説明

心不整脈を予防するための組成物および方法

本明細書において、対象における心不整脈を治療または予防するための組成物および方法を開示する。本発明は、哺乳動物由来に由来する細胞外基質を利用する。細胞外基質組成物は、コラーゲン足場をさらに含み得る。前記組成物は、抗不整脈剤、高脂血症治療薬、細胞、タンパク質、またはそれらの組み合わせも含むことができる。本発明の方法は、例えば、対象内の心不整脈を治療または予防する方法であって、哺乳動物細胞外基質を含む治療有効量の組成物を、前記対象の心臓組織に投与することを含み、前記方法は、心臓の心膜内の開口にパッチとして小腸粘膜下層を投与することを含まない、方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許出願の相互参照)
本出願は、2009年2月18日に出願された米国特許仮出願第61/153,402号明細書の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
心不整脈は、重大な健康問題を提示する。心不整脈には、心室頻拍、上室頻拍、および心房細動が含まれるが、これらに限定されない。これらの中で、心房細動が最も一般的な心不整脈である。米国単独で、100万人を超える患者が心房細動を患っていると推定されている。心房細動の発生率は、心房細動が加齢とともにより一般的になる傾向があることから、米国および欧州の人口の高齢化傾向に伴って、今後十年にわたり増加することが予測される。
【0003】
心臓手術後の不整脈が、罹患および死亡の主な原因である。不整脈の忍容性は、術前期の同様の不整脈のものより、術後の方が少ない。血行動態の不安定性は、心筋機能障害による可能性が高い。心肺バイパス、術中の伝導系への損傷、代謝および電解質の異常、特に低カリウム血症および低マグネシウム血症が、術後の不整脈の発生の増加の一因となる。交感神経系の緊張亢進を伴う手術のストレス、および強心療法の使用が、追加因子である。遅発性不整脈が、瘢痕に関連する興奮旋回により発生する場合がある。
【0004】
心房細動は、正常洞調律を維持する、および/または心室拍動数を減少させることを目的とする薬物を用いて治療することができる。具体的には、過去の多くの試みは、薬物療法、高周波アブレーション、埋め込み型装置の使用、および関連手法に限定されている。薬物療法がいくつかの不整脈事象を軽減するための一般的な投与法に留まる一方で、全身的作用は、しばしば症状を悪化させることが認識されている。さらに、多くの薬物によって示される催不整脈性の傾向が、多くの状況で死亡率を増加させる場合があると考えられている。心不整脈を治療または予防するためのより有効な方法が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的に従って、本明細書で具体化され、広範に説明されるように、本発明は、対象の心不整脈を治療または予防するための組成物および方法に関する。開示される方法および組成物の付加的な利点は、一部以下の説明において明記され、一部はこの説明から理解されるか、あるいは開示される方法および組成物の実践によって習得され得る。開示される方法および組成物の利点は、添付の特許請求の範囲で具体的に挙げられる要素および組み合わせを用いて、実現および達成される。前述の一般的な説明および後述の発明を実施するための形態はともに、例示的かつ説明的であるに過ぎず、特許請求される本発明を制限するものではないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
開示される方法および組成物は、以下の特定の実施形態およびその中に含まれる実施例の詳細な説明、および以下の説明を参照することにより、より容易に理解することができる。
【0007】
開示される方法および組成物のために使用され得るか、それらと併用して使用され得るか、それらの調製のために使用され得るか、またはそれらの産物である材料、組成物、および成分が開示される。これらおよび他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互関係、群等が開示される際、これらの化合物の様々な個別および集合的な組み合わせおよび順列の具体的な言及が明白に開示されていない場合があるが、それぞれが、本明細書で具体的に企図され、説明されることが理解されよう。例えば、ペプチドが開示および説明され、そのペプチドを含むいくつかの分子に行うことができるいくつかの修飾が説明される場合、ペプチドのあらゆる組み合わせおよび順列、ならびに可能である修飾が、具体的にその逆が示されない限り、具体的に企図される。よって、分子A、B、およびCのクラスが、分子D、E、およびFのクラスと同様に開示され、分子A−Dの組み合わせの例が開示される場合、それぞれが個々に列挙されていないとしても、それぞれが個々および集合的に企図される。よって、この例では、組み合わせA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E、およびC−Fのそれぞれが、A、B、およびC;D、E、およびF;ならびに例示的組み合わせA−Dの開示から、具体的に企図および開示されていると見なされるべきである。同様に、これらのいずれのサブセットまたは組み合わせもまた、具体的に企図および開示される。よって、例えば、A−E、B−F、およびC−Eの小群は、A、B、およびC;D、E、およびF;ならびに例示的組み合わせA−Dの開示から具体的に企図され、開示されていると見なされるべきである。この概念は、開示される組成物を作製および使用する方法におけるステップを含むが、これらに限定されない、本出願の全ての態様に適用する。よって、実施され得る様々な付加的ステップがある場合、これらの付加的ステップのそれぞれが、開示される方法のいずれの特定の実施形態または実施形態の組み合わせとともに実施されてもよく、そのような組み合わせのそれぞれが、具体的に企図され、開示されていると見なされるべきである。
【0008】
当業者は、本明細書に説明される、方法および組成物の特定の実施形態への多くの同等物を認識するか、または単なる日常の実験を使用して確認し得る。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【0009】
開示される方法および組成物は、説明される特定の方法論、手順、および試薬は変化し得るため、これらに限定されないということが理解されよう。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的であるに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を制限するためのものではないということも理解されよう。
【0010】
A.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術的および科学的な用語は、開示される方法および組成物が属する技術分野の当業者に共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明されるものと同様または同等であるいずれの方法および材料も、本方法および組成物の実践または検査において使用され得るが、特に有益な方法、装置、および材料は、説明されるとおりである。本明細書に引用される刊行物および、それらが関連して引用される資料は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。本発明が、先行発明を理由としてそのような開示に先行する権利を有しないことの承認と解釈されるべきではない。いかなる参照文献も先行技術を構成することを承認するものではない。参照文献の説明は、それらの著作権が主張することを述べ、出願者は、引用文書の正確性および適切性に挑戦する権利を留保する。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明白に定めない限り、複数形の指示対象を含むということに留意しなければならない。よって、例えば、「化合物(a compound)」への言及は、複数のそのような化合物を含み、「化合物(the compound)」への言及は、1つ以上の化合物および当業者に既知のその同等物を指す等である。
【0012】
「任意の」または「任意で」は、続いて説明される事象、状況、または材料が、発生または存在し得るかどうかを意味し、その説明は、事象、状況、または材料が、発生または存在する事例、および発生または存在しない事例を含む。
【0013】
範囲は、本明細書で、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表現され得る。そのような範囲が表現される際、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。類似して、先行詞「約」を使用して、値が概算として表現される際、特定の値は、別の実施形態を形成するということが理解されよう。各範囲の端点は他の端点に関連しており、および他の端点とは独立している、という両方の点において重要であるということがさらに理解されよう。いくつかの値が本明細書に開示され、それぞれの値もまたそれ自体の値に加えて、「約」その特定の値として本明細書に開示される。例えば、値「10」が開示される場合、ひいては「約10」も開示される。当業者により適切に理解されるように、値が、その値「未満であるか、または等しい」、と開示される際、「その値より大きいか、または等しい」、および値間の、可能性のある範囲もまた開示される、ということもまた理解されよう。例えば、値「10」が開示される場合、ひいては「10未満または10に等しい」、ならびに「10より大きいか、または10に等しい」もまた開示される。出願の全体にわたって、データはいくつかの異なる形式で提供され、これらのデータは、端点および始点、およびデータ点のいずれの組み合わせへの範囲を表す、ということも理解されよう。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示される場合、10および15より大きい、より大きいかもしくは等しい、それ未満であるか、未満であるかもしくは等しい、または等しい数、ならびに10と15の間の数が開示されると考えられる、ということが理解されよう。2つの特定の単位間のそれぞれの単位もまた開示される、ということも理解されよう。例えば、10および15が開示される場合、ひいては、11、12、13、および14もまた開示される。
【0014】
本明細書の説明および請求項の全体にわたって、単語「含む(comprise)」および、「含む(comprising)」および「含む(comprises)」等のその単語の変化したものは、「含むが、これらに限定されない」ということを意味し、例えば、他の添加物、成分、整数、またはステップを除外するためのものではない。
【0015】
本出願の全体にわたって、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本出願が関連する最新技術をより完全に説明するために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。開示される参照文献はまた、参照文献に依存する文章内で説明されるものに含有される資料について、参照により個別かつ具体的に本明細書に組み込まれる。
【0016】
B.方法
本明細書において、対象内の心不整脈を治療または予防するための方法を開示する。方法は、哺乳動物細胞外基質(ECM)を含む、治療有効量の組成物を対象の心臓組織へ投与することを含み得る。
【0017】
いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、天然由来に基づく。いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳動物の細胞を使用して、in vitroで産生される。いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳動物の組織/臓器から直接的に抽出される。いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、合成ECMをさらに含む。
【0018】
いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、瘢痕形成を抑制する。いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、損傷した組織の再生を促す。いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、炎症を抑制する。
【0019】
「治療」は、疾患、病状、または疾病を治癒、改善、安定、または予防するための患者の医学的管理を意味する。上記用語は、積極的処置、すなわち、疾患、病状、または疾病の改善に向けて具体的に行われる治療を含み、また原因治療、すなわち、関連する疾患、病状、または疾病の原因の除去に向けて行われる治療も含む。加えて、用語は、待機的治療、すなわち、疾患、病状、または疾病の治癒よりむしろ症状の軽減のために考案される治療、予防的治療、すなわち、関連する疾患、病状、または疾病の発症を最小限にするか、または部分的もしくは完全に抑制する治療、および補助的治療、すなわち、関連する疾患、病状、または疾病の改善に向けた別の特定の療法を補うために用いられる治療を含む。
【0020】
「予防する」または「予防すること」は、疾患または状態の頻度または重症度を軽減することを意味する。用語は、疾患または状態の絶対的な除外を必要としない。むしろ、用語は、疾患発生の機会を減少させることを含む。よって、哺乳動物ECMを含む治療有効量の組成物を、対象の心臓組織へ投与することを含む、対象内の心不整脈の発生および/または重症度を軽減する方法が開示される。
【0021】
