説明

微細表面凹凸形状材の製造方法および電界放射型ディスプレイ

【課題】蛍光体として用いられる薄膜半導体の表面に微細な凹凸形状を形成することで光学特性を向上させた電解放射型デイスプレイを提供する。
【解決手段】被加工材である半導体薄膜10の表面にレーザ光30を照射し、該被加工材の表面層を溶融、凝固させることで該被加工材の表面に微細凹凸形状10bを形成することで、半導体の微細加工で使用しているフォトリソグラフィーなどは一切不要であり、煩雑なマスクやレジストの塗布、エッチング作業を一切使用せずに、薄膜半導体などの被加工材の表面に直接微細な凹凸構造を作製することができ、被加工材として光学材料を用いる場合には、表面に例えば幅1.5μm以下というような微細凹凸形状を形成でき、光の閉じ込め効果を弱くし、光の取り出し効率を向上させる効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被加工材の表面に微細凹凸形状を付与する微細表面凹凸形状材の製造方法および該微細表面凹凸形状を有する蛍光体を用いた電解放射型ディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルカラーを含むカラーの電界放射型ディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ(以下「FED」という。))において、陽極に蛍光体が使用されている。このFEDの蛍光体層には、一般に粉末の蛍光体が用いられてきた。
従来の蛍光面の製造方法においては、赤・青・緑発光を示す粉末蛍光体をそれぞれ感光性スラリー法によって所定の位置に配置する。粉末蛍光体には、蛍光体の合成や活性化のための熱処理をすでに行ったものを使用する。そのため、透明基板上に蛍光体層を形成すれば蛍光面は完成し、電子線により蛍光体を励起すると発光が得られる。
【0003】
従来のFEDにおいては、蛍光体が電子線の衝突によって劣化する問題(劣化問題)、蛍光体の分解に伴うガス放出や表面に吸着している分子の離脱によるガス放出があり、ガスは陽極上で正に帯電し、放出されると陰極へ加速して飛んでいき、陰極の構造物を破壊するという問題(アウトガス問題)、表面の電気伝導性の悪さから帯電して発光輝度が落ちるという問題(チャージアップ問題)がある。これらの問題は、従来、粉末の蛍光体層の表面上にアルミニウムからなる保護層を設けることで解決している。
しかし、低電圧型のFEDでは加速された電子が深くまで進入できないため、アルミニウムからなる保護層を使用することができないことに加えて、上記の問題(劣化問題、アウトガス問題、チャージアップ問題など)を克服する必要がある。
以上の問題を解決するために、粉末の蛍光体に代えて、蛍光体を薄膜とした薄膜蛍光体を使用することが検討されている。
【0004】
しかしながら、薄膜蛍光体は成膜条件によって、非常に平坦性の高い薄膜として基板上に形成されることが多く、板状の構造となっている。薄膜蛍光体で生じた発光は、基板面垂直方向に対する光の入射角が臨界角を超えると全反射を起こして蛍光体の面内方向へ反射するため、基板面方向へ出てこない。これに加えて、蛍光体自体の屈折率の高さゆえに、臨界角が小さく、取り出せる光はさらに減少する。このため、発光の大部分が薄膜蛍光体の面内方向へ反射して閉じ込められ基板面方向へうまく光を取り出すことが出来ず、光の取り出し効率が非常に悪い。
【0005】
上記の問題を解決するために、従来技術としてフォトニック結晶の構造を発光体や光の取り出し面に作製することで、光の取り出し効率を向上させる技術がある。こうした技術では、フォトリソグラフィーなどの半導体加工技術を用いて、表面に精度よく周期的な構造を作製する。とりわけ、精度良く構造を作製するためには電子線露光を用いる必要がある。このようにして作製された構造はフォトニック結晶と呼ばれ構造の大きさと、周期の関係によって決まる、任意の波長の光だけを表面から取り出すことや、反射成分を制御して効率よく光を取り出すことが可能となる。
【0006】
フォトニック結晶の構造を作製する技術の一つに、自己組織化を利用して精度良く周期的な構造を作製する方法がある(非特許文献1)。この方法によれば、フォトニック結晶の構造を作製したい物質の表面にSOG(Spin On Glass:エッチング耐性の高い有機系シリカのスピンコート剤)層を形成し、その表面にポリマー(熱を加えると相分離して自己組織的に一定間隔をあけて一定の大きさに凝集するポリマー)を塗布し、加熱して自己組織化を行う。その後、自己組織化した組織を残してポリマーを除去するためにプラズマエッチングを行い、残った組織のパターンを下地のSOG層に転写するために、RIE(RIE:Reactive Ion Etching)を行い、最後に加工したい表面のエッチングのために誘導結合型プラズマ(ICP:Inductive Coupled Plasma)エッチングとアルゴンスパッタリングを行うことで、直径100nmで長さ400nmの柱状構造を150nm間隔で作製している。こうして作製したナノ凹凸構造によって、光の入射角度が臨界角以内では無反射で光の取り出しが可能となり、臨界角以上の今まで取り出せなかった光は回折効果によって取出しが可能となることが報告されている。
【0007】
さらに、同様の構造を作製するための技術として特許文献1では、フォトニック結晶の構造を作製したい物質の表面に、同様の特性を有するポリマーを塗布したあと加熱して自己組織化を行い、自己組織化で生じた微小な凹凸構造か、自己組織化で相分離した一方のポリマーを除去して凹凸構造を作成する。その上にエッチング耐性の高いマスクとなる材料層を形成して、エッチングを行うと、エッチング耐性の高い材料層が薄くて下地にポリマー層が多く残っている部分は先にエッチングされて、フォトニック結晶の構造を作製したい物質がエッチングされる。また、エッチング耐性の高い材料が厚くて下地のポリマー層が薄い部分は、エッチングの際に残存して、フォトニック結晶の構造を作製したい物質をマスクキングするため、アスペクト比の高い構造を作製することができる。
【非特許文献1】”東芝レビューVol.60 No.10”、2005年、p32−35
【特許文献1】特開2003−155365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のようにフォトニック結晶の構造を発光体や光の取り出し面に作製することで光の取り出し効率を向上させる方法では、精度良く周期的な構造を作製する必要があるために、非常にコストがかかり、歩留まりが悪いといわざるを得ない。それに加えて、半導体プロセス用の精密加工技術が必要となるため、大面積にわたって構造を安価に作成することはできない。
【0009】
また、フォトニック結晶の構造を作製しながらも自己組織化を利用して精度良く周期的な構造を作製する方法では、上記の方法ほど精密な構造を作りこまなくとも、十分に光の取り出し効率を向上可能であるものの、各種マスクやレジストの塗布、エッチング作業が必要となり、大面積にわたって構造を安価に作製することは困難であり、実用的とはいえない。
