説明

微細貫通孔成形装置、微細貫通孔成形品の製造方法、および微細貫通孔成形品

【課題】合成樹脂のシートに多数の微細貫通孔を形成することが可能な微細貫通孔成形装置、微細貫通孔成形品の製造方法、およびこのような方法を用いて作成された微細貫通孔成形品を提供する。
【解決手段】微細貫通孔成形装置10は、受台11と、受台11上に保持され、耐熱性を有するとともに合成樹脂製の基材シート20を支持するバックシート12とを備えている。バックシート12上方に、下方部に多数の突状部31を有する超音波成形型30が配置されている。超音波成形型30は、上下方向に移動可能となり、かつ上下方向に超音波振動して基材シート20を振動加熱する。これにより基材シート20を溶融して基材シート20に多数の微細貫通孔41が形成された微細貫通孔成形品40が作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂からなる基材シートに多数の微細貫通孔を形成するための微細貫通孔成形装置、微細貫通孔成形装置を用いて多数の微細貫通孔を有する微細貫通孔成形品を製造する微細貫通孔成形品の製造方法、およびこのような微細貫通孔成形品の製造方法によって作成された微細貫通孔成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属シートに対して多数の微細な貫通孔を形成することが行われている。この場合、まず金属シートにフォトリソグラフィ法によって所定のパターンをパターニングし、その後、これに化学エッチングまたはドライエッチングを施すことにより、多数の貫通孔を形成するのが一般的である。またレーザービーム、電子ビーム、中性子ビームで貫通孔をあける方法もある。
【0003】
しかしながら、このような方法を用いた場合、加工上の制約を受けることにより、微細な貫通孔の形状を機能用途に合わせて自在に設定することは困難である。また、対象となるシートはガラス、半導体、金属等に限られる。さらに、貫通孔を形成するための工程数が多いため、多数の製造装置を用いる必要がある。
【特許文献1】特開平5−28912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、合成樹脂製のシートに多数の微細な(例えば直径100μm以下の)貫通孔を形成しようとする場合、ナノインプリント技術(金型に形成された微細な凹凸を樹脂材料上に転写する技術)を用いることも考えられる。しかしながら、ナノインプリント技術を用いた場合、樹脂材料表面に微細な凹凸を形成することはできるが、樹脂材料を貫通する貫通孔を形成することはできない。
【0005】
また合成樹脂製のシートに多数の微細な貫通孔を形成する場合、射出成形方法を用いることも考えられる。しかしながら、この場合、金型内で溶融樹脂がうまく流動せず、微細な貫通孔を形成することはできない。さらに、圧縮成形方法を用いたとしても、同様に微細な貫通孔を形成することはできない。このように、合成樹脂製のシートに多数の微細な貫通孔を形成することは容易でない。
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、合成樹脂のシートに多数の微細な貫通孔を容易に形成することが可能な微細貫通孔成形装置、微細貫通孔成形品の製造方法、およびこのような方法を用いて作成された微細貫通孔成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、受台と、受台上に保持され、耐熱性を有するとともに合成樹脂製の基材シートを支持するバックシートと、バックシート上方に配置され、下方部に多数の突状部を有する超音波成形型とを備え、超音波成形型は、上下方向に移動可能となり、かつ上下方向に超音波振動して基材シートを振動加熱し、基材シートを溶融して基材シートに多数の微細貫通孔を形成することを特徴とする微細貫通孔成形装置である。
【0008】
本発明は、超音波成形型は、成形時の前段において大きな振幅をもち、成形時の後段において小さな振幅をもって振動することを特徴とする微細貫通孔成形装置である。
【0009】
本発明は、超音波成形型に、超音波成形型を加熱する加熱装置が接続されていることを特徴とする微細貫通孔成形装置である。
【0010】
本発明は、超音波成形型の各突状部は、山形形状を有することを特徴とする微細貫通孔成形装置である。
【0011】
本発明は、超音波成形型の各突状部は、平面円形状の頂部を有することを特徴とする微細貫通孔成形装置である。
【0012】
本発明は、超音波成形型の各突状部は、平面四角形状の頂部を有することを特徴とする微細貫通孔成形装置である。
【0013】
