説明

微細針輸送装置

【課題】苦痛のない正確な針の挿入およびプログラマブル制御可能な経皮的輸送装置を提供する。
【解決手段】経皮的輸送装置10は、特定成分を含む物質を収容するリザーバ46、および針12のアレイを含む。この針12のアレイは、前記リザーバ46と流体連通するボアを有することにより、該針12を通して物質をリザーバ46内に輸送し、および該針12を通して物質をリザーバ46から外に輸送するのを容易にしている。さらにこの輸送装置は、針のアレイを体内に貫入させる第1アクチュエータ24、および針12を通してリザーバ46と対象物との間で物質をポンプ作用で輸送する第2アクチュエータ38を含む。第1アクチュエータ24は逆方向にも作用する可逆性アクチュエータであり、体から針を引き抜くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
患者への薬物の投与は、さまざまな方法で行われる。例えば、血管に直接注射する静脈内投与、腹膜への注射による腹腔内投与、皮膚の下への皮下投与、筋肉内への筋肉投与、および口からの経口投与がある。薬物投与および体液の採取のための最も容易な方法は、皮膚を通す方法である。
【0002】
皮膚は、人体の最も外側の保護層である。皮膚は、角質層、顆粒層、有棘層および基底層を含む表皮と、毛細管層などを含む真皮とからなる。角質層は、死滅した細胞組織からなる丈夫な鱗状の層である。角質層は、皮膚表面から約10〜20ミクロンの厚さ範囲にあり、血液は供給されていない。この層の細胞密度が高いため、皮膚を通しての化合物の移動は、体内方向および体外方向のいずれの方向についても、きわめて困難になる。
【0003】
皮膚を通しての薬剤の局所送達に関する現状の技術には、針やその他の皮膚貫通装置を使用する方法、および、このような装置を使用しない方法の両方がある。針類を使用しない方法には、通常、(a)局所適用、(b)イオン導入、(c)エレクトロポレーション、(d)レーザによる穿孔または改質、(e)担体や媒体物といった、角質層および薬剤の少なくともいずれかの化学的性質を変化させる化合物、(f)角質層を削る(例えば、粘着テープの貼り付けと引き剥がしを繰り返す)などの皮膚の物理的前処理、および、(g)超音波によって角質層の障壁機能に変化を生じさせるソノフォレシスがある。
【0004】
例えば貼り付け薬や薬剤の皮膚への直接塗布など、局所適用は皮膚を通しての拡散または吸収に依存している。これらの経皮的送達方法は、角質層の透過性が限られているためあまり有効ではない。局所適用の効果を高めるために上に列挙したような方法が開発されているが、それでも局所適用では最適な経皮的送達を実現できない。
【0005】
一方、針やランセット(lance)を用いるなどの侵襲的手法は、角質層の障壁機能に効
果的に打ち勝つことができる。しかし、これらの方法は、注射部位における痛み、皮膚の局所的損傷、出血、および注射部位における感染の可能性、ならびに廃棄が必要な汚染針または汚染ランセットの発生といったいくつかの大きな欠点を有している。さらにこれらの方法は、通常、熟練した接種作業者を必要とし、繰り返し使用、長時間の使用、あるいは制御下での使用に適していない。
【0006】
さらに、皮膚を通しての薬の投与は、投与位置および投薬量の両方があまり正確ではない。投薬の際に患者が動いてしまう、投与が不完全になり全量が投与されない、同時に2つ以上の薬剤を投与することが難しい、薬剤を皮膚の適切な部位に投与することが困難であるといった問題がある。薬は、適切な投与量にするために、従来から希釈して用いられてきた。この希釈工程は、投与の問題に加え、保管に関する問題を引き起こしかねない。したがって、皮膚を通しての長期間の投与のみならず、迅速性の点から少量かつ正確な量の薬剤を使用できると有利である。
【0007】
微細針装置を使用する手法がいくつか提案されており、それら手法は角質層を貫通するため、局所適用よりも効率的な輸送速度を実現できる。同時に、これら手法は、微細針が比較的細く、かつ皮下の神経に触れるほど深くは挿入されないため、事実上苦痛を伴わない。これらの装置は、ポンプや透過膜など、輸送速度を制御する手段と組み合わせて用いることもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の技術分野には、商業的に存続可能なコストで、苦痛のない正確な針の挿入およびプログラマブル制御可能な輸送を提供する、効果的かつ多用途の微細針を用いる経皮的輸送システムへのニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の微細針輸送装置は、最も基本的な構成では、少なくとも1つのリザーバに接続された1本以上の微細針を含む。微細針は、1つまたは複数の列あるいはアレイ状に設けることができる。アレイは、直交パターンまたは円形パターンに配置することができる。患者に物質を投与するため、あるいは患者から体液のような物質を取り出すためのシステムは、さらに1つ以上のアクチュエータ、ポンプ、および/またはセンサを含む。これらの構成要素を組み合わせて特性の異なる種々のシステムを形成することができ、例えば皮膚を通しての物質の投与および/または物質の採取や皮膚の情報収集を実現できる。
【0010】
本明細書に開示の微細針輸送装置は、薬の投与、サンプル採取、および生物学的状態の監視を含むいくつかの用途に用いることができるが、これら用途に限定されるわけではない。薬の投与装置としての用途においては、各リザーバは投与される1つまたは複数の薬で満たされる。サンプル採取の用途においては、各リザーバは当初は空であり、その後、間質液などの生物学的物質で満たされる。状態監視の用途においては、本装置に、取り出した体液中の例えばグルコースなどの化合物の濃度を監視するためのセンサが取り付けられ、あるいは皮膚に貫入する針に何らかの受容器が設けられる(すなわち、必ずしも体液を取り出す必要はない)。
【0011】
一実施形態において、経皮的輸送装置は、特定成分の物質を収容するリザーバおよび針のアレイを含む。この針は貯蔵チャンバと流体連通するボアまたは中空経路を有する。この装置はまた針のアレイを体に貫入させる第1アクチュエータと、人体の目標部位とリザーバとの間で、すなわちリザーバに入る方向および/またはそこから出る方向に、針を通して物質をポンプ作用で輸送する第2アクチュエータとを含む。第1アクチュエータは場合により逆作動して、体から針を引き抜く。任意選択では、患者の皮膚上に第1および第2アクチュエータを置く別のアプリケータを用いてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、微細針は、人間の患者などの生体の皮膚の少なくとも外側層(角質層)を穿孔および貫通し、装置と目標部位との間での物質または情報を輸送する役割を果たす。
【0013】
特定の実施形態では、第2アクチュエータが物質を体内に注入し、物質のプログラマブルに制御された輸送を実現する。本発明の経皮的輸送装置を薬剤の投与に用いた場合、特定の患者の必要に応じて投与量を個別に調整することを含む、薬剤の患者への正確な投与が可能になる。特定のいくつかの実施形態では、微細針の形状および皮膚への貫入深さを適切なものとすることにより、患者の苦痛が軽減されるか、あるいはなくなる。
【0014】
いくつかの実施形態においては、第2アクチュエータは可逆性であり、物質をリザーバ内に吸入できる。例えば、物質は、患者から採取される体液サンプルである。本輸送装置はセンサを備えることにより、例えば患者から採取したサンプル中のグルコース濃度を監視するなどの方法で患者の状態を監視できる。この実施形態は、本装置によって測定したグルコース濃度に基づいて患者にインシュリンを投与するなど、薬の投与と組み合わせることが可能である。
【0015】
本輸送装置の動作は、手動または自動、あるいはこれらの組み合せとすることもできる。第1および/または第2アクチュエータは、蒸気発生器、化学反応アクチュエータ、機
