説明

微細気泡発生装置

【課題】 本発明は、通過する液体にマイクロサイズ又はナノサイズの気泡をさらに効率よく発生させることのできる微細気泡発生装置を提供する。
【解決手段】 この発明は、円筒状の改質空間22を画成する有底のケース21と、該ケース21の開口側を閉塞するように設けられる振動プレート11と、該振動プレートを振動させるために該振動プレート上に設けられる超音波振動子ユニット12とによって構成される微細気泡発生装置1において、液体流入部が前記改質空間22を画成するケース21の円筒状壁面の接線方向に沿って形成され、且つ液体流出部が前記改質空間22の振動プレート側の略中央に開口することにある。また、前記液体流出部は、前記ケース21に形成された液体流出パイプ24Aを貫通する流体出口孔24と、前記振動プレート11の略中央に開口する中央開口部17及び前記液体流出パイプ24Aの改質空間側の流出開口部26と対峙する位置に開口する外周開口部18を有する振動プレート側連通孔15とによって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通過する液体に超音波振動を付与して液体中にマイクロサイズ又はナノサイズの気泡を発生させる微細気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、燃料ラインに、超音波振動子を取り付け、燃料を微粒化し、その下流に磁石若しくは電磁石を取り付け、微粒化された燃料をさらに活性化してイオン化させる燃料改善装置を提供する。
【0003】
特許文献2は、液体燃料油の粒子を超微粒子化することによって完全燃焼ができ、エネルギーの有効利用と共に低公害を達成するために、燃料油フィルタブラケットの上部中央に発信器と配線で連結された超音波振動子を設け、燃料油フィルターアッセンブリ内部を流通する液体燃料油の粒子を超微粒子上に分解する燃料油改質装置を提供する。
【0004】
特許文献3は、燃料容器の底面に、この底面から超音波を発振させる超音波発振手段を配設すると共に、その燃料容器内の燃料の液面高さに応じて超音波発振手段からの超音波の周波数を可変させる超音波周波数可変手段を有する燃料改質装置を提供する。
【0005】
特許文献4は、非処理水を破砕して水分子同士の水素結合によるクラスターが分解された破砕水を形成する水破砕工程と、このようにして形成された破砕水に一部可視光領域を含む紫外線を照射して極性水分子に共鳴振動を励起させ、他のイオン原子・イオン分子に対しての親水性・水和性の高い活性水とする光化学反応工程とからなる水質改質方法を開示し、水破砕手段の前処理として、超音波発生装置を備えた容器に非処理水を通過させることが開示される。また、この引用文献4には、超音波発生装置が非処理水を通過させる水槽に備えられ、水槽を通過する水に20kHz程度の振動を付与することが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−263180号公報
【特許文献2】特開2002−332923号公報
【特許文献3】特開2006−291143号公報
【特許文献4】特開2007−330844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜3に記載されているように、燃料に超音波を印加し、その燃料を改質(微粒子化)する技術はすでに公知であり、特許文献4に記載されているように、通過する水に振動を付加することも公知であるが、従来の方法、特に液体が流入する空間の一方に単に振動発生手段を設けただけでは、液体内に効率よくマイクロサイズ又はナノサイズの気泡を発生させることが難しいという問題点があった。このため、本出願人は特願2008−167632及び特願2008−168567において、上記課題を解決するための新しい燃料改質装置を提案した。
【0008】
本発明は、本出願人による燃料改質装置をさらに改良したもので、通過する液体にマイクロサイズ又はナノサイズの気泡をさらに効率よく発生させることのできる微細気泡発生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、この発明は、円筒状の改質空間を画成する有底のケースと、該ケースの開口側を閉塞するように設けられる振動プレートと、該振動プレートを振動させるために該振動プレート上に設けられる超音波振動子ユニットとによって構成される微細気泡発生装置において、液体流入部が前記改質空間を画成するケースの円筒状壁面の接線方向に沿って形成され、且つ液体流出部が前記改質空間の振動プレート側の略中央に開口することにある。
【0010】
これによって、液体流入部から流入する液体が改質空間を画成するケースの円筒状壁面に沿って改質空間内を回転しながら、液体流出部が開口する改質空間上部に移動する過程で、前記振動プレートの振動によって超音波振動が付与されるために、超音波により発生した気泡が旋回流によって中心部に集約しながらより細かい気泡となって集中させることでき、この十分な気泡が含む液体を外部に取り出すことができるものである。さらに、液体流入部の開口位置を、改質空間の軸方向に移動させることによって気泡を集中させる位置を変化させることも可能となるものである。
【0011】
また、前記液体流出部は、前記ケースに形成された液体流出パイプを貫通する流体出口孔と、前記振動プレートの略中央に開口する中央開口部及び前記液体流出パイプの改質空間側開口部と対峙する位置に開口する外周開口部を有する振動プレート側連通孔とによって構成されることが望ましい。
【0012】
これによって、液体流出部を、ケース側と振動プレート側に分けて形成することができるので、改質空間を画成するケースと改質空間の一方を閉塞する振動プレートとを組み付け性を向上させることができ、製造西行の簡略化を達成できるものである。
【0013】
さらに、前記振動プレートの改質空間側面には、改質空間側に螺旋状に延出する振動面を有する振動部が形成され、前記振動プレート側連通孔は、該振動部に形成されることが望ましい。
【0014】
これによって、前記振動プレート側連通孔を形成するためのパイプ部を振動プレートに形成しても、液体の旋回流を阻害することなく、液体流出部の振動プレート側連通孔に気泡を多量に含む液体を導くことが可能となるものである。
【0015】
さらにまた、前記ケースの振動プレートと反対側の底面の略中央には、円筒状の壁部を設けることが望ましい。
【0016】
