説明

心筋梗塞後の損傷を治療するための方法及び組成物

【課題】心筋梗塞後の損傷を治療するための方法及び組成物を本明細書に開示する。
【解決手段】ある実施態様において、治療剤を有する担体を製造するのがよい。担体は、生体分解性徐放性物質から配合され得る。その後、得られた充填した担体を、心筋梗塞後の治療領域に同時送達するための二成分マトリックス系の少なくとも一方の成分に懸濁させるのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
心筋梗塞後の治療及び組成物。
関連出願のクロス・リファレンス
本出願は、2006年2月23日出願の出願番号第11/361,920号の一部継続出願であり、この出願は、現在係属中の2005年4月19日出願の出願番号第11/110,223号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
虚血性心疾患は、典型的には、心筋血流量と心筋層の代謝要求との間の平衡異常に起因する。冠状動脈の閉塞増加につれて進行性アテローム性動脈硬化症によって、冠状動脈血流量が減少することになる。「アテローム性動脈硬化症」は、平滑筋細胞やマクロファージを含む細胞、脂肪物質、コレステロール、細胞老廃物、カルシウム及びフィブリンが血管の内層に蓄積する一種の動脈硬化症である。「動脈硬化症」は、動脈の肥厚と硬化を意味する。血流量は、更に、低灌流、血管痙攣又は血栓症につながる循環の変化のような追加の事象によって減少し得る。
心筋梗塞(MI)は、酸素や他の栄養の供給の突然の不足からしばしば起こる心疾患の一つの形である。血液供給の不足は、心筋の特定の部分に栄養を与える冠状動脈(又は心臓に送る他のいかなる動脈も)の閉塞の結果である。この事象の原因は、たいてい、冠状血管の動脈硬化症による。
以前は、MIは、閉塞の緩慢な進行から、例えば、95%から100%のときに引き起こされると考えられた。しかしながら、MIは、例えば、コレステロールプラークが破壊されることにより動脈内に血液凝固が生じる、小さい閉塞の結果でもあり得る。従って、血流が遮断され、下流に細胞損傷が生じる。この損傷は、残りの筋肉が充分な量の血液をポンプで送りこむのに充分強いとしても、致命的であり得る不規則なリズムを引き起こし得る。心臓組織に対するこの発作の結果として、瘢痕組織が自然に形成する傾向がある。
動脈閉塞を再開する、機械的手順や治療剤適用手順を含む種々の手順が既知である。機械的手順の一例としては、ステント植込み術によるバルーン血管形成術が挙げられ、治療剤適用の一例としては、ウロキナーゼのような血栓溶解薬の投与が挙げられる。しかしながら、このような手順は、心臓に対する実際の組織損傷を治療しない。ACE阻害剤やベータ遮断薬のような他の全身的薬剤は、MI後の心臓負荷を軽減させるのに有効であり得るが、MIを主に受ける人口のかなりの部分が最終的には心不全を発症する。
心不全へ進行の重要な要素は、梗塞領域と健康な組織との間の不適合な機械的力による心臓の再形成であり、左心室に不均等な応力と歪分布が生じる。MIが一旦起こると、心臓の再形成が開始する。再形成事象の主要素としては、筋細胞死、浮腫、炎症に続いて、線維芽細胞浸潤やコラーゲン沈着、最後の瘢痕形成が挙げられる。瘢痕の主成分は、コラーゲンである。成人の成熟筋細胞は再生されないので、梗塞領域は著しい菲薄化を受ける。筋細胞損失は、壁の菲薄化と心室拡張の主要な病因的因子であり、最終的に心筋症の進行につながるものである。他領域における遠い領域は、肥大(肥厚)を受け、左心室全体の肥大を生じる。このことは、再形成カスケードの最終結果である。心臓のこれらの変化は、患者の生活様式や歩いたり運動したりする能力の変化を生じる。これらの変化は、また、生理的変化とも相関し、血圧の上昇や収縮期と拡張期の性能の悪化が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
心筋梗塞後の損傷を治療するための方法及び組成物を本明細書に開示する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある実施態様において、担体に治療剤を充填するのがよい。担体は、生体分解性徐放性物質から配合され得る。その後、得られた充填した担体は、心筋梗塞後の治療領域に同時送達するための二成分マトリックス系の少なくとも一方の成分に懸濁させるのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1A】図1Aは、動脈内のプラークの蓄積が梗塞を誘導して生じる心臓の損傷の進行を示す図である。
【図1B】図1Bは、動脈内のプラークの蓄積が梗塞を誘導して生じる心臓の損傷の進行を示す図である。
【図2】図2は、治療剤がその中に相互分散した徐放性担体が充填された二成分ゲルマトリックスを調製する方法を示す概略図である。
【図3】図3は、治療剤がその中に相互分散した徐放性担体が充填された二成分ゲルマトリックスを調製する代替方法を示す概略図である。
【図4】図4は、治療剤がその中に相互分散した徐放性担体が充填された二成分ゲルマトリックスを調製する第二代替方法を示す概略図である。
【図5A】図5Aは、本発明の組成物を送達するために使用し得るデュアルニードル注入装置を示す実施態様である。
【図5B】図5Bは、本発明の組成物を送達するために使用し得るデュアルニードル注入装置を示す実施態様である。
【図6A】図6Aは、本発明の組成物を送達するために使用し得るデュアルニードル注入装置を示す代替的実施態様である。
【図6B】図6Bは、本発明の組成物を送達するために使用し得るデュアルニードル注入装置を示す代替的実施態様である。
【図6C】図6Cは、本発明の組成物を送達するために使用し得るデュアルニードル注入装置を示す代替的実施態様である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
心筋梗塞後の損傷を治療するための方法及び組成物を本明細書に開示する。ある実施態様において、治療剤を有する担体が製造されるのがよい。担体は、生体分解性徐放性物質から配合され得る。その後、得られた装填した担体を、心筋梗塞後の治療領域に同時送達するための二成分マトリックス系の少なくとも一方の成分に懸濁させるのがよい。