用語「治療上有効な」は、疾患または疾病の1つ以上の原因、症状、または後遺症を改善するために十分な分量で使用される組成物の量を意味する。そのような改善は、軽減または変化のみを必要とし、必ずしも疾患または疾病の原因、症状、または後遺症の除去を必要としない。
【0022】
本明細書で使用される、用語「心臓組織」は、心臓の心筋、心外膜、心内膜、および心嚢を含む。本明細書で使用される用語はまた、心臓へ流れ込むか、または心臓から流れ出る大血管を指す。本明細書で使用される用語はまた心臓に分布する迷走神経の一部を指す。
【0023】
よって、いくつかの態様において、方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を対象内の心臓へ投与することを含む。いくつかの態様において、方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を、対象の心筋へ投与することを含む。心筋は心室心筋であり得る。心筋は、心房心筋であり得る。いくつかの態様において、方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を対象の心外膜へ投与することを含む。いくつかの態様において、方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を対象の心内膜へ投与することを含む。いくつかの態様において、方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を対象の心嚢へ投与することを含む。
【0024】
いくつかの態様において、方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を対象の大血管へ投与することを含む。いくつかの態様において、血管は、対象の上大静脈、下大静脈、肺静脈、肺動脈、または大動脈である。例えば、方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を1つ以上の大血管の外膜(外側部分)へ投与することを含み得る。いくつかの態様において、方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を心血行へ投与することを含む。よって、方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を血管または心腔内へ投与することを含む。
【0025】
心臓の副交感神経支配は、迷走神経によって仲介される。右迷走神経は、洞房(SA)結節に分布する。副交感神経の過刺激は、これらの罹患部を徐脈性不整脈にかかりやすくする。左迷走神経は、過刺激を受ける際、心臓を房室(AV)ブロックにかかりやすくする。よって、いくつかの態様において、方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を、心臓に分布する対象の迷走神経の一部に投与することを含む。
【0026】
本明細書で使用される、用語「対象」は、投与の対象である、任意の固体を意味する。対象は、例えば、哺乳動物等の脊椎動物であり得る。よって、対象はヒトであり得る。用語は、特定の年齢または性別を示さない。よって、成体および新生児、ならびに胎児は、男性か女性かに関わらず、網羅されることが意図されている。患者は、疾患または疾病に苦しむ対象を指す。用語「患者」は、ヒトおよび家畜対象を含む。本明細書で使用される、用語「患者」および「対象」は、交互に使用され得る。
【0027】
いくつかの態様において、開示される方法の対象は、心不整脈を発症する危険性があるとして特定されている。いくつかの態様において、開示される方法の対象は、心臓切開手術を含むが、これらに限定されない心臓手術を受けたことがある。いくつかの態様において、開示される方法の対象は、心臓開口処置を含むが、これらに限定されない、多数の組み合わせの心臓処置を受けたことがある。いくつかの態様において、開示される方法の対象は、心臓弁手術を受けたことがある。いくつかの態様において、開示される方法の対象は、少なくとも、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、または85歳である。いくつかの態様において、組成物は、心筋梗塞を起こしたことがある対象へ投与される。いくつかの態様において、開示される方法の対象は、肺気腫または慢性閉塞性肺疾患を有する。いくつかの態様において、開示される方法の対象は、不整脈の病歴を有する。
【0028】
いくつかの態様において、開示される方法は、小腸粘膜下層(SIS)を含むパッチを心臓の心膜内の開口へ投与することを含まない。いくつかの態様において、開示される方法は、小腸粘膜下層(SIS)を含むパッチを心臓の心膜内の開口へ投与することからならない。いくつかの態様において哺乳動物ECMは、SISではない。よって、いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、SISからならない。いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、パッチではない。いくつかの態様において、開示される方法は、哺乳動物ECMを含む組成物を心臓の心膜内の開口へのパッチとして投与することを含まない。いくつかの態様において、関する開示される方法の心臓組織は、心嚢ではない。いくつかの態様において、開示される方法は、成分を心嚢へ投与することを含まない。
【0029】
しかしながら、他の態様において、開示される方法は、小腸粘膜下層(SIS)を含むパッチを心臓の心膜内の開口へ投与することを含む。開示される方法で使用される組成物は、抗不整脈薬等の付加的な薬剤、または非天然細胞を含み得る。他の態様において、開示される方法は、小腸粘膜下層(SIS)を含むパッチを心臓の心膜内の開口に投与することを含むが、本方法は、付加的なステップをさらに含む。
【0030】
また本明細書で、哺乳動物細胞外基質を含み、梗塞抗不整脈薬、高脂血症治療薬、細胞、タンパク質、またはその組み合わせをさらに含む、治療有効量の組成物を対象の心臓組織へ投与することを含む、対象内の心不整脈を治療または予防する方法を開示する。
【0031】
1.心不整脈
心不整脈(リズム障害としても言及される)は、心臓内に異常な電気活動を有する状態の任意の広範囲で、異質な群に関する用語である。心拍(脈拍)は、速すぎるか、または遅すぎたり、規則的または不規則である可能性がある。
【0032】
いくつかの不整脈は、心停止および突然死をもたらし得る、生命を脅かす医学的緊急事態である。その他は、心拍の異常認識(動悸)等の症状を引き起こし、単に煩わしいだけの可能性がある。また、いずれの症状を全く伴わない可能性があるが、潜在的に生命を脅かす可能性のある発作または塞栓を生じやすくする可能性がある。
【0033】
用語、洞性不整脈は、息を吸って吐くことに伴って発生する心拍の軽度の加速および減速の正常現象を指す。これは通常、小児で非常に明白であり、年齢とともに着実に減る。これはまた、深く息を吸い込み、息を止める様式を伴う、瞑想呼吸運動中で提示され得る。
【0034】
心拍のそれぞれは、洞性結節または洞房(SA)結節と呼ばれる、心臓の右房内の組織の小域からの電気刺激として始まる。刺激は、最初に両心房に収縮を引き起こし、次に、通常心房と心室間の唯一の電気的接続である、房室(またはAV)結節または、主なポンプ室を活性化する。刺激は次に、心筋の同期収縮を引き起こしながら、ヒスチジンプルキンエ繊維を通じて、両心室を通して広がる。
【0035】
一分あたりの心拍が60拍未満であれば除脈である。これは、洞性結節からの減速した信号(洞性除脈と称される)、洞性結節の正常活動の一時停止(洞停止と称される)、または心房から心室への途中の電気的刺激をブロックすること(AVブロック、心臓ブロック)によって、引き起こされ得る。心臓ブロックは、様々な度合いおよび重症度がある。それは、AV結節の可逆性の毒作用(伝導を障害する薬物の)、または結節への不可逆性の損傷によって引き起こされ得る。
【0036】
1分あたりの心拍が100拍より速ければ、頻脈である。頻脈は、動悸をもたらし得る。しかしながら、頻脈は必ずしも不整脈というわけではない。心拍の増加は、肉体的運動または感情的ストレスに対する一般的な反応である。これは、洞性結節への交感神経系の影響によって仲介され、洞性頻脈と呼ばれる。心臓内の交感神経系を増加させる他の事物は、カフェインまたはアンフェタミンおよび甲状腺機能亢進(甲状腺中毒症)等の、物質の摂取または注射である。心拍は、交感神経興奮様薬で増加させ得る。
【0037】
洞性頻脈ではない頻脈は、自動能、興奮旋回、または誘発活動の、通常3つの内の1つの機序によって開始され得る、異常刺激の付加に起因する。
【0038】
自動能は、自然に刺激を放つ心筋細胞を指す。心臓内の全細胞は、活動電位を惹起する能力を有する。しかしながら、これらの細胞の内いくつかだけが、定期的に心拍を誘発するように設計される。これらの細胞は心臓の伝導系で見られ、SA結節、AV結節、ヒス束、およびプルキンエ繊維を含む。SA結節は、心臓の残りの部分よりも高い自動能を有する(より速いペースメーカー)、心房内の単一の特殊な箇所であり、故に、通常、心拍を整え、それぞれの心拍を惹起することに関与する。SA結節を待つことなく刺激を惹起する任意の心臓の部分は変位点と呼ばれ、定義により、病理学的現象である。これは、単期外収縮を時々引き起こし得る、あるいはSA結節より多く変位点を放つ場合、持続的な異常なリズムを産生し得る。自動能を増加させる状態は、交感神経系刺激および低酸素症を含む。生じる心臓リズムは、最初の信号が開始される地点次第である。それがSA結節である場合、リズムは、急速であるが正常に留まり、変位点である場合、様々なタイプの不整脈が起こり得る。
【0039】
興奮旋回の不整脈は、電気的刺激が、心臓の一端から他端へ移動後、停止するのではなく、心臓内の密接な環内を反回性に伝わる際に発生する。あらゆる心臓細胞は、あらゆる方向に刺激を伝えることが可能であるが、伝えることが可能であるのは、短時間に一度である。通常、活動電位の刺激は、迅速に心臓を通して広がるので、細胞のそれぞれが、1度だけ反応すれば十分である。しかしながら、いくつかの領域で伝導が異常に遅い場合、刺激の一部は、遅れて到着し、新しい刺激として扱われる可能性がある。タイミング次第で、これは持続的な異常巡回リズムを産生し得る。興奮旋回の巡回は、心房粗動、ほとんどの発作性上室頻拍、および危険な心室頻脈に関与する。心臓の全室が多数の極小の興奮旋回巡回に関わり、故に混乱した電気的に刺激に小刻みに震える際、細動中であると言われる。
【0040】
細動は、心房(心房細動)または心室(心室細動)に影響し得る。治療しないまま残した場合、心室細動(VF、またはV‐fib)は、数分以内に死に至る可能性がある。
【0041】
誘発した拍動は、個々の心臓細胞内のイオンチャネルのレベルでの問題が、電気的活動の異常伝搬をもたらし、持続的な異常リズムへ導き得る際に、発生する。誘発した拍動は、比較的まれではあるが、梗塞抗不整脈薬の作用に起因し得る。
【0042】
不整脈は速度(正常、頻脈、除脈)、または機序(自動能、興奮旋回、細動)によって分類され得る。
【0043】
由来の部位によって不整脈を分類することもまた適切である。例えば、心房の不整脈は、心房期外収縮(PAC)、遊走性心房ペースメーカー、多源性心房頻脈、心房粗動、および心房細動(Afib)を含む。接合性不整脈は、上室頻脈(SVT)、AV結節リエントリー性頻脈(発作性上室頻脈(PSVT)の最も一般的な原因)、接合性リズム、接合性頻脈、および房室結節性期外収縮を含む。房室不整脈は、AVリエントリー性頻脈(AV結節以外の心房と心室間のどこかを興奮旋回の巡回が横断する際に発生する)を含む。
【0044】
心室の不整脈は、心室性期外収縮(PVC)(時に心室期外収縮(VEB)と呼ばれる)、促進型心室固有リズム、単源性心室頻脈、多源性心室頻脈、および心室細動を含む。
【0045】
心臓ブロック(AVブロックとしても知られ、除脈の最も一般的な原因)は、第1度心臓ブロック(体表面ECGのPR間隔の長さが200msより大きい)、第2度心臓ブロック(1型および2型)、および第3度心臓ブロック(完全心臓ブロックとしても知られる)を含む。
【0046】
心不整脈は、しばしば聴診器を用いた心拍の聴診、または末梢脈拍に触れることによって最初に検出される。これらの方法は、通常特定の不整脈を診断することはできないが、心拍の一般的な兆候、および規則的か不規則であるかを知らせ得る。心臓の電気的刺激の全てが、聞き取れる拍動または触診可能な拍動というわけではない。多くの心不整脈において、期外収縮または異常な拍動は、有効なポンプ作用を産生せず、「スキップ」拍動として経験される。
【0047】
心拍リズムの判断のための最も単純な特定診断検査は、心電図である(EGGまたはEKGと省略される)。ホルターモニターは、一日の全体を通して一時的および予知不能に起こり得る不整脈を検出するために、24時間にわたって記録されるEKGである。
【0048】
突発性不整脈死症候群(SADS)は、不整脈によってもたらされる心停止による突然死を説明するために使用される用語である。しばしば、対象は、突然死する前に症状がない。米国での最も一般的な突然死の原因は、冠動脈疾患である。米国では約300,000人が、毎年この原因により突然死する。SADSは、例えば、若年に発症し得る多くの遺伝性疾患および心臓疾患によっても引き起こされ得る。
【0049】
小児においては、例えば、ウイルス性心筋炎、QT延長症候群、ブルガダ症候群、カテコールアミン誘発性多形性心室頻脈、および肥大型心筋症、ならびに不整脈源性右室異形成症心室は、SADSを引き起こし得る。
【0050】
いくつかの態様において、心不整脈は、心房細動または心室細動である。
【0051】
2.投与
いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、シート、プラグ、薄板、織物、ポリマーマトリクス、複数のより糸、または1つ以上の細長い切れ等のような形態である。よって、いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、心臓手術中に、対象の心臓組織に直接接触して設置される。いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、心臓の心膜内の開口へ投与される。いくつかの態様において、組成物は心膜内の開口に重なり合う。よって、哺乳動物ECMを含む成分は、心臓手術中または後に、心嚢の外科的開口へ投与され得る。別の態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、例えば、大動脈、肺動脈、肺静脈、上大静脈、および下大静脈の大血管等の心内構造物に接触して設置され得る。
【0052】
哺乳動物ECMは、シート、プラグ、薄板、織物、ポリマーマトリクス、複数のより糸、または1つ以上の細長い切れ等の固形形態であって、組成物は、当業者に可能な標準の手段を用いて心臓組織に付着し得る。例えば、哺乳動物ECMを含む組成物は、縫合物や、フィブリン接着剤、ステープル等の生体接着物で心臓組織に付着され得る。
【0053】
開示される複合物および哺乳動物ECMを含む化合物は、いずれの好適な様式で投与され得る。例えば、組成物は、非経口(例えば、筋肉内注射)、局所的等で投与され得る。よって、いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、注射可能である。開示される組成物は、普通の手段を使用して、心臓組織内へ注射され得る。例えば、哺乳動物ECMを含む組成物は、注射器または心臓もしくは冠動脈カテーテルを通じて、心臓組織へ送達され得る。心臓カテーテル(heart cath)は、心臓の心室または血管へのカテーテルの挿入である。これは、診断的および/または介入目的の双方のためになされ得る。冠動脈カテーテルは、冠動脈のカテーテルを使用する、本技術のサブセットである。
【0054】
よって、いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、心臓の心筋内へ注射され得る。いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、心臓の心外膜へ注射され得る。いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、心臓の心内膜へ注射され得る。いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、心臓の心嚢へ注射され得る。いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、例えば、心嚢と心外膜との間、心外膜と心筋との間、および心筋と心内膜との間等の、心臓の層間へ注射され得る。
【0055】
いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、対象の心房または心室中隔へ投与され得る。例えば、いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、心室中隔欠損へ投与され得る。心室中隔欠損(VSD)は、心臓の左心室と右心室を分ける壁である、心室中隔内の欠損である。心室中隔は、下側の筋肉および上膜部分からなり、伝導性心筋細胞で広範囲に分布される。房室結節に近接する膜部分は、最も一般的には、成人および年長児に発症する。先天性VSDは、統合的に最も一般的な先天性心臓欠損である。
【0056】
いくつかの態様において、哺乳動物ECMを含む組成物は、心房中隔欠損(ASD)へ投与され得る。ASDは先天性心臓欠損の形態であり、心房中隔を通じて、左心房と右心房との間に血液が流れることを可能にする。心房中隔は、右心房と左心房を分ける組織である。中隔なしで、または中核に欠損がある場合、血液は心臓の左側から心臓の右側へ、または逆もまた同様に、移動することが可能である。(1)双方向心房間交通に関係なく、これは動脈および静脈血の混合をもたらす。動脈および静脈血の混合は、血行動態的に重要であるかまたは重要でない可能性があり、臨床的にも重要である可能性がある。血液の混合は、「シャント」として知られるものをもたらすか、もたらさない可能性がある。存在するシャント量は(もしあれば)、血行動態的重要性を定める(下記の病態生理学を見られたい)。「右から左へのシャント」は、典型的により危険な状況をもたらす(下記の病態生理学を見られたい)。
【0057】
哺乳動物ECMは、エアロゾル形態であり得る。よって、いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、対象の心臓組織に噴霧され得る。
【0058】
哺乳動物ECMは、微粒子形態であり得る。微粒子の哺乳動物ECMは、乳化した組成物の注射、乾燥微粒子、液体組成物、または半固体組成物の噴霧、積層、包装、散粉、塗装、もしくは他の同様の型を塗布することによって投与され得る。
【0059】
いくつかの態様において、組成物は、心臓の心外膜の表面へ投与される。よって、いくつかの態様において、組成物は、心臓の心外膜の表面へ、注射されるか、噴射されるか、または付着される。
【0060】
必要とされる組成物の正確な量は、種、年齢、体重、および対象の一般的な状態、治療される疾病の重症度次第で、対象毎に変化し得る。よって、あらゆる成分の正確な量を特定することは不可能である。しかしながら、適切な量は、本明細書に指導を与えられる定期的な実験を使用して、当業者に決定され得るであろう。よって、有効な投与量および組成物を投与するためのスケジュールは、実験的に決定され得、そのような決定をすることは当技術分野の範疇内である。組成物の投与のための投与量の範囲は、症状または疾病に影響する、所望の効果を産生するために十分多い量である。投与量は、不要な交差反応、アナフィラキシー反応等の有害な副作用を引き起こすほど大量であるべきではない。一般的に、投与量は、患者の年齢、状態、性別、および疾患の広がり、投与の経路、または他の薬物が投与計画に含まれるかどうかで変化し得、当業者によって決定され得る。投与量は変化し得、1日または数日間、毎日1回以上の用量投与で投与され得る。手引きは、与えられる分類の薬学的産物の適切な投与量に関する文献で見つけられ得る。
【0061】
以下は、心不整脈を治療、抑制、または予防するために開示される組成物の投与であり、方法の有効性は、当業者に既知の様々な方法で評価され得る。例えば、本明細書に開示される組成物は、心電図を使用して、対象内の心不整脈を治療することに効果があるということが当業者に理解されよう。
【0062】
本明細書に開示される組成物は、心不整脈の危険性のある対象へ予防的に投与され得る。開示される組成物および方法もまた、心不整脈を治療または予防するための新薬物の候補を単離し検査するための道具として、使用され得る。開示される組成物は、研究の道具として、様々な方法で使用され得る。他の使用は、開示され、開示物から明らかであり、および/または当業者によって理解されよう。
【0063】
3.組み合わせ療法
本明細書に開示される方法は、従来の抗不整脈療法で対象を治療することをさらに含み得る。例えば、作用の異なる機序で抗不整脈薬には多くの分類があり、これらの分類内に多くの異なる個々の薬物が存在する。よって、方法は、1つ以上の抗不整脈薬を対象に投与することをさらに含み得る。
【0064】
例えば、心房細動等のいくつかの不整脈は、心臓内で、血液凝固を引き起こし、塞栓および発作の危険性を増加させる。ワルファリンならびにヘパリン等の抗凝血薬およびアスピリン等の抗血小板薬物は、凝固の危険性を軽減させ得る。よって、方法は対象へ抗凝血薬を投与することをさらに含み得る。
【0065】
不整脈は、胸壁に対して外部から、または埋め込み電極を通じて、もしくは術中に、心臓に対して内からのいずれかの方法で、心臓全体にショックを加えることによって、電気的に治療することができる。電気的除細動は、薬理学的にか、または基礎心拍へ同期したショックを適用するかのいずれかの方法で達成され得る。それは、上室頻拍の治療に使用される。選択電気的除細動において、患者は、通常、処置のため落ち着かせられるか、または軽く麻酔される。例えば、心房粗動は、電気的除細動によって治療され得る。よって、方法は、電気的除細動で対象を治療することをさらに含み得る。
【0066】
同期した電気的除細動では、反転ショックは、ECG上でQRS群のR波に対応する心周期における最適の瞬間に、選択した量の電流を所定の数ミリ秒以上パッドまたはパドルによって送達する。R波へのショックのタイミングを図ることは、心室細動を誘発し得る心周期の受攻期(または関連する不応期)中のショックの送達を予防する。
【0067】
ショックが心周期に同期しないという点で、除細動は、電気的除細動と異なる。それは、心室細動の混乱したリズムに対して必要とされ、無脈性心室頻脈にも使用される。しばしば、より多くの電気が電気的除細動よりも除細動に必要とされる。心室細動を有するほとんどの対象は、意識がないため、一般的に鎮静剤を使用する必要性はない。よって、方法は、除細動を有する対象を治療することをさらに含み得る。
【0068】
除細動または電気的除細動は、埋め込み型除細動器(ICD)によって遂行され得、方法は、対象にICDを投与することをさらに含み得る。
【0069】
不整脈の電気的治療は、心臓ペーシングもまた含む。一時的なペーシングは、非常に遅い心拍または除脈の可逆性の原因(例えば、薬物過剰摂取または心筋梗塞)のために必要であり得る。永久ペースメーカーは、除脈が回復する見込みがない状況で、設置され得る。よって、方法は、対象にペースメーカーを投与することをさらに含み得る。
【0070】
微細なプローブは、いくつかの態様において心臓内からの電気的活動を明確に描くために血管を通して挿入され得る。これは、伝導の異常領域が、非常に的確に特定された後、加熱、冷却、電気またはレーザーで破壊されることを可能にする。
【0071】
C.組成物
哺乳動物ECMのパッチは、体が、心臓組織を構築し、復活するために必要な細胞を回復する間、機械的足場として作用することが示されている。本明細書で、心不整脈を付加的に治療する、および/または予防するための哺乳動物ECMの驚くべき能力を開示する。よって、本明細書に、対象内の心不整脈を治療または予防するための、開示される方法に使用するための哺乳動物ECMを含む組成物を開示する。開示される組成物は、天然または合成であり得る。組成物は、脱細胞化し得るか、幹細胞等の細胞を含み得る。
【0072】
本明細書に開示される、哺乳動物ECMを含む組成物は、例えば、パッチ、エマルション、注射可能な溶液、ゲル、液体、ペースト、粉末、より糸、細長い切れ、スプレー、蒸気、エアロゾル、クリーム、またはコーティングの形態であり得る。組成物は、例えば、細胞、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または他の生物学的部位を含む、1つ以上の付加的な成分をさらに含み得る。組成物がパッチの場合、それは、シート、薄板、織物、重合体マトリクス、複数のより糸、1つ以上の細長い切れ、またはその組み合わせから選択される形態であり得る。
【0073】
本明細書に開示される、哺乳動物ECMを含む組成物は、Badylakの米国特許出願第5,275,826号、Spievackの米国特許出願第6,579,538号、Griffeyの米国特許出願第6,933,326号で説明されるように、微粒子にされ、流動化され得る。流動化または乳化した組成物(液体または半固体形態)は、一定の濃度、例えば、0.001mg/mLより大きい細胞外基質の濃度で存在し得る。細胞外基質の組成物のこれらの液体または半固体成分の濃度は、約0.001〜約200mg/mLの範囲内であり得る。濃度は、例えば、以下の一連の範囲等のより具体的な範囲でさらに見られる。約5〜約150mg/mL、約10〜約125mg/mL、約25〜約100mg/mL、約20〜約75mg/mL、約25〜約60mg/mL、約30〜約50mg/mL、および約35〜約45mg/mL、ならびに約40〜約42mg/mL。一連の範囲は、例示的であり、網羅的ではない。これらのいずれの具体的に挙げられた範囲内のいずれの値は、妥当であり、液体、エマルション、ゲル、ペースト、または他の液体もしくは組成物の半固体成分の濃度に有益な値であるということが企図される。
【0074】
1.哺乳動物細胞外基質
細胞外基質材料は、体内で軟組織を復活させるための天然足場として作用する。動物試験は、本来の細胞外基質の材料が、再構築し、宿主組織によって置換されるということを示している。哺乳動物ECMは、血管、膀胱、硬膜、腹壁、腱、および靱帯を含む、様々な動物組織の建設的な再構築を誘発する、異種間の組織移植片として、成功的に使用されている吸収性の生体材料である。哺乳動物ECMの例は、小腸粘膜下層(SIS)、膀胱粘膜下層(UBS)、胃粘膜下層(SS)、および肝臓粘膜下層(LS)、または肝臓基底膜(LBM)を含む。
【0075】
再構築の過程は、急速血管新生、および新細胞外基質の広範な沈着を支持する間葉系および上皮系細胞の豊富な蓄積を含む。例えば、SIS細胞外基質の非コラーゲン性の部分は、ヒアルロン酸、ヘパリン、デルマタン、およびコンドロイチン硫酸A、ならびにFGF‐2ならびにTGF‐β増殖因子等の様々な糖タンパク質で構成される。
【0076】
上記過程後、哺乳動物ECMは、増殖および分化因子として作用する、多くの内在性タンパク質を保持し得る。これらの因子は、哺乳動物ECMが置換する本来の組織へ分化することが可能である細胞を備える哺乳動物ECMを定植するための局所環境を刺激する。
【0077】
哺乳動物ECMは、コラーゲン、糖タンパク質、およびプロテオグリカン(全体にわたって反復するグリコサミノグリカンを有する)の3つの群に当てはまる重合した「構造」タンパク質の足場マトリクスである。これらの分子は、実際に、細胞との動的相互作用で存在し、機能タンパク質に近接して設置される(細胞上か、構造タンパク質への結合のいずれか一方で)タンパク質の足場またはマトリクスを形成するために重合する。よって、哺乳動物ECMはまた、構造タンパク質、および幹細胞等の転位または回復細胞に相互に作用するマトリクス足場「機能」タンパク質内にも含む。マトリクス機能タンパク質はまた、マトリクス足場自体の生存および維持中のその構成要素を再建し、維持する際に、タンパク質発現細胞に相互に関係する。いくつかのタンパク質は、タンパク質の構造および全体のマトリクス内での配置次第で、構造および機能タンパク質の双方であり得る。
