説明

心房細動の治療

心房細動(AF)は、AFに罹患しているか又はAF罹患の危険性のある対象に対し一定量の活性薬剤を含んだ組成物を投与する工程により、治療又は回避することができる。前記活性薬剤は、4−メトキシ−N−(3,5−ビス−(1−ピロリジニル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンスルホンアミド(サルカルディン)又はその薬学的に受容可能な塩である。これにより、前記対象中の前記活性薬剤のCmax値は、約1μM〜約20μMの範囲内となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本出願は、米国仮出願番号第61/261,925号(出願日:2009年11月17日)に対する優先権を主張し、本明細書中、同文献の内容全体を参考のため援用する。
【0002】
本発明は、4−メトキシ−N−(3,5−ビス−(1−ピロリジニル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンスルホンアミド(サルカルディン;sulcardine)又はその薬学的に受容可能な塩による心房細動(AF)の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
本開示を通じて、多様な公開文献、特許及び公開特許明細書について引用及び言及する。本発明が関連する技術分野を説明するために、これらの公開文献、特許及び公開特許明細書の開示内容全体を参考のため援用する。
【0004】
心不整脈(「不整脈」としても知られる)は、心臓の異常電気活動によって特徴付けられる一連の状態を示す項目である。不整脈の例を挙げると、心室性期外収縮、心室頻拍、心室細動及び上室性頻脈性不整脈(例えば心房細動)がある。例えば、心房細動(AF)は上室性頻脈性不整脈であり、心房興奮の非協調に起因する心房機械機能の劣化によって特徴付けられる。持続性AF及び/又は慢性AFを有する場合、MIを含む血栓塞栓症及び脳卒中及び心不全の危険性が増す。AFが進行する仕組みにおいては、以下の2つの主なプロセスが発生する:すなわち、1つ又はいくつかの高速脱分極焦点における自動能の向上、及び1つ以上の回路を通じたリエントリーである。
【0005】
AFは、医療的ケアを必要とする最も一般的な不整脈であり、米国成人人口に占める有病率は1%に近い(米国における2006年における予測では600万人、米国における2020年までの予測では900万人)。AFの有病率は年齢と共に上昇し、80歳を越えた人口の有病率は8%となっている。米国及び欧州の人口動態の高齢化と共に、AFも、さらに一般的な心疾患となる。患者におけるAFの再発性発作は、平均で50%/年となっている。そのため、AFはヘルスケアシステムにおいて大きな負担となっており、米国における1件あたりの平均コストは$3600/年となっている。
【0006】
AFを有する場合、例えば、息切れ、胸部不快感又は胸部の痛み、及び運動不耐性を含む、生活の質へ悪影響を与える症状が発生する。患者のAF罹病歴が長くなるほど、心房中の血栓形成リスクも高まり、その結果、血栓塞栓性脳卒中リスクも高まり、その結果、長期抗凝固療法が必要となる。米国における全ての脳卒中症例のうち大部分が、持続性AF又は慢性AFに続発していると考えられている。AF患者においてかなりの高確率で発生する他の深刻な心血管事故を挙げると、心不全及び心筋梗塞(MI)がある。
【0007】
AF治療では、持続性AF及び慢性AFにおいて、主に電気的除細動及び抗凝固剤が用いられている。急性症候性AF又は発作性AFの患者の電気的除細動は、抗不整脈薬(AAD)又は電気的除細動の利用によって達成することができ、これにより洞律動(SR)が回復する。あるいは、医師が房室結節伝導を遅延させる薬剤を用いて拍動数を制御して、AF患者の心室拍動数を制御する場合もある。
【0008】
調律制御は患者拍動数制御よりも優れているのかについて、現在も大きな議論が行われているが、多くのオピニオンリーダーの意見によれば、患者がSRで、抗凝固が不要な方が好ましいとされている。いずれかのアプローチを用いた場合による重篤な心臓血管(CV)の結果又は死亡についての調査研究は、現時点では結論が出ていない。除細動(defibrillation)による電気的除細動は大がかりな作業であり、また、先ず麻酔専門医の下で患者を鎮静させる必要もあり、また、筋肉痛及び皮膚火傷も高確率で発生する。抗不整脈薬は、作用機序に基づいて複数のクラスの薬理学的分類に分類される。以下のような5種類のAADクラスが認識されている。
クラスI:ナトリウムチャネルブロッカー
クラスII:ベータブロッカー
クラスIII:カリウムチャネルブロッカー
クラスIV:カルシウムチャネルブロッカー
クラスV:その他(アデノシン、ジゴキシンなど)
【0009】
現時点においては、新規抗AF剤が開発されいるものの、薬理学的除細動は一般的になっていない。なぜならば、薬理学的除細動の場合、有効率が低く、薬剤に起因する心室性不整脈(TdeP)、心室頻拍、又は現在利用可能な薬剤と関連する他の重篤な不整脈の危険性があるからである。また、薬理学的除細動は電気的除細動よりも有効性が低いため、除細動は、不応性急性心房細動の治療において主に用いられている。
【0010】
プロポフェノン (propofenone)、フレカイニド(flecanide)及びイブタリド
(ibutalide) などの最も普及している薬剤の場合、TdePを誘発する危険性があるため、これらの薬剤のうちほとんどは、虚血性心疾患、心筋梗塞の既往、及びQT延長症候群のいずれかに罹患している、及びそのいずれかの病歴がある患者には推奨されない。これらの薬剤のうち複数のもの、例えば、ソルタロル
(sotalol)、フレカイニド、プロポフェノン及びドロナダロン (dronadarone)は、心臓収縮性に悪影響も与えるため、心臓収縮に起因する心不全の原因となる。最も一般的な重度有害事象として、催不整脈作用がある。催不整脈作用は一般的にはヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(hERG)符号化カリウムチャネルIKrの封鎖と関連し、その結果、QT間隔延長が発生し、これに相応して致死的心室不整脈TdePが発生する。特に、IKrに対する阻害活性を持たないナトリウムチャネルブロッカーも、活動電位持続時間を長期化させることが可能であるため、催不整脈性が高い場合があり(フレカイニド)、その場合、Caオーバーロードが顕著となり、リエントリー調律が誘発される。
【0011】
抗不整脈剤(例えば、ナトリウムチャネルブロッカー(クラスI)、カルシウムチャネルブロッカー(クラスIV)及びベータブロッカー(クラスII)、及びジゴキシン及びアデノシン(クラスV))は全て一定の抗AF特性を有しているものの、クラスIIIの抗不整脈剤は全てカリウムチャネル阻害剤であり、医療専門家による最近の合意によれば、混合チャネルブロッカーが安全性において有利であり且つ心房不整脈において有効であることが認識されているため、抗AF用途として混合チャネルブロッカーが好ましい。急性AF、持続性AF及び発作性AFが再発した場合、最終的には慢性AFに繋がり、心房組織において電気的リモデリングが発生する。これは、適応反応であり、異なる心房からの相対的貢献により、イオンチャネルが変化する。このようなチャネルトラフィッキングの変化は、活動電位(AP)持続時間の短縮によって示され、このような活動電位(AP)持続時間の短縮は、超高速カリウム電流IKur、一過性外向きカリウム電流Ito、及びムスカリン性アセチルコリンカリウム電流IKAchからの比較的高い貢献によって発生し、また、遅延整流カリウム電流及びカルシウム電流による影響の低下によっても発生する。遅延整流カリウム電流は、2つの構成成分からなる(すなわち、高速[IKr]及び低速[IKs]))。慢性AFは、医学的介入による治療が困難であり、これらの患者におけるSRの維持は極めて困難であり、そのため、AFからまたAFが発生する状態となっている。
【0012】
カリウムチャネルを標的とする現在利用可能なAADの場合、後期フェーズ3再分極電流IKr及びIKsをブロックする傾向があるため、慢性AFによってフェーズ3が短くなるため、AF時における有効性が低い場合がある。しかし、この仮説はまだ確証されていない。心室中の同じイオンチャネルを標的とする現在利用可能なAADの場合、QT間隔が長くなることがあり、その結果、TdePの危険性が高まる。心房特有のチャネル(IKur、Ito、IKAch)に対して選択性のあるAADの場合、AF電気的リモデリングの後により高い活性を示し、そのため、心室催不整脈性の危険性を最小限に抑えつつ有効な調律制御が得られ得るが、これらの心房選択性チャネルのうち少なくとも1つ(IKAch)のダウンレギュレーションが、持続性/慢性AFについて報告されている。
【0013】
サルカルディン、4−メトキシ−N−(3,5−ビス−(1−ピロリジニル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンスルホンアミド、及びその塩(例えば、サルカルディン硫酸エステル)は、有効な抗不整脈活性を有する新規の化学物質の一群を構成する。サルカルディンは、マルチイオン(高速及び低速Na、L−Ca、及びKIto)のチャネルブロッカーであり、置換スルホンアミドクラスの抗不整脈のおそらく唯一の例である。サルカルディン塩は、上室性頻脈性不整脈、心室性期外収縮、心室頻拍及び心室細動を含む不整脈の治療のために静脈注射又は経口投与を介して用いることができる。
【0014】