図1A-図1Bは、プラークの蓄積が梗塞を誘導して生じる心臓の損傷の進行を示す図である。図1Aは、閉塞と血流の制限が、例えば、血栓又は塞栓から生じ得る部位10を示す図である。図1Bは、心臓の下方領域の左に血液によって運ばれる酸素や栄養の流れの不足から生じ得る左心室に生じた損傷領域20を示す図である。損傷領域20は、再形成、最終的には瘢痕化を受けやすく、機能しない領域になる。
治療剤
心筋梗塞後の治療領域を治療する治療剤には:(i)血管形成を促進する薬剤(血管形成促進因子);(ii)細胞生存を促進する薬剤(細胞生存促進因子); 及び(iii)内因性前駆細胞及び/又は幹細胞を補充する薬剤(内因性補充因子(endogenous recruiting factor))が含まれるのがよい。治療剤の種々の形としては、本明細書に記載される治療部位に治療剤を送達するのに使用し得る、薬剤、生理活性物質、化学活性物質、治療剤等、及びこれらの医薬組成物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
「血管形成」は、新たな血管の形成の促進又は誘発である。MI後、梗塞組織だけでなく梗塞組織の周りの境界域や遠隔域が再形成し始める。肉芽形成がコラーゲンに置き換えられるので梗塞領域に瘢痕組織が形成する。血圧からの応力が瘢痕を薄くし引き伸ばす。この領域の灌流は、典型的には、健康域の10%であり、活性毛細血管の数が減少する。毛細血管の数を増やすことにより、血液でいっぱいになるために心室のコンプライアンスが増大することになる。梗塞された領域に血流を増加させる他の利点としては、幹細胞を循環する経路を与えて梗塞領域に播種し増殖することが挙げられる。血管形成は、また、梗塞領域内の残存する細胞小島のための酸素化増加につながるか、又は心筋再生のためのその後の細胞移植に梗塞領域を準備することにつながる。境界域において、残存する細胞は、また、血管形成プロセスによる血液供給の増加から利益を得る。遠隔域において、心臓細胞が肥大し一部の間質の線維化によって取り囲まれる傾向がある場合には、酸素を受け取る細胞の能力、それ故、完全な能力に対する機能も損なわれる; 従って、血管形成は、これらの領域においても有益である。
【0007】
ある実施態様において、血管形成促進因子としては、血管内皮成長因子(VEGF)のイソ型、線維芽細胞成長因子(FGF、例えば、β-FGF)、Del 1、低酸素誘導因子(HIF 1-α)、単球走化性タンパク質(MCP-1)、ニコチン、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、形質転換成長因子(TGFα)、肝細胞成長因子(HGF)、エストロゲン、ホリスタチン、プロリフェリン、プロスタグランジンE1及びE2、腫瘍壊死因子(TNFα)、インターロイキン8(Il-8)、造血成長因子、エリスロポイエチン、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)及び血小板由来内皮成長因子(PD-ECGF)のような成長因子が挙げられるがこれらに限定されるものではない。ある実施態様において、血管形成促進因子としては、PR39、PR11、アンギオゲニンのようなペプチド、PHDインヒビターのような小分子、又はeNOSエンハンサーのような他の薬剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
内因性心筋細胞(筋細胞)アポトーシスは、壁菲薄化及び室拡張の主要な病因的因子であり、最終的に心筋症の進行につながる。梗塞後、成人の充分発達した筋細胞は再生せず、梗塞領域の著しい菲薄化につながり得る。従って、梗塞領域に適用される細胞生存を促進する因子は、有益であると考えられる。ある実施態様において、細胞生存促進因子としては、種々の細胞種の細胞増殖、分化及び生存を仲介することが知られるインスリン様成長因子(IGF-1)やヒト成長因子(HGF)のような成長因子が挙げられるがこれらに限定されるものではない。更に、例えば、HMG-CoAレダクターゼインヒビター(スタチン)やカプサーゼインヒビターのような小分子も、細胞生存を促進しアポトーシスを阻止することができる。
梗塞領域で新たな細胞の生成を補助するために、自己幹細胞又は同種幹細胞を、患者に送達してもよい。「自己」は、幹細胞の供与体と受容体が同じであることを意味する。「同種」は、幹細胞の供与体と受容体が異なることを意味する。細胞生存促進因子もまた、梗塞領域で自己移植幹細胞や同種移植幹細胞の生存性を上げるために使用し得る。
心臓前駆細胞は、ある種の充分に発達した心臓組織に分化する能力を示した高度に分化した幹細胞である。心臓前駆細胞の例としては、c-Kit(+)、Sca-1(+)、Isl-1(+)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。従って、梗塞領域に適用される場合に内因性因子を補充する因子が有益であると考えられる。ある実施態様において、内因性補充因子としては、例えば、HGFを挙げることができる。HGFは、細胞運動を制御するとともに細胞移動を促進することが示された。梗塞後に適用された場合には、HGFは、常在する心臓前駆細胞を梗塞領域に移動させ補充することを補助することができる。ある実施態様において、内因性補充因子としては、ストローマ細胞由来因子1(SDF-1)を挙げることができるがこれに限定されるものではない。SDF-1は、CXCR4受容体のリガンドであり、内皮前駆細胞を循環する際の表面受容体である。従って、梗塞領域内に又はその周辺に適用される場合、SDF-1は循環する内皮前駆細胞のホーミングを容易にして新血管形成を誘導することができる。
【0008】
上記治療剤のいずれもが単独で又はこれらを組み合わせて使用し得ることが企図される。更に、抗炎症薬、抗血小板薬、抗血液凝固剤、抗線維素薬、抗血栓薬、抗有糸分裂薬、抗生物質製剤、抗アレルギー薬、抗酸化剤、抗増殖剤、又は抗遊走剤が挙げられるがこれらに限定されない他の治療剤も、必要により、単独で又はこれらを組み合わせて用いてもよい。