【0078】
例えば、心臓組織のECMは、コラーゲンI型(優性)、III型、IV型、V型、およびVI型から作製され、マトリクスの乾燥重量の92%を占めるように組み合わせられる。心臓組織のECMはまた、コンドロイチン硫酸AならびにB、ヘパラン、ヘパリン、およびヒアルロン酸を含む、グリコサミノグリカン(GAG)からも作製される。フィブロネクチンならびにエンタクチン等の糖タンパク質、デコリンならびにパールカン等のプロテオグリカン、および形質転換増殖因子ベータ(TGF‐β)、線維芽細胞増殖因子‐2(FGF‐2)、ならびに血管内皮増殖因子(VEGF)等の増殖因子は、心筋再生マトリクスの活動において、中心的存在である。さらに、マトリクスの精密な化学構成は、例えば、マトリクス内で何型のコラーゲンが蔓延しているのかを含むその機能において、役割を果たすように見える。よって、いずれの組織再生過程の結果は、再生の過程の基礎を形成するマトリクス足場の構造および機能的構成要素によって決定され得る。
【0079】
ECM内の細胞接着機能を促進するのは、細胞接着分子(CAM)である。CAMは、内因的に利用可能であるか、または組成物の付加的な構成要素として加えられるかのいずれか一方である。CAMは、細胞膜の表面にとどまる糖タンパク質、または細胞の細胞骨格構成要素に結びつく膜通型である。特定のCAMは、カルシウム依存性である、カドヘリンを含み、30個以上の型が知られている。またCAMが、インテグリンタンパク質上のアルファおよびベータ膜通型サブユニットを通して、細胞外基質または他の細胞へとどめられる、細胞の細胞骨格に結合するタンパク質である、インテグリンである際にも働く。細胞転位、胚形成、止血、および創傷治癒は、マトリクス内でインテグリンによって促進される。シンデカンは、細胞運動および分化を惹起するためにリガンドに結合するプロテオグリカンである。免疫グロブリンは、いずれの必要な免疫性および炎症性反応を提供する。セレクチンは、細胞と細胞の相互作用を促す。
【0080】
i.天然由来および調製
いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、天然由来に基づく。天然の細胞外基質足場およびそれらを形成するタンパク質は、それらの自然な環境で発見され得る、すなわち哺乳類の細胞外マトリクスである。これらの材料は、組織移植片の処置で哺乳類における使用のために調製され得る。
【0081】
いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳動物の組織/臓器から抽出される。例えば、いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳類の組織由来の基底膜(または、移行上皮層)、外膜固有層、外膜粘膜下層、外膜筋層、外膜漿膜、またはその組み合わせを含む。よって、いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳動物の組織由来の基底膜(または、移行上皮層)を含む。いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳動物の組織由来の下外膜固有層を含む。いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳動物の組織由来の外膜粘膜下層を含む。いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳動物の組織由来の外膜筋層を含む。いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳動物の組織由来の外膜漿膜を含む。
【0082】
例えば、小腸粘膜下層(SIS)は、米国特許出願第5,275,826号、膀胱粘膜下層(UBS)は、米国特許出願第5,554,389号、胃粘膜下層(SS)は、米国特許出願第6,099,567号、および肝臓粘膜下層(LS)、または肝臓基底膜(LBM)は、米国特許出願第6,379,710号に説明され、これらの天然の細胞外マトリクスの作製および使用方法の指導のために、参照によりそれぞれは本明細書に組み込まれる。
【0083】
よって、いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、小腸粘膜下層(SIS)である。いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、膀胱粘膜下層(UBS)である。いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、胃粘膜下層(SS)である。いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、肝臓粘膜下層(LS)である。いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、肝臓基底膜(LBM)である。
【0084】
いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、真皮からのものである。例えば、LifeCell Corporationにより生産されるAlloDerm(登録商標)は、表皮、および真皮内の細胞を除去するために確立される過程の技術を使用して、結合性組織マトリクスの通常の生化学および分子構造を大きく変化させることなく、正常なヒトの肌から産生される、無細胞組織マトリクスである。産生された結果物は、正常な組織マトリクス構成要素の劣化または損失なしに、保存期間を延長し、配送を容易にするフリーズドライ形態である。AlloDerm(登録商標)は、正常な軟組織に存在する、デコリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ナイドジェン、増殖因子、および他の生化学タンパク質を保持し得る。加えて、AlloDerm(登録商標)は、脈管チャネルの基底膜および開始真皮組織のエラスチンならびにコラーゲン繊維の配向を含有し得る。
【0085】
いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、筋膜からのものである。いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、実質組織からのものである。いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、心嚢からのものである。いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、心筋細胞外基質からのものである。いくつかの態様において、開示される組成物および方法の哺乳動物ECMは、例えば、界面活性剤での冠動脈灌流によって(Ott,HC,et al.Nat Med.2008年2月;14(2):213‐21)、脱細胞化した心臓組織からのものである。
【0086】
いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳動物の組織または臓器源に由来するコラーゲン足場を含む。哺乳動物由来のコラーゲン足場は、いくつかの態様において、哺乳動物の組織由来の基底膜を含み得る。
【0087】
いくつかの態様において、哺乳動物ECMはin vitroで産生される。例えば、哺乳動物ECMは哺乳動物の細胞の培養物から産生され得る。哺乳動物ECMは、哺乳動物の組織/臓器から抽出されたタンパク質から産生され得る。例えば、いくつかの態様において、哺乳動物ECMは、哺乳動物の組織または臓器から抽出されたコラーゲンから合成される人工的なコラーゲン足場を含む。哺乳動物の由来のコラーゲンは、マトリクス含有組織から回収され得、マトリクス組成物を形成するために使用され得る。細胞外マトリクスは、Matrigel(商標)によって製造される産生物のような細胞培養物から合成され得る。加えて、真皮細胞外基質材料、皮下細胞外基質材料、大腸細胞外基質材料、胎盤細胞外基質材料、網細胞外基質材料、心臓細胞外基質材料、および肺細胞外基質材料は、SIS、SS、LBM、およびUBS材料に関して、本明細書に説明されるのと同様に、使用され得、派生され得、保存され得る。開示される組成物および方法に従う使用のための基底膜の他の臓器の組織の由来は、脾臓、リンパ結節、唾液腺、前立腺、膵臓および他の分泌線を含む。一般的に、細胞外基質を有する哺乳動物のいずれの組織は、細胞外基質の構成要素を成長させるために使用され得る。
【0088】
コラーゲン性マトリクスは、様々な商業的に入手可能なコラーゲンマトリクスから選択され得るか、コラーゲンの幅広い種類の自然性の由来から調製され得る。開示される組成物および方法に従う使用のためのコラーゲン性マトリクスは、高保存コラーゲン、糖タンパク質、プロテオグリカン、およびグリコサミノグリカンを、それらの自然構成および自然濃度に含む。コラーゲンは、動物由来、植物由来、または合成由来からのものであり得、これらの全ては、当技術分野で入手可能であり、標準である。
【0089】
天然足場が使用される際の組成物内の足場材料の比率は、天然足場内の細胞外基質タンパク質の自然バランスが、乾燥重量で90%より大きい細胞外基質材料を表すように、大きくなり得る。よって、組成物の足場構成要素の重量は、一般的に組成物の合計乾燥重量の50%より大きくなり得る。足場は、合計成分の60%、70%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%、および98%より大きい重量の組成物を含み得る。
【0090】
天然の細胞外マトリクスは、心不整脈を治療または予防するためのそれらの生物活性は、最大限まで保存されることに注意して調製され得る。保存され得る鍵となる機能は、細胞接着の調整もしくは惹起、細胞免疫性、細胞分化、細胞増殖、細胞死(アポトーシス)、血管新生の刺激、タンパク質分解活性、酵素活性、細胞運動性、タンパク質ならびに細胞改変、転写現象の活性化、翻訳現象の供給、例えば凝固の抑制等のいくつかの生物活性の抑制、幹細胞の誘引、および走行作用を含む。これらの活性を決定するためのアッセイは、当技術分野で標準である。例えば、材料分析は、材料組成物内に存在する分子を特定するために使用され得る。また、in vitroでの細胞接着検査は、素材または組成物が、細胞接着の能力があるかということを確認するために行われ得る。
【0091】
哺乳動物ECMを含む、開示される組成物は、それらに非免疫原性を与えるために脱細胞化され得る。いくつかの態様において、脱細胞化の過程は、細胞で偶発的に抽出されたタンパク質の置換、または外来性の細胞をマトリクス組成物に加えることのいずれか一方によって、細胞抽出後に保持される、鍵となるいくつかのタンパク質で完成され、細胞は、心不整脈を治療または予防することに関わるタンパク質を産生するかまたは運ぶ。
【0092】
タンパク質を細胞外基質組成物に加えた際、タンパク質は単純に組成物とともに加えられるか、それぞれのタンパク質は、マトリクス内で分子に共有結合し得る。標準のタンパク質と分子の結合手順は、共有付着を遂行するために使用し得る。
【0093】
脱細胞化において、哺乳動物ECMの由来として、由来組織/臓器で開始した際、由来組織/臓器の灌流過程が使用され得る。由来組織/臓器は、臓器に無細胞性を与えながら、例えば、0.1%の過酢酸等の脱細胞化薬剤で潅流され得る。由来組織/臓器は、次に部分毎に切られ、後の使用のため、貯蔵され得る(例えば、水性の環境、液体窒素、冷却、フリーズドライ、または真空プレスで)。任意の適切な脱細胞化薬剤は、由来組織/臓器の灌流過程で使用され得る。
【0094】
粘膜下の組織に関して、抽出物は、マトリクス内に増殖因子の存在を保存するために、中性のpH(約pH5.5〜約7.5までの範囲で)付近で実行され得る。代替えとして、酸性状態(すなわち、pH5.5未満)は、摂氏0℃と摂氏50℃との間の範囲内の温度で、グリコサミノグリカン構成要素の存在を保存するために使用され得る。これらの水性抽出物の酸性のまたは基本の環境を調節するために、尿素(約2〜約4Mの濃度で)、グアニジン(約2〜約6Mの濃度で、最も典型的には約4M)、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、および非イオン性またはイオン性の界面活性物質等の緩衝剤およびカオトロピック薬剤(一般的に約2〜約8Mの濃度で)が選択され得る。2MでpH7.4の尿素は、FGF‐2および糖タンパク質フィブロネクチンの抽出物を提供する。pH7.4の緩衝剤とともに4Mのグアニジン使用することは、形質転換増殖因子ベータ(TGF‐β)を有する画分を産出する。
【0095】
基底膜のコラーゲン性構造および細胞解離中の膜構造の分解を最小化する所望のため、コラーゲンの特定酵素活性は、細胞解離ステップで使用される酵素溶液で最小化され得る。例えば、由来組織/臓器は、トリトン100等の軽度の界面活性剤等のカルシウムキレート薬剤またはカオトロピック薬剤で治療され得る。細胞解離ステップは、組織/臓器の酵素的処理が不在の場合、カルシウムキレート薬剤またはカオトロピック薬剤を用いても行い得る。細胞解離ステップは、約0.05〜約2%、より典型的には約0.1〜約1%の重量のプロテアーゼを含み、任意で、膜型マトリクスの実質的分解なしに、基底膜からの細胞の遊離および分離を最適化するために有効な量で、カオトロピック薬剤またはカルシウムキレート薬剤を含む、撹拌した溶液内で由来組織の切片を懸濁することによって実行され得る。
【0096】