械的アクチュエータ、あるいは磁気アクチュエータとすることができる。アクチュエータは、電気化学的反応によって動作することができ、この電気化学的反応を、例えばアクチュエータの一部を捻る、あるいはアクチュエータに圧力を加えることによって、開始させることができる。任意選択では、本発明の輸送装置は検出機能および振動子を備えることにより、角質層を通る針の挿入を支援できる。さらに、1つあるいは複数のプログラマブルなマイクロプロセッサまたはコントローラを利用して、装置の種々の構成要素を制御できる。例えば、1つのコントローラによって第1および第2アクチュエータの動作を連携させることができる。随意であるが、1つのコントローラで第1アクチュエータの動作を制御し、別のコントローラで第2アクチュエータを動作させることができる。コントローラを、第1および第2アクチュエータを患者の皮膚上に置くのに用いるアプリケータに結合できる。このように、本発明の輸送装置は閉ループ・システムを備えることにより、監視および/またはサンプル採取によって得たフィードバック情報に基づいて薬剤の投与を制御して、プログラムされた薬物投与を実現する。例えば、患者から間質液を採取し、グルコース成分を測定し、適切な量のインシュリンを投与することができる。
【0016】
さらに別のいくつかの実施形態では、第2アクチュエータ、リザーバ、および微細針はカートリッジに収容され、第1アクチュエータは制御ユニットに収容される。この2つのユニットは別個のユニットとし、接続して一体にすることができる。
【0017】
別の実施形態において、経皮的輸送装置は、前述のとおり、特定成分を含む物質を収容するリザーバおよび針のアレイを含む。この装置は、針のアレイを生体内に貫入させ、かつ収縮することにより生体から針を引き抜く第1アクチュエータと、体積が変化することによりリザーバと生体との間の物質の針を介するポンプ作用よる輸送を容易にするチャンバを有する第2アクチュエータとを含む。
【0018】
さらに別の実施形態においては、経皮的輸送装置は、リザーバおよびこのリザーバと流体連通するボアを有する針のアレイに加え、針のボアを通してリザーバと生体との間で物質をポンプ作用で輸送する蒸気発生アクチュエータを含む。
【0019】
本発明の実施形態は、下記の利点のうちの1つあるいは複数の利点を有する。本明細書に開示の微細針輸送装置は、低製造コストおよび高効率という利点をもたらす。とくに使用の容易性に関しては、微細針装置の自動化/機械化システムにより、手動操作に通常つきまとう誤りや不確実さを少なくすることができる。微細針によって生じる苦痛、局所的な傷、出血、および感染の恐れはきわめて少ない。さらに、本微細針輸送装置を使用するにあたり、特別な訓練や専門的知識は必要とされない。さらに本発明の装置は、使い捨ての1回限りの使用、部分的または完全な再使用、短期間または長期間の使用、あるいは連続的または間欠的な輸送、さらにはこれらのいくつかの組み合わせに適合させることができる。本発明の装置は、患者の皮膚下での制御可能で正確な薬物投与を実現する。すなわち、所望の部位への投与のために、例えば連続的あるいは間欠的など、所望の方法での投与を設定することができる。本発明の装置によれば、患者がある種の苦痛の緩和を求めるとき、例えばボタンを押すことによって、要求に応えて投与を行うことができる。正確な量の薬を投与できるため、無駄になる薬の量が少なくなる。正確な量の薬をさまざまな方法で投与できることに加え、本発明の装置により、さまざまな薬を投与することができる。例えば、物質は液体でもよく、あるいは投与の際に還元される非液体でもよく、さらにはこれらの組み合わせでもよい。本発明の装置は小型で持ち運びが容易であり、皮膚等への装着に適した形状である。
【0020】
本発明の前述およびその他の目的、特徴、および利点は、添付図面に示す本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明で明らかになるであろう。図面では、同一参照符号は異なる図面においても同一部品を指す。図面は必ずしも縮尺通りでなく、本発明の原理を示
すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明による経皮的輸送装置の斜視図である。
【図1B】図1Aの経皮的輸送装置を線1B−1Bに沿って切断した底面図である。
【図1C】図1Aの経皮的輸送装置のベースユニットおよび制御ユニットを、分離したユニットとして示した側面断面図である。
【図1D】図1Aの経皮的輸送装置の制御ユニットおよびベースユニットを、一体に結合して示した側面断面図である。
【図2A】図1A〜1Dに示した経皮的輸送装置を用いて、薬瓶から薬剤を吸引し、患者に注入するのに実行される一連のプロセスを示した図である。
【図2B】図1A〜1Dに示した経皮的輸送装置を用いて、薬瓶から薬剤を吸引し、患者に注入するのに実行される一連のプロセスを示した図である。
【図2C】図1A〜1Dに示した経皮的輸送装置を用いて、薬瓶から薬剤を吸引し、患者に注入するのに実行される一連のプロセスを示した図である。
【図2D】図1A〜1Dに示した経皮的輸送装置を用いて、薬瓶から薬剤を吸引し、患者に注入するのに実行される一連のプロセスを示した図である。
【図3】別の実施形態を示した図であり、不活性ガスを外部から薬瓶に供給する方法を示している。
【図4】図1A〜1Dの経皮的輸送装置の微細針先端の拡大図である。
【図4A】微細針の貫入深さに対する微細針の貫入力を示したグラフである。
【図4B】径の異なる微細針について、微細針貫入深さに対する微細針貫入力を示した一連のグラフである。
【図4C】径の異なる微細針について、微細針貫入深さに対する微細針貫入力を示した一連のグラフである。
【図4D】径の異なる微細針について、微細針貫入深さに対する微細針貫入力を示した一連のグラフである。
【図4E】径の異なる微細針について、微細針貫入深さに対する微細針貫入力を示した一連のグラフである。
【図5】本発明による微細針の別の実施形態の側面図である。
【図6】図1A〜1Dに示した経皮的輸送装置のアクチュエータの別の実施形態を示した側面図である。
【図7】図6に示したアクチュエータの所要電圧を示したグラフである。
【図8】図1A〜1Dに示した経皮的輸送装置のインピーダンス・センサの電極と患者の皮膚とによって構成される回路図である。
【図8A】本発明のインピーダンス・センサに用いる回路の概略図である。
【図9】図8のインピーダンス・センサによって測定したインピーダンスの大きさと特定の周波数範囲との関係を示したグラフである。
【図9A】貫入深さに対するインピーダンスのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい実施形態を以下に説明する。
【0023】
図1A〜1Dには、微細針を用いる経皮的輸送装置10が示されている。装置10は、患者の皮膚の外側層を貫通し、特定成分である薬剤などの有効成分のような物質を、皮膚を通して投与するため、微細針12のアレイを備えており、患者への薬剤の正確な投与を可能にする。さらに、針の形状および寸法により、また針の貫入深さが最小限であるために、針と皮膚外側層の直下の神経末端との間の接触が最小限になるため、患者の苦痛を軽減し、あるいは無くすことができる。薬剤は液状の物質であってもよく、あるいは投与の直前に水で還元される1つ以上の非液体薬剤であってもよい。
【0024】
輸送装置10は、制御ユニット14と、ベースユニットまたはカートリッジ16とを含む。装置10は、全体あるいは一部を使い捨てとしてもよい。例えば、ベースユニット16を使い捨てにし、制御ユニット14を再使用可能なアプリケータとして機能させてもよい。
【0025】