【0010】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、薄膜半導体などの被加工材表面にレーザ光を照射することによって、大面積にわたって直接微細な構造を作製することができる微細表面凹凸形状材の製造方法および当該薄膜半導体をアノードの薄膜蛍光体として使用した電界放射型ディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ)を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の微細表面凹凸形状材の製造方法のうち、請求項1記載の発明は、被加工材の表面にレーザ光を照射し、該被加工材の表面層を溶融、凝固させることで該被加工材の表面に微細凹凸形状を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の微細表面凹凸形状材の製造方法の発明は、請求項1記載の発明において、前記微細凹凸形状が、レーザ光の波長以下のサイズからなることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の微細表面凹凸形状材の製造方法の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記微細凹凸形状は、半球形状、円柱形状またはかまぼこ形状の1種または2種以上の微細凸形状が並んだものであることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の微細表面凹凸形状材の製造方法の発明は、請求項3記載の発明において、前記かまぼこ形状は、幅よりも長さが大きくなっていることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の微細表面凹凸形状材の製造方法の発明は、請求項3または4に記載の発明において、前記微細凸形状は、幅が1.5μm以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の微細表面凹凸形状材の製造方法の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記レーザ光が紫外線領域の波長を有するものであることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の微細表面凹凸形状材の製造方法の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記被加工材が、レーザ光の照射によって結晶化されることを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の微細表面凹凸形状材の製造方法の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、被加工材が薄膜半導体であることを特徴とする。
【0019】
請求項9記載の微細表面凹凸形状材の製造方法の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記被加工材が蛍光体または発光体であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項10記載の電界放射型ディスプレイの発明は、請求項9により製造された蛍光体を、微細表面凹凸形状を電解放射側にしてアノード側に配置したことを特徴とする。
【0021】
すなわち、本発明によれば、被加工材の表面層がレーザ光の照射により溶融し、その下方の固相との接触において液相が表面張力によって液滴として散在し、また、これが適度に集合し、微細な凸形状となって凝固することで表面に微細な凹凸形状を形成する。また、レーザ光の照射により液相が固相全体を覆う場合、固相表面に微細な凹凸形状が形成されることで、液相の表面の凝固速度が影響を受けて表面に微細な凹凸形状が形成される。
【0022】
なお、本発明では、微細形状を作製する被加工材の物性(各波長の光に対する吸光度、表面のぬれ性、蒸気圧など)やレーザ照射条件(レーザ波長、エネルギー密度、レーザパルス幅、発振周波数、レーザショット数)を調整することで微細形状の形や大きさ、分布密度を制御することができる。以下、各種条件と作製される形状の関係について説明する。
【0023】
まず、本発明では被加工材の表面のみを溶融して融液を生じさせることが重要であるため、レーザ照射による加熱領域を表面に集中させる必要がある。これに大きく影響する条件として、照射するレーザ光の波長と、その波長に対する被加工材の吸光度がある。吸光度が大きい場合は、被加工材の表面で強くレーザ光を吸収してレーザ光の進入長が短くなるため、被加工材表面のみを加熱・溶融させることが容易であり形状を制御しやすい。このような条件では、半球状組織・円柱状組織・かまぼこ形状組織、粗面形状組織などの微細凹凸形状の制御が可能である。また、吸光度が若干小さい場合は、被加工材表面の方がレーザ光の吸収量が多いものの、レーザ光の進入長が長くなるため、被加工材の表面のみでなく被加工材深くを加熱することとなる。そうすると、被加工材表面のみを溶融させることが困難となり、結果として溶融深さが深く、融液の量が多くなって、半球状組織・円柱形状組織の制御が難しく、かまぼこ形状組織・粗面形状組織が現れやすくなる。さらに吸光度が小さい場合では、被加工材全体を加熱する傾向が強くなるか、被加工材でのレーザ光吸収が小さくなるため、前者の場合では被加工材全体が溶融したり、後者の場合では被加工材の温度が上昇せずに溶融が起きないこととなり、微細凹凸形状が作製できない。
【0024】
さらに、被加工材に求められる物性に関して説明する。本発明では、表面に生じた融液が表面のぬれ性の悪さによって表面に広がらないことが重要であるため、生じた融液に対するぬれ性の悪さが望ましい条件である。これは、ぬれ性の悪さによって、表面に生じている融液同士が一定の大きさを保ちつつ、互いにくっつかないためである。ぬれ性の悪さ以外に蒸気圧が高いことも望ましい条件である。
【0025】
なお、比較的蒸気圧の高いものとして、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、砒素などを含む化合物が挙げられる。具体的には、2元系化合物として、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、CaO、CaS、CaSe、CaTe、SrO、SrS、SrSe、SrTe、BaO、BaS、BaSe、BaTe、AlN、AlP、AlS、GaN、GaP、GaAs、InN、InP、InAs、Y、Y、La、Laなどが挙げられる。また、3元系化合物としては、MgAl、MgAl、MgAlSe、MgGa、MgGa、MgGaSe、MgIn、MgIn、MgInSe、CaAl、CaAl、CaAlSe、CaGa、CaGa、CaGaSe、CaIn、CaIn、CaInSe、SrAl、SrAl、SrAlSe、SrGa、SrGa、SrGaSe、SrIn、SrIn、SrInSe、BaAl、BaAl、BaAlSe、BaGa、BaGa、BaGaSe、BaIn、BaIn、BaInSe、YS、LaSなどが挙げられる。
これらの材料は、それぞれの材料を一定の分量で混合した組成としてもよい。例えば、GaAl1−xAs、Sr(GaIn1−xなどとしてもよい(但し、0<x<1)。また、これらの材料に各種の添加元素を加えることもできる。例えば遷移金属(Mn、Cu、Al、Ag、Au)や希土類金属(Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb)が使用可能である。これらの添加元素は、材料中で発光中心として機能し、各種の方法で励起したときに蛍光体としての発光を生ずる。また、光の取り出し効率を改善するために微細凹凸形状を作製することが特に有効な蛍光体として、SrGa:Eu、SrGa:Ce、BaAl:Euなどを挙げることができる。
但し、本発明の被加工材が上記例に限定されるものではない。
【0026】