由来組織/臓器を細胞解離溶液にマトリクスからの全細胞が遊離するために十分な時間、接触した後、結果の組織/臓器の基底膜は、生理食塩水で1回以上すすがれ得、下記に説明されるように使用されるまで、任意で凍結水和状態または部分的に水和した状態で貯蔵され得る。細胞解離ステップは、基底膜から全細胞を実質的に遊離するために、細胞解離溶液を用いたいくらかの処理を必要とし得る。由来組織/臓器は、構成要素の細胞を除去するために、プロテアーゼ溶液を用いて処理し得、結果の細胞外基質材料は、いずれの残存酵素活性を除去または抑制するためにさらに処理され得る。例えば、得られる基底膜は、加熱され得るか、1つ以上のプロテアーゼ抑制剤で処理され得る。
【0097】
基底膜または他の天然の細胞外基質の足場は、グルタルアルデヒドを用いたなめし、酸性pHでのホルムアルデヒドなめし、エチレンオキシド処理、プロピレンオキシド処理、ガス血漿滅菌、ガンマ線照射、および過酢酸滅菌を含む、従来の滅菌技術を使用して、滅菌され得る。機械的強度および材料の生体栄養特質を著しく弱めない滅菌技術が、好ましくは使用される。例えば、強いガンマ線照射は、移植片材料の強度の損失を引き起こし得ると信じられている。滅菌技術の例は、移植片を、過酢酸、ガンマ線照射、ガス血漿滅菌、および高圧/超臨界二酸化炭素に曝露することを含む。
【0098】
ii.合成ECM
開示される方法で使用される合成ECMを含む組成物も開示される。開示される組成物および方法で使用される合成ECMは、天然コラーゲンのように重合する合成分子を使用して形成され得、哺乳動物ECM足場の自然環境を模倣する足場環境を形成する。従って、ポリエチレンテレフタラート繊維(Dacron(登録商標))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グルタルアルデヒド交差結合心嚢、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレン、ニチノール、および非動物由来のコラーゲン(植物または合成コラーゲン等)等の材料は、合成細胞外基質の足場の構成要素として使用され得る。挙げられる合成材料は、当技術分野で標準であり、ハイドロゲルおよびマトリクスのような材料をそれらで形成することもまた標準である。それらの有効性は、典型的に、天然の細胞外マトリクス、部分的に増殖因子、およびそれらに反応する細胞を構成する構成要素とともに、哺乳類で検査することによって、前記に開示されるようにin vivoで検査され得る。
【0099】
細胞外基質様の材料は、一般的に、Rosso et al(Journal of Cellular Physiology199:174‐180,2004)で説明され、これらの材料の作製および使用方法の指導のために、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、いくつかの細胞外基質様の材料はここに挙げられる。特に、有益な生体分解性および/または生体吸収性の重合体は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、およびそれらの無作為、ならびにブロック共重合体を含む。特定の重合体の例は、ポリD,Lラクタイド、ポリ乳酸‐co‐グリコライド(85:15)、およびポリ乳酸‐co‐グリコライド(75:25)を含む。開示される組成物および方法の繊維性マトリクスで使用される、生体分解性および/または生体吸収性重合体は、約4,000〜約250,000g/モルを含む、約1,000〜約8,000,000g/モルの範囲内で分子量を有し得る。生体分解性および/または生体吸収性の繊維に分解可能な材料は、生体分解性および生体吸収性重合体であり得る。好適な重合体の例は、Bezwada,Rao S.et al.(1997)Poly(p‐Dioxanone)and its copolymers,in Handbook of Biodegradable Polymers,A.J.Domb,J.Kost and D.M.Wiseman,editors,Hardwood Academic Publishers,The Netherlands,pp.29−61で見つけられ得る。生体分解性および/または生体吸収性重合体は、グルコリド、ラクチド、ジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレン炭酸、エチレングリコール、およびリジンからなる群から選択される単量体を含有し得る。材料は、これらの単量体を含有する、無作為共重合体、ブロック共重合体、または、単量体、同種重合体、共重合体、および/もしくはヘテロ重合体の融合であり得る。生体分解性および/または生体吸収性重合体は、ポリグリコール酸(PGA)等の生体吸収性および生体分解性の直鎖脂肪族ポリエステルおよびその無作為共重合体ポリ(グルコリド‐co‐ラクチド‐)(PGA‐co‐PLA)を含み得る。FDAは、外科的応用での使用において、医学的縫合物を含む、これらの重合体を承認している。これらの合成性の吸収可能な材料の利点は、体液等の水性の環境でのエステル骨格の単純な加水分解による分解力である。分解産生物は、二酸化炭素および水に究極的に代謝されるか、腎臓を通じて排泄され得る。これらの重合体は、体内に吸収されることは不可能であるセルロースを基礎とした材料と非常に異なる。
【0100】
好適な生体適合性の重合体の他の例は、エチルメタクリル酸、およびポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のハイドロゲルを含む、ポリヒドロキシアルキルメタクリル酸である。他の好適な生体吸収性材料は、コラーゲン、ゼラチン、アルギン酸、キチン、キトサン、フィブリン、ヒアルロン酸、デキストラン、ポリアミノ酸、ポリリジン、およびこれらの材料の共重合体を含む、生体高分子である。いずれのグリコサミノグリカン(GAG)型の重合体が、使用され得る。GAGは、例えば、ヘパリン、コンドロイチン硫酸AもしくはB、およびヒアルロン酸、またはそれらの合成類似体等を含み得る。上記例のいずれの組み合わせ、共重合体、重合体、またはその融合は、開示される組成物および方法に従う使用のために企図される。そのような生体吸収性材料は、既知の方法によって調製され得る。
【0101】
任意の由来の核酸は、高分子生体材料として使用され得る。由来は、自然発生の核酸、ならびに合成核酸を含む。開示される組成物および方法で使用される好適な核酸は、DNA(A、BおよびZ構造を含む)、RNA(mRNA、tRNA、およびrRNAを共にまたは別々に含む)およびcDNA、ならびに合成または人工的な形態のポリヌクレオチド等の核酸の自然的発生の形態を含む。開示される組成物および方法で使用される核酸は、交差結合、メチル化ならびにキャップ形成等の鎖内修飾、および共重合体化によるものを含む、様々な方法で修飾され得る。加えて、他の有利な分子は、核酸鎖へ付着され得る。核酸は、自然的発生の配列または人工的な配列を有し得る。核酸の配列は、開示の多くの態様に無関係であり得る。しかしながら、特別な配列は、核酸の情報をコードする特質による任意の重大な影響を予防するため、誘発する特定の細胞反応を誘発するため、または分子の物理的構造を管理するために使用され得る。核酸は、完成した生体材料内およびそれらの産生過程中での双方の様々な結晶構造で使用され得る。核酸の結晶構造は、核酸とともに使用する塩に影響され得る。例えば、DNAのNa、K、BiおよびCa塩の全ては異なる沈殿速度および異なる結晶構造を有する。加えて、pHは核酸の結晶構造に影響する。
【0102】
核酸の物理的特質は、他の物理的特性存在によって影響され得る。例えば、ヘアピンループの包含は、さらなる弾性生体材料をもたらし得るか、特定の切断部位を提供し得る。産生される核酸重合体および共重合体は、組織張力強度を増加するため、創傷治癒の改善のため、創傷治癒の迅速化、組織形成のための鋳型として、組織形成の指導のため、神経成長を刺激するため、組織内の血管新生の改善のため、生体分解性の接着として、装置または移植片コーティングとして、または組織もしくは体部位の機能の改善のため、を含む、様々な組織工学の応用のために使用され得る。重合体はさらに具体的に縫合物、足場および創傷被覆材としても使用され得る。核酸重合体または共重合体の型は得られる高分子生体材料の化学的および物理的構造に影響し得る。
【0103】
iii.組み合わせ
本明細書に開示される組成物は、2つ以上の由来の、または2つ以上の特徴的な形態での哺乳動物ECMの組み合わせを含み得る。よって、開示される組成物は、本明細書に開示される、天然および/または合成の哺乳動物ECMのいずれの組み合わせを含み得る。
【0104】
よって、例えば、組成物は、例えば、これらに限定されないが、小腸粘膜下層、肝臓基底膜、胃粘膜下層、膀胱粘膜下層、胎盤基底膜、膵臓基底膜、大腸粘膜下層、肺間質膜、気道粘膜下層、心臓細胞外基質、真皮マトリクス、および一般的に、いずれの哺乳動物の胎児組織からの細胞外基質等の由来の哺乳動物ECMの組み合わせを含み得る。これらのうちのいずれか1つの組織由来は、組成物における使用のために、続けて指定された形態(液体、半固体、または固体形態)に取り扱い得る、細胞外基質を提供し得る。
【0105】
2つ以上の由来の哺乳動物ECMの組み合わせは、混合固体、混合液体、混合エマルション、混合ゲル、混合ペースト、または混合固体微粒子であり得る。これらの組成物の全ては、例えば、2つ以上の細胞外マトリクスからの粉末または微粒子の混合物、2つ以上の細胞外マトリクスからのペーストの混合物、2つ以上の細胞外マトリクスからのエマルションもしくはゲル混合物、および2つ以上の細胞外マトリクスからの液体の混合物等の2つ以上の由来の細胞外マトリクスの混合物である。
【0106】
組成物は、3個の哺乳動物の組織由来、4個の哺乳動物の組織由来、5個の哺乳動物の組織由来、6個の哺乳動物の組織由来、および、場合によっては10個以上の組織由来から作製されてもよい。これらの組織由来は、同じ哺乳類(例えば、同じウシ、同じブタ、同じ齧歯類、同じヒト等)、同種の哺乳類、(例えば、ウシ、ブタ、齧歯類、ヒト等)、または異種の哺乳類(例えば、ブタからの肝臓マトリクス、ウシからの小腸粘膜下層、およびイヌからの膀胱粘膜下組織、全てともに組成物内で混合される)からのものであり得る。
【0107】
組成物は、ともに混ぜ合わさる2つ以上の液体マトリクス(異なる組織由来から)を含み得る。ともに混ぜ合わさる2つ以上のエマルションマトリクス(異なる組織由来から)を含み得る。組成物は、ともに混ぜ合わさる2つ以上の微粒子マトリクス(異なる組織由来から)を含み得る。組成物は、2つ以上の細胞外マトリクスの液体混合物であり得る。
【0108】
例えば、組成物は、シート、微粒子、エマルション、ゲル、もしくは液体の形態のSISと、シート、微粒子、エマルション、ゲル、もしくは液体の形態のSS、あるいはLBM、またはUBSとの組み合わせ含んでもよい。例えば、組成物は、シート、微粒子、エマルション、ゲル、もしくは液体の形態のSSと、シート、微粒子、エマルション、ゲル、もしくは液体の形態のSIS、あるいはLBM、またはUBSとの組み合わせを含んでもよい。例えば、組成物は、シート、微粒子、エマルション、ゲル、もしくは液体の形態のLBMと、シート、微粒子、エマルション、ゲル、もしくは液体の形態のSS、あるいはSIS、またはUBSとの組み合わせを含んでもよい。例えば、組成物は、シート、微粒子、エマルション、ゲル、もしくは液体の形態のUBSと、シート、微粒子、エマルション、ゲル、もしくは液体の形態のSS、あるいはSIS、またはLBMとの組み合わせを含んでもよい。
【0109】
開示される組成物は、1つ以上の由来であるが2つ以上の特徴的な形態の由来の哺乳動物ECMの組み合わせを含み得る。例えば、組成物は、微粒子マトリクスと混ぜ合わされるゲルマトリクスを含む。いくつかの態様において、微粒子形態の哺乳動物ECMは、シート形態で哺乳動物ECM上に散粉され得る。
【0110】
いくつかの態様において、組成物は、シート、エマルション、ゲル、または液体の形態のSIS、SS、もしくはLBM、またはUBSと、微粒子形態のSIS、SS、もしくはLBM、またはUBSとの組み合わせを含んでもよい。いくつかの態様において、組成物は、微粒子、エマルション、ゲル、または液体の形態のSIS、SS、もしくはLBM、またはUBSと、シート形態のSIS、SS、もしくはLBM、またはUBSとの組み合わせを含んでもよい。いくつかの態様において、組成物は、シート、微粒子、ゲル、または液体の形態のSIS、SS、もしくはLBM、またはUBSと、エマルション形態のSIS、SS、もしくはLBM、またはUBSとの組み合わせを含んでもよい。いくつかの態様において、組成物は、シート、微粒子、エマルション、または液体の形態のSIS、SS、もしくはLBM、またはUBSと、ゲル形態のSIS、SS、もしくはLBM、またはUBSとの組み合わせを含んでもよい。いくつかの態様において、組成物は、シート、微粒子、エマルション、またはゲル形態のSIS、SS、もしくはLBM、またはUBSと、液体の形態のSIS、SS、もしくはLBM、またはUBSとの組み合わせを含んでもよい。
【0111】
本明細書で開示されるように、哺乳動物ECMを含む組成物は、好ましい稠度に調製することができる。例えば、哺乳動物ECMは、血流の中への散逸を予防するのに最適な比率のゲルと微粒子との組み合わせとして、調製することができる。哺乳動物ECMを含む組成物は、約40%のゲル形態のECMおよび約60%の乾燥微粒子形態のECMを含み得る。よって、本明細書に開示される、哺乳動物ECMを含む組成物は、ゲルおよび乾燥微粒子形態の双方であり、ゲル形態は、約10、15、20、25、30、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、44、45、50%のECMを成分内に含む。よって、乾燥微粒子形態は、約90、85、80、75、70、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、50%のECMを組成物内に含み得る。
【0112】