図1Cでは、2つのユニット14および16は、別個のユニットとして示されている。ユニット14および16は、単純なねじり動作によって、あるいはユニット同士を係合爪等により互いにはめ込むことによって、図1Dに示すように一体に連結できる。制御ユニット14には、電子回路18、電池および/またはスーパー・コンデンサなどの電源部品20、およびプロセッサ22が設けられている。制御ユニット14の駆動アクチュエータ24は、ヒータ26およびフレキシブル膜28を含み、これら両者の間に膨張チャンバ30が形成されている。代替的に、膜28はフレキシブルでなく、塑性変形するものでもよい。
【0026】
ベースユニット16は、剛体のハウジング32を含み、このハウジング32内に、ゴム製のプレナム(plenum)34およびこのプレナムの上に位置する支持発泡体36が設けられている。ベースユニット16には、さらに、ヒータ40およびフレキシブル膜42を含むリザーバアクチュエータ38が設けられており、ヒータ40およびフレキシブル膜42間に膨張チャンバ44が形成されている。さらに、フレキシブル膜42と剛体殻48との間にリザーバ46が存在する。殻48には、微細針12のアレイが取り付けられている。微細針12のそれぞれに、リザーバ46内に収容された薬剤がリザーバから患者に送達される際に通過するボアまたは中空経路が設けられている。あるいは、リザーバ46が、患者から微細針12を通して採取したサンプルを収容してもよい。特定の実施において、制御ユニット14のいくつかの部品または全ての部品を、ベースユニット16内に備えることができる。なお、リザーバ46は、ベースユニット16から取り外し可能な独立した薬瓶として機能することができる。このような場合、薬剤投与の前にリザーバ46は前もって物質で充填され、その後、ベースユニット16内に設置される。
【0027】
さらにベースユニット16は開口51(図1B)を有するカバー50を含み、この開口51を通して微細針12をベースユニット16の底部から突き出すことができる。使用にあたっては、微細針12を回転させて、開口51に位置合わせする。装置10を使用しないとき、微細針12を回転させて、微細針12がベースユニット16の底部から突き出さないようにし、偶発的に針12が露出することを防ぐ。これにより、微細針12の汚染、および針12と患者または臨床医との間の不慮の接触を極力減らし、あるいは無くすることができる。
【0028】
装置10において、アクチュエータ24および38は蒸気発生器として動作する。ヒー
タ26および40が、それぞれの膨張チャンバ30および44に収容された水などの液体を加熱する。液体が蒸気に相転移すると、チャンバ30,44が膨張するので、それぞれの膜28および42を外方向に移動させる。特定の実施形態においては、水の量は約500nl〜5μlである。水の気化温度は100℃であり、この温度における気化熱は2.25kJ/kgである。したがって、1μlの水に対して、蒸気の体積は約1.7mlになる。
【0029】
この結果、膜28が外方に動いて、アクチュエータ38、リザーバ46、および微細針12を制御ユニット14から離間させる方向に押す。これにより、殻48が支持発泡体36を圧縮し、微細針12が支持発泡体36およびゴム・プレナム34を通って移動する。
【0030】
同様に、アクチュエータ38が起動すると、フレキシブル膜42が外方に押されて、リザーバ46内に収容されている薬剤が微細針12を通して放出される。このプロセスを逆に実行すると、患者からのサンプルや薬瓶からの薬剤のような液体をリザーバ42内に採取できる。
【0031】
図1Aおよび1Bに示した輸送装置10は、圧力や温度を測定するセンサを含むことができる。これに加えて、あるいは代替的に、装置10は化学センサおよび/またはグルコース・センサ、およびインピーダンス・センサ52を含むことができる。
【0032】
インピーダンス・センサ52は、微細針12が皮膚内に充分に貫入したことを示すのに用いられる。さらに、圧電素子またはスピーカ54を用いて、ユーザに音あるいは場合によっては音声で知らせ、また、制御ユニット14の上面に配置される表示器55がユーザに視覚情報を提供する。
【0033】
装置10を用いて、患者が必要とする量の薬を正確に投与する。患者に関する情報は、結合されているコンピュータを介して通信カード57により装置10およびアプリケータ12に伝えることができる。また、通信カード57を、無線通信を可能にするブルートゥース・カードとすることもできる。
【0034】
装置10の使用手順が、図2A〜2Dに示されている。最初に患者や臨床医などのユーザが、制御ユニット14をベースユニット16に接続し、装置10のカバー50を回転させて開状態にし、ベースユニット16の底部を患者に投与する薬剤を収容している薬瓶100(図2A)に取り付ける。薬瓶100は、薬剤を収容するタイプIまたはタイプIIの高純度ガラス容器102を含む。薬瓶100を、ポリマー材料やステンレス鋼で作ることもできる。薬剤は、ガラス容器102内に、厚さ約50μm〜2mm、好ましくは300μm未満のシリコン系ゴムのプレナム(plenum)104によって密封されている。プレナム104は、ポリマーや積層ゴムで製作してもよい。ゴム・プレナム104は、アルミニウム製あるいはステンレス鋼製のリング状キャップ106でガラス容器102に固定されている。リング状キャップ106は約50μm〜300μm、好ましくは100μmの厚さを有する。リング状キャップ106の開口を介して装置10がゴム・プレナム104に接近することができる。
【0035】
次に、ユーザが装置10を上下逆にし(図2A)、装置10を始動させて輸送プロセスを開始する。制御ユニット14のアクチュエータ24を作動させると、チャンバ30が膨張するため、アクチュエータ38、リザーバ46、および微細針12が薬瓶100に向かって移動する。これにより、微細針12は、支持発泡体36およびゴム・プレナム34を通って装置10の底部に位置するカバー50の開口51(図1B)から突き出た後、薬瓶100内に収容されている薬剤の中まで移動する。
【0036】
次に、プロセッサ22がアクチュエータ38を作動させて、リザーバ46内に当初より含まれている空気または不活性ガスを、薬瓶100内に放出する。プロセッサ22は、膜42が完全に膨張したことを検知すると、アクチュエータ38を停止させる。膨張チャンバ44内の蒸気が凝縮するにつれ、膨張チャンバ44の容積が減少する。これに伴い、リザーバ46の容積が増加するため、微細針12を通して薬剤がリザーバ46内に吸入される。次いで、プロセッサ22がアクチュエータ24を停止すると、支持発泡体36が殻48を押しているため、アクチュエータ38、薬剤で満たされたリザーバ46、および微細針12が移動して最初の状態に戻る。いくつかの実施形態では、薬剤リザーバ46を、薬瓶100を用いて充填する代わりに、薬剤リザーバ46に薬剤をあらかじめ充填して用いてもよい。なお、微細針12が移動して格納状態に戻るとき、プレナム34が微細針12の外表面を清掃するワイパーとして機能する。
【0037】
次にユーザは、装置10を薬瓶100から取り外し、装置10を対象物である患者の皮膚1000上に置く。装置10は、例えば粘着剤や紐などの任意の適当な手段によって皮膚1000に固定される。プロセッサ22がアクチュエータ24を再度作動し、微細針12を皮膚に注射する(図2B)。微細針12は皮膚1000に一旦接触すると、皮膚表面の下方約50μm〜数mmの深さまで同一方向に動き続け、皮膚に貫入する。一実施形態においては、貫入深さは約200μmである。この貫入方向における貫入運動の大きさは、微細針12が皮膚を貫入する部位における角質層の厚さに左右される。角質層の厚さはさまざまであるため、制御ユニット14はインピーダンス・センサ52を用いて、微細針12が角質層を通り抜けた時を検知する。インピーダンス・センサ52は、微細針12のアレイの内の2本の間を流れる電流のインピーダンスを測定する。インピーダンスは角質層において高く、角質層直下の真皮の部分において急激に低下する(例えば図10を参照すると、約3桁低下する)。センサ52は、微細針12が皮膚に貫入していくときのインピーダンスの変化を読み取り、インピーダンスが1桁低下したとき微細針12を停止させる。これに加えて、あるいはこれに代えて、堅固な機械的ストッパを設けることにより、微細針12が深く貫入しすぎることを防止できる。
