説明

心拍計測用送信機及び心拍計測装置

【課題】 利用者の汗により電池蓋のパッキンが劣化するのを防止し、装置の防水性を長期間にわたって維持するようにすること。
【解決手段】 心拍計測用送信機1の送信機ケースの表側、即ち上ケース8に、電池収納部11と電池収納部11の開口を液密に封止する開閉可能な電池蓋12と、電池蓋12を覆う開閉可能な電池蓋カバー14を設けた。電池蓋カバー14の内面と送信機ケースの上ケース8との間には、電池蓋12の外周の外側を囲むようにして防水用弾性体15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸部ベルトに取付けられた一対の胸電極が検出した心電信号に基づいて、送信アンテナから無線送信する心拍計測用送信機、及び前記心拍計測用送信機を備えた心拍計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10−155753号公報(特許文献1)には、心拍計測装置は、胸部ベルトに取付けられた一対の胸電極と、前記胸電極が検出した心電信号に基づいて送信アンテナから無線送信する心拍計測用送信機と、前記心拍計測用送信機から送信されてきた心拍数データの無線信号を受信アンテナで受信し、信号処理部で所定の処理を行って1分間当たりの心拍数を演算して表示する心拍計測用受信機とから構成された心拍計測装置が開示されている。
【0003】
上述の従来の心拍計測用送信機においては、電池収納部は送信機ケースの裏側に設けられている。そして、この電池収納部にはボタン電池は収納され、その開口部は開閉可能な電池蓋によって液密状態を確保して封止されている。前記液密状態の確保は、前記電池収納部の開口部に設けられたパッキン収納部に収納された防水用パッキンによって実現されている。
【0004】
従来の心拍計測用送信機を胸部ベルトによって利用者の胸部に装着すると、電池蓋は常に人体と接触することになる。このため、前記電池蓋は利用者の汗に常にさらされるので、前記防水用パッキンはこの汗によって劣化が著しく早まる。従って、従来の心拍計測用送信機の防水性能は短期間しか維持できないという問題がある。
【0005】
また、従来の心拍計測用送信機は、利用者が装着したまま水泳する場合には、防水用パッキンが充分な防水性能を維持できないという問題もある。水深に比例して増加する水圧と水泳中の移動による圧力増加に、上記防水用パッキンでは対応できないからである。
【特許文献1】特開平10−155753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする第1の課題は、ボタン電池を電源とし胸部ベルトに取付けられて使用される心拍計測用送信機において、利用者の汗により電池蓋の防水用パッキンが劣化するのを防止し、装置の防水性を長期間にわたって維持するようにすることである。
本発明が解決しようとする第2の課題は、ボタン電池を電源とし胸部ベルトに取付けられて使用される心拍計測用送信機において、水泳中においても装置の防水性を確保できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の第1の課題を解決するために、胸部ベルトに取付けられた一対の胸電極で検出した心電信号に基づいて、アンテナから無線送信する心拍計測用送信機において、前記心電信号検出部と無線送信部とこれらの電源となる電池を収納した送信機ケースの表側に電池収納部と前記電池収納部の開口を液密に封止する開閉可能な電池蓋とを設けた。
【0008】
上述の第1及び第2の課題を解決するために、胸部ベルトに取付けられた一対の胸電極で検出した心電信号に基づいて、アンテナから無線送信する心拍計測用送信機において、前記心電信号検出部と無線送信部とこれらの電源となる電池を収納した送信機ケースの表側に電池収納部と前記電池収納部の開口を液密に封止する開閉可能な電池蓋とを設け、更に、前記電池蓋を覆う開閉可能な電池蓋カバーを前記送信機ケースの表側に設けた。
【0009】
また、上述の第1及び第2の課題を解決するために、胸部ベルトに取付けられた一対の胸電極で検出した心電信号に基づいて、アンテナから無線送信する心拍計測用送信機において、前記心電信号検出部と無線送信部とこれらの電源となる電池を収納した送信機ケースの表側に電池収納部と前記電池収納部の開口を液密に封止する開閉可能な電池蓋とを設け、前記電池蓋を覆う開閉可能な電池蓋カバーを前記送信機ケースの表側に設け、更に、前記電池蓋カバーの内面と前記送信機ケースの上面との間に且つ前記電池蓋の外周の外側を囲むようにして防水用弾性体を設けた。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、電池を電源とし胸部ベルトに取付けられて使用される心拍計測用送信機において、電池蓋が利用者の素肌に直接触れることがないので、汗により電池蓋のパッキンが劣化するのが防止され、装置の防水性能を長期間にわたって維持されるようになった。また、送信機ケースの表側で二重の防水構造を採用できるので、水泳中においても装置の防水性能が確保できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、胸部ベルトに取付けられた一対の胸電極で検出した心電信号に基づいて、アンテナから無線送信する心拍計測用送信機において、前記心電信号検出部と無線送信部とこれらの電源となる電池を収納した送信機ケースの表側に電池収納部と前記電池収納部の開口を液密に封止する開閉可能な電池蓋とを設けたことを特徴とするものである。なお、本発明の実施例では電池にボタン型電池を使用した場合について詳述するが、円筒型などの他の電池であっても構わないことは勿論である。