本発明は、超音波成形型の各突状部は、平面六角形状の頂部を有することを特徴とする微細貫通孔成形装置である。
【0014】
本発明は、受台上に耐熱性を有するバックシートを保持する工程と、バックシート上に合成樹脂製の基材シートを支持する工程と、バックシート上方に予め配置され、下方部に多数の突状部を有する超音波成形型を上下方向に超音波振動して基材シートを振動加熱し、基材シートを溶融して基材シートに多数の微細貫通孔を形成する工程とを備えたことを特徴とする微細貫通孔成形品の製造方法である。
【0015】
本発明は、基材シートに多数の微細貫通孔を形成する工程において、成形時の前段において大きな振幅で超音波成形型を上下方向に超音波振動し、成形時の後段において小さな振幅で超音波成形型を上下方向に超音波振動することを特徴とする微細貫通孔成形品の製造方法である。
【0016】
本発明は、多数の微細貫通孔を有する合成樹脂製の基材シートからなり、微細貫通孔成形品の製造方法によって作成されたことを特徴とする微細貫通孔成形品である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超音波成形型は、上下方向に移動可能となり、かつ上下方向に超音波振動して基材シートを振動加熱し、基材シートを溶融して基材シートに多数の微細貫通孔を形成するので、合成樹脂からなる基材シートに対して多数の微細な貫通孔を容易かつ高精度に形成することができる。
【0018】
また本発明によれば、多数の微細な貫通孔を有する微細貫通孔成形品を再現性良く得ることができる。また超音波成形型の形状を自在に設計することができるので、微細貫通孔成形品の貫通孔を任意の形状で任意の位置に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図10は本発明の一実施の形態を示す図である。
【0020】
(微細貫通孔成形装置)
まず図1により微細貫通孔成形品を成形する微細貫通孔成形装置の全体構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、微細貫通孔成形装置10は、固定された受台11と、受台11上に保持され、耐熱性を有するとともに合成樹脂からなる基材シート20を支持するバックシート12とを備えている。
【0022】
このうちバックシート12は、耐熱性を有する(溶融温度が250℃以上である)とともに断熱性に優れた材料からなることが好ましく、かつ弾性変形により振動を吸収する振動吸収性及び貫入圧に抗して接触圧を発生するスプリングバック性を有することが好ましい。またバックシート12は、基材シート20に対して剥離性に優れているものであることが好ましい。このようなバックシート12としては、例えばポリイミド、ポリテトラフルオロテチレン(PTFE)のシート、フッ素コーティングされた層(バックシート剥離層)12aを有する耐熱プラスチックのシート等、またはこれらを積層して組合せたもの等を用いることができる。
【0023】
一方、基材シート20は、超音波により溶融する性質を有する熱溶融性プラスチックからなっているが、ある程度の剛性および耐熱性を有することが好ましい。この場合、基材シート20の溶融温度は、バックシート12の溶融温度より50℃以上低いことが好ましい。仮に基材シート20の溶融温度とバックシート12の溶融温度とが近い場合、基材シート20の成形時に、バックシート12が熱変形してしまうからである。このような基材シート20の材料としては、例えばポリカーボネート(PC)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、結晶性ポリエチレンテレフタレート、延伸性ポリエチレンテレフタレート、メタクリル酸エステル重合体(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ABS等を用いることができる。その他、PE、PP、PVC等の熱可塑性プラスチックを適用することもできる。なお基材シート20の厚みは任意であるが、後述する超音波成形型30の振動幅および超音波成形型30の上下方向の位置精度から考えて、10μm乃至10mm程度とすることが好ましい。
【0024】
また図1に示すように、バックシート12内を貫通する吸引部13が設けられている。この吸引部13を介して真空吸引することにより、基材シート20をバックシート12上に固定保持できるようになっている。
【0025】
