説明

微細送りネジユニット

【課題】 微細送りネジ、あるいはナットを回転させたときに、ネジのピッチの微細化と精度化によって回転による移動距離を正確に推進できるように、ネジのピッチを計算し易い数値になるように加工精度を向上させることを課題とした。
【解決手段】切削性に優れているシャフトにおいて、シャフト外周面に一体的に螺旋状に施したミリサイズの三角ネジを設けているネジとナットからなって、シャフト外周面に一体的に螺旋状に施したミリサイズの三角ネジの外径サイズを1mm〜10mmで、ピッチ0.05mm〜1.5mm、ネジ山の角度30°〜60°に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物をより微細で精密な送り移動を可能にする微細送りネジに関する。
【背景技術】
【0002】
横断面円形のブランク1から横断面非円形状のねじを製造するもので、ねじ山と、これとは逆向きの螺旋をなす逆螺旋溝とを転造により形成するものであることが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
ダブルナット構造のように雌ねじ側でなく、雄ねじ側で緩み止めを図ることができるようにすることを目的にして、ねじ山の適所に、ねじ山のフランクの法線方向に突出する凸部を設けたものが提案されている(特許文献2参照)。しかし前記2件については、通常のボルトのネジ山の形状であって、微細なネジのサイズのものではない。
【0004】
また精密送り機構を要する構造物はマイクロメーターヘッドなどの市販品含めた送り機構を使用していたが、1μm単位精度を必要とする移動では意図した位置に移動させるのに容易性が欠けたものであった(特許文献4参照)。
【0005】
マイクロメーターヘッドはスリーブと呼ばれる横軸とシンブルと呼ばれる中空円筒状からなるもので構成されスリーブに縦、横の目盛、シンブルの径方向に目盛がついているために、対象物を移動させる場合にはシンブルを回転させ意図した位置で、スリーブの縦軸目盛、シンブルの目盛、スリーブの横軸の目盛の順番で読まないと微細な送りの移動はわからない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−193622号公報
【特許文献2】特開平07−259833号公報
【特許文献3】特開 2007−002880号公報
【特許文献4】特開平06−147803 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微細な移動を実現するには、ネジピッチをできるだけ小さく、且つネジとネットは回転するときによりすべりがスムーズになければ、微細な送りは困難である。
【0008】
この微細送りを精度よく駆動させることを目的として、微細送りネジ、もしくはナットを回転させたときに、ネジのピッチの微細化と精度化によって回転による移動距離を正確に推進できるように、ネジのピッチを計算し易い数値になるように加工精度を向上させることが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、切削性に優れているシャフトにおいて、シャフト外周面に一体的に螺旋状に施したミリサイズの三角ネジを設けているネジとナットからなっている微細送りネジユニットである。
【0010】
シャフト外周面に一体的に螺旋状に施したミリサイズの三角ネジの外径サイズを1mm〜10mmで、ピッチ0.05mm〜1.5mm、ネジ山の角度30°〜60°に形成しされていている。好ましくは、三角ネジの外径サイズ3mm〜6mm、ピッチ0.1mm〜0.5mm、ネジ山の角度40°〜60°である。
【0011】
螺旋状に施したシャフトの外周面に有するネジ軸側とネジ軸側の対向するナットは、切削性に優れたシャフトの内径サイズを1〜10mmで、ピッチ0.05mm〜1.5mm、ネジ山の角度30°〜60°に形成しされていている。好ましくは、シャフトの内径サイズを3〜6mmで、ピッチ0.1mm〜0.5mm、ネジ山の角度40°〜60°である。
【0012】
切削性に優れているシャフトの材質は、ステンレススチール、真鍮、銅から選ばれた微細送りネジユニットである。ネジとしてはステンレススチール、ナットとして真鍮、又は銅が好ましい。
【0013】
切削性に優れているシャフトにおいて、シャフト外周面に一体的に螺旋状に施したミリサイズの三角ネジを設けているに当たり、高精度NC旋盤で行っている。
【0014】
ネジ寸法はJISで規格化されているが、規格外のものが普及することで使用用途が増加している。ネジ材質は一般に構造用圧延鋼材や機械構造用炭素鋼鋼材、クロムモリブデン鋼鋼材、ステンレススチール材などがあり、用途により使用材は異なるが、通常はステンレススチール材が使用される。錆や汚れなどがし易いために、一般的に精密部品として使用は少ない。
【0015】