次に、レーザの照射条件と微細凹凸形状との関係を説明する。レーザ照射条件では、上記のような微細凹凸形状が成長するような温度条件を作る必要がある。その上で、制御すべき条件にレーザ照射時のエネルギー密度(単位:mJ/cm)がある。大まかには、被加工材表面で融液を生じるようなエネルギー密度より大きくなるにつれて、作製される微細凹凸形状の種類が順次、半球状組織→円柱形状組織→かまぼこ形状組織→粗面形状組織が現れる傾向となる。そして、それぞれの構造においても、エネルギー密度が高くなると生じる融液の量が増えるため、構造の大きさが変化する。すなわち、エネルギー密度が高くなるに連れて、半球状組織における半球の直径が大きく、円柱形状組織における円柱の直径が大きく、かまぼこ形状組織におけるかまぼこの高さが高くなる傾向がある。また、同様にエネルギー密度が高くなると、表面蒸発による蒸気の発生量が増加して上昇気流が強くなるため、構造の間隔や高さが変化する。すなわち、エネルギー密度が高くなるに連れて、半球状組織における半球の間隔がやや広く・円柱形状組織における間隔がやや広く・円柱の高さが高くなる・かまぼこ形状組織のかまぼこの間に隙間が開く傾向がある。かまぼこ形状組織は、融液の量が少ないうちはかまぼこの間に隙間を生じるが、融液の量が増えると隙間は徐々に閉じていき、かまぼこの高さは低くなり、やがて隣のかまぼこと融合して平坦化する。
【0027】
また、制御すべき条件にレーザ照射時のパワー密度がある。パワー密度(単位:W/cm)は照射されるエネルギー密度(単位:mJ/cm)をレーザパルスの時間幅の半値幅(単位:s)で割ったもので、レーザパルスが薄膜に照射された瞬間の薄膜表面温度の上昇速さや到達温度と関係する。従って、パワー密度がある程度高くないと薄膜表面で融液を生じさせるほどの温度上昇が見込めないため、発生する融液の量に違いが出てくる。これはエネルギー密度が同一でも、レーザパルス時間の半値幅が変われば、出来る微細構造が異なることを示している。すなわち、同一エネルギー密度でパワー密度が大きい場合には、微細構造の種類が順次「半球状組織・円柱形状組織・かまぼこ形状組織・粗面形状組織」の方向へシフトする。また同一エネルギー密度でパワー密度が小さい場合には、微細構造の種類は先の場合と逆にシフトする。
【0028】
次に、照射するレーザパルスの発振周波数に関して説明する。微細構造の成長には、融液の存在と、加熱による表面蒸発からなる気流が重要である。そのため、発振周波数が低い場合は表面の加熱効果が小さくなり、温度が上昇しないため適していない。また、同様に微細構造の成長は、加熱によって表面の最表面のみ溶融し、その下の部分は溶融せずに固相状態を保つ必要がある。従って、加熱はパルス的に行うことで、表面の加熱と冷却を行うことができる。発振周波数が高すぎる場合は表面温度が上昇したままとなり、融液を生じるときは表面が全面溶融して融液に覆われることとなる。また、微細構造の製造に利用できる発振周波数の間では、周波数が低い場合は、「半球状組織・円柱形状組織」の制御に向いており、周波数が高い場合は「かまぼこ形状組織・粗面形状組織」の制御に向いている。
【0029】
また、レーザ光の波長も微細凹凸形状の形成に影響する。すなわち、レーザ光の波長が長い程、被加工材の深部にまで加熱影響が現れる。したがって、本発明では、被加工材の表面層に限って加熱することが望ましいため、波長の短い、すなわち、紫外線領域の波長を有するレーザ光を用いるのが望ましい。
【0030】
上記のエネルギー密度、パワー密度などは、上記したようにレーザ光が照射される被加工材の特性や、レーザ光の波長と被加工材に対する光の進入長によっても条件が異なってくる。例えば、SiやGeなどの半導体や、化合物半導体などを被加工材の対象にした場合、照射する波長のレーザ光が物質に吸収されて、10%まで減衰するような厚みをL(nm)とし、レーザパルスの半値幅をT(ns)とすると、レーザ光としては、例えばエネルギー密度L×0.001〜1mJ/cm、パワー密度L÷T×1〜1000kW/cm、照射パルス周波数20〜1000Hzとして、該レーザ光を被加工材表面に照射させることができる。
この際には、照射パルス周波数を20〜600Hz程度として、概ね、L×0.001〜0.4mJ/cmのエネルギー密度、L÷T×1〜400kW/cmのパワー密度によって、被加工材の表面に半球状の微細凹凸形状組織を形成でき、照射パルス周波数を20〜600Hz程度として、L×0.01〜0.6mJ/cmのエネルギー密度、L÷T×10〜600kW/cmのパワー密度によって、被加工材の表面に円柱状微細凹凸組織を形成でき、照射パルス周波数を50〜1000Hz程度として、L×0.1〜0.8mJ/cmのエネルギー密度、L÷T×100〜800kW/cmのパワー密度によって、被加工材の表面にかまぼこ形状微細凹凸組織を形成でき、照射パルス周波数を50〜1000Hz程度として、L×0.2〜1mJ/cmのエネルギー密度、L÷T×200〜1000kW/cmのパワー密度によって、被加工材の表面に粗面状微細凹凸組織を形成できる。
【0031】
なお、それぞれの形状の遷移域では、エネルギー密度などの違いによって形状が徐々に変化する形態となるため、それぞれのエネルギー密度などの範囲は一部で重複する。上記エネルギー密度の範囲内においては、該密度を調整することで、各微細凹凸形状の幅や間隔を調整することができる。
また、その際に照射パルス周波数を変化させることによって、被加工材に与えられるエネルギー総量が変わるので、微細粗面形状を制御することができる。すなわち、照射パルス周波数を低くすると、上記したエネルギー密度が低くなるとの同様の傾向を示し、照射パルス周波数を高くすると、上記したエネルギー密度が高くなるとの同様の傾向を示す。
【0032】
また、本発明は、被加工材の表面に微細な凹凸形状を形成できるものであればよく、該被加工材としては、種々の用途のものを対象にすることができる。好適には薄膜半導体を対象にすることができ、さらに好適には、該微細凹凸形状が光学特性に好影響を与える蛍光体や発光体を対象にすることができ、該蛍光体を用いた電界放射型ディスプレイを提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
すなわち、本発明によれば、被加工材の表面にレーザ光を照射し、該被加工材の表面層を溶融、凝固させることで該被加工材の表面に微細凹凸形状を形成するので、レーザ光の照射によって、直接被加工材の表面に、例えばレーザ光の波長以下のサイズとなるような微細凹凸形状を形成した薄膜半導体などの材料を製造することができる。
この結果、半導体の微細加工で使用しているフォトリソグラフィーなどは一切不要であり、煩雑なマスクやレジストの塗布、エッチング作業を一切使用せずに、薄膜半導体などの被加工材の表面に直接微細な凹凸構造を作製することができるという、工業的に大変優れた効果を有する。
【0034】
また、被加工材として光学材料を用いる場合には、表面に例えば幅1.5μm以下というような微細凹凸形状を形成することができるので、光の閉じ込め効果を弱くし、光の取り出し効率を向上させるという効果を有する。また、取り出したい光の波長にあわせて、微細凹凸形状の幅や構造の周期などを選んで作製することで、任意波長の光取り出し効率を高くできるという効果がある。
【0035】
また、レーザ光として紫外線領域の波長を持つレーザ光を使用すれば、薄膜半導体の表面付近を効率よく加熱することができるので、一定の厚みで表面付近を溶融状態とすることで、効率よく微細凹凸形状の構造を作製することが出来るという効果がある。また、大出力の紫外線エキシマレーザを用いると、大きなビーム形状に整形しても高出力を得ることが容易であるため、大面積を高速に処理可能であるという利点を持っている。
【0036】
また、本発明では、表面の微細凹凸形状の作製と同時に、半導体などの被加工材をレーザ光の照射によって結晶化(再結晶化も含む)することができる。溶融した被加工材は冷却されて結晶化し、下地で溶融しなかった被加工材は溶融直前まで加熱されたことで結晶性が向上する。したがって、薄膜半導体などの被加工材の特性を向上させることができ、例えば蛍光体や発光体では、上記作用によってより強い発光を得ることができるという複合効果を有しており、これらを一つのプロセスで同時に処理可能であるという利点がある。
【0037】