加えて、今日までの証拠により、サルカルディン及び塩の1つの利点として、MI後突然死覚醒イヌモデル及び有効ウサギ心室ウェッジモデルを含む厳密な前臨床安全性モデルにおいて実証されているような、顕著な催不整脈性活性が無い点があることが分かっている。さらに、サルカルディン及び塩の場合、MI後イヌモデルにおいて、フレカイニドにおいて見られたような除細動閾値の上昇がみられず、除細動失敗の危険性も高くならないことも分かっている。これらのデータに基づけば、サルカルディン及び塩は、明らかに催不整脈性が極めて低いため、器質的心疾患、長期QR症候群、及び心室不整脈(例えば、心室性期外収縮(PVC)、心室頻拍(VT)、及び心室細動(VF))の存在における急性心房細動及び再発性心房細動の治療に用いることができ、また、静脈内投与及び経口投与に適した製剤設計にすることが可能であるため、急性投与設定又は慢性投与設定のいずれかにおいて用いることが可能である。
【発明の概要】
【0015】
in vitroヒト心房心筋細胞において、サルカルディン及びその塩を用いた場合、IC50値が26〜100μMとなることが報告されている。これらの発見によれば、イオンチャネルの有効な薬理学的封鎖をin vivoで行う場合、抗不整脈効果を引き出すためには、濃度がこれらのIC50値を越える(恐らくは、これらのIC50値の数倍となる)必要がある。さらにサルカルディン硫酸エステルの血漿濃度がこのIC50の範囲に近いか又はこの範囲を超えた場合、とりわけ血圧低下、QT延長、及び心室収縮性への望ましくない影響に関連することが分かった。そのため、AFに対して有効なサルカルディン血液濃度を、厄介な副作用無しに達成することは不可能であると予測されていた。
【0016】
このような予測に反して、本発明によれば、これらの副作用の発生無く、サルカルディン又はサルカルディンの薬学的に受容可能な塩を用いたAFの治療が可能となる。よって、本発明の一局面によれば、AFの治療方法が提供される。前記方法は、AFに罹患しているか又はAF罹患の危険性のある対象に対する一定量の活性薬剤を含んだ組成物の投与を含む。前記活性薬剤は、4メトキシ−N−(3,5−ビス−(1−ピロリジニル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンスルホンアミド(サルカルディン)又はその薬学的に受容可能な塩である。前記対象中の活性薬剤の最大定常状態血漿濃度(Cmax)は、約1μM〜約20μMである。本発明はまた、前記活性薬剤のCmaxが約0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM又は5μM〜約25μM、20μM、18μM、15μM、12μM、10μM、9μM、8μM、7μM又は6μMの範囲内にある治療も企図する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、高速IV点滴後のサルカルディン硫酸エステルの薬物動態(PK)曲線を示す。サルカルディン硫酸エステルの合計注入量は、8mg/kgであった。
【0018】
【図2】図2は、突然死モデルの麻酔犬にサルカルディン硫酸エステルを45分間静脈内点滴投与した場合の血行力学的効果を示す。X軸上の時間は、45分間の薬剤点滴完了後の時間を示す。[発明の詳細な説明]
【0019】
本出願全体において、本発明による化合物、組成物及び方法の多様な実施形態について以下の記載で説明する。記載される多様な実施形態は、ひとえに例示的なものであり、代替的種類を記載しているものとして解釈されるべきではない。すなわち、本明細書中の記載は、範囲が重複している場合がある。以下に記載される実施形態は、ひとえに例示的なものであり、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【0020】
I. 定義
他に明記されていない限り、本記載において用いられる用語及び表現の定義は以下の通りである。
【0021】
本記載において、「治療」とは、予防目的及び/又は治療目的のための薬学組成物又は薬剤の投与を指す。「治療法」とは、不整脈などの病態に罹患している患者への治療付与を指す。よって、好適な実施形態において、治療とは、治療的に有効な量の抗不整脈剤の哺乳類への投与を指す。
【0022】
治療「対象」とは、原核細胞又は真核細胞、組織培養物、組織又は動物(例えば、ヒトを含む哺乳類)を指す。ヒト以外の動物の治療対象を挙げると、例えば、サル、ネズミ、イヌ、ウサギ科(例えばウサギ)、家畜、競技用動物及びペットがある。
【0023】
本明細書中で用いられる「抗不整脈剤」という用語は、対象内における不整脈の治療又は関連症状の軽減の治療効果を有する分子を指す。不整脈の非限定的例を挙げると、例えば心房細動などの上室性頻脈性不整脈、心室性期外収縮、心室頻拍、及び心室細動がある。一局面において、抗不整脈剤は、4−メトキシ−N−(3,5−ビス−(1−ピロリジニル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンスルホンアミド(サルカルディン)又はその薬学的に受容可能な塩である。別の局面において、抗不整脈剤は、サルカルディン硫酸エステルである。
【0024】
本発明によれば、サルカルディン、4−メトキシ−N−(3,5−ビス−(1−ピロリジニル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンスルホンアミドの薬学的に受容可能な塩は、不整脈の治療において有用な製剤設計における活性薬剤であり得る。このようなサルカルディン塩の例を以下に挙げる:(A)無機酸塩(例えば、酢酸、ホウ酸塩、重炭酸塩、硫酸エステル、塩酸塩、臭化物、塩化物、ヨウ化物、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸エステル、リン酸塩、二リン酸塩、及びフルオロリン酸塩)、(B)有機酸塩(例えば、アムソナート(4,4−ジアミノスチルベン−2,2−二硫酸塩)、酸性酒石酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、エデト酸カルシウム、カンシル酸、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、グルタマート、グルコネート、グルセプテート、乳酸塩、ラクトビオン酸、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸エステル、マンデル酸、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムチン酸、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸(1,1−メテン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、エインボネート)、パモ酸、パントテン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸エステル、硫酸エステル、スルホサリチル酸、スラマート、プロピオン酸塩、吉草酸塩、フマル酸塩、フマル酸エステル、及び酒石酸塩、並びに(C)アルカリ金属塩及びアルカリ土類塩(例えば、サルカルディンのナトリウム、カリウム、リチウム及びカルシウム塩)。この文脈において、薬学的に受容可能な塩は、1つよりも多くの荷電原子、よって1つ以上の対イオンをその構造内に有し得る。
【0025】
「有効な量」、「治療的に有効な量」、及び「薬学的に有効な量」という表現は、治療効果をもたらす活性薬剤(本開示中の抗不整脈剤)の量を示す。治療において有用な活性薬剤の投与量が、治療的に有効な量である。よって、治療的に有効な量とは、臨床試験結果及び/又はモデル動物研究によって判明した所望の治療効果が得られる活性薬剤量である。特定の実施形態において、前記活性薬剤は、所定の投与量だけ投与される。よって、治療的に有効な量とは、投与された量である。この量及び抗不整脈剤量は、規定通りに従来の方法によって決定することができ、異なる要素(例えば、関連する特定の不整脈事象)の関数として変化する。この量は、患者の身長、体重、性別、年齢及び病歴に応じても異なり得る。
【0026】
「キャリア」又は「賦形剤」とは、例えば化合物の投与を促進するために(例えば、化合物の放出及び/又はバイオアベイラビリティを制御するために)用いられる化合物又は材料である。固形キャリアを挙げると、例えば、でんぷん、乳糖、第二リン酸カルシウム、スクロース、及びカオリンがある。液体キャリアを挙げると、例えば、滅菌水、生理食塩水、緩衝液、非イオン界面活性剤、及び食用油(例えば、油、ピーナツ油及びごま油)がある。加えて、当該分野において一般的に用いられている多様なアジュバントも用いることが可能である。上記及び他のこのような化合物について、例えば、以下の文献に記載がある:Merck
Index,Merck&Company,Rahway,N.J。薬学組成物中の多様な構成要素の含有についての検討について、例えば以下の文献に記載がある:Gilman et al.(Eds.)(1990);Goodman and Gilman’s:The Pharmacological Basis of THERAPEUTICS,8thEd.,Pergamon Press。
【0027】
「薬学的に受容可能なキャリア」及び「薬学的に受容可能な賦形剤」という表現は、任意且つ全ての溶媒、分散媒、コーティング、等張剤及び吸収遅延剤などを指す。薬学的に活性の物質に対するこのような媒体及び薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が当該活性成分と適合しない場合を除いて、当該媒体又は薬剤の治療組成物中での使用が企図される。補助活性成分を組成物中に含めてもよい。適切な薬学的に受容可能な賦形剤を非限定的に挙げると、緩衝液、希釈剤、等張化剤、安定剤、抗酸化剤、防腐剤及びこれらの混合物がある。
