説明

微細結晶及びそれを含む医薬製剤

80μm以下の平均粒子径を有する


で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶、それを含む医薬製剤等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミド[以下、化合物(I)という]の結晶及びその結晶を含む医薬製剤に関する。
【背景技術】
化合物(I)は頻尿、尿失禁、過活動膀胱等をはじめとする種々の疾病や症状の治療に有用であり、その結晶及び合成法が知られており、またその使用形態の例も知られている(例えば、WO98/46587、WO02/78710、WO02/78711、WO02/78712、特開2002−53580参照)。上記引用文献記載の方法から得られる化合物(I)の結晶は、平均粒子径が100〜数100μmの板状晶であり、水に対する溶解性及び経口吸収性が低い。また、化合物(I)の結晶は製剤化工程においても、溶出性、吸収性、安定性等の特性面において安定した性能を有しておらず、溶液化によって吸収性の改善は認められるものの、依然安定性が低いという問題点がある。
【発明の開示】
本発明の目的は、例えば溶解性、吸収性、安定性等が良好な化合物(I)の結晶、その結晶を含む医薬製剤等を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(9)に関する。
(1)80μm以下の平均粒子径を有する

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶。
(2)(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶の平均粒子径が1〜40μmである前記(1)記載の微細結晶。
(3)結晶化度が15%以上である前記(1)または(2)記載の(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶。
(4)結晶化度が25%以上である前記(1)または(2)記載の(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶。
(5)結晶化度が45%以上である前記(1)または(2)記載の(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶。
(6)結晶化度が75%以上である前記(1)または(2)記載の(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の微細結晶を含むことを特徴とする医薬製剤。
(8)80μm以上の平均粒子径を有する(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドを乾式粉砕する工程を含むことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の微細結晶の製造方法。
(9)粉砕工程にジェット粉砕機を用いることを特徴とする前記(8)記載の微細結晶の製造方法。
本明細書において、「(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミド」(「化合物(I)」)という記載は、非晶性の化合物(I)、結晶性の化合物(I)またはそれらの混合物を意味し、原料として使用される「化合物(I)」においては、その結晶化度、平均粒子径等も限定されない。
本発明の「80μm以下の平均粒子径を有する(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミド(「化合物(I)の微細結晶」)は、平均粒子径が80μm以下の結晶性の化合物(I)であれば特に限定されないが、中でも1〜40μmの平均粒子径を有する微細結晶が好ましい。さらに結晶化度が15%以上である「化合物(I)の微細結晶」が好ましく、中でも結晶化度が25%以上である「化合物(I)の微細結晶」がより好ましく、さらに結晶化度が45%以上である「化合物(I)の微細結晶」がとりわけ好ましく、さらに結晶化度が75%以上である「化合物(I)の微細結晶」が最も好ましい。
本発明の「化合物(I)の微細結晶」の調製法は特に限定されないが、例えばWO98/46587、特開2002−53580等に記載の方法またはそれらに準じた方法により得られる「80μm以上の平均粒子径を有する(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの結晶」(「化合物(I)の結晶」)を粉砕及び/または篩い分けすることにより調製され、粉砕及び/または篩い分けは適宜組み合わせて数回行ってもよい。粉砕は一般的に使用される粉砕機で行うことができるが、特に乾式粉砕を行うことが好ましい。なお、乾式粉砕は、固体を空気中等で粉砕する方式の粉砕を意味する。該粉砕機として、例えば乳鉢、メカノミル、ジェットミル等を用い、例えば粉砕機の回転速度、「化合物(I)の結晶」の供給速度、粉砕の時間等を適宜調整することにより所望の平均粒子径または平均粒子径及び結晶化度を有する「化合物(I)の微細結晶」を得ることができる。中でもジェットミルによる粉砕が好ましく、例えば「化合物(I)の結晶」の供給速度0.1〜1000g/分、粉砕圧力0.01〜1.0MPaで、「化合物(I)の結晶」を粉砕することができる。
本発明の「化合物(I)の微細結晶」を含む医薬製剤は、上記の「化合物(I)の微細結晶」を含む医薬製剤であればいずれでもよく、例えば(a)上記の方法で得られる「化合物(I)の微細結晶」と添加剤とを混合し製剤化したもの、(b)上記の方法で得られる「化合物(I)の結晶」と添加剤とを混合し、得られる混合物を上記「化合物(I)の微細結晶」の調製法と同様にして粉砕及び/または篩い分けした後、製剤化したもの、(c)「化合物(I)」と分散剤から固体分散体を調製した後、該固体分散体と添加剤とを混合し製剤化したもの等が挙げられる。なお本発明の医薬製剤中の「化合物(I)の微細結晶」の含有量は、0.001〜80%であることが好ましく、中でも0.1〜50%であることがより好ましい。