このように、改質空間の底部に円筒状の壁部を設けることによって、旋回流の流速に変化を持たせることができるので、液体の種類、処理内容に対応して、気泡の形成状態を調節することが可能となるものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、この発明よれば、液体流入部及び液体流出部の位置を設定し、改質空間に所定の旋回流を形成するようにしただけで、液体内に最適な気泡状態を確保することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明に係る微細気泡発生装置の概略構成図である。
【図2】本願発明に係る微細気泡発生装置の改質部の説明図である。
【図3】本願発明に係る微細気泡発生装置の振動部の平面図である。
【図4】本願発明に係る微細気泡発生装置の振動部の側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明は、超音波振動によって液体内に発生した気泡が旋回流によって中心部に集中してより細かい気泡となり、その気泡を含む液体を効率よく外部に取り出すことができる微細気泡発生装置を提供することにある。
【実施例】
【0020】
図1に示すように、本願発明に係る微細気泡発生装置1は、超音波振動を発生させる超音波振動発生部10と、この超音波振動発生部10によって発生した超音波振動によって通過する液体に気泡を発生させて改質する改質部20とによって構成される。尚、液体としては、燃料、水等である。
【0021】
前記超音波振動発生部10は、振動プレート11と、この振動プレート11上に固定された超音波振動子ユニット12とを具備する。
【0022】
また、前記改質部20は、図2に示されるように、有底円筒状の内部空間を有するケース21を具備する。この有底円筒状の内部空間は、液体が通過する改質空間22となる。このケース21の円筒状壁面には、接線方向に延出する流体出口孔23を画成する液体流入パイプ23Aの流入開口部25が形成され、また前記改質空間22の径方向に延出する液体流出孔24を画成する液体流出パイプ24Aの流出開口部26が形成される。さらに、前記ケース21の有底部29の中央には円筒状に延出する旋回流調整壁部28が設けられる。
【0023】
さらに、図3及び図4に示されるように、前記振動プレート11の改質空間側には、螺旋状に延出する振動面16を有する振動部13が形成され、この振動部13には、中央に円筒状の形成された凹部14と、外周部19とを連通する振動プレート側連通孔15が形成される。この振動プレート側連通孔15は、前記凹部14に開口する中央開口部17と、前記外周部19に形成された外周開口部18とを有し、この外周開口部18は、前記液体流出パイプ24Aの流出開口部26と対峙するように配置される。この振動プレート側連通孔15と前記液体流出孔24とによって液体流出部が構成される。尚、27は、前記振動プレート11を取り付けるためのフランジ部である。
【0024】
以上のように構成されることによって、本願発明に係る微細気泡発生装置1は、図1及び図2に示すように、液体流入パイプ23の流入開口部25から流入する液体は、改質空間22の円筒状壁面に沿って旋回しながら、改質空間22の上部の液体流出部の中央開口部17に向かって集中するように上昇する。この旋回しながら上昇する液体に対して振動子ユニット12によって発生される超音波振動が印加され、液体中に微細気泡が生じる。この微細気泡は、特に旋回流に沿って中央側に寄るため、円筒状の凹部14から液体流出部の中央開口部17に効率的に導入されるものである。
【0025】
また、円筒状壁部28を設け、液体の使用状況、特性等に対応して、前記円筒状壁部28の径及び高さを調節し、液体の旋回流の流速を変化させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、実質的に内燃機関に供給される液体燃料の改質を目的としたものであるが、所定の空間に流入する流体(気体又は液体)に超音波振動を印加してその流体を改質することを目的とするものには、基本的に利用可能である。具体的には、燃料電池に供給される水素又は水素含有気体の改質、薬剤や化学的合成に使用される水の改質、化学反応を行うために供給される気体の微粒子化等に使用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 微細気泡発生装置
10 超音波振動発生部
11 振動プレート
12 超音波振動子ユニット
13 振動部
14 凹部
15 振動プレート側連通孔
16 振動面
17 中央開口部
18 外周開口部
19 外周部
20 改質部
21 ケース
22 改質空間
23 液体流入パイプ
24 液体流出パイプ
25 流入開口部
26 流出開口部
27 フランジ部
28 円筒状壁部
29 有底部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の改質空間を画成する有底のケースと、該ケースの開口側を閉塞するように設けられる振動プレートと、該振動プレートを振動させるために該振動プレート上に設けられる超音波振動子ユニットとによって構成される微細気泡発生装置において、
液体流入部が前記改質空間を画成するケースの円筒状壁面の接線方向に沿って形成され、且つ
液体流出部が前記改質空間の振動プレート側の略中央に開口することを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記液体流出部は、前記ケースに形成された液体流出パイプを貫通する流体出口孔と、前記振動プレートの略中央に開口する中央開口部及び前記液体流出パイプの改質空間側の流出開口部と対峙する位置に開口する外周開口部を有する振動プレート側連通孔とによって構成されることを特徴とする請求項1記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記振動プレートの改質空間側面には、改質空間側に螺旋状に延出する振動面を有する振動部が形成され、前記振動プレート側連通孔は、該振動部に形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記ケースの振動プレートと反対側の底面の略中央には、円筒状の壁部を設けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の微細気泡発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−264390(P2010−264390A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118133(P2009−118133)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(508019517)アート電子株式会社 (3)
【Fターム(参考)】