【0028】
「緩衝液」という用語は、薬学的に受容可能な賦形剤を指し、薬学調製物のpHを安定させる。適切な緩衝液は当該分野において周知であり、文献にも記載されている。薬学的に受容可能な緩衝液の内容物を非限定的に挙げると、グリシン緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸塩緩衝液、コハク酸エステル緩衝液及びリン酸塩緩衝液がある。用いられる緩衝液から独立したpHの調製範囲として、約2〜約9の範囲あるいは約2.5〜約7の範囲、あるいは約3〜約5の範囲あるいは約3の当該分野において公知の酸又は塩基(例えば、コハク酸、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸及びクエン酸、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム)がある。適切な緩衝液を非限定的に挙げると、グリシン緩衝液、ヒスチジン緩衝液、2モルホリノエタンスルホン酸(MES)、カコジル酸塩、リン酸塩、酢酸、コハク酸エステル、及びクエン酸塩がある。一局面において、前記緩衝液はグリシン緩衝液である。別の局面において、前記緩衝液はヒスチン緩衝液である。前記緩衝液の濃度は、約1mM〜約100mM、あるいは約2mM〜約40mM、あるいは約5mM〜約20mMであり得る。
【0029】
「希釈剤」、「フィラー」、「賦形剤」及び「薄め液」とは、活性薬剤と共に錠剤又はカプセルに付加される不活性成分である。希釈剤は、結合剤、(消化器系内における錠剤の崩壊を支援する)崩壊剤、又は調味料として用いられ得る。一局面において、希釈剤は固体である(例えば、でんぷん、セルロース誘導体、及びステアリン酸マグネシウム)。別の局面において、希釈剤は、液体(例えば、水、生理食塩水、及びブドウ糖液(例えば、5%))である。
【0030】
「等張化剤」という表現は、製剤設計の等張性を調整するために用いられる、薬学的に受容可能な薬剤のカテゴリを指す。等張性とは、一般的には、溶液に対する(通常はヒト血清に対する)浸透圧を指す。製剤設計は、低張、等張又は高張であり得る。一局面において、製剤設計は等張である。等張製剤設計は、液体又は固体形態(例えば、凍結乾燥形態)から再構築された液体であり、比較相手としての他の溶液(例えば、生理食塩水及び血清)と同じ等張性を有する溶液を指す。適切な等張剤を非限定的に挙げると、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、スクロース、グリセリン及び本明細書中に定義されるようなアミノ酸、糖類の群からの任意の構成要素、並びにこれらの組み合わせがある。いくつかの実施形態において、マンニトールの濃度は約1%〜約20%(w/v%)であるか、あるいは約2%〜約10%であるか、あるいは約2.5%〜約5%である。一局面において、マンニトールの濃度は約3%である。
【0031】
「安定剤」という用語は、薬学的に受容可能な賦形剤であり、製造時、保管時及び使用時における活性薬学成分及び/又は製剤設計の化学的劣化及び/又は物理的劣化を保護する。安定剤を非限定的に挙げると、糖類、アミノ酸、ポリオール、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤、シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、スルホブチルエチルβシクロデキストリン、βシクロデキストリン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG3000、3350、4000、6000)、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、キレート剤(例えば、EDTA))がある。一局面において、安定剤は、亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、EDTA、ブドウ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0032】
本文脈において、「界面活性剤」という用語は、両親媒性構造を有する、薬学的に受容可能な有機物質を指す。すなわち、「界面活性剤」は、複数の対照的な溶解度傾向(典型的には、油溶性の炭化水素鎖及び水溶性のイオン基)を含む。界面活性剤は、表面活性部分の荷電に応じて、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び非イオン界面活性剤に分類することができる。界面活性剤は、多様な薬学組成物及び生体物質の調製湿潤剤、乳化剤、可溶化剤及び分散剤として用いられることが多い。本明細書中に記載の薬学製剤設計のいくつかの実施形態において、界面活性剤の量は、重量/体積パーセント(w/v%)によって表される。適切な薬学的に受容可能な界面活性剤を非限定的に挙げると、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)のグループ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton-X)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体(Poloxamer、Pluronic)、又はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がある。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリソルベート20、(Tween20(登録商標)の名称で販売)及びポリソルベート80(Tween80(登録商標)の名称で販売)を含む。ポリエチレンポリプロピレン共重合体を挙げると、Pluronic(コピーライト)F68又はPoloxamer188(登録商標)の名称で販売されているものがある。ポリオキシエチレンアルキルエーテルを挙げると、Brij(登録商標)の名称で販売されているものがある。アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルを挙げると、Triton−X(登録商標)の名称で販売されているものがある。ポリソルベート20(Tween20(登録商標))及びポリソルベート80(Tween80(登録商標))。
【0033】
「抗酸化剤」とは、他の分子の酸化を遅延又は回避することが可能な分子を指す。酸化とは、物質からの電子を酸化剤へと移動させる化学反応である。酸化反応により発生した遊離基により開始した連鎖反応により、製品治療が不安定化し、最終的には製品活性に影響する。抗酸化剤は、遊離基中間体を除去することによりこれらの連鎖反応を終了させ、自身を酸化させることにより、他の酸化反応を抑制する。その結果、抗酸化剤は、往々にして還元剤、キレート剤及び脱酸素剤(例えば、チオール、アスコルビン酸又はポリフェノール)となる。抗酸化剤の非限定的例を挙げると、アスコルビン酸(AA、E300)、チオ硫酸塩、メチオニン、トコフェロール(E306)、没食子酸プロピル(PG、E310)、三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチルヒドロキシアニゾール(BHA、E320)及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、E321)がある。
【0034】
「防腐剤」とは、微生物増殖又は望ましくない化学的変化による分解を回避するための天然化学物質又は合成化学物質であり、製品(例えば、食物、医薬品、塗料、生体サンプル、木材、)などに添加される。防腐剤添加物は、単独で用いることもできるし、あるいは、他の保存方法と併用してもよい。防腐剤は、バクテリア及び菌類の増殖を抑制する抗菌防腐剤であってもよいし、あるいは、構成要素の酸化を抑制する抗酸化剤(例えば、酸素吸収剤)であってもよい。一般的な抗菌防腐剤を挙げると、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、クロルヘキシジン、グリセリン、フェノール、ソルビン酸カリウム、チメロサール、亜硫酸塩(二酸化硫黄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなど)、及び2ナトリウムEDTAがある。
【0035】
II.本発明を実施するための実施形態
ヒトの心房心筋細胞において、サルカルディン及び塩により、26〜100μMの範囲内においてIC50が示されていることが報告されている。これらの発見に基づいて、イオンチャネルの有効な薬理学的封鎖をin vivoで行うためには、抗不整脈効果をを得るために、濃度がこれらのIC50値を越えること(恐らくはこれらの値の2〜3倍)が必要となると考えられている。
【0036】
サルカルディン硫酸エステルの血漿濃度が上記のIC50の範囲に近いか又はこの範囲を上回った場合、副作用(例えば、血圧低下、QT延長及び心室収縮性への影響)を起こすことが分かっている。例えば、ミニ豚において13.6μMCmax、霊長類において21μMCmax、及びイヌにおいて25μMCmaxである場合、血圧低下などの副作用がみられる。そのため、AFに対して有効なサルカルディン硫酸エステルの血液濃度を、厄介な副作用を引き起こすことなく達成することは不可能であることは、当業者であれば理解している。しかし、本発明を用いれば、これらの副作用を引き起こすことなく、サルカルディン又は薬学的に受容可能な塩によってAFを治療する方法が可能となる。
【0037】