ステンレススチールは機械構造用炭素鋼鋼材と比べ耐食性や機械的特性が良く切削性や、汚れ易さなどを考慮すると、あらいる分野に適合できるステンレススチールのSUS303が使用される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、対象物を微細な直動運動させたり、微小位置決め部品としての利用することができる。
【0017】
微細送りネジ、ナットとを相対的に回転させることで両者のボルト軸方向における相対的位置を変更できるばかりではなく、ボルト、ナットを相対的に回転させず、ボルトとナットのボルト軸方向における相対位置を容易、迅速に変更することもできる微細送りネジとネットを提供できる。
【0018】
ナットを対象物に固定させ、ボルトを対象物とは異なる物品に保持させた状態でボルトを回転させるとナットに固定させた対象物を容易に且つ精密に移動させることに優れた効果を得られ、省スペース的にも有効的である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる微細送りネジとナットの構成を示す外観図である。
【図2】微細送りネジを示す外観図である。
【図3】微細送りネジを示す拡大図である
【図4】微細送りネジの対向するナットを示す断面図である。
【図5】ネジピッチ検証治具(上面図)
【図6】ネジピッチ検証治具(側面図)
【発明を実施するための形態】
【0019】
微細送りネジ、ナットとを相対的に回転させることで両者のボルト軸方向における相対的位置を変更できるばかりではなく、ボルト、ナットを相対的に回転させず、ボルトとナットのボルト軸方向における相対位置を容易、迅速に変更することもできる微細送りネジとネットを提供するものであって、図1から図6をもって以下実施例によって説明する。
【実施例1】
【0020】
上記を踏まえ、以下に示した図1、2、3、4に基づき、この発明を説明する。
図2に示すように、本発明の微細送りネジは、切削性に優れている材質ステンレススチール303を使用し、外径はφ6mmのネジサイズでネジピッチは特殊チップを自社で製作し取付けた高精度付NC旋盤機によって精度良く0.1mmのネジピッチ、ネジ山の角度55°に切削して製作した。このネジより微細な移動が取れやすいようになった。
【0021】
図4に示すように、図2の微細送りネジの材質ステンレススチールとの滑りを考慮して、銅の外径φ10mmの材質に、内径φ6mmのミリサイズでネジピッチは特殊チップを自社で製作し取付けた高精度NC旋盤機によって精度良く0.1mmのネジピッチに切削して製作した。
【0022】
図2と図4を組み合わせたものが図1であり、図4のナットを回転させると滑りをスムーズで意図したユニットを製造できて、ナットを1回転により0.1mmの正確な移動が可能になった。
【0023】
0.1mmの精度で移動できるか妥当性の検証を次に行った。まず図5、6に示すようなネジピッチ検証治具を製作した。この治具は高精度ダイヤルゲージと微細送りネジと回転ノブの構成からなっており、高精度ダイヤルゲージ測定子の中心に微細送りネジ中心を当て、高精度ダイヤルゲージ、微細送りネジを各々ホルダーで固定している。また微細送りネジの後端に回転ノブを取り付けた。
【0024】
回転ノブを1回転回したときに高精度ダイヤルゲージが0.1mmの指示をすることを高精度ダイヤルゲージで確認した。測定結果はMAX0.001mmの移動精度を持っている。
【実施例2】
【0025】
上記を踏まえ、以下に示した図1、2、3、4に基づき、この発明を説明する。
図2に示すように、本発明の微細送りネジは、切削性に優れている材質ステンレススチール303を使用し、外径はφ6mmのネジサイズでネジピッチは特殊チップを自社で製作し取付た高精度NC旋盤機によって精度良く0.2mmのネジピッチに切削して製作した。このネジより微細な移動が取れやすいようになった。
【0026】
図4に示すように、図2の微細送りネジの材質ステンレススチールとの滑りを考慮して、真鍮の外径φ10mmの材質に、内径φ6mmのミリサイズでネジピッチは特殊チップを自社で製作し取付けた高精度NC旋盤機によって精度良く0.2mmのネジピッチに切削して製作した。
【0027】
図2と図4を組み合わせたものが図1であり、図4のナットを回転させると滑りをスムーズで意図したユニットを製造できて、ナットを1回転により0.2mmの正確な移動が可能になった。また実施例1と同様に精度検定を行った。その結果0.001mm程度の精度で移動測定できるようになった。
【実施例3】
【0028】
上記を踏まえ、以下に示した図1,2,3,4に基づき、この発明を説明する。
図2に示すように、本発明の微細送りネジは、切削性に優れている材質ステンレススチール303を使用し、外径はφ5mmのネジサイズでネジピッチは特殊チップを自社で製作し取付けた高精度NC旋盤機によって精度良く0.1mmのネジピッチに切削して製作した。このネジより微細な移動が取れやすいようになった。
【0029】
