露光を用いた微細構造体、特にナノメートルオーダの構造を有する構造物(ナノ構造体)の製造技術に関する。この技術は、偏光分離素子、位相遅延素子、反射防止素子等のさまざまなナノ構造体を製造するために応用できる。
【背景技術】
【0002】
可視光の波長(概ね380〜780nm程度)よりも小さなオーダの構造物(サブ波長構造体)へ光を入射すると、偏光分離、複屈折、反射防止、プラズモン伝搬等の現象が現れる。このようなサブ波長構造体を製造するための手段の一つとして、レーザー干渉を利用した露光技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の露光技術では、2つのレーザービームを交叉させることによって得られる干渉光(干渉縞を有する光)を用いて感光性膜を露光する。このとき、干渉光を用いた露光によって形成されるパターンの周期はレーザービームの波長λ及びレーザービームの交叉角度に依存する。理論上、干渉露光で実現できる最小周期はλ/2に等しい。例えば、波長が266nmの場合、形成し得るパターンの最小周期は理論上133nmとなる。
【0003】
上記の干渉露光によれば、更に小さい周期のパターンを実現するには、レーザービームの波長を短くする必要がある。しかし、現状ではレーザービームの更なる短波長化は難しい。その理由のひとつは、266nmよりも充分に短い波長を有する、高コヒーレントなレーザー光源が存在しないことである。半導体リソグラフィ等の分野で利用されているエキシマレーザーには波長が193nm、157nm等のものがあるが、現状では充分にコヒーレントが高くないため、鮮鋭な潜像パターンを形成することが難しい。もうひとつの理由は、波長が200nmよりも短くなると、大気中で露光することが難しくなることである。また、レーザー干渉露光系を構成する光学部品(レンズ、ミラー等)に適当な素材を求めることも難しくなる。例えば、石英ガラスの吸収端は180nm付近にあるからである。したがって、レーザービームの更なる短波長化を過度に追求することなく、鮮鋭な潜像パターンを形成し、これを用いて微細パターンを実現し得る技術が要望されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−093644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、解像度の高い微細構造体を実現し得る技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様(以下、便宜上「第1態様」という。)は、微細構造体の製造方法であって、
(a)2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、
(b)熱的非線形性を有する対象物に対して上記第1の光を照射することにより、上記第1の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを上記対象物に形成すること、
(c)上記対象物に対してエッチングを行い、上記変性領域又は上記非変性領域のいずれかを選択的に除去すること、
を含む。
【0007】
ここで、「熱的非線形性を有する対象物」とは、例えばPtO、ZnS−SiO2、Ge−Sb−Te、Ge−Sb−Te−S、Te−TeO2−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Ge−Te−Sn、Sn−Se−Te、Sb−Se−Te、Sb−Se、Ga−Se−Te−Ge、In−Se、In−Se−Tl−Co、Ge−Sb−Te、In−Se−Te、Ag−In−Sb−Te、TeO2−Pbなどの材料からなる基材(基板)、被膜、構造物等である。また「変性領域」とは例えば結晶状態の領域であり、「非変性領域」とは例えば非結晶状態の領域である。
【0008】
第1態様においては、干渉縞(すなわち光強度分布)を有する第1の光を熱的非線形性を有する対象物に照射することにより、光強度が相対的に高い領域と低い領域とに対応して変性領域と非変性領域とが得られる。この変性領域と非変性領域との繰り返し周期(ピッチ)は、交叉させる2本のレーザービームの波長を短くし、或いは交叉角度を大きくすることによって短くすることができる。熱的非線形性を有する対象物を採用したことにより、変性領域と非変性領域との繰り返し周期がより小さく(例えば100nm〜200nm程度)なったとしても、従来のフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。そして、変性領域と非変性領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、対象物をエッチングすることにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0009】
上記第1態様の製造方法は、上記(b)の後であって上記(c)より先に、
(d)上記2本のレーザービームの間に位相差を与えて当該2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第2の光を発生させること、
(e)上記対象物に対して上記第2の光を照射することにより、上記第2の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを形成すること、
を更に含むことも好ましい。
【0010】
2本のレーザービームの間に位相差を与えることにより、第1の光の干渉縞と第2の光の干渉縞とを微小な幅(例えば1/2ピッチ、1/4ピッチ等)でずらすことができる。このような第1の光および第2の光を順次、熱的非線形性を有する対象物に照射することで、変性領域と非変性領域との繰り返し周期を更に小さくすることができる。このように繰り返し周期が更に小さくなった場合でも、熱的非線形性を有する対象物を用いているので変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。よって、更に解像度の高い微細構造体が得られる。
【0011】
上記第1態様の製造方法において、上記(b)は、上記第1の光と併せて第3の光を上記対象物に照射することも好ましい。同様に、上記(d)は、上記第2の光と併せて第3の光を上記対象物に照射することも好ましい。「第3の光」としては、例えばレーザービーム(レーザー光)等の単波長の光が好適であるが、複数の波長成分を含んだ光であってもよい。
【0012】
第1の光あるいは第2の光を照射する際に、これらとは異なる第3の光を更に照射することにより、光照射強度にバイアスをかけることができる。それにより、第1の光あるいは第2の光の光強度が低い場合であっても、変性領域および非変性領域を確実に形成することが可能となる。
【0013】
本発明に係る他の態様(以下、便宜上「第2態様」という。)は、微細構造体の製造方法であって、
(a)対象物上に、熱的非線形性を有する被膜を形成すること、
(b)2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、
(c)上記第1の光を上記被膜に照射することにより、上記第1の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを上記被膜に形成すること、
(d)上記被膜に対してエッチングを行い、上記変性領域又は上記非変性領域のいずれかを選択的に除去すること、
(e)上記変性領域又は上記非変性領域のいずれかが除去された後の上記被膜を介して上記対象物に対するエッチングを行うこと、
を含む。
【0014】
ここで、「熱的非線形性を有する被膜」とは、例えばPtO、ZnS−SiO2、Ge−Sb−Te、Ge−Sb−Te−S、Te−TeO2−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Ge−Te−Sn、Sn−Se−Te、Sb−Se−Te、Sb−Se、Ga−Se−Te−Ge、In−Se、In−Se−Tl−Co、Ge−Sb−Te、In−Se−Te、Ag−In−Sb−Te、TeO2−Pbなどの材料からなる被膜(薄膜又は厚膜)である。また「変性領域」とは例えば結晶状態の領域であり、「非変性領域」とは例えば非結晶状態の領域である。
【0015】
第2態様においては、干渉縞を有する第1の光を熱的非線形性を有する被膜に照射することにより、光強度が相対的に高い領域と低い領域とに対応して変性領域と非変性領域とが得られる。この変性領域と非変性領域との繰り返し周期(ピッチ)は、交叉させる2本のレーザービームの波長を小さくし、或いは交叉角度を大きくすることによって短くすることができる。熱的非線形性を有する被膜を採用したことにより、変性領域と非変性領域との繰り返し周期がより小さく(例えば100nm〜200nm程度)なったとしても、従来のフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。そして、変性領域と非変性領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、被膜をエッチングすることにより、変性領域又は被変性領域を除去し、当該領域を開口させることができる。こうして得られた開口を有する被膜をエッチングマスクとして利用して、対象物に対するエッチングを行うことにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0016】
上記第2態様は、上記(c)の後であって上記(d)より先に、
(f)上記2本のレーザービームの間に位相差を与えて当該2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第2の光を発生させること、
(g)上記被膜に対して上記第2の光を照射することにより、上記第2の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを上記被膜に形成すること、
を更に含むことも好ましい。
【0017】
2本のレーザービームの間に位相差を与えることにより、第1の光の干渉縞と第2の光の干渉縞とを微小な幅(例えば1/2ピッチ、1/4ピッチ等)でずらすことができる。このような第1の光および第2の光を順次、熱的非線形性を有する被膜に照射することで、変性領域と非変性領域との繰り返し周期を更に小さくすることができる。このように繰り返し周期が更に小さくなった場合でも、熱的非線形性を有する被膜を用いているので変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。よって、更に解像度の高い微細構造体が得られる。
【0018】
上記第2態様において、上記(b)は、上記第1の光と併せて第3の光を上記被膜に照射することも好ましい。同様に、上記(d)は、上記第2の光と併せて第3の光を上記被膜に照射することも好ましい。「第3の光」としては、例えばレーザービーム(レーザー光)等の単波長の光が好適であるが、複数の波長成分を含んだ光であってもよい。
【0019】
第1の光あるいは第2の光を照射する際に、これらとは異なる第3の光を更に照射することにより、光照射強度にバイアスをかけることができる。それにより、第1の光あるいは第2の光の光強度が低い場合であっても、変性領域および非変性領域を確実に形成することが可能となる。
【0020】
本発明に係る他の態様(以下、便宜上「第3態様」という。)は、光を被加工物に照射する方法であって、
(a)2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、
(b)熱的非線形性を有する被加工物に対して上記第1の光を照射することにより、上記第1の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを上記被加工物に形成すること、
を含む。
ここで、「熱的非線形性を有する被加工物」の具体例は上記の本発明に係る第1態様の微細構造体の製造方法の場合における「熱的非線形性を有する対象物」と同様である。また「変性領域」、「非変性領域」のそれぞれの具体例についても上記の本発明に係る第1態様と同様である。
【0021】
第3態様においては、干渉縞を有する第1の光を熱的非線形性を有する対象物に照射することにより、光強度が相対的に高い領域と低い領域とに対応して変性領域と非変性領域とが得られる。この変性領域と非変性領域との繰り返し周期(ピッチ)は、交叉させる2本のレーザービームの波長を小さくし、或いは交叉角度を大きくすることによって短くすることができる。熱的非線形性を有する対象物を採用したことにより、変性領域と非変性領域との繰り返し周期がより小さく(例えば100nm〜200nm程度)なったとしても、従来のフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。したがって、この光照射方法によれば、微小ピッチで周期的に配列された変性領域及び非変性領域を備える微細構造体を形成することができる。また、これらの変性領域と非変性領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、対象物をエッチングすることにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0022】