徐放性担体
治療剤を注入した(又は注入しない)生体分解性担体(以後同じ意味で徐放性担体と呼ぶ)は、梗塞領域への最大の利点のための治療剤の持続する又は制御された放出に使用し得る。梗塞領域に直接送達されるか、又はゲルのようなマトリックス内に拡散されもする治療剤の大きな割合が、体の自然な機序により実質的に流失するので、得ることができる治療剤の利点を少なくなると考えられる。従って、長時間にわたって治療剤を放出する治療剤を注入した徐放性担体は、梗塞領域が治療剤にさらされる時間量を増加させることによって有益であり得る。徐放性担体としては、(i)微小粒子又はナノ粒子(以後同じ意味で微小粒子と呼ぶ)、(ii)マイクロファイバー又はナノファイバー(以後同じ意味でマイクロファイバーと呼ぶ)、(iii)リポソームやポリマーソームが挙げられるがこれらに限定されない。
更に、ある実施態様において、生体分解性担体は、治療剤を注入し(又は注入せず)、内因性心筋幹細胞の「ドッキング部位」として作用するとともに心筋細胞への分化を働きかける治療部位に送達することができる。
A.
ある実施態様において、徐放性担体は、微小粒子である。微小粒子に治療剤を配合し注入又は充填する種々の方法を使うことができる。ある実施態様において、微小粒子は、水/油/水(W/O/W)二重エマルジョン法によって調製される。W1相において、治療剤を含有する水相を、有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解したポリマーからなる油相に高速ホモジェナイザーを用いて分散する。徐放性ポリマーの例としては、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)又はPLA-PEEPコポリマー、ポリエステルアミドコポリマー(PEA)、ポリホファジンが挙げられるがこれらに限定されない。その後、最初の油中水型(W/O)エマルジョンを、ポリマー界面活性剤、例えば、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)を含有する水溶液に分散し、更にホモジェナイズして、W/O/Wエマルジョンを得る。数時間撹拌した後、ろ過によって微小粒子を集める。
【0009】
B.
ある実施態様において、徐放性担体は、マイクロファイバー又はナノファイバーである。例えば、治療剤が注入された(又は治療剤が注入されていない)マイクロファイバーを、エレクトロスピニングにより配合することができる。「エレクトロスピニング」は、毛管の先端からコレクタまでポリマー溶液を引き出すために電界を用いることによりマイクロファイバーを形成するプロセスである。溶液流を接地されたコレクタの方へ引き出させるポリマー溶液に電圧が印加される。エレクトロスピニングは網目状の繊維を生成させ、これは続いてより小さい長さに処理され得る。
エレクトロスピニングに使用し得る徐放性ポリマーの例としては、PLGA、PLA又はPLA-PEEPコポリマー、PEA、ポリホスファジン、コラーゲンが挙げられるがこれらに限定されない。一方法において、治療剤は、生体分解性ポリマー溶液、溶媒及び界面活性剤と混合される。界面活性剤の例としては、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤を挙げることができるがこれらに限定されない。有効なアニオン界面活性剤としては、ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(NaDEHP)、タウログリココール酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。有効なカチオン界面活性剤は、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム(TTAB)である。溶媒の一例としては、ヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられるがこれに限定されない。その後、治療剤注入ポリマー溶液を、エレクトロスピニングにかける。溶媒がエレクトロスピニング中に蒸発するので、治療剤は非共有相互作用によってポリマーの中に配合し分配させる。直径が約0.5μm〜約3μmであり得る得られたマイクロファイバーは、網目状であり、その後、約0.5μm〜約500μmのより小さい長さに処理することができる。治療剤に基づいて、適用によっては、マイクロファイバーが、非水プロセスによって形成されるために好ましい徐放性担体であってもよい。適用によっては、治療剤が親水性である場合にマイクロスフェアが好ましい。適用によっては、マイクロスフェアの放出薬物動態学的プロファイルと比較した場合にマイクロファイバーがその放出薬物動態学的プロファイルのために好ましい徐放性担体である。場合によっては、二種類の担体が治療に有利であってもよい異なる薬物動態学的放出プロファイルを示すので、一つ以上の治療剤の担体としてマイクロスフェアだけでなくマイクロファイバーが使用し得る。
【0010】
一実施態様において、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFP)に溶解したコラーゲンとエラスチンからの繊維をエレクトロスピニングにかけることができ、ポリマー溶液が形成される。治療剤をポリマー溶液に添加することができる。治療剤を溶媒に一様に分散させるために界面活性剤や安定剤が使用し得る。その後、ポリマー溶液を注射器に充填し、所定率で定量分配する注射器ポンプに入れることができる。高圧電源の正の出力リードは、注射器の針に取り付けることができる。針を、針先から約10cmに置かれたステンレス鋼接地標的に進めることができ、均一なコーティングを確実にするために所定の速度で回転させることができる。針の標的からの距離は変えることができ、必要とされる繊維の直径に左右される。得られたマイクロファイバーは、直径が約0.5μm〜約3μmであり、その後、得られた繊維の不織マットは、約0.5μm〜約500μmのより小さい長さに処理することができる。
C.