さらに、上記被加工材として薄膜半導体を対象にし、これを電界放射型ディスプレイのアノードの薄膜蛍光体として使用することで、低速電子線で薄膜蛍光体を励起した際に、薄膜蛍光体内部で発生した発光を、効率よく基板面から取り出すことが可能となる。そのため、本発明の薄膜半導体を採用することで、低電圧駆動でも発光輝度が高く、低消費電力なFEDとして製造することが出来るという産業上大変優れた効果がある。
また、所望により凹凸形状組織を有する薄膜蛍光体の表面に、金属を主成分とする帯電防止膜を設けることで、微細凹凸形状を作製した面から取り出される光を反射させて、ディスプレイの蛍光面側となる反対側へ取り出す光をさらに増加させるようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(実施形態1−1)
以下に、本発明の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1(a)は、微細凹凸形状の構造を作製する前の被加工材としての薄膜半導体10を示すものである。このとき、薄膜半導体10は公知の手法により基板20上に成膜されており、薄膜半導体10は結晶性を有していてもいなくても、以下の処理で同様に微細凹凸形状の構造を作成することができる。
【0039】
上記薄膜半導体10には、例えばエネルギー密度L×0.001〜0.4mJ/cm、パワー密度L÷T×1〜400kW/cm、照射パルス周波数を20〜600Hzでレーザ光30を照射する。レーザの照射前に、薄膜半導体10をヒータやランプ、別の加熱手段で予備加熱を行っても良い。レーザ照射中の状況を図1(b)に示す。レーザの照射により、薄膜半導体10の表面でレーザ光30の吸収による熱が発生し、表面付近に融解した半導体10aが生じる。使用するレーザ光として、紫外線のレーザを使用することで、薄膜半導体10のさらに表面付近でエネルギー吸収が起こるため、より早く融解状態の半導体10aが生じる利点がある。このとき、固相である融解していない薄膜半導体10の上にある融解した半導体10aは、固体上のぬれ性の悪さによって薄膜半導体10の上に散在し、自身の表面張力によって凝集して融液の集まりを作る。
【0040】
さらに、レーザ照射中の状況の変化を図1(c)に示す。薄膜半導体1上で散在していた融液の集まりである融解した半導体10aは、表面から蒸発した成分の気流で揺れ動き、互いに合体して次第に大きさを増すとともに、それぞれが自己組織的に均等な大きさと距離を保って成長する。そうして、固体上に自己組織的に半球形状を形成する。
【0041】
レーザ照射後の状態変化を図1(d)に示す。薄膜半導体10の表面上は、融解直前の温度まで加熱されたために結晶性が向上した部分と、融液が自己組織的に半球形状の微細凹凸形状を形成して、その後に冷却されて再結晶化した部分からなっている。そのため表面付近では、微細凹凸形状10bの形成と結晶性の向上や再結晶化などのアニール効果が同時に行われる。
【0042】
結晶性が向上した部分や再結晶化が行われた部分では、半導体としての特性が向上し、蛍光体などでは発光特性が向上する。そのため、より強い半導体や蛍光体からの発光を得ることができる。また、レーザを照射する時間やエネルギー密度、融解させる薄膜半導体の量や薄膜半導体の物性によって、任意の大きさの半球形状組織を、任意の間隔を保って作成することができる。半球形状の構造を作製することで、薄膜半導体の内部で発生した発光を内部に閉じ込める効果が弱くなり、薄膜半導体内部からの光の取り出し効率を向上することができる。また、レーザを照射する時間や上記エネルギー密度、照射パルス周波数などを調整することで、半球形状の構造の大きさと間隔を制御して、薄膜半導体の表面をフォトニック結晶の構造とすることで、薄膜半導体の内部から、より強い発光を取り出すことができる。
これらの一連のプロセスによって、フォトリソグラフィーやマスク・レジスト・エッチングを一切使用することなく、大面積処理が可能なラインビーム形状に整形したレーザでスキャンを行うことによって、半球形状組織を有する薄膜半導体を大面積にわたって作成することができる。
【0043】
図2は、上記製造方法によって得られた、表面に半球形状の微細凹凸形状10bを有する薄膜半導体10を示すものである。該薄膜半導体10を電界放射型ディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ)の薄膜蛍光体100として用いる形態について説明する。
薄膜半導体の材料としては、通常のSiやGeなどの半導体材料やバンドギャップの大きないわゆるワイドバンドギャップ化合物半導体などを使用することができ、2元化合物や3元化合物に発光中心元素を添加して作製した薄膜蛍光体を使用することもできる。このとき、基板としては薄膜半導体を成膜する際に使用する各種基板や、ガラス基板、透明電極付きガラス基板など、任意のものを使用することが出来る。
【0044】
図3は、電界放射型ディスプレイの薄膜蛍光体100を備える陽極パネルを示すものであり、陽極パネルは、透明基板21及び透明電極22を有し、前記薄膜半導体10からなる薄膜蛍光体100を有する。該薄膜蛍光体100は、図3に示すようにブラックマトリクス23によって区画した構造としても良い。また、この図では、薄膜蛍光体100の上側に帯電防止膜24が設けられているが、電子線の加速電圧が数kV以下と低い場合には、該帯電防止膜24を省略することができる。薄膜蛍光体100は、図示を省略した陰極の所定のものからの電子線を図3示で陽極パネルの上側より照射されることにより、薄膜蛍光体100が適宜に電子線励起されて発光するので、これを透明電極22及び透明基板21を透して視認することができる。
【0045】
(実施形態1−2)
以下、第1−2の実施の形態に係る薄膜半導体の製造方法について説明する。
図4(a)は、半球形状の構造を作製する前の薄膜半導体11の構造である。このとき、薄膜半導体11は公知の手法により基板20上に成膜されており、図示するように薄膜半導体11の内部には薄膜の組織を有している。薄膜内部の組織には、図示するように密な部分と疎な部分が出来ており、それぞれの部分では密度や熱伝導率が若干異なる。このような組織の薄膜は、成膜条件を適当に選ぶことで、公知の成膜方法によって製造することができる。
【0046】
上記薄膜半導体11に強度分布が均等なレーザ光30を照射する。レーザの照射前に、薄膜半導体をヒータやランプ、別の加熱手段で予備加熱を行っても良い。レーザ照射中の状況を図4(b)に示す。レーザ光30の照射により、薄膜半導体11の表面でレーザ光30の吸収による熱が発生し、表面付近に融解した半導体11aが生じる。薄膜半導体11の中に存在する半導体の組織の密な部分では図示した方向へ熱が伝わりやすく、半導体組織の疎な部分では熱が比較的こもりやすいため、先に融解を生じる。固相である融解していない薄膜半導体11の上にある融解した半導体11aは、固体上のぬれ性の悪さによって薄膜半導体11の上に散在し、若干温度が低い半導体組織の密な部分の上に集まりやすく、自身の表面張力によって凝集して融液の集まりを作る。
【0047】
さらに、レーザ照射中の状況を図4(c)に示す。薄膜半導体11上で散在していた融液の集まりである融解した半導体11aは、表面から蒸発した成分の気流で揺れ動き、半導体組織の密な部分の上に集まっている融液と合体して次第に大きさを増すとともに、それぞれが自己組織的に均等な大きさと距離を保って成長する。そうして、固体上に自己組織的に半球形状を形成する。
【0048】
レーザ照射後の状態を図4(d)に示す。薄膜半導体11の表面上は、融解直前の温度まで加熱されたために結晶性が向上した部分と、融液が自己組織的に半球形状の微細凹凸形状11bを形成して、その後に冷却されて再結晶化した部分からなっている。そのため表面付近では、微細凹凸形状の形成と結晶性の向上や再結晶化などのアニール効果が同時に行われる。