【0038】
次いで、プロセッサ22によってアクチュエータ38が起動されると、リザーバ46から微細針12を通って皮膚1000内に薬剤が注入される。その後、プロセッサ22がアクチュエータ24を停止して、微細針12を皮膚から引き抜く(図2C)。微細針が完全に引き抜かれたのち、もう一方のアクチュエータ38が停止されると、リザーバ46が空気で充満する。その後、ユーザが装置10を皮膚から取り外し、制御ユニット14をベースユニット16から切り離して(図2D)、ベースユニット16を廃棄処分する。
【0039】
別の使用例では、装置10を対象物である薬瓶100に取り付ける前にアクチュエータ38を作動させて、リザーバ46から空気を排出する。その後、装置10を薬瓶100に取り付けて、リザーバ46を薬剤で満たした後、装置10を薬瓶100から取り外す。図3に示すように、薬瓶100から取り出された薬剤の量に相当する空間容積を、ガス供給源110によって供給される、窒素ガスなどの不活性ガスで満たすことができる。このように、不活性ガスを薬瓶100に移動させる方法に関係なく、このガスにより、薬剤を空気中での酸化から保護できる。
【0040】
すでに述べたように、同じ装置10を用いて、間質液などの特定成分を含む物質の一種である体液を真皮から採取することができる。採取を行うには、最初にリザーバ46を排気する必要がある。これは、アクチュエータ38を作動させ、膨張チャンバ44を膨張させて膜42を下方に移動させることにより、リザーバ46内の空気を排出することで達成される。微細針12を皮膚内に貫入させた後、アクチュエータ38の膨張チャンバ44を収縮させると、リザーバ46内に真空が発生するので、真空作用により微細針12を通してリザーバ46内に体液が吸入される。
【0041】
このように、ここで開示したアクチュエータ38はポンプとして作用し、微細針12を通して薬剤を皮膚内に注入するのを容易にし、あるいは患者からのサンプルの採取を容易にする。アクチュエータ38を使用して、装置10を皮膚上に置く前に、リザーバ46内を真空にすることができる。つまり、アクチュエータ38によって、目標とする部位への、および目標とする部位からの、プログラマブル制御された輸送を行うことができる。
【0042】
輸送装置10の種々の形態を以下に詳細に説明する。
【0043】
本出願において、用語「微細針」とは、その数を特に指定していない限り、1本以上の針が用いられていることを意味する。ここで開示する微細針は、多孔性であっても非多孔性であってもよく、その径または断面形状が均一であっても変化していてもよく、あるいはこれらを組み合わせたものでもよい。径が均一である中空の微細針は、微細管と呼ばれることもある。本明細書で用いられる際、用語「微細針」は、微細管および前述以外の種類の微細針の両者を意味する。さらに、微細針は、その一端または両端に、さらには長手方向に沿った側面の複数の位置に、あるいはこれらの任意の組合せで開口を有していてもよい。さらに、微細針の一端または両端は、平坦でもよく、先端に向かって先細りでもよく、丸められていてもよく、あるいは後述するように、一方向または複数の方向から斜めに面取りされていてもよい。
【0044】
図4に示すように、各微細針12は先端70を約10°〜60°の角度αをなすように切断して、微細針のボアの開口73を取り囲む傾斜面72aを有する。この面72aおよび/または外表面72bは面取りしてもよい。面取りされた先端には、多くの利点がある。これにより皮膚の損傷を少なくすることができ、被接種者の感じる苦痛をさらに減らし、細胞組織を微細針内に芯抜きすることを防止し、皮膚に貫入するのに必要な力を少なくすることができる。特に芯抜きに関しては、先端の尖った、小内径の微細針では、その中空の開口73内に細胞組織が蓄積されにくいため、輸送が妨害されない。
【0045】
図示した実施形態は4本の微細針12を備えているが(図1Aおよび1B)、10本以上の微細針を備えることもできる。
【0046】
図5に示すように、特定の実施形態においては、開口73(図4)または開口のない端部82(図5)を有する微細針12の長手方向に沿った側壁の複数の位置に、ボアまたは中空通路81と共に液体を輸送できる一定間隔で整然と並ぶまたはランダムに並ぶ孔73を設けることができる。1〜20個、あるいはさらに多くの孔80を形成することが可能である。孔80と孔80の間隔は約100μm〜2mmの範囲である。
【0047】
微細針12は、さまざまな材料から、さまざまな方法で製造することができる。代表的な材料としては、金属、セラミックス、半導体、有機物、生物分解性および非生物分解性のポリマー、ガラス、石英、ならびに種々の複合材料がある。代表的な方法としては、微細加工技術がある。図示の実施形態では、微細針12は304ステンレス鋼など、医療用品質のステンレス鋼で作られている。ステンレス鋼の微細針は、耐久性が高く、ある程度の柔軟性があり、角質層への挿入に耐え得る機械的強度を有するため、好都合である。これらは、容易に入手でき、比較的安価である市販品から、化学のこぎりやその他の適当な方法で所望の寸法に切り出し、所望の先端形状に研削できる。
【0048】
微細針12は、約10μm〜100μmの内径、30μm〜250μmの外径、および約5mm〜10mmの長さを有している。図示の実施形態では、各微細針は約54μmの内径、および約108μmの外径を有している。別の実施形態では、内径が約100μm、外径が約175μmの微細針が使用される。
【0049】
図4Aを参照すると、針の貫入深さに対する針の貫入力のグラフが示されており、種々の表示が付されているとおり、皮膚および針の挙動が表されている。針は、皮膚に触れた後、皮膚を変形させて貫入し、第1の貫入点を形成する。この第1の貫入点を形成する際の最大貫入力は164mNである。その後、針は皮膚下を滑動する。続いて、針は皮膚の第2層を変形させて貫入し、第2の貫入点を形成する。その後、針は再び第2層下を滑動する。次いで、皮膚が針の軸部に沿って滑り上がる。針が引き抜かれるにつれ、グラフの下部分に示されているように、皮膚も変形する。
【0050】
次に、図4B〜4Eの一連のグラフには、皮膚表面に対する貫入角度が90°である、外径100μm(上側のグラフ、図4Bおよび4C)および外径570μm(下側のグラフ、図4Dおよび4E)の針について、貫入深さ〔mm〕と貫入力〔N〕との関係を、針貫入速度が0.1mm/sおよび1.0mm/sである場合について示してある。これらの図から明らかなように、より小さい針では大きな貫入力が要求されない。これらの図から、針貫入の速度が貫入力にあまり影響しないこともわかる。貫入角度90°、貫入速度1mm/sで皮膚に貫入される外径100μmの針の貫入力の最大値は、約250mN(図4C)であり、貫入速度0.1mm/sの場合でもほぼ同じ値(図4B)である。
【0051】
微細針12の外表面もしくは内表面または両方に、コーティングを施すこともできる。コーティングは、外表面もしくは内表面またはそれら両表面の一部もしくは全体に施してもよい。コーティングは、潤滑剤、化学的または生物学的反応要素、および保存剤からなるグループから選択できるが、これらに限られるわけではない。
【0052】
微細針12を、一列または複数列に配置してもよい。微細針は、寸法および形状が同一でも異なっていてもよく、互いの間隔が均一でも異なっていてもよく、ベースユニット16からの突出角度、または貫入角度が同一でも異なっていてもよく、さらにはこれらの構成を任意に組み合わせてもよい。上述の実施形態では、微細針12のアレイは、4本の微細針からなる円形のアレイとなっている。このアレイの半径は約5mm〜20mmであり、図示の実施形態においては、半径は約12mmである。他の実施形態においては、微細針の円形アレイを2つ以上備えることもできる。さらに別の実施形態においては、微細針を「X行×Y列」のアレイに配置することができ、XとYの数は等しくてもよく、等しくなくてもよい。
