心肺結合に基づく睡眠の質と睡眠障害呼吸の評価
睡眠の質の評価は、2つの生理学的データシリーズの間の心肺結合から決定される。R−R間隔シリーズは、心電図(ECG)信号から引き出される。R−R間隔シリーズから正常な鼓動が抽出され、正常−正常間隔シリーズを生み出す。QRS複合波の振幅変化は、NN間隔シリーズと関連する代理呼吸信号(すなわちECG派生呼吸)を抽出するために使用される。2つのシリーズは、異常値を除去するために修正され、かつ再サンプリングされる。2つの再サンプリングされた信号のクロススペクトルパワーおよびコヒーレンスは、複数のコヒーレンスウインドウ上で計算される。各コヒーレンスウインドウに対して、コヒーレンスとクロススペクトルパワーの積が使用され、コヒーレンスクロスパワーを計算する。コヒーレンスクロスパワーに対する適切な閾値を使用して、CAP、非CAP、ならびに覚醒および/またはREMで費やされた睡眠の割合が決定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は概略、生理学的なデータの分析に関し、さらに詳細には、コヒーレンスおよび/またはクロスパワー(cross−power)測定から睡眠病理学および生理学を非侵襲的に評価することに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
一般的人口の少なくとも5パーセントが、医学的に有意な睡眠障害で苦しみ、最も一般的であるものが、(睡眠時無呼吸としても知られている)睡眠障害呼吸である。主な公衆衛生の関心事として、睡眠障害は、過度な日中の眠気、ならびにそれに伴う、運転事故、高血圧症、心臓発作、卒中、うつ病、および注意欠如障害の危険性を助長する。睡眠障害の罹患率は、選択人口、例えば肥満、うっ血性の心不全、糖尿病、および腎不全を有する個人においてはさらに高い(30パーセントを超過する)。
【0003】
睡眠障害を検出する従来の診断システムは通常、睡眠に関する研究室における複雑な複数のチャンネルの読み取りおよび労働集約的な採点を含み、これらは、全体として相当な出費および患者の不快につながる。従来の睡眠診断システムの一例は、全睡眠ポリグラフである。睡眠ポリグラフ計は、睡眠障害呼吸の検出および数量化に対する貴重な標準であり、睡眠ステージング(staging)、呼吸異常(例えば無呼吸、呼吸低下、流量制限、周期的な呼吸、および脱飽和症状)の採点、ならびに四肢の動きを含む。睡眠障害の重さの通常のマーカ(marker)は、睡眠断片化指数、無呼吸−呼吸低下指数、呼吸妨害指数、覚醒頻度または指数、および酸素脱飽和指数である。
【0004】
従来の睡眠診断システムの多くの制限のうちの一つは、生理学的に恣意的な基準に基づいて「イベント」を退屈な手作業によって採点することへの依存である。これらのイベントと認知的かつ心臓脈管に関する結果との間には、普通の相互関係のみが見出され得る。従って、従来のシステムは、かなりの量の説明されない変動を事実上残し、睡眠障害による生理学的な影響を十分には説明し得ていない。従って、睡眠障害の睡眠生理に対する影響を評価する量的測定が、説明されていない変動のうちのいくらかを解明する際に有用である。処置効果を追跡するためには、生理学的状態の継続的なバイオマーカ(biomarker)が、特に有用であり得る。継続的なバイオマーカは、表面上微妙な睡眠障害疾患が生理学的には分裂的であるような人たちを見分けるためにも有用であり得る。そのような生理学的に分裂的な設定は、一次性のいびきを含み、一次性のいびきは、大人においては、過度な眠気と関連付けられ、子供においては、注意不足および/かつ活動過多の挙動と関連付けられる。
【0005】
現在、気流、呼吸努力、心電図(ECG)、および酸素測定の様々な組み合わせを含む限定された形態の睡眠試験の開発にもかかわらず、睡眠診断の迅速かつ正確なスループットは存在しない。このことは、重度かつ複雑な形態の睡眠時無呼吸が、死亡率と罹患率の両方に悪い影響を与え得るうっ血性の心不全および慢性の腎不全のような状態において特に問題である。従来の睡眠研究は非常に費用がかさむので、睡眠効果に関する情報は、神経学的および精神医学的診療において使用される薬物の承認前の評価においては、通常制限されている。
【0006】
睡眠障害呼吸における評価の補完的な範囲は、閉塞性疾患を非閉塞性疾患から区別することである。非閉塞性疾患の極端な形態は、標準的な睡眠研究(例えば中枢性の睡眠時無呼吸症候群およびチェーン−ストークス型呼吸)によって容易に識別される一方で、あらゆる度合いの生理学的異常の混合が、臨床的診療において見られ得る。さらに、生理は、体位、夜の時間効果、および睡眠ステージ効果に基づいて同じ夜の内に変化し得る。自然に生じるかまたは処置によって誘発される、閉塞性病理生理から中枢性の病理生理への生理学的切り替わりをたどる方法は、実用的な効用を有し得る。なぜならばこれら2つの状態に対する処置は異なるからである。
【0007】