さらにバックシート12の上方には、超音波ホーン型からなる超音波成形型30が配置されている。超音波成形型30は、ベース部33と、ベース部33に取り付けられ、下方部に多数の突状部31が形成されたホーンヘッド32とを有している。さらに超音波成形型30に加熱装置14が接続されており、加熱装置14により超音波成形型30の多数の突状部31を補助的に加熱できるようになっている。超音波成形型30が超音波振動することによる加熱に加え、このような加熱装置14を補助的に用いることにより、超音波成形型30の突状部31を効率よく加熱することができる。
【0026】
また、超音波成形型30に成形型制御装置15が接続されている。超音波成形型30は、この成形型制御装置15により制御され、上下方向に昇降移動するとともに、上下方向に超音波振動する。この成形型制御装置15による超音波成形型30の昇降位置精度および超音波振動の振幅精度は、いずれも1μmオーダーであることが好ましい。
【0027】
超音波成形型30は、成形型制御装置15により制御され、上下方向に超音波振動しながら下降し、基材シート20に当接して基材シート20を振動加熱する。この際、超音波成形型30は、多数の突状部31によって基材シート20を溶融し、基材シート20に多数の微細貫通孔41を形成するようになっている(詳細は後述する)。
【0028】
(超音波成形型)
次に図2乃至図4により、上述した超音波成形型30の構成について更に説明する。
【0029】
図2に示すように、超音波成形型30は、上方から下方に向けて先細となる形状を有するベース部33と、ねじ部32bによりこのベース部33下端に螺着されたホーンヘッド32とを有している。このうちホーンヘッド32下端には、円筒形の先端凸部32aが形成されている。さらにこの先端凸部32aから下方に向けて多数の突状部31が突設されている。なおホーンヘッド32は、例えばチタン、アルミニウム等の金属からなっている。また、突状部31をこれらの金属上に設けたNiメッキ層、Crメッキ層により構成することもできる。
【0030】
次に図3および図4により、超音波成形型30の突状部31の構成について更に説明する。図3および図4に示すように、ホーンヘッド32の先端凸部32a上に、互いに同一形状を有する多数の突状部31が形成されている。各突状部31は、それぞれ山形形状を有している。すなわち各突状部31は、平面円形状の頂部31aと、頂部31aから周囲に延びる裾部31bとを有している。このうち裾部31bは、頂部31a側からホーンヘッド32の先端凸部32a側に向けて徐々に直径が大きくなる円形の水平断面を有している。なお各突状部31は、抜きテーパーを有する任意の形状であれば良いが、とりわけ各突状部31先端を鋭角的に形成することが好ましい。各突状部31先端を鋭角にすることにより、成形の際、基材シート20に最初に接触する部分の面積を小さくすることができる。このことにより、振動エネルギーを基材シート20に伝えやすくし、基材シート20の溶融を開始させやすくすることができる。
【0031】
図4において、各突状部31の頂部31aの直径d1は、微細貫通孔成形品40の形状によって任意に定めることができるが、例えば1μm乃至1mm程度とすることが好ましい。隣接する頂部31a同士間の距離L1は、同様に微細貫通孔成形品40の形状によって任意に定めることができるが、例えば20μm乃至5mm程度とすることが好ましい。各突状部31の高さh1も同様に任意に定めることができるが、例えば10μm乃至5mm程度とすることが好ましい。
【0032】
(超音波成形型の作成方法)
次に図5および図6により、このような超音波成形型30を作成する方法、とりわけ超音波成形型30の複数の突状部31を形成する方法について説明する。
【0033】
まず、例えばチタン等からなる未加工のホーンヘッド32を準備する。次に、この未加工のホーンヘッド32を超精密切削加工機36に装着する。ここで超精密切削加工機36は、図5および図6に示すように、先端にダイヤモンド刃先38が設けられた切削工具37を有している。このような超精密切削加工機36としては、1nm程度の制御精度を有し、かつ加工後の金型の表面粗さRaが数nmとすることができるものが好ましい。具体的には、超精密切削加工機36として、例えばファナック株式会社製の超精密ナノ加工機(ROBONANO)等を挙げることができる。
【0034】
次に、超精密切削加工機36の切削工具37は、軸A1を中心に時計回りに回転(自転)しながらホーンヘッド32の先端凸部32aに当接する。続いて切削工具37は、ホーンヘッド32の先端凸部32aのうち、各突状部31の頂部31aとなる部分を中心に反時計回りに回転(公転)しながら、ホーンヘッド32の先端凸部32aを切削加工する。この結果、ホーンヘッド32の先端凸部32aに、頂部31aと裾部31bとを有する山形形状の突状部31が形成される。その後、このような作業を突状部31の個数分繰り返すことにより、ホーンヘッド32の先端凸部32a上に多数の突状部31が形成される。
