心拍コーンビームコンピュータ断層撮影法における先験的画像制限画像再構成法
所望の心拍フェーズの高品質画像を作成するために、現在の心臓フラットパネル検出器を用いて、トランケーション投影データとして取得されたデータを再構成する心拍コーンビームCT用画像再構成法を提供する。本発明は、心臓ゲーティング(cardiac gating)することなく取得したトランケーションデータの全てから先験的画像を再構成するために、反復法を利用する。また、先験的画像制限再構成法で先験的画像を利用する再構成法は、それぞれの心拍フェーズの画像に対して再構成するために用いられる。先験的画像制限再構成法における目的関数は、先験的画像の作成で用いられる状態を組み込むために変更されるので、データトランケーション問題が適切に対処される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2008年11月26日に出願された「心拍コーンビームコンピュータ断層撮影法における先験的画像制限画像再構成法(Method for Prior Image Constrained Image Reconstruction in Cardiac Cone Beam Computed Tomography)と称する米国仮出願番号61/118,314の利益を主張する。
【0002】
(連邦政府の委託研究の記載)
本発明は、政府機関である国立衛生研究所NIH EB005712及びNIH EB007021により認められた政府支援によりなされたものである。米国政府は本発明に関し一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、医療用画像に関し、特に、取得された画像データから画像を再構成する方法に関する。
【0004】
コンピュータ断層撮影システムにおいては、「画像面」と称されるデカルト座標系のXY平面内に位置するように視準された扇状のビームがX線源により照射される。このX線ビームは、患者などの撮像される対象を通り抜けて、多数の放射線検出器に影響を与える。透過される放射線の強度は、前記対象によるX線ビームの減衰に依存し、各検出器により、別々の電気信号が、ビームの減衰の測定結果として生成される。すべての検出器からの減衰の測定結果が別々に取得され、いわゆる「透過プロファイル」、「減衰プロファイル」、または、「投影」が生成される。
【0005】
従来のCTシステムにおけるX線源および検出器配列は、対象を横切るX線ビームの角度が常に変化するよう、画像平面内のガントリーの上で対象の周りに回転される。与えられた角度における検出器配列からの透過プロファイルは「ビュー(view)」または「投影(projection)」と呼ばれ、対象の「スキャン(scan)」には、X線源および検出器が一回転する間に異なる角度の向きで得られる複数のビューのセットが含まれる。「コーンビーム(cone beam)」の配置において、X線源および検出器の焦点は、X線のコーン形状を定義する。対象がコーンビームによって十分に覆われていない場合、そこに含まれるビューは、「打ち切り(トランケーション)」される。この打ち切りの程度は、利用した検出器のサイズ、対象のサイズ、および、ビューの角度を含む要因によって決まる。対象が人体の場合、非打ち切りコーンビーム投影(non-truncated cone beam projections)を測定することは、実行不可能な大きな検出器を必要とする。したがって、医療用において、測定されたコーンビーム投影は、一般的に通常打ち切られる。
【0006】
2次元スキャンにおいて、データは、対象を通って2次元的スライスに対応する画像を構成するために処理される。2次元データから画像を再構成するための一般的な方法は、この分野ではフィルタ補正逆投影技術と称される。この画像再構成プロセスにおいては、スキャン中に取得された減衰測定結果が、「CT数」または「ハウンズフィールド単位」と称される整数へと変換される。これらはディスプレイ上に対応する画素の輝度を調整するために用いられる。フィルタ補正逆投影画像再構成法は、取得された透過プロファイルからCT画像を再構成するために用いられる最も一般的な技法である。
【0007】
一般的な画像再構成理論によれば、エイリアシングアーチファクト(aliasing artifacts)なしで画像を再構成するためには、画像データを得るために使用されるサンプリングレートが、ナイキスト−シャノンのサンプリング定理に示されるいわゆるナイキスト基準を満たしている必要がある。また、一般的な画像再構成理論においては、画像に関する詳細な事前情報は必要としない。その一方で、所望の画像に関するいくつかの事前情報が利用でき、それを画像再構成プロセスの中に適切に組み込む場合には、ナイキスト基準が満たされていなくとも、画像は正確に再構成される。例えば、所望の画像が円対称性を有し且つ空間的に一様であることが分かっている場合には、平行ビーム投影のうちの一つのビューのみ(即ち一つの投影ビュー)が、対象の線形減衰係数を正確に再構成するために必要となる。別の例としては、所望の画像が単一の点でのみ構成されていることが分かっている場合には、その点で交差する二つの直交する投影のみが、その点の画像を再構成するために必要となる。したがって、所望の画像がスパースに分配された(sparsely distributed)点のセットであるなどの所望の画像に関する事前情報が分かっていれば、取得されたデータのセットがナイキスト基準を満たしていなくとも、そのデータのセットから画像を再構成することができる。より一般的に言い換えると、所望の画像のスパース性 (sparsity)に関する情報を用いることでナイキスト基準を緩和することができる。しかしながら、そのような議論を一般化して厳密な画像再構成理論を定式化することは非常に重要な課題である。
【0008】
近年、「圧縮センシング(compressed sensing:CS)」と呼ばれるデータ処理を用いる新しい数学的フレームワークが定式化された。圧縮センシングにおいては、まばらな画像に対する線形投影の小さなセットのみで良質な画像が再構成される。CSの理論は、E. Candes、J. Romberg、及びT. Taoによる「ロバスト不確定性原理:不完全性の高い周波数情報からの厳密な信号再構成」、IEEE Transactions on Information Theory 2006;52:489〜509ページ、及び、D. Donohoによる「圧縮センシング」、IEEE Transactions on Information Theory 2006;52:1289〜1306ページに記載されており、また、例えば米国特許出願番号第11/199,675号に開示されている。
【0009】
CSの数学的フレームワークは簡潔ではあるが、医用撮像分野への再構成法の適用性は、医用画像がまばらであることに大きく依存している。しかしながら、医用画像はしばしば一般的な画素表現においてまばらではない。それにもかかわらず、画像をスパース化(sparsify)するために、単一の画像に対して数学的変換を行うことができる。そのような変換は「スパース化変換(sparsifying transforms)」と呼ばれる。具体的には、スパース化変換、Ψ、が与えられた場合、CS画像再構成は次の目的関数を最小化することにより実施される。
【0010】
【数1】
【0011】
上記の式の目的関数において、Iは所望の画像を表すベクトルであり、Yは画像システムにより取得されるデータを表すベクトルであり、Aは、測定値を記述するシステム行列である。
【0012】
【数2】
【0013】
次に、上述の式は、N次元ベクトルXのL1ノルムと呼ばれる。すなわち、CS画像再構成によりスパース化された画像のL1ノルムを最小化する画像が、物理的測定値AI=Yを満たすすべての画像において決定される。
【0014】
CS画像再構成理論の基本的な考えをまとめると以下のようになる。画像表現における所望の画像を再構成する代わりに、所望の画像のスパース化されたバージョンが再構成される。スパース化された画像においては、実質的により少ない画像画素が重要な画像価値を有する。したがって、アンダーサンプルされたデータセットからスパース化された画像を再構成することが可能となる。スパース化された所望の画像が再構成されると、「逆スパース変換(inverse sparsifying transform)」を用いてスパース化された画像が変換されて所望の画像に戻される。実際には、「逆」スパース化変換は明確なフォームを有する必要はなく、スパース化変換のみが画像再構成において必要とされる。
【0015】
実際的なインターベンショナル心臓学(interventional cardiology)においては、小さなフラットパネル検出器を有するC−armシステムが用いられている。例えば、パネルサイズは、一般的に12cmのみのオーダー上で視界を提供する約20cmあるいは20cmまでのサイズだけである。X線投影画像において、この視界は辛うじて心臓全体をカバーする範囲である。また、そのようなC−armシステムを用いて得られる各コーンビーム投影は、トランケーションされる。また、ECGゲーティング(ECG gating)がない場合には、フィルタ補正逆投影再構成アルゴリズムは、十分な画像を再構成することができない。実際、事前情報が利用できない場合には、この状況で画像を再構成することは本質的に難しい。したがって、心臓画像に適用される方法において先験的画像制限圧縮センシング(prior image constrained compressed sensing:PICCS)のような画像再構成法で用いる適切な先験的画像を生成することは、相当な挑戦でさえある。
【発明の概要】
【0016】
本発明によれば、トランケーションコーンビーム投影データ(truncated cone beam projection data)から先験的画像を作成するための方法が提供され、前述の欠点を解決することが可能である。具体的には、心臓アプリケーション用先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)のような画像再構成法を用いて、品質画像を再構成することが可能な方法を提供する。
【0017】
本発明は、心拍コーンビームX線コンピュータ断層装置(CT)に適用できる画像再構成法を提供する。より詳細には、本発明は、1セットのトランケーションコーンビーム画像データ(truncated cone beam image data)から選択された心拍フェーズの高品質画像を再構成する画像再構成法を提供する。
【0018】
本発明によれば、心拍コーンビームCTにおいて、データをトランケーション投影として取得する現在の心臓フラットパネル検出器を用いることが可能な画像再構成法が、提供される。一般に、この画像再構成法は、心拍ゲーティングすることなく取得したトランケーションデータの全てから先験的画像を再構成するために利用される反復法、および、個々の心拍フェーズに対する画像を再構成する再構成法を含む。ここで、先験的画像は、先験的画像制限再構成法において利用される。先験的画像制限再構成法における目的関数は、先験的画像の生成で用いられた状況を取り入れるために変更されるので、データトランケーション問題が適切に対処される。
【0019】
本発明の前述した側面及びその他の側面及び利点は、以下の記載の中で述べられる。本明細書においては、本明細書の一部を構成する添付された図面について記載され、図面の記載は本発明の好ましい実施形態である。しかしながらそのような実施形態は本発明の全ての範囲を表すものではなく、したがって本発明の範囲は請求の範囲及び本明細書の中に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施する際に用いられる典型的な先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)の画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【図2】本発明を実施する際に用いられる典型的な先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)の画像再構成法の別のステップを示すフローチャートである。
【図3】本発明を実施する際に用いられる典型的な先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)の画像再構成法のさらに別のステップを示すフローチャートである。
【図4】(a)は、X線コンピュータ断層撮影(CT)画像システムの絵画図である。(b)は、図4(a)のCT画像システムのブロック図である。
【図5】(a)は、C−armX線画像システムの絵画図である。(b)は、図5(a)のC−armX線画像システムのブロック図である。
【図6】(a)は、図5(a)のC−armX線画像システム内のX線源および検出器の絵画図である。(b)は、図5(a)のC−armX線画像システムに用いられたC−armスキャンの絵画図である。
【図7】(a)は、小さなフラットパネル検出器、および、そのような検出器に関連する制限された視界を示す絵画図である。(b)は、再構成ラインを示す絵画図であり、Λは対象を通過する部分を示し、ΛAは空気のような既知の材料の領域に相当する再構成ラインの部分を示し、ΛHは小さなフラットパネル検出器の使用から生じる制限された視界部分を示す。
【図8】図5のCT画像システム、または、図6(a)のC−armX線画像システムにより行われる本発明の画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【図9A】本発明の先験的画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【図9B】本発明の先験的画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【図10A】本発明の心拍フェーズ画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【図10B】本発明の心拍フェーズ画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一般的に、1組のデータから画像を再構成する方法には、測定されたデータサンプルYから所望の画像Iを見積もるための数々のステップが含まれる。より詳細には、画像再構成は次の一貫性の条件を満たすべきである。
【0022】
【数3】
【0023】
上の式において、Aはシステム行列である。一般的に、システム行列Aは、所望の画像Iを取得したデータサンプルYに関連付けする前進射影演算子(forward projection operator)と見なすことができる。コンピュータ断層撮影(CT)画像を扱う場合、システム行列は再投影演算を含むことができ、その一方で磁気共鳴画像(MRI)においては、フーリエ変換関数を含むことができる。上式(3)の一貫性の条件は、言い換えると、画像が正確に再構成されたときに、測定された投影データの正しい見積りを作成するために、前進射影演算子が実際のデータ取得過程を実質的に再現することを表している。
【0024】