閉塞性疾患は正の気道圧に対してよく応答し、一方、非閉塞性疾患はそのような治療に対してうまく応答せず、実際、空気圧によって実際より悪く見えることがあり得る。特定の病状を有する個人は、うっ血性心不全、慢性的腎不全、および卒中後の睡眠時無呼吸症候群を含むが、これらに限定されない混合生理的障害に対して危険性が高い。診断のレベルで疾患の病理生理学を評価する簡単な方法は、臨床的処置アプローチを修正することを可能にし、それによって中枢性の機能障害を向上させる治療が、過程においてより早く開始され得る。
【0008】
閉塞性の疾患は、(気道をサポートする)機械的な治療に応答し、非閉塞性疾患は(例えば、しかし限定されず酸素または二酸化炭素の吸入のような)制御特定アプローチに対して応答するので、これら2つのタイプの生理学的な異常は、治療結果の予後(治療の成否の予測)も可能にし得る。
【0009】
従って、睡眠を中断させる様々な刺激(例えば騒音、痛み、薬物、気分障害、障害のある呼吸)の存在、および睡眠状態の生理および安定性に対する影響を簡単に、安価に、繰り返し測定することを提供する技術を開発するニーズが存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(本発明の概要)
本発明は、睡眠の生理および病理を検出かつ評価する2つの生理学的信号の間の心肺結合の定量分析を実行する方法、システム、ならびにコンピュータプログラムプロダクトを提供する。本発明の実施形態に従って、R−R間隔シリーズが、対応する呼吸信号と組み合わされ、これら2つの信号のコヒーレントクロスパワーを決定する。コヒーレントクロスパワーは、心肺結合の測定を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書に取り入れられ、本明細書の一部分を形成する添付された図面は、本発明を例示し、記述と共に、本発明の原理を説明しかつ関連技術の当業者が本発明を作りかつ使用することを可能にするためにさらに役立つ。図面においては一般的に、同様な参照番号は、同一かもしくは機能的にまたは構造的に類似した要素を指す。さらに、一般的に、参照番号の最も左の数字で、該参照番号が最初に現れる図面が識別される。
【0012】
(本発明の詳細な記述)
本発明の実施形態に従って、睡眠の生理を検出しかつ評価する2つの生理学的な信号の間の心肺結合の定量分析を実行するために、方法、システム、およびコンピュータプログラムプロダクトが提供される。
【0013】
この明細書は、この発明の特徴を取入れる1つ以上の実施形態を開示する。記述された実施形態、および「一実施形態」、「1つの実施形態」、「例の実施形態」、その他への本明細書中での言及は、記述された実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、必ずしもすべての実施形態が該特定の特徴、構造、または特性を含み得るわけではないことを示す。さらに、そのような語句は必ずしも同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、1つの実施形態との関連で記述されるとき、そのような特徴、構造、または特性を他の実施形態との関連でもたらすことは、たとえ明確に述べられていないとしても、当業者の知識の範疇内であることは、当然のこととされる。
【0014】
睡眠は、周期的なステージ(すなわち急速眼球運動(REM)睡眠および非REM睡眠)、ならびに一連の前進的および退行的深さ(すなわち非REM睡眠におけるステージI〜IV)によって特徴付けられる複雑な状態である。非REM睡眠における周期的な交互パターン(CAP)の概念に基づいて認識されているが、臨床的な診療においては一般的に適用されていない安定範囲も存在する。CAPタイプ非REM睡眠は不安定であり、一方、非CAP非REM睡眠は安静であり、安定化の影響による非覚醒状態である。
【0015】
睡眠のステージおよび状態の分布は、睡眠を中断させる多くの外部的要因(例えば騒音、暑さ、寒さ、振動、気圧障害、動き、重力によるストレス、その他)、ならびに内部的な要因(例えば障害のある呼吸、痛み、発作、落ち着きのない脚、周期的な四肢および関連する運動、その他)によって変化し得る。さらに重要なことは、これらの要素はすべて、複数の測定(例えば脳の電気的作用、心拍数、呼吸、および血圧)における周期的な挙動によって特徴付けられる状態、CAPを誘発する。非CAP状態においては、生理学的な安定が存在する。
【0016】
睡眠障害呼吸(SDB)は、複数の生理的なシステム、例えば呼吸、心拍数、および脳波記録装置(EEG)作用における比較的低い周波数(すなわち0.01〜0.1ヘルツ(Hz))の周期的挙動の出現と関連付けられる。これらの病理学的な振動は、生理学的に不安定な睡眠挙動の周期、および呼吸駆動ECG変異の低周波数結合を表す。この状態において、EEGパターンは通常、CAP属性を表示する。
【0017】
それに反して、安定した呼吸の周期は、非CAP EEGパターン、および呼吸と鼓動−鼓動心拍数変異(例えば呼吸洞性不整脈)との間の高周波数(すなわち0.1〜0.4Hz)結合と関連している。SDBを有する患者において、自然かつ比較的突発な移行が、これら2つの状態の間で生じる傾向がある。
【0018】