【0035】
(微細貫通孔成形品)
次に図7および図8により、図1に示す微細貫通孔成形装置10により成形された微細貫通孔成形品40の構成について説明する。
【0036】
図7および図8に示す微細貫通孔成形品40は、微細貫通孔成形装置10を用いて基材シート20を成形することにより作成されたものである。このような微細貫通孔成形品40は、例えばフィルター部材、通気性部材、ネブライザーで使用される微粒液滴生成用のメッシュ等、様々な機能を発揮する部材として用いられる。このような微細貫通孔成形品40を構成する材料としては、上述したような各種の熱溶融性樹脂、例えばポリカーボネート(PC)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、結晶性ポリエチレンテレフタレート、延伸性ポリエチレンテレフタレート、メタクリル酸エステル重合体(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ABS等が挙げられる。その他、PE、PP、PVC等の熱可塑性プラスチックを適用することもできる。
【0037】
図7および図8に示すように、微細貫通孔成形品40は、成形品本体部42と、成形品本体部42の全体にわたって形成された複数の微細貫通孔41を有している。各微細貫通孔41は、それぞれ超音波成形型30の各突状部31によって賦形されたものであり、したがって、各突状部31の形状に対応する形状を有している。各微細貫通孔41は、成形品本体部42の一面42aに設けられた円形開口41aと、円形開口41aから成形品本体部42の他面42b側に向けて延びる斜面部41bとを有している。
【0038】
図8において、各微細貫通孔41の円形開口41aの直径d2は、例えば1μm乃至1mm程度とすることが好ましい。また隣接する円形開口41a同士間の距離L2は、例えば20μm乃至5mm程度とすることが好ましい。さらに微細貫通孔成形品40の厚さt2は、例えば10μm乃至5mm程度とすることが好ましい。
【0039】
(微細貫通孔成形品の製造方法)
次に、図9(a)−(f)および図10を用いて、微細貫通孔成形装置10により微細貫通孔成形品40を作成する方法について説明する。
【0040】
初めに、作成しようとする微細貫通孔成形品40の3次元形状データに基づき、超精密切削加工機36を用いてホーンヘッド32を切削加工し、超音波成形型30を作成する(図5および図6参照)。
【0041】
続いて、超音波成形型30を微細貫通孔成形装置10に装着するとともに、加熱装置14により超音波成形型30を通常の室温(20℃)から樹脂のガラス転移点温度乃至軟化温度程度に加熱する。
【0042】
次いで、受台11上にバックシート12を保持し、このバックシート12上に基材シート20を載置する。また、吸引部13により真空吸引することにより、基材シート20をバックシート12上で動かないように固定支持する(図9(a))。
【0043】
次に、成形型制御装置15により、バックシート12上方に予め配置された超音波成形型30を上下方向に超音波振動させ、さらにこのように超音波振動させた状態で超音波成形型30を基材シート20に向けて下降させる。なお、この場合、超音波成形型30の振動数は任意に設定することができるが、20kHz〜40kHz程度に設定することが好ましい。
【0044】
その後、超音波成形型30の各突状部31が基材シート20に接触する。この際、基材シート20のうち各突状部31が接触した箇所が超音波振動の振動エネルギーにより振動加熱され、この結果、当該箇所が軟化して溶融する(図9(b))。
【0045】
続いて、超音波成形型30を更に下降させる。この間、超音波成形型30の各突状部31は、超音波振動により基材シート20を加熱しながら、基材シート20中を貫入していく。このようにして、超音波成形型30の各突状部31先端をバックシート12に当接させる(図9(c))。その後、各突状部31先端の振動下端がバックシート12の表面上に位置するように維持したまま、超音波成形型30の超音波振動の振幅を徐々に減衰させていき、最終的に停止させる。
【0046】
このように超音波成形型30が下降する間、超音波成形型30は、成形型制御装置15により制御され、成形時の前段において大きな振幅をもち、成形時の後段において小さな振幅をもつように振動することが好ましい。
【0047】