結晶性が向上した部分や再結晶化が行われた部分では、半導体としての特性が向上し、蛍光体などでは発光特性が向上する。そのため、より強い半導体や蛍光体からの発光を得ることができる。
【0049】
(実施形態2−1)
上記実施形態1−1〜2では、被加工材である薄膜半導体の表面に半球状の微細凹凸形状を形成する場合について説明をした。以下では、微細凹凸形状として円柱状の微細凹凸形状を形成する方法について図5、6に基づいて説明する。
【0050】
図5(a)は、微細凹凸形状の構造を作製する前の被加工材としての薄膜半導体12を示すものである。このとき、薄膜半導体1は公知の手法により基板2上に成膜されており、薄膜半導体1は結晶性を有していてもいなくても、以下の処理で同様に微細凹凸形状の構造を作成することができる。
【0051】
すなわち、上記薄膜半導体1に、例えばエネルギー密度L×0.01〜0.6mJ/cm、パワー密度L÷T×10〜600kW/cm2、照射パルス周波数を20〜600Hzでレーザ光30を照射する。レーザの照射前に、薄膜半導体12をヒータやランプ、別の加熱手段で予備加熱を行っても良い。レーザ照射中の状況を図5(b)に示す。レーザ光30の照射により、薄膜半導体12の表面でレーザ光30の吸収による熱が発生し、表面付近に融解した半導体12aが生じる。使用するレーザ光として、紫外線のレーザを使用することで、薄膜半導体12のさらに表面付近でエネルギー吸収が起こるため、より早く融解状態の半導体12が生じる利点がある。このとき、固相である融解していない薄膜半導体12の上にある融解した半導体12aは、固体上のぬれ性の悪さによって薄膜半導体12の上に散在し、自身の表面張力によって凝集して融液の集まりを作る。
さらに、融解した半導体12aは、表面から蒸発した成分の気流で揺れ動き、互いに合体して次第に大きさを増すとともに、それぞれが自己組織的に均等な大きさと距離を保って成長する。
【0052】
さらに、レーザ照射中の状況を図5(c)に示す。自己組織的に成長した融解した半導体12aは、表面から融解した半導体12aの供給を受けるとともに、図示するように表面から蒸発した成分が作る激しい上昇気流に吹き上げられて上方へ向かって容積を増やし、上昇気流の吹き上げによる上方成長と上方に伸びた融液部分が下方につぶれようとする力の釣り合いが取れる範囲で上方へ成長する。そうして、固体上に自己組織的に円柱形状を形成する。
【0053】
レーザ照射後の状態を図5(d)に示す。薄膜半導体12の表面上は、融解直前の温度まで加熱されたために結晶性が向上した部分と、融液が自己組織的に円柱形状の微細凹凸形状12bを形成して、その後に冷却されて再結晶化した部分からなっている。そのため表面付近では、微細凹凸形状の形成と結晶性の向上や再結晶化などのアニール効果が同時に行われる。
結晶性が向上した部分や再結晶化が行われた部分では、半導体としての特性が向上し、蛍光体などでは発光特性が向上する。そのため、より強い半導体や蛍光体からの発光を得ることができる。また、レーザを照射する時間やエネルギー密度、融解させる薄膜半導体の量や薄膜半導体の物性によって、任意の大きさの円柱形状組織を、任意の間隔を保って作成することができる。円柱形状の構造を作製することで、薄膜半導体の内部で発生した発光を内部に閉じ込める効果が弱くなり、薄膜半導体内部からの光の取り出し効率を向上することが出来た。また、円柱形状の構造の大きさと間隔を制御して、薄膜半導体の表面をフォトニック結晶の構造とすることで、薄膜半導体の内部から、より強い発光を取り出すことができる。
【0054】
図6は、上記製造方法によって得られた、表面に半球形状の微細凹凸形状12bを有する薄膜半導体12を示すものである。該薄膜半導体12を電界放射型ディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ)の薄膜蛍光体として用いることができ、薄膜半導体の材料としては、上記説明と同様である。
【0055】
図7は、電界放射型ディスプレイの薄膜蛍光体を備える陽極パネルを示すものであり、前記薄膜半導体12からなる薄膜蛍光体120を有する。薄膜蛍光体120は、図示を省略した陰極の所定のものからの電子線を図7示で陽極パネルの上側より照射されることにより、薄膜蛍光体120が適宜に電子線励起されて発光し、良好な光の取り出し効率によって透明電極22及び透明基板21を透して視認することができる。なお、上記実施形態と同様の構造については同一の符号を付して、説明を省略または簡略化する。
【0056】
(実施形態2−2)
また、円柱形状の微細凹凸形状は、上記実施形態と同様に、薄膜内部の組織に、密な部分と疎な部分を有し、それぞれの部分では密度や熱伝導率が若干異なる薄膜半導体を対象に形成することができる。レーザ照射後の薄膜半導体の表面には、上記密な部分と疎な部分の分布に影響を受けて円柱状の微細凹凸形状が得られ、また、内層は、融解直前の温度まで加熱されたために結晶性が向上した部分と、融液が自己組織的に半球形状の構造を形成して、その後に冷却されて再結晶化した部分からなっている。そのため表面付近では、微細凹凸形状の形成と結晶性の向上や再結晶化などのアニール効果が同時に行われる。結晶性が向上した部分や再結晶化が行われた部分では、半導体としての特性が向上し、蛍光体などでは発光特性が向上する。
【0057】
(実施形態3−1)
上記実施形態2−1〜2では、被加工材である薄膜半導体の表面に円柱状の微細凹凸形状を形成する場合について説明をした。以下では、微細凹凸形状としてかまぼこ形状(縦断面半球状)の微細凹凸形状を形成する方法について図8、9に基づいて説明する。
【0058】
図8(a)は、微細凹凸形状の構造を作製する前の被加工材としての薄膜半導体13を示すものである。このとき、薄膜半導体13は公知の手法により基板20上に成膜されており、薄膜半導体13は結晶性を有していてもいなくても、以下の処理で同様に微細凹凸形状の構造を作成することができる。
【0059】
すなわち、上記薄膜半導体1に、例えばエネルギー密度L×0.1〜0.8mJ/cm、パワー密度L÷T×100〜800kW/cm、照射パルス周波数を50〜1000Hzで、空間的に強度分布を有するレーザ光31を照射する。レーザの照射前に、薄膜半導体13をヒータやランプ、別の加熱手段で予備加熱を行っても良い。レーザ照射中の状況を図8(b)に示す。空間的に強度分布を有するレーザ光31には、図示左側から右側に向かってレーザの強度が弱くなっている分布を持たせたものを使用する。このレーザ光31の照射により、薄膜半導体13の表面でレーザ光31の吸収による熱が発生し、表面付近に融解した半導体13aが生じる。使用するレーザ光として、紫外線のレーザを使用することで、薄膜半導体13のさらに表面付近でエネルギー吸収が起こるため、より早く融解状態の半導体13aが生じる利点がある。このとき、固相である融解していない薄膜半導体13の上にある融解した半導体13aは、固体上のぬれ性の悪さによって薄膜半導体13の上に散在し、自身の表面張力によって凝集して融液の集まりを作る。さらに、融解した半導体13aは、表面から蒸発した成分の気流で揺れ動き、互いに合体して次第に大きさを増すとともに、それぞれが自己組織的に均等な大きさと距離を保って成長する。
【0060】
レーザ照射中の状況を図8(c)に示す。自己組織的に直線的に成長した融解した半導体13aは、表面から融解した半導体13の供給を受けるとともに、図示するように表面から蒸発した成分が作る激しい上昇気流に吹き上げられて上方へ向かって容積を増やし、上昇気流の吹き上げによる上方成長と、下方に伸びた融液部分が下方に潰れようとする力の釣り合いがとれる範囲で上方へ成長する。
【0061】