本発明の一局面によれば、心房細動(AF)を治療する方法が提供される。前記方法は、AFに罹患しているか又はAF罹患の危険性がある対象に対し、一定量の活性薬剤を含んだ組成物を投与する工程を含む。前記活性薬剤は、4−メトキシ−N−(3,5−ビス−(1−ピロリジニル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンスルホンアミド(サルカルディン)又はその薬学的に受容可能な塩である。前記工程により、前記対象中の前記活性薬剤の最大定常状態血漿濃度(Cmax)が約1μM〜約20μMの範囲内になる。あるいは、前記対象中の前記活性薬剤のCmaxは、約0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM又は5μM〜約25μM、20μM、18μM、15μM、12μM、10μM、9μM、8μM、7μM又は6μMの範囲内である。
【0038】
AFの治療における薬理学的治療の目的は、治療しているのは急性AF又は発作性AFであるか、正常洞律動に対する高速電気的除細動を誘導するのか、又は薬剤の長期投与によるAF再発を回避するためなのかに応じて異なる。頻繁な再発歴の無い急性AF又は発作性AFの患者の場合、目的は、典型的には単一回の薬剤投与又は制限された投与回数で、AFエピソードのある患者の薬理学的電気的除細動を迅速に誘導することである。あるいは、再発性AFエピソードを回避するには、長期の予防治療が必要になる。
【0039】
急性AF又は発作性AFの治療において電気的除細動を迅速に誘導するため、サルカルディン及びその薬学的に受容可能な塩の有効性はピーク血漿濃度の関数であるため、電気的除細動によって正常洞律動を得るための時間を得るために、高血漿レベルを、例えば、数分間〜1時間未満の最短期間にわたって維持する必要がある。その期間後、患者は、薬剤による血漿レベル治療を継続する必要なく、正常洞律動となるはずである (ただし、他の引き金となる事象に起因して将来において不整脈が再発した場合を除く)。AFエピソードの既往症が無い又はほとんど無い患者の場合、再発リスクは低く、そのため、電気的除細動後の継続的薬剤治療は適用されない。急性AF又は発作性AFの適応の場合、数日間から数ヶ月間から数年間にわたってAF再発を一度に防ぐため、薬剤の血中濃度(血漿−時間曲線下における一定剤濃度領域)を長期間一定に保つ必要は無い。このような臨床的状況における薬剤の使用は、心臓を正常洞律動に迅速に戻すための電気的除細動の利用に類似している。
【0040】
また、持続性AF又は頻発性再発AFの患者の治療におけるサルカルディン及びその薬学的に受容可能な塩の有効性は、ピーク血漿濃度ではなく、血漿−時間曲線下の領域の関数であることも分かっている。AF既往及び頻繁なAF再発のある患者の場合、上述した急性コホートの再発リスクがずっと高い。頻繁なAFエピソード又は長期(慢性)AFエピソードを経た後の心房は、リモデルするようであり、その結果、患者において将来の事象が発生する危険性が増す。すなわち、臨床医が言うように、AFによって次のAFが発生する。
【0041】
このような慢性AF患者における再発性AFを防ぐためには、薬剤濃度ピーク及びトラフ濃度を、投与期間にわたって、高血漿濃度に関連する有害事象の危険性を最小化しつつ最小限に薬理学的に活性な濃度を上回る血中濃度の範囲に維持する必要がある。そのため、急性/発作性AF及び再発性AF双方の治療において、例えば放出製剤設計の制御又はゆっくりとした静脈内点滴による長期間にわたる活性薬剤投与を行う必要がある。急性AF/発作性AFのための医療設定における目的は、数分間〜1又は2時間にわたって高い血中濃度を達成することで、心臓が薬剤治療に反応して正常洞律動へと戻ることが可能なだけの十分な時間をとることである。高速IV押圧による薬剤投与の代わりにこのように薬剤投与を連続的な短期間の点滴で行うことで、電気的除細動が得られるだけの十分な期間にわたって高い血中濃度を達成しつつ、血漿濃度ピークが鈍化し、血圧低下の危険性が最小になる。
【0042】
以下の例に示すような、薬剤のCmaxを測定する従来技術が存在する。さらに、活性薬剤のCmaxは、対象に対して投与される活性薬剤の量、前記対象の特性、投与経路及び他の関連情報に基づいて決定することができる。よって、本発明の上記実施形態一局面において、前記投与される活性薬剤の量は、約90mg/kgよりも低いか、あるいは約80mg/kg、約70mg/kg、約60mg/kg、約50mg/kg、約40mg/kg、約30mg/kg、約20mg/kg、約10mg/kg、約9mg/kg、約8mg/kg、約7mg/kg、約6mg/kg、約5mg/kg、約4mg/kg、約3mg/kg、約2mg/kg、約1mg/kg、約0.7mg/kg、約0.5mg/kg、約0.3mg/kg、約0.2mg/kg又は約0.1mg/kgよりも低い。別の局面において、前記投与される活性薬剤の量は、約0.1mg/kg〜約90mg/kg、約0.5mg/kg〜約80mg/kg、約1mg/kg〜約70mg/kg、約3mg/kg〜約30mg/kg、又は約5mg/kg〜約10mg/kgである。
【0043】
前記投与される活性薬剤の量は、前記対象の特性(例を非限定的に挙げると、前記対象の種、性別及び年齢)に部分的に依存する。例えば種間における投与量の変換を行うための多様な数学アルゴリズムについて、例えば以下の文献に記載がある:Guidance of Industry−Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers,U.S.Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration,Center for Drug Evaluation and Research (July 2005)、(www.fda.gov/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/ucm065014.htm)。よって、イヌに対する前記活性薬剤の1mg/kgでの投与は、ヒトに対する約0.54mg/kgでの投与に相当し、イヌに対する前記活性薬剤の0.3mg/kgでの投与は、ヒトに対する約0.16mg/kgでの投与に相当する。
【0044】
さらに、前記活性薬剤量と及びCmax及びAUCとの間の変換率は、所与の投与経路及び投与様態に基づいて実験的に決定することができる。このような決定は、当該分野において従来からある。
【0045】
上記したように、本発明の製剤設計の活性薬剤は、サルカルディン、4−メトキシ−N−(3,5−ビス−(1−ピロリジニル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンスルホンアミドの薬学的に受容可能な塩であり得る。以下、このような塩の調製について、反応化学を用いて説明する。
【0046】
1.サルカルディンと有機酸又は無機酸との反応
アミン(例えば第3アミンRN)が強無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸)と反応すると、対応するアンモニウム塩RNH(XはCl、Br、又はI)が発生する。一般的に、この反応を行う手順を述べると、先ずアミンを水性溶媒中に溶解させた後、僅かに過剰な強酸を前記アミンに付加する。典型的プロトコルにおいては、サルカルディンを水性溶媒又は水性−アルコール性溶媒中に溶解させた後、フラスコを氷浴中に入れて冷却する。この冷却攪拌溶液に対し、僅かに過剰な強酸を滴下する。前記酸の付加後、反応混合物を室温にし、濃縮させ、対応する塩を沈殿させ、その後この塩をフィルタリングにより分離する。約1.1当量の強酸を付加した場合、サルカルディンのモノ塩が形成され、約2.1当量の強酸を付加した場合、ビス塩が容易に得られる。
【0047】
サルカルディンの有機酸塩(例えば酢酸塩)の合成は、水性有機溶媒システム(例えば、1.0〜2.0当量の酢酸を含む水−メタノール又は水−アセトニトリル溶媒システム)を用いた逆相高圧液体クロマトグラフィーカラムを通じて化合物を送ることにより、行うことができる。その結果、サルカルディンのモノ塩及びビス塩が形成される。以下の文献を参照されたい:Streitwiesser et al. INTRODUCTION TO ORGANIC CHEMISTRY 4th ed.(Macmillan Publishing Co.)、736ページ)。
【0048】
2.サルカルディンとハロゲン化アルキルとの反応
一般的に、第4級ハロゲン化アンモニウムの調製は、アルキル又はハロゲン化アラルキルと適切な第3アミンとを非反応性有機溶媒中において反応させることにより、行うことができる。同様に、サルカルディンとアルキル臭化物又はアルキルヨウ化物とをエーテル又はテトラヒドロフラン中において室温で反応させると、メチルピロリジニウムカチオンの形成を介して、対応するメチル塩を形成することができる。反応物中のハロゲン化アルキルの化学量論により、形成される塩の種類が決定する。よって、1.0モルのハロゲン化アルキルを付加した場合、単一の対応するピロリジニルメチル塩が得られ、2.0モルのハロゲン化アルキルを付加した場合、ビス塩が形成される(Streitwiesser et al.、同上、737ページを参照)。
【0049】
3.サルカルディンのアルカリ金属塩の形成
サルカルディンのアルカリ金属塩を合成するには、スルホンアミドの‐NHプロトンの抽出を可能にするための強塩基の使用が必要となる。そのため、水素化ナトリウムをサルカルディンの低温高速攪拌溶液へと非プロトン性無水溶媒(例えば無水テトラヒドロフラン)中で付加した場合、化1に示すようなナトリウム塩が形成される。以下の文献を参照:Singh et al.、BIOORGANIC&MED.CHEM.LETTERS16:3921−26(2006)。