本発明の方法においては、良質な所望の画像を再構成する方法を提供する。通常、圧縮センシング(CS)の原理を利用した反復画像再構成法を制限するために、「先験的画像」が用いられる。例えば、CSで通常用いられるスパース化変換に加えて、所望の画像から先験的画像を差し引くことにより、画像はさらにスパース化される。その結果、CS法で必要とされるサンプル数よりも実施素敵に少ないサンプル数を用いて画像を再構成することができる。
【0025】
より詳細には、先験的画像Ipおよび所望の画像Iが与えられたとき、画像再生構成のための本発明の方法は、次の目的関数を最小化することにより実行される。
【0026】
【数4】
【0027】
ここで、Ψ1およびΨ2はスパース化変換であり、
【数5】
はL1ノルム演算である。また、αは上式(4)の目的関数における二つの項の相対的な重みを調整するために用いられる正規化パラメータ(regularization parameter)である。上述したとおり、以下の式が与えられる。
【0028】
【数6】
【0029】
上式は、N次元ベクトルのL1ノルムXを示す。より一般的には、所望の画像において適切な画像を維持しながら真のL1ノルムを変更することが可能である。例えば、式(4)の目的関数は、以下のように一般化することができる。
【0030】
【数7】
【0031】
【数8】
は、Lpノルム演算を示し、以下のように表される。
【0032】
【数9】
【0033】
上述したように、好ましくはp=1.0であるが、pは異なる値でもよい。当業者であれば、pの値が1.0から離れるほど、通常、再構成された所望の画像の品質が低下するということが明らかである。
【0034】
式(4)のスパース化変換Ψ1およびΨ2は通常異なるが、同じスパース化変換であってもよい。スパース化変換には、例えば、ウェーブレット変換、一次階差(first order finite difference)、二次階差(second order finite difference)、および、次の式で示す)▽m,n離散グラデーション変換(discrete gradient transform)が含まれる。
【0035】
【数10】
【0036】
ここで、指数mおよびnは画像Iにおける画素の位置を示す。▽m,nI(m,n)で特定される画像は、一般的に「勾配画像」と呼ばれる。
【0037】
式(4)の目的関数内の項は両方とも重要である。それらの重要性により、正規化パラメータαの選択は、画像再構成プロセス全体を調整するために利用される。したがって、正規化パラメータαの選択は、先験的画像IPの選択に依存すると共に、目の前の臨床的応用に依存する。例えば、式(4)の目的関数における2番目の項、
【数11】
は、先験的画像IPから潜在的に受け継がれたストリーキングアーチファクトを軽減する。さらなる例として、心臓画像における応用においては、正規化パラメータをα≒0.3〜0.7と選択すれば十分である。
【0038】
式(3)の一貫性の条件を全体的な画像再構成によりよく組み込むために、ラグランジュの乗数法が利用される。そのようにして、上記一貫性の条件を用いて式(4)で定められた目的関数の最小化にさらなる制限を追加する。新しい目的関数は、したがって、以下のようになる。
【0039】
【数12】
【0040】
ここで、λはラグランジュ乗数であり、Xは差分行列である。また、
【数13】
は、L2ノルム演算の二乗であり、N次元ベクトルXについては、以下のように表わされる。
【0041】
【数14】
【0042】
式(9)の差分行列は、式(3)の一貫性の条件を用いて以下のように表される。
【0043】
【数15】
【0044】
ラグランジュ乗数λは、本発明を実施する際に用いられる特定画像システムにおいて経験的に決定される。例えば、ラグランジュ乗数λは、所望のデータ一貫性要求と先験的画像Ipとの間で予め定められたトレードオフにより決定される。大きなラグランジュ乗数λが選択された場合、再構成される画像はより低いノイズ分散を有する。しかしながら、これは、先験的画像の高い空間分解能特性の損失として達成された可能性がある。同様に、より小さなラグランジュ乗数λが用いられた場合には、先験的画像の高い空間分解能特性は良く保たれるが、所望の画像におけるノイズ分散は高くなる可能性がある。そのような状態は、用いられる撮像システムにより達成され得るコントラスト対ノイズ比に影響を及ぼす。
【0045】
式(9)に示される目的関数は、画像システムのノイズを考慮する目的でさらに変化することができる。このようにして、次の目的関数が最小化される。
【0046】
【数16】
【0047】
ここで、XTは差分行列Xの転置であり、Dはシステムノイズ行列(system noise matrix)であって、次式で決定される行列要素を有する対角行列である。
【0048】
【数17】
【0049】
ここで、σn2はノイズ分散であって本発明を実施する際に用いられる画像システムにおけるノイズを示すパラメータである。例えば、X線画像システムにおいては、ノイズパラメータσn2はn番目のX線検出器に関連するノイズ分散である。あるいは、MR撮像システムにおいては、ノイズパラメータσn2はn番目の受信コイルにおいて見積もられるノイズ分散である。
【0050】
本発明の方法においては、先験的画像Ipはいくつかの役割を果たす。例えば、先験的画像Ipは、全体的な画像再構成を加速する、繰り返し再構成における種画像(seed image)としての役割を果たす。また、先験的画像Ipは、所望の画像Iをさらにスパース化させるために用いられて、別のスパース化変換としての役割も果たす。さらに、先験的画像Ipにおいて、信号ノイズ比(SNR)が比較的高い場合には、最終的な再構成画像がこの高いSNRを引き継ぐ。上述したように、先験的画像Ipは、再構成される所望の画像を表す事前情報を含む対象の先験的画像である。先験的画像Ipは、予め実行される画像研究から求めることができる。または、所望の画像を用いて取得した画像データとして同じセクションで取得した画像データから再構成することができる。通常、先験的画像Ipは、所望の画像として同じ画像様式を用いて取得される。しかしながら、先験的画像Ipは、所望の画像よりも異なる画像様式から得て適用される。
【0051】
図1を参照すると、本発明の方法の一つの実施は、ステップ100に示すように、式(4)の目的関数を用いて正規化パラメータαを初期化することから始める。正規化パラメータαを選択することにより、所望の画像のスパース化間のトレードオフ、および、所望の画像における先験的画像の影響が決定される。したがって、正規化パラメータαの値は、目の前の臨床応用に従って変化する。例えば、心臓画像への適用においては、通常α≒0.3〜0.7の値で十分である。次に、ステップ102およびステップ104に示すように、式(4)の目的関数の一番目と二番目の項がそれぞれ初期化される。一番目の項、
【数18】
の初期化は、ステップ106で始まり、ここで、先験的画像Ipが所望の画像の見積り即ち見積り画像から差し引かれ、「差分画像」が作成される。先験的画像Ipおよび所望の画像の見積りIの具体的な選択は、撮像手段および具体的な臨床における応用に依存する。したがって、これらの選択の別の選択肢について、以下で詳細に議論する。ステップ108に示されているように、スパース化変換Ψ1を用いることによって差分画像がスパース化される。上述の通り、スパース化変換Ψ1は、ウェーブレット変換、一次階差、二次階差、および、離散グラデーション変換を含む数学的演算のどのような数でもよい。このスパース化された差分画像のL1ノルムがその後ステップ110で算出される。その後、ステップ112で、このプロセスの結果が正規化パラメータαによって重み付けされる。
【0052】
式(4)の目的関数の二番目の項、
【数19】
の初期化は、ステップ114で始まり、ここで、所望の画像の見積りIがスパース化変換Ψ2を用いることでスパース化される。次に、このスパース化された所望の画像見積りのL1ノルムが、ステップ116で算出される。スパース化変換Ψ2として離散グラデーション変換▽m,nが選択された場合、ステップ114および116は所望の画像見積りの合計変化、TV、の算出としてみることができ、これは以下のように表わされる。
【0053】
【数20】
【0054】
スパース化された所望の画像見積りのL1ノルムが算出されると、ステップ118においてその結果が(1−α)により重み付けされる。続いてステップ120で、前記一番目の項と二番目の項とを足し合わせることにより、式(4)の目的関数が作成される。この目的関数は、その後ステップ122で例えば非線形共役勾配法を用いて最小化される。この最小化プロセスは停止基準が満たされるまで続く。停止基準としては、例えば、現時点の所望の画像の見積りを前回の繰り返しからの所望の画像の見積りと比較することが挙げられる。そのような停止基準は以下のように表わされる。
【0055】
【数21】
【0056】
ここで、Iij(k+1)は画素位置(i,j)における(k+1)番目の所望の画像の見積りの値であり、Iij(k)は画素位置(i,j)におけるk番目の所望の画像の見積りの値である。また、εは画像再構成プロセスの精度のプリセット許容値である。
【0057】
図2を参照すると、本発明の方法の別の実施は、ステップ200において、式(9)の目的関数を用いて、まず正規化パラメータαを初期化することから始まる。続いて、ステップ202及び204において、式(9)の目的関数における一番目と二番目の項がそれぞれ初期化される。このプロセスは上記図1のステップ102および104と同じように行われる。しかしながら、ここでは、式(3)の一貫性の条件が三番目の項、
【数22】
に盛り込まれ、これはステップ206で初期化される。最初に、ステップ208で差分行列Xが作成される。上で詳細に述べたように、差分行列Xは式(3)の一貫性の条件に対応するとともに次のように表される。
【0058】
【数23】
【0059】
ゆえに、システム行列Aを所望の画像の見積りIに適用し、続いて所望の画像に対応する取得された画像データYを差し引くことにより、差分行列が決定される。差分行列XのL2ノルムの二乗が、次のステップ210で算出される。差分行列XのL2ノルムの二乗が算出された後、ラグランジュ乗数λが決定され、これが、ステップ412で差分行列Xに対して重み付けするために用いられる。上記のとおり、ラグランジュ乗数は経験的に決定されるとともに目の前の臨床における応用に基づいてユーザにより選択される値である。続いてステップ220で、一番目、二番目、三番目の項を足し合わせることにより、式(9)の目的関数が作成される。この目的関数は、その後ステップ222で例えば非線形共役勾配法を用いて最小化される。この最小化プロセスは、上記のとおり、停止基準が満たされるまで続く。
【0060】
図3を参照すると、本発明の方法の別の実施は、ステップ300において、式(12)の目的関数を用いてまず正規化パラメータαを初期化することから始まる。続いて、ステップ302および304において、式(12)の目的関数における一番目と二番目の項がそれぞれ初期化される。このプロセスは、上記図1の102および104と同じように行われる。しかしながら、ここでは、式(3)の一貫性の条件および画像システムにおけるノイズの影響が、三番目の項、λ(XTDX)に盛り込まれ、この項はステップ306で初期化される。最初に、上記の図2のステップ208と同様に、ステップ308で差分行列Xが作成される。次に、システムノイズ行列Dがステップ310で作成される。システムノイズ行列Dは、次の式で決定される行列要素を有する対角行列である。
【0061】
【数24】
【0062】
ここでσn2は、ノイズ分散であり、本発明を実施する際に用いられる画像システムにおけるノイズを示すパラメータである。例えば、X線撮像システムにおいては、ノイズパラメータσn2はn番目のX線検出器に関連するノイズ分散である。また、MR画像システムにおいては、ノイズパラメータσn2がn番目の受信コイルにおけるノイズ分散で見積もられる。システムノイズ行列Dが作成された後に、次の行列乗法が実施される。
【0063】
【数25】
【0064】
この行列乗法はステップ312で実施される。次に、ステップ314に示すように、この演算の結果は、ランジュ乗数により見積もられる。次に、ステップ320において、一番目、二番目、三番目の項を足し合わせることにより式(12)の目的関数が作成される。この目的関数は、ステップ322に示すように、例えば非線形共役勾配法を用いて最小化される。この最小化処理は、上記の通り、停止基準が満たされるまで行われる。
【0065】
X線コンピュータ断層撮影画像システム
図4(a)および図4(b)を参照すると、X線コンピュータ断層撮影(CT)画像システム410は、「第三世代」CTスキャナであるガントリー412を有する。ガントリー412は、X線源413を備えている。そのX線源413は、X線414のファンビームまたはコーンビームをガントリーの反対側の検出器配列416に向けて照射する。検出器配列416は、患者415を通過する照射されたX線を感知する複数の検出器要素418から形成される。各検出器要素418は、作用しているX線ビームの強度を示す電気信号、即ち患者を通過するにつれ減衰するビームを示す電気信号を生成する。X線投影データを取得するためのスキャン中、ガントリー412及びそこに取り付けられた構成要素が患者415内に位置する回転中心419の周りに回転する。
【0066】
ガントリーの回転およびX線源413の操作は、CTシステムの制御機構420により制御される。制御機構420には、X線コントローラ422と、ガントリーモータコントローラ423と、が設けられている。X線コントローラ422は、X線源413に電力およびタイミングの信号を与える。ガントリーモーションコントローラ423は、ガントリー412の回転速度および位置を制御する。制御機構420におけるデータ取得システム(DAS)424は、検出器要素418からアナログデータをサンプルとするとともに、そのデータを後続の処理のためにデジタル信号に変換する。画像再構成装置425は、サンプルされてデジタル化されたX線データをDAS424から受信し、高速画像再構成を実行する。再構成された画像は、画像を大容量記憶装置429に保存するコンピュータ426に入力される。
【0067】
コンピュータ426は、また、オペレーターからキーボードを有するコンソールを介して、命令およびスキャニングパラメータを受信する。関連するディスプレイ432により、オペレーターは、コンピュータ426から、再構成された画像および他のデータを観察することができる。オペレーターにより与えられた命令およびパラメータは、コンピュータ426により用いられて、DAS424、X線コントローラ422、ガントリーモータコントローラ423に制御信号および情報が提供される。さらに、コンピュータ426は、テーブルモーションコントローラ434を操作し、これによりモータで動くテーブル436が制御されて患者415をガントリー412内に配置する。
【0068】
C−armX線画像システム
図5(a)および図5(b)を特に参照すると、本発明の実施形態は、介入手順に関連させて用いられるように設計されたX線システムを使用する。前記X線システムの特徴として、X線源アセンブリ512を一端に有するとともにX線検出器配列アセンブリ514を他端に有するC−arm510が設けられたガントリーを有している。そのガントリーにより、X線源512および検出器514がテーブル516上に配置された患者の周りの異なる位置に異なる角度で配向されるとともに、医師が患者に近づくことを可能としている。
【0069】