ある実施態様において、徐放性担体は、リポソーム又はポリマーソームである。「リポソーム」は、形がほぼ球状である人工小胞であり、天然のリン脂質とコレステロールから製造することができる。一方法において、リン脂質は、クロロホルム中でコレステロールと混合される。適切なリン脂質としては、ジミリストイルホスファチジルコリン又はジパルミトイルエタノールアミンが挙げられるがこれらに限定されない。ある実施態様において、疎水性治療剤は、ヘプタン又はトルエンのような任意の共溶媒と添加することができる。リポソームは、また、ポリエチレングリコール又はデキストランのような物質で親水性に変性することができる。混合後、溶媒(及び任意の共溶媒)は、丸底フラスコ中で加熱又は周囲温度によって蒸発させることができる。得られた脂質は、ガラス面に付着する。ある実施態様において、親水性治療剤と水をフラスコに添加し超音波処理して、リポソームを形成することができる。得られた懸濁液を、セラミック孔サイズ制御フィルタで加圧ろ過して、リポソーム粒径を減少させることができる。ポリマーソームの場合には、リポソームと同様の製造技術が使用し得る。ポリマーソームは、溶解性の異なる2元ブロック共重合体から形成することができる。例えば、一方のブロックは、疎水性、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、n-ブチルアクリレートであり得、もう一方のブロックは、親水性、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリル酸)であり得る。
マトリックス系
生体適合性マトリックス系は、梗塞領域に送達する治療剤又は治療剤注入徐放性担体を懸濁するために使用し得る。ある実施態様において、マトリックス系は、一成分又は二成分ゲルであり得る。ある実施態様において、マトリックス系は、二成分ゲルであり得る。二成分ゲルとしては、例えば、フィブリン糊(例えば、フィブリノーゲンとトロンビンを含む二成分)、自己組織化ペプチド又はアルギン酸塩構成物を挙げることができる。
ある実施態様において、マトリックス系は、一成分ゲルである。一成分ゲルの例としては、生体適合性であるアクリレート物質が挙げられる。一成分ゲルは、一態様において全体の梗塞ゾーン上により均一な足場を形成するために徐放性担体を分散させる働きをし、境界域も同様に含まれてもよい。例えば、一成分ゲルは、ヒアルロン酸ナトリウムであるのがよい。ゲルは、懸濁媒体として作用する徐放性担体を分散させる。
【0011】
A.
適用によっては、二成分ゲル化系は、フィブリン糊を含む。フィブリン糊は、二つの主成分、フィブリノーゲンとトロンビンからなる。フィブリノーゲンは、内在状態における約340キロダルトン(kDa)の血漿糖タンパク質である。フィブリノーゲンは、六つの対ポリペプチド鎖、アルファ鎖、ベータ鎖及びガンマ鎖から構成される対称二量体である。アルファ鎖とβ鎖には、フィブリノーゲンがそれ自体と自然発生的にポリマーを形成することを防止するフィブリノペプチドと呼ばれる小ペプチド配列がある。ある実施態様において、フィブリノーゲンは、タンパク質で変性される。トロンビンは、凝固タンパク質である。等容積で組み合わせる場合、トロンビンはトロンビンの濃度によって決定される割合で酵素作用によってフィブリノーゲンをフィブリンに変換する。その結果、生体適合性ゲルは梗塞領域で合わせられたときにゲル化する。フィブリン糊は、約10〜約60秒でゲル化を受けることができる。他のフィブリン糊状系の例としては、Tisseel(商標)(Baxter)、CoSeal(商標)(Baxter)、Crosseal(商標)(Omrix Biopharmaceuticals, Ltd.)、Hemaseel(登録商標)(Haemacure Corp.)、CoStasis(登録商標)(Angiotech Pharmaceuticals)が挙げられるがこれらに限定されない。
B.
ある実施態様において、二成分ゲルは、自己組織化ペプチドを含む。自己組織化ペプチドには、通常、交互の疎水性アミノ酸鎖と親水性アミノ酸鎖の反復配列とが含まれる。親水性アミノ酸は、通常、電荷をもち、アニオン、カチオン又はこれらの両方でもあり得る。カチオン性アミノ酸の例は、リジンやアルギニンである。アニオン性アミノ酸の例は、アスパラギン酸やグルタミン酸である。疎水性アミノ酸の例は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン又はフェニルアラニンである。自己組織化ペプチドは、長さが8〜約40のアミノ酸の範囲にあり得るものであり、生理的pHとオスモル濃度の条件下でナノスケール繊維にすることができる。充分な濃度で時間が経つにつれて、繊維は、肉眼的にゲルとして見える相互に接続した構造になり得る。自己組織化ペプチドは、典型的には、数分〜数時間でゲル化を受ける。自己組織化ペプチドの例としては: AcN-RARADADARARADADA-CNH2(RAD 16-II)(ここで、Rはアルギニンであり、Aはアラニンであり、Dはアスパラギン酸であり、Acはアセチル化を示す); VKVKVKVKV-PP-TKVKVKVKV-NH2(MAX-1)(ここで、Vはバリンであり、Kはリジンであり、Pはプロリンである); AcN-AEAEAKAKAEAEAKAK-CNH2(ここで、Aはアラニンであり、Kはリジンであり、Eはグルタミン酸(EAK16-II)である)が挙げられるがこれらに限定されない。
【実施例1】
【0012】
一例において、自己組織化ペプチドは、RAD 16-IIである。低いpHとオスモル濃度で、RAD 16-IIは、溶液を形成する。生理的pHとオスモル濃度で、RAD 16-IIはゲルを形成するがゲル形成は緩慢となり得る。ある実施態様において、RAD 16-IIは、リン酸緩衝液食塩水(PBS)と混合して第一成分溶液を形成する。ある実施態様において、第一成分溶液は、塩化ナトリウム、スクロース又は他のオスモル濃度変更物質を含む第二成分と、例えば、デュアル注入送達アセンブリを用いて同時注入することができる。ある実施態様において、これらの成分は、血管形成促進因子、細胞生存促進因子及び/又は内因性補充因子のような担体と同時注入することができる。これらの因子は、静電的相互作用によって非特異的に自己組織化ペプチドに結合し、この結合は因子の放出を制御又は遅延させることができる。
C.