【0053】
リザーバ46の剛体部分すなわち殻48は、ステンレス鋼から製作され、その場合、微細針12は、殻48に金属溶接あるいははんだ付けされる。あるいは、殻48を、タイプ1またはタイプ2の高純度ガラスなどのガラス、あるいはポリマーで作ることもできる。フレキシブル膜28および42はそれぞれ、厚さが約20μm〜500μm、好ましくは100μmであり、シリコーン・ゴム等の変形可能な弾性ポリマーやその他の適正なフレキシブル材料から作られる。いくつかの実施において、リザーバ46は、患者に投与するための1種類以上の薬剤で満たされた後に、密封される。
【0054】
図示した実施形態においては、リザーバ46は、薬剤、体液のような物質の充填時の最大厚さが約1mm〜5mm、好ましくは約2mmであり、かつ容積が約100μl〜5mlである、単一のチャンバからなる中空の容器である。
【0055】
装置10において、微細針12はリザーバ46内の薬剤と接触状態にある。ただし、リザーバ46と微細針端部13の開口との間に、半透過膜フィルタまたは弁を設けることができる。フィルタは、物質を清浄にする、すなわちリザーバ46に出入りする物質から特定の要素を取り除くように機能できる。フィルタは、特定要素に結合する結合体を含んでいてもよく、それにより輸送の際にその特定要素を捕獲または捕捉することができる。こ
の結合体は、特異的であってもよく特異的でなくてもよい。弁は、物質の所定量の正確な放出および物質の漏出防止に有効である。弁は、採取した液体が微細針12を通って逆流することがないようにするためにも有効である。いくつかの実施形態では、投与時または採取時に液体が移動できるよう、各微細針14において微小バルブが開かれる。例えば、微小バルブを微細針12に内蔵することができ、あるいはリザーバ46の一部分とすることができる。代案として、例えばリザーバに開口する微細針の端部を非透過性の膜で覆ってもよく、この場合、液体はこの膜を破って移動する。
【0056】
いくつかの実施形態では、リザーバ46を単一の中空チャンバとせず、多孔質の、単一チャンバまたは複数チャンバとすることができ、あるいは両者を任意に組み合わせることもできる。各チャンバは、すべて同じでもよく、または一部のチャンバと異なっていてもよく、互いに異なっていてもよい。例えば、リザーバ46に試薬を収容した第1のチャンバを設け、このチャンバに微細針12を通して液体を吸入してもよい。この第1のチャンバで反応が生じ、この反応の結果が手動または自動で、物質を第2のチャンバから微細針を通して皮膚内に放出してもよい。
【0057】
リザーバ46には、投与しようとする薬物を容易に充填できる。リザーバ46を薬物で前もって満たし、その後投与の前に、リザーバ46を装置10と組み合わせてもよい。充填は、リザーバ46を微細針12と結合する前または後に行うことができる。すでに述べたように、特定成分を含む物質は、リザーバ46内に前もって充填され、投与の前に還元される1つ以上の非液体の薬剤(例えば、脱水させた薬剤)でもよい。いくつかの実施形態では、リザーバ46の組み立てに先立ち、リザーバ46の内側が特定の材料でコーティングされている。コーティングには1つあるいは複数の目的があり、これら目的には(これらに限られるわけではないが)、リザーバ46に出入りする物質が滑らかに移動する、かつ/または物質の液滴が残らないように物質の流れを促進すること、液体中の特定の物質の存在または非存在を検出するための反応体として機能すること、および/または保存剤として機能することが含まれる。
【0058】
輸送装置10が薬の投与に使用されるとき、リザーバ46は、目標とする部位に投与される1つまたは複数の薬を1つまたは複数のチャンバにそれぞれ貯蔵する。リザーバ46は、微細針12の位置と反対側に位置するリザーバ46の開口を通して、所望の薬で満たすことができる。代案として、所望の薬を、微細針12を通してリザーバ46内に吸入することもでき、あるいは所望の薬を、リザーバ46を密封するときにリザーバ46内に入れることもできる。
【0059】
輸送装置10が、患者からサンプルを得るために使用されるとき、リザーバ46は、その1つまたは複数のチャンバに患者から採取した1つまたは複数の生体サンプルをそれぞれ貯蔵する。装置10は、該装置を皮膚から取り外す際にリザーバ46内のサンプルを確実に保持するために1つ以上の部材を備えることができる。これらの部材には、弁やフラップ等がある。
【0060】
図示した実施形態では、装置10を皮膚に固定するために粘着材を利用しているが、他の材料も利用可能であり、例えば、これらに限られるわけではないが、1つ以上の紐、テープ、接着剤、および/または包帯などが利用可能である。制御ユニット14およびベースユニット16の外側ハウジングは、これらに限られるわけではないが、ステンレス鋼およびその他の丈夫な金属、プラスチック、織ったあるいは編んだ強化繊維、ボール紙、木材など、任意の堅固な材料で作ることができる。
【0061】
アクチュエータ24および38は、必ずしも蒸気発生器として動作する必要はない。構成によっては、アクチュエータまたはポンプ38、およびオプションでアクチュエータ2
4は、電気化学的反応、詳細には水(HO)を水素ガス(H)および酸素ガス(O)に変換する水の電気分解によって動作する。この電気分解では、2つの電気化学的反応が生じる。一方は以下に示す陽極で生じる酸化反応であり、
2HO(l)→O(g)+4H(aq)+4e
他方は以下に示す陰極で生じる還元反応である。
2HO(l)+2e→H(g)+OH
電子の数の釣り合いを保つため、陰極での還元反応は陽極での酸化反応の2倍生じなければならない。したがって、陰極での還元反応を2倍して2つの酸化および還元反応を足し合わせると、全体としての反応は、
6HO(l)+4e
→2H(g)+O(g)+4H(aq)+4OH(aq)+4e
となる。HとOHがHOを生成し、さらに等式の両辺に現れる種を相殺すると、全体として正味の反応は、
6HO(l)→2H(g)+O(g)
となる。
【0062】
したがって、4個の電子ごとに3個の分子(Oが1個、Hが2個)が生成される。すなわち、水の電気化学的分解によって生成される気体のモル数は、以下の等式になる。
gc=nge/(eN)=7.784×10−6mol/C
ここで、ngeは、上記反応系に投入された電子1個当たりに生成される気体のモル数、すなわち4分の3(3/4)であり、eは1個の電子の電荷であり、Nはアボガドロ定数である。この変換は、例えば3桁を超える大きな体積変化を引き起こし、この体積変化が、リザーバ46から薬を吐出するために利用される。水の水素および酸素への変換が生じると、体積膨張によってフレキシブル膜42が押されて、リザーバ46から薬および任意の担体あるいはその他の化合物や溶媒が、微細針12を通して放出される。
【0063】
図6には、電気分解反応によって動作する場合のアクチュエータ38が説明のため示されている。アクチュエータ38は剛体殻88を含み、剛体殻88が、フレキシブル・ベローズ89あるいはその他の適正な膨張性材料によって膜42に接続されて、チャンバ44を形成する。チャンバ44は、例えばNaSOまたはNaOHを濃度1Mで含んだ水を、1μl〜1ml収容している。電気分解を開始させるため、チャンバ44内に位置する2つの電極92に、電流が流される。各電極92は、中実でもよく網状でもよい。網状の構成とすれば、分解プロセスを開始させるためのより大きな表面積が得られる。電極は、ステンレス鋼、白金、またはAlfa Aesar社の#40934などの白金/イリジウム製ガーゼ、あるいはその他の適当な材料で作ることができる。
【0064】