具体的には、図10に示すように、超音波成形型30は、突状部31先端がバックシート12に当接するまで相対的に大きな振幅で振動しながら下降する(図10の時間T1)。これに対して、突状部31先端がバックシート12に当接した後、超音波成形型30は、徐々に振幅が小さくなるように減衰振動し、その後停止する(図10の時間T2)。なお、超音波成形型30が減衰振動している間、突状部31先端の振動下端は、バックシート12の表面上にくるように維持される(図10参照)。このように超音波成形型30の振動を制御することにより、微細貫通孔成形品40の微細貫通孔41を高精度で賦形することが可能となる。また、突状部31の貫入時に超音波成形型30の振幅を変動させることなく、同一の低振幅(2μm〜5μm)で基材シート20に貫入し、そのまま先端位置(バックシート12表面)に到達させ、停止する方法もある。
【0048】
次に、加熱装置14が停止し、超音波成形型30が冷却される。これにより、基材シート20も冷却されて固化し、基材シート20に多数の微細貫通孔41が形成される。このようにして、基材シート20から多数の微細貫通孔41を有する微細貫通孔成形品40が成形される。この場合、図示しない冷却装置を用いることにより、超音波成形型30および基材シート20を積極的に冷却しても良い。
【0049】
次に、成形型制御装置15により超音波成形型30を上昇させる。この場合、超音波成形型30および微細貫通孔成形品40(基材シート20)は冷却されて寸法がわずかに縮んでいるので、微細貫通孔成形品40を超音波成形型30から容易に離型することができる(図9(d))。また、微細貫通孔成形品40(基材シート20)が超音波成形型30に付着する場合には、まず超音波成形型30をわずかに上昇させ、そこで再度極短時間超音波成形型30を振動させることで、微細貫通孔成形品40を超音波成形型30から容易に離型することができる。
【0050】
続いて、吸引部13による真空吸引を停止し、受台11からバックシート12および微細貫通孔成形品40を取外す(図9(e))。最後に、バックシート12から微細貫通孔成形品40を剥離することにより、図7および図8に示す微細貫通孔成形品40が得られる(図9(f))。なお、受台11上に保持された状態のバックシート12から直接微細貫通孔成形品40を剥離しても良い。
【0051】
以上のように本実施の形態によれば、超音波成形型30は、上下方向に移動可能となり、かつ上下方向に超音波振動して基材シート20を振動加熱し、基材シート20を溶融して基材シート20に多数の微細貫通孔41を形成する。このことにより、合成樹脂からなる基材シート20に対して多数の微細貫通孔41を容易かつ高精度に形成することができる。
【0052】
また本実施の形態によれば、多数の微細貫通孔41を有する微細貫通孔成形品40を再現性良く得ることができる。また超音波成形型30の形状を自在に設計することができる。したがって、微細貫通孔成形品40の微細貫通孔41を任意の形状で任意の位置に形成することができる。
【0053】
さらに本実施の形態によれば、微細貫通孔成形装置10を用いて樹脂成形方法により微細貫通孔成形品40を作成するので、工程数および製造装置を少なくすることができ、微細貫通孔成形品40の製造コストを低く抑えることができる。
【0054】
次に、本実施の形態の各変形例を図11乃至図16により説明する。図11乃至図16に示す各変形例は、超音波成形型30の各突状部の形状および微細貫通孔成形品40の貫通孔の形状が異なるものであり、他の構成は図1乃至図10に示す実施の形態と同様である。図11乃至図16において、図1乃至図10に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
変形例1
まず本実施の形態の変形例1を図11乃至図13により説明する。図11に示すように、超音波成形型30のホーンヘッド32の先端凸部32a上に、互いに同一形状を有する多数の突状部51が形成されている。各突状部51はそれぞれ山形形状を有している。また各突状部51は、平面四角形状(正方形状)の頂部51aと、頂部51aから周囲に延びる裾部51bとを有している。このうち裾部51bは、頂部51a側からホーンヘッド32の先端凸部32a側に向けて徐々に面積が大きくなる四角形(正方形)の水平断面を有している。
【0056】
このような超音波成形型30は、図5および図6に示す実施の形態と同様、超精密切削加工機36を用いて作成することができる。具体的には、図11に示すように、ホーンヘッド32に対して、超精密切削加工機36の切削工具37を軸A1を中心に回転(自転)させながらD1方向およびD2方向に直線移動させる。なおD1方向およびD2方向は互いに直交している。このようにホーンヘッド32を切削加工することにより、図11に示すように、ホーンヘッド32の先端凸部32a上に、各々四角形の頂部51aを有する複数の突状部51が形成される。