図4に示すように、図2の微細送りネジの材質ステンレススチールとの滑りを考慮して、銅の外径φ10mmの材質に、内径φ5mmのミリサイズでネジピッチは特殊チップを自社で製作し取付けた高精度NC旋盤機によって精度良く0.1mmのネジピッチに切削して製作した。
【0030】
図2と図4を組み合わせたものが図1であり、図4のナットを回転させると滑りをスムーズで意図したユニットを製造できて、ナットを1回転により0.1mmの正確な移動が可能になった。また実施例1と同様に精度検定を行った。その結果0.001mm程度の精度で移動測定できるようになった。
【実施例4】
【0031】
上記を踏まえ、以下に示した図1,2,3,4に基づき、この発明を説明する。
図2に示すように、本発明の微細送りネジは、切削性に優れている材質ステンレススチール303を使用し、外径はφ6mmのネジサイズでネジ山角度を45°、ネジピッチは特殊チップを自社で製作し取付けた高精度NC旋盤機によって精度良く0.1mmのネジピッチに切削して製作した。このネジより微細な移動が取れやすいようになった。
【0032】
図4に示すように、図2の微細送りネジの材質ステンレススチールとの滑りを考慮して、銅の外径φ10mmの材質に、内径φ6mmのミリサイズでネジ山角度45°、ネジピッチは特殊チップを自社で製作し取付けた高精度付NC旋盤機によって精度良く0.1mmのネジピッチに切削して製作した。
【0033】
図2と図4を組み合わせたものが図1であり、図4のナットを回転させると滑りをスムーズで意図したユニットを製造できて、ナットを1回転により0.1mmの正確な移動が可能になった。また実施例1と同様に精度検定を行った。その結果0.001mm程度の精度で移動測定できるようになった。
【実施例5】
【0034】
上記を踏まえ、以下に示した図1,2,3,4に基づき、この発明を説明する。
図2に示すように、本発明の微細送りネジは、切削性に優れている材質ステンレススチール303を使用し、外径はφ6mmのネジサイズでネジピッチは特殊チップを自社で製作し取付けた高精度NC旋盤機によって精度良く0.1mmのネジピッチに切削して製作した。このネジより微細な移動が取れやすいようになった。
【0035】
図4に示すように、図2の微細送りネジの材質ステンレススチールと同様に、ステンレススチールの外径φ10mmの材質に、内径φ6mmのミリサイズでネジピッチを特殊チップ付NC旋盤機によって精度良く0.1mmのネジピッチに切削して製作した。
図2と図4を組み合わせたものが図1であり、図4のナットを回転させると滑りが硬く、数回回転させていくと焼付が発生しスムーズで意図したユニットを製造できなかったため、ナットの材質は上記通りの素材を推奨する。
【符号の説明】
【0036】
1.ネジ山の角度
2.ネジピッチ
3.ネジ外径
4.ネジ内径
5.ナット
6.ボルト
7.微細送りネジ
8・高精度ダイヤルゲージ
9.回転ノブ
10.微細送りネジホルダー
11.指示針
12.ダイヤルゲージホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削性に優れているシャフトにおいて、シャフト外周面に一体的に螺旋状に施したミリサイズの三角ネジを設けているネジとナットからなっていることを特徴とする微細送りネジユニット
【請求項2】
シャフト外周面に一体的に螺旋状に施したミリサイズの三角ネジの外径サイズを1〜10mmで、ピッチ0.05mm〜1.5mm、ネジ山の角度30°〜60°に形成しされていていることを特徴とする請求項1の記載の微細送りネジユニット
【請求項3】
螺旋状に施したシャフトの外周面に有するネジ軸側とネジ軸側の対向するナットは、切削性に優れたシャフトの内径サイズを1〜10mmで、ピッチ0.05mm〜1.5mm、ネジ山の角度30°〜60°に形成しされていていることを特徴とする請求項1又は請求項2の記載の微細送りネジユニット
【請求項4】
切削性に優れているシャフト用材質は、構造用圧延鋼材、機械構造用炭素鋼鋼材、クロムモリブデン鋼鋼材、ステンレススチール材で、ナット用材質として、真鍮、銅から選ばれたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の微細送りネジユニット
【請求項5】
切削性に優れているシャフトにおいて、シャフト外周面に一体的に螺旋状に施したミリサイズの三角ネジを設けているに当たり、自動加工できるNC旋盤を行っていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細送りネジユニット

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−47329(P2012−47329A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204906(P2010−204906)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(510247065)株式会社上原製作所 (1)
【Fターム(参考)】