ある実施態様において、二成分ゲルは、アルギン酸塩構成物である。例えば、アルギン酸塩構成物はコラーゲンであってもゼラチングラフトアルギン酸塩であってもよい。一例において、第一成分は、約0.5パーセント〜約1.0パーセントのアルギン酸塩の溶液であり得、第二成分は、約40mM〜約180mMの塩化カルシウムの溶液であり得る。適量の成分の一例は、約200マイクロリットルのアルギン酸塩溶液と約200マイクロリットルの塩化カルシウムである。一実施態様において、所望量の治療剤をアルギン酸塩溶液と導入するのがよい。
製造方法
図2は、治療剤がその中に相互分散した徐放性担体が充填された二成分ゲルマトリックスを調製する方法を示す概略図である。治療剤、例えば、血管形成促進因子、細胞生存促進因子、内因性補充因子又はこれらのいかなる組み合わせも、生体分解性ポリマー、例えば、PLGA又はPEAとPLA-PEEPコポリマー又はポリホスファゼンに添加することができる(100)。ある実施態様において、W/O/Wプロセスが使用し得る。混合物は、得られた治療剤充填マイクロスフェアを単分散するために処理し得る(110)。マイクロスフェアは、約5μm〜約200μm、好ましくは約10μm〜約50μmの範囲にあり得る。次に、得られた分散液をフィブリン糊のような二成分ゲルの一方の成分に添加し得る(120)。一実施態様において、二成分ゲルは、成分Aと成分Bを含み、成分Aはフィブリノーゲンであり、成分Bはトロンビンである。その後、成分Aと成分Bは、心筋梗塞領域にその治療用のデュアル注入送達アセンブリによって別個にであるが同時に注入することができる(130)。
【0013】
図3は、治療剤がその中に相互分散した徐放性担体が充填された二成分ゲルマトリックスを調製する代替的方法を示す概略図である。治療剤、例えば、血管形成促進因子、細胞生存促進因子、内因性補充因子又はそのいかなる組み合わせも生体分解性ポリマー、例えば、PLGA又はPEAとPLA-PEEPコポリマー又はポリホスファゼン又はコラーゲンに溶媒と添加し得る(200)。コラーゲン/エラスチンエレクトロスパンファイバーに適切な溶媒は、HFPであり得る。ある実施態様において、水性系が用いられてもよい。その後、混合物をエレクトロスピニングにかけて、直径が約0.2μm〜約3μmの範囲の織り混ざった繊維を生成する(210)。その後、繊維は、約0.5μm〜約500μmのより小さい長さに処理されてもよい(220)。繊維は、低温粉砕によって処理されても、水中で超音波にかけられても、又はポリマーと封入タンパク質又は他の物質双方に非溶媒である揮発性溶剤中で超音波にかけられても又は適切な他の適切ないかなる方法にかけられてもよい。次に、得られた繊維をフィブリン糊のような二成分ゲルの一方の成分に添加することができる(230)。一実施態様において、二成分ゲルは、成分Aと成分Bを含み、成分Aはフィブリノーゲンであり、成分Bはトロンビンである。その後、成分Aと成分Bは、心筋梗塞領域にその治療用のデュアル注入送達アセンブリによって別個にであるが同時に注入することができる(240)。
図4は、治療剤がその中に相互分散した徐放性担体が充填された二成分ゲルマトリックスを調製する他の代替的方法を示す概略図である。リン脂質物質は、丸底フラスコにおいてクロロホルムのような溶媒中でコレステロールと合わせることができる(300)。ある実施態様において、任意の共存溶媒を含む疎水性処理剤がそれに添加されてもよい(300A)。溶媒を蒸発させて、ガラス面上に脂質を付着させることができる(310)。次に、水を添加し、ある実施態様において、親水性治療剤を添加する(320)。その後、混合液を超音波処理して、リポソームを形成し(330)、必要により圧力処理してもよく、リポソーム粒径を小さくする(340)。次に、得られたリポソームを、フィブリン糊のような二成分ゲルの一方の成分に添加することができる(350)。一実施態様において、二成分ゲルは、成分Aと成分Bを含み、成分Aはフィブリノーゲンであり、成分Bはトロンビンである。その後、成分Aと成分Bは、心筋梗塞領域にその治療用のデュアル注入送達アセンブリによって別個にであるが同時に注入することができる(360)。
【実施例2】
【0014】
一実施態様において、コラーゲンエレクトロスパンファイバーは、約200nm〜約1300nmの範囲に処理することができる。エレクトロスパンファイバーの範囲は、心臓マトリックスを構成する天然に存在する1型と3型の繊維のほぼ範囲である。従って、エレクトロスパンファイバーは、内因性繊維に似ているのがよく、特に、心臓の梗塞領域に対して修復組織の成長を促進することができる。繊維は、二成分ゲルの一方の成分全体に分散することができる。その後、二成分を、心筋梗塞領域に送達させることができる。繊維は、内因性心筋幹細胞の「ドッキング部位」与えるとともに心筋細胞への分化を働きかけることができる。ゲルは、繊維の一時的混入物を与え、かつマクロファージ細胞による早期除去を防止することができる。
繊維は、薬剤を含むように又は薬剤を含まないように製造することができる。薬剤の例としては、SDF-1のような化学誘引物質、又はIGF-1のような細胞生存促進因子を挙げることができる。一実施態様において、SDF-1は、エレクトロスパンファイバーの中に配合することができ、得られた薬剤注入エレクトロスパンファイバーは、二成分ゲルの一方の成分全体に分散させることができる。送達した場合、SDF-1の放出は梗塞領域に内因性幹細胞を補充することができ、そこでエレクトロスパンファイバーに付着し幹細胞に分化する。
他の実施態様において、IGF-1は、エレクトロスパンファイバーの中に配合することができ、得られた薬剤注入エレクトロスパンファイバーは、二成分ゲルの一方の成分全体に分散させることができる。幹細胞は、二成分ゲルのもう一方の成分の中に配合することができる。送達した場合、幹細胞はゲルに一時的に固定され且つエレクトロスパンファイバーに付着することができる。IGF-1は、幹細胞生存を増強することができる。
上記方法のいずれもが梗塞領域を治療するために組み合わせることができることは理解されなければならない。
【0015】
治療方法
ゲルの各成分を送達するために使用し得る装置としては、デュアルニードル左心室注入装置やデュアルニードル経血管壁注入が挙げられるがこれらに限定されない。注入装置を用いる到達方法は、大腿動脈又は剣状突起下を経る到達を含む。「剣状」又は「剣状突起」は、胸骨又は胸骨の低端部、胸骨の最も小さく最も低い区域にあるとがった軟骨である。いずれの方法も、当業者によって知られる。
図5A-図5Bは、本発明の組成物を送達するために使用し得るデュアルニードル注入装置を示す実施態様である。送達アセンブリ400は、送出管腔、ガイドワイヤ内腔及び/又は他の内腔を収容することができる管腔410を含む。管腔410は、この例では、送達アセンブリ400の遠位部405と近位端415との間に伸びる。