上記第3態様の光照射方法は、上記(b)の後に、
(c)上記2本のレーザービームの間に位相差を与えて当該2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第2の光を発生させること、
(d)上記被加工物に対して上記第2の光を照射することにより、上記第2の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを上記被加工物に形成すること、
を更に含むことが好ましい。
【0023】
2本のレーザービームの間に位相差を与えることにより、第1の光の干渉縞と第2の光の干渉縞とを微小な幅(例えば1/2ピッチ、1/4ピッチ等)でずらすことができる。このような第1の光および第2の光を順次、熱的非線形性を有する被加工物に照射することで、変性領域と非変性領域との繰り返し周期を更に小さくすることができる。このように繰り返し周期が更に小さくなった場合でも、熱的非線形性を有する被加工物を用いているので変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。また、この被加工物をエッチングすることによって、更に解像度の高い微細構造体が得られる。
【0024】
上記第3態様において、上記(b)は、上記第1の光と併せて第3の光を上記被膜に照射することも好ましい。同様に、上記(d)は、上記第2の光と併せて第3の光を上記対象物に照射することも好ましい。「第3の光」としては、例えばレーザービーム(レーザー光)等の単波長の光が好適であるが、複数の波長成分を含んだ光であってもよい。
【0025】
第1の光あるいは第2の光を照射する際に、これらとは異なる第3の光を更に照射することにより、光照射強度にバイアスをかけることができる。それにより、第1の光あるいは第2の光の光強度が低い場合であっても、変性領域および非変性領域を確実に形成することが可能となる。
【0026】
本発明に係る他の態様は、微細構造体の製造方法であって、
(a)金属膜上に非晶質である無機材料層を形成すること、
(b)上記無機材料層に第1レーザービームと第2レーザービームの交叉により発生した光を照射し、上記無機材料層のうち上記光の干渉縞の周期に対応する第1部分を結晶化温度以上に加熱し、上記第1部分を結晶質に変性させること、
(c)上記金属膜上から上記第1部分を除去し、かつ、上記無機材料層のうち上記結晶質に変性しなかった第2部分を残すこと、
(d)上記金属膜の上記第2部分と重ならない領域を除去し、上記干渉縞の周期とピッチの等しい構造体を形成すること、
を含む。
なお、上記(c)において第2部分を除去して第1部分を残し、上記(d)において上記金属膜の上記第1部分と重ならない領域を除去する、ようにしてもよい。すなわち、いずれの部分が除去されるかは、例えば無機材料層の素材に依存するからである。
【0027】
上記態様においては、第1レーザービームと第2レーザービームとを交差させることにより干渉縞(すなわち光強度分布)を有する光を発生させることができる。この干渉縞を含む光を非晶質の無機材料層に照射することにより、光強度が相対的に高い領域と低い領域とに対応して第1部分を結晶質に変性させる。この結晶質に変性した第1部分と結晶質に変性しなかった第2部分との繰り返し周期(ピッチ)は、交叉させる2本のレーザービームの波長を短くし、或いは交叉角度を大きくすることによって短くすることができる。第1部分(結晶質)と第2部分(非結晶質)との繰り返し周期がより小さく(例えば100nm〜200nm程度)なったとしても、従来のフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して第1部分と第2部分との境界が鮮鋭に得られる。そして、変性領域と非変性領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、対象物をエッチングすることにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0028】
好ましくは、上記(b)において、上記第1部分が膜厚方向に完全に結晶化温度以上に加熱されている。
【0029】
それにより、第1部分を膜厚方向について完全に結晶化することができる。
【0030】
好ましくは、上記金属膜がアルミニウムを含み、上記構造体がストライプ状のグリッドである。
【0031】
それにより、偏光分離素子等の光学素子として利用可能な微細構造体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は、本実施形態に係る露光装置(微細構造体の製造装置)の構成を示すブロック図である。図1に示す本実施形態の露光装置1は、光源(パルスレーザー装置)10、シャッター11、ミラー12、13、回折光学素子14、第1のレンズ15、空間フィルタ16、位相差板17及び第2のレンズ18を含んで構成される。
【0034】
光源10は、短波長のレーザービームを出力する。この光源10としては、例えばQスイッチパルスYAGレーザー(波長266nm)が好適に用いられる。光源10のレーザー平均出力は例えば1W程度(パルス繰り返し:1kHzの時)であり、パルス幅は例えば1×10-9秒以上1×10-7秒以下である。なお、本実施形態ではパルスレーザービームを用いるが、本発明はこれに限定されずCW(Continuous Wave)レーザービームであってもよい。光源10から出射されるレーザービームは、シャッター11を通過し、各ミラー12、13により進路(光路)をそれぞれ90°ずつ変更された後に、回折光学素子14へ入射する。シャッター11は、レーザービームの通過/遮断を制御する。
【0035】
回折光学素子14は、入射したレーザービームを複数のレーザービーム(回折ビーム)に分岐する。図2は、回折光学素子14の側面図である。図2に示すように、回折光学素子14は、ギャップh(例えば266nm)の2つのレベルを周期p(例えば0.50μm)にて備えたバイナリ構造を有しており、表面形状が周期的構造をなしている。回折光学素子14は、レーザー描画とイオンエッチングにより、石英基板上に作製される。なお、回折光学素子14は、バイナリ構造に限定されず、例えば、表面形状がサイン(コサイン)曲面形状をなす周期的構造をなしていてもよく、あるいは、外観が平らであり内部の屈折率が周期的に分布する周期的構造をなしていてもよい。
【0036】
第1のレンズ15は、分岐された複数の回折ビームを集光して安定化させる。本実施形態において、第1のレンズ15の焦点距離f1は例えば50mmである。空間フィルタ16は、複数の回折ビームのうち2本の回折ビームのみを通過させる。
【0037】
位相差板17は、空間フィルタ16を通過した2本の回折ビームの相互間に位相差を与える。図3は、位相差板17の側面図である。図3に示すように、位相差板17は、表面に深さgの段差(ギャップ)を有している。すなわち、図中右側の領域と左側の領域とで位相差板17の厚みが異なる。それにより、位相差板17を通過した回折ビームと、位相差板17を通過しない回折ビームとの間に所定の位相差(光路差)を与えることができる。本実施形態では、位相差板17の相対的に板厚が大きい領域を通過した回折ビームと、位相差板17を通過していない回折ビームとの間の位相差φが0に設定されている。また、位相差板17の相対的に板厚が小さい領域を通過した回折ビームと、位相差板17を通過していない回折ビームとの間の位相差φがπに設定されている。位相差板17は、レーザー描画とイオンエッチングにより石英基板上に作製される。なお、位相差板17は、厚みが異なる段差付形状に限定されず、例えば、外観は平らであり左右領域の屈折率が異なる構成としてもよい。なお、位相差がπの場合であれば、1/2波長板を位相差板17として用いてもよい。
【0038】
第2のレンズ18は、位相差板17を通過した2本の回折ビームを集光する。第2のレンズ18の焦点距離f2は例えば28mmである。第二のレンズ18によって集光された2本の回折ビームは対象物19へ照射される。この2本の回折ビームは、所定の交叉角度θで干渉し、周期的な干渉縞(干渉光強度分布)を発生させる。この干渉光強度分布によって、対象物の表面に干渉光強度分布に対応した周期の微細パターンが形成される。回折ビームによる露光時間は例えば数ミリ秒間程度であり、この露光時間はシャッター11によって制御される。
【0039】
このような本実施形態に係る露光装置1は、分岐された2本の回折ビームが互いに近接しており、干渉露光に要する時間が数ミリ秒間程度と短いため、外乱に対して極めて安定であり、振動や空気ゆらぎの影響を受けにくい。一般的に、レーザー干渉露光系は、空気ゆらぎに敏感であり、安定性を確保するためには、露光系を防振ベンチの上に置き、さらに、露光系と防振ベンチを強固なカバーで覆う等の処置が必要であり、設備に多額のコストを要するものであるが、本実施形態によれば安定した露光系を簡便な装置構成によって実現することができる。
【0040】
図4は、2本の回折ビームを交叉させることによって発生した干渉光が対象物に照射される様子を概略的に示す図である。2本の回折ビームを交叉角度θで交叉させたときに得られる干渉縞Fの周期Pは、各回折ビームの波長をλとすると、次式で与えられる。
P=λ/(2sinθ) ・・・(1)
このとき、図4に示すように、2本の回折ビームB1(第1レーザービーム)、回折ビームB2(第2レーザービーム)を対象物19の照射面と直交する軸(仮想軸)に対して対称に入射させる。これにより、干渉光の照射深さ、幅、あるいは干渉縞FのピッチPなどをより均質に揃えられる。
【0041】
図5は、上記(1)式の関係を示すグラフである。横軸が交叉角度θ、縦軸が干渉縞Fの周期Pに対応している。図5に示されるように、例えば波長λが266nm、交叉角度θが72度であるとすると、干渉縞Fの周期Pは140nmとなる。このような狭ピッチの干渉縞を含んだ干渉光を対象物19に照射することにより、所望の加工が可能となる。ここで、本実施形態では対象物19として、熱的非線形性を有する素材を採用する。以下に、熱的非線形性を有する素材について説明する。
【0042】
図6は、熱的非線形性を有する素材の一例について説明する図である。具体的には、図6は、熱的非線形性を有する素材(例えば酸化白金:PtO)の示差熱分析の測定結果を示している。図示のように、例えば酸化白金を加熱すると温度550℃付近で相変化が現れ、酸化白金は非結晶状態(非変性状態)から結晶状態(変性状態)へと変化する。この相変化が生じる温度を転移点Tcと呼ぶことにする。このように、温度上昇により相変化が急峻に(すなわち非線形に)起こる素材を本実施形態では「熱的非線形性を有する素材」という。このような相変化の有無に起因した非結晶領域および結晶領域が混在する対象物19をアルカリ水溶液へ浸すと、これらふたつの領域の間にはエッチングレートに差があるため、例えば結晶領域の方がより早くエッチングされる。それにより、非結晶領域と結晶領域に対応した凹凸を生じさせることができる。本実施形態では、このような熱的非線形性を有する素材に対して上記した干渉光を用いた露光を行う。
【0043】
図7は、熱的非線形性を有する素材に対する露光について概略的に示す図である。図7に示すように、基板20上(例えば、ガラス基板上)に形成された対象物19に対して、2本の回折ビームを交叉させて発生させた干渉光を照射する。それにより、熱的非線形性を有する素材からなる対象物19の表面に、干渉光の干渉縞FのピッチPに対応した周期的な相変化を生じさせる。すなわち、干渉光の強度が相対的に高い領域においては、熱的非線形性を有する素材からなる対象物19が熱せられて転移点Tcを超えることにより相転移が生じ、当該領域が結晶状態となる。また、干渉光の強度が相対的に低い領域においては、熱的非線形性を有する素材からなる対象物19がさほど熱せられないことから転移点Tcを超えず、よって当該領域は相転移は生じずに非結晶状態のままとなる。図8に示すように、相変化が生じる深さは対象物19の表面からdcの深さである。この深さdcまでは対象物19の温度が転移点Tcを超える。このことを考慮し、膜厚方向に完全に転移点Tc以上に熱せられるよう、対象物19の厚みをdc以下に設定しておく。干渉光を照射した後、対象物19をアルカリ水溶液へつけると、干渉縞の周期Pと等しい周期を有する凹凸パターン(深さ=dc)が対象物19の表面に現れる。この様子を概略的に示したのが図9である。図示の例では、光強度が相対的に弱く非結晶状態のままとなった領域が残留する場合が示されている。なお、光強度が相対的に強く結晶状態となった領域が残留する場合もあり、その場合には、凹凸パターンが光強度分布の高い位置に対応して配列する。上記の図7に示されるように、相変化曲線の非線形性が高いため、レーザービームの照射条件を適宜制御することにより、幅の狭く、鮮鋭な凹凸パターンを実現できる。