図7のグラフを参照すると、アクチュエータ38について、代表的な電圧と電流の関係が示されている。本実施形態においては、動作電流は約0.95Aであり、したがって動作電圧は約3Vである。電気分解プロセスは容易に停止でき、かつ必要に応じて容易に再開でき、このプロセスを繰り返すことによって、チャンバ44の膨張速度、すなわち装置10による薬の投与速度を正確に制御できる。
【0065】
また、アクチュエータ24をアクチュエータ38のように電気分解アクチュエータとすることができる。アクチュエータ24および/または38は、例えばローレンツ力や静電力によるモータなど超小型電気モータとすることができ、あるいは化学的または電気化学的反応、収縮性導電ポリマー、形状記憶合金、あるいは薬品の輸送を促進するための他の適当な機構によって動作することもできる。代案として、あるいはこれに加えて、アクチュエータに、マイクロバルブのような機械的部材や透過性膜のような有機的部材を設けて、輸送速度を制御することができる。さらに、アクチュエータ24および38を、モータ、レバー、ピストン、ソレノイド、磁気アクチュエータ等の他の適当な微小機構とし、フ
レキシブル膜28および42の動きを制御して正確かつ制御された化合物の投与および/または体液の採取を実現できる。
【0066】
いくつかの実施形態においては、リザーバ46の殻48は剛体ではなく、代わりに、低電圧電流を加えることによって(通常は一方向に)収縮するポリピロールなどの導電性ポリマーから形成されている。基本的に、この種の導電性ポリマーは人間の筋肉のように動作する、すなわち長さ方向に収縮する。これらポリマーが生み出す単位面積あたりの力は、約1〜10MPaであり、人間の筋肉のそれよりも10倍程度大きい。これらのポリマーの長さの変化は、約2%程度である。この導電性ポリマーの収縮により、薬剤および任意の担体あるいはその他の化合物や溶媒が、リザーバ46から押し出される。
【0067】
本装置を使用して体液等のサンプルを採取する場合、例えば、導電性ポリマーによるポンプ・システムなどの可逆性アクチュエータを使用して、目標とする部位からリザーバ46へのサンプルの輸送を実現する。例えば、最初に低電圧電流を印加すると、殻48が圧縮されて、リザーバ46が空になる。リザーバ46を収縮した状態にして、装置10を目標とする部位に当てる。次に電圧を遮断すると、ポリマーが収縮状態から膨張する。リザーバ46の膨張によってリザーバ46内に真空が形成されて、体液がリザーバ内に吸引される。
【0068】
別の実施形態では、アクチュエータ24および38は円状に巻かれた形状記憶合金または収縮性ポリマーから形成される。アクチュエータは、ねじ状にねじり形成されて、復元力による直線(垂直)運動を生じさせ、ヒータ40および膨張チャンバ44を押圧することにより、リザーバ46から薬が放出される。アクチュエータは、これらに限られるわけではないが、形状記憶合金、ばね、および超弾性金属など、多くの利用可能な手段のうちの1つによって、元の収縮した状態に戻される。
【0069】
前述の実施形態のいずれも、および状況に応じ利用できるその他の実施形態も、以下に詳細を説明するインピーダンス・センサ52と共に利用することにより、角質層を貫通する際のインピーダンスの低下を検知して、装置10に用いられている、電気分解、化学反応、ポリマー収縮アクチュエータ、または電動モータ等からなるアクチュエータ38のポンプ作用を開始させることができる。
【0070】
特定の実施形態では、装置10に、微細針12を皮膚に案内するため、ある形状に沿って穴あけされたトンネルまたは案内筒が設けられている。
【0071】
いくつかの実施形態においては、輸送装置10は例えば圧電性結晶から作られた振動システム59(図1C)を備えることにより、微細針12の挿入を支援する。振動システムは、独立したシステムとでき、あるいはアクチュエータと一体にでき、さらにはこれらの組み合わせとすることもできる。好ましくは、微細針を貫入動作の方向に約10kHzで振動させる。このような振動システム59を使用することにより、皮膚を貫通するのに必要な力が低減するという効果が見込まれる。
【0072】
前述のとおり、装置10は、角質層の貫通を検出するインピーダンス・センサ52など、いくつかの電気センサを備えている。すなわち、センサ52が、微細針12の所望の挿入が達成されたことを知らせる。角質層内における微細針先端の位置、または角質層を通過した微細針先端の位置を検出することにより、患者に対し所定の薬剤量を完全に、患者の体による吸収が良好である位置に投与することができる。
【0073】
これは、微細針が組織を通過して前進する際に組織のインピーダンスを測定することによって実現される。角質層は高いインピーダンスを生み、角質層より下の組織は比較的低
いインピーダンスを有するため、インピーダンスを監視して微細針が角質層を通過した時を検出する。角質層を通過した時点で挿入を停止して、神経および毛細管を含む皮膚層への貫入を避けることができる。
【0074】
詳細には、図8に示されているように、電極として機能する2本の微細針12によって低電圧回路が形成される。表皮200の乾燥角質層は容量性の障壁として作用するのに対し、表皮下層202は良導電性であるため、微細針が角質層200を貫通するときに回路のインピーダンスが低下する。インピーダンスの変化は1桁以上の大きさであり、微細針が角質層200を貫通したことを確実に通知する。加えて、1Vよりも低い電圧では、被験者が電圧による刺激を感じない。なお、微細針12はベースユニット16と電気的に絶縁されている。ここで使用した回路の回路図の例示用の一実施形態が図8Aに示されており、Zloadは未知のインピーダンスを表している。
【0075】
一例として、豚の皮膚のインピーダンス測定結果が図9に示されている。グラフの上部分204は、微細針が角質層を貫通する前の、一定の周波数範囲における豚の皮膚のインピーダンスの測定結果を示しており、グラフの下部分206は、微細針が角質層を貫通した後の、インピーダンスの測定結果を表している。図から明らかなように、グラフの2つの部分204および206は、角質層貫通前と貫通後におけるインピーダンスの大きさの差が3桁を超えることを示している。図9Aを参照すると、皮膚への貫入の垂直深さに対するインピーダンスの線図が示されており、皮膚への貫入によってインピーダンスがより小さくなることが明瞭に示されている。
【0076】
一定の周波数範囲を走査するかわりに、インピーダンス・センサ52の入力信号を1つの周波数に固定することができる。入力信号は、テキサス州ダラスのTexas Instruments社が製造するTI−MSP430F149IPMなどの内蔵型プロセッサによって生成される方形波とすることができる。この集積回路の特性は、動作時の電流が35μAで、低電力モードにおける電流が1μAよりも小さく、64ピンのPQFPパッケージ、1.8〜3.6Vの供給電圧、8個のADコンバータ、60キロバイトのフラッシュメモリ、2キロバイトのRAM、2個の16ビットのタイマー、および内蔵の比較器を有している。代わりに、TI−MSP430F110IPWのようなプロセッサを使用することもできる。この集積回路は、動作時の電流が35μAで、低電力モードにおける電流が1μAよりも小さく、20ピンのTSSOPパッケージ、1.8〜3.6Vの供給電圧、1キロバイトのフラッシュメモリ、128バイトのRAM、および16ビットのタイマーを備えている。どちらのプロセッサを用いるにしても、これらプロセッサへの出力信号をパルス幅変調することができ、インピーダンス・センサ52に、出力信号をプロセッサのADコンバータの範囲内まで圧縮するための対数変換器を設けることができる。
【0077】