一実施態様において、送達アセンブリ400は、送出管腔430内に配置されるメインニードル420を含む。メインニードル420は、送出管腔430内に可動式で配置される。メインニードル420は、例えば、送達アセンブリの長さを伸びるステンレス鋼ハイポチューブである。メインニードル420は、内径が、例えば、0.08インチ(0.20センチメートル)の内腔を含む。格納式ニードルカテーテルのための一例において、メインニードル420は、遠位部405から近位部415まで約40インチ(1.6メートル)のニードル長を有する。管腔410は、この例では、カテーテルに沿って共直線的に伸びる別個の、おそらくより小さい直径の補助管腔440を含む(遠位部405から近位部415まで)。補助管腔440は、例えば、適切な材料(例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン等)のポリマーチュービングである。遠位部405の補助管腔440は、ニードル420の送出端部と共直線的に整列した補助ニードル端450までである。補助管腔440は、放射線硬化可能な接着剤、例えば、紫外線硬化可能な接着剤による補助ニードル端部450までであってもよい。補助ニードル端部450は、例えば、メインニードル420の終わりまで、例えば、はんだによって共直線的に接合されるステンレス鋼ハイポチューブである(接合部455として示す)。補助ニードル端部450は、約0.08インチ(0.20センチメートル)の長さを有する。図5Bは、送達アセンブリ400の線A-A'による断面正面図である。図5Bは、共直線的に整列したメインニードル420と補助ニードル450である。図5Aを参照すると、近位部415の補助管腔440は、補助サイドアーム460までである。補助サイドアーム460は、メインニードル420と共直線的に伸びる部分を含む。補助サイドアーム460は、例えば、メインニードル420にはんだ付けされてもよいステンレス鋼ハイポチューブ材料である(接合部465として示す)。補助サイドアーム460は、一例において、約1.2インチ(3センチメートル)の共直線的長さを有する。
【0016】
メインニードル420の近端部は、物質送達装置(例えば、二成分生体分解性ゲル材料の成分)を収容するためのアダプタ470を含む。アダプタ470は、例えば、成形された雌ルアーハウジングである。同様に、補助サイドアーム460の近端部は、物質送達装置(例えば、雌ルアーハウジング)を収容するアダプタ480を含む。
図5A-図5Bに関して上記設計構成は、本発明の二成分ゲル組成物を導入するのに適する。例えば、ゲルは、第一成分と第二成分の組み合わせ(混合、接触等)によって形成されてもよい。代表的には、第一成分は、メインニードル420を通ってアダプタ470に一立方センチメートルの注射器によって導入されるのがよい。同時に又は直前か直後に、徐放性粒子を充填した治療剤を含む第二成分を、アダプタ480に一立方センチメートルの注射器で導入してもよい。第一成分と第二成分が送達アセンブリ400の出口で(梗塞領域で)合わさる場合、材料が合わさって(混合して、接触して)、生体分解性ゲルを形成する。
図6A-図6Cは、本発明の二成分ゲル組成物を送達するために使用し得るデュアルニードル注入装置を示す代替的実施態様である。一般に、カテーテルアセンブリ500は、心筋梗塞領域を治療するために血管(生理的内腔)又は組織の所望の領域に又はその所望の領域を通って物質、例えば、二成分ゲル組成物を送達するための系を与える。カテーテルアセンブリ500は、「Directional Needle Injection Drug Delivery Device」と称する同一所有の米国特許出願番号第6,554,801号に記載されるカテーテルアセンブリ500と同様であり、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。
一実施態様において、カテーテルアセンブリ500は、近位部520と遠位部510を有する細長いカテーテル本体550によって画成される。図6Bは、図6Aの(遠位部510の)線A-A'によるカテーテルアセンブリ500を示す図である。図6Cは、図6Aの線B-B'によるカテーテルアセンブリ500を示す図である。
ガイドワイヤカニューレ570は、カテーテルアセンブリ500がガイドワイヤ580の上に送られ操作させるカテーテル本体(近位部510から遠位部520まで)内で形成される。バルーン530は、カテーテルアセンブリ500の遠位部510で組み込まれ、カテーテルアセンブリ500の膨張カニューレ560と流体が連通している。
【0017】
バルーン530は、つぶれた形状から所望の制御された膨張した形状まで広がるのに選択的に膨張可能であるバルーン壁又は膜335から形成され得る。バルーン530は、膨張ポート565を通って所定の圧力割合で膨張カニューレ560に流体を供給することによって選択的に広がる(膨らむ)ことができる。バルーン壁335は、膨張の後、つぶれた形状又は気の抜けた形状に戻すために選択的にしぼませることができる。バルーン530は、膨張カニューレ560に液体を導入することによって広げてもよい(膨らませてもよい)。治療剤及び/又は診断用剤を含有する液体もまた、バルーン530を膨らませるために用いてもよい。一実施態様において、バルーン530は、このような治療及び/又は診断の液体に透過可能である材料でできていてもよい。バルーン530を膨らませるために、流体は、例えば、約1〜20気圧の所定圧で膨張カニューレ560に供給することができる。圧力の強さは、種々の因子、例えば、バルーン壁の厚さ335、バルーン壁335が作られる材料、使われる物質の種類及び所望される流量に左右される。
カテーテルアセンブリ500には、また、心筋梗塞領域に物質を注入するための物質送達アセンブリ505が含まれる。一実施態様において、物質送達アセンブリ505には、中空送出管腔525a内に移動可能に配置されるニードル515aが含まれる。送達アセンブリ505には、中空送出管腔525b内に移動可能に配置されるニードル515bが含まれる。送出管腔525aと送出管腔525bは、それぞれ遠位部510と近位部520との間で伸びる。送出管腔525aと送出管腔525bは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン等のポリマーやコポリマーのような適切ないかなる材料からも作ることができる。ニードル515a又は515bをそれぞれ挿入する送出管腔525a又は送出管腔525bの近端部には、ハブ535を通って到達する。送出管腔525aと525bは、心筋梗塞領域に二成分ゲル組成物の第一成分と第二成分を送達するために用いることができる。
上記の詳細な説明から、当業者の分野の範囲内に入る本発明の多くの変更、適合及び修正があることは明らかである。本発明の範囲は、本明細書に開示される異なった種類や実施態様からの要素のいかなる組み合わせも、これらのサブアセンブリ、アセンブリ及び方法も包含する。しかしながら、本発明の真意から逸脱しないこのような変更は全て本発明の範囲内とみなされるものである。