該固体分散体は、「化合物(I)」または「化合物(I)の結晶」とこれを分散することができる分散剤から調製される固体分散体であり、該固体分散体中の化合物(I)における結晶部分が上記「化合物(I)の微細結晶」の平均粒子径または平均粒子径及び結晶化度を有するものであれば特に限定されない。分散剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等の高分子が好ましい。また「化合物(I)」または「化合物(I)の結晶」と分散剤の配合比は、1:0.1〜1:10(重量比)であることが好ましく、中でも1:0.1〜1:4(重量比)であることがより好ましい。また該固体分散体の製造法も特に限定されないが、例えばWO98/46587、特開2002−53580等に記載の方法またはそれらに準じた方法により得られる「化合物(I)」または「化合物(I)の結晶」と分散剤から、例えば混合粉砕法、溶媒法等の一般的に使用される方法で調製することにより得ることができる。
混合粉砕法としては、例えば「化合物(I)の結晶」を分散剤とともに混合機器等を用いて混合したものを、一般的に使用される粉砕機例えば乳鉢、メカノミル、ジェットミル等を用いて粉砕する方法等が挙げられ、例えば粉砕機の回転速度、「化合物(I)の結晶」の供給速度、粉砕の時間等を適宜調整することにより所望の平均粒子径または平均粒子径及び結晶化度を有する「化合物(I)の微細結晶」と分散剤を含む固体分散体を得ることができる。中でもジェットミルによる粉砕が好ましい。
溶媒法としては、例えば「化合物(I)」または「化合物(I)の結晶」を分散剤とともに有機溶媒に溶解または分散し、次いで有機溶媒を常法により減圧下または常圧下で除去する方法等が挙げられる。具体的には、例えば流動層造粒装置、攪拌造粒装置、噴霧造粒装置、噴霧乾燥造粒装置、真空乾燥造粒装置等が用いられ、所望により一般的に使用される粉砕機、例えば乳鉢、メカノミル、ジェットミル等を用いて粉砕する方法を組み合わせてもよい。有機溶媒としては、「化合物(I)」または「化合物(I)の結晶」を溶解するものであれば特に限定されないが、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
添加剤としては、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、可塑剤、界面活性剤、コーティング剤、着色剤、矯味剤、酸味剤等が挙げられ、これらは製剤の種類に応じて適宜用いることができる。
賦形剤としては、例えば白糖、マンニトール、ラクトース等の糖類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン類、結晶セルロース等のセルロース類等が挙げられる。
結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン類、結晶セルロース、クロスポビドン等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば植物油、グリセリン等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、脂肪酸エステル等が挙げられる。
コーティング剤としては、例えば白糖、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
着色剤としては、例えば食用色素、タール色素等が挙げられ、矯味剤としては、例えばサッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア等が挙げられ、酸味剤としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。
「結晶化度が15%以上である(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの結晶」(「結晶化度が15%以上である化合物(I)の結晶」)は、結晶化度が15%以上である結晶性の化合物(I)であれば特に限定されないが、中でも結晶化度が25%以上である結晶性の化合物(I)が好ましく、さらに結晶化度が45%以上である結晶性の化合物(I)がより好ましく、さらに結晶化度が75%以上である結晶性の化合物(I)が最も好ましい。またこれらの製造法も特に限定されないが、例えばWO98/46587、特開2002−53580等に記載の方法またはそれらに準じた方法により得ることができる。
また、「結晶化度が15%以上である化合物(I)の結晶」を含む医薬製剤は、上記の「結晶化度が15%以上である化合物(I)の結晶」を含む医薬製剤であればいずれでもよく、該医薬製剤の製造法も特に限定されないが、例えば上記「化合物(I)の微細結晶」を含む医薬製剤の製造法と同様の方法を挙げることができる。
また、「結晶化度が15%以上である化合物(I)の結晶」と分散剤を含有する固体分散体は、「化合物(I)」または「化合物(I)の結晶」とこれを分散することができる分散剤から調製される固体分散体であり、該固体分散体中の化合物(I)における結晶部分が15%以上の結晶化度を有するものであれば平均粒子径等は特に限定されず、該固体分散体の製造法も特に限定されないが、例えば上記「化合物(I)の微細結晶」と分散剤を含有する固体分散体の製造法と同様の方法を挙げることができる。分散剤としては、例えばHPMC、PVP、HPC等が好ましい。また「化合物(I)」または「化合物(I)の結晶」と分散剤の配合比は、1:0.1〜1:10(重量比)であることが好ましく、中でも1:0.1〜1:4(重量比)であることがより好ましい。
本発明の医薬製剤の製剤形態としては、例えば糖衣錠等の錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、懸濁内用液剤等が挙げられ、これら製剤は製剤学の技術分野においてよく知られている混合工程、粉砕工程、篩い分け工程、造粒加工工程、整粒加工工程、打錠工程、乾燥工程、カプセル充填工程、コーティング工程等の製剤化工程を組み合わせることにより製造できる。
以下、実施例、比較例及び試験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例及び試験例に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
特開2002−53580に記載の方法により得られた未粉砕の化合物(I)の結晶をジェットミル(A−Oジェット/セイシンエンタプライズ)を用い、粉砕圧力0.4MPa、供給速度1g/分で、粉砕した。レーザー光散乱式粒度分布測定装置(LDSA−1300A/東日コンピューターアプリケーションズ)を用いて、粉砕前後の化合物(I)の平均粒子径を測定した。また、粉末X線回折装置(PW3050/PANalytical)を用いて、粉砕前後の化合物(I)の結晶化度を測定した。結果を第1表に示す。