液体または半固体組成物(液体、ゲル、エマルション、またはペースト)の濃度の選択は重要である。例えば、液体形態は、非常に薄い約0.001mg/mLからより高い濃度の最大約200mg/mLまでの範囲で存在し得る。濃度は、例えば以下の一連の範囲:約5〜約150mg/mL、約10〜約125mg/mL、約25〜約100mg/mL、約20〜約75mg/mL、約25〜約60mg/mL、約30〜約50mg/mL、約35〜約45mg/mL、および約40〜約42mg/mL等のより具体的な範囲でさらに見出されてもよい。この一連の範囲は例示的であり、網羅するためのものではない。これらの具体的に挙げられるいずれの範囲内のいずれの値は、妥当であり、組成物の液体または半固体構成要素の濃度に有益な値である、ということが企図される。
【0113】
エマルションは、液体形態よりも濃縮され得、体の一定の部分にマトリクス組成物を塗布することに有益であり得る形を保持し得、従って、その特徴付けは「半固体」とされる。エマルションは、マトリクス組成物が塗布される部位に適する、プラグのような形または他の構成を形成するように十分に濃縮され得る。増粘性のエマルションは、塗装されるか、さもなければペーストとして部位に塗布され、固体微粒子を用いてエマルションの上に重ねて散粉される。固体微粒子は、エマルションを形成するために再構成され得るか、または治療されている対象内の部位に散粉し得る、微粒子粉末として乾燥した状態で加えられる。
【0114】
2つ以上の哺乳動物ECMを形成する乾燥微粒子または再構成した微粒子は、いくらかの比率でともに混合され得る。例えば、50%のSISは、50%のSSとバイアル内で混合され得る。本混合物は、好適な緩衝剤、例えば生理食塩水中で水和することによって流動化され得る。水和は、哺乳動物ECMの所望の濃度、例えば、0.001〜約200mg/mLの範囲内で遂行され得る。濃度は、以下の一連の範囲等のより具体的な範囲でさらに見られ得る、約5〜約150mg/mL、約10〜約125mg/mL、約25〜約100mg/mL、約20〜約75mg/mL、約25〜約60mg/mL、約30〜約50mg/mL、約35〜約45mg/mL、および約40〜約42mg/mL。この一連の範囲は例示的であって網羅的ではない。これらのいずれの具体的に挙げられる範囲内のいずれの値は、妥当であり、組成物の液体または半固体構成要素の濃度のために有益な値であるということが企図される。
【0115】
細胞外基質の濃度が低下すればするほど、組成物は液体であり得る。細胞外基質の濃度が高くなればなるほど、組成物はゲル様のエマルションまたは半個体稠度に接近する。
【0116】
異なる由来(または同じ由来)からの所与のいずれの組成物で2つ(またはそれ以上)の細胞外マトリクスの混合物の比率は、同等ではないことも有り得る。例えば、LBMは、75%で存在し得、SISは25%で存在し得る(すなわち、3:1の比率)。いずれの好適な比率は、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5等で使用し得る。3つ以上の細胞外基質の組織由来が、組成物に存在する場合、同じ型の釣り合いのとれた量または不釣り合いの量のマトリクスが発生し得る。例えば、3つの由来の細胞外基質において、それぞれの由来は等しい比率で存在し得る、すなわち、1:1:1(33%/33%/33%)。代替えとして、微粒子の不均衡な量は、1つの由来からであり得る、例えば2:1:1(50%/25%/25%)。同様に、3つの全ての由来は、不均衡な量で存在し得る、例えば、50%/30%/20%。
【0117】
2つ以上の哺乳動物ECMは、別々に流動化され(または乳化され)得、流動化または乳化した組成物はともに混合され得る。別の代替えとして、2つ以上の哺乳動物ECMは、別々に流動化または乳化され得、別々に投与され得る。さらに、2つ以上の哺乳動物ECMは、固体の組み合わせ微粒子として投与のために微粒子の固体形態にとどまり、バイアル内でともに混合され得る。乾燥微粒子の哺乳動物ECM混合物の再水和は、使用の直前に遂行され得る。
【0118】
2.タンパク質
哺乳動物ECMを含む、開示される組成物は、哺乳動物ECMで通常発見されるもののような外来性のタンパク質をさらに含み得る。タンパク質は、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン(GAG)鎖、糖タンパク質、増殖因子、サイトカイン、細胞表面付随性タンパク質、細胞接着分子(CAM)、血管新生増殖因子、内皮リガンド、マトリカイン、マトリクスメタロプロテアーゼ、カドヘリン、免疫グロブリン、繊維性コラーゲン、非繊維性コラーゲン、基底膜コラーゲン、マルチプレキシン、小ロイシンリッチプロテオグリカン、デコリン、バイグリカン、フィブロモジュリン、ケラトカン、ルミカン、エピフィカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、パールカン、アグリン、テスティカン、シンデカン、グリピカン、セルグリシン、セレクチン、レクチカン、アグリカン、ベルシカン、ニューロカン、ブレビカン、細胞質領域‐44(CD‐44)、マクロファージ刺激因子、アミロイド前駆体タンパク質、ヘパリン、コンドロイチン硫酸B(デルマタン硫酸)、コンドロイチン硫酸A、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、フィブロネクチン(Fn)、テネシン、エラスチン、フィブリリン、ラミニン、ナイドジェン/エンタクチン、フィビュリンI、フィビュリンII、インテグリン、膜通型分子、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、形質転換増殖因子アルファ(TGF‐アルファ)、形質転換増殖因子ベータ(TGF‐β)、線維芽細胞増殖因子‐2(FGF‐2)(塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)とも呼ばれる)、トロンボスポンジン、オステオポンチン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、または血管上皮系増殖因子(VEGF)であり得る。この列挙は網羅的ではない。
【0119】
よって、本明細書に開示される、哺乳動物ECMを含む組成物は、コラーゲンIならびにIII、エラスチン、ラミニン、CD44、ヒアルロナン、シンデカン、bFGF、HGF、PDGF、VEGF、Fn、テネシン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸B、インテグリン、デコリン、TGF‐β、またはその組み合わせを含み得る。
【0120】
3.細胞
いくつかの態様において、本明細書に開示される哺乳動物ECMを含む組成物は、1つ以上の細胞をさらに含む。いくつかの態様において、細胞は非天然である、すなわち哺乳動物ECMに対して異種である。いくつかの態様において、細胞は幹細胞である。幹細胞の網羅的でない列挙は、ヒト胚幹細胞、胎児心筋細胞、筋線維芽細胞、間葉系幹細胞、自家移植伸長型心筋細胞、脂肪細胞、全能性細胞、多能性細胞、血幹細胞、筋芽細胞、成体幹細胞、骨髄細胞、間葉系細胞、胚幹細胞、実質細胞、上皮系細胞、内皮細胞、中皮細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、外来細胞、内在細胞、造血性幹細胞、多能性幹細胞、骨髄由来前駆細胞、前駆細胞、心筋細胞、骨格細胞、胎児細胞、胚細胞、未分化細胞、多能性の前駆細胞、単能性の前駆細胞、単球、心筋細胞、心筋芽細胞、骨格筋芽細胞、マクロファージ、毛細血管内皮細胞、異種間の細胞、同種間の細胞、成体幹細胞、および出生後の幹細胞を含む。
【0121】
いくつかの態様において、幹細胞は、心臓組織細胞に分化する潜在性を有する。よって、いくつかの態様において、幹細胞は、多能性である。いくつかの態様において、幹細胞は、アンジオブラストまたはヘマンジオブラストである。いくつかの態様において、幹細胞は、筋芽細胞である。幹細胞は、幹細胞培養のために標準の方法を使用して得られ、維持され得る。
【0122】
4.医薬品
本明細書に開示される、哺乳動物ECMを含む組成物は、対象の心臓へ投与され得るいずれの既知または新しく発見された物質をさらに含み得る。例えば、本明細書の開示される、哺乳動物ECMを含む組成物は、抗不整脈の薬剤をさらに含み得る。抗不整脈の薬剤は、心臓の速いおよび/または不規則なリズム(心不整脈)を抑制するために使用される医薬品の群である。
【0123】
1970年に導入されたVaughan Williams分類は、抗不整脈の薬剤に対して最も広く使用されている分類図式の1つである。本図式は、抗不整脈の効果の主要な機序に基づいて薬物を分類する。Vaughan Williams分類において抗不整脈の薬剤には5つの主な分類があり、分類Iは、薬剤がナトリウム(Na)チャネルを妨害する、分類IIは、薬剤は抗交感神経系薬剤(この分類のほとんどの薬剤はベータ遮断薬)である、分類IIIは、薬剤がカリウム(K)の流出に影響する、分類IVは、薬剤はカルシウムチャネルおよびAV結節に影響する、および分類Vは、薬剤が他または未知の機序によって働く、と分類されている。
【0124】
分類Iaの薬剤は、キニジン、プロカインアミド、およびジソピラミドを含む。分類Ibの薬剤は、リドカイン、フェニトイン、およびメキシレチンを含む。分類Icの薬剤は、フレカイニド、プロパフェノン、およびモリシジンを含む。分類IIの薬剤は、プロプラノロール、エスモロール、チモロール、メトプロロール、およびアテノロールを含む。分類IIIの薬剤は、アミオダロン、ソタロール、イブチリド、およびドフェチリドを含む。分類IVの薬剤は、ベラパミル、およびジルチアゼムを含む。分類Vの薬剤は、アデノシンおよびジゴキシンを含む。
【0125】
よって、本明細書に開示される哺乳動物ECMを含む組成物は、1つ以上のキニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、リドカイン、フェニトイン、メキシレチン、フレカイニド、プロパフェノン、モリシジン、プロプラノロール、エスモロール、チモロール、メトプロロール、アテノロール、アミオダロン、ソタロール、イブチリド、ドフェチリド、ベラパミル、ジルチアゼム、およびジゴキシンさらに含み得る。
【0126】
提供される組成物は、1つ以上の抗生物質(例えば、アミノグリコシド、セファロスポリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、エリスロマイシン、フルオロキノロン、マクロライド、アゾリド、メトロニダゾール、ペニシリン、テトラサイクリン、トリメトプリムスルファメトキサゾール、およびバンコマイシン)をさらに含み得る。
【0127】
提供される組成物は、1つ以上のステロイド(例えば、アンドラン(例えば、テストステロン)、コレスタン(例えば、コレステロール)、コール酸(例えばコール酸))、副腎皮質ステロイド(例えば、デキサメタゾン)、エストラン(例えば、エストラジオール)、およびプレグナン(例えば、プロゲステロン)さらに含み得る。
【0128】
提供される組成物は、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メサドン、オキシダン、プロポキシフェン、フェンタニル、メサドン、ナロキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、およびペンタゾシンを含むが、これらに限定されない、1つ以上の麻薬性および非麻薬性鎮痛薬の分類をさらに含み得る。
【0129】
提供される組成物は、アルクロフェナク、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アンフェナクナトリウム、アミプリローズハイドロクロライド、アナキンラ、アニロラック、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジドニナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、ベンジダミン塩酸塩、ブロメライン、ブロペラモル、ブデソニド、カプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、クロベタゾールプロピオン酸エステル、クロベタゾン酪酸エステル、クロピラク、クロチカソンプロピオン酸、コルメタソン酢酸、コルトドキソン、デカン酸、デフラザコート、デラテストリル、デポテストステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾンジプロピオン酸エステル、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジフロラゾン二酢酸、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモル、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラック、フェンドサル、フェンピパロン、フェンチアザク、フラザロン、フラザコルト、フルフェナム酸、フルミゾール、フルニソリド酢酸、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、フルオロメトロン酢酸、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、フルチカゾンプロピオン酸、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオン酸、ハロプレドン酢酸、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、イソフルプレドン酢酸、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、ロフェミゾール塩酸塩、ロルノキシカム、ロテプレドノールエタボン酸エステル、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリソン二酪酸、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メステロロン、メタンドロステノロン、メテノロン、メテノロン酢酸、メチルプレドニゾロンスレプタナート、モミフルメート、ナブメトン、ナンドロロン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソル、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサンドロロン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、オキシメトロン、パラニリン塩酸塩、ペントサンポリサルフェートナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセリン酸塩、ピルフェニドン、ピロキシカム、ピロキシカム桂皮酸エステル、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロカゾン、プロキサゾール、プロキサゾールクエン酸、リメキソロン、ロマザリット、サルコレクス、サルナセジン、サルサラート、サンギナリン塩素イオン、セクラゾン、セルメタシン、スタノゾロール、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テストステロン、テストステロン混合物、テトリダミン、チオピナク、チキソコルトールピバル酸、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロナイド、トリフルミダート、ジドメタシン、およびゾメピラックナトリウムを含むが、これらに限定されない、1つ以上の抗炎症性薬剤をさらに含み得る。