【化1】

【0050】
スクラディン(sucradine)溶液を含む低温丸底フラスコに対し、水素化ナトリウムのテトラヒドロフラン溶液を滴下することにより反応を行う。水素化ナトリウムの付加後、反応物を室温まで加熱し、攪拌する。その後、水素ガスが発生しなくなると、反応は完了である。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記対象に投与された組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤又はキャリア又は他の薬剤を更に含む。前記組成物中の活性薬剤の量は、当業者によって用いられる範囲全体内において異なり得る。典型的には、前記組成物は、重量パーセント(wt%)ベースにおいて、製剤設計全体に基づいて、約0.01〜99.99wt%の前記活性薬剤を含む。その他の残りは、1つ以上の適切な薬学賦形剤である。好適には、前記活性薬剤は、約1〜80wt%のレベルで存在する。
【0052】
本発明を実行するために適した薬学的に受容可能な賦形剤を非限定的に挙げると、緩衝液、希釈剤、等張化剤、安定剤、抗酸化剤、防腐剤及びこれらの混合物がある。適切な薬学的に受容可能な賦形剤の例を本明細書中に開示する。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記薬学的に受容可能な賦形剤は、緩衝液である。一局面において、前記緩衝液は、グリシン緩衝液である。別の局面において、前記緩衝液は、ヒスチジン緩衝液である。一局面において、前記緩衝液の濃度は、約1mM〜約100mM、あるいは約2mM〜約40mM、あるいは約5mM〜約20mMである。別の局面において、前記緩衝液の濃度は約10mMである。前記緩衝液のpHは、独立的に調整することができる。一局面において、前記緩衝液のpHは、約2〜約9、あるいは約2.5〜約7、約3〜約5あるいは約3である。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記薬学的に受容可能な賦形剤は、希釈剤である。一局面において、前記希釈剤は、生理食塩水である。別の局面において、前記希釈剤は、5%ブドウ糖である。
【0055】
さらなるいくつかの実施形態において、前記薬学的に受容可能な賦形剤は、安定剤である。一局面において、前記安定剤は、ソルビトール、EDTA及びグリセロールからなる群から選択される。別の局面において、前記安定剤はソルビトールであり、前記組成物中に約3%の濃度で存在する。さらに別の局面において、前記安定剤はEDTAであり、前記組成物中に約0.05%の濃度で存在する。さらに別の局面において、前記安定剤はグリセロールであり、前記組成物中に約2%の濃度で存在する。
【0056】
前記投与される活性薬剤又は前記組成物の有効量は、実験的に決定することができ、特定の薬剤、治療又は軽減すべき疾病又は症状、治療対象の年齢、性別及び体重、製剤設計の投与計画、病状の深刻度、投与方法などによって異なり、これらは全て、当業者であれば容易に決定することができる。
【0057】
前記活性薬剤又は前記組成物の投与は、当該分野において公知の方法によって行うことができる。一局面において、投与経路は、筋肉内注入である。別の局面において、投与経路は、静脈内注入である。別の局面において、投与経路は、皮下注入である。さらなる別の局面において、投与経路は、経口投与、直腸投与、口腔投与、膣内投与、舌下投与、経皮投与、吸入投与又は経鼻投与である。また、好適な経路は、レシピエントの状態及び年齢並びに治療対象疾病によって異なることが理解される。静脈内投与は、薬剤の血中濃度を高速及び一貫させるための好適な手段であり、経口投与、経鼻投与、口腔投与、舌下投与、経皮投与又は直腸投与又は急性又は発作性AFに対する心変換のための好適な投与経路の他の手段に伴う変動を回避できる。再発性AFの治療においては、毎日の投与が無期限ではないにしろ長期期間にわたって行われることが一般的であり、非経口投与方法はあまり望ましくない。そのため、特定の放出制御製剤を使用する場合、血流中への薬剤の吸収の制御及び継続を経時的に行うためには、経口投与経路又は経皮投与経路がより好適である。これらの投与経路は、患者の服薬順守の観点からも最も望ましい。投与における最も効果的な手段及び量を決定する方法は、当業者にとって公知であり、治療に用いられる組成物、治療目的、及び治療対象によって異なる。治療担当医師によって選択された投与レベル及びパターンは、投与を単回又は複数回行うことができる。適切な投与量の設計及び投与方法は、当該分野において公知である。
【0058】
前記活性薬剤又は前記組成物の投与は、1回だけ行ってもよいし、あるいは、連続的に複数回行ってもよい。複数回の投与は、類似の投与量で行ってもよいし、あるいは、初回の投与量よりも後続投与量を少なくしたり、放出/送達を制御してもよい。投与の量及び頻度は、当該分野において公知の方法により決定することができ、継続リスクの危険性、活性成分の半減期、活性薬剤又は組成物の毒性などの要素によって異なる。
【0059】
本発明の製剤設計の投与は、対象の1つの部位に対して行ってもよいし、あるいは対象の複数部位に対して行ってもよい。投与の量及び部位は、当該分野において公知の方法によって決定することができる。一局面において、前記投与は、対象の大腿部又は腕部における1回以上の静脈注射である。別の局面において、前記投与は、対象の大腿の後部における1回以上の筋肉内注射である。
【0060】
本発明の方法及び製剤設計によって適切に治療される対象は、ヒトを含む哺乳類であり得る。ヒト以外の治療対象動物を挙げると、サル、ネズミ、イヌ、ウサギ科(例えばウサギ)、家畜、競技用動物及びペットがある。
【実施例】
【0061】
本発明は、以下の例を参照すればさらに理解される。これらの例は、ひとえに本発明を例示するものである。本発明の範囲は、これらの例示的実施形態によって限定されない。これらの例示的実施形態は、本発明の単一の局面を例示するものに過ぎない。機能面において相当する任意の方法は、本発明の範囲内である。当業者であれば、上記の記載及び添付図面を参照すれば、本明細書中の記載の他に本発明の多様な改変を想起する。このような改変は、添付の特許請求の範囲内である。
【0062】
実施例1.多様な種から分離された心房心筋細胞中の半最大阻害(IC50)における抑制濃度
ウサギ心房及びヒト心房から得たIC50値(表1)並びに上記の開示から、心房組織中の高速及び低速Naチャネル、L型Caチャネル、Ikrチャネル及びItoチャネルの有意義なイオンチャネル封鎖と、心房抗不整脈効果とを得るためには、目標血液濃度又は心臓組織濃度を26μM〜100μMの範囲内に納める必要があることが分かる。

表1: ウサギ及びヒトの心房心筋細胞IC50

【表1】

【0063】
実施例2.イヌにおける多様な投与レベルのサルカルディン硫酸エステルの心臓血管に対する安全効果と達成された血中濃度
犬にモルヒネ投与(2mg/kg皮下)を行った後、約10〜19分後に麻酔を投与した。犬への麻酔は1%α−クロラロース(100mg/kg静脈内)によって行い、その後α−クロラロースを一定点滴した(35〜75mg/kg/時間、IV)。2匹の健康な雌犬に対し、サルカルディン硫酸エステル静脈内投与を15分間にわたり、酢酸緩衝液系において投与量を10、30及び90mg/kgに徐々に上げて行い、投与間隔を60分間空けて行った。薬剤投与後、犬に対し、心室、肺及び周辺についての血行動態変化の評価を行った。この評価は、Swanz Ganzカテーテル及び大腿部カテーテルの使用と、血液酸素飽和度、被験物質血中濃度、体温、血液生化学、血液学、ECG及びヒスタミンレベルの監視とによって行った。
【0064】
血行動態の結果
サルカルディン硫酸エステルの全投与において、血行力学的効果を観測した。イヌに対するサルカルディン硫酸エステルの初回点滴を10mg/kgで行った際、心拍数(HR)の急上昇(+194%から+271%)及び収縮性の急上昇(+96%から+109%)を含む変化がみられた。投与直後、左心室端部の拡張圧力(LVEDP)が初期上昇し、その後急降下した(−157%から−710%)。サルカルディン硫酸エステル投与を10mg/kgで行った後、平均肺動脈圧力(MPAP)(+35%から+76%)及び心拍出量(CO)(+80から131%)も上昇した。同一期間において、2匹のうち1匹の動物において平均動脈圧が初期上昇(+66%)し、投与開始から10分後において最大となった。しかし、どちらの動物においても、投与後期間において最終的に平均動脈圧(MAP)が低下した(−33%から−41%)。点滴開始から約10分後において最大効果がみられ、その後60分の監視期間の終了時において徐々に基準へと戻った。ただし、HR、収縮性及びLVEDPは前記監視期間全体において上昇したままであった。2回目の点滴(30mg/kg)の開始時においても、同様の血行動態の変化がみられた。ただし、2回目の点滴においては、HR及び収縮性は投与時において点滴終了時まで若干低下した後、投与完了後に上昇した。90mg/kg時において、最後の15分間点滴の完了後、全動物を殺処分した。この最後の15分間点滴において、心機能低下に起因する重篤な低血圧がみられた。
【0065】
ヒスタミンプロファイリング
ヒスタミン分析結果によれば、前処理時では全動物において正常なヒスタミンレベルがみられた。被験物質投与後、双方のグループ及び全投与レベルにおいて、ヒスタミンレベルの上昇がみられた。サルカルディン硫酸エステルが10mg/kgのとき、ヒスタミン血漿濃度が急上昇し、投与から5分後及び10分後においてそれぞれ最大の1874nM及び1919nMとなり、その際の前処理値はそれぞれ9.48及び14.341であった。その後、ヒスタミン血漿濃度は徐々に低下したが、60分間の観察期間において基準値よりも高いままであった。その後のサルカルディン硫酸エステルの投与における増加は、投与時又は投与後10分後において最大となった増加よりも緩やかであった。30mg/kgにおいて、血漿濃度は251nM及び183nMの最大レベルとなった。90mg/kgにおいては、最大レベルは99nM及び64nMにとどまった。この反応は、恐らくは被験物質への予備照射後のマスト細胞微小体の枯渇に起因する。