前記ガントリーは、L型の台座518を有している。その台座518には、テーブル516の下側に延びる水平レッグ520、および、テーブル516から離れて水平レッグ520からの一端から上側に延びる垂直レッグ522、が設けられている。垂直レッグ522の上端には、水平中心軸526の周りを回転するよう回転可能に取り付けられた支持アーム524が設けられている。中心軸526は、テーブル516の中心線に沿うように配置されている。また、支持アーム524は、中心軸526から半径方向に外側に延びているとともにその外側端にC−arm駆動アセンブリ527を支持している。C−arm510は、駆動アセンブリ527にスライド可能に取り付けられているとともに、矢印530で示されるようにC−arm510をスライドさせC軸528の周りに回転させる駆動モータ(図示せず)に連結されている。中心軸526およびC軸528は、テーブル516の上側に位置するアイソセンター536において互いに直角に交わる。
【0070】
C−arm510の一端にはX線源アセンブリ512が搭載され、他端には検出器配列アセンブリ514が搭載されている。以下で詳細に述べるように、X線源アセンブリ512は、検出器配列アセンブリ514に向けられたX線のコーンビームを放射する。このコーンビームの中心線がシステムのアイソセンター536を通過するように、X線源アセンブリ512および検出器配列アセンブリ514の両方が中心軸526に向けて半径方向内側に延びている。コーンビームの中心線は、従って、テーブル516上に配置された対象からX線減衰データを取得している間、システムのアイソセンターを中心として中心軸526の周り又はC軸528の周りの何れかもしくはその両方の周りに回転する。
【0071】
図6(a)に示すように、X線源アセンブリ512には、励起されるとX線のコーンビーム533を放出するX線源532が設けられている。中心線534は、アイソセンター536を通過し、検出器アセンブリ514内に収容された二次元フラットパネルデジタル検出器538上に作用する。典型的なフラットパネル検出器538には、いわゆる「小さなフラットパネル」と呼ばれる検出器が含まれる。そこにおいて、検出器配列パネル538は、約20cm×20cmの寸法を有する。そのような検出器パネルは、約12cmの視界の範囲を可能とする。各要素は、作用するX線の強度を示す電気信号を生成し、したがって、患者を通過するにつれ減衰するX線の強度を示す電気信号を生成する。スキャン中、X線源532および検出器配列538がシステムのアイソセンター538の周りを回転する。検出器配列は毎秒30個の投影又は30個のビューを取得することができ、これは、所定のスキャン経路及び速度においてビューがいくつ取得されるかを決定する、制限因子である。
【0072】
図5(b)および図6(b)を参照すると、アセンブリ512および514の回転と、X線源532の操作とが、CTシステムの制御機構540により制御される。制御機構540には、電力を供給しX線源532にタイミング信号を提供するX線コントローラ542が含まれる。制御機構540内のデータ取得システム(DAS)544は、検出器要素538からデータをサンプルして該データを画像再構成装置545に提供する。画像再構成装置545は、デジタル化されたX線データをDAS544から受けとり、本発明の方法に従って高速画像再構成を実行する。再構成された画像は、大容量記憶装置549内に画像を保存又は画像をさらに処理するコンピュータ546に、入力される。
【0073】
制御機構540は、また、ガンドリーモーションコントローラ547とC軸モータコントローラ548とを有する。モータコントローラ547、548は、コンピュータ546からの動作命令に応じて、中心軸526およびC軸528のそれぞれの周りで回転を生じさせるX線システム内のモータに電力を与える。コンピュータ546により実行されるプログラムにより、アセンブリ512、514を所定のスキャン経路内で動かすガンドリーモーションコントローラ547およびC軸モータコントローラ548への動作命令が作成される。
【0074】
また、コンピュータ546は、オペレーターから、キーボードおよびその他の手動操作可能な制御部を有するコンソール550を介して、命令およびスキャニングパラメータを受け取る。関連するブラウン管ディスプレイ552によって、オペレーターは、コンピュータ546からの再構成された画像及びその他のデータを監視することができる。オペレーターにより供給された命令は、コンピュータ546により用いられ、保存されたプログラムの指示に従ってDAS544、X線コントローラ542、モータコントローラ547、548に制御信号及び情報を与える。加えて、コンピュータ546は、モータ付きテーブル516を制御して患者をシステムアイソセンター536に対して位置決めするテーブルモータコントローラ554を操作する。
【0075】
例えば、図7(a)に示すように、対象700が、小さなフラットパネル702を利用するC−armX線画像システムに位置付けられた場合、上述したように、投影データが制限された視界704上だけに得られる。その結果、先験的画像を生成する方法や、例えば、トランケーション投影データから成る対象の胸部の心臓部の所望の画像を再構成する方法が、必要とされる。後続する記述は、そのような方法を提供する。さらに例として、図7(B)を参照すると、投影データが得られる再構成ライン706Λが、対象700を通過する。具体的には、再構成ライン706は、対象内において、制限された視界704ΛHを通る部分と、エアポケットのような既知の減衰値ΛAと共に領域708を通る部分とを含む。この知識を用いることで、先験的画像は、以下に詳細に記載するが、個々に投影データの各ラインを分析しその結果を組み合わせることによって、反復的な方法で生成されることができる。
【0076】
画像再構成
図4(a)および図4(b)を参照して上述したX線CT画像システム、および、図5(a)および図5(b)を参照して上述したX線C−arm画像システムは、本発明の実施形態により画像データを得るために使用することができる。特に図8において、本発明による画像再構成法のステップを示すフローチャートが説明される。ステップ800で示されるように、対象からの心電図(ECG)信号の取得が始まる。このECG信号は、取得された画像データをM個の異なる心拍フェーズPMにレトロスペクティブにゲート(gate)するために用いられる。次に、ステップ802示すように、第1ビュー角θnにおいて投影ビューのセットの形で画像を取得することよりデータ取得が始まる。画像データが再度取得された場合、X線源および検出器は、その後ステップ804において、新しいビュー角で回転する。このプロセスは、決定ブロック806に示されるように、X線源および検出器が最後のビュー角度θNで回転するまで繰り返される。そして、所望の画像の全てが取得されると、ECG信号の取得が停止される。
【0077】
全ての画像データが取得された後、再構成プロセスが始まる。最初に、ステップ808において、先験的画像Ipが再構成される。通常、先験的画像は、一連の再構成ラインとして反復的に画像を再構成する方法を用いて、再構成される。例えば、再構成し二乗して得られる従来の画像画素を有する代わりに、再構成された画像が、以下に「再構成ライン」と記載するラインとして再構成される画素を有する。以下で図9Aおよび図9Bを参照して説明するが、この方法は、小さなフラットパネル検出器で取得されるトランケーション投影データからでも適切な先験的画像Ipを提供する。
【0078】
図8をまた参照するが、取得された画像データは、上述したように、その後M個の異なる心拍フェーズPMにレトロスペクティブにゲートされる。このレトロスペクティブゲートは、M個の異なる所望の心拍フェーズにそれぞれに対して「心拍フェーズ画像データセット」を生成する。したがって、各心拍フェーズ画像データセットは、与えられた心拍フェーズPMに対応するゲーティングウィンドウWm中に取得される複数の投影ビューを有する。あるいは、画像データがECG信号中の特定の時間ポイントにおいてのみ取得されるように、オリジナルの画像データ取得をプロスペクティブにゲートすることが可能である。このデータ取得スキームに従うと、選択された心拍フェーズ中に取得された画像データの全てが、心拍フェーズ画像データセットと同様に結合される。
【0079】
各心拍フェーズ画像データセットは、高度にアンダーサンプルされ、切り取られる。このため、周知のフィルタ補正逆投影(FBP)法などのスタンダードな画像再構成アルゴリズムを用いて画像を再構成する試みは、深刻なストリーキングアーチファクトを生ずる結果となる。画像再構成法を進めると、ステップ810において、第1心拍フェーズPmが選択される。次のステップ812に示すように、選択された心拍フェーズPmの所望の画像Iが、一つには、図1、図2、図3を参照して上述したような再構成法を利用する方法を用いて、その後再構成される。以下で図10Aおよび図10Bを参照して詳細に説明するが、各心拍フェーズに対する所望の画像Iは、上述したステップ808における先験的画像IPの生成と同様の方法で再構成される。また図8に関して、プロセスブロック814で決定されるように、各所望の心拍フェーズに対する画像が再構成されるまで、所望の画像Iはこの方法で各心拍フェーズPmに対して再構成される。また、所望の画像すべてが再構成されていない場合、ステップ816において、次の心拍フェーズPmが選択されて、上記の所望の画像再構成法が繰り返される。
【0080】
図9Aおよび図9Bおいて、本発明に従って対象の先験的画像IPを生成する方法のステップを示すフローチャートが示されている。最初に、ステップ900に示すように、差分投影データセットは、取得した画像データから生成される。差分投影データセットを生成する典型的な方法は、例えば、引用文献によりここで取り入られている米国特許番号7,251,307に記載されている。一般に、フラットパネル検出器が、減衰したX線を検出するために利用される場合、差分投影データgdは検出器座標u、v、および、源パラメータtに関して算出される。すなわち、差分投影データが以下の式により得られる。
【0081】
【数26】
【0082】
ここで、DはX線源から検出器アイソセンターまでの距離であり、gは取得した投影データである。
【0083】
差分投影データが生成された後、ステップ902に示すように、第1再構成ラインΛが選択処理される。CT番号が先験的に知られている小さな関心領域を通る与えられた再構成ラインΛに対して、反復プロセスは、境界線上に画素の画像画素値を再構成するために再構成ラインΛで行われる。再構成プロセスは、ステップ904に示すように、再構成された再構成ラインΛの最初の見積り画像
【数27】
を生成することによって始まる。通常、最初の見積り画像
【数28】
は、以下のように表される。
【0084】
【数29】
【0085】
ここで、Λは、再構成ラインであり、ΛAは、実質的には−1000ハウンズフィールドユニット(HU)を有する空気、あるいは、平均−800HUを有する肺組織である対象内の領域を通過する再構成ラインの一部であり、
【数30】
は、空気を通る部分ではない再構成ラインにおける値を示す。この最初の見積り画像が、選択された再構成ラインΛに関連する合成画像マトリクスにおいてそのラインに対する画像強度値を含むことを示す。次に、ステップ906に示すように、差分投影データセットが、差分画像DBP(X)を得るために対応する再構成ラインΛ上に逆投影される。また一方で、小さなフラットパネル検出器で生じる打ち切りにより、スキャン視界(FOV)を通過する再構成ラインΛの部分だけが逆投影される。その後、ステップ908に示すように、最初の見積り画像
【数31】
が変換される。例えば、最初の見積り画像
【数32】
は、変換された最初の見積り画像Hf(x)を作成するためにヒルベルト変換を用いて変換される。
【0086】
変換された最初の見積り画像Hf(x)が作成された後、ステップ910に示すように、結合見積り画像MHf(x)が作成される。結合見積り画像MHf(x)は、以下の式に示すように、変換された最初の見積り画像Hf(x)と逆投影された差分投影DBP(x)とを結合することによって作成される。
【0087】
【数33】
【0088】
ここで、
【数34】
は、スキャンFOVΛHを通る部分ではない再構成ラインΛにおける値を表す。このステップのあと、ステップ912に示すように、再構成された再構成ラインΛの更新見積り画像
【数35】
が作成される。
【0089】
例えば、更新見積り画像
【数36】
が、結合見積り画像MHf(x)の逆ヒルベルト変換を算出することによって作成される。
【0090】
ループに入ると、再構成された再構成ラインΛが繰り返して見積もられる。最初に、ステップ914に示すように、更新見積り画像
【数37】
が、見積り投影データを作成するために、前方に投影される。この見積り投影データは、ステップ916に示すように、その後、差分投影データを作成するために、取得した画像データから差し引かれる。この差分結果は、ステップ918で示すように、差分画像を作成するために、再構成ラインΛ上に逆投影される。そして、ステップ920において、差分画像が最小化される。例えば、差分画像が、正値性条件(positivity constraint)と称される減衰係数が正数である前提と同様に、凸最適化手法、すなわち、上の式(3)の一貫性の条件を用いて最小化される。決定は、式(15)における停止基準のように、この最小化された差分画像が停止基準を満たすかどうか、その後決定ブロック922で行われる。停止基準を満たしていなかった場合には、ステップ924に示すように、最小化された差分画像が、次の繰り返しに対して最初の見積り画像として選択される。ステップ908〜920は、その後繰り返されて、決定が停止基準を満たすかどうか決定ブロック922で再度行われる。
【0091】
停止基準に達した場合、ステップ926に示すように、この最小化された差分画像は「画像ライン」として保存される。そして、ステップ928に示すように、次の再構成ラインに対して全プロセスが繰り返される。個々の再構成ライン全てが、決定ブロック930で決定されるように、この方法で実施された後、ステップ932に示すように、先験的画像IPを作成するために、対応する画像ラインが結合される。例えば、各再構成ラインが、先験的画像IPに対する画像マトリクスの1列または1段に相当する。それにより、先験的画像IPは、個々の再構成画像ラインを適切に結合して、全部の画像マトリクスを作ることにより作成される。
【0092】
図10Aおよび図10Bにおいて、本発明に従って作成される先験的画像IPを利用する典型的な画像再構成法のステップを示すフローチャートが示されている。上述の先験的画像IPを作成する方法と同様に、差分心拍フェーズ投影データセットは、最初に、ステップ1000に示すように、選択された心拍フェーズ画像データセットから作成される。通常、特定の心拍フェーズに対する有効データは、非常に限定される。例えば、約10個の投影ビュー角だけが、与えられた心拍フェーズ画像データセットにおいて含めることができる。したがって、他の心拍フェーズからのいくつかの投影が、実質的に時間的情報を損なうことなく差分心拍フェーズ投影データセットにおいて含められる。これを達成するために、「スライドウィンドウ(sliding window)」型重み付けが利用される。すなわち、データが選択されたターゲット心拍フェーズに属している場合、1つの重みがそのデータに起因する。一方、他の隣接した心拍フェーズに対しては、より小さな重みが割り当てられる。データは、選択された心拍フェーズから時間が経つごとに、そのデータに与えられる重みが小さくなる。