すでに述べたように、特定のいくつかの実施形態では、グルコース・センサ、またはその他の適正なセンサが、輸送装置10に組み合わされる。このような実施形態では、患者からの体液が、微細針12を通してリザーバ46の複数チャンバの内の1つに吸引される。グルコース・センサは、少なくともその一部分がリザーバ46の複数チャンバの内の1つに設けられており、そこで体液中のグルコース濃度を検出することができる。グルコース・センサからの情報は、例えば制御ユニット14の表示器55を利用して装置10の操作者により読み取りおよび解釈され、この操作者が、リザーバ46の他のチャンバを起動して適切な量のインシュリンを投与し、患者のグルコース濃度を適正な値にすることができる。あるいは、この手順を自動化し、グルコース・センサが体液中のグルコース濃度を読み取り、読み取ったグルコース濃度に基づいて電気信号などの信号を他のチャンバに送り、そのチャンバに対して、微細針アレイを通してインシュリンを投与するか否か、またどの程度の量のインシュリンを投与するのかを「指示」することができる。
【0078】
前記した実施形態のいずれにおいても、制御ユニット14内にプログラミング可能なマイクロプロセッサ22など、1つ以上のコントローラを配置し、アクチュエータ、ポンプ、センサ、および振動子を制御して連携動作させることができる。例えば、コントローラ置22がアクチュエータ38に指示を与えて、所定量の薬を患者に、所定時間の時に送達することができる。所定量とは、リザーバ46内に含まれる量の全てであってもよく、一部であってもよい。このように、本装置10により、薬の全量または一部を、特定の時間帯にわたって徐々に注入することができる。1つのコントローラがベースユニット16の動作を制御し、もう1つのコントローラが制御ユニット14の動作を制御してもよい。例えば、制御ユニット14がアプリケータとして機能する場合、制御ユニット14に独立したコントローラを設け、ベースユニット16内に、ベースユニット16の動作を制御するもう1つのコントローラを設けてもよい。あるいは、制御ユニット14とベースユニット16とが1つのユニットとして機能し、その場合、1個のコントローラがこれらのユニットの動作を制御してもよい。このような実施形態では、任意選択のアプリケータを使用して、制御ユニット14およびベースユニット16を患者に取り付けることができ、またこの任意選択のアプリケータに追加のコントローラを備えることもできる。
【0079】
本発明を、本発明の好ましい実施形態を参照して詳細に図示および説明したが、当業者には、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく形態および細部にさまざまな変更が可能であることは理解されるであろう。
【符号の説明】
【0080】
10 経皮的輸送装置
12 微細針
14 制御ユニット
16 ベースユニット
50 カバー
55 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定成分の物質を収容するリザーバと、
前記リザーバに流体連通するボアをそれぞれが有する複数本の針のアレイと、
前記針のアレイを体内に貫入させ、さらに、逆方向に作用して体から針を引き抜く、第1アクチュエータと、
前記針を通して前記リザーバと体との間で物質をポンプ作用で輸送する第2アクチュエータと、
を備えた経皮的輸送装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第2アクチュエータが物質を体内に注入する経皮的輸送装置。
【請求項3】
請求項1において、前記第2アクチュエータが逆方向にも作用する可逆性アクチュエータであり、物質を前記リザーバ内に吸入する経皮的輸送装置。
【請求項4】
請求項3において、前記物質が患者から採取される体液サンプルである経皮的輸送装置。
【請求項5】
請求項1において、前記第1アクチュエータが停止されたとき、前記針のアレイが格納状態に位置している経皮的輸送装置。
【請求項6】
請求項1において、さらに、1つ以上のコントローラを備え、この1つ以上のコントローラが前記第1および第2アクチュエータを制御する経皮的輸送装置。
【請求項7】
請求項1において、前記第1および第2アクチュエータが蒸気発生器を含む経皮的輸送装置。
【請求項8】
請求項1において、前記第1および第2アクチュエータが化学反応によって動作する経皮的輸送装置。
【請求項9】
請求項1において、前記第1および第2アクチュエータが電気化学反応によって動作する経皮的輸送装置。
【請求項10】
請求項1において、さらに、前記針をその長手方向に沿って振動させる振動子を備えることにより、前記針を生体内に貫入するのに必要な力を低減する経皮的輸送装置。
【請求項11】
請求項10において、前記振動子が、前記針の振動を発生させる圧電結晶である経皮的輸送装置。
【請求項12】
請求項1において、さらに、患者の状態を監視するセンサを備えた経皮的輸送装置。
【請求項13】
請求項12において、前記患者の状態が患者のグルコース濃度の状態である経皮的輸送装置。
【請求項14】
請求項13において、前記物質が患者に注入されるインシュリンであり、このインシュリンの量が前記グルコース濃度に基づいている経皮的輸送装置。
【請求項15】
請求項1において、前記第1アクチュエータが制御ユニット内に収容され、前記第2アクチュエータ、リザーバ、および針のアレイがカートリッジに収容され、前記制御ユニットとカートリッジが、接続可能な別個のユニットである経皮的輸送装置。
【請求項16】
特定成分の物質を収容するリザーバと、
前記リザーバに流体連通するボアをそれぞれが有する複数本の針のアレイと、
前記針のアレイを生体内に貫入させ、収縮することにより生体から前記針を引き抜く第1アクチュエータと、
容積が変化することにより、前記リザーバと生体との間で物質をポンプ作用で前記針を通して輸送するチャンバを有する第2アクチュエータと、
を備えた経皮的輸送装置。
【請求項17】
請求項16において、前記第2アクチュエータが物質を生体内に注入する経皮的輸送装置。
【請求項18】
請求項16において、前記第2アクチュエータが逆方向にも作用する可逆性アクチュエータであり、物質を前記リザーバ内に吸入する経皮的輸送装置。
【請求項19】
請求項18において、前記物質が患者から採取される液体サンプルである経皮的輸送装置。
【請求項20】
請求項16において、前記第1アクチュエータが停止されたとき、前記針のアレイが格納状態に位置している経皮的輸送装置。
【請求項21】
請求項16において、さらに、1つ以上のコントローラを備え、この1つ以上のコントローラが前記第1および第2アクチュエータを制御する経皮的輸送装置。
【請求項22】
請求項16において、前記第1および第2アクチュエータが蒸気発生器を備えている経皮的輸送装置。
【請求項23】
請求項16において、前記第1および第2アクチュエータが、化学反応によって動作する経皮的輸送装置。
【請求項24】
請求項16において、前記第1および第2アクチュエータが、電気化学的反応によって動作する経皮的輸送装置。
【請求項25】
請求項16において、さらに、前記針をその長手方向に振動させる振動子を備えることにより、前記針を生体内に貫入させるのに必要な力を低減する経皮的輸送装置。
【請求項26】
請求項25において、前記振動子が前記針の振動を発生させる圧電結晶である経皮的輸送装置。
【請求項27】
請求項16において、さらに、患者の状態を監視するセンサを備えた経皮的輸送装置。
【請求項28】
請求項27において、前記患者の状態が患者のグルコース濃度の状態である経皮的輸送装置。
【請求項29】
請求項28において、前記物質が患者に注入されるインシュリンであり、このインシュリンの量が前記グルコース濃度に基づいている経皮的輸送装置。
【請求項30】
請求項16において、前記第1アクチュエータが制御ユニット内に収容され、前記第2アクチュエータ、リザーバ、および針のアレイがカートリッジに収容され、前記制御ユニットとカートリッジとが、接続可能な別個のユニットである経皮的輸送装置。
【請求項31】
特定成分の物質を収容するリザーバと、
前記リザーバに流体連通するボアをそれぞれが有する複数本の針のアレイと、
前記針のボアを通して前記リザーバと生体との間で前記物質をポンプ作用で輸送する蒸気発生アクチュエータと、
を備えた経皮的輸送装置。
【請求項32】