さらにレーザ照射中の状況を図8(d)に示す。融解した半導体13aの上方へ成長した組織は、自己組織的に均等に並んでいるため、倒れて合体した方向へ順次上方に成長した組織が倒れることで、直線的に融解した半導体13aの組織が形成される。同時に、空間的に強度分布のあるレーザ光31によって、薄膜半導体13の表面では、継続して熱が発生しているため、融解した半導体13aは、上記の直線的に融解した半導体の組織へ吸収されて徐々に容量を増していくが、直線的に並んだ組織同士の間からは、蒸発成分による上昇気流が吹き上げているため、直線的に融解した組織はその形状を保って存在する。
【0062】
直線的に融解した組織は、図8(e)に示すように、レーザ光の照射が終わると、上昇気流が弱くなるために次第に下の方向に向かってつぶれていくが、薄膜半導体表面の濡れ性の悪さや融液の表面張力によってその形状を維持したまま冷えていき、隣の組織と融合することなく固化していく。そうして、固体上に自己組織的に断面半球状で長尺なかまぼこ形状を形成する。ただし、直線的に融解した半導体の組織の容量が大きくなりすぎ、組織の間で吹き上がっている上昇気流による形状の維持が不可能となった場所では、隣同士の組織と融合し、直線的に融解した半導体の組織の形状を保つことが出来ず、薄膜半導体13の表面は融解した半導体で多い尽くされて平坦化することとなる。
【0063】
レーザ照射後の状態を図8(f)に示す。薄膜半導体10の表面上は、融解直前の温度まで加熱されたために結晶性が向上した部分と、融液が自己組織的にかまぼこ形状の微細凹凸形状13bを形成して、その後に冷却されて再結晶化した部分からなっている。そのため表面付近では、微細凹凸形状の形成と結晶性の向上や再結晶化などのアニール効果が同時に行われる。
結晶性が向上した部分や再結晶化が行われた部分では、半導体としての特性が向上し、蛍光体などでは発光特性が向上する。また、レーザを照射する時間やエネルギー密度、融解させる薄膜半導体の量や薄膜半導体の物性によって、任意の大きさのかまぼこ形状組織を、任意の間隔を保って作成することができる。かまぼこ形状の構造を作製することで、薄膜半導体の内部で発生した発光を内部に閉じ込める効果が弱くなり、薄膜半導体内部からの光の取り出し効率を向上することができる。また、かまぼこ形状の構造の大きさと間隔を制御して、薄膜半導体の表面をフォトニック結晶の構造とすることで、薄膜半導体の内部から、より強い発光を取り出すことができる。
【0064】
図9は、上記製造方法によって得られた、表面にかまぼこ形状の微細凹凸形状13bを有する薄膜半導体13を示すものである。該薄膜半導体13を電界放射型ディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ)の薄膜蛍光体として用いることができ、薄膜半導体の材料としては、上記説明と同様である。
図10は、電界放射型ディスプレイの薄膜蛍光体を備える陽極パネルを示すものであり、前記薄膜半導体13からなる薄膜蛍光体130を有する。薄膜蛍光体130は、図示を省略した陰極の所定のものからの電子線を図10示で陽極パネルの上側より照射されることにより、薄膜蛍光体130が適宜に電子線励起されて発光し、良好な光の取り出し効率によって透明電極22及び透明基板21を透して視認することができる。なお、上記実施形態と同様の構造については同一の符号を付して、説明を省略または簡略化している。
【0065】
(実施形態3−2)
また、かまぼこ形状の微細凹凸形状は、上記実施形態と同様に、薄膜内部の組織に、密な部分と疎な部分を有し、それぞれの部分では密度や熱伝導率が若干異なる薄膜半導体14を対象に形成することができる。該薄膜半導体14を図11(a)に示す。
【0066】
上記薄膜半導体14に、強度分布が均等なレーザ光30を照射すると、図11(b)に示すように、薄膜半導体14の中に存在する半導体の組織の密な部分では熱が内層へと熱が伝わりやすく、半導体組織の疎な部分では熱が比較的こもりやすいため、先に融解を生じる。このとき、固相である融解していない薄膜半導体14の上にある融解した半導体14aは、固体上のぬれ性の悪さによって薄膜半導体14の上に散在し、若干温度が低い半導体組織の密な部分の上に集まりやすく、自身の表面張力によって凝集して融液の集まりを作る。さらに、融解した半導体14aは、表面から蒸発した成分の気流で揺れ動き、互いに合体して次第に大きさを増すとともに、それぞれが自己組織的に均等な大きさと距離を保って成長する。薄膜半導体14内部にある組織が直線的な構造を有している場合、その上に集まる融液も直線的に自己組織的に成長する。
【0067】
自己組織的に直線的に成長した、融解した半導体14aは、図11(c)に示すように、表面から融解した半導体の供給を受けるとともに、図示するように表面から蒸発した成分が作る激しい上昇気流に吹き上げられて上方に向かって容積を増やしていくが、直線的に並んだ組織同士の間からは、蒸発成分による上昇気流が吹き上げているため、直線的に融解した組織はその形状を保って存在する。
【0068】
直線的に融解した組織は、レーザ光の照射が終わると、図11(d)に示すように、上昇気流が弱くなるために次第に下の方向に向かってつぶれていくが、薄膜半導体表面の濡れ性の悪さや融液の表面張力によってその形状を維持したまま冷えていき、隣の組織と融合することなく固化していく。そうして、固体上に自己組織的に断面半球状のかまぼこ形状の微細凹凸形状14bを形成する。
【0069】
(実施形態4−1)
次に、被加工材である薄膜半導体の表面に粗面形状の微細凹凸形状を形成する場合について説明を図12、13に基づいて説明する。
図12(a)は、微細凹凸形状の構造を作製する前の被加工材としての薄膜半導体15を示すものである。このとき、薄膜半導体15は公知の手法により基板20上に成膜されており、薄膜半導体15は結晶性を有していてもいなくても、以下の処理で同様に微細凹凸形状の構造を作成することができる。
【0070】
すなわち、上記薄膜半導体15に、例えばエネルギー密度L×0.2〜1mJ/cm、パワー密度L÷T×200〜1000kW/cm、照射パルス周波数50〜1000Hzで、レーザ光30を照射する。レーザの照射前に、薄膜半導体15をヒータやランプ、別の加熱手段で予備加熱を行っても良い。レーザ照射中の状況を図12(b)に示す。レーザ光30の照射により、薄膜半導体15の表面でレーザ光30の吸収による熱が発生し、表面付近に融解した半導体15aが生じる。使用するレーザ光として、紫外線のレーザを使用することで、薄膜半導体15のさらに表面付近でエネルギー吸収が起こるため、より早く融解状態の半導体15aが生じる利点がある。このとき、固相である融解していない薄膜半導体15の上にある融解した半導体15aは、固体上のぬれ性の悪さによって薄膜半導体15の上に散在し、自身の表面張力によって凝集して融液の集まりを作る。さらに、融解した半導体15aは、表面から蒸発した成分の気流で揺れ動き、互いに合体して次第に大きさを増すとともに、それぞれが自己組織的に均等な大きさと距離を保って成長する。
【0071】
さらにレーザ照射中の状況を図12(c)に示す。自己組織的に直線的に成長した融解した半導体15aの融液の下では、レーザ光の影響が小さくなるため、図示するように、融解した半導体15aの影響で溶け残った部分が形成されるとともに、表面から融解した半導体15aの供給を受けて融液の量を増していく。融液の量が増すにつれて、遂には融液の集まり同士が融合し、融解した半導体15aによって融解していない薄膜半導体15の表面を覆い尽くす。そうして融解していない薄膜半導体15の表面上には自己組織的に粗面形状の微細凹凸形状が形成される。
【0072】
レーザ照射後の状態を図12(d)に示す。薄膜半導体10の表面上は、融解直前の温度まで加熱されたために結晶性が向上した部分と、融液が自己組織的に複雑な粗面形状の微細凹凸形状を形成して、その後に冷却されて凝固(または再結晶化)した部分からなっている。そのため表面付近では、粗面形状の微細凹凸形状15bの形成と結晶性の向上や再結晶化などのアニール効果が同時に行われる。