【0066】
サルカルディン硫酸エステル投与後の血行動態変化は、投与後のヒスタミン放出に部分的に起因するが、抗ヒスタミン(ジフェンヒドラミン)による前処理ではこれらの血行力学的効果は部分的にしか改善しなかった(データは図示せず)。
【0067】
心電図記録法
全ての動物において、QTcの投与依存性増加がみられた。サルカルディン硫酸エステルでの治療を10mg/kgにおいて開始してから5分間以内において、(およそ20ミリ秒までの)若干のQTc延長がみられた。30mg/kg点滴(およそ35ミリ秒)の開始時において累積投与量に依存するQTc間隔延長がみられ、その後90mg/kgにおいてより顕著となった(基準QTc値から約50〜120ミリ秒への範囲)。また、全投与レベルにおいて、投与反応の証拠と共にQRS拡張がみられた。
【0068】
薬物動態結果
各15分間のサルカルディン硫酸エステルの10、30及び90mg/kgにおける点滴で、通常、開始から10分後にピークを迎えた平均ピークサルカルディン硫酸エステル濃度はそれぞれ1.8、11.2及び100.1μg/mLであった。これらの値は、約4、24.6及び218μMに変換される。
【0069】
結論
Naチャネル、L−Caチャネル及びIkrチャネルにおけるヒト心房心筋細胞のパッチクランプIC50値の低端範囲に近いピーク血漿濃度(25μM)を達成したサルカルディン硫酸エステル(30mg/kg)の投与量において、平均動脈圧、頻脈、QT間隔延長の大幅な低下と、心室収縮性の変化とがみられた。心房パッチクランプ及びイヌ心臓血管安全及びPK発見によれば、比較的短期間の薬剤点滴期間(≦15分)におけるサルカルディン硫酸エステル投与を用いた場合、血行動態及びECGに対する悪影響なしに、パッチクランプによって示される血漿レベルを心房細動に対する抗不整脈効果の薬理学的範囲内に収めることは不可能な場合がある。
【0070】
実施例3.サルカルディン硫酸エステル薬物動態パラメータ
PO投与を40mg/kg(有効な経口投与範囲)で行ったイヌにおいて、ピークレベルは2.1μg/mL(4.6μM)であった。8mg/kg(有効範囲)におけるIVデータは、Cmax(表2、図1)とならなかったが、以下の表中の曲線をみれば、心室不整脈に対して有効な投与量をIV投与した後、Cmaxは約10μg/mLとなったことが分かる。60分間の点滴後、AFイヌ有効性についての計画で想定されたように、また臨床投与経路からさらに分かるように、このCmax値は大きく低下し、恐らくは5μg/mL(11μM)を下回った。これらのPKデータ及び外挿結論は、15分点滴後にPKを行ったCV安全性調査と一致する。一般的に、サルカルディン硫酸エステルの各15分点滴を10及び30mg/kg(心室不整脈に対する有効投与量)で開始してから10分間後、平均濃度がピークとなった。平均ピーク血漿濃度はそれぞれ、1.8(4.2μM)及び11.2μg/mL(24.6μM)であった(データは図示せず)。これらの値は、低投与量の場合においてずっと低くなったが、多様なイオンチャネル上の心房セルパッチクランプIC50全てには到達しなかった。しかし、平均動脈圧、頻脈、QT間隔延長の大幅低下と関連し、心室収縮性変化がみられた。

表2.経口投与及びIV投与後のビーグル犬におけるサルカルディン硫酸エステルの血漿PKパラメータ

【表2】

【0071】
実施例4.霊長類中のサルカルディン硫酸エステルの多様な投与レベルによる、心臓血管への安全性に対する効果、及び達成された血中濃度
雌カニクイザルに対し、モルヒネ(2mg/kg皮下)を投与した後、麻酔をかけた。サルへの麻酔は1%α−クロラロース(100mg/kg静脈内)によって行い、その後α−クロラロースを一定点滴した(40mg/kg/時間)。治療のおよそ92〜98分前に、低血圧のため、30mg/kg/時間まで減らした。サルを加温パッド上に配置して、体温をおよそ37℃で保持した。実験中、直腸温度計又は移植されたSwanGanz(熱希釈カテーテル)を介して体温を監視した。サルに挿管を行い、人工呼吸器を装着して酸素補給を行って、酸素供給を正常な生理学的範囲内に維持した。前記動物に対する機械的酸素供給を12呼吸/分及び17〜18cmHOの圧力で行った。以下のパラメータを定期的に監視して、前記動物への適切な酸素供給を保証した(報告なし):SpO、吸気及び呼気CO、吸気O及び呼吸数。
【0072】
SwanGanz(熱希釈カテーテル)を静脈切開術を介して右太腿静脈へ挿入した後、心拍出量測定のために肺動脈内へと進展させた。血液ガス決定のために、カテーテルを動脈切開を介して左大腿動脈へ挿入した。別のカテーテルを左大腿部静脈に挿入して血液を収集し、トキシコキネティクス評価を行った。最後に、頚部左側にも切開を行って左頸動脈を露出させ、電子デュアル圧力センサカテーテル(Millar)を動脈切開を介して配置し、左心室内へと進展させた。前記カテーテルを配置して、左心室血圧測定及び大動脈圧力を同時収集した。加えて、一時的なカテーテルを頭部静脈のいずれかに配置して、実験の間中ずっと乳酸化リンガーの投与を10mL/kg/時間で行った。
【0073】
外科的準備の後、血行動態パラメータ及び心電図パラメータを少なくとも15分間において安定させた。その後、基剤対照及び被験物質を投与し、血行動態パラメータ及び心電図パラメータを監視した。ヒスタミン及び血漿PKのデータを入手した。
【0074】
血行動態の結果
サルカルディン硫酸エステル投与により、投与に関連して心臓血管が変化した。10mg/kgにおいて、平均肺動脈圧力が上昇し(+25%から69%)、比較的安定した心拍数(HR)(10%内)及び収縮性低下(−48%から−55%)もみられた。これらの効果のうちほとんどは、被験物質投与直後にみられ、完了時においてピークとなった。次回投与前までに、全パラメータが正常値へ戻った。
【0075】
サルカルディン硫酸エステルの2回目の投与を30mg/kgで行ったところ、第1回目の投与と同様の変化に加えて、平均動脈圧降下(−69%まで)及び平均肺動脈圧力の降下(−31%から−88%)がみられた。同一期間において、収縮性の降下(−69%から−77%)及び心拍数の降下(−24%から−54%)もみられた。同様に、点滴完了時において、心拍数は基準に戻り、収縮性はやや下がったままだった(−28%から−25%)。平均動脈圧は増加した(+32%から43%)。平均肺動脈圧力は急上昇(+245%まで)し、2匹の動物のうち1匹において大幅に上昇したままであった。
【0076】
サルカルディン硫酸エステルを90mg/kgにおいて点滴したところ、大幅な血圧低下及び収縮性低下が発生し、その結果、15分点滴の終了前に動物は死亡した。
【0077】
心電図記録法
どちらの動物においても、QTcBの投与依存型増加がみられた。若干のQTcB延長が双方の動物においてみられ(19〜20ミリ秒)、サルカルディン硫酸エステルの10mg/kgでの治療から2分後にピークとなった。30mg/kg点滴の開始時(60〜123ミリ秒)において、QTcB間隔の累積投与量依存型延長が双方の動物においてみられ、その後、点滴完了から5分後に最大となった。QTcB延長は90mg/kgにおいてより顕著となり(基準QTcB値から増加して、78及び112ミリ秒に達した)。
【0078】
QRS拡張は、全投与レベルにおいてもみられ、投与反応もみられた。10mg/kgにおいて、サルカルディン硫酸エステルに起因して、QRSが基準から11%及び26%増加した。30mg/kgにおいて、QRSのさらなる延長がみられ、最大増加は基準から59%〜119%の範囲であった。90mg/kgの点滴時において記録されたQRS間隔は、基準からの88%及び133%の増加と共に最も大きく変化した。投与依存型QRSの拡張は、多チャネルブロッカーにおける予期される薬理学的観測である。
【0079】
投与依存型PR間隔増加も双方の動物においてみられ、最初の増加は、10mg/kgにおいて双方の動物においてみられた(+18%及び+30%)。さらなる増加が30及び90mg/kgにおいてみられた。1匹の動物(1602B)において、死亡直前に、心室補充収縮による洞房ブロックがみられた。これらの観察結果は全て、多イオンチャネルブロッカーの過度の薬理学的活性と適合する。
【0080】
1匹の動物(1501A)は、30mg/kgでの点滴時において右脚ブロック(RBBB)を示した。動物1602Bも、90mg/kgでの点滴時においてRBBBを示した。右脚ブロックは、恐らくは導通低下に起因してサルにおいて一般的にみられる。同様の心電図変化が、例えばジソピラミドなどの他の抗不整脈薬と関連して報告され、サルカルディン硫酸エステルの過度の薬理学的特性と関連する。
【0081】
ヒスタミンプロファイリング
目標収集時点からの顕著な逸脱なく、ヒスタミンレベル決定サンプルのための血液サンプルを収集した。
【0082】
被験物質投与を10mg/kgで行った後、ヒスタミンレベルの顕著な増加はみられなかった。動物No.1501Aにおいては、30mg/kg点滴から10分経過後において一過性増加がみられ、その後、90mg/kg点滴開始時及び死亡時において再度増加した。動物No.1602Bにおいては、どの投与レベルにおいても顕著な増加はみられなかった。
【0083】
薬物動態結果