【実施例2】
特開2002−53580に記載の方法により得られた未粉砕の化合物(I)の結晶を氷冷した後、ジェットミルを用い、粉砕圧力0.6MPa、供給速度2kg/時間で、粉砕した。レーザー光散乱式粒度分布測定装置(Mastersizer 2000/マルバーンインストルメンツ)を用いて、粉砕前後の化合物(I)の平均粒子径を測定した。また、粉末X線回折装置(PW3050/PANalytical)を用いて、粉砕前後の化合物(I)の結晶化度を測定した。結果を第2表に示す。

【実施例3】
実施例2で得られたジェット粉砕した化合物(I)0.8gとヒドロキシプロピルメチルセルロース3.2gをビニール袋の中で混合し、化合物(I)とヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物を得た。
【実施例4】
特開2002−53580に記載の方法により得られた未粉砕の化合物(I)を自動乳鉢(ANM1000型/ニットー)を用い、サンプル量を7gとして、1時間、4時間及び24時間それぞれ粉砕した。また、レーザー光散乱式粒度分布測定装置(LDSA−1300A/東日コンピューターアプリケーションズ)を用いて、粉砕前後の化合物(I)の平均粒子径を測定した。結果を第3表に示す。

【実施例5】
特開2002−53580に記載の方法により得られた未粉砕の化合物(I)を自動乳鉢(ANM1000型/ニットー)を用い、サンプル量を4gとして、1時間及び4時間それぞれ粉砕した。また、粉末X線回折装置(PW3050/PANalytical)を用いて、粉砕前後の化合物(I)の結晶化度を測定した。結果を第4表に示す。