【0093】
ステップ1002に示すように、第1心拍フェーズが選択処理される。各所望の心拍フェーズ画像の画像マトリクスにおける各ラインに対して、反復最小化プロセスは、先験的画像IPを作成するのに用いられた方法と同様の方法で、行われる。したがって、ステップ1004に示すように、第1再構成が選択される。その後、最初の見積り画像
【数38】
が、ステップ1006に示すように、以下の式で先験的画像IPを用いて作成される。
【0094】
【数39】
【0095】
ここで、Λは、再構成ラインであり、ΛAは、実質的には−1000ハウンズフィールドユニット(HU)を有する空気、あるいは、平均−800HUを有する肺組織である対象内の領域を通過する再構成ラインの一部であり、
【数40】
は、空気ΛAを通過する部分ではない再構成ラインΛにおける値を示す。次に、差分心拍フェーズ投影データセットは、ステップ1008に示すように、差分画像DBP(X)を得るために、対応する再構成ラインΛに逆投影される。小さなフラットパネル検出器で生じる打ち切りにより、スキャン視界(FOV)ΛHを通過する再構成ラインΛの一部だけが逆投影される。その後、ステップ1010に示すように、最初の見積り画像
【数41】
が変換される。例えば、最初の見積り画像
【数42】
は、変換された最初の見積り画像Hf(x)を作成するためにヒルベルト変換を用いて変換される。
【0096】
変換された見積り画像Hf(x)が作成された後、ステップ1012に示すように、結合見積り画像MHf(x)が作成される。結合見積り画像MHf(x)は、以下の式に示すように、変換された最初の見積り画像Hf(x)と逆投影された差分投影DBP(x)とを結合することによって作成される。
【0097】
【数43】
【0098】
ここで、
【数44】
は、スキャンFOVΛHを通る部分ではない再構成ラインΛにおけるそれらの値を表す。このステップの後に、ステップ1014に示すように、再構成された再構成ラインΛの更新見積り画像
【数45】
が作成される。例えば、更新見積り画像
【数46】
が、結合見積り画像MHf(x)の逆ヒルベルト変換を算出することによって作成される。
【0099】
ループに入ると、再構成された再構成ラインΛが反復して見積もられる。最初に、ステップ1016に示すように、更新見積り画像
【数47】
が、見積り投影データを作成するために、前方に投影される。この見積り投影データは、ステップ1018に示すように、その後、差分投影データを作成するために、対応する取得した画像データから差し引かれる。なお、対応する取得した画像データは、与えられた心拍フェーズに関連している。この差分結果は、ステップ1020に示すように、差分画像を作成するために、再構成ラインΛ上に逆投影される。その後、ステップ1022において、差分画像が最小化される。この最小化は、二段階法で行われる。例えば、最初に差分画像が、正値性条件と称される減数係数が正数である前提と同様に、凸最適化手法、すなわち、上の(3)式の一貫性の条件を用いて最小化される。しかしながら、この第1の最小化の後、第2の最小化プロセスは、より早く作成される先験的画像IPを用いて行われる。一般に、第2の最小化には、図1、図2、および、図3を参照して詳細に上述したように、先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)の性能が含まれる。決定は、上の(15)式における停止基準のように、この最小化された差分画像が停止条件を満たすかどうか、その後決定ブロック1024で行われる。停止基準を満たしていなかった場合には、ステップ1026に示すように、最小化された差分画像が、次の繰り返しに対して最初の見積り画像として選択される。ステップ1010〜1022は、その後繰り返されて、決定が停止基準を満たすかどうか再度決定ブロック1024で行われる。
【0100】
停止基準に達した場合、ステップ1028に示すように、この最小化差分画像は「画像ライン」として保存される。そして、ステップ1030に示すように、次の再構成ラインに対して全プロセスが繰り返される。個々の再構成ライン全てが、決定ブロック1032で決定されるように、この方法で実施された後、ステップ1034に示すように、選択された心拍フェーズIの所望の画像を作成するために、対応する投影画像が結合される。決定は、所望の心拍フェーズ全てに対する画像が再構成されたかどうか、決定ブロック1036でその後行われる。所望の心拍フェーズ全てに対する画像が再構成されていない場合、次の心拍フェーズがステップ1038で選択される。そして、ステップ1004〜1034において、新たに選択された心拍フェーズに対する所望の画像Iを作成するために繰り返される。
【0101】
上述の画像再構成法は、多くの同等のもの、代替的なもの、バリエーション、修正が可能でありまた本発明の範囲に含まれることは明らかである。例えば、対象の呼吸を呼吸ベルトのような呼吸モニタリング装置で監視して、画像データを測定された呼吸情報に基づいてレトロスペクティブにゲートすることが可能である。この方法において、内臓器官動作のような動作は、画像を再構成する際に補正することができる。
【0102】
本発明は一以上の好ましい実施形態の形で記載されており、明示的に別段の定めがある場合を除き、多くの同等のもの、代替的なもの、バリエーション、修正が可能でありまた本発明の範囲に含まれることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2008年11月26日に出願された「心拍コーンビームコンピュータ断層撮影法における先験的画像制限画像再構成法(Method for Prior Image Constrained Image Reconstruction in Cardiac Cone Beam Computed Tomography)と称する米国仮出願番号61/118,314の利益を主張する。
【0002】
(連邦政府の委託研究の記載)
本発明は、政府機関である国立衛生研究所NIH EB005712及びNIH EB007021により認められた政府支援によりなされたものである。米国政府は本発明に関し一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、医療用画像に関し、特に、取得された画像データから画像を再構成する方法に関する。
【0004】
コンピュータ断層撮影システムにおいては、「画像面」と称されるデカルト座標系のXY平面内に位置するように視準された扇状のビームがX線源により照射される。このX線ビームは、患者などの撮像される対象を通り抜けて、多数の放射線検出器に影響を与える。透過される放射線の強度は、前記対象によるX線ビームの減衰に依存し、各検出器により、別々の電気信号が、ビームの減衰の測定結果として生成される。すべての検出器からの減衰の測定結果が別々に取得され、いわゆる「透過プロファイル」、「減衰プロファイル」、または、「投影」が生成される。
【0005】
従来のCTシステムにおけるX線源および検出器配列は、対象を横切るX線ビームの角度が常に変化するよう、画像平面内のガントリーの上で対象の周りに回転される。与えられた角度における検出器配列からの透過プロファイルは「ビュー(view)」または「投影(projection)」と呼ばれ、対象の「スキャン(scan)」には、X線源および検出器が一回転する間に異なる角度の向きで得られる複数のビューのセットが含まれる。「コーンビーム(cone beam)」の配置において、X線源および検出器の焦点は、X線のコーン形状を定義する。対象がコーンビームによって十分に覆われていない場合、そこに含まれるビューは、「打ち切り(トランケーション)」される。この打ち切りの程度は、利用した検出器のサイズ、対象のサイズ、および、ビューの角度を含む要因によって決まる。対象が人体の場合、非打ち切りコーンビーム投影(non-truncated cone beam projections)を測定することは、実行不可能な大きな検出器を必要とする。したがって、医療用において、測定されたコーンビーム投影は、一般的に通常打ち切られる。
【0006】
2次元スキャンにおいて、データは、対象を通って2次元的スライスに対応する画像を構成するために処理される。2次元データから画像を再構成するための一般的な方法は、この分野ではフィルタ補正逆投影技術と称される。この画像再構成プロセスにおいては、スキャン中に取得された減衰測定結果が、「CT数」または「ハウンズフィールド単位」と称される整数へと変換される。これらはディスプレイ上に対応する画素の輝度を調整するために用いられる。フィルタ補正逆投影画像再構成法は、取得された透過プロファイルからCT画像を再構成するために用いられる最も一般的な技法である。
【0007】
一般的な画像再構成理論によれば、エイリアシングアーチファクト(aliasing artifacts)なしで画像を再構成するためには、画像データを得るために使用されるサンプリングレートが、ナイキスト−シャノンのサンプリング定理に示されるいわゆるナイキスト基準を満たしている必要がある。また、一般的な画像再構成理論においては、画像に関する詳細な事前情報は必要としない。その一方で、所望の画像に関するいくつかの事前情報が利用でき、それを画像再構成プロセスの中に適切に組み込む場合には、ナイキスト基準が満たされていなくとも、画像は正確に再構成される。例えば、所望の画像が円対称性を有し且つ空間的に一様であることが分かっている場合には、平行ビーム投影のうちの一つのビューのみ(即ち一つの投影ビュー)が、対象の線形減衰係数を正確に再構成するために必要となる。別の例としては、所望の画像が単一の点でのみ構成されていることが分かっている場合には、その点で交差する二つの直交する投影のみが、その点の画像を再構成するために必要となる。したがって、所望の画像がスパースに分配された(sparsely distributed)点のセットであるなどの所望の画像に関する事前情報が分かっていれば、取得されたデータのセットがナイキスト基準を満たしていなくとも、そのデータのセットから画像を再構成することができる。より一般的に言い換えると、所望の画像のスパース性 (sparsity)に関する情報を用いることでナイキスト基準を緩和することができる。しかしながら、そのような議論を一般化して厳密な画像再構成理論を定式化することは非常に重要な課題である。
【0008】
近年、「圧縮センシング(compressed sensing:CS)」と呼ばれるデータ処理を用いる新しい数学的フレームワークが定式化された。圧縮センシングにおいては、まばらな画像に対する線形投影の小さなセットのみで良質な画像が再構成される。CSの理論は、E. Candes、J. Romberg、及びT. Taoによる「ロバスト不確定性原理:不完全性の高い周波数情報からの厳密な信号再構成」、IEEE Transactions on Information Theory 2006;52:489〜509ページ、及び、D. Donohoによる「圧縮センシング」、IEEE Transactions on Information Theory 2006;52:1289〜1306ページに記載されており、また、例えば米国特許出願番号第11/199,675号に開示されている。
【0009】
CSの数学的フレームワークは簡潔ではあるが、医用撮像分野への再構成法の適用性は、医用画像がまばらであることに大きく依存している。しかしながら、医用画像はしばしば一般的な画素表現においてまばらではない。それにもかかわらず、画像をスパース化(sparsify)するために、単一の画像に対して数学的変換を行うことができる。そのような変換は「スパース化変換(sparsifying transforms)」と呼ばれる。具体的には、スパース化変換、Ψ、が与えられた場合、CS画像再構成は次の目的関数を最小化することにより実施される。
【0010】
【数1】
【0011】
上記の式の目的関数において、Iは所望の画像を表すベクトルであり、Yは画像システムにより取得されるデータを表すベクトルであり、Aは、測定値を記述するシステム行列である。
【0012】
【数2】
【0013】
次に、上述の式は、N次元ベクトルXのL1ノルムと呼ばれる。すなわち、CS画像再構成によりスパース化された画像のL1ノルムを最小化する画像が、物理的測定値AI=Yを満たすすべての画像において決定される。
【0014】
CS画像再構成理論の基本的な考えをまとめると以下のようになる。画像表現における所望の画像を再構成する代わりに、所望の画像のスパース化されたバージョンが再構成される。スパース化された画像においては、実質的により少ない画像画素が重要な画像価値を有する。したがって、アンダーサンプルされたデータセットからスパース化された画像を再構成することが可能となる。スパース化された所望の画像が再構成されると、「逆スパース変換(inverse sparsifying transform)」を用いてスパース化された画像が変換されて所望の画像に戻される。実際には、「逆」スパース化変換は明確なフォームを有する必要はなく、スパース化変換のみが画像再構成において必要とされる。
【0015】
実際的なインターベンショナル心臓学(interventional cardiology)においては、小さなフラットパネル検出器を有するC−armシステムが用いられている。例えば、パネルサイズは、一般的に12cmのみのオーダー上で視界を提供する約20cmあるいは20cmまでのサイズだけである。X線投影画像において、この視界は辛うじて心臓全体をカバーする範囲である。また、そのようなC−armシステムを用いて得られる各コーンビーム投影は、トランケーションされる。また、ECGゲーティング(ECG gating)がない場合には、フィルタ補正逆投影再構成アルゴリズムは、十分な画像を再構成することができない。実際、事前情報が利用できない場合には、この状況で画像を再構成することは本質的に難しい。したがって、心臓画像に適用される方法において先験的画像制限圧縮センシング(prior image constrained compressed sensing:PICCS)のような画像再構成法で用いる適切な先験的画像を生成することは、相当な挑戦でさえある。
【発明の概要】
【0016】
本発明によれば、トランケーションコーンビーム投影データ(truncated cone beam projection data)から先験的画像を作成するための方法が提供され、前述の欠点を解決することが可能である。具体的には、心臓アプリケーション用先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)のような画像再構成法を用いて、品質画像を再構成することが可能な方法を提供する。
【0017】
本発明は、心拍コーンビームX線コンピュータ断層装置(CT)に適用できる画像再構成法を提供する。より詳細には、本発明は、1セットのトランケーションコーンビーム画像データ(truncated cone beam image data)から選択された心拍フェーズの高品質画像を再構成する画像再構成法を提供する。
【0018】