【0057】
また、図12および図13は、図11に示す超音波成形型30を用いて作成された微細貫通孔成形品40を示している。図12および図13において、微細貫通孔成形品40は、成形品本体部42と、成形品本体部42に形成された複数の微細貫通孔52とを有している。各微細貫通孔52は、それぞれ図11に示す超音波成形型30の各突状部51によって賦形されたものであり、各突状部51の形状に対応する形状を有している。図13に示すように、各微細貫通孔52は、成形品本体部42の一面42aに設けられた四角形開口52aと、四角形開口52aから成形品本体部42の他面42b側に向けて延びる斜面部52bとを有している。
【0058】
本実施の形態の変形例1においても、図1乃至図10に示す実施の形態と同様の効果が得られる。とりわけ、多数の四角形の微細貫通孔52を有する微細貫通孔成形品40を精度良く作成することができる。
【0059】
変形例2
まず本実施の形態の変形例2を図14乃至図16により説明する。図14に示すように、超音波成形型30のホーンヘッド32の先端凸部32a上に、互いに同一形状を有する多数の突状部61が形成されている。各突状部61はそれぞれ山形形状を有している。また各突状部61は、平面正六角形状の頂部61aと、頂部61aから周囲に延びる裾部61bとを有している。このうち裾部61bは、頂部61a側からホーンヘッド32の先端凸部32a側に向けて徐々に面積が大きくなる正六角形の水平断面を有している。
【0060】
このような超音波成形型30は、図5および図6に示す実施の形態と同様、超精密切削加工機36を用いて作成することができる。具体的には、図14に示すように、ホーンヘッド32に対して、超精密切削加工機36の切削工具37を軸A1を中心に回転(自転)させながらD1方向、D2方向およびD3方向に直線移動させる。なおD1方向、D2方向およびD3方向はそれぞれ互いに60°で交わっている。このようにホーンヘッド32を切削加工することにより、図14に示すように、ホーンヘッド32の先端凸部32a上に、各々正六角形の頂部61aを有する複数の突状部61が形成される。
【0061】
また、図15および図16は、図14に示す超音波成形型30を用いて作成された微細貫通孔成形品40を示している。図15および図16において、微細貫通孔成形品40は、成形品本体部42と、成形品本体部42に形成された複数の微細貫通孔62とを有している。各微細貫通孔62は、それぞれ図14に示す超音波成形型30の各突状部61によって賦形されたものであり、各突状部61の形状に対応する形状を有している。図16に示すように、各微細貫通孔62は、成形品本体部42の一面42aに設けられた六角形開口62aと、六角形開口62aから成形品本体部42の他面42b側に向けて延びる斜面部62bとを有している。
【0062】
本実施の形態の変形例2においても、図1乃至図10に示す実施の形態と同様の効果が得られる。とりわけ、多数の六角形の微細貫通孔62を有する微細貫通孔成形品40を精度良く作成することができる。また、加工時間をかけることで、山の頂点部、裾野部分を任意の形状に加工したものを適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置を示す概略正面図。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置の超音波成形型を示す正面図。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置の超音波成形型を示す底面図(図2のIII方向矢視図)。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置の超音波成形型を示す垂直断面図(図3のIV−IV線断面図)。
【図5】図5は、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置の超音波成形型を作成する方法を示す概略斜視図。
【図6】図6は、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形装置の超音波成形型を作成する方法を示す概略断面図。
【図7】図7は、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品を示す平面図。
【図8】図8は、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品を示す垂直断面図(図7のVIII−VIII線断面図)。