【実施例6】
実施例5で得られた1時間乳鉢で粉砕した化合物(I)0.8gとヒドロキシプロピルメチルセルロース3.2gをビニール袋の中で混合し、化合物(I)とヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物を得た。
【実施例7】
実施例5で得られた4時間乳鉢で粉砕した化合物(I)0.8gとヒドロキシプロピルメチルセルロース3.2gをビニール袋の中で混合し、化合物(I)とヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物を得た。
【実施例8】
実施例1で得られたジェット粉砕した化合物(I)を0.5%メチルセルロース水溶液中に分散させ、化合物(I)25mg相当量をカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【実施例9】
実施例4で得られた24時間乳鉢で粉砕した化合物(I)を0.5%メチルセルロース水溶液中に分散させ、化合物(I)25mg相当量をカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【実施例10】
実施例1で得られたジェット粉砕した化合物(I)25mgをカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【実施例11】
実施例1で得られたジェット粉砕した化合物(I)25mg、ラクトース60mg、バレイショデンプン30mg、ポリビニルアルコール2mg、ステアリン酸マグネシウム1mg及び微量のタール色素から成る組成にて、常法により錠剤を得た。
比較例1
特開2002−53580に記載の方法により得られた未粉砕の化合物(I)を0.5%メチルセルロース水溶液中に分散させ、化合物(I)25mg相当量をカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
比較例2
特開2002−53580に記載の方法により得られた未粉砕の化合物(I)25mgをカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
試験例1
実施例8、実施例9及び比較例1で得られた各カプセル剤の溶出試験(パドル法)を実施した。結果を図1に示す。
図1から、ジェット粉砕した化合物(I)を含むカプセル剤(実施例8)及び乳鉢で粉砕した化合物(I)を含むカプセル剤(実施例9)は、未粉砕の化合物(I)を含むカプセル剤(比較例1)と比較して高い溶出率を示すことがわかり、化合物(I)を適切な粒子径に粉砕することにより溶出特性を改善できることがわかった。
試験例2
実施例10及び比較例2で得られた各カプセル剤を、各1カプセル、絶食下のイヌに経口投与した。経時的に採血し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により化合物(I)の血漿中濃度を測定した。結果を図2に示す。
図2から、ジェット粉砕した化合物(I)を含むカプセル剤(実施例10)を投与した場合は、未粉砕の化合物(I)を含むカプセル剤(比較例2)を投与した場合と比較して高い血漿中濃度が得られることがわかり、化合物(I)を適切な粒子径に粉砕することにより経口吸収性を改善できることがわかった。
なお、HPLC測定条件は以下の通りである。
分析機器:LC−10Aシリーズ(島津製作所製)
カラム:Develosil ODS−HG−5
カラム温度:室温
移動相:0.05mol/Lリン酸緩衝液(pH3.0)/アセトニトリル=3/2
流速:1mL/分
検出条件:UV242nm
試験例3
実施例3、実施例6及び実施例7で得られた、化合物(I)とヒドロキシプロピルメチルセルロースの各混合物をそれぞれプラボトルに充填し、60℃で10日間保存した。各保存サンプル中の分解物の含有量を、HPLC法により測定した。結果を第5表に示す。なお、実施例6及び実施例7で得られた混合物中の化合物(I)の平均粒子径は、それぞれ同様の粉砕工程によって粉砕を行った実施例4の結果から推定したものである。
第5表からわかるように、いずれのサンプルも高い安定性を示した。

【図面の簡単な説明】
図1は実施例8、実施例9及び比較例1で得られた各カプセル剤の溶出試験(パドル法)の結果を表す図である。縦軸はカプセル剤からの化合物(I)の溶出率(%)、横軸は時間(分)、エラーバーは標準偏差を表す。
−□−:実施例8で得られたカプセル剤[ジェット粉砕した化合物(I)を含む]の溶出曲線を表す。
−◇−:実施例9で得られたカプセル剤[乳鉢で粉砕した化合物(I)を含む]の溶出曲線を表す。
−△−:比較例1で得られたカプセル剤[未粉砕の化合物(I)を含む]の溶出曲線を表す。
図2は実施例10及び比較例2で得られた各カプセル剤の、イヌに対する経口吸収性の試験結果を表す図である。縦軸は化合物(I)の血漿中濃度(%)、横軸は時間(時間)、エラーバーは標準偏差を表す。
−○−:実施例10で得られたカプセル剤[ジェット粉剤した化合物(I)を含む]を用いた場合の化合物(I)の血漿中濃度を表す。
−●−:比較例2で得られたカプセル剤[未粉砕の化合物(I)を含む]を用いた場合の化合物(I)の血漿中濃度を表す。
【産業上の利用可能性】
本発明により、例えば溶解性、吸収性、安定性等が良好な化合物(I)の微細結晶、その微細結晶を含む医薬製剤等が提供される。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
80μm以下の平均粒子径を有する

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶。
【請求項2】
(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶の平均粒子径が1〜40μmである請求の範囲1記載の微細結晶。
【請求項3】
結晶化度が15%以上である請求の範囲1または2記載の(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶。
【請求項4】
結晶化度が25%以上である請求の範囲1または2記載の(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶。
【請求項5】
結晶化度が45%以上である請求の範囲1または2記載の(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶。
【請求項6】
結晶化度が75%以上である請求の範囲1または2記載の(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドの微細結晶。
【請求項7】
請求の範囲1〜6のいずれかに記載の微細結晶を含むことを特徴とする医薬製剤。
【請求項8】
80μm以上の平均粒子径を有する(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドを乾式粉砕する工程を含むことを特徴とする請求の範囲1〜6のいずれかに記載の微細結晶の製造方法。
【請求項9】
粉砕工程にジェット粉砕機を用いることを特徴とする請求の範囲8記載の微細結晶の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/056561
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516247(P2005−516247)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018773
【国際出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】