本発明によれば、心拍コーンビームCTにおいて、データをトランケーション投影として取得する現在の心臓フラットパネル検出器を用いることが可能な画像再構成法が、提供される。一般に、この画像再構成法は、心拍ゲーティングすることなく取得したトランケーションデータの全てから先験的画像を再構成するために利用される反復法、および、個々の心拍フェーズに対する画像を再構成する再構成法を含む。ここで、先験的画像は、先験的画像制限再構成法において利用される。先験的画像制限再構成法における目的関数は、先験的画像の生成で用いられた状況を取り入れるために変更されるので、データトランケーション問題が適切に対処される。
【0019】
本発明の前述した側面及びその他の側面及び利点は、以下の記載の中で述べられる。本明細書においては、本明細書の一部を構成する添付された図面について記載され、図面の記載は本発明の好ましい実施形態である。しかしながらそのような実施形態は本発明の全ての範囲を表すものではなく、したがって本発明の範囲は請求の範囲及び本明細書の中に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施する際に用いられる典型的な先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)の画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【図2】本発明を実施する際に用いられる典型的な先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)の画像再構成法の別のステップを示すフローチャートである。
【図3】本発明を実施する際に用いられる典型的な先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)の画像再構成法のさらに別のステップを示すフローチャートである。
【図4】(a)は、X線コンピュータ断層撮影(CT)画像システムの絵画図である。(b)は、図4(a)のCT画像システムのブロック図である。
【図5】(a)は、C−armX線画像システムの絵画図である。(b)は、図5(a)のC−armX線画像システムのブロック図である。
【図6】(a)は、図5(a)のC−armX線画像システム内のX線源および検出器の絵画図である。(b)は、図5(a)のC−armX線画像システムに用いられたC−armスキャンの絵画図である。
【図7】(a)は、小さなフラットパネル検出器、および、そのような検出器に関連する制限された視界を示す絵画図である。(b)は、再構成ラインを示す絵画図であり、Λは対象を通過する部分を示し、ΛAは空気のような既知の材料の領域に相当する再構成ラインの部分を示し、ΛHは小さなフラットパネル検出器の使用から生じる制限された視界部分を示す。
【図8】図5のCT画像システム、または、図6(a)のC−armX線画像システムにより行われる本発明の画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【図9A】本発明の先験的画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【図9B】本発明の先験的画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【図10A】本発明の心拍フェーズ画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【図10B】本発明の心拍フェーズ画像再構成法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一般的に、1組のデータから画像を再構成する方法には、測定されたデータサンプルYから所望の画像Iを見積もるための数々のステップが含まれる。より詳細には、画像再構成は次の一貫性の条件を満たすべきである。
【0022】
【数3】
【0023】
上の式において、Aはシステム行列である。一般的に、システム行列Aは、所望の画像Iを取得したデータサンプルYに関連付けする前進射影演算子(forward projection operator)と見なすことができる。コンピュータ断層撮影(CT)画像を扱う場合、システム行列は再投影演算を含むことができ、その一方で磁気共鳴画像(MRI)においては、フーリエ変換関数を含むことができる。上式(3)の一貫性の条件は、言い換えると、画像が正確に再構成されたときに、測定された投影データの正しい見積りを作成するために、前進射影演算子が実際のデータ取得過程を実質的に再現することを表している。
【0024】
本発明の方法においては、良質な所望の画像を再構成する方法を提供する。通常、圧縮センシング(CS)の原理を利用した反復画像再構成法を制限するために、「先験的画像」が用いられる。例えば、CSで通常用いられるスパース化変換に加えて、所望の画像から先験的画像を差し引くことにより、画像はさらにスパース化される。その結果、CS法で必要とされるサンプル数よりも実施素敵に少ないサンプル数を用いて画像を再構成することができる。
【0025】
より詳細には、先験的画像Ipおよび所望の画像Iが与えられたとき、画像再生構成のための本発明の方法は、次の目的関数を最小化することにより実行される。
【0026】
【数4】
【0027】
ここで、Ψ1およびΨ2はスパース化変換であり、
【数5】
はL1ノルム演算である。また、αは上式(4)の目的関数における二つの項の相対的な重みを調整するために用いられる正規化パラメータ(regularization parameter)である。上述したとおり、以下の式が与えられる。
【0028】
【数6】
【0029】
上式は、N次元ベクトルのL1ノルムXを示す。より一般的には、所望の画像において適切な画像を維持しながら真のL1ノルムを変更することが可能である。例えば、式(4)の目的関数は、以下のように一般化することができる。
【0030】
【数7】
【0031】
【数8】
は、Lpノルム演算を示し、以下のように表される。
【0032】
【数9】
【0033】
上述したように、好ましくはp=1.0であるが、pは異なる値でもよい。当業者であれば、pの値が1.0から離れるほど、通常、再構成された所望の画像の品質が低下するということが明らかである。
【0034】
式(4)のスパース化変換Ψ1およびΨ2は通常異なるが、同じスパース化変換であってもよい。スパース化変換には、例えば、ウェーブレット変換、一次階差(first order finite difference)、二次階差(second order finite difference)、および、次の式で示す)▽m,n離散グラデーション変換(discrete gradient transform)が含まれる。
【0035】
【数10】
【0036】
ここで、指数mおよびnは画像Iにおける画素の位置を示す。▽m,nI(m,n)で特定される画像は、一般的に「勾配画像」と呼ばれる。
【0037】
式(4)の目的関数内の項は両方とも重要である。それらの重要性により、正規化パラメータαの選択は、画像再構成プロセス全体を調整するために利用される。したがって、正規化パラメータαの選択は、先験的画像IPの選択に依存すると共に、目の前の臨床的応用に依存する。例えば、式(4)の目的関数における2番目の項、
【数11】
は、先験的画像IPから潜在的に受け継がれたストリーキングアーチファクトを軽減する。さらなる例として、心臓画像における応用においては、正規化パラメータをα≒0.3〜0.7と選択すれば十分である。
【0038】
式(3)の一貫性の条件を全体的な画像再構成によりよく組み込むために、ラグランジュの乗数法が利用される。そのようにして、上記一貫性の条件を用いて式(4)で定められた目的関数の最小化にさらなる制限を追加する。新しい目的関数は、したがって、以下のようになる。
【0039】
【数12】
【0040】
ここで、λはラグランジュ乗数であり、Xは差分行列である。また、
【数13】
は、L2ノルム演算の二乗であり、N次元ベクトルXについては、以下のように表わされる。
【0041】
【数14】
【0042】
式(9)の差分行列は、式(3)の一貫性の条件を用いて以下のように表される。
【0043】
【数15】
【0044】
ラグランジュ乗数λは、本発明を実施する際に用いられる特定画像システムにおいて経験的に決定される。例えば、ラグランジュ乗数λは、所望のデータ一貫性要求と先験的画像Ipとの間で予め定められたトレードオフにより決定される。大きなラグランジュ乗数λが選択された場合、再構成される画像はより低いノイズ分散を有する。しかしながら、これは、先験的画像の高い空間分解能特性の損失として達成された可能性がある。同様に、より小さなラグランジュ乗数λが用いられた場合には、先験的画像の高い空間分解能特性は良く保たれるが、所望の画像におけるノイズ分散は高くなる可能性がある。そのような状態は、用いられる撮像システムにより達成され得るコントラスト対ノイズ比に影響を及ぼす。
【0045】
式(9)に示される目的関数は、画像システムのノイズを考慮する目的でさらに変化することができる。このようにして、次の目的関数が最小化される。
【0046】
【数16】
【0047】
ここで、XTは差分行列Xの転置であり、Dはシステムノイズ行列(system noise matrix)であって、次式で決定される行列要素を有する対角行列である。
【0048】
【数17】
【0049】
ここで、σn2はノイズ分散であって本発明を実施する際に用いられる画像システムにおけるノイズを示すパラメータである。例えば、X線画像システムにおいては、ノイズパラメータσn2はn番目のX線検出器に関連するノイズ分散である。あるいは、MR撮像システムにおいては、ノイズパラメータσn2はn番目の受信コイルにおいて見積もられるノイズ分散である。
【0050】
本発明の方法においては、先験的画像Ipはいくつかの役割を果たす。例えば、先験的画像Ipは、全体的な画像再構成を加速する、繰り返し再構成における種画像(seed image)としての役割を果たす。また、先験的画像Ipは、所望の画像Iをさらにスパース化させるために用いられて、別のスパース化変換としての役割も果たす。さらに、先験的画像Ipにおいて、信号ノイズ比(SNR)が比較的高い場合には、最終的な再構成画像がこの高いSNRを引き継ぐ。上述したように、先験的画像Ipは、再構成される所望の画像を表す事前情報を含む対象の先験的画像である。先験的画像Ipは、予め実行される画像研究から求めることができる。または、所望の画像を用いて取得した画像データとして同じセクションで取得した画像データから再構成することができる。通常、先験的画像Ipは、所望の画像として同じ画像様式を用いて取得される。しかしながら、先験的画像Ipは、所望の画像よりも異なる画像様式から得て適用される。
【0051】
図1を参照すると、本発明の方法の一つの実施は、ステップ100に示すように、式(4)の目的関数を用いて正規化パラメータαを初期化することから始める。正規化パラメータαを選択することにより、所望の画像のスパース化間のトレードオフ、および、所望の画像における先験的画像の影響が決定される。したがって、正規化パラメータαの値は、目の前の臨床応用に従って変化する。例えば、心臓画像への適用においては、通常α≒0.3〜0.7の値で十分である。次に、ステップ102およびステップ104に示すように、式(4)の目的関数の一番目と二番目の項がそれぞれ初期化される。一番目の項、
【数18】
の初期化は、ステップ106で始まり、ここで、先験的画像Ipが所望の画像の見積り即ち見積り画像から差し引かれ、「差分画像」が作成される。先験的画像Ipおよび所望の画像の見積りIの具体的な選択は、撮像手段および具体的な臨床における応用に依存する。したがって、これらの選択の別の選択肢について、以下で詳細に議論する。ステップ108に示されているように、スパース化変換Ψ1を用いることによって差分画像がスパース化される。上述の通り、スパース化変換Ψ1は、ウェーブレット変換、一次階差、二次階差、および、離散グラデーション変換を含む数学的演算のどのような数でもよい。このスパース化された差分画像のL1ノルムがその後ステップ110で算出される。その後、ステップ112で、このプロセスの結果が正規化パラメータαによって重み付けされる。
【0052】
式(4)の目的関数の二番目の項、
【数19】
の初期化は、ステップ114で始まり、ここで、所望の画像の見積りIがスパース化変換Ψ2を用いることでスパース化される。次に、このスパース化された所望の画像見積りのL1ノルムが、ステップ116で算出される。スパース化変換Ψ2として離散グラデーション変換▽m,nが選択された場合、ステップ114および116は所望の画像見積りの合計変化、TV、の算出としてみることができ、これは以下のように表わされる。
【0053】
【数20】
【0054】
スパース化された所望の画像見積りのL1ノルムが算出されると、ステップ118においてその結果が(1−α)により重み付けされる。続いてステップ120で、前記一番目の項と二番目の項とを足し合わせることにより、式(4)の目的関数が作成される。この目的関数は、その後ステップ122で例えば非線形共役勾配法を用いて最小化される。この最小化プロセスは停止基準が満たされるまで続く。停止基準としては、例えば、現時点の所望の画像の見積りを前回の繰り返しからの所望の画像の見積りと比較することが挙げられる。そのような停止基準は以下のように表わされる。
【0055】
【数21】
【0056】
ここで、Iij(k+1)は画素位置(i,j)における(k+1)番目の所望の画像の見積りの値であり、Iij(k)は画素位置(i,j)におけるk番目の所望の画像の見積りの値である。また、εは画像再構成プロセスの精度のプリセット許容値である。
【0057】
図2を参照すると、本発明の方法の別の実施は、ステップ200において、式(9)の目的関数を用いて、まず正規化パラメータαを初期化することから始まる。続いて、ステップ202及び204において、式(9)の目的関数における一番目と二番目の項がそれぞれ初期化される。このプロセスは上記図1のステップ102および104と同じように行われる。しかしながら、ここでは、式(3)の一貫性の条件が三番目の項、
【数22】
に盛り込まれ、これはステップ206で初期化される。最初に、ステップ208で差分行列Xが作成される。上で詳細に述べたように、差分行列Xは式(3)の一貫性の条件に対応するとともに次のように表される。
【0058】
【数23】
【0059】
ゆえに、システム行列Aを所望の画像の見積りIに適用し、続いて所望の画像に対応する取得された画像データYを差し引くことにより、差分行列が決定される。差分行列XのL2ノルムの二乗が、次のステップ210で算出される。差分行列XのL2ノルムの二乗が算出された後、ラグランジュ乗数λが決定され、これが、ステップ412で差分行列Xに対して重み付けするために用いられる。上記のとおり、ラグランジュ乗数は経験的に決定されるとともに目の前の臨床における応用に基づいてユーザにより選択される値である。続いてステップ220で、一番目、二番目、三番目の項を足し合わせることにより、式(9)の目的関数が作成される。この目的関数は、その後ステップ222で例えば非線形共役勾配法を用いて最小化される。この最小化プロセスは、上記のとおり、停止基準が満たされるまで続く。
【0060】