請求項31において、さらに、前記針のアレイを体内に貫入させる第2アクチュエータを備え、この第2アクチュエータが逆方向に作用して体内から針を引き抜く経皮的輸送装置。
【請求項33】
請求項32において、さらに、前記針をその長手方向に振動させる振動子を備えることにより、前記針を生体内に貫入させるのに必要な力を低減する経皮的輸送装置。
【請求項34】
請求項33において、前記振動子が、前記針の振動を発生させる圧電結晶である経皮的輸送装置。
【請求項35】
請求項32において、前記第2アクチュエータが制御ユニット内に収容され、前記蒸気発生アクチュエータ、リザーバ、および針のアレイがカートリッジに収容され、前記制御ユニットとカートリッジとが接続可能な別個のユニットである経皮的輸送装置。
【請求項36】
請求項32において、前記第2アクチュエータが、第2蒸気発生アクチュエータである経皮的輸送装置。
【請求項37】
請求項31において、前記アクチュエータが逆方向にも作用する可逆性アクチュエータであり、前記物質を前記リザーバ内に吸入する経皮的輸送装置。
【請求項38】
請求項31において、前記物質が患者から採取される体液サンプルである経皮的輸送装置。
【請求項39】
請求項31において、前記第1アクチュエータが停止されたとき、前記針のアレイが格納状態に位置している経皮的輸送装置。
【請求項40】
請求項31において、さらに、コントローラを備え、このコントローラが前記蒸気発生アクチュエータを制御する経皮的輸送装置。
【請求項41】
請求項31において、さらに、患者の状態を監視するためのセンサを備えた経皮的輸送装置。
【請求項42】
請求項41において、前記患者の状態が患者のグルコース濃度の状態である経皮的輸送装置。
【請求項43】
請求項42において、前記物質が患者に注入されるインシュリンであり、このインシュリンの量が前記グルコース濃度に基づいている経皮的輸送装置。
【請求項44】
生体内に注入される特定成分の物質を収容するリザーバと、
前記リザーバに流体連通するボアをそれぞれが有する複数本の針のアレイと、
前記リザーバを生体の方向に移動させて、前記針のアレイを体内に貫入させる第1蒸気発生アクチュエータと、
前記針の長手方向に沿って縦方向の振動を発生させることにより、前記針を体内に貫入さ
せるのに必要な力を低減する圧電性結晶と、
前記針を通して前記リザーバから生体内に物質を注入する第2蒸気発生アクチュエータと、
を備えた経皮的輸送装置。
【請求項45】
リザーバを生体の方向に移動して、前記リザーバに流体連通するボアをそれぞれが有する複数本の針のアレイを生体内に貫入させる手段と、
前記リザーバから前記針を通して生体内に物質を注入する手段と、
を備えた経皮的輸送装置。
【請求項46】
特定成分の物質を輸送する方法であって、
輸送装置を対象物に置き、
前記物質を収容しているリザーバに流体連通して接続されている針のアレイを、第1アクチュエータによって体内に貫入させ、
第2アクチュエータにより、前記針のアレイを通して前記物質を前記リザーバと前記対象物との間で輸送する、各ステップを含む方法。
【請求項47】
請求項46において、前記対象物が生体であり、前記輸送ステップが物質を前記リザーバから生体内に注入することを含む方法。
【請求項48】
請求項46において、前記対象物が生体であり、前記輸送ステップが生体から液体サンプルを吸引することを含む方法。
【請求項49】
請求項46において、前記対象物が薬瓶であり、前記輸送ステップが物質を前記薬瓶から前記リザーバ内に吸入することを含む方法。
【請求項50】
請求項46において、さらに、前記第1および第2アクチュエータを1つ以上のコントローラにより制御することを含む方法。
【請求項51】
請求項46において、さらに、前記針の長手方向に沿って縦振動を発生させることにより、前記針を体内に貫入させるのに必要な力を低減することを含む方法。
【請求項52】
特定成分の物質を輸送する方法であって、
輸送装置を対象物に置き、
第1のアクチュエータのチャンバを膨張させることにより、前記物質を収容しているリザーバに流体連通して接続されている針のアレイを駆動し、
第2のアクチュエータのチャンバの容積を変化させることにより、前記針のアレイを通して前記リザーバと対象物との間で物質を輸送する、各ステップを含む方法。
【請求項53】
請求項52において、前記対象物が生体であり、前記輸送ステップが前記物質を前記リザーバから生体内にポンプ作用で輸送することを含む方法。
【請求項54】
請求項52において、前記対象物が生体であり、前記輸送ステップが生体から体液サンプルを吸引することを含む方法。
【請求項55】
請求項52において、前記対象物が薬瓶であり、前記輸送ステップが前記物質を前記薬瓶から前記リザーバ内に吸入することを含む方法。
【請求項56】
請求項52において、さらに、前記第1および第2アクチュエータをコントローラで制御することを含む方法。
【請求項57】
請求項52において、さらに、前記針の長手方向に沿って縦振動を発生させることにより、前記針を体内に貫入させるのに必要な力を低減することを含む方法。
【請求項58】
特定成分の物質を輸送する方法であって、
輸送装置を対象物に置き、
蒸気発生アクチュエータにより、針のアレイを通して前記対象物と前記物質を収容しているリザーバとの間で前記物質を輸送する、各ステップを含む方法。
【請求項59】
請求項58において、さらに、前記リザーバに流体連通して接続されている針のアレイを、第2アクチュエータにより駆動して対象物内に貫入させることを含む方法。
【請求項60】
請求項59において、前記第2アクチュエータが第2蒸気発生アクチュエータである方法。
【請求項61】
請求項59において、さらに、前記針の長手方向に沿って縦振動を発生させることにより、前記針を対象物内に貫入させるのに必要な力を低減することを含む方法。
【請求項62】
請求項58において、前記対象物が生体であり、前記輸送ステップが物質を前記リザーバから生体内に注入することを含む方法。
【請求項63】
請求項58において、前記対象物が生体であり、前記輸送ステップが生体から体液サンプルを吸引することを含む方法。
【請求項64】
請求項58において、前記対象物が薬瓶であり、前記輸送ステップが物質を前記薬瓶から前記リザーバ内に吸入することを含む方法。
【請求項65】
特定成分の物質を輸送する方法であって、
輸送装置を生体に置き、
第1蒸気発生アクチュエータにより、前記物質を収容しているリザーバを前記生体方向に移動させて、前記リザーバに流体連通して接続されている針のアレイを前記生体内に貫入させ、同時に、前記針の長手方向に沿って縦振動を発生させることにより、前記針を前記生体内に貫入させるのに必要な力を低減し、
第2蒸気発生アクチュエータにより、前記リザーバから前記針のアレイを通して前記生体内に物質を注入する、各ステップを含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図8A】
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【図9】
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【図9A】
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【公開番号】特開2009−219886(P2009−219886A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114989(P2009−114989)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2003−539742(P2003−539742)の分割
【原出願日】平成14年10月18日(2002.10.18)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】