以下により詳細に記述されているように、本発明は、CAPと非CAP状態との強い相互関係を示す心肺結合を定量化する技術および/または方法論を提供する。従って、本発明は、睡眠生理学および病理学のバイオマーカ、例えば不安定な睡眠挙動の期間に費やされた睡眠のパーセンテージを提供する。
【0019】
図1を参照して、流れ図100は、本発明の実施形態の一般的な動作の流れ図を表す。さらに詳細には、流れ図100は、被験者(例えば、患者、試験/実験室被験者など)から心肺結合を検出する制御流れの例を示す。
【0020】
流れ図100の制御流れは、ステップ101から始まり、直接ステップ103に向かう。ステップ103では、一組の間隔呼吸データ(本明細書中においては「呼吸シリーズ」と称される)が、生理学的な信号からアクセスされる。生理学的信号は、心電図(ECGまたはEKG)であり得、以下にさらに詳細に記述されるように、代理呼吸信号がそれから獲得される。しかし、生理学的な信号は、被験者における呼吸動態を表す任意のタイプの信号であり得る。従って、呼吸データシリーズは、例えば鼻サーミスタ、強制発振、音響反射技術、鼻カニューレ圧力トランスデューサシステム、インピーダンス/インダクタンス/圧力胸部および/または腹部エフォートバンド(effort band)などから引き出され得る。
【0021】
ステップ106において、間隔心拍数データのセット(本明細書中においては「R−R間隔シリーズ」と称される)は、生理学的信号からアクセスされる。1つの実施形態において、心拍数生理学的信号は、ステップ103において上に記述された呼吸間隔信号を提供する同じ生理学的な信号である。別の実施形態において、心拍数生理学的信号は、呼吸信号を提供する生理学的信号とは異なる。さらに、心拍数生理学的信号は、呼吸信号を提供する生理学的信号と同じタイプの信号(例えば両方ともECG)か、または異なるタイプの信号(例えば心拍数間隔シリーズに対してはECG、呼吸シリーズに対しては鼻カニューレ圧力トランスデューサ鼻サーミスタ流れ)であり得る。
【0022】
従って、心拍数生理学的信号は、心拍数間隔データ(すなわちR−R間隔またはR−R等価間隔)のシリーズの派生を可能にする任意のタイプの信号である。従って、心拍数生理学的信号は、被験者において心拍数動態を表す任意のタイプの信号であり得る。そのような信号は、例えばECG、血圧、パルスドップラー流れ(例えば超音波記録を介して検知された)、別の電気的信号(例えばEEG)からのECG信号などから引き出され得る。
【0023】
それらの源にかかわらず、心拍数間隔シリーズおよび呼吸シリーズは一時的に整列させられ、心肺結合を決定しなければならない。1つの実施形態において、正常な洞性(N)鼓動は、心拍数間隔シリーズから選択され、正常−正常(NN)心拍数データのシリーズ(本明細書中においては、「NN間隔シリーズ」と称される)を生み出す。従って、呼吸シリーズは、NN間隔シリーズと一時的に整列させられる。
【0024】
ステップ109において、クロススペクトルパワーおよびコヒーレンスが、心拍数間隔シリーズ(またはNN間隔シリーズ)と呼吸シリーズの両方を使用して、計算される。ステップ112において、コヒーレンスとクロススペクトルパワーの計算結果の積が、一組のコヒーレントクロスパワー計算結果を導くために取られる。ステップ115において、コヒーレントクロスパワー計算が、心肺結合を決定するために使用される。以下により詳細に記述されるように、心肺結合は、診断的評価、例えばSDBスクリーニングなどに対する1つ以上の検出閾値と比較され得る。後に、制御流れが、ステップ195において示されるように終わる。従って、本発明は、例えばSDBをスクリーニングするために、SDBの生理学的な影響を評価するために、および/またはSDBを処置する様々なアプローチの治療効果をモニタするためなどに使用され得る、心肺結合の完全に自動化された定量分析を提供する。
【0025】
図2を参照して、流れ図200は、本発明の別の実施形態の一般的な動作の流れを表す。さらに詳細には、流れ図200は、ECG派生呼吸(EDR)を使用することによって心肺結合の量を定め、呼吸と関連する心電軸においてR−R変異および変動を統合する制御流れの例を示す。
【0026】
流れ図200の制御流れは、ステップ201から始まり、ステップ203に直接向かう。ステップ203において、ECG信号またはECGデータのセットが評価される。1つの実施形態において、表面ECGデータは、格納媒体から検索される。別の実施形態において、表面ECGデータは、ECGモニタリングデバイスから直接的に取得される。例えば、ECGデータは、リアルタイムにまたは別の方法で、またはGE Marquette Medical Systems (Milwaukee、WI)もしくは他の出所から入手可能であるようなECGモニタからのホルターモニタまたは記録から取得され得る。
【0027】
単一のまたは2つのリードECG信号が、ECGモニタリングデバイスから直接的に取得される。1つのリードを使用する場合、皮膚センサまたは電極は、V2胸位置に、またはこの近くに置かれるべきである。2つのリードを使用する場合は、好ましくは電極を互いに比較的直交させて配置する。しかし、他の胸位置が、単一のまたは2つのリードECGデータを取得するために使用され得る。
【0028】