図3を参照すると、本発明の方法の別の実施は、ステップ300において、式(12)の目的関数を用いてまず正規化パラメータαを初期化することから始まる。続いて、ステップ302および304において、式(12)の目的関数における一番目と二番目の項がそれぞれ初期化される。このプロセスは、上記図1の102および104と同じように行われる。しかしながら、ここでは、式(3)の一貫性の条件および画像システムにおけるノイズの影響が、三番目の項、λ(XTDX)に盛り込まれ、この項はステップ306で初期化される。最初に、上記の図2のステップ208と同様に、ステップ308で差分行列Xが作成される。次に、システムノイズ行列Dがステップ310で作成される。システムノイズ行列Dは、次の式で決定される行列要素を有する対角行列である。
【0061】
【数24】
【0062】
ここでσn2は、ノイズ分散であり、本発明を実施する際に用いられる画像システムにおけるノイズを示すパラメータである。例えば、X線撮像システムにおいては、ノイズパラメータσn2はn番目のX線検出器に関連するノイズ分散である。また、MR画像システムにおいては、ノイズパラメータσn2がn番目の受信コイルにおけるノイズ分散で見積もられる。システムノイズ行列Dが作成された後に、次の行列乗法が実施される。
【0063】
【数25】
【0064】
この行列乗法はステップ312で実施される。次に、ステップ314に示すように、この演算の結果は、ランジュ乗数により見積もられる。次に、ステップ320において、一番目、二番目、三番目の項を足し合わせることにより式(12)の目的関数が作成される。この目的関数は、ステップ322に示すように、例えば非線形共役勾配法を用いて最小化される。この最小化処理は、上記の通り、停止基準が満たされるまで行われる。
【0065】
X線コンピュータ断層撮影画像システム
図4(a)および図4(b)を参照すると、X線コンピュータ断層撮影(CT)画像システム410は、「第三世代」CTスキャナであるガントリー412を有する。ガントリー412は、X線源413を備えている。そのX線源413は、X線414のファンビームまたはコーンビームをガントリーの反対側の検出器配列416に向けて照射する。検出器配列416は、患者415を通過する照射されたX線を感知する複数の検出器要素418から形成される。各検出器要素418は、作用しているX線ビームの強度を示す電気信号、即ち患者を通過するにつれ減衰するビームを示す電気信号を生成する。X線投影データを取得するためのスキャン中、ガントリー412及びそこに取り付けられた構成要素が患者415内に位置する回転中心419の周りに回転する。
【0066】
ガントリーの回転およびX線源413の操作は、CTシステムの制御機構420により制御される。制御機構420には、X線コントローラ422と、ガントリーモータコントローラ423と、が設けられている。X線コントローラ422は、X線源413に電力およびタイミングの信号を与える。ガントリーモーションコントローラ423は、ガントリー412の回転速度および位置を制御する。制御機構420におけるデータ取得システム(DAS)424は、検出器要素418からアナログデータをサンプルとするとともに、そのデータを後続の処理のためにデジタル信号に変換する。画像再構成装置425は、サンプルされてデジタル化されたX線データをDAS424から受信し、高速画像再構成を実行する。再構成された画像は、画像を大容量記憶装置429に保存するコンピュータ426に入力される。
【0067】
コンピュータ426は、また、オペレーターからキーボードを有するコンソールを介して、命令およびスキャニングパラメータを受信する。関連するディスプレイ432により、オペレーターは、コンピュータ426から、再構成された画像および他のデータを観察することができる。オペレーターにより与えられた命令およびパラメータは、コンピュータ426により用いられて、DAS424、X線コントローラ422、ガントリーモータコントローラ423に制御信号および情報が提供される。さらに、コンピュータ426は、テーブルモーションコントローラ434を操作し、これによりモータで動くテーブル436が制御されて患者415をガントリー412内に配置する。
【0068】
C−armX線画像システム
図5(a)および図5(b)を特に参照すると、本発明の実施形態は、介入手順に関連させて用いられるように設計されたX線システムを使用する。前記X線システムの特徴として、X線源アセンブリ512を一端に有するとともにX線検出器配列アセンブリ514を他端に有するC−arm510が設けられたガントリーを有している。そのガントリーにより、X線源512および検出器514がテーブル516上に配置された患者の周りの異なる位置に異なる角度で配向されるとともに、医師が患者に近づくことを可能としている。
【0069】
前記ガントリーは、L型の台座518を有している。その台座518には、テーブル516の下側に延びる水平レッグ520、および、テーブル516から離れて水平レッグ520からの一端から上側に延びる垂直レッグ522、が設けられている。垂直レッグ522の上端には、水平中心軸526の周りを回転するよう回転可能に取り付けられた支持アーム524が設けられている。中心軸526は、テーブル516の中心線に沿うように配置されている。また、支持アーム524は、中心軸526から半径方向に外側に延びているとともにその外側端にC−arm駆動アセンブリ527を支持している。C−arm510は、駆動アセンブリ527にスライド可能に取り付けられているとともに、矢印530で示されるようにC−arm510をスライドさせC軸528の周りに回転させる駆動モータ(図示せず)に連結されている。中心軸526およびC軸528は、テーブル516の上側に位置するアイソセンター536において互いに直角に交わる。
【0070】
C−arm510の一端にはX線源アセンブリ512が搭載され、他端には検出器配列アセンブリ514が搭載されている。以下で詳細に述べるように、X線源アセンブリ512は、検出器配列アセンブリ514に向けられたX線のコーンビームを放射する。このコーンビームの中心線がシステムのアイソセンター536を通過するように、X線源アセンブリ512および検出器配列アセンブリ514の両方が中心軸526に向けて半径方向内側に延びている。コーンビームの中心線は、従って、テーブル516上に配置された対象からX線減衰データを取得している間、システムのアイソセンターを中心として中心軸526の周り又はC軸528の周りの何れかもしくはその両方の周りに回転する。
【0071】
図6(a)に示すように、X線源アセンブリ512には、励起されるとX線のコーンビーム533を放出するX線源532が設けられている。中心線534は、アイソセンター536を通過し、検出器アセンブリ514内に収容された二次元フラットパネルデジタル検出器538上に作用する。典型的なフラットパネル検出器538には、いわゆる「小さなフラットパネル」と呼ばれる検出器が含まれる。そこにおいて、検出器配列パネル538は、約20cm×20cmの寸法を有する。そのような検出器パネルは、約12cmの視界の範囲を可能とする。各要素は、作用するX線の強度を示す電気信号を生成し、したがって、患者を通過するにつれ減衰するX線の強度を示す電気信号を生成する。スキャン中、X線源532および検出器配列538がシステムのアイソセンター538の周りを回転する。検出器配列は毎秒30個の投影又は30個のビューを取得することができ、これは、所定のスキャン経路及び速度においてビューがいくつ取得されるかを決定する、制限因子である。
【0072】
図5(b)および図6(b)を参照すると、アセンブリ512および514の回転と、X線源532の操作とが、CTシステムの制御機構540により制御される。制御機構540には、電力を供給しX線源532にタイミング信号を提供するX線コントローラ542が含まれる。制御機構540内のデータ取得システム(DAS)544は、検出器要素538からデータをサンプルして該データを画像再構成装置545に提供する。画像再構成装置545は、デジタル化されたX線データをDAS544から受けとり、本発明の方法に従って高速画像再構成を実行する。再構成された画像は、大容量記憶装置549内に画像を保存又は画像をさらに処理するコンピュータ546に、入力される。
【0073】
制御機構540は、また、ガンドリーモーションコントローラ547とC軸モータコントローラ548とを有する。モータコントローラ547、548は、コンピュータ546からの動作命令に応じて、中心軸526およびC軸528のそれぞれの周りで回転を生じさせるX線システム内のモータに電力を与える。コンピュータ546により実行されるプログラムにより、アセンブリ512、514を所定のスキャン経路内で動かすガンドリーモーションコントローラ547およびC軸モータコントローラ548への動作命令が作成される。
【0074】
また、コンピュータ546は、オペレーターから、キーボードおよびその他の手動操作可能な制御部を有するコンソール550を介して、命令およびスキャニングパラメータを受け取る。関連するブラウン管ディスプレイ552によって、オペレーターは、コンピュータ546からの再構成された画像及びその他のデータを監視することができる。オペレーターにより供給された命令は、コンピュータ546により用いられ、保存されたプログラムの指示に従ってDAS544、X線コントローラ542、モータコントローラ547、548に制御信号及び情報を与える。加えて、コンピュータ546は、モータ付きテーブル516を制御して患者をシステムアイソセンター536に対して位置決めするテーブルモータコントローラ554を操作する。
【0075】
例えば、図7(a)に示すように、対象700が、小さなフラットパネル702を利用するC−armX線画像システムに位置付けられた場合、上述したように、投影データが制限された視界704上だけに得られる。その結果、先験的画像を生成する方法や、例えば、トランケーション投影データから成る対象の胸部の心臓部の所望の画像を再構成する方法が、必要とされる。後続する記述は、そのような方法を提供する。さらに例として、図7(B)を参照すると、投影データが得られる再構成ライン706Λが、対象700を通過する。具体的には、再構成ライン706は、対象内において、制限された視界704ΛHを通る部分と、エアポケットのような既知の減衰値ΛAと共に領域708を通る部分とを含む。この知識を用いることで、先験的画像は、以下に詳細に記載するが、個々に投影データの各ラインを分析しその結果を組み合わせることによって、反復的な方法で生成されることができる。
【0076】
画像再構成
図4(a)および図4(b)を参照して上述したX線CT画像システム、および、図5(a)および図5(b)を参照して上述したX線C−arm画像システムは、本発明の実施形態により画像データを得るために使用することができる。特に図8において、本発明による画像再構成法のステップを示すフローチャートが説明される。ステップ800で示されるように、対象からの心電図(ECG)信号の取得が始まる。このECG信号は、取得された画像データをM個の異なる心拍フェーズPMにレトロスペクティブにゲート(gate)するために用いられる。次に、ステップ802示すように、第1ビュー角θnにおいて投影ビューのセットの形で画像を取得することよりデータ取得が始まる。画像データが再度取得された場合、X線源および検出器は、その後ステップ804において、新しいビュー角で回転する。このプロセスは、決定ブロック806に示されるように、X線源および検出器が最後のビュー角度θNで回転するまで繰り返される。そして、所望の画像の全てが取得されると、ECG信号の取得が停止される。
【0077】
全ての画像データが取得された後、再構成プロセスが始まる。最初に、ステップ808において、先験的画像Ipが再構成される。通常、先験的画像は、一連の再構成ラインとして反復的に画像を再構成する方法を用いて、再構成される。例えば、再構成し二乗して得られる従来の画像画素を有する代わりに、再構成された画像が、以下に「再構成ライン」と記載するラインとして再構成される画素を有する。以下で図9Aおよび図9Bを参照して説明するが、この方法は、小さなフラットパネル検出器で取得されるトランケーション投影データからでも適切な先験的画像Ipを提供する。
【0078】
図8をまた参照するが、取得された画像データは、上述したように、その後M個の異なる心拍フェーズPMにレトロスペクティブにゲートされる。このレトロスペクティブゲートは、M個の異なる所望の心拍フェーズにそれぞれに対して「心拍フェーズ画像データセット」を生成する。したがって、各心拍フェーズ画像データセットは、与えられた心拍フェーズPMに対応するゲーティングウィンドウWm中に取得される複数の投影ビューを有する。あるいは、画像データがECG信号中の特定の時間ポイントにおいてのみ取得されるように、オリジナルの画像データ取得をプロスペクティブにゲートすることが可能である。このデータ取得スキームに従うと、選択された心拍フェーズ中に取得された画像データの全てが、心拍フェーズ画像データセットと同様に結合される。
【0079】
各心拍フェーズ画像データセットは、高度にアンダーサンプルされ、切り取られる。このため、周知のフィルタ補正逆投影(FBP)法などのスタンダードな画像再構成アルゴリズムを用いて画像を再構成する試みは、深刻なストリーキングアーチファクトを生ずる結果となる。画像再構成法を進めると、ステップ810において、第1心拍フェーズPmが選択される。次のステップ812に示すように、選択された心拍フェーズPmの所望の画像Iが、一つには、図1、図2、図3を参照して上述したような再構成法を利用する方法を用いて、その後再構成される。以下で図10Aおよび図10Bを参照して詳細に説明するが、各心拍フェーズに対する所望の画像Iは、上述したステップ808における先験的画像IPの生成と同様の方法で再構成される。また図8に関して、プロセスブロック814で決定されるように、各所望の心拍フェーズに対する画像が再構成されるまで、所望の画像Iはこの方法で各心拍フェーズPmに対して再構成される。また、所望の画像すべてが再構成されていない場合、ステップ816において、次の心拍フェーズPmが選択されて、上記の所望の画像再構成法が繰り返される。
【0080】
図9Aおよび図9Bおいて、本発明に従って対象の先験的画像IPを生成する方法のステップを示すフローチャートが示されている。最初に、ステップ900に示すように、差分投影データセットは、取得した画像データから生成される。差分投影データセットを生成する典型的な方法は、例えば、引用文献によりここで取り入られている米国特許番号7,251,307に記載されている。一般に、フラットパネル検出器が、減衰したX線を検出するために利用される場合、差分投影データgdは検出器座標u、v、および、源パラメータtに関して算出される。すなわち、差分投影データが以下の式により得られる。
【0081】
【数26】
【0082】
ここで、DはX線源から検出器アイソセンターまでの距離であり、gは取得した投影データである。
【0083】
差分投影データが生成された後、ステップ902に示すように、第1再構成ラインΛが選択処理される。CT番号が先験的に知られている小さな関心領域を通る与えられた再構成ラインΛに対して、反復プロセスは、境界線上に画素の画像画素値を再構成するために再構成ラインΛで行われる。再構成プロセスは、ステップ904に示すように、再構成された再構成ラインΛの最初の見積り画像
【数27】
を生成することによって始まる。通常、最初の見積り画像