【0044】
なお、熱的非線形性を有する素材は上記の酸化白金膜以外にも以下のような無機材料が挙げられる。本実施形態では、一旦結晶状態としたものを再度非結晶状態に戻す必要はないため、不可逆変化型の素材も用いることができる。例えば、ZnS−SiO2、Ge−Sb−Te、Ge−Sb−Te−S、Te−TeO2−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Ge−Te−Sn、Sn−Se−Te、Sb−Se−Te、Sb−Se、Ga−Se−Te−Ge、In−Se、In−Se−Tl−Co、Ge−Sb−Te、In−Se−Te、Ag−In−Sb−Te、TeO2−Pb、などである。これらのいずれも対象物19として採用することが可能である。
【0045】
本実施形態に係る露光装置1の構成および露光原理(すなわち光照射方法)は上述した通りであり、次に、本実施形態に係る微細構造体の製造工程(製造方法)について説明する。
【0046】
図10は、本実施形態に係る微細構造体の製造工程を示す概略断面図である。上述した露光装置1を用いて、2本の回折ビームを所定の交叉角度θで交叉させることにより干渉光(第1の光)を発生させ、当該干渉光を基板20上の対象物19に照射する(図10(A))。このとき、上述のように一方の回折ビームB2は位相差板17を通過するが、他方の回折ビームB1との間で位相差が生じない設定となっている。なお、図10では位相差板17を図示する便宜上、位相差板17が回折ビームB2に対して斜行して描かれているが、図1に示したように実際には位相差板17の表面に対して回折ビームB2が直交するように位相差板17が配置される。以下に説明する図面においても同様である。
【0047】
所定の交叉角度θで交叉した2本の回折ビームB1、B2は互いに干渉し、周期的な干渉縞(干渉光強度分布)を発生させる(図4参照)。この干渉光強度分布を有する干渉光が照射されることにより、対象物19は光強度の高い領域において相転移を起こし、当該領域(第1部分)21が結晶状態となる(図10(B))。この結晶状態となった領域21(以下「結晶領域21」という。)の繰り返し周期は干渉光強度分布の周期と等しい。干渉光の照射時間(露光時間)は例えば数ミリ秒間程度であり、この照射時間(露光時間)はシャッター11により制御される。
【0048】
次に、対象物19をアルカリ水溶液へ浸すことによってエッチングを行う。このとき、結晶領域21とそれ以外の領域(すなわち、非結晶領域)との間にエッチング速度の差が生じ、例えば結晶領域21が非結晶領域(第2部分)よりも早く除去される。その結果、干渉光の干渉縞の周期に対応した周期(本例では140nm)を有する非結晶領域19’のパターン(一例として、酸化白金パターン)が形成される(図10(C))。このようなサブ波長オーダの微細構造体には種々の用途を有する。なお、結晶領域21と非結晶領域19’との間に生じるエッチング速度の大小関係は素材により、或いはエッチング溶液と素材との関係によって決まるものであり、結晶領域21よりも非結晶領域が早く除去される場合もある。その場合には、結晶領域21のパターンが得られる。
【0049】
このように本実施形態によれば、干渉縞を有する干渉光(第1の光)を熱的非線形性を有する対象物に照射することにより、光強度が相対的に高い領域と低い領域とに対応して変性領域(結晶領域)と非変性領域(非結晶領域)とが得られる。これらの変性領域と非変性領域との繰り返し周期(ピッチ)は、交叉させる2本のレーザービームの波長を小さくし、或いは交叉角度θを大きくすることによって短くすることができる。熱的非線形性を有する対象物を採用したことにより、変性領域と非変性領域との繰り返し周期が100nm〜200nm程度と小さい場合であっても、従来の有機材料からなるフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。そして、変性領域と非変性領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、対象物をエッチングすることにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0050】
図11は、微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。上記図10に示した実施形態では、エッチングによって得られた非結晶領域19’のパターン(一例として、酸化白金パターン)そのものを微細構造体として利用する場合を想定していたが、この非結晶領域19’のパターン(或いは結晶領域21のパターン)をエッチングマスクとして用いて、他の対象物に微細パターンを転写することもできる。以下、その場合について説明する。なお、上記した製造工程と重複する内容については適宜説明を簡略化する。
【0051】
本実施形態では、図11(A)に示すように、予め基板20の表面に対象物22を形成しておき、更にその対象物22の表面に被膜19(一例として、酸化白金膜)を形成しておく。ここで、対象物22はその内容に特段の限定がないが、例えば本実施形態ではアルミニウムや銀などの金属膜であるとする。なお、基板20そのものが対象物であってもよい。上記と同様に2本の回折ビームを交叉角度θで交叉させて干渉光(第1の光)を発生させ、これを対象物19に照射する。それにより、上記実施形態と同様に、被膜19に結晶領域21が形成される(図11(B))。
【0052】
次に、上記実施形態と同様にエッチングを行うことにより、干渉縞の周期に対応した周期を有する結晶領域21のパターン(一例として、酸化白金パターン)が除去され、被膜19のうち非結晶領域19’のパターンが残留する(図11(C))。その後、この非結晶領域19’のパターンをエッチングマスクとして用いて、対象物22に対するエッチングを行う。このときのエッチングの具体的手法は、対象物22に応じて適宜選択すればよい。一例として、本実施形態ではドライエッチングを行う。それにより、非結晶領域19’のパターンが対象物22としてのアルミニウム膜に転写される(図11(D))。すなわち、アルミニウム膜のうち、非結晶領域19’(第2部分)と重ならない部分が除去される。こうして、基板20上に、140nmの周期を有するストライプ状のアルミニウム膜23(アルミグリッド)が形成される。
【0053】
なお、対象物22を形成せずに、上記図11(A)〜図11(C)と同様の工程を経た場合には、非結晶領域19’(或いは結晶領域21)のパターンが基板22の表面に転写される(図示省略)。
【0054】
このように、熱的非線形性を有する被膜を採用したことにより、結晶領域(変性領域)と非結晶領域(非変性領域)との繰り返し周期がより小さく(例えば100nm〜200nm程度)なったとしても、従来のフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。そして、結晶領域と非結晶領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、被膜をエッチングすることにより、結晶領域(又は非結晶領域)を除去し、当該領域を開口させることができる。こうして得られた開口を有する被膜をエッチングマスクとして利用して、対象物に対するエッチングを行うことにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0055】
図12は、微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。上記図10又は図11を通して説明した各実施形態において、更に図12に示すように、干渉光を照射する工程を2回以上行い、その際に各工程ごとに2本の回折ビームB1、B2の相互間に位相差を与えることもまた好ましい。
【0056】
具体的には、図12(A)に示す工程においては、上記の各実施形態の場合と同様に2本の回折ビームB1、B2の相互間の位相差φをφ0(任意の値)に設定して当該各回折ビームを交叉させ、それにより発生する干渉光(第1の光)を対象物19に照射する。このφ=φ0の状態を基準状態(位相差0の状態)とする。次に、図12(B)に示す工程においては、2本の回折ビームB1、B2の相互間の位相差φをφ0+πに設定して当該各回折ビームを交差させ、それにより発生する干渉光(第2の光)を対象物19に照射する。位相差の設定は、上記のように位相差板17の配置変更によって実現する。このように多重露光すると、図13に示すように、1回目の露光による光強度分布(図中、実線で示す)に対応して周期Pで繰り返す結晶領域が得られ、更にこの1回目の露光により得られた結晶領域とはP/2だけずれた位置に、2回目の露光による光強度分布(図中、点線で示す)に対応して周期Pで繰り返す結晶領域が得られる。これらを全体としてみると、周期P/2で繰り返す結晶領域のパターンが得られることになる。このような状態の対象物19に対してエッチングを行うことにより、周期P/2の凹凸パターンが得られる。上述したように(図6参照)、光に対する対象物19の反応が非線形性を有するため、2回目の露光を行った後においても結晶領域のパターンが先鋭さを失う(つぶれてしまう)ことを回避し、狭ピッチのパターンが得られる。
【0057】
本実施形態に対する比較として光に対する対象物の反応が線形な場合(例えば、一般的なフォトレジスト膜など)を考えると、上記と同様な狭ピッチの干渉光による露光を複数回行った場合にはパターンがつぶれてしまう。フォトレジスト等が光に反応する過程が1光子吸収だからである。なお、本実施形態では、各回折ビームの相互間の位相シフト量がπに設定し、波長の1/2の周期的パターンを形成する場合について説明したが、位相シフト量をπ/2とすれば波長の1/4の周期でパターンを形成でき、さらに、位相シフト量をπ/4とすれば波長の1/8の周期でパターンを形成できる。
【0058】
このように、2本のレーザービームの間に位相差を与えることにより、第1の光の干渉縞と第2の光の干渉縞とを微小な幅(例えば1/2ピッチ、1/4ピッチ等)でずらすことができる。このような第1の光および第2の光を順次、熱的非線形性を有する被膜に照射することで、結晶領域(変性領域)と非結晶領域(非変性領域)との繰り返し周期を更に小さくすることができる。このように繰り返し周期が更に小さくなった場合でも、熱的非線形性を有する被膜を用いているので結晶領域と非結晶領域との境界が鮮鋭に得られる。よって、更に解像度の高い微細構造体が得られる。上述のような熱的非線形性と干渉光の位相シフトを利用することにより、理論上は、レーザービームの波長の制約から逃れて微細なパターンを実現できる。実際上も、従来に比較して格段に微細なパターンを実現できる。
【0059】
図14は、微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。上記図10又は図11を通して説明した各実施形態において、更に図14に示すように、干渉光を照射する工程(レーザー干渉露光工程)における2本の回折ビームを用いて発生させた干渉光と併せてこの干渉光とは別の光(第3の光)を対象物(被膜)19に照射することも好ましい。
【0060】
例えば、干渉露光に用いる回折ビームB1、B2とは異なるレーザービームB3を対象物19に照射する。これにより、2本の回折ビームB1、B2による光照射強度に対し、他のレーザービームB3によってバイアスを与える作用が得られる。それにより、図15に示すように、対象物19において転移温度Tcを超える領域の深さdcがより深くなる。このようにして対象物19に結晶領域を形成し、これにエッチングを施すことにより、図16に示すように、上記図10又は図11を通して説明した各実施形態の場合に比較して、より深い凹凸パターンを対象物19を形成することが可能となる。また、対象物19として選択した材料の転移温度Tcが高い場合に、広い領域へ凹凸パターンを形成するためにも有効である。また、干渉光の発生に用いられる回折ビームB1、B2の出力が小さい場合でも、上記のバイアス露光を行うことにより、対象物19の表面の広い領域において凹凸パターンを形成することができる。なお、図示の例では、光強度が相対的に弱く非結晶状態のままとなった領域が残留する場合が示されているが、光強度が相対的に強く結晶状態となった領域が残留する場合もある。その場合には、凹凸パターンが光強度分布の高い位置に対応して配列する。
【0061】
なお、この対象物19に形成した凹凸パターンを更にエッチングマスクとして用いることにより、対象物19の裏面側に予め設けておいた対象物(図11参照)に凹凸パターンを転写することもできる。
【0062】
なお、第3の光は、対象物19に対して温度のバイアスをかける作用を得ることができる限りにおいては、上記したレーザービーム以外にも種々の光を用いることができる。第3の光の波長λ2は、第1の光としての各回折ビームB1、B2の波長λ1と同じ又は近い値であることが効率的なバイアス付与という観点から好ましいが、これに限定されない。更に、第3の光は必ずしも単波長の光(単色光)である必要もなく、複数の波長成分を含んだ光であってもよい。第3の光を発生させる光源としては、例えばエキシマレーザー(波長308nm)を用いることができる。このようなバイアス露光を併用することにより、干渉光によって露光可能な領域を拡大し、より広い領域へ一度にパターンを形成することができる。