結晶性が向上した部分や再結晶化が行われた部分では、半導体としての特性が向上し、蛍光体などでは発光特性が向上する。そのため、より強い半導体や蛍光体からの発光を得ることが出来る。また、レーザを照射する時間やエネルギー密度、融解させる薄膜半導体の量や薄膜半導体の物性によって、大きさの異なる粗面形状組織を作成することができる。
【0073】
図13は、上記製造方法によって得られた、表面に粗面形状の微細凹凸形状15bを有する薄膜半導体15を示すものである。該薄膜半導体15も電界放射型ディスプレイ(フィールドエミッションディスプレイ)の薄膜蛍光体として用いることができ、薄膜半導体の材料としては、上記説明と同様である。
図14は、電界放射型ディスプレイの薄膜蛍光体を備える陽極パネルを示すものであり、前記薄膜半導体15からなる薄膜蛍光体150を有する。薄膜蛍光体150は、図示を省略した陰極の所定のものからの電子線を図14示で陽極パネルの上側より照射されることにより、薄膜蛍光体150が適宜に電子線励起されて発光し、良好な光の取り出し効率によって透明電極22及び透明基板21を透して視認することができる。なお、上記実施形態と同様の構造については同一の符号を付して、説明を省略または簡略化している。
【0074】
(実施形態4−2)
また、かまぼこ形状の微細凹凸形状は、上記実施形態と同様に、薄膜内部の組織に、密な部分と疎な部分を有し、それぞれの部分では密度や熱伝導率が若干異なる薄膜半導体を対象に形成することができる。
レーザ照射中の薄膜半導体の表面では、薄膜半導体の中に存在する半導体の組織の密な部分では、熱が伝わりやすく、半導体組織の疎な部分では、熱が比較的こもりやすいため、先に融解が生じる。このとき固相である融解していない薄膜半導体の上にある融解した半導体は、個体上の濡れ性の悪さによって薄膜半導体の上に散在し、若干温度が低い半導体組織の密な部分に集まりやすく、自身の表面張力によって凝集して融液の集まりを作る。さらに融解した半導体は、表面から蒸発した成分の気流で揺れ動き、互いに合体して次第に大きさを増すとともに、それぞれが自己組織的に均等な大きさと距離を保って成長する。
【0075】
自己組織的に直線的に成長した融解した半導体の融液の下ではレーザ光の影響が小さくなるために、融解した半導体の影響で溶け残った部分が形成されるとともに、表面から融解した半導体の供給を受けて融液の量を増していく。融液の量が増すにつれて、ついには融液の集まり同士が融合し、融解した半導体によって融解していない薄膜半導体の表面を覆いつくす。そうして、融解していない薄膜半導体の表面上には自己組織的に粗面形状の構造が形成される。
【0076】
レーザ照射を止めた直後の状況は、レーザ照射による熱の供給を絶ったため、融解した半導体や薄膜半導体の温度が次第に低下する。特に、自己組織的に粗面形状の構造が形成された薄膜半導体の凸部分は、半導体の組織が密であるために、熱の移動が早いために温度の低下が速く進行する。そのため、薄膜半導体の表面内では、下地の熱伝導特性差と凹凸構造の影響で局所的な温度勾配を生じているため、温度の低い凸部分から凝固が始まる。このとき、半導体の材料によっては結晶化も同時に進行する。融解した半導体の凝固は、結晶組織の成長方向すなわち薄膜半導体の凸部分や表面から融解した半導体に方向へ向かって、下地の凹凸形状構造と温度勾配の影響を色濃く受けて自己組織的に進んでいく。そして、融解した半導体はすべて凝固し、表面に複雑な凹凸形状の構造を形作る。
【実施例1】
【0077】
以下、上記第1〜第4の実施形態に係る薄膜半導体として薄膜蛍光体SrGa:Euを製造した。なお、薄膜蛍光体(SrGa:Eu)は公知の手法により基板上に成膜した。成膜された時点で薄膜蛍光体は結晶性を有していてもいなくても、目的の蛍光体である化合物半導体であっても原料である物質(SrSとGaS又はGa、添加物のEuを含む)の混合物でも、後の処理で同様に化合物半導体からなる半球形状の構造を作成することができた。
【0078】
上記薄膜蛍光体に、上記実施形態で説明したようにKrFエキシマレーザ光を照射する。レーザの照射前に、薄膜蛍光体をヒータやランプ、別の加熱手段で予備加熱を行っても良い。レーザの照射により、薄膜蛍光体(SrGa:Eu)の表面でKrFレーザ光の吸収による熱が発生し、表面付近に融解した蛍光体(SrGa:Eu)が生じる。使用するレーザ光としては、任意の波長のレーザ光を使用することができるが、波長351nmのXeFエキシマレーザや波長309nmのXeClエキシマレーザなどを使用することができる。ただし、使用するレーザ光の波長によって、レーザ光が物質内に侵入する深さが異なるために、レーザ照射時に融解する融液の量がそれぞれ異なる。したがって、レーザの種類を選択することで、任意の大きさの微細凹凸形状を、任意の間隔を保って作成することができる。
【0079】
以下、第1〜第4の実施の形態で説明した場合と同様の機構によって微細凹凸形状を作製した。
【0080】
(実施例1)
レーザ光の波長を248nm、エネルギー密度を10mJ/cm、パワー密度0.5MW/cm(パルス半値幅20ns)、パルス周波数100Hz、パルス照射数30000ショットの条件によって均等な強度分布を有するレーザ光を上記薄膜蛍光体に照射した。この際には、蛍光体の基板を500℃に加熱し、アルゴンと10%の硫化水素雰囲気中で上記レーザ照射を行った。
その結果、本実施例によって200nm程度の大きさの半球形状組織を、間隔を保って作成することができた。半球形状の構造を作製することで、薄膜蛍光体の内部で発生した発光を内部に閉じ込める効果が弱くなり、薄膜蛍光体内部からの光の取り出し効率を向上することができた。また、半球形状の構造の大きさと間隔を制御して、薄膜蛍光体の表面をフォトニック結晶の構造とすることで、薄膜蛍光体の内部から、より強い発光を取り出すことができた。
【0081】
また、図15は、上記で得られた蛍光体の表面を示す、走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた図面代用の写真である。該写真に見られるように、蛍光体の表面には、半球形状の微細凹凸形状が形成されていることが分かる。
【0082】
(実施例2)
次に、レーザ光の波長を248nm、エネルギー密度を15mJ/cm、パワー密度0.75MW/cm(パルス半値幅20ns)、パルス周波数100Hz、パルス照射数30000ショットの条件によって均等な強度分布を有するレーザ光を上記薄膜蛍光体に照射した。この際には、蛍光体の基板を500℃に加熱し、アルゴンと10%の硫化水素雰囲気中で上記レーザ照射を行った。
その結果、本実施例によって直径200nm程度、高さ500nm程度の円柱形状組織を、間隔を保って作成することができた。円柱形状の微細凹凸形状を作製することで、薄膜蛍光体内部からの光の取り出し効率を向上することができた。また、半球形状の構造の大きさと間隔を制御して、薄膜蛍光体の表面をフォトニック結晶の構造とすることで、薄膜蛍光体の内部から、より強い発光を取り出すことができた。
【0083】
また、図16は、上記で得られた蛍光体の表面を示す、走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた図面代用の写真である。該写真に見られるように、蛍光体の表面には、円柱形状の微細凹凸形状が形成されていることが分かる。
【0084】
(実施例3)
次に、レーザ光の波長を248nm、エネルギー密度を20mJ/cm、パワー密度1MW/cm(パルス半値幅20ns)、パルス周波数100Hz、パルス照射数30000ショットの条件とし、傾斜した強度変化をもつレーザ光を上記薄膜蛍光体に照射した。この際には、蛍光体の基板を500℃に加熱し、アルゴンと10%の硫化水素雰囲気中で上記レーザ照射を行った。