【数28】
は、以下のように表される。
【0084】
【数29】
【0085】
ここで、Λは、再構成ラインであり、ΛAは、実質的には−1000ハウンズフィールドユニット(HU)を有する空気、あるいは、平均−800HUを有する肺組織である対象内の領域を通過する再構成ラインの一部であり、
【数30】
は、空気を通る部分ではない再構成ラインにおける値を示す。この最初の見積り画像が、選択された再構成ラインΛに関連する合成画像マトリクスにおいてそのラインに対する画像強度値を含むことを示す。次に、ステップ906に示すように、差分投影データセットが、差分画像DBP(X)を得るために対応する再構成ラインΛ上に逆投影される。また一方で、小さなフラットパネル検出器で生じる打ち切りにより、スキャン視界(FOV)を通過する再構成ラインΛの部分だけが逆投影される。その後、ステップ908に示すように、最初の見積り画像
【数31】
が変換される。例えば、最初の見積り画像
【数32】
は、変換された最初の見積り画像Hf(x)を作成するためにヒルベルト変換を用いて変換される。
【0086】
変換された最初の見積り画像Hf(x)が作成された後、ステップ910に示すように、結合見積り画像MHf(x)が作成される。結合見積り画像MHf(x)は、以下の式に示すように、変換された最初の見積り画像Hf(x)と逆投影された差分投影DBP(x)とを結合することによって作成される。
【0087】
【数33】
【0088】
ここで、
【数34】
は、スキャンFOVΛHを通る部分ではない再構成ラインΛにおける値を表す。このステップのあと、ステップ912に示すように、再構成された再構成ラインΛの更新見積り画像
【数35】
が作成される。
【0089】
例えば、更新見積り画像
【数36】
が、結合見積り画像MHf(x)の逆ヒルベルト変換を算出することによって作成される。
【0090】
ループに入ると、再構成された再構成ラインΛが繰り返して見積もられる。最初に、ステップ914に示すように、更新見積り画像
【数37】
が、見積り投影データを作成するために、前方に投影される。この見積り投影データは、ステップ916に示すように、その後、差分投影データを作成するために、取得した画像データから差し引かれる。この差分結果は、ステップ918で示すように、差分画像を作成するために、再構成ラインΛ上に逆投影される。そして、ステップ920において、差分画像が最小化される。例えば、差分画像が、正値性条件(positivity constraint)と称される減衰係数が正数である前提と同様に、凸最適化手法、すなわち、上の式(3)の一貫性の条件を用いて最小化される。決定は、式(15)における停止基準のように、この最小化された差分画像が停止基準を満たすかどうか、その後決定ブロック922で行われる。停止基準を満たしていなかった場合には、ステップ924に示すように、最小化された差分画像が、次の繰り返しに対して最初の見積り画像として選択される。ステップ908〜920は、その後繰り返されて、決定が停止基準を満たすかどうか決定ブロック922で再度行われる。
【0091】
停止基準に達した場合、ステップ926に示すように、この最小化された差分画像は「画像ライン」として保存される。そして、ステップ928に示すように、次の再構成ラインに対して全プロセスが繰り返される。個々の再構成ライン全てが、決定ブロック930で決定されるように、この方法で実施された後、ステップ932に示すように、先験的画像IPを作成するために、対応する画像ラインが結合される。例えば、各再構成ラインが、先験的画像IPに対する画像マトリクスの1列または1段に相当する。それにより、先験的画像IPは、個々の再構成画像ラインを適切に結合して、全部の画像マトリクスを作ることにより作成される。
【0092】
図10Aおよび図10Bにおいて、本発明に従って作成される先験的画像IPを利用する典型的な画像再構成法のステップを示すフローチャートが示されている。上述の先験的画像IPを作成する方法と同様に、差分心拍フェーズ投影データセットは、最初に、ステップ1000に示すように、選択された心拍フェーズ画像データセットから作成される。通常、特定の心拍フェーズに対する有効データは、非常に限定される。例えば、約10個の投影ビュー角だけが、与えられた心拍フェーズ画像データセットにおいて含めることができる。したがって、他の心拍フェーズからのいくつかの投影が、実質的に時間的情報を損なうことなく差分心拍フェーズ投影データセットにおいて含められる。これを達成するために、「スライドウィンドウ(sliding window)」型重み付けが利用される。すなわち、データが選択されたターゲット心拍フェーズに属している場合、1つの重みがそのデータに起因する。一方、他の隣接した心拍フェーズに対しては、より小さな重みが割り当てられる。データは、選択された心拍フェーズから時間が経つごとに、そのデータに与えられる重みが小さくなる。
【0093】
ステップ1002に示すように、第1心拍フェーズが選択処理される。各所望の心拍フェーズ画像の画像マトリクスにおける各ラインに対して、反復最小化プロセスは、先験的画像IPを作成するのに用いられた方法と同様の方法で、行われる。したがって、ステップ1004に示すように、第1再構成が選択される。その後、最初の見積り画像
【数38】
が、ステップ1006に示すように、以下の式で先験的画像IPを用いて作成される。
【0094】
【数39】
【0095】
ここで、Λは、再構成ラインであり、ΛAは、実質的には−1000ハウンズフィールドユニット(HU)を有する空気、あるいは、平均−800HUを有する肺組織である対象内の領域を通過する再構成ラインの一部であり、
【数40】
は、空気ΛAを通過する部分ではない再構成ラインΛにおける値を示す。次に、差分心拍フェーズ投影データセットは、ステップ1008に示すように、差分画像DBP(X)を得るために、対応する再構成ラインΛに逆投影される。小さなフラットパネル検出器で生じる打ち切りにより、スキャン視界(FOV)ΛHを通過する再構成ラインΛの一部だけが逆投影される。その後、ステップ1010に示すように、最初の見積り画像
【数41】
が変換される。例えば、最初の見積り画像
【数42】
は、変換された最初の見積り画像Hf(x)を作成するためにヒルベルト変換を用いて変換される。
【0096】
変換された見積り画像Hf(x)が作成された後、ステップ1012に示すように、結合見積り画像MHf(x)が作成される。結合見積り画像MHf(x)は、以下の式に示すように、変換された最初の見積り画像Hf(x)と逆投影された差分投影DBP(x)とを結合することによって作成される。
【0097】
【数43】
【0098】
ここで、
【数44】
は、スキャンFOVΛHを通る部分ではない再構成ラインΛにおけるそれらの値を表す。このステップの後に、ステップ1014に示すように、再構成された再構成ラインΛの更新見積り画像
【数45】
が作成される。例えば、更新見積り画像
【数46】
が、結合見積り画像MHf(x)の逆ヒルベルト変換を算出することによって作成される。
【0099】
ループに入ると、再構成された再構成ラインΛが反復して見積もられる。最初に、ステップ1016に示すように、更新見積り画像
【数47】
が、見積り投影データを作成するために、前方に投影される。この見積り投影データは、ステップ1018に示すように、その後、差分投影データを作成するために、対応する取得した画像データから差し引かれる。なお、対応する取得した画像データは、与えられた心拍フェーズに関連している。この差分結果は、ステップ1020に示すように、差分画像を作成するために、再構成ラインΛ上に逆投影される。その後、ステップ1022において、差分画像が最小化される。この最小化は、二段階法で行われる。例えば、最初に差分画像が、正値性条件と称される減数係数が正数である前提と同様に、凸最適化手法、すなわち、上の(3)式の一貫性の条件を用いて最小化される。しかしながら、この第1の最小化の後、第2の最小化プロセスは、より早く作成される先験的画像IPを用いて行われる。一般に、第2の最小化には、図1、図2、および、図3を参照して詳細に上述したように、先験的画像制限圧縮センシング(PICCS)の性能が含まれる。決定は、上の(15)式における停止基準のように、この最小化された差分画像が停止条件を満たすかどうか、その後決定ブロック1024で行われる。停止基準を満たしていなかった場合には、ステップ1026に示すように、最小化された差分画像が、次の繰り返しに対して最初の見積り画像として選択される。ステップ1010〜1022は、その後繰り返されて、決定が停止基準を満たすかどうか再度決定ブロック1024で行われる。
【0100】
停止基準に達した場合、ステップ1028に示すように、この最小化差分画像は「画像ライン」として保存される。そして、ステップ1030に示すように、次の再構成ラインに対して全プロセスが繰り返される。個々の再構成ライン全てが、決定ブロック1032で決定されるように、この方法で実施された後、ステップ1034に示すように、選択された心拍フェーズIの所望の画像を作成するために、対応する投影画像が結合される。決定は、所望の心拍フェーズ全てに対する画像が再構成されたかどうか、決定ブロック1036でその後行われる。所望の心拍フェーズ全てに対する画像が再構成されていない場合、次の心拍フェーズがステップ1038で選択される。そして、ステップ1004〜1034において、新たに選択された心拍フェーズに対する所望の画像Iを作成するために繰り返される。
【0101】
上述の画像再構成法は、多くの同等のもの、代替的なもの、バリエーション、修正が可能でありまた本発明の範囲に含まれることは明らかである。例えば、対象の呼吸を呼吸ベルトのような呼吸モニタリング装置で監視して、画像データを測定された呼吸情報に基づいてレトロスペクティブにゲートすることが可能である。この方法において、内臓器官動作のような動作は、画像を再構成する際に補正することができる。
【0102】
本発明は一以上の好ましい実施形態の形で記載されており、明示的に別段の定めがある場合を除き、多くの同等のもの、代替的なもの、バリエーション、修正が可能でありまた本発明の範囲に含まれることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線画像システムを用いて対象の画像を作成する方法において、
a)前記X線画像システムを用いて、複数の投影ビュー角の各々において一連の投影ビューに沿って画像データセットを取得するステップと、
b)反復見積りプロセスを用いて、対応する画像マトリクスの各ラインを再構成することによりトランケーションアーチファクトが実質的に抑制された前記対象の先験的画像を作成するステップと、
c)前記対象の見積り画像を選択するステップと、
d)前記先験的画像と前記見積り画像とを用いて、前記対象のまばらにされた画像を作成するステップと、
e)前記スパース化された画像と前記見積り画像と前記取得された画像データセットとを用いて、前記対象の所望の画像を再構成するステップと、
を含むことを特徴とする対象の画像を作成する方法。
【請求項2】
前記ステップb)が、
b)i)選択された物質に関連し、かつ、前記画像マトリクスで対応するラインに沿って配置される各最初の画像見積りの一部において、各画像強度値を既知の減衰値に設定すること、および
b)ii)前記選択された物質に関連しない各最初の画像見積りにおいて、各画像強度値をゼロに設定することにより、
前記画像マトリクスの各ラインに対して最初の画像見積りを作成すること
を含むことを特徴とする請求項1に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項3】
前記ステップb)が、
b)iii)前記取得した画像データセットから差分画像データセットを作成すること、
b)iv)前記作成された差分画像データセットを用いて、前記画像マトリクスセットの各ラインに対する差分画像を作成すること、
b)v)前記対応する最初の見積り画像と前記差分画像とを結合することにより、前記画像マトリクスの各ラインに対する結合画像を作成すること、
b)vi)前記作成された結合画像と前記取得した画像データとを用いて、前記画像マトリクスの各ラインに対応する差分画像を作成すること、
b)vii) 一貫性の条件まで対象の前記各差分画像を最小化すること、および、
b)viii)前記先験的画像を作成するために前記最小化された各差分画像を結合すること、
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項4】
X線画像システムを用いて対象の画像を作成する方法において、
a)X線画像システムを用いて、複数の投影ビュー角の各々における一連の投影ビューに沿って画像データセットを取得するステップと、
b)i)前記取得した画像データセットから差分画像データセットを作成すること、
b)ii)画像マトリクスの各ラインに対して最初の見積り画像を作成すること、
b)iii)前記作成された差分画像データセットを用いて、前記画像マトリクスセットの各ラインに対する差分画像を作成すること、
b)iv)前記対応する最初の見積り画像と前記差分画像とを結合することにより、前記画像マトリクスの各ラインに対する結合画像を作成すること、
b)v)前記作成された結合画像と取得した画像データとを用いて、前記画像マトリクスの各ラインに対応する差分画像を作成すること、
b)vi)一貫性の条件まで対象の前記各差分画像を最小化すること、および、
b)vii)前記先験的画像を作成するために前記最小化された各差分画像を結合すること、により、前記対象の先験的画像を作成するステップと、
c)前記対象の見積り画像を選択するステップと、
d)前記先験的画像と前記見積り画像とを用いて、前記対象のスパース化された画像を作成するステップと、
e)前記スパーク化された画像と前記見積り画像と前記取得した画像データセットとを用いて、前記対象の所望の画像を再構成するステップと、
を含むことを特徴とする対象の画像を作成する方法。
【請求項5】
前記ステップb)ii)が、
選択された物質に関連し、かつ、前記画像マトリクスで対応するラインに沿って配置される前記最初の見積り画像において、各画像強度値を既知の減衰値に設定すること、および、
前記選択された物質に関連しない最初の見積り画像において、各画像強度値をゼロに設定すること、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項6】
前記選択された物質が空気であり、前記既知の減衰値が約−1000HU(Hounsfield units)であることを特徴とする請求項5に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項7】
前記選択された物質が肺組織であり、前記既知の減衰値が約−800HUであることを特徴とする請求項5に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項8】
前記ステップb)iv)が、前記結合を行う前に、前記各最初の見積り画像でヒルベルト変換を行うこと
を含むことを特徴とする請求項4に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項9】
前記ステップb)v)が、
前記各結合画像で逆ヒルベルト変換を行うこと、