【0063】
以下に、上述した実施形態を適用して金属グリッド型偏光分離素子を製造する場合の一具体例(実施例)を説明する。
【0064】
石英ガラス基板上にアルミニウム膜を形成し、更にこのアルミニウム膜上に酸化白金膜を形成する。それぞれの膜厚は、例えばアルミニウム膜が150nm、酸化白金膜が100nmとする。光源10としては、Qスイッチ ナノ秒パルスYAGレーザー(波長266nm)を用いる。レーザー平均出力は1W(パルス繰り返し周波数:1KHzの時)である。この光源10から出射するレーザービームを2本に分岐し、当該分岐された2本のレーザービーム(回折ビーム)を交叉させることにより干渉光を発生させる。干渉角度θは72度とする。上述した式(1)によれば、対象物としての酸化白金膜の表面における干渉縞の周期は140nmとなる。この干渉光を用いて1回の露光を行う。なお、適宜、第3の光を用いたバイアス露光を併用してもよい。その後にアルカリ水溶液を用いてエッチングを行うことにより、その結果、干渉縞の周期と同周期、すなわち140nmの周期を有する酸化白金パターンが形成される。更に、この酸化白金パターンをエッチングマスクとして用いて、アルミニウム膜に対してドライエッチングを行うことにより、酸化白金パターンをその下のアルミニウム膜へ転写する。こうして、140nmの周期を有するストライプ状のアルミニウム膜(アルミグリッド)が石英ガラス基板上に形成される。このような微細構造体は、例えば偏光分離素子として利用できる。
【0065】
また、上述した条件で干渉光を発生させる際に、1回目は各ビームの相互間の位相差φ=φ0(任意の値)、2回目は位相差φ=φ0+πとする。すなわち、1回目と2回目とで位相差πに設定する。このようにして2回目の露光を行う。なお、適宜、第3の光を用いたバイアス露光を併用してもよい。その後にアルカリ水溶液を用いてエッチングを行うことにより、干渉縞の周期の半分、すなわち70nmの周期を有する酸化白金パターンが形成される。更に、この酸化白金パターンをエッチングマスクとして用いて、アルミニウム膜に対してドライエッチングを行うことにより、酸化白金パターンをその下のアルミニウム膜へ転写する。こうして、70nmの周期を有するストライプ状のアルミニウム膜(アルミグリッド)が石英ガラス基板上に形成される。このような微細構造体は、例えば偏光分離素子として利用できる。
【0066】
図17は、上記のように製造される偏光分離素子の構造を模式的に示す図である。具体的には、図17(A)は偏光分離素子の機能を示す概略斜視図であり、図17(B)は当該偏光分離素子の部分的な概略断面図である。この偏光分離素子は、ガラス基板(SiO2)上に厚さ150nmのアルミニウム膜がストライプ状(一次元格子パターン)に形成されている。アルミニウム膜の格子の周期Pは70nm又は140nmである。ガラス基板の複素誘電率はN=1.5−j0.0、アルミニウム膜の複素誘電率はN=0.59−j5.34である。図18に、このような偏光分離素子の偏光分離特性を示す。図18において、縦軸は透過率(左側)とコントラスト(右側)、横軸は格子周期Pと波長λの比である。コントラストはTE偏光の透過率とTM偏光の透過率の比で定義される。この結果からわかるように、偏光分離素子を構成する格子パターン(サプ波長構造)の周期Pが短いほど、偏光分離素子としての性能が高い(すなわち、透過率が高い、コントラストが高い)。図18において、周期P=70nmに対する特性および周期P=140nmに対する特性をそれぞれグラフ上部に矢印で示している。いずれの偏光分離素子においても優れた偏光分離特性が得られている。特に周期P=70nmの偏光分離素子の特性は周期P=140nmの偏光分離素子との比較においても、透過率ならびにコントラストが格段に優れていることが分かる。
【0067】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施することが可能である。上述した実施形態では、本発明の適用した具体例として偏光分離素子を挙げていたが、本発明はこれ以外にも、微細構造パターンの形成が必要とされる様々なデバイスの製造に有用である。デバイスとしては、光学薄膜デバイス、半導体薄膜デバイス、マーキング、微小機械部品、等が挙げられる。光学薄膜デバイスへの応用としては、例えば、液晶応用機器へ用いられる反射防止膜、位相差板、光導波路、偏光素子、配向膜、LED素子、EL素子等の発光素子に用いるフォトニック構造、高密度光ディスク、等が挙げられる。
【0068】
また、上述した実施形態においては、変性領域の一例として結晶状態を挙げ、非変性領域の一例として非結晶状態を挙げていたが、変性領域および非変性領域はこれに限定されない。変性領域と非変性領域は、両者の物性(物理的あるいは化学的性質)の違いに起因するエッチング速度の差が生じるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】露光装置(微細構造体の製造装置)の構成を示すブロック図である。
【図2】回折光学素子の側面図である。
【図3】位相差板の側面図である。
【図4】2本の回折ビームを交叉させることによって発生した干渉光が対象物に照射される様子を概略的に示す図である。
【図5】(1)式の関係を示すグラフである。
【図6】熱的非線形性を有する素材の一例について説明する図である。
【図7】熱的非線形性を有する素材に対する露光について概略的に示す図である。
【図8】温度に応じて相変化が生じる深さを説明する図である。
【図9】干渉縞の周期に応じて形成される凹凸パターンの様子を概略的に示した図である。
【図10】本実施形態に係る微細構造体の製造工程を示す概略断面図である。
【図11】微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図12】微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図13】干渉縞の周期に応じて形成される凹凸パターンの様子を概略的に示した図である。
【図14】微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図15】温度に応じて相変化が生じる深さを説明する図である。
【図16】干渉縞の周期に応じて形成される凹凸パターンの様子を概略的に示した図である。
【図17】微細構造体の一例である偏光分離素子の構造を模式的に示す図である。
【図18】偏光分離素子の特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1…露光装置、10…光源、11…シャッター、12、13…ミラー、14…回折光学素子、15…第1のレンズ、16…空間フィルタ、17…位相差板、18…第2のレンズ、19…対象物(被膜、被加工体)、19’…非結晶領域、20…基板、21…結晶領域、22…対象物、23…アルミニウム膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー干渉露光を用いた微細構造体、特にナノメートルオーダの構造を有する構造物(ナノ構造体)の製造技術に関する。この技術は、偏光分離素子、位相遅延素子、反射防止素子等のさまざまなナノ構造体を製造するために応用できる。
【背景技術】
【0002】
可視光の波長(概ね380〜780nm程度)よりも小さなオーダの構造物(サブ波長構造体)へ光を入射すると、偏光分離、複屈折、反射防止、プラズモン伝搬等の現象が現れる。このようなサブ波長構造体を製造するための手段の一つとして、レーザー干渉を利用した露光技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の露光技術では、2つのレーザービームを交叉させることによって得られる干渉光(干渉縞を有する光)を用いて感光性膜を露光する。このとき、干渉光を用いた露光によって形成されるパターンの周期はレーザービームの波長λ及びレーザービームの交叉角度に依存する。理論上、干渉露光で実現できる最小周期はλ/2に等しい。例えば、波長が266nmの場合、形成し得るパターンの最小周期は理論上133nmとなる。
【0003】
上記の干渉露光によれば、更に小さい周期のパターンを実現するには、レーザービームの波長を短くする必要がある。しかし、現状ではレーザービームの更なる短波長化は難しい。その理由のひとつは、266nmよりも充分に短い波長を有する、高コヒーレントなレーザー光源が存在しないことである。半導体リソグラフィ等の分野で利用されているエキシマレーザーには波長が193nm、157nm等のものがあるが、現状では充分にコヒーレントが高くないため、鮮鋭な潜像パターンを形成することが難しい。もうひとつの理由は、波長が200nmよりも短くなると、大気中で露光することが難しくなることである。また、レーザー干渉露光系を構成する光学部品(レンズ、ミラー等)に適当な素材を求めることも難しくなる。例えば、石英ガラスの吸収端は180nm付近にあるからである。したがって、レーザービームの更なる短波長化を過度に追求することなく、鮮鋭な潜像パターンを形成し、これを用いて微細パターンを実現し得る技術が要望されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−093644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、解像度の高い微細構造体を実現し得る技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様(以下、便宜上「第1態様」という。)は、微細構造体の製造方法であって、
(a)2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、
(b)熱的非線形性を有する対象物に対して上記第1の光を照射することにより、上記第1の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを上記対象物に形成すること、
(c)上記対象物に対してエッチングを行い、上記変性領域又は上記非変性領域のいずれかを選択的に除去すること、
を含む。
【0007】
ここで、「熱的非線形性を有する対象物」とは、例えばPtO、ZnS−SiO2、Ge−Sb−Te、Ge−Sb−Te−S、Te−TeO2−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Ge−Te−Sn、Sn−Se−Te、Sb−Se−Te、Sb−Se、Ga−Se−Te−Ge、In−Se、In−Se−Tl−Co、Ge−Sb−Te、In−Se−Te、Ag−In−Sb−Te、TeO2−Pbなどの材料からなる基材(基板)、被膜、構造物等である。また「変性領域」とは例えば結晶状態の領域であり、「非変性領域」とは例えば非結晶状態の領域である。
【0008】
第1態様においては、干渉縞(すなわち光強度分布)を有する第1の光を熱的非線形性を有する対象物に照射することにより、光強度が相対的に高い領域と低い領域とに対応して変性領域と非変性領域とが得られる。この変性領域と非変性領域との繰り返し周期(ピッチ)は、交叉させる2本のレーザービームの波長を短くし、或いは交叉角度を大きくすることによって短くすることができる。熱的非線形性を有する対象物を採用したことにより、変性領域と非変性領域との繰り返し周期がより小さく(例えば100nm〜200nm程度)なったとしても、従来のフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。そして、変性領域と非変性領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、対象物をエッチングすることにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0009】
上記第1態様の製造方法は、上記(b)の後であって上記(c)より先に、
(d)上記2本のレーザービームの間に位相差を与えて当該2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第2の光を発生させること、
(e)上記対象物に対して上記第2の光を照射することにより、上記第2の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを形成すること、
を更に含むことも好ましい。
【0010】