サルカルディン硫酸エステルの平均血漿濃度は、各15分点滴を10、30及び90mg/kgにおいて開始してから10分経過後に概してピークとなり、それぞれ9.8、74.3及び845.5ug/mLであった。これらの値は、21.6、163.5及び1,860.1μMに相当する。
【0084】
結論
15分以上の点滴プロトコルを用いて、サルカルディン硫酸エステルの投与を10mg/kgで行ったところ、ピーク血漿濃度(21μM)が目標範囲の下端となり、心房パッチクランプIC50(26〜100μM)によって示されるように心房不整脈に対して有効となり得、血行動態も若干変化した(例えば、心室圧力の低下や肺動脈圧力の増加)。この投与量を3倍にして30mg/kgとした結果、ピーク血漿レベルは163μMとなり、薬剤が活性を有する全心房イオンチャネルの抑制に必要な最低目標濃度を若干上回った。この投与量、投与速度及び血漿濃度において、平均動脈圧(67%)が若干低下し、心室収縮性がさらに低下した。QT間隔、QRS及びRP間隔の穏やかな延長が21μM血漿レベルにおいてみられ、血漿濃度が164μMのときに顕著となった。その結果、サルカルディン硫酸エステルによる血圧及び収縮性の低下並びにQT間隔の拡張の効果が、ヒト心房パッチクランプデータに基づいた心房不整脈の治療のための治療範囲の下端において予測された血漿濃度においてみられた。このデータによれば、血行動態及びQT間隔への悪影響を引き起こすことなく、心房不整脈に対して有効なサルカルディン硫酸エステルの血液濃度を達成することはできない可能性がある。イヌの場合と異なり、血行動態に対する薬剤の影響は、霊長類におけるヒスタミン放出とは完全に無関係なようである。イヌの場合、ある程度の血行力学的効果(特に心拍数への影響)はヒスタミン放出に起因し得る。
【0085】
実施例5.ミニ豚における多様な投与レベルのサルカルディン硫酸エステルによる心臓血管への安全効果、及び達成された血中濃度
動物に対し、モルヒネ(2mg/kg皮下)を投与した後、麻酔をかけた。動物への麻酔は1%α−クロラロース(100mg/kg急速静脈内投与)によって行い、その後α−クロラロースの一定点滴をIVで20mg/kg/時間から30〜40mg/kg/時間の一定速度まで徐々に増加させた。その後、被験物質の投与を行った。動物を加温パッド上に配置して、体温をおよそ37℃で保持した。実験中、直腸温度計又は移植されたSwanGanz(熱希釈カテーテル)を介して体温を監視した。動物に挿管を行い、人工呼吸器を装着して酸素補給を行って、酸素供給を正常な生理学的範囲内に維持した。その後、前記動物に対する機械的酸素供給を11〜13呼吸/分及びピーク吸気圧力(18cmHO)で行った。以下のパラメータを定期的に監視して、前記動物への適切な酸素供給を保証した(報告なし):SpO、吸気及び呼気CO、吸気O及び呼吸数。
【0086】
SwanGanz(熱希釈カテーテル)を静脈切開術を介して右太腿静脈へ挿入した後、心拍出量測定のために肺動脈内へと進展させた。血液ガス決定のために、カテーテルを動脈切開を介して左大腿部動脈へ挿入した。別のカテーテルを左大腿静脈に挿入して血液を収集し、トキシコキネティクス評価を行った。最後に、頚部左側にも切開を行って左頸動脈を露出させ、電子デュアル圧力センサカテーテル(Millar)を動脈切開を介して配置し、左心室内へと進展させた。前記カテーテルを配置して、左心室血圧測定及び大動脈圧力を同時収集した。加えて、一時的なカテーテルを頭部静脈のいずれかに配置して、実験時においてずっと乳酸加リンガーの投与を10mL/kg/時間で行った。
【0087】
外科的準備の後、血行動態パラメータ及び心電図パラメータを少なくとも15分間において安定させた。その後、基剤対照及び被験物質を投与し、血行動態パラメータ、心電図パラメータ、ヒスタミンパラメータ及びPKパラメータを監視した。
【0088】
血行動態の結果
サルカルディン硫酸エステル投与により、投与関連変化が発生した。10mg/kgにおいて、収縮性の低下(−51%から−52%)、脈圧低下(−26%から−37%)が発生し、心拍数が若干増加した(+19%から27%)。同一期間において、心拍出量も低下した(−13%から−16%)。これらの効果のうちほとんどは、被験物質投与開始の直後にみられ、完了時においてピークとなった。次回投与前までに、全パラメータが部分的に回復した。
【0089】
サルカルディン硫酸エステルの2回目の投与を30mg/kgで行ったところ、第1回目の投与と同様の変化がより大きな規模でみられた。収縮性の低下(−76%から−78%)、脈圧低下(−56から−59%)及び全身動脈圧力(収縮、平均及び拡張)が双方の動物においてみられた。これらの変化に加えて、心拍出量低下(−45%から−49%)及び心拍数増加(+40%から41%)がみられ、これは、全身血圧低下に対する代償反応と思われる。第2回投与後、動脈圧力及び心拍出量は、60分間の監視期間の終了時までに正常レベルへと戻った(心拍数は除く)。肺動脈圧力(PAP)、肺血管抵抗(PVR)及び全身血管抵抗(SRV)の変化は、収縮性及び心拍出量の低下に続発するものと考えられる。
【0090】
サルカルディン硫酸エステルの点滴を90mg/kgで行ったところ、重篤な血圧低下及び収縮性低下を伴う心機能低下が発生し、その結果、15分点滴時又はその終了前に動物は死亡した。
【0091】
ヒスタミンプロファイリング
ヒスタミン分析結果によれば、双方の動物の前処理において、ヒスタミンレベルは正常であった。全投与量における被験物質投与後のヒスタミンレベルにおいても、顕著な増加はみられなかった。
【0092】
心電図記録法
房室伝導に対する投与依存型の影響(例えば、QRS複合持続時間、HR及びQTcC間隔の増加)が、10mg/kgの投与開始時から片方の動物又は双方の動物においてみられた。動物1601Cにおいては、10mg/kgにおいて15%のQTcC延長がみられ、30及び90mg/kgにおいて双方の動物において影響の増加が(30%まで)みられた。投与依存型PR間隔の増加も双方の動物においてみられ、10mg/kgにおいて双方の動物において先ず延長がみられた(+38%及び+10%)。さらなる増加も30及び90mg/kgにおいてみられた。同様の投与依存型パターンを描くQRS持続時間の増加が10mg/kgでの開始時から双方の動物においてみられた。これらの観察結果は全て、多イオンチャネルブロッカーの過度の薬理学的活性と適合する。
【0093】
薬物動態結果
サルカルディン硫酸エステルのピーク血漿濃度は、投与量増加と共に増加した。平均濃度は、各15分点滴を10、30及び90mg/kgで開始してから10分経過後に概してピークとなり、それぞれ6.20、19.9及び25.6ug/mLであった。これらの値を血漿濃度に変換すると、それぞれ13.6、43.8及び56.3μMとなる。
【0094】
結論
サルカルディン硫酸エステルの投与を10mg/kgで15分間行ったところ、ピーク血漿濃度が発生し(13.6μM)、濃度は目標範囲を下回り、心房パッチクランプIC50(26〜100μM)によって示されるように心房不整脈に対して有効となり得、血圧、収縮性及び心拍出量及び代償性頻脈も大幅に低下した。この投与量を3倍にして30mg/kgとした結果、ピーク血漿レベルは最大44μMとなり、薬剤が活性を有する全てではなく一部の心房イオンチャネルの抑制に必要な最低目標濃度内に収まった。この投与量及び血漿濃度において、動脈圧力、心室収縮性及び心拍出量がさらに低下し、頻脈が悪化した。13.6μM血漿レベルにおいて、QT間隔、QRS及びRP間隔の緩やかな延長がみられ、血漿濃度の上昇と共により顕著となった。その結果、サルカルディン硫酸エステルによる血圧、収縮性及び心拍出量の低下並びにQT間隔の拡張の効果が、ヒト心房パッチクランプデータに基づいた心房不整脈の治療のための治療範囲を下回ると予測された血漿濃度においてみられた。このデータによれば、血行動態及びQT間隔への悪影響を引き起こすことなく、心房不整脈に対して有効なサルカルディン硫酸エステルの血液濃度を達成することはできない。イヌの場合と異なり、血行動態に対する薬剤の影響は、ミニ豚においてヒスタミン放出とは完全に無関係なようである。イヌの場合、ある程度の血行力学的効果(特に心拍数への影響)はヒスタミン放出に起因し得る。
【0095】
実施例6.投与速度依存型の血行力学的効果
サルカルディン硫酸エステルによる静脈内投与を10分間点滴した場合における、覚醒ビーグル犬の平均血圧、心拍数、及び血漿ヒスタミン濃度への影響を調査した。3匹の目的繁殖ビーグル犬(雄及び雌、体重は10.0〜12.7Kg)に対するサルカルディン硫酸エステルの静脈内投与を、投与量を徐々に増やしながら、10分間点滴後に15分間隔を空けて繰り返した(累積投与量:1〜44mg/kg)。投与量を以下に示す:1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg及び30mg/kgのサルカルディン硫酸エステル。各薬剤点滴期間完了後、10分間隔を空けて心拍数、平均動脈血圧及びヒスタミン濃度を測定した(表3)。
表3:10分点滴後における血行動態へのサルカルディン硫酸エステルによる影響のデータ要約

【表3】

【0096】
調査時において、10分間のサルカルディン硫酸エステルの静脈内投与は、投与量に依存した動脈血圧の低下と関連することが分かった。投与量に依存した動脈血圧の低下は、顔面及び耳部の紅斑炎症並びにじんま疹の発症を伴った。この効果は、恐らくはヒスタミンの肥満細胞保存量の枯渇に起因して、連続的注入の進行と共に弱くなった。血漿ヒスタミン濃度の投与依存型増加は、ELISAアッセイによって記録されている。
【0097】