【図1A−1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分を含み、必要により第二成分を含んでもよい生体分解性材料、
第一成分又は第二成分の一方を全体に分散させた生体分解性担体、及び
生体分解性担体の中に配置された治療剤、
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記材料が、一成分ゲル又は二成分ゲルのいずれかである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記一成分ゲルが、ヒアルロン酸ナトリウムである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記二成分ゲルが、アルギン酸塩構成物系、フィブリン糊系及び自己組織化ペプチド系からなる群より選ばれる、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記二成分ゲルが、第一成分としてのコラーゲングラフトアルギン酸塩及び第二成分としての塩化カルシウムを含むアルギン酸塩構成物系である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記二成分ゲルが、第一成分としてのRAD 16-II、MAX-1又はEAK16-IIの一つ及び第二成分としてのスクロース又は塩化ナトリウムの一方を含む自己組織化ペプチド系である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記二成分ゲルが、第一成分としてのフィブリノーゲン又はその誘導体及び第二成分としてのトロンビンを含むフィブリン糊系である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記担体が、生体分解性ポリマー及びリポソームからなる群より選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記担体が、粒子である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記粒子が、マイクロスフェア、ナノスフェア又はポリマーソームの一つである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子が、エレクトロスパンマイクロファイバー又はナノファイバーの一方である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記治療剤が、血管形成促進因子、細胞生存促進因子及び内因性補充因子からなる群より選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記血管形成促進因子が、血管内皮成長因子、線維芽細胞成長因子、Del 1、低酸素誘導因子、単球走化性タンパク質、ニコチン、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子1、形質転換成長因子、肝細胞成長因子、エストロゲン、ホリスタチン、プロリフェリン、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE2、腫瘍壊死因子、インターロイキン8、造血成長因子、エリスロポイエチン、顆粒球-コロニー刺激因子、血小板由来内皮成長因子、PR39、PR11、アンギオゲニン、PHDインヒビター、及びeNOSエンハンサーからなる群より選ばれる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
細胞生存促進因子が、インスリン様成長因子、ヒト成長因子、HMG-CoAレダクターゼインヒビター及びカプサーゼインヒビターからなる群より選ばれる、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
内因性補充因子が、ヒト成長因子又はストローマ細胞由来因子1のいずれかである、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
組成物を製造する方法であって、以下の工程、
少なくとも一つの治療剤と徐放性担体の前駆物質とを溶媒中で合わせて、混合物を形成する工程、
混合物を処理して、治療剤を充填した徐放性担体を形成する工程、及び
混合物を二成分ゲル系の成分に添加する工程であって、該二成分ゲル系が、第一成分と、任意の第二成分を含む工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記処理する工程が、前記混合物をエレクトロスピニングにかけて、治療剤を充填した繊維を形成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
溶媒が、非水性である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
界面活性剤が、混合物に添加される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
二成分ゲル系が、アルギン酸塩構成物系、フィブリン糊系及び自己組織化ペプチド系からなる群より選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記二成分ゲル系が、第一成分としてコラーゲングラフトアルギン酸塩と第二成分として塩化カルシウムを含むアルギン酸塩構成物系である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記二成分ゲル系が、第一成分としてRAD 16-II、MAX-1又はEAK16-IIの一つと任意の第二成分としてスクロース又は塩化ナトリウムの一方を含む自己組織化ペプチド系である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記二成分ゲル系が、第一成分としてフィブリノーゲン又はその誘導体と第二成分としてトロンビンを含むフィブリン糊系である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
担体が、生体分解性ポリマー及びリポソームからなる群より選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
担体が、粒子である、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