前記変換された各結合画像を前方に投影することにより、複数の投影見積りデータを作成すること、
前記対応する取得した画像データから前記複数の投影見積りデータの各々を差し引くことにより、複数の差分投影データを作成すること、
前記対応する複数の差分投影データの各々から前記画像マトリクスの各ラインに対する差分画像を再構成すること、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項10】
前記最小化された各差分画像が、前記画像マトリクスにおいて異なるラインに対応し、そして、
前記ステップb)vii)が、前記最小化された差分画像から先験的画像マトリクスを形成することにより、前記先験的画像を作成することを含むことを特徴とする請求項4に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項11】
前記ステップa)が、前記対象から心電図(ECG)信号を取得すること、および、前記取得したECG信号に前記画像データセットを関連付けること、をさらに含むと共に、
前記ステップe)が、前記対象の心臓の画像を再構成すること
を含むことを特徴とする請求項4に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項12】
前記ステップc)〜e)が、前記対象の心臓の異なる心拍フェーズを示す複数の画像を作成するために繰り返されることを特徴とする請求項11に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項13】
前記ステップc)が、
c)i)前記取得したECG信号と前記取得した画像データセットとを用いて、複数の心拍フェーズデータセットを作成すること、
c)ii)前記複数の心拍フェーズデータセットから複数の差分心拍フェーズデータセットを作成すること、
c)iii)前記複数の心拍フェーズの各々に対応する複数の画像マトリクスの各々における各ラインに対して最初の見積り画像を作成すること、
c)iv)前記作成された複数の差分心拍フェーズデータセットを用いて、複数の画像マトリクスの各々における各ラインに対して差分画像を作成すること、
c)v)前記対応する最初の見積り画像と前記差分画像とを結合することにより、前記複数の画像マトリクスの各々における各ラインに対して結合画像を作成すること、
c)vi)前記作成された結合画像と前記投影ビューに関連する画像データとを用いて、前記複数の画像マトリクスの各々における各ラインに対応する差分画像を作成すること、
c)vii)一貫性の条件まで対象の前記各差分画像を最小化すること、および、
c)viii)前記見積り画像を作成するために前記最小化された各差分画像を結合すること、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項14】
前記ステップc)iii)が、
選択された物質に関連し、かつ、前記画像マトリクスで対応するラインに沿って配置される前記最初の見積り画像において、各画像強度値を既知の減衰値に設定すること、および、
前記選択された物質に関連しない最初の見積り画像の各画像強度値を、前記作成された先験的画像における対応するラインの画像強度値に設定すること、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項15】
前記選択された物質が空気であり、前記既知の減衰値が約−1000HU(Hounsfield units)であることを特徴とする請求項14に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項16】
前記ステップc)v)が、前記結合を行う前に、前記各最初の見積り画像でヒルベルト変換を行うこと
を含むことを特徴とする請求項13に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項17】
前記ステップc)vi)が、
前記各結合画像で逆ヒルベルト変換を行うこと、
前記変換された各結合画像を前方に投影することにより、複数の投影見積りデータを作成すること、
前記対応する取得した画像データから前記複数の投影見積りデータの各々を差し引くことにより、複数の差分投影データを作成すること、
前記対応する複数の差分投影データの各々から前記画像マトリクスの各ラインに対する差分画像を再構成すること、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項1】
X線画像システムを用いて対象の画像を作成する方法において、
a)前記X線画像システムを用いて、複数の投影ビュー角の各々において一連の投影ビューに沿って画像データセットを取得するステップと、
b)反復見積りプロセスを用いて、対応する画像マトリクスの各ラインを再構成することによりトランケーションアーチファクトが実質的に抑制された前記対象の先験的画像を作成するステップと、
c)前記対象の見積り画像を選択するステップと、
d)前記先験的画像と前記見積り画像とを用いて、前記対象のまばらにされた画像を作成するステップと、
e)前記スパース化された画像と前記見積り画像と前記取得された画像データセットとを用いて、前記対象の所望の画像を再構成するステップと、
を含むことを特徴とする対象の画像を作成する方法。
【請求項2】
前記ステップb)が、
b)i)選択された物質に関連し、かつ、前記画像マトリクスで対応するラインに沿って配置される各最初の画像見積りの一部において、各画像強度値を既知の減衰値に設定すること、および
b)ii)前記選択された物質に関連しない各最初の画像見積りにおいて、各画像強度値をゼロに設定することにより、
前記画像マトリクスの各ラインに対して最初の画像見積りを作成すること
を含むことを特徴とする請求項1に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項3】
前記ステップb)が、
b)iii)前記取得した画像データセットから差分画像データセットを作成すること、
b)iv)前記作成された差分画像データセットを用いて、前記画像マトリクスセットの各ラインに対する差分画像を作成すること、
b)v)前記対応する最初の見積り画像と前記差分画像とを結合することにより、前記画像マトリクスの各ラインに対する結合画像を作成すること、
b)vi)前記作成された結合画像と前記取得した画像データとを用いて、前記画像マトリクスの各ラインに対応する差分画像を作成すること、
b)vii) 一貫性の条件まで対象の前記各差分画像を最小化すること、および、
b)viii)前記先験的画像を作成するために前記最小化された各差分画像を結合すること、
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項4】
X線画像システムを用いて対象の画像を作成する方法において、
a)X線画像システムを用いて、複数の投影ビュー角の各々における一連の投影ビューに沿って画像データセットを取得するステップと、
b)i)前記取得した画像データセットから差分画像データセットを作成すること、
b)ii)画像マトリクスの各ラインに対して最初の見積り画像を作成すること、
b)iii)前記作成された差分画像データセットを用いて、前記画像マトリクスセットの各ラインに対する差分画像を作成すること、
b)iv)前記対応する最初の見積り画像と前記差分画像とを結合することにより、前記画像マトリクスの各ラインに対する結合画像を作成すること、
b)v)前記作成された結合画像と取得した画像データとを用いて、前記画像マトリクスの各ラインに対応する差分画像を作成すること、
b)vi)一貫性の条件まで対象の前記各差分画像を最小化すること、および、
b)vii)前記先験的画像を作成するために前記最小化された各差分画像を結合すること、により、前記対象の先験的画像を作成するステップと、
c)前記対象の見積り画像を選択するステップと、
d)前記先験的画像と前記見積り画像とを用いて、前記対象のスパース化された画像を作成するステップと、
e)前記スパーク化された画像と前記見積り画像と前記取得した画像データセットとを用いて、前記対象の所望の画像を再構成するステップと、
を含むことを特徴とする対象の画像を作成する方法。
【請求項5】
前記ステップb)ii)が、
選択された物質に関連し、かつ、前記画像マトリクスで対応するラインに沿って配置される前記最初の見積り画像において、各画像強度値を既知の減衰値に設定すること、および、
前記選択された物質に関連しない最初の見積り画像において、各画像強度値をゼロに設定すること、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項6】
前記選択された物質が空気であり、前記既知の減衰値が約−1000HU(Hounsfield units)であることを特徴とする請求項5に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項7】
前記選択された物質が肺組織であり、前記既知の減衰値が約−800HUであることを特徴とする請求項5に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項8】
前記ステップb)iv)が、前記結合を行う前に、前記各最初の見積り画像でヒルベルト変換を行うこと
を含むことを特徴とする請求項4に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項9】
前記ステップb)v)が、
前記各結合画像で逆ヒルベルト変換を行うこと、
前記変換された各結合画像を前方に投影することにより、複数の投影見積りデータを作成すること、
前記対応する取得した画像データから前記複数の投影見積りデータの各々を差し引くことにより、複数の差分投影データを作成すること、
前記対応する複数の差分投影データの各々から前記画像マトリクスの各ラインに対する差分画像を再構成すること、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項10】
前記最小化された各差分画像が、前記画像マトリクスにおいて異なるラインに対応し、そして、
前記ステップb)vii)が、前記最小化された差分画像から先験的画像マトリクスを形成することにより、前記先験的画像を作成することを含むことを特徴とする請求項4に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項11】
前記ステップa)が、前記対象から心電図(ECG)信号を取得すること、および、前記取得したECG信号に前記画像データセットを関連付けること、をさらに含むと共に、
前記ステップe)が、前記対象の心臓の画像を再構成すること
を含むことを特徴とする請求項4に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項12】
前記ステップc)〜e)が、前記対象の心臓の異なる心拍フェーズを示す複数の画像を作成するために繰り返されることを特徴とする請求項11に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項13】
前記ステップc)が、
c)i)前記取得したECG信号と前記取得した画像データセットとを用いて、複数の心拍フェーズデータセットを作成すること、
c)ii)前記複数の心拍フェーズデータセットから複数の差分心拍フェーズデータセットを作成すること、
c)iii)前記複数の心拍フェーズの各々に対応する複数の画像マトリクスの各々における各ラインに対して最初の見積り画像を作成すること、
c)iv)前記作成された複数の差分心拍フェーズデータセットを用いて、複数の画像マトリクスの各々における各ラインに対して差分画像を作成すること、
c)v)前記対応する最初の見積り画像と前記差分画像とを結合することにより、前記複数の画像マトリクスの各々における各ラインに対して結合画像を作成すること、
c)vi)前記作成された結合画像と前記投影ビューに関連する画像データとを用いて、前記複数の画像マトリクスの各々における各ラインに対応する差分画像を作成すること、
c)vii)一貫性の条件まで対象の前記各差分画像を最小化すること、および、
c)viii)前記見積り画像を作成するために前記最小化された各差分画像を結合すること、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項14】
前記ステップc)iii)が、
選択された物質に関連し、かつ、前記画像マトリクスで対応するラインに沿って配置される前記最初の見積り画像において、各画像強度値を既知の減衰値に設定すること、および、
前記選択された物質に関連しない最初の見積り画像の各画像強度値を、前記作成された先験的画像における対応するラインの画像強度値に設定すること、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項15】
前記選択された物質が空気であり、前記既知の減衰値が約−1000HU(Hounsfield units)であることを特徴とする請求項14に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項16】
前記ステップc)v)が、前記結合を行う前に、前記各最初の見積り画像でヒルベルト変換を行うこと
を含むことを特徴とする請求項13に記載の対象の画像を作成する方法。
【請求項17】
前記ステップc)vi)が、
前記各結合画像で逆ヒルベルト変換を行うこと、
前記変換された各結合画像を前方に投影することにより、複数の投影見積りデータを作成すること、
前記対応する取得した画像データから前記複数の投影見積りデータの各々を差し引くことにより、複数の差分投影データを作成すること、
前記対応する複数の差分投影データの各々から前記画像マトリクスの各ラインに対する差分画像を再構成すること、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の対象の画像を作成する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【公表番号】特表2012−509722(P2012−509722A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537741(P2011−537741)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/065920
【国際公開番号】WO2010/062956
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(390023641)ウイスコンシン アラムナイ リサーチ ファウンデーシヨン (61)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/065920
【国際公開番号】WO2010/062956
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(390023641)ウイスコンシン アラムナイ リサーチ ファウンデーシヨン (61)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】
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