本実施例によって幅100nm程度の直線的なかまぼこ形状を間隔を保って作成することができた。かまぼこ形状の微細凹凸形状を作製することで、薄膜蛍光体内部からの光の取り出し効率を向上することができた。また、かまぼこ形状の構造の大きさと間隔を制御して、薄膜蛍光体の表面をフォトニック結晶の構造とすることで、薄膜蛍光体の内部から、より強い発光を取り出すことができた。
【0085】
図17は、上記で得られた蛍光体の表面を示す、走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた図面代用の写真である。該写真に見られるように、蛍光体の表面には、かまぼこ形状の微細凹凸形状が形成されていることが分かる。
【0086】
(実施例4)
次に、レーザ光の波長を248nm、エネルギー密度を40mJ/cm、パワー密度2MW/cm(パルス半値幅20ns)、照射パルス周波数100Hz、パルス照射数30000ショットの条件とし、傾斜した強度変化をもつレーザ光を上記薄膜蛍光体に照射した。
この際には、蛍光体の基板を500℃に加熱し、アルゴンと10%の硫化水素雰囲気中で上記レーザ照射を行った。
本実施例によって粗面形状の微細凹凸形状を作成することができた。粗面形状の微細凹凸形状を作製することで、薄膜蛍光体内部からの光の取り出し効率を向上することができた。また、粗面形状の大きさと間隔を制御して、薄膜蛍光体の表面をフォトニック結晶の構造とすることで、薄膜蛍光体の内部から、より強い発光を取り出すことができた。
【0087】
上記各実施例においては、薄膜蛍光体として、原料である物質(SrSとGaS又はGa、添加物のEuを含む)の集合体を用いた場合においても、原料を融解させた融液が凝固した部分で、薄膜蛍光体(SrGa:Eu)からなる微細凹凸形状を作成することができた。また、融解してない原料からなる薄膜半導体の部分では、融解直前の温度まで加熱されるために、原料である物質(SrSとGaS又はGa、添加物のEuを含む)から化合物半導体である蛍光体(SrGa:Eu)を合成することができた。したがって、表面付近では、微細凹凸形状の形成と化合物半導体の合成と結晶性の向上や再結晶化などのアニール効果を同時におこなうことができた。
【0088】
このように、薄膜半導体が3種類以上の元素からなる化合物半導体である場合においても、同様に半球形状組織を有する薄膜半導体を形成することができた。また、別の薄膜半導体として、AB:L(A=Mg,Ca,Sr,Ba,B=Al,Ga,In C=O,S,Se,Te L:希土類金属元素または遷移金属元素など)である一連の化合物半導体においても同様の効果があった。
【0089】
以上、上記実施形態および実施例に基づいて本発明の説明を行ったが、本発明は、上記実施形態および実施例の内容に限定をされるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態の製造過程を示すフロー図である。
【図2】同じく、上記製造過程で得られ、表面に微細凹凸形状を有する薄膜半導体を示す図である。
【図3】同じく、上記で得られた薄膜半導体を蛍光体として用いた電界効果型ディスプレイの一部構造を示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態の製造過程を示すフロー図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態の製造過程を示すフロー図である。
【図6】同じく、上記製造過程で得られ、表面に微細凹凸形状を有する薄膜半導体を示す図である。
【図7】同じく、上記で得られた薄膜半導体を蛍光体として用いた電界効果型ディスプレイの一部構造を示す図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態の製造過程を示すフロー図である。
【図9】同じく、上記製造過程で得られ、表面に微細凹凸形状を有する薄膜半導体を示す図である。
【図10】同じく、上記で得られた薄膜半導体を蛍光体として用いた電界効果型ディスプレイの一部構造を示す図である。
【図11】本発明のさらに他の実施形態の製造過程を示すフロー図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態の製造過程を示すフロー図である。
【図13】同じく、上記製造過程で得られ、表面に微細凹凸形状を有する薄膜半導体を示す図である。
【図14】同じく、上記で得られた薄膜半導体を蛍光体として用いた電界効果型ディスプレイの一部構造を示す図である。
【図15】本発明の実施例により得られた薄膜半導体の表面形状を示す図面代用写真である。
【図16】同じく、他の実施例により得られた薄膜半導体の表面形状を示す図面代用写真である。
【図17】同じく、他の実施例により得られた薄膜半導体の表面形状を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
【0091】
10、11、12、13、14、15 薄膜半導体
10a、11a、12a、13a、14a、15a 融解した半導体
10b、11b、12b、13b、14b、15b 微細凹凸形状
20 基板
30 レーザ光
31 レーザ光
100、110、120、130、140、150 薄膜蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材の表面にレーザ光を照射し、該被加工材の表面層を溶融、凝固させることで該被加工材の表面に微細凹凸形状を形成することを特徴とする微細表面凹凸形状材の製造方法。
【請求項2】
前記微細凹凸形状が、レーザ光の波長以下のサイズからなることを特徴とする請求項1記載の微細表面凹凸形状材の製造方法。
【請求項3】
前記微細凹凸形状は、半球形状、円柱形状またはかまぼこ形状の1種または2種以上の微細凸形状が並んだものであることを特徴とする請求項1または2に記載の微細表面凹凸形状材の製造方法。
【請求項4】
前記かまぼこ形状は、幅よりも長さが大きくなっていることを特徴とする請求項3記載の微細表面凹凸形状材の製造方法。
【請求項5】
前記微細凸形状は、幅が1.5μm以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の微細表面凹凸形状の製造方法。
【請求項6】
前記レーザ光が紫外線領域の波長を有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微細表面凹凸形状材の製造方法。
【請求項7】
前記被加工材が、レーザ光の照射によって結晶化されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微細表面凹凸形状材の製造方法。
【請求項8】
被加工材が薄膜半導体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の微細表面凹凸形状材の製造方法。
【請求項9】
前記被加工材が蛍光体または発光体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の微細表面凹凸形状材の製造方法。
【請求項10】
請求項9により製造された蛍光体を、微細表面凹凸形状を電解放射側にしてアノード側に配置したことを特徴とする電界放射型ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−229701(P2008−229701A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76258(P2007−76258)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(504128415)
【Fターム(参考)】