ステップ206において、ECGデータが、正常(N)または位置異常としてECGデータから心拍数(すなわち、R−R間隔)を検出し、かつ分類するために分析される。自動化された鼓動検出およびアノテーション(annotation)ルーチンまたは機能が、ホルター記録からのデジタル化されたECGデータを処理するために使用される。ルーチンは、デジタル化されたデータから心拍数を検出し、かつ分類する(すなわち明示する)。出力は、アノテーションされた心拍数の時間シリーズ(すなわち「R−R間隔シリーズ」)である。このシリーズは次に、正常−正常洞性鼓動(すなわち「NN間隔シリーズ」)のみを保持するように処理される。
【0029】
ステップ209において、ECGデータは分析され、NN間隔シリーズと関連付けられるQRS振幅変化(すなわち「EDRシリーズ」)の時間シリーズを抽出する。QRS複合波における振幅変化(正常な鼓動からの)は、呼吸の間、電極に対する心電軸における移行が原因である。これらの振幅変化から、代理呼吸信号(すなわちEDR)が引き出される。NN間隔シリーズを抽出するために使用されたのと同じ機能またはルーチンが、心拍数に対するQRS振幅を測定し、かつ継続的なEDR信号を生み出すためにも使用される。
【0030】
ステップ212において、NN間隔シリーズおよび関連するEDRシリーズが分析され、誤った検出または逃した検出を原因とする異常値を検出し、かつ/または除去する。例えば、ステップ206の間、自動化された鼓動検出機能は、誤った検出を生成し得るか、またはNN間隔シリーズに対する正常なデータポイント(従って関連するEDRシリーズ)を検出することができないことがあり得る。図3を参照して以下にさらに詳細に記述されているように、スライディングウインドウ(sliding window)平均フィルタが、異常値を除去するために使用される。
【0031】
ステップ215において、フィルタがかけられたNN間隔シリーズおよびフィルタがかけられたEDRシリーズが再びサンプリングされる。再サンプリング率は、対象の部類に依存し、以下のステップに記述されたスペクトル計算結果に対するデータシリーズを最適化するように選択される。例えば、人である対象に対しては、両シリーズは2Hzで再びサンプリングされる。未熟児または新生児である対象(約1歳に満たない)に対しては、4Hz再サンプリング率が使用される。なぜならば、新生児は通常、大人の心拍数の約2倍である心拍数を有するからである。人ではない対象(例えば実験室のネズミ)に対しては、20Hz再サンプリング率が使用される。
【0032】
ステップ218においては、クロススペクトルパワーおよびコヒーレンスが、再びサンプリングされたNN間隔シリーズと再びサンプリングされたEDRシリーズの両方から選択されたデータの重複するウインドウに対して計算される。高速フーリエ変換が使用され、2つの信号に対するクロススペクトルパワーとコヒーレンスの計算結果を計算する。図4を参照して、以下にさらに詳細に記述されるように、複数の重複するウインドウが使用され、FFT計算を実行する。
【0033】
ステップ221において、「コヒーレントクロスパワー」のデータシリーズが、ステップ218からのコヒーレンスとクロススペクトルパワーの計算結果の積から計算される。各ウインドウに対して、コヒーレンスとクロススペクトルパワーの積が使用され、データの各ウインドウに対してコヒーレントクロスパワーを計算する。
【0034】
コヒーレントクロスパワー計算が、0〜0.01Hzの範囲内に該当する場合、それは超低周波数(VLF)帯内にあるものと考えられる。コヒーレントクロスパワーが、0.01〜0.1Hzの範囲内に該当する場合、それは低周波数(LF)帯内にあるものと考えられる。コヒーレントクロスパワーが、0.1〜0.4Hzの範囲内に該当する場合、それは高周波数(HF)帯内にあるものと考えられる。VLF、LFおよびHF決定をするとき、各帯における1つ以上の周波数ビン(bin)が使用されて計算される。最大のパワーを有する2つのビンが使用される。
【0035】
ステップ224において、「心肺結合」が、コヒーレントクロスパワーから決定される。心肺結合は、様々な診断適用に対する検出閾値と比較され得る。例えば、心肺結合は、睡眠の質、例えばCAP作用、非CAP作用、覚醒および/またはREM作用などを検出または評価するために、予め定義された検出閾値と比較され得る。
【0036】
CAP作用に対して、コヒーレントクロスパワーが使用され、LF帯におけるコヒーレントクロスパワーの、HFにおけるそれに対する割合を計算する。低周波数帯におけるコヒーレントクロスパワーの超過は、EEG(すなわちCAP)における周期的な挙動、および呼吸の周期的なパターンと関連付けられる。検出閾値は、最小LFパワーに対しては0.2であり、最小LF/HF割合に対しては、2.0であり得る。
【0037】
非CAPに対して、コヒーレントクロスパワーが使用され、LF帯におけるコヒーレントクロスパワーの、HFにおけるそれに対する割合を計算する。高周波数帯におけるコヒーレントクロスパワーの超過は、生理学的呼吸洞性非CAP不整脈、安定した非周期的呼吸パターン、および非CAP EEGと関連付けられる。検出閾値は、最小HFパワーに対しては0.02であり、最大LF/HF割合に対しては、1.5であり得る。