3匹のさらなる動物に対し、サルカルディン硫酸エステル(14mg/kg、i.v.)の点滴を45分間行った。この調査の目的は、サルカルディン硫酸エステルの緩速点滴(45分)によって心拍数及び血圧に影響が出るか否かについて調査することであった。結果を表4中にまとめる。このデータは、点滴時における安静時心拍数の漸進的増加を示す。血圧変化は、恐らくは安静時心拍数の代償性増加に起因して緩やかであった。よって、サルカルディン硫酸エステルの緩速静脈内投与を14mg/kgの合計静脈投与量で行ったところ、ボーラス注入の場合のような安静時の血圧及び/又は心拍数の目立った変化はみられなかった。

表4:点滴を45分間行った場合の、心拍数及び血圧に対するサルカルディン硫酸エステル(14mg/kg)の効果

【表4】

【0098】
麻酔MI後突然心臓死モデルの調査において、サルカルディン硫酸エステルの血行力学的効果についても調査した。調査対象母集団は、10匹の目的繁殖雌ビーグル犬(体重:10.0〜12.0Kg)からなる。これらの動物においては、左冠動脈前下行枝の90分間閉塞の後に再かん流を行うことで、左心室壁虚血性傷害を発生させている。5匹の動物に対し、サルカルディン硫酸エステル(15mg/kg)の静脈内点滴を10分間行うことで治療し、その他の5匹の動物は、0.9%塩化ナトリウム溶液(プラセボ)で治療したビークル犬(vehicle dogs)であった。治療後、120分間にわたり、最低平均動脈血圧を15分毎に測定した。結果の概要を図2に示す。
【0099】
サルカルディン硫酸エステル(15mg/kg)の10分間点滴完了後15分、30分及び45分経過後における平均動脈血圧は、サルカルディン硫酸エステルの基準値(P<0.05、反復測定ANOVA)よりもずっと低かった。ビークル動物における平均動脈血圧の有意な経時的変化は無かった。双方向ANOVAを用いた、P<0.05プラセボ対サルカルディン硫酸エステル。サルカルディン硫酸エステル点滴を10分間行った後、動脈血圧が漸進的に戻った。このような血圧の漸進的回復は、薬剤前基準又は薬剤点滴後50分後のプラセボ処理動物と同様であった。
【0100】
実施例7.サルカルディン硫酸エステルの短期点滴とジフェンヒドラミン前処理とを組み合わせた場合の麻酔犬における血行力学的効果
犬にモルヒネ投与(2mg/kg皮下)を行った後、約10〜19分後に麻酔を投与した。犬への麻酔は1%α−クロラロース(100mg/kg静脈内)によって行い、その後α−クロラロースを一定点滴した(35〜75mg/kg/時間、IV)。2匹の健康な雌犬に対し、サルカルディン硫酸エステル静脈内投与を15分間にわたって酢酸緩衝液系において投与量を10、30及び90mg/kgに徐々に上げて行い、投与間隔を60分間空けて行った。他に2匹の犬に対し、ジフェンヒドラミンでの前処理(被験物質点滴開始の30分前に1mg/kgを投与)後に被験物質を投与した。薬剤投与後、犬に対し、心室、肺及び周辺についての血行動態変化の評価を行った。この評価は、SwanzGanzカテーテル及び大腿部カテーテルの使用と、血液酸素飽和度、被験物質血中濃度、体温、血液生化学、血液学、ECG及びヒスタミンレベルの監視とによって行った。
【0101】
血行動態の結果
グループ1(10、30及び90mg/kgにおけるサルカルディン硫酸エステル)。全ての投与量のサルカルディン硫酸エステルにおいて、血行力学的効果がみられた。ジフェンヒドラミンでの10mg/kgでの前処理を行わなかった犬におけるサルカルディン硫酸エステルの初期点滴では、心拍数(HR)の急上昇(+194%から+271%)及び収縮性の急上昇(+96%から+109%)が見られた。投与直後に左心室端部拡張圧(LVEDP)において初期増加がみられ、その後、急低下した(−157%から−710%)。サルカルディン硫酸エステルを10mg/kgで投与した後、平均肺動脈圧(MPAP)(+35%から+76%)及び心拍出量(CO)(+80から131%)も増加した。同じ期間において、平均動脈圧の初期増加(+66%)が2匹のうち1匹においてみられ、これら2匹は、投与開始から10分後に最大となった。しかし、どちらの動物も、最終的には投与後期間において平均動脈圧(MAP)の低下を示した(33%から−41%)。点滴開始から約10分経過後において最大効果が観測され、その後60分間の監視期間の終了に向かうにつれて、徐々に基準値に戻っていった。ただし、HR、収縮性及びLVEDPは、前記監視期間全体において例外的に上昇したままであった。2回目の点滴(30mg/kg)の開始時においても、同様の血行動態の変化がみられた。ただし、2回目の点滴においては、HR及び収縮性は投与時において点滴終了時まで若干低下した後、投与完了後に上昇した。90mg/kg時において、最後の15分間点滴の完了後、全動物を殺処分した。この最後の15分間の点滴において、心機能低下に起因する血圧急降下がみられた。
【0102】
グループ2の動物:サルカルディン硫酸エステルをジフェンヒドラミン(1mg/kg)と共に10、30及び90mg/kgで投与した約30分間後、サルカルディン硫酸エステルを10mg/kgで治療した。ジフェンヒドラミン(H1拮抗薬)による前処理及びサルカルディン硫酸エステルの投与(10mg/kg)を施した動物については、H2レセプターによって媒介された血行動態変化がみられた。これらの変化は、グループ1の動物の変化と類似しているが、変化はグループ2の方が小さい。変化を挙げると、心拍数(HR)の急上昇(+124%から+157%)があるが、この上昇は継続しなかった。収縮性も急上昇しており(+41%から+58%)、平均肺動脈圧(MPAP)も急上昇しており(+30%から+57%)、心拍出量(CO)も急上昇しており(+108から184%)、平均動脈圧MAPは若干低下している(−12%から−17%)。左心室端拡張圧(LVEDP)については、投与直後に初期増加を示した後に急降下している(−163%から−435%)。点滴開始から約10〜15分経過後において最大効果が観測され、その後60分間の監視期間の終了に向かうにつれて、徐々に基準値に戻っていった。ただし、2匹のうち1匹の動物のMAPは低下したままだった。監視期間全体にわたって、収縮性の増加及びLVEDPの低下がみられた。2回目の点滴開始(30mg/kg)時においても、同様の血行動態がみられた。ただし、HR及び収縮性については、2回目の上昇がみられた(それぞれ、+158から+174%及び+25%から+33%)。これらの心臓血管の変化は、血漿ヒスタミンレベルと相関する。30mg/kgにおいて投与完了後、頻脈の深刻度が基準の200%を上回った。90mg/kgにおいて、グループ1の動物について、最終の15分間点滴の完了後、全ての動物を殺処分した。この最終の15分間の点滴において、漸進的且つ大幅な血圧低下がみられた。
【0103】
本発明について上記の実施形態と関連して説明してきたが、上記の記載及び例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の関連する当業者にとって、本発明の範囲内の他の局面、利点及び改変が明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心房細動(AF)の治療方法であって、AFに罹患しているか又はAF罹患の危険性のある対象に対し一定量の活性薬剤を含んだ組成物を投与することを含み、前記活性薬剤は、4−メトキシ−N−(3,5−ビス−(1−ピロリジニル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンスルホンアミド又はその薬学的に受容可能な塩であり、これにより前記対象中の前記活性薬剤の最大定常状態血漿濃度(Cmax)が約1μM〜約20μMの範囲内となる方法。
【請求項2】
前記Cmaxは約2μM〜約10μMの範囲内である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性薬剤の量は約3mg/kg〜約30mg/kgの範囲内である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記活性薬剤の量は約5mg/kg〜約10mg/kgの範囲内である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記活性薬剤は4−メトキシ−N−(3,5−ビス−(1−ピロリジニル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンスルホンアミド硫酸エステルである請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物は薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記薬学的に受容可能な賦形剤は、緩衝液、希釈剤、安定剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記投与することは、筋肉内注入、静脈内注入、皮下注入、又は経口投与、経皮投与、吸入投与、直腸投与、舌下投与、口腔投与、膣内投与又は経鼻投与によって行われる請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−511473(P2013−511473A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539071(P2012−539071)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/056857
【国際公開番号】WO2011/062906
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(512123949)フヤ バイオサイエンス インターナショナル エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】