【0130】
提供される組成物は1つ以上の高脂血症治療薬を含み得る。本明細書に開示されるように、用語「高脂血症治療薬」は、コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、およびトリグリセリドを含むが、これらに限定されない、様々な心臓疾患に付随する脂質の血清レベルを軽減するために、対象に投与され得る薬物を指す。
【0131】
例えば、高脂血症治療薬は、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、セルビスタチン、およびピタバスタチンを含むが、これらに限定されないスタチンであり得る。現在知られているまたは将来開発される、脂質軽減性および/または抗炎症性特質を有するいずれのスタイン薬物が、本明細書で説明される組成物に使用され得る、ということが企図される。
【0132】
提供される組成物は、エタノールアミン(ジフェンヒドラミンカルビノキサミンなど)、エチレンジアミン(トリペレナミンピリラミンなど)、アルキルアミン(クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミンブロムフェニラミン、トリプロリジンなど)、アステミゾール、ロラタジン、フェキソフェナジン、ブロムフェニラミン、クレマスチン、アセトアミノフェン、プソイドエフェドリン、およびトリプロリジンを含むが、これらに限定されない、1つ以上の抗ヒスタミン薬剤をさらに含み得る。
【0133】
提供される組成物は、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール塩酸塩、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボミシン、アメタントロン酢酸、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、ビサントレン塩酸塩、ビスナフィドメシ酸塩、ビセレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、カルビシン塩酸塩、カルゼルシン、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、デザグアニンメシル酸塩、ジアジクオン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドキソルビシン塩酸塩、ドロロキシフェン、ドロロキシフェンクエン酸塩、ドロモスタノロンプロピオン酸、デュアゾマイシン、エダトレキサート、エフロールニチン塩酸塩、エルサマイシン、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、エピルビシン塩酸塩、エルブロゾール、エソルビシン塩酸塩、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エタニダゾール、ヨード化ケシ油エチルエステルI131、エトポシド、エトポシドリン酸塩、エトプリン、ファドロゾール塩酸塩、ファザラビン、フェンレチニド、フロキシウリジン、フルダラビンリン酸塩、フルオロウラシル、フルロシタビン、フォスキド、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、ゲムシタビン塩酸塩、ゴールドAu198、ヒドロキシ尿素、イダルビシン塩酸塩、イホスファミド、イルモフォシン、インターフェロンアルファ‐2a、インターフェロンアルファ‐2b、インターフェロンアルファ‐nl、インターフェロンアルファ‐n3、インターフェロンベータ‐Ia、インターフェロンガンマ‐Ib、イプロプラチン、イリノテカン塩酸塩、ランレオチド酢酸、レトロゾール、ロイプロリド酢酸、リアロゾール塩酸塩、ロメテレキソールナトリウム、ロムスチン、ロソキサントロン塩酸塩、マソプロコール、メイタンシン、メクロレタミン塩酸塩、メゲストロール酢酸、メレンゲストロール酢酸、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、マイトクロミン、マイトギリン、マイトマルシン、マイトマイシン、ミトスペル、マイトタン、ミトキサントロン塩酸塩、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペグアスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペプロマイシン硫酸、ペルホスファミド、ピポプロマン、ピプロスルファン、ピロキサントロン塩酸塩、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニマスチン、プロカルバジン塩酸塩、ピューロマイシン、ピューロマイシン塩酸塩、ピラゾフリン、リボプリン、ログレトイミド、サフィンゴール、サフィンゴール塩酸塩、セムスチン、シムトラゼン、スパルホサートナトリウム、スパルソマイシン、スピロゲルマニウム塩酸塩、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、塩化ストロンチウムSr89、スロフェヌル、タリソマイシン、タキサン、タキソイド、テコガランナトリウム、テガフール、テロキサントロン塩酸塩、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、トポテカン塩酸塩、トレミフェンクエン酸、トレストロン酢酸、トリシリビンリン酸塩、トリメトレキサート、トリメトレキサートグルクロン酸、トリプトレリン、ツブロゾール塩酸塩、ウラシルマスタード、ウレデパ、バブレオチド、ベルテポルフィン、ビンブラスチン硫酸、ビンクリスチン硫酸、ビンデシン、ビンデシン硫酸、ビネピジン硫酸、ビングリシネート硫酸、ビンロイシノール硫酸、ビノレルビン酒石酸、ビンロシジン硫酸、ビンゾリジン硫酸、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチンおよびゾルビシン塩酸塩を含むが、これらに限定されない、1つ以上の抗悪性腫瘍薬物をさらに含み得る。
【0134】
本明細書で提供される組成物は、ゲムシタビン、5‐フルオロウラシル、ペントキシフィリン、およびビノレルビンを含むが、これらに限定されない、1つ以上の放射線増感剤をさらに含み得る。
【0135】
5.担体
開示される哺乳動物ECMは、投与、送達またはECMおよびそれらの使用の他の態様を助成するために、担体および他の組成物に組み合わされるか、抱合されるか、連結され得る。便宜上、そのような組成物は、担体として本明細書に言及される。担体は、例えば、小分子、調剤薬物、脂肪酸、検出可能なマーカー、抱合タグ、ナノ粒子、または酵素であり得る。
【0136】
開示される組成物は、薬学的に許容される担体との組み合わせで使用され得る。「薬学的に許容される」とは、生物学的またはそれにかかわらず望ましくない材料を意味する、すなわち、いずれの望ましくない生物学的効果を引き起こすか、または含有されるいずれの調剤組成物の他の構成要素との間で相互に作用して悪影響を与えることなしに、材料は組成物とともに対象に投与され得る。当業者に良く知られるように、担体は、活性成分の分解を最小限にし、対象の有害な副作用を最小限にするように自然に選択される。
【0137】
好適な担体およびそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy (19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995で、説明される。典型的に、適切な量の薬学的に許容される塩は、製剤等張を与えるために製剤に使用される。薬学的に許容される担体の例は、生理食塩水、リンゲル溶液、およびブドウ糖溶液を含むが、これらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは、約5〜約8であり、より好ましくは、約7〜約7.5である。さらに担体は、組成物を含有する固体の疎水性重合体の半透性マトリクス等の持続的な遊離調製物を含み、マトリクスは、フィルム、リポソームまたは微小粒子等の造形品の形態である。特定の担体は、例えば、投与の経路および投与される組成物の濃度次第でより好ましくなり得るということが、当業者に明らかであろう。
【0138】
薬学的担体は、当業者に知られている。これらの最も典型的なものは、滅菌水、生理食塩水、および生理的pHで緩衝した溶液を含む、ヒトへの薬物の投与のための標準の担体であろう。
【0139】
薬学的組成物は、選択した分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、防腐剤、および表面活性薬剤等を含み得る。薬学的組成物は、抗菌性薬剤、抗炎症性薬剤、および麻酔剤等の1つ以上の活性成分を含み得る。
【0140】
非経口の投与のための調製物は、滅菌水または非水性の溶液、懸濁液、およびエマルションを含む。非水性の溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイル等の植物油、およびエチルオレイン酸等の注射可能な有機エステルである。水性の担体は、生理食塩水および緩衝培養液を含む、水、アルコール/水性の溶液、エマルション、または懸濁液を含む。非経口の媒体は、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または固定した油を含む。腹腔内静脈の賦形剤は、流体および栄養補充物および電解質補充物(リンゲルブドウ糖を基礎にしたもの)等を含む。防腐剤および他の添加物は、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート薬剤、および不活性ガス等を存在させ得る。
【0141】
局所投与のための製剤は、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体および粉末を含み得る。従来の薬学的担体は、水、粉末または油および増粘剤等を必要し得るか、または望ましい。
【0142】
経口投与のための組成物は、粉末もしく顆粒、水に入った懸濁液もしくは溶液あるいは非水性の培養液、カプセル、小袋、または錠剤を含む。増粘剤、調味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい場合もある。
【0143】
組成物のいくつかは、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、ならびにリン酸等の無機酸、およびギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、ならびにフマル酸等の有機酸との反応によって、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等の無機酸塩基、およびモノ、ジ、トリアルキルならびにアリールアミンならびに置換したエタノールアミン等の有機塩基との反応によって形成される、薬学的に許容される酸性または塩基性の添加塩として、潜在的に投与され得る。
【0144】
D.組成物を作製する方法
本明細書に開示される組成物および開示される方法を実施するために必要な組成物は、別途具体的に示されない限り、特定の試薬または化合物のための当業者に知られるいずれの方法を使用して作製されてもよい。例えば、米国特許出願第5,275,826号、米国特許出願第5,554,389号、米国特許出願第6,099,567号、および米国特許出願第6,379,710号は、小腸粘膜下層(SIS)、膀胱粘膜下層(UBS)、胃粘膜下層(SS)、および肝臓粘膜下組織(LS)、または肝臓基底膜(LBM)をそれぞれ含む、組成物を作製する方法のための参照により本明細書に開示される。
【実施例】
【0145】
E.実施例
以下の実施例は、本明細書で請求される化合物、組成物、物品、装置および/または方法が、どうのように作製され、評価されるかに関する完全な開示および説明を当業者に提供するように提示され、純粋に例示的であり、開示を制限するためのものではない。数(例えば、量、温度等)に関する正確性を確実にするために努力されているが、誤りおよび偏差がいくつかを占めるはずである。示されない限り、部分は重量による部分、温度は、℃または周囲温度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0146】