【0038】
覚醒および/またはREM作用に対して、VLF帯におけるコヒーレントクロスパワーの、LFおよびHFにおいて組み合わされたパワーに対する割合は、覚醒および/またはREMの検出を可能にする。VLF帯におけるコヒーレントクロスパワーの超過は、覚醒および/またはREMと関連付けられる傾向がある。検出閾値は、最小VLFパワーに対しては0.05であり、最大VLF対(LF+HF)割合に対しては0.2であり得る。有意な睡眠障害呼吸を有する人たちにおいては、REM睡眠は普通、CAP生理学と極めて類似し、しばしばこれとは見分けがつかないコヒーレントクロスパワー特性を有している。
【0039】
心肺結合定量化および分析が完了すると、制御流れは、ステップ295に示されるように終了する。
【0040】
ステップ212を参照して上述されているように、NN間隔シリーズおよびそれらと関連するEDRシリーズは分析され、誤った検出または逃した検出を原因とする異常値を検出かつ/または除去する。図3を参照して、流れ図300は、データシリーズから異常値を除去するための、本発明の実施形態の一般的な動作の流れを表す。さらに詳細には、流れ図300は、異常値をフィルタするためにスライディングウインドウ平均を使用する制御流れの1つの例を示す。
【0041】
流れ図300の制御流れは、ステップ301から始まり、直接ステップ303へ向かう。ステップ303において、生理学的に不可能または実行不可能として決定される、NN間隔シリーズにおけるすべてのデータポイントは、演繹的に除外される。演繹的除外閾値は、対象部類によって異なる。演繹的除外閾値は、0.4秒よりも小さいNN間隔、または2.0秒よりも大きいNN間隔であり得る。
【0042】
ステップ306において、ウインドウサイズは、平均を開始するように設定される。ウインドウサイズは、41データポイントに対して設定され得る。次に、第1のウインドウ(すなわち41データポイントの第1のセット)は、NNシリーズから選択される。
【0043】
ステップ309において、基準ポイントは、ウインドウ内から選択される。例えば、中央(または21)データポイントは、基準ポイントとして選択され得る。
【0044】
ステップ312において、基準ポイントに先行する20ポイント、および基準ポイントの後の20ポイントは平均される。ステップ315において、ステップ312において計算された平均値に基づいて、基準ポイントが、予め定義された閾値に等しいかまたは超過するかどうかが決定される。基準ポイント除外閾値は、20パーセントに設定され得る。
【0045】
ステップ318において、基準ポイントは、それが基準ポイント除外閾値を満足する場合、データシリーズから除外される。例えば、基準ポイント除外閾値が、20パーセントに設定され、基準ポイントが、平均値から20パーセント以上外れる場合、基準ポイントは除外される。
【0046】
ステップ321において、基準ポイントは、それが基準ポイント除外閾値を満足しない場合、データシリーズの中に残る。例えば、基準ポイント除外閾値が20パーセントに設定され、基準ポイントが、平均値の20パーセントよりも少なく外れる場合、基準ポイントは、データセットの中に残る。
【0047】
ステップ324はおいて、データシリーズは、追加的なデータが、処理のために入手可能かどうかを決定するためにチェックされる。追加的なデータが入手可能である場合、ステップ327において、ウインドウは、1つデータポイントを繰り上げられ、制御流れはステップ309に戻り、異常値に対する捜索を繰り返す。そうでない場合、制御流れは、ステップ395において示されるように終了する。
【0048】
上記のパラメータ(すなわち演繹的除外閾値、ウインドウサイズ、基準ポイント除外閾値)は例として提供され、心肺結合の定量化を最適化するために、オペレータによって望み通りに調節され得る。
【0049】
ステップ218を参照して上に記述されたように、クロススペクトルパワーおよびコヒーレンスは、NN間隔シリーズとそれらと関連するEDRシリーズの両方から選択されたデータの重複するウインドウに対して計算される。これら2つの信号のクロススペクトルパワーおよびコヒーレンスは、1,024コヒーレンスウインドウ内の3つの重複する512サンプルサブウインドウに適用されたFFTを使用して、1,024サンプル(例えば約8.5分)ウインドウ上で計算され得る。図4を参照して、流れ図400は、クロススペクトルパワーおよびコヒーレンスを計算するための、本発明の実施形態の一般的な動作の流れを表す。さらに詳細には、流れ図400は、2つのデータシリーズのクロススペクトルパワーおよびコヒーレンスを計算するためにFFTを使用する制御流れの例を示す。
【0050】
流れ図400の制御流れは、ステップ401から始まり、直接ステップ403に向かう。ステップ403において、データのウインドウは選択される。
【0051】