粒子が、マイクロスフェア、ナノスフェア又はポリマーソームの一つである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記粒子が、エレクトロスパンマイクロファイバー又はナノファイバーの一方である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記治療剤が、血管形成促進因子、細胞生存促進因子及び内因性補充因子からなる群より選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記血管形成促進因子が、血管内皮成長因子、線維芽細胞成長因子、Del 1、低酸素誘導因子、単球走化性タンパク質、ニコチン、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子1、形質転換成長因子、肝細胞成長因子、エストロゲン、ホリスタチン、プロリフェリン、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE2、腫瘍壊死因子、インターロイキン8、造血成長因子、エリスロポイエチン、顆粒球-コロニー刺激因子、血小板由来内皮成長因子、PR39、PR11、アンギオゲニン、PHDインヒビター、及びeNOSエンハンサーからなる群より選ばれる、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記細胞生存促進因子が、インスリン様成長因子、ヒト成長因子、HMG-CoAレダクターゼインヒビター及びカプサーゼインヒビターからなる群より選ばれる、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記内因性補充因子が、ヒト成長因子又はストローマ細胞由来因子1の一方である、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
治療方法であって、
送達装置からゲル組成物の第一成分と任意の第二成分を心筋梗塞後の領域に同時に注入する工程であって、第一成分又は第二成分の一方が、徐放性担体の中に少なくとも一つの治療剤を含む工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
前記ゲル組成物が、アルギン酸塩構成物系、フィブリン糊系及び自己組織化ペプチド系からなる群より選ばれる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ゲル組成物が、第一成分としてコラーゲングラフトアルギン酸塩と第二成分として塩化カルシウムを含むアルギン酸塩構成物系である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ゲル組成物が、第一成分としてRAD 16-II、MAX-1又はEAK16-IIの一つと任意の第二成分としてスクロース又は塩化ナトリウムの一方を含む自己組織化ペプチド系である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
ゲル組成物が、第一成分としてフィブリノーゲン又はその誘導体及び第二成分としてトロンビンを含むフィブリン糊系である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
担体が、生体分解性ポリマー及びリポソームからなる群より選ばれる、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
担体が、粒子である、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記粒子が、マイクロスフェア、ナノスフェア又はポリマーソームの一つである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記粒子が、エレクトロスパンマイクロファイバー又はナノファイバーの一方である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記治療剤が、血管形成促進因子、細胞生存促進因子及び内因性補充因子からなる群より選ばれる、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
前記送達装置が、デュアル注射針カテーテルである請求項32に記載の方法。
【請求項43】
治療方法であって、
送達装置からゲルキットの第一成分と第二成分を心筋梗塞後の領域に同時に注入する工程であって、該第一成分又は該第二成分の一方が、成分全体に分散したコラーゲンエレクトロスパンファイバーを含む工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
前記エレクトロスパンファイバーの中に組み込まれた少なくとも一つの治療剤を更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記治療剤が、血管形成促進因子、細胞生存促進因子、内因性補充因子及び化学誘引物質からなる群より選ばれる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記化学誘引物質が、ストローマ由来因子1又はインスリン様成長因子1の一方である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
血管形成促進因子が、血管内皮成長因子、線維芽細胞成長因子、Del 1、低酸素誘導因子、単球走化性タンパク質、ニコチン、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子1、形質転換成長因子、肝細胞成長因子、エストロゲン、ホリスタチン、プロリフェリン、プロスタグランジンE1、プロスタグランジンE2、腫瘍壊死因子、インターロイキン8、造血成長因子、エリスロポイエチン、顆粒球-コロニー刺激因子、血小板由来内皮成長因子、PR39、PR11、アンギオゲニン、PHDインヒビター、及びeNOSエンハンサーからなる群より選ばれる、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
細胞生存促進因子が、インスリン様成長因子、ヒト成長因子、HMG-CoAレダクターゼインヒビター及びカプサーゼインヒビターからなる群より選ばれる、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
内因性補充因子が、ヒト成長因子又はストローマ細胞由来因子1の一方である、請求項46に記載の組成物。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2009−539839(P2009−539839A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514330(P2009−514330)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/013181
【国際公開番号】WO2007/145909
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(591040889)アボット、カーディオバスキュラー、システムズ、インコーポレーテッド (42)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT CARDIOVASCULAR SYSTEMS INC.
【Fターム(参考)】