2本のレーザービームの間に位相差を与えることにより、第1の光の干渉縞と第2の光の干渉縞とを微小な幅(例えば1/2ピッチ、1/4ピッチ等)でずらすことができる。このような第1の光および第2の光を順次、熱的非線形性を有する対象物に照射することで、変性領域と非変性領域との繰り返し周期を更に小さくすることができる。このように繰り返し周期が更に小さくなった場合でも、熱的非線形性を有する対象物を用いているので変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。よって、更に解像度の高い微細構造体が得られる。
【0011】
上記第1態様の製造方法において、上記(b)は、上記第1の光と併せて第3の光を上記対象物に照射することも好ましい。同様に、上記(d)は、上記第2の光と併せて第3の光を上記対象物に照射することも好ましい。「第3の光」としては、例えばレーザービーム(レーザー光)等の単波長の光が好適であるが、複数の波長成分を含んだ光であってもよい。
【0012】
第1の光あるいは第2の光を照射する際に、これらとは異なる第3の光を更に照射することにより、光照射強度にバイアスをかけることができる。それにより、第1の光あるいは第2の光の光強度が低い場合であっても、変性領域および非変性領域を確実に形成することが可能となる。
【0013】
本発明に係る他の態様(以下、便宜上「第2態様」という。)は、微細構造体の製造方法であって、
(a)対象物上に、熱的非線形性を有する被膜を形成すること、
(b)2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、
(c)上記第1の光を上記被膜に照射することにより、上記第1の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを上記被膜に形成すること、
(d)上記被膜に対してエッチングを行い、上記変性領域又は上記非変性領域のいずれかを選択的に除去すること、
(e)上記変性領域又は上記非変性領域のいずれかが除去された後の上記被膜を介して上記対象物に対するエッチングを行うこと、
を含む。
【0014】
ここで、「熱的非線形性を有する被膜」とは、例えばPtO、ZnS−SiO2、Ge−Sb−Te、Ge−Sb−Te−S、Te−TeO2−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Ge−Te−Sn、Sn−Se−Te、Sb−Se−Te、Sb−Se、Ga−Se−Te−Ge、In−Se、In−Se−Tl−Co、Ge−Sb−Te、In−Se−Te、Ag−In−Sb−Te、TeO2−Pbなどの材料からなる被膜(薄膜又は厚膜)である。また「変性領域」とは例えば結晶状態の領域であり、「非変性領域」とは例えば非結晶状態の領域である。
【0015】
第2態様においては、干渉縞を有する第1の光を熱的非線形性を有する被膜に照射することにより、光強度が相対的に高い領域と低い領域とに対応して変性領域と非変性領域とが得られる。この変性領域と非変性領域との繰り返し周期(ピッチ)は、交叉させる2本のレーザービームの波長を小さくし、或いは交叉角度を大きくすることによって短くすることができる。熱的非線形性を有する被膜を採用したことにより、変性領域と非変性領域との繰り返し周期がより小さく(例えば100nm〜200nm程度)なったとしても、従来のフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。そして、変性領域と非変性領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、被膜をエッチングすることにより、変性領域又は被変性領域を除去し、当該領域を開口させることができる。こうして得られた開口を有する被膜をエッチングマスクとして利用して、対象物に対するエッチングを行うことにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0016】
上記第2態様は、上記(c)の後であって上記(d)より先に、
(f)上記2本のレーザービームの間に位相差を与えて当該2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第2の光を発生させること、
(g)上記被膜に対して上記第2の光を照射することにより、上記第2の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを上記被膜に形成すること、
を更に含むことも好ましい。
【0017】
2本のレーザービームの間に位相差を与えることにより、第1の光の干渉縞と第2の光の干渉縞とを微小な幅(例えば1/2ピッチ、1/4ピッチ等)でずらすことができる。このような第1の光および第2の光を順次、熱的非線形性を有する被膜に照射することで、変性領域と非変性領域との繰り返し周期を更に小さくすることができる。このように繰り返し周期が更に小さくなった場合でも、熱的非線形性を有する被膜を用いているので変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。よって、更に解像度の高い微細構造体が得られる。
【0018】
上記第2態様において、上記(b)は、上記第1の光と併せて第3の光を上記被膜に照射することも好ましい。同様に、上記(d)は、上記第2の光と併せて第3の光を上記被膜に照射することも好ましい。「第3の光」としては、例えばレーザービーム(レーザー光)等の単波長の光が好適であるが、複数の波長成分を含んだ光であってもよい。
【0019】
第1の光あるいは第2の光を照射する際に、これらとは異なる第3の光を更に照射することにより、光照射強度にバイアスをかけることができる。それにより、第1の光あるいは第2の光の光強度が低い場合であっても、変性領域および非変性領域を確実に形成することが可能となる。
【0020】
本発明に係る他の態様(以下、便宜上「第3態様」という。)は、光を被加工物に照射する方法であって、
(a)2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、
(b)熱的非線形性を有する被加工物に対して上記第1の光を照射することにより、上記第1の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを上記被加工物に形成すること、
を含む。
ここで、「熱的非線形性を有する被加工物」の具体例は上記の本発明に係る第1態様の微細構造体の製造方法の場合における「熱的非線形性を有する対象物」と同様である。また「変性領域」、「非変性領域」のそれぞれの具体例についても上記の本発明に係る第1態様と同様である。
【0021】
第3態様においては、干渉縞を有する第1の光を熱的非線形性を有する対象物に照射することにより、光強度が相対的に高い領域と低い領域とに対応して変性領域と非変性領域とが得られる。この変性領域と非変性領域との繰り返し周期(ピッチ)は、交叉させる2本のレーザービームの波長を小さくし、或いは交叉角度を大きくすることによって短くすることができる。熱的非線形性を有する対象物を採用したことにより、変性領域と非変性領域との繰り返し周期がより小さく(例えば100nm〜200nm程度)なったとしても、従来のフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。したがって、この光照射方法によれば、微小ピッチで周期的に配列された変性領域及び非変性領域を備える微細構造体を形成することができる。また、これらの変性領域と非変性領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、対象物をエッチングすることにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0022】
上記第3態様の光照射方法は、上記(b)の後に、
(c)上記2本のレーザービームの間に位相差を与えて当該2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第2の光を発生させること、
(d)上記被加工物に対して上記第2の光を照射することにより、上記第2の光の上記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを上記被加工物に形成すること、
を更に含むことが好ましい。
【0023】
2本のレーザービームの間に位相差を与えることにより、第1の光の干渉縞と第2の光の干渉縞とを微小な幅(例えば1/2ピッチ、1/4ピッチ等)でずらすことができる。このような第1の光および第2の光を順次、熱的非線形性を有する被加工物に照射することで、変性領域と非変性領域との繰り返し周期を更に小さくすることができる。このように繰り返し周期が更に小さくなった場合でも、熱的非線形性を有する被加工物を用いているので変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。また、この被加工物をエッチングすることによって、更に解像度の高い微細構造体が得られる。
【0024】
上記第3態様において、上記(b)は、上記第1の光と併せて第3の光を上記被膜に照射することも好ましい。同様に、上記(d)は、上記第2の光と併せて第3の光を上記対象物に照射することも好ましい。「第3の光」としては、例えばレーザービーム(レーザー光)等の単波長の光が好適であるが、複数の波長成分を含んだ光であってもよい。
【0025】
第1の光あるいは第2の光を照射する際に、これらとは異なる第3の光を更に照射することにより、光照射強度にバイアスをかけることができる。それにより、第1の光あるいは第2の光の光強度が低い場合であっても、変性領域および非変性領域を確実に形成することが可能となる。
【0026】
本発明に係る他の態様は、微細構造体の製造方法であって、
(a)金属膜上に非晶質である無機材料層を形成すること、
(b)上記無機材料層に第1レーザービームと第2レーザービームの交叉により発生した光を照射し、上記無機材料層のうち上記光の干渉縞の周期に対応する第1部分を結晶化温度以上に加熱し、上記第1部分を結晶質に変性させること、
(c)上記金属膜上から上記第1部分を除去し、かつ、上記無機材料層のうち上記結晶質に変性しなかった第2部分を残すこと、
(d)上記金属膜の上記第2部分と重ならない領域を除去し、上記干渉縞の周期とピッチの等しい構造体を形成すること、
を含む。
なお、上記(c)において第2部分を除去して第1部分を残し、上記(d)において上記金属膜の上記第1部分と重ならない領域を除去する、ようにしてもよい。すなわち、いずれの部分が除去されるかは、例えば無機材料層の素材に依存するからである。
【0027】
上記態様においては、第1レーザービームと第2レーザービームとを交差させることにより干渉縞(すなわち光強度分布)を有する光を発生させることができる。この干渉縞を含む光を非晶質の無機材料層に照射することにより、光強度が相対的に高い領域と低い領域とに対応して第1部分を結晶質に変性させる。この結晶質に変性した第1部分と結晶質に変性しなかった第2部分との繰り返し周期(ピッチ)は、交叉させる2本のレーザービームの波長を短くし、或いは交叉角度を大きくすることによって短くすることができる。第1部分(結晶質)と第2部分(非結晶質)との繰り返し周期がより小さく(例えば100nm〜200nm程度)なったとしても、従来のフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して第1部分と第2部分との境界が鮮鋭に得られる。そして、変性領域と非変性領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、対象物をエッチングすることにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0028】
好ましくは、上記(b)において、上記第1部分が膜厚方向に完全に結晶化温度以上に加熱されている。
【0029】
それにより、第1部分を膜厚方向について完全に結晶化することができる。
【0030】
好ましくは、上記金属膜がアルミニウムを含み、上記構造体がストライプ状のグリッドである。
【0031】
それにより、偏光分離素子等の光学素子として利用可能な微細構造体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は、本実施形態に係る露光装置(微細構造体の製造装置)の構成を示すブロック図である。図1に示す本実施形態の露光装置1は、光源(パルスレーザー装置)10、シャッター11、ミラー12、13、回折光学素子14、第1のレンズ15、空間フィルタ16、位相差板17及び第2のレンズ18を含んで構成される。
【0034】
光源10は、短波長のレーザービームを出力する。この光源10としては、例えばQスイッチパルスYAGレーザー(波長266nm)が好適に用いられる。光源10のレーザー平均出力は例えば1W程度(パルス繰り返し:1kHzの時)であり、パルス幅は例えば1×10-9秒以上1×10-7秒以下である。なお、本実施形態ではパルスレーザービームを用いるが、本発明はこれに限定されずCW(Continuous Wave)レーザービームであってもよい。光源10から出射されるレーザービームは、シャッター11を通過し、各ミラー12、13により進路(光路)をそれぞれ90°ずつ変更された後に、回折光学素子14へ入射する。シャッター11は、レーザービームの通過/遮断を制御する。