ステップ406において、FFTは、選択されたウインドウ内において実行される。3つのFFTが、選択されたウインドウ内において実行され得る。第1のFFTが、選択されたウインドウの最初で、第2の変換が中央で、そして最後の変換が最後で実行される。各FFTに対して、周波数ビンのサイズは、512データポイントである。ウインドウ内増分は、第1、第2および第3FFTに対して256ポイントである。従って、サブウインドウは、50パーセントだけ重複する。
【0052】
ステップ409において、FFT計算の個々の結果は、組み合わされて平均が取られ、クロススペクトルパワーとコヒーレンス値を決定する。換言すれば、各1,024ウインドウに対して、3つのFFT計算は、組み合わされて平均が取られ、データのウインドウに対するクロススペクトルパワーとコヒーレンスを決定する。
【0053】
ステップ412において、追加的なデータが、さらなるFFT計算のために入手可能かどうかが決定される。追加的なデータが入手可能である場合、ステップ415において、データの次のウインドウが選択され、制御流れがステップ406に戻り、選択された1,024コヒーレンスウインドウ内の3つの重複する512サンプルサブウインドウに、FFTを適用する。換言すれば、前の1,024ウインドウ(ステップ403で選択された)は、256サンプル(例えば約2.1分)だけ進められ、3つのFFT計算が実行される。
【0054】
NNおよびEDRデータシリーズ全体に対する計算が完成すると、制御流れは、ステップ495において示されたように終了する。
【0055】
上に論議されたように、心肺結合は、SDBおよび睡眠に対するその影響(例えばCAPで費やされた睡眠時間の比率)を検出、または評価するためにも使用され得る。SDBに対して、コヒーレントクロスパワーが、LF帯におけるコヒーレントクロスパワーの、HFにおけるそれに対する割合を計算するために使用される。LF帯におけるコヒーレントクロスパワーの超過は、CAP、周期的な呼吸、およびEEG CAPと関連付けられる。検出閾値は、最小LFパワーに対しては0.2、最小LF/HF割合に対しては50であり得る。
【0056】
本発明の実施形態に従って、図6は、22歳の健康な成人女性の心肺結合分析を例示する。詳細には、図6は、22歳の被験者に対する、睡眠ステージ、デルタパワー、CAPステージ、低周波数対高周波数コヒーレントクロスパワーの割合、および心肺結合スペクトル写真それぞれを分析する5つのパネル602〜610を含む。パネル602〜610に対する横座標は、時間で区分された時間を表す。パネル602、606、および608の縦座標に沿って、表記「W」は、覚醒ステージで費やされた時間を表し、「R」は、REM睡眠で費やされた時間を表し、「C」は、CAPステージで費やされた時間を表し、かつ「NC」は、非CAPステージで費やされた時間を表す。図6に例示された調査を通して、被験者の体位は仰向けであった。
【0057】
パネル610は、7時間の睡眠にわたる心肺結合スペクトル写真を示し、各周波数でのコヒーレントクロスパワーの大きさは、ピークの高さによって示されている。睡眠スペクトル写真は、スペクトル写真のピークの2つの明瞭な帯によって表された、高周波数と低周波数結合状態の間での自然な切り替わりを明らかにしている。
【0058】
パワー割合に対する適切な閾値を使用して(上記のように)、睡眠実証非CAP、CAP、および覚醒/REM状態が、心肺結合スペクトル写真(パネル610)から識別され得る。パネル602は、30秒エポックで採点された通常の睡眠ステージを示す。睡眠ステージは、30秒エポックで採点され、ECG派生コヒーレントクロスパワーは、2.1分毎に計算される。30秒直線補間が、各採点エポックに対応するスペクトルパワーを計算するために使用される。
【0059】
CAP採点(非CAP、CAP、および覚醒/REM状態を区別するための)は、パネル604〜608を参照して説明され得る。例えば、パネル606におけるCAP採点は、睡眠ポリグラフ採点(例えばパネル602)から独立して決定される。CAPの採点に対する標準的なエポック継続時間は通常、60秒である。状態検出を向上させるために採点は修正され、30秒エポックで睡眠ポリグラフスクリーンを観察し、かつ各エポックをCAPまたは非CAPとして指定することによる30秒指定を可能にする。指定に関して曖昧さまたは難しさがある場合は、エポック継続時間は、60秒に変えられ、状態決定をし得る。
【0060】
CAPシーケンスは、少なくとも2つの連続周期を含み、各CAP周期は、2つのコンポーネント、段階Aおよび段階Bを含む。段階Aは、EEG過渡状態を含み、段階Bは、2つの連続したA段階を分離するデルタ/シータ作用の間隔として定義される。各段階の継続時間は、2〜60秒に及ぶ。機能的に、CAPは、より高い覚醒レベル(段階A)とより低いレベル(段階B)との間を交互する睡眠不安定の状態である。重度の睡眠障害呼吸を有する被験者は、低周波数結合およびCAPで費やされた睡眠時間の比率の増加を有し(例えば非CAPを犠牲にして、80%より大きい)、無呼吸、呼吸低下、および流れ制限がB段階中に通常生じる。
【0061】