【実施例1】
【0012】
実施例1の心拍計測用送信機は、図1のケースの長手方向の中心線に沿って切断した断面図、図2のケースの裏側から見た平面図、図3のケースの表側から見た平面図、及び図4のケースの長手方向に直角な中心線に沿って切断した断面図に示す如く、胸部ベルト4と5にそれぞれ取付けられた一対の胸電極2と3とで検出した心電信号に基づいて、アンテナ6から無線送信する心拍計測用送信機である。
【0013】
前記送信機ケースは、上ケース8と下ケース9とによって構成されており、胸部ベルト4と結合部8aで結合され、また胸部ベルト5と結合部8bで結合されている。胸電極2は、その電極2aを回路ブロック7の一方の回路側電極7aと接続部16で接続されている。また、胸電極3は、その電極3aを回路ブロック7の一方の回路側電極7bと接続部17で接続されている。
【0014】
前記送信機ケース内に収納されている回路ブロック7は、前記心電信号検出部と無線送信部を構成している。前記心電信号検出部と無線送信部の電源となるボタン電池10は、前記送信機ケースの表側、即ち上ケース8の表側に設けられた電池収納部11内に収納され、電池収納部11の開口部は防水用パッキン13を介して開閉可能な電池蓋12によって封止されている。
【0015】
前記送信機ケースの表側、即ち上ケース8の表側には、更に電池蓋カバー14が一端を蝶番14aにより開閉可能にして取り付けられている。電池蓋カバー14は、送信機ケースは電池蓋12をすっぽりカバーする大きさのカバーであって、前記送信機ケースの表側の概ね半分を占めている。電池蓋カバー14は、図4に示す如く、蝶番14a側と反対の端部に垂直に折り曲げられた係合部14bを備えている。そして、係合部14bの先端には係合用突起14cが形成されている。また、この係合用突起14cに対向する上ケース8の側面には係合用凹部8cが形成されている。電池蓋カバー14が閉じられると、電池蓋カバー14の係合用突起14cは、上ケース8の側面の係合用凹部8cに係合し、これによって電池蓋カバー14が開かれるのを阻止する。
【0016】
電池蓋カバー14の下面と上ケース8の上面との間には、電池蓋の外周を囲むようにして防水用弾性体15が配置されている。防水用弾性体15は円形の電池蓋12と中心を同じにした略矩形のゴムなどの弾性部材の部品である。防水用弾性体15を所定の位置に取り付けるために、上カバー8には略矩形の取付用溝8dが形成されている。また、電池蓋カバー14の下面には、取付用溝8dに取付けられた防水用弾性体15が係合する略矩形の係合用溝14dが形成されている。防水用弾性体15は、電池蓋12の防水用パッキン13を第1の防水手段と言えば、第2の防水手段として機能するものである。
【0017】
上述の通り、実施例1の心拍計測用送信機は、心電信号検出部と無線送信部とこれらの電源となるボタン電池10を収納した送信機ケースの表側に電池収納部11とその開口を液密に封止する開閉可能な電池蓋12とを設け、電池蓋12を覆う開閉可能な電池蓋カバー14を上ケース8の表側に設け、更に、電池蓋カバー14の内面と上ケース8の上面との間に電池蓋12の外周を囲むようにして防水用弾性体15を設けたものである。
【0018】
実施例1の心拍計測用送信機は上述の如き構成であるので、電池蓋10は人体に常に接触することがなく、汗等の腐食原因物質への接触が最小限に押えられるようになったので、長期間にわたる装置の防水性能を維持できるようになった。また、電池蓋カバー14を設けたことにより装着時の外観は従来製品と同様の美観を維持でき、装着したまま水泳しても電池蓋12の防水用パッキン13にかかる加圧のうち人体の移動により発生する加圧分が直接に電池蓋10にかかることが防止されるので、電池蓋10への加圧分が抑制され、その結果、水泳中でも防水性能が確保できるようになった。更にまた、第2の防水手段として機能する防水用弾性体15を設けたことにより、実施例1の心拍計測用送信機は従来の装置に比べて格段に防水性能が向上した。
【実施例2】
【0019】
実施例2の心拍計測用送信機は、上述の実施例1の心拍計測用送信機から、第2の防水手段である防水用弾性体15を省いて構成したものである。
【0020】
即ち、図5のケースの長手方向に直角な中心線に沿って切断した断面図に示す通り、心拍数演算部と無線送信部とこれらの電源となるボタン電池10を収納した送信機ケースの表側に電池収納部11とその開口を液密に封止する開閉可能な電池蓋12とを設け、電池蓋12を覆う開閉可能な電池蓋カバー14を上ケース8の表側に設けたものである。
【0021】