【0035】
回折光学素子14は、入射したレーザービームを複数のレーザービーム(回折ビーム)に分岐する。図2は、回折光学素子14の側面図である。図2に示すように、回折光学素子14は、ギャップh(例えば266nm)の2つのレベルを周期p(例えば0.50μm)にて備えたバイナリ構造を有しており、表面形状が周期的構造をなしている。回折光学素子14は、レーザー描画とイオンエッチングにより、石英基板上に作製される。なお、回折光学素子14は、バイナリ構造に限定されず、例えば、表面形状がサイン(コサイン)曲面形状をなす周期的構造をなしていてもよく、あるいは、外観が平らであり内部の屈折率が周期的に分布する周期的構造をなしていてもよい。
【0036】
第1のレンズ15は、分岐された複数の回折ビームを集光して安定化させる。本実施形態において、第1のレンズ15の焦点距離f1は例えば50mmである。空間フィルタ16は、複数の回折ビームのうち2本の回折ビームのみを通過させる。
【0037】
位相差板17は、空間フィルタ16を通過した2本の回折ビームの相互間に位相差を与える。図3は、位相差板17の側面図である。図3に示すように、位相差板17は、表面に深さgの段差(ギャップ)を有している。すなわち、図中右側の領域と左側の領域とで位相差板17の厚みが異なる。それにより、位相差板17を通過した回折ビームと、位相差板17を通過しない回折ビームとの間に所定の位相差(光路差)を与えることができる。本実施形態では、位相差板17の相対的に板厚が大きい領域を通過した回折ビームと、位相差板17を通過していない回折ビームとの間の位相差φが0に設定されている。また、位相差板17の相対的に板厚が小さい領域を通過した回折ビームと、位相差板17を通過していない回折ビームとの間の位相差φがπに設定されている。位相差板17は、レーザー描画とイオンエッチングにより石英基板上に作製される。なお、位相差板17は、厚みが異なる段差付形状に限定されず、例えば、外観は平らであり左右領域の屈折率が異なる構成としてもよい。なお、位相差がπの場合であれば、1/2波長板を位相差板17として用いてもよい。
【0038】
第2のレンズ18は、位相差板17を通過した2本の回折ビームを集光する。第2のレンズ18の焦点距離f2は例えば28mmである。第二のレンズ18によって集光された2本の回折ビームは対象物19へ照射される。この2本の回折ビームは、所定の交叉角度θで干渉し、周期的な干渉縞(干渉光強度分布)を発生させる。この干渉光強度分布によって、対象物の表面に干渉光強度分布に対応した周期の微細パターンが形成される。回折ビームによる露光時間は例えば数ミリ秒間程度であり、この露光時間はシャッター11によって制御される。
【0039】
このような本実施形態に係る露光装置1は、分岐された2本の回折ビームが互いに近接しており、干渉露光に要する時間が数ミリ秒間程度と短いため、外乱に対して極めて安定であり、振動や空気ゆらぎの影響を受けにくい。一般的に、レーザー干渉露光系は、空気ゆらぎに敏感であり、安定性を確保するためには、露光系を防振ベンチの上に置き、さらに、露光系と防振ベンチを強固なカバーで覆う等の処置が必要であり、設備に多額のコストを要するものであるが、本実施形態によれば安定した露光系を簡便な装置構成によって実現することができる。
【0040】
図4は、2本の回折ビームを交叉させることによって発生した干渉光が対象物に照射される様子を概略的に示す図である。2本の回折ビームを交叉角度θで交叉させたときに得られる干渉縞Fの周期Pは、各回折ビームの波長をλとすると、次式で与えられる。
P=λ/(2sinθ) ・・・(1)
このとき、図4に示すように、2本の回折ビームB1(第1レーザービーム)、回折ビームB2(第2レーザービーム)を対象物19の照射面と直交する軸(仮想軸)に対して対称に入射させる。これにより、干渉光の照射深さ、幅、あるいは干渉縞FのピッチPなどをより均質に揃えられる。
【0041】
図5は、上記(1)式の関係を示すグラフである。横軸が交叉角度θ、縦軸が干渉縞Fの周期Pに対応している。図5に示されるように、例えば波長λが266nm、交叉角度θが72度であるとすると、干渉縞Fの周期Pは140nmとなる。このような狭ピッチの干渉縞を含んだ干渉光を対象物19に照射することにより、所望の加工が可能となる。ここで、本実施形態では対象物19として、熱的非線形性を有する素材を採用する。以下に、熱的非線形性を有する素材について説明する。
【0042】
図6は、熱的非線形性を有する素材の一例について説明する図である。具体的には、図6は、熱的非線形性を有する素材(例えば酸化白金:PtO)の示差熱分析の測定結果を示している。図示のように、例えば酸化白金を加熱すると温度550℃付近で相変化が現れ、酸化白金は非結晶状態(非変性状態)から結晶状態(変性状態)へと変化する。この相変化が生じる温度を転移点Tcと呼ぶことにする。このように、温度上昇により相変化が急峻に(すなわち非線形に)起こる素材を本実施形態では「熱的非線形性を有する素材」という。このような相変化の有無に起因した非結晶領域および結晶領域が混在する対象物19をアルカリ水溶液へ浸すと、これらふたつの領域の間にはエッチングレートに差があるため、例えば結晶領域の方がより早くエッチングされる。それにより、非結晶領域と結晶領域に対応した凹凸を生じさせることができる。本実施形態では、このような熱的非線形性を有する素材に対して上記した干渉光を用いた露光を行う。
【0043】
図7は、熱的非線形性を有する素材に対する露光について概略的に示す図である。図7に示すように、基板20上(例えば、ガラス基板上)に形成された対象物19に対して、2本の回折ビームを交叉させて発生させた干渉光を照射する。それにより、熱的非線形性を有する素材からなる対象物19の表面に、干渉光の干渉縞FのピッチPに対応した周期的な相変化を生じさせる。すなわち、干渉光の強度が相対的に高い領域においては、熱的非線形性を有する素材からなる対象物19が熱せられて転移点Tcを超えることにより相転移が生じ、当該領域が結晶状態となる。また、干渉光の強度が相対的に低い領域においては、熱的非線形性を有する素材からなる対象物19がさほど熱せられないことから転移点Tcを超えず、よって当該領域は相転移は生じずに非結晶状態のままとなる。図8に示すように、相変化が生じる深さは対象物19の表面からdcの深さである。この深さdcまでは対象物19の温度が転移点Tcを超える。このことを考慮し、膜厚方向に完全に転移点Tc以上に熱せられるよう、対象物19の厚みをdc以下に設定しておく。干渉光を照射した後、対象物19をアルカリ水溶液へつけると、干渉縞の周期Pと等しい周期を有する凹凸パターン(深さ=dc)が対象物19の表面に現れる。この様子を概略的に示したのが図9である。図示の例では、光強度が相対的に弱く非結晶状態のままとなった領域が残留する場合が示されている。なお、光強度が相対的に強く結晶状態となった領域が残留する場合もあり、その場合には、凹凸パターンが光強度分布の高い位置に対応して配列する。上記の図7に示されるように、相変化曲線の非線形性が高いため、レーザービームの照射条件を適宜制御することにより、幅の狭く、鮮鋭な凹凸パターンを実現できる。
【0044】
なお、熱的非線形性を有する素材は上記の酸化白金膜以外にも以下のような無機材料が挙げられる。本実施形態では、一旦結晶状態としたものを再度非結晶状態に戻す必要はないため、不可逆変化型の素材も用いることができる。例えば、ZnS−SiO2、Ge−Sb−Te、Ge−Sb−Te−S、Te−TeO2−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Ge−Te−Sn、Sn−Se−Te、Sb−Se−Te、Sb−Se、Ga−Se−Te−Ge、In−Se、In−Se−Tl−Co、Ge−Sb−Te、In−Se−Te、Ag−In−Sb−Te、TeO2−Pb、などである。これらのいずれも対象物19として採用することが可能である。
【0045】
本実施形態に係る露光装置1の構成および露光原理(すなわち光照射方法)は上述した通りであり、次に、本実施形態に係る微細構造体の製造工程(製造方法)について説明する。
【0046】
図10は、本実施形態に係る微細構造体の製造工程を示す概略断面図である。上述した露光装置1を用いて、2本の回折ビームを所定の交叉角度θで交叉させることにより干渉光(第1の光)を発生させ、当該干渉光を基板20上の対象物19に照射する(図10(A))。このとき、上述のように一方の回折ビームB2は位相差板17を通過するが、他方の回折ビームB1との間で位相差が生じない設定となっている。なお、図10では位相差板17を図示する便宜上、位相差板17が回折ビームB2に対して斜行して描かれているが、図1に示したように実際には位相差板17の表面に対して回折ビームB2が直交するように位相差板17が配置される。以下に説明する図面においても同様である。
【0047】
所定の交叉角度θで交叉した2本の回折ビームB1、B2は互いに干渉し、周期的な干渉縞(干渉光強度分布)を発生させる(図4参照)。この干渉光強度分布を有する干渉光が照射されることにより、対象物19は光強度の高い領域において相転移を起こし、当該領域(第1部分)21が結晶状態となる(図10(B))。この結晶状態となった領域21(以下「結晶領域21」という。)の繰り返し周期は干渉光強度分布の周期と等しい。干渉光の照射時間(露光時間)は例えば数ミリ秒間程度であり、この照射時間(露光時間)はシャッター11により制御される。
【0048】
次に、対象物19をアルカリ水溶液へ浸すことによってエッチングを行う。このとき、結晶領域21とそれ以外の領域(すなわち、非結晶領域)との間にエッチング速度の差が生じ、例えば結晶領域21が非結晶領域(第2部分)よりも早く除去される。その結果、干渉光の干渉縞の周期に対応した周期(本例では140nm)を有する非結晶領域19’のパターン(一例として、酸化白金パターン)が形成される(図10(C))。このようなサブ波長オーダの微細構造体には種々の用途を有する。なお、結晶領域21と非結晶領域19’との間に生じるエッチング速度の大小関係は素材により、或いはエッチング溶液と素材との関係によって決まるものであり、結晶領域21よりも非結晶領域が早く除去される場合もある。その場合には、結晶領域21のパターンが得られる。
【0049】
このように本実施形態によれば、干渉縞を有する干渉光(第1の光)を熱的非線形性を有する対象物に照射することにより、光強度が相対的に高い領域と低い領域とに対応して変性領域(結晶領域)と非変性領域(非結晶領域)とが得られる。これらの変性領域と非変性領域との繰り返し周期(ピッチ)は、交叉させる2本のレーザービームの波長を小さくし、或いは交叉角度θを大きくすることによって短くすることができる。熱的非線形性を有する対象物を採用したことにより、変性領域と非変性領域との繰り返し周期が100nm〜200nm程度と小さい場合であっても、従来の有機材料からなるフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。そして、変性領域と非変性領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、対象物をエッチングすることにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0050】
図11は、微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。上記図10に示した実施形態では、エッチングによって得られた非結晶領域19’のパターン(一例として、酸化白金パターン)そのものを微細構造体として利用する場合を想定していたが、この非結晶領域19’のパターン(或いは結晶領域21のパターン)をエッチングマスクとして用いて、他の対象物に微細パターンを転写することもできる。以下、その場合について説明する。なお、上記した製造工程と重複する内容については適宜説明を簡略化する。
【0051】
本実施形態では、図11(A)に示すように、予め基板20の表面に対象物22を形成しておき、更にその対象物22の表面に被膜19(一例として、酸化白金膜)を形成しておく。ここで、対象物22はその内容に特段の限定がないが、例えば本実施形態ではアルミニウムや銀などの金属膜であるとする。なお、基板20そのものが対象物であってもよい。上記と同様に2本の回折ビームを交叉角度θで交叉させて干渉光(第1の光)を発生させ、これを対象物19に照射する。それにより、上記実施形態と同様に、被膜19に結晶領域21が形成される(図11(B))。
【0052】