段階A特性は、ステージI睡眠において、断続的なアルファリズム、および頂点シャープウエーブのシーケンスを含む。段階Aは、アルファおよびベータリズムを有するかまたは有しない、2つ以上のK−複合波のシーケンスを有することによっても特徴付けられる。段階Aは、バックグランド作用と比較して少なくとも三分の一の振幅の相違を示すデルタバーストを含む。スローウエーブスリープ、筋緊張の一時的な向上または筋電図記録作用の出現、身体の動き、体位の変化、および心拍数の加速で生じるとき、減少した振幅、スリープスピンドルの消失およびデルタ作用を有するEEG周波数の増加によって特徴付けられる、ステージIおよびIIにおけるまたはステージIIIおよびIVの終わりでの微小覚醒の過渡的差動段階も、段階Aは含む。
【0062】
より速い形態とよりゆっくりとした形態との比率に基づいて、A段階のさらなる分離がある。例えば、A1 CAPは、ステージIにおけるアルファリズム、ステージIIにおけるK−複合波、ならびにステージIIIおよびIVにおけるデルタバーストを含む、同期させられたEEGパターンによって支配される。A2 CAPは、同期と非同期の両方の証拠を有するが、EEG非同期の量は、A段階継続時間総計の三分の二を超過しない。A2 CAPの特徴は、アルファおよびベータ作用を有するK−複合波、Kアルファ、およびスローウェーブ同期を有する微小覚醒を含む。A3 CAPは、圧倒的に、EEG非同期(例えば段階Aの継続時間の三分の二よりも大きい)、ならびに筋緊張の強力な作動および心肺機能に関するパラメータと結合された覚醒および微小覚醒を示す。
【0063】
A1 CAPはまれであり、普通は生理学的であり、特に、デルタ睡眠への出入の移行中、およびREM睡眠期間の前の短い時間に見られる。A2 CAPおよびA3 CAPはしばしば病的であり、睡眠中断状態と関連付けられる。
【0064】
図6に戻って参照すると、パネル604は、C4−A1 EEG合成写真(μV2)からの秒ごとのデルタパワーを示す。パネル606は、睡眠状態非CAP、CAP、覚醒、およびREMに対するEEGに基づく手動CAP採点を示す。パネル606のCAP採点は、パネル602の典型的な睡眠ステージと共にグラフで表され、直接的な可視的比較を可能にする。CAP検出(パネル608)は、非CAPエポックごとの検出に対して最大の感応性および特異性を与えるパワー閾値を使用することによって、最初に非CAPを検出することによって実行され得る。詳細には、所与の最小高周波数パワーおよび設定値よりも低い低対高割合が必要とされる。エポックが非CAPとして検出されない場合、CAP検出基準が、エポックごとの検出に対して最大の感応性および特異性を与える閾値を使用することによって適用される。ここで、所与の最小低周波数パワーおよび設定値より高い低対高割合が必要である。最後に、エポックが非CAPとしてもCAPとしても検出されない場合、覚醒/REMが、そのエポックごとの検出に対して最大の感応性および特異性を与える閾値を使用することによって検出される。この検出に対して、最小の超低周波数パワー、ならびに超低周波数の、低周波数および高周波数のパワーの組み合わせに対する最小の割合が必要である。平均して、エポックの小さなパーセンテージ(約4%)は、非CAP、CAPまたは覚醒/REMとして検出可能ではなく、「その他」として分類され得る。
【0065】
パネル608は、睡眠状態を検出するために使用される低周波数(0.01〜0.1Hz)対高周波数(0.1〜0.4Hz)コヒーレントクロスパワーの割合(低/高割合)を示す。非CAP、CAP、および組み合わされた覚醒/REMの3つの睡眠状態の各々に対して、分離したレシーバ−オペレータ曲線が、パワー割合閾値の範囲で計算され、その状態に対して最大の組み合わされた感応性および特異性を与える閾値が、その状態を検出するために最適として選択された。睡眠期間の第2の半期間には、非CAP睡眠と相互関連する増加したデルタパワーおよび高周波数結合の周期が継続的に生じる。
【0066】
図7は、56歳の健康な女性の心肺結合分析を例示する。パネル702〜710は、図6のパネル602〜610と比較可能であり、睡眠スペクトル写真がパネル710に記述されている。被験者の体位は、図7に例示された検査を通して仰向けであった。
【0067】
パネル704は、デルタパワーにおける予期される年齢関連の減少、および採点されたスローウエーブスリープを示す。より若い個人に対するこの衰退にもかかわらず、睡眠期間にわたる心肺結合プロフィール(パネル704〜710によって示されるような)は、CAPおよび非CAPそれぞれでたどる低周波数と高周波数結合状態との間での同じタイプの切り替わりパターンを保持する。
【0068】
図6および図7に示されるように、図6および図7からの両被験者は、体位、年齢、従来の睡眠ステージング、およびデルタパワーから独立して生じる低周波数と高周波数との間の結合状況の自然な推移を実証する。これらの際立つ状態は、特徴的かつ予期可能なEEG、呼吸、および心拍数変異シグネチャ(signature)を有し、標準的な睡眠ステージングから独立して生じるが、CAP採点と相互に関連する。
【0069】
心肺結合は、前記睡眠の質、SDBなどの生理学的な影響を評価するためにも使用され得る。心肺結合は、前記睡眠の質、SDBなどの処置への様々なアプローチの治療的効果をモニタするためにも使用され得る。ここで、上記のように、本発明は、例えばSDBのECGパラメータに対する機械的および自動的効果の使用を組み合わせる。