1.実施例1:CorMatrix(登録商標)ECM(商標)治療を受ける患者の初発の術後心房細動の後向き評価
CorMatrix(登録商標)ECM(商標)を利用した後向き、多施設、二群、カルテ審査試験を行った。後向き試験の目的は、正常な心膜障害を再構成するためにCorMatrix(登録商標)ECM(商標)を利用することによって、初発の術後心房細動が心膜閉鎖を受けなかった患者と比べて、発生頻度が低くなることを評価するためであった。
【0147】
CorMatrix(登録商標)ECM(商標)は、開口心臓手術後の心嚢の再構成および修復のために使用され得る。損傷を受けていない場合、心嚢は、過拡張を防ぎ、突然の容積変化を調節することを助ける、心臓へ受動的防護を提供する。CorMatrix(登録商標)ECM(商標)で心嚢を再構成することによって、天然心膜の防護を回復することができる。本後向き臨床試験の目的は、初発の術後心房細動で観察される軽減があるかどうかを、冠動脈バイパス移植術(GABG)処置後に心膜閉鎖を受けなかった患者と比べて、天然心嚢をCorMatrix(登録商標)ECM(商標)で再構成した患者を分析することによって評価することであった。
【0148】
CorMatrix(登録商標)ECM(商標)は、医師が処置のために必要であると判断する大きさに切られ得る、様々な寸法の4層のシートで供給された。
【0149】
本後向き試験のために使用される、初発の術後心房細動の定義は、Society of Thoracic Surgeons(STS)Adult Caradic Surgery Database 2007で使用される定義に基づく。定義は以下のようになる、「患者が治療を必要とする心房細動/粗動(AF)の初発を有したかたどうかを指す。術前に存在していたAFの再発は含まない。術前心房細動(治療済みまたは未治療の)を有する患者は含まない。事象は新しい由来のものでなければならない。」
【0150】
全ての患者は、本後向き臨床治験の一部に含まれるために、以下の試験対象患者基準を満たすことを必要とされた:本心臓手術は、対象の最初または主要な心臓手術であり、対象は必ず単離したGABG処置を受けていなければならない。
【0151】
患者は、以下の除外基準の1つ以上を満たした場合、後向き臨床試験の一部に含まれなかった:心房細動の既往歴、開口心臓手術の既往歴、心膜炎の既往歴、過去6ヶ月以内のアミオダロンの既往歴、および計画される同時弁手術。
【0152】
CorMatrix(登録商標)ECM(商標)で再構成されるそれらの天然心嚢を有した患者は、以下の単離したCABG処置に続いて心膜閉鎖を受けなかった患者と比べて、A‐fibの発生率において統計的に大きな減少を示した。A‐fibの通常の発生率は、約25%である。これらの研究において、A‐fibの発生率は、4%と8%との間であった(1/25および4/52)。
【0153】
2.実施例2:無細胞マトリクスエマルションでの心臓再構築の改変は、心筋梗塞後のC‐キット陽性細胞を採用することを通じて、筋線維芽細胞増殖を伴う。
天然の細胞外基質(ECM)の分解は、梗塞後に不適応な心臓再構築を伴った。本明細書に示されるように、宿主C‐キット陽性細胞を採用することにより、異種の無細胞マトリクスエマルションを梗塞心筋へ注射すると、筋線維芽細胞増殖および血管形成を促す。
【0154】
64匹のラットは45分間の局所虚血にさらされ、次に3、7、21、および42日間の再潅流にさらされた。組織学的検査は、免疫組織学的な染色によって実施され、心臓機能は、心エコー検査を使用して分析された。ECMエマルション(30〜50μl)は、再潅流後、心筋の危険性がある部位へ注射され、エマルションの位置付けはMasson Trichome染色で確認された。再潅流7日目、エマルション領域内のC‐キット陽性細胞の個数は、ウェスタンブロッティングによって検出された31kDa幹細胞の大きく増大した発現と一致して、対照群と比較して大幅に増加した(15±3/1000に対して32±0.6核)。本変化に伴って、筋線維芽細胞は対照群と比べて、エマルション部位で大きな広がりへ堆積した(30±3に対して59±8/HPF)。アルファ平滑筋アクチン陽性血管(20±4に対して70±10/HPF)およびvWF陽性血管(34±8に対して95±14/HPF)の密度のそれぞれが増加することによって証拠立てられる、VEGFの強い免疫活性がエマルション域で観察され、血管形成は対照に相対して大きく増大した。再潅流42日目、心エコー検査は、エマルション群の収縮末期容量(0.6±0.3に対して0.3±0.1mL)、短縮率(24±6に対して33±5%)および駆出分画(53±10に対して67±6%)で改善を示した。エマルション群での梗塞性の中央前中隔の壁の厚さもまた対照群でのものよりも著しく大きかった(0.19±0.02対して0.15±0.02cm)。
【0155】
虚血性/再潅流した心筋への無細胞系細胞外基質のエマルションの腹腔内心筋注射は不適応の心臓再構築を源弱し、心臓機能を保存し、潜在的にC‐キット陽性細胞の採用を通じて筋線維芽細胞の増殖および血管新生を増加することによって、仲介した。p<0.05エマルション対対照。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象内の心不整脈を治療または予防する方法であって、哺乳動物細胞外基質を含む治療有効量の組成物を、前記対象の心臓組織に投与することを含み、前記方法は、心臓の心膜内の開口にパッチとして小腸粘膜下層を投与することを含まない、方法。
【請求項2】
前記心臓組織は、心筋、心外膜、心内膜、または心嚢である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心臓組織は、心嚢ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は、心不整脈を発症する危険性があるとして特定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記哺乳動物細胞外基質は、小腸粘膜下層、膀胱粘膜下層、胃粘膜下層、肝臓粘膜下層、および肝臓基底膜からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳動物細胞外基質は、小腸粘膜下層ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳動物細胞外基質は、哺乳動物細胞を培養することから、in vitroで産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物は、合成細胞外基質をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物細胞外基質は、真皮、筋膜、心嚢、実質組織、心筋細胞外基質からなる組織の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物細胞外基質は、哺乳動物組織由来からのコラーゲン足場である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記心不整脈は、心房細動または心室細動である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記哺乳動物細胞外基質は、パッチである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物細胞外基質は、注射可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物細胞外基質は、流動化形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳動物細胞外基質は、乳化される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物細胞外基質は、粉末またはエアロゾルである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記哺乳動物細胞外基質は、前記心臓組織に噴霧される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物は、心臓の心膜内の開口に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物は、心臓の心筋へ注射される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物は、心臓の心外膜または心内膜の表面へ投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記対象は、心臓手術を受けたことがある、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記対象は、心筋梗塞を起こしたことがある、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物は、抗不整脈薬、高脂血症治療薬、または抗炎症薬をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物は、細胞をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞は、幹細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
心不整脈を発症する危険性があるとして特定されている対象において心不整脈を治療または予防する方法であって、哺乳動物細胞外基質を含み、抗不整脈剤、高脂血症治療薬、細胞、タンパク質、またはそれらの組み合わせをさらに含む治療有効量の組成物を、前記対象の心臓組織に投与することを含む、方法。
【請求項27】
前記細胞は、幹細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質は、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、アミノグリカン、またはそれらの組み合わせである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記心臓組織は、心筋、心外膜、心内膜、または心嚢である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記哺乳動物細胞外基質は、小腸粘膜下層、膀胱粘膜下層、胃粘膜下層、肝臓粘膜下層、および肝臓基底膜からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物細胞外基質は、哺乳動物細胞を培養することからin vitroで産生される、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物は、合成細胞外基質をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記哺乳動物細胞外基質は、真皮、筋膜、心嚢、実質組織、心筋細胞外基質からなる組織の群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物細胞外基質は、哺乳動物組織由来からのコラーゲン足場である、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記心不整脈は、心房細動または心室細動である、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記哺乳動物細胞外基質は、パッチである、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記哺乳動物細胞外基質は、注射可能である、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記哺乳動物細胞外基質は流動化形態である、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
前記哺乳動物細胞外基質は、乳化される、請求項26に記載の方法。
【請求項40】
前記哺乳動物細胞外基質は、粉末またはエアロゾルである、請求項26に記載の方法。
【請求項41】
前記哺乳動物細胞外基質は、前記心臓組織に噴霧される、請求項26に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物は、心臓の心膜内の開口に投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物は、心臓の心筋へ注射される、請求項26に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物は、心臓の心外膜または心内膜の表面へ投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項45】
前記対象は、心臓手術を受けたことがある、請求項26に記載の方法。
【請求項46】
前記対象は、心筋梗塞を起こしたことがある、請求項26に記載の方法。

【公表番号】特表2012−518041(P2012−518041A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551181(P2011−551181)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/024441
【国際公開番号】WO2010/096458
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511201406)コーマトリックス カーディオバスキュラー, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】