【図9】図9(a)−(f)は、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法を示す図。
【図10】図10は、本発明の一実施の形態による微細貫通孔成形品の製造方法において、超音波成形型の突状部先端の挙動を示す図。
【図11】図11は、本発明の一実施の形態の変形例1による超音波成形型を示す概略斜視図。
【図12】図12は、本発明の一実施の形態の変形例1による微細貫通孔成形品を示す平面図。
【図13】図13は、本発明の一実施の形態の変形例1による微細貫通孔成形品を示す垂直断面図(図12のXIII−XIII線断面図)。
【図14】図14は、本発明の一実施の形態の変形例2による超音波成形型を示す概略斜視図。
【図15】図15は、本発明の一実施の形態の変形例2による微細貫通孔成形品を示す平面図。
【図16】図16は、本発明の一実施の形態の変形例2による微細貫通孔成形品を示す垂直断面図(図15のXVI−XVI線断面図)。
【符号の説明】
【0064】
10 微細貫通孔成形装置
11 受台
12 バックシート
12a バックシート剥離層
13 吸引部
14 加熱装置
15 成形型制御装置
20 基材シート
30 超音波成形型
31、51、61 突状部
31a、51a、61a 頂部
31b、51b、61b 裾部
32 ホーンヘッド
32a 先端凸部
33 ベース部
36 超精密切削加工機
37 切削工具
40 微細貫通孔成形品
41、52、62 微細貫通孔
41a 円形開口
41b、52b、62b 斜面部
42 成形品本体部
52a 四角形開口
62a 六角形開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受台と、
受台上に保持され、耐熱性を有するとともに合成樹脂製の基材シートを支持するバックシートと、
バックシート上方に配置され、下方部に多数の突状部を有する超音波成形型とを備え、
超音波成形型は、上下方向に移動可能となり、かつ上下方向に超音波振動して基材シートを振動加熱し、基材シートを溶融して基材シートに多数の微細貫通孔を形成することを特徴とする微細貫通孔成形装置。
【請求項2】
超音波成形型は、成形時の前段において大きな振幅をもち、成形時の後段において小さな振幅をもって振動することを特徴とする請求項1記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項3】
超音波成形型に、超音波成形型を加熱する加熱装置が接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項4】
超音波成形型の各突状部は、山形形状を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項5】
超音波成形型の各突状部は、平面円形状の頂部を有することを特徴とする請求項4記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項6】
超音波成形型の各突状部は、平面四角形状の頂部を有することを特徴とする請求項4記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項7】
超音波成形型の各突状部は、平面六角形状の頂部を有することを特徴とする請求項4記載の微細貫通孔成形装置。
【請求項8】
受台上に耐熱性を有するバックシートを保持する工程と、
バックシート上に合成樹脂製の基材シートを支持する工程と、
バックシート上方に予め配置され、下方部に多数の突状部を有する超音波成形型を上下方向に超音波振動して基材シートを振動加熱し、基材シートを溶融して基材シートに多数の微細貫通孔を形成する工程とを備えたことを特徴とする微細貫通孔成形品の製造方法。
【請求項9】
基材シートに多数の微細貫通孔を形成する工程において、成形時の前段において大きな振幅で超音波成形型を上下方向に超音波振動し、成形時の後段において小さな振幅で超音波成形型を上下方向に超音波振動することを特徴とする請求項8記載の微細貫通孔成形品の製造方法。
【請求項10】
多数の微細貫通孔を有する合成樹脂製の基材シートからなり、
請求項8または9記載の微細貫通孔成形品の製造方法によって作成されたことを特徴とする微細貫通孔成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−137313(P2010−137313A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314523(P2008−314523)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】