次に、上記実施形態と同様にエッチングを行うことにより、干渉縞の周期に対応した周期を有する結晶領域21のパターン(一例として、酸化白金パターン)が除去され、被膜19のうち非結晶領域19’のパターンが残留する(図11(C))。その後、この非結晶領域19’のパターンをエッチングマスクとして用いて、対象物22に対するエッチングを行う。このときのエッチングの具体的手法は、対象物22に応じて適宜選択すればよい。一例として、本実施形態ではドライエッチングを行う。それにより、非結晶領域19’のパターンが対象物22としてのアルミニウム膜に転写される(図11(D))。すなわち、アルミニウム膜のうち、非結晶領域19’(第2部分)と重ならない部分が除去される。こうして、基板20上に、140nmの周期を有するストライプ状のアルミニウム膜23(アルミグリッド)が形成される。
【0053】
なお、対象物22を形成せずに、上記図11(A)〜図11(C)と同様の工程を経た場合には、非結晶領域19’(或いは結晶領域21)のパターンが基板22の表面に転写される(図示省略)。
【0054】
このように、熱的非線形性を有する被膜を採用したことにより、結晶領域(変性領域)と非結晶領域(非変性領域)との繰り返し周期がより小さく(例えば100nm〜200nm程度)なったとしても、従来のフォトレジスト膜等を採用する場合に比較して変性領域と非変性領域との境界が鮮鋭に得られる。そして、結晶領域と非結晶領域との間にはエッチング速度に差が生じるので、被膜をエッチングすることにより、結晶領域(又は非結晶領域)を除去し、当該領域を開口させることができる。こうして得られた開口を有する被膜をエッチングマスクとして利用して、対象物に対するエッチングを行うことにより、解像度の高い微細構造体を形成することが可能となる。
【0055】
図12は、微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。上記図10又は図11を通して説明した各実施形態において、更に図12に示すように、干渉光を照射する工程を2回以上行い、その際に各工程ごとに2本の回折ビームB1、B2の相互間に位相差を与えることもまた好ましい。
【0056】
具体的には、図12(A)に示す工程においては、上記の各実施形態の場合と同様に2本の回折ビームB1、B2の相互間の位相差φをφ0(任意の値)に設定して当該各回折ビームを交叉させ、それにより発生する干渉光(第1の光)を対象物19に照射する。このφ=φ0の状態を基準状態(位相差0の状態)とする。次に、図12(B)に示す工程においては、2本の回折ビームB1、B2の相互間の位相差φをφ0+πに設定して当該各回折ビームを交差させ、それにより発生する干渉光(第2の光)を対象物19に照射する。位相差の設定は、上記のように位相差板17の配置変更によって実現する。このように多重露光すると、図13に示すように、1回目の露光による光強度分布(図中、実線で示す)に対応して周期Pで繰り返す結晶領域が得られ、更にこの1回目の露光により得られた結晶領域とはP/2だけずれた位置に、2回目の露光による光強度分布(図中、点線で示す)に対応して周期Pで繰り返す結晶領域が得られる。これらを全体としてみると、周期P/2で繰り返す結晶領域のパターンが得られることになる。このような状態の対象物19に対してエッチングを行うことにより、周期P/2の凹凸パターンが得られる。上述したように(図6参照)、光に対する対象物19の反応が非線形性を有するため、2回目の露光を行った後においても結晶領域のパターンが先鋭さを失う(つぶれてしまう)ことを回避し、狭ピッチのパターンが得られる。
【0057】
本実施形態に対する比較として光に対する対象物の反応が線形な場合(例えば、一般的なフォトレジスト膜など)を考えると、上記と同様な狭ピッチの干渉光による露光を複数回行った場合にはパターンがつぶれてしまう。フォトレジスト等が光に反応する過程が1光子吸収だからである。なお、本実施形態では、各回折ビームの相互間の位相シフト量がπに設定し、波長の1/2の周期的パターンを形成する場合について説明したが、位相シフト量をπ/2とすれば波長の1/4の周期でパターンを形成でき、さらに、位相シフト量をπ/4とすれば波長の1/8の周期でパターンを形成できる。
【0058】
このように、2本のレーザービームの間に位相差を与えることにより、第1の光の干渉縞と第2の光の干渉縞とを微小な幅(例えば1/2ピッチ、1/4ピッチ等)でずらすことができる。このような第1の光および第2の光を順次、熱的非線形性を有する被膜に照射することで、結晶領域(変性領域)と非結晶領域(非変性領域)との繰り返し周期を更に小さくすることができる。このように繰り返し周期が更に小さくなった場合でも、熱的非線形性を有する被膜を用いているので結晶領域と非結晶領域との境界が鮮鋭に得られる。よって、更に解像度の高い微細構造体が得られる。上述のような熱的非線形性と干渉光の位相シフトを利用することにより、理論上は、レーザービームの波長の制約から逃れて微細なパターンを実現できる。実際上も、従来に比較して格段に微細なパターンを実現できる。
【0059】
図14は、微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。上記図10又は図11を通して説明した各実施形態において、更に図14に示すように、干渉光を照射する工程(レーザー干渉露光工程)における2本の回折ビームを用いて発生させた干渉光と併せてこの干渉光とは別の光(第3の光)を対象物(被膜)19に照射することも好ましい。
【0060】
例えば、干渉露光に用いる回折ビームB1、B2とは異なるレーザービームB3を対象物19に照射する。これにより、2本の回折ビームB1、B2による光照射強度に対し、他のレーザービームB3によってバイアスを与える作用が得られる。それにより、図15に示すように、対象物19において転移温度Tcを超える領域の深さdcがより深くなる。このようにして対象物19に結晶領域を形成し、これにエッチングを施すことにより、図16に示すように、上記図10又は図11を通して説明した各実施形態の場合に比較して、より深い凹凸パターンを対象物19を形成することが可能となる。また、対象物19として選択した材料の転移温度Tcが高い場合に、広い領域へ凹凸パターンを形成するためにも有効である。また、干渉光の発生に用いられる回折ビームB1、B2の出力が小さい場合でも、上記のバイアス露光を行うことにより、対象物19の表面の広い領域において凹凸パターンを形成することができる。なお、図示の例では、光強度が相対的に弱く非結晶状態のままとなった領域が残留する場合が示されているが、光強度が相対的に強く結晶状態となった領域が残留する場合もある。その場合には、凹凸パターンが光強度分布の高い位置に対応して配列する。
【0061】
なお、この対象物19に形成した凹凸パターンを更にエッチングマスクとして用いることにより、対象物19の裏面側に予め設けておいた対象物(図11参照)に凹凸パターンを転写することもできる。
【0062】
なお、第3の光は、対象物19に対して温度のバイアスをかける作用を得ることができる限りにおいては、上記したレーザービーム以外にも種々の光を用いることができる。第3の光の波長λ2は、第1の光としての各回折ビームB1、B2の波長λ1と同じ又は近い値であることが効率的なバイアス付与という観点から好ましいが、これに限定されない。更に、第3の光は必ずしも単波長の光(単色光)である必要もなく、複数の波長成分を含んだ光であってもよい。第3の光を発生させる光源としては、例えばエキシマレーザー(波長308nm)を用いることができる。このようなバイアス露光を併用することにより、干渉光によって露光可能な領域を拡大し、より広い領域へ一度にパターンを形成することができる。
【0063】
以下に、上述した実施形態を適用して金属グリッド型偏光分離素子を製造する場合の一具体例(実施例)を説明する。
【0064】
石英ガラス基板上にアルミニウム膜を形成し、更にこのアルミニウム膜上に酸化白金膜を形成する。それぞれの膜厚は、例えばアルミニウム膜が150nm、酸化白金膜が100nmとする。光源10としては、Qスイッチ ナノ秒パルスYAGレーザー(波長266nm)を用いる。レーザー平均出力は1W(パルス繰り返し周波数:1KHzの時)である。この光源10から出射するレーザービームを2本に分岐し、当該分岐された2本のレーザービーム(回折ビーム)を交叉させることにより干渉光を発生させる。干渉角度θは72度とする。上述した式(1)によれば、対象物としての酸化白金膜の表面における干渉縞の周期は140nmとなる。この干渉光を用いて1回の露光を行う。なお、適宜、第3の光を用いたバイアス露光を併用してもよい。その後にアルカリ水溶液を用いてエッチングを行うことにより、その結果、干渉縞の周期と同周期、すなわち140nmの周期を有する酸化白金パターンが形成される。更に、この酸化白金パターンをエッチングマスクとして用いて、アルミニウム膜に対してドライエッチングを行うことにより、酸化白金パターンをその下のアルミニウム膜へ転写する。こうして、140nmの周期を有するストライプ状のアルミニウム膜(アルミグリッド)が石英ガラス基板上に形成される。このような微細構造体は、例えば偏光分離素子として利用できる。
【0065】
また、上述した条件で干渉光を発生させる際に、1回目は各ビームの相互間の位相差φ=φ0(任意の値)、2回目は位相差φ=φ0+πとする。すなわち、1回目と2回目とで位相差πに設定する。このようにして2回目の露光を行う。なお、適宜、第3の光を用いたバイアス露光を併用してもよい。その後にアルカリ水溶液を用いてエッチングを行うことにより、干渉縞の周期の半分、すなわち70nmの周期を有する酸化白金パターンが形成される。更に、この酸化白金パターンをエッチングマスクとして用いて、アルミニウム膜に対してドライエッチングを行うことにより、酸化白金パターンをその下のアルミニウム膜へ転写する。こうして、70nmの周期を有するストライプ状のアルミニウム膜(アルミグリッド)が石英ガラス基板上に形成される。このような微細構造体は、例えば偏光分離素子として利用できる。
【0066】
図17は、上記のように製造される偏光分離素子の構造を模式的に示す図である。具体的には、図17(A)は偏光分離素子の機能を示す概略斜視図であり、図17(B)は当該偏光分離素子の部分的な概略断面図である。この偏光分離素子は、ガラス基板(SiO2)上に厚さ150nmのアルミニウム膜がストライプ状(一次元格子パターン)に形成されている。アルミニウム膜の格子の周期Pは70nm又は140nmである。ガラス基板の複素誘電率はN=1.5−j0.0、アルミニウム膜の複素誘電率はN=0.59−j5.34である。図18に、このような偏光分離素子の偏光分離特性を示す。図18において、縦軸は透過率(左側)とコントラスト(右側)、横軸は格子周期Pと波長λの比である。コントラストはTE偏光の透過率とTM偏光の透過率の比で定義される。この結果からわかるように、偏光分離素子を構成する格子パターン(サプ波長構造)の周期Pが短いほど、偏光分離素子としての性能が高い(すなわち、透過率が高い、コントラストが高い)。図18において、周期P=70nmに対する特性および周期P=140nmに対する特性をそれぞれグラフ上部に矢印で示している。いずれの偏光分離素子においても優れた偏光分離特性が得られている。特に周期P=70nmの偏光分離素子の特性は周期P=140nmの偏光分離素子との比較においても、透過率ならびにコントラストが格段に優れていることが分かる。
【0067】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施することが可能である。上述した実施形態では、本発明の適用した具体例として偏光分離素子を挙げていたが、本発明はこれ以外にも、微細構造パターンの形成が必要とされる様々なデバイスの製造に有用である。デバイスとしては、光学薄膜デバイス、半導体薄膜デバイス、マーキング、微小機械部品、等が挙げられる。光学薄膜デバイスへの応用としては、例えば、液晶応用機器へ用いられる反射防止膜、位相差板、光導波路、偏光素子、配向膜、LED素子、EL素子等の発光素子に用いるフォトニック構造、高密度光ディスク、等が挙げられる。
【0068】
また、上述した実施形態においては、変性領域の一例として結晶状態を挙げ、非変性領域の一例として非結晶状態を挙げていたが、変性領域および非変性領域はこれに限定されない。変性領域と非変性領域は、両者の物性(物理的あるいは化学的性質)の違いに起因するエッチング速度の差が生じるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】露光装置(微細構造体の製造装置)の構成を示すブロック図である。
【図2】回折光学素子の側面図である。
【図3】位相差板の側面図である。
【図4】2本の回折ビームを交叉させることによって発生した干渉光が対象物に照射される様子を概略的に示す図である。
【図5】(1)式の関係を示すグラフである。
【図6】熱的非線形性を有する素材の一例について説明する図である。
【図7】熱的非線形性を有する素材に対する露光について概略的に示す図である。
【図8】温度に応じて相変化が生じる深さを説明する図である。