実施例2の心拍計測用送信機は上述の如き構成であるので、電池蓋10は人体に常に接触することがなく、汗等の腐食原因物質への接触が最小限に押えられるようになったので、長期間にわたる装置の防水性能を維持できるようになった。また、電池蓋カバー14を設けたことにより装着時の外観は従来製品と同様の美観を維持でき、装着したまま水泳しても電池蓋12の防水用パッキン13にかかる加圧のうち人体の移動により発生する加圧分が直接に電池蓋10にかかることが防止されるので、電池蓋10への加圧分が抑制され、その結果、水泳中でも防水性能が確保できるようになった。
【実施例3】
【0022】
実施例3の心拍計測用送信機は、上述の実施例1の心拍計測用送信機から、電池蓋カバー14及び防水用弾性体15を省いて構成したものである。
【0023】
即ち、実施例3の心拍計測用送信機は、図6のケースの長手方向に直角な中心線に沿って切断した断面図、及び図7のケースの長手方向の中心線に沿って切断した断面図に示す通り、胸部ベルト4と5にそれぞれ取付けられた一対の胸電極2と3とで検出した心電信号に基づいて、アンテナ6から無線送信する心拍計測用送信機である。
【0024】
前記送信機ケースは、上ケース8と下ケース9とによって構成されており、胸部ベルト4と結合部8aで結合され、また胸部ベルト5と結合部8bで結合されている。胸電極2は、その電極2aを回路ブロック7の一方の回路側電極7aと接続部16で接続されている。また、胸電極3は、その電極3aを回路ブロック7の一方の回路側電極7bと接続部17で接続されている。
【0025】
前記送信機ケース内に収納されている回路ブロック7は、前記心電信号検出部と無線送信部を構成している。前記心電信号検出部と無線送信部の電源となるボタン電池10は、前記送信機ケースの表側、即ち上ケース8の表側に設けられた電池収納部11内に収納され、電池収納部11の開口部は防水用パッキン13を介して開閉可能な電池蓋12によって封止されている。
【0026】
実施例3の心拍計測用送信機は上述の如き構成であるので、電池蓋10は人体に常に接触することがなく、汗等の腐食原因物質への接触が最小限に押えられるようになったので、長期間にわたる装置の防水性能を維持できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ケースの長手方向の中心線に沿って切断した実施例1の心拍計測用送信機の断面図である。
【図2】ケースの裏側から見た実施例1の心拍計測用送信機の平面図である。但し、裏蓋とケース内に収納される電子部品の殆どは取り除いて示してある。
【図3】ケースの表側から見た実施例1の心拍計測用送信機の平面図である。
【図4】ケースの長手方向に直角な中心線に沿って切断した実施例1の心拍計測用送信機の断面図である。
【図5】ケースの長手方向に直角な中心線に沿って切断した実施例2の心拍計測用送信機の断面図である。
【図6】ケースの長手方向に直角な中心線に沿って切断した実施例3の心拍計測用送信機の断面図である。
【図7】ケースの長手方向の中心線に沿って切断した実施例3の心拍計測用送信機の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 心拍計測用送信機
2,3 胸電極
2a,3b 胸電極の電極
4,5 ベルト
6 アンテナ
7 回路ブロック
7a,7b 回路ブロックの電極
8 上ケース
8a,8b ベルトとの結合部
8c 係合凹部
8d 取付用溝
9 下ケース
10 ボタン電池
11 電池収納部
12 電池蓋
13 防水用パッキン
14 電池蓋カバー
14a 蝶番
14b 係合部
14c 係合用突起
14d 係合用溝係
15 防水用弾性体
16,17 電極接続具
18,19 ケース固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部ベルトに取付けられた一対の胸電極で検出した心電信号に基づいて、アンテナから無線送信する心拍計測用送信機において、心電信号検出部と無線送信部とこれらの電源となる電池を収納した送信機ケースの表側に電池収納部と前記電池収納部の開口を液密に封止する開閉可能な電池蓋とを設けたことを特徴とする心拍計測用送信機。
【請求項2】
前記電池蓋を覆う開閉可能な電池蓋カバーを更に前記送信機ケースの表側に設けたことを特徴とする請求項1に記載の心拍計測用送信機。
【請求項3】
前記電池蓋カバーの内面と前記送信機ケースの上面との間に且つ前記電池蓋の外周の外側を囲むようにして防水用弾性体を設けたことを特徴とする請求項2に記載の心拍計測用送信機。
【請求項4】
前記電池蓋カバーはヒンジにより前記送信機ケースに取付けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の心拍計測用送信機。
【請求項5】
前記電池蓋カバーは前記電池収納部と前記電池蓋の上方に形成された電池蓋カバー取付用円筒状凹部に開閉可能にして装着されるものであることを特徴とする請求項2に記載の心拍計測用送信機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の心拍計測用送信機を備えた心拍計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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