【図9】干渉縞の周期に応じて形成される凹凸パターンの様子を概略的に示した図である。
【図10】本実施形態に係る微細構造体の製造工程を示す概略断面図である。
【図11】微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図12】微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図13】干渉縞の周期に応じて形成される凹凸パターンの様子を概略的に示した図である。
【図14】微細構造体の製造工程の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図15】温度に応じて相変化が生じる深さを説明する図である。
【図16】干渉縞の周期に応じて形成される凹凸パターンの様子を概略的に示した図である。
【図17】微細構造体の一例である偏光分離素子の構造を模式的に示す図である。
【図18】偏光分離素子の特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1…露光装置、10…光源、11…シャッター、12、13…ミラー、14…回折光学素子、15…第1のレンズ、16…空間フィルタ、17…位相差板、18…第2のレンズ、19…対象物(被膜、被加工体)、19’…非結晶領域、20…基板、21…結晶領域、22…対象物、23…アルミニウム膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、
(b)熱的非線形性を有する対象物に対して前記第1の光を照射することにより、前記第1の光の前記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを前記対象物に形成すること、
(c)前記対象物に対してエッチングを行い、前記変性領域又は前記非変性領域のいずれかを選択的に除去すること、
を含む、微細構造体の製造方法。
【請求項2】
前記(b)の後であって前記(c)より先に、
(d)前記2本のレーザービームの間に位相差を与えて当該2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第2の光を発生させること、
(e)前記対象物に対して前記第2の光を照射することにより、前記第2の光の前記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを形成すること、
を更に含む、請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項3】
前記変性領域は結晶状態の領域であり前記非変性領域は非結晶状態の領域であること、
を含む、請求項1又は2に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項4】
前記対象物がPtO、ZnS−SiO2、Ge−Sb−Te、Ge−Sb−Te−S、Te−TeO2−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Ge−Te−Sn、Sn−Se−Te、Sb−Se−Te、Sb−Se、Ga−Se−Te−Ge、In−Se、In−Se−Tl−Co、Ge−Sb−Te、In−Se−Te、Ag−In−Sb−Te又はTeO2−Pbであることを含む、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項5】
前記(b)は、前記第1の光と併せて第3の光を前記対象物に照射することを含む、
請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項6】
前記(d)は、前記第2の光と併せて第3の光を前記対象物に照射することを含む、
請求項2に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項7】
前記第3の光は、単波長の光又は複数の波長成分からなる光を含む、
請求項5又は請求項6に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項8】
(a)対象物上に、熱的非線形性を有する被膜を形成すること、
(b)2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、
(c)前記第1の光を前記被膜に照射することにより、前記第1の光の前記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを前記被膜に形成すること、
(d)前記被膜に対してエッチングを行い、前記変性領域又は前記非変性領域のいずれかを選択的に除去すること、
(e)前記変性領域又は前記非変性領域のいずれかが除去された後の前記被膜を介して前記対象物に対するエッチングを行うこと、
を含む、微細構造体の製造方法。
【請求項9】
前記(c)の後であって前記(d)より先に、
(f)前記2本のレーザービームの間に位相差を与えて当該2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第2の光を発生させること、
(g)前記被膜に対して前記第2の光を照射することにより、前記第2の光の前記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを前記被膜に形成すること、
を更に含む、請求項8に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項10】
前記(c)は、前記第1の光と併せて第3の光を前記被膜に照射することを含む、
請求項8に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項11】
前記(g)は、前記第2の光と併せて第3の光を前記対象物に照射することを含む、
請求項9に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項12】
(a)金属膜上に非晶質である無機材料層を形成すること、
(b)前記無機材料層に第1レーザービームと第2レーザービームの交叉により発生した光を照射し、前記無機材料層のうち前記光の干渉縞の周期に対応する第1部分を結晶化温度以上に加熱し、前記第1部分を結晶質に変性させること、
(c)前記金属膜上から前記第1部分を除去し、かつ、前記無機材料層のうち前記結晶質に変性しなかった第2部分を残すこと、
(d)前記金属膜の前記第2部分と重ならない領域を除去し、前記干渉縞の周期とピッチの等しい構造体を形成すること、
を含む、微細構造体の製造方法。
【請求項13】
前記(b)において、前記第1の部分が膜厚方向に完全に結晶化温度以上に加熱されている、請求項12に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項14】
前記金属膜がアルミニウムを含み、
前記構造体がストライプ状のグリッドである、請求項12または13に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項1】
(a)2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、
(b)熱的非線形性を有する対象物に対して前記第1の光を照射することにより、前記第1の光の前記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを前記対象物に形成すること、
(c)前記対象物に対してエッチングを行い、前記変性領域又は前記非変性領域のいずれかを選択的に除去すること、
を含む、微細構造体の製造方法。
【請求項2】
前記(b)の後であって前記(c)より先に、
(d)前記2本のレーザービームの間に位相差を与えて当該2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第2の光を発生させること、
(e)前記対象物に対して前記第2の光を照射することにより、前記第2の光の前記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを形成すること、
を更に含む、請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項3】
前記変性領域は結晶状態の領域であり前記非変性領域は非結晶状態の領域であること、
を含む、請求項1又は2に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項4】
前記対象物がPtO、ZnS−SiO2、Ge−Sb−Te、Ge−Sb−Te−S、Te−TeO2−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Ge−Te−Sn、Sn−Se−Te、Sb−Se−Te、Sb−Se、Ga−Se−Te−Ge、In−Se、In−Se−Tl−Co、Ge−Sb−Te、In−Se−Te、Ag−In−Sb−Te又はTeO2−Pbであることを含む、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項5】
前記(b)は、前記第1の光と併せて第3の光を前記対象物に照射することを含む、
請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項6】
前記(d)は、前記第2の光と併せて第3の光を前記対象物に照射することを含む、
請求項2に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項7】
前記第3の光は、単波長の光又は複数の波長成分からなる光を含む、
請求項5又は請求項6に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項8】
(a)対象物上に、熱的非線形性を有する被膜を形成すること、
(b)2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第1の光を発生させること、
(c)前記第1の光を前記被膜に照射することにより、前記第1の光の前記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを前記被膜に形成すること、
(d)前記被膜に対してエッチングを行い、前記変性領域又は前記非変性領域のいずれかを選択的に除去すること、
(e)前記変性領域又は前記非変性領域のいずれかが除去された後の前記被膜を介して前記対象物に対するエッチングを行うこと、
を含む、微細構造体の製造方法。
【請求項9】
前記(c)の後であって前記(d)より先に、
(f)前記2本のレーザービームの間に位相差を与えて当該2本のレーザービームを交叉させることによって干渉縞を含む第2の光を発生させること、
(g)前記被膜に対して前記第2の光を照射することにより、前記第2の光の前記干渉縞の周期に対応して配置された変性領域と非変性領域とを前記被膜に形成すること、
を更に含む、請求項8に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項10】
前記(c)は、前記第1の光と併せて第3の光を前記被膜に照射することを含む、
請求項8に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項11】
前記(g)は、前記第2の光と併せて第3の光を前記対象物に照射することを含む、
請求項9に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項12】
(a)金属膜上に非晶質である無機材料層を形成すること、
(b)前記無機材料層に第1レーザービームと第2レーザービームの交叉により発生した光を照射し、前記無機材料層のうち前記光の干渉縞の周期に対応する第1部分を結晶化温度以上に加熱し、前記第1部分を結晶質に変性させること、
(c)前記金属膜上から前記第1部分を除去し、かつ、前記無機材料層のうち前記結晶質に変性しなかった第2部分を残すこと、
(d)前記金属膜の前記第2部分と重ならない領域を除去し、前記干渉縞の周期とピッチの等しい構造体を形成すること、
を含む、微細構造体の製造方法。
【請求項13】
前記(b)において、前記第1の部分が膜厚方向に完全に結晶化温度以上に加熱されている、請求項12に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項14】
前記金属膜がアルミニウムを含み、
前記構造体がストライプ状のグリッドである、請求項12または13に記載の微細構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−203553(P2008−203553A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39870(P2007−39870)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]