【0070】
心肺結合で評価され得る睡眠の生理の補完的な範囲は、閉塞性が優勢である疾患を非閉塞性が優勢である疾患から区別することである。この情報は、低周波数心肺結合から取得されたスペクトルのピークのスペクトル分散および数から抽出され得る。これは、図8および図9を参照して説明され得、これらの両方ともが、心肺結合のスペクトル写真を例示する。図8は、中枢性の無呼吸を診断するためのスペクトル写真800を例示する。図9は、閉塞性の無呼吸を診断するためのスペクトル写真900を例示する。
【0071】
閉塞性の疾患に対しては(図9に示されるように)、上部気道の機構が、呼吸イベントの正確なタイミングを可能にせず、結果として複数のスペクトルのピーク、広い結合スペクトル、または両方を生じる。非閉塞性の疾患に対しては(図8に示されるように)、呼吸制御の振動は、普通狭いスペクトル分散を有する単一の優勢な振動数を生じる。混合疾患を有する患者において1つの病理生理に主として的を合わせた処置は、他のパターンが優勢となる変換を生じることが予期され得、そのような動態は、心肺結合評価によって取得され得る。
【0072】
図10は、閉塞性の睡眠障害呼吸を有する56歳の男性において、ECGに基づく心肺結合技術を使用して、安定した睡眠、および不安定な睡眠を検出する例を提供する。被験者の体位は、図10において例示された検査を通して仰向けであった。
【0073】
パネル1002−1010は、図6を参照して上に記述されたパネル602〜610と比較可能である。パネル1002は、従来の睡眠ステージングを示し、パネル1006は、CAPステージングを示し、パネル1008は、低(Lo)対高(Hi)周波数結合割合を示す。パネル1010は、心肺結合スペクトル写真を示す。
【0074】
手動で採点された不安定な(すなわちCAP)睡眠および安定した(すなわち非CAP)睡眠と相互に関連する低周波数結合および高周波数結合の交互する期間は、図10において容易に見られる。継続的な正の気道圧(CPAP)治療は、時間「4」から前方に適用され、生理学的挙動において明瞭な変化を生じ、非CAPおよび高周波数結合の目だった増加がある。治療の開始の前に「覚醒」と採点された期間のほとんどは、実際は重度の睡眠無呼吸である。ほぼ「3:00:00」の覚醒中に観察された高周波数結合は、「2:55:00」から「3:15:00」にかけての信号ドロップアウトが原因である。
【0075】
図11は、正の気道圧によって処置された睡眠障害呼吸のスペクトル写真の表現の例を提供する。フレーム1100Aは、正の気道圧(PAP)のみでの間、低周波数(0.01〜0.1Hz)心肺結合(矢印1112)と関連する持続的な周期的呼吸および優勢なCAP生理学を示す。通気のない口と鼻のマスクおよび追加的な配管を使用して、100ミリリットルのデッドスペース(dead space)をPAPに追加すると、高周波数(0.01〜0.4Hz)心肺結合を有する非CAP作用(矢印1114)の出現によって証明される心肺機能に関する制御の目だった向上を生じることを、フレーム1100Bは示す。
【0076】
パネル1102A〜Bは、従来の睡眠ステージを示し、パネル1104A〜Bは、30秒平均EEGデルタパワー(μV2)を示す。パネル1108A〜Bは、ECG派生心肺結合方法を使用して取得されたCAPおよび非CAP睡眠状態を示す。パネル1110A〜Bのスペクトル写真は、図11に例示された検査の過程にわたって、各周波数での心肺結合の大きさを示す。スペクトルの下の黒い三角形は、個々の周期的呼吸イベントを示す。これらのイベントは、覚醒された(CAP)睡眠と関連する病理学的な、持続された低周波数心肺結合と相互に関連する。
【0077】
こうして、SDBの成功した処置は、組み合わされた診察的および治療的(「裂けた」夜)検査(図10参照)からの上記例において見られるように、低周波数結合から高周波数結合への切り替えと関連付けられる。図11のフレーム1100Aを参照して、低周波数結合は、うっ血性の心不全を有する患者における正の気道圧プラス酸素治療にもかかわらず、継続する。生理学的デッドスペースを正の気道圧治療に追加するための技術の適用は、高周波数結合および非CAP EEGの出現を生じる(図11のフレーム1100Bを参照)。
【0078】
従って、本発明に従って測定されるように、睡眠中の心肺結合は、健康および疾患における動的な変化を示し、これは、高周波数結合と低周波数結合との間の自発的かつ比較的突然な推移の状況として明瞭である。安定した(高周波数結合)睡眠と不安定な(低周波数結合)睡眠の2つの状態の間での重複の欠如は、驚きである(図6〜図11参照)。安定した睡眠は、呼吸異常の非存在(または進行性の流れ制限の非存在)、および非CAP EEGの存在によって特徴付けられる。逆に、不安定な睡眠は、進行性の流れ制限、覚醒、回復呼吸、およびCAP−EEGのシーケンスによって特徴付けられる。睡眠時無呼吸における生理学的に不安定な睡眠中、異常な呼吸周期によって誘発される再発性の覚醒は、低周波数スペクトル(0.01〜0.1Hz)範囲において心拍数とECG派生呼吸信号との結合を一貫して生成し、20〜100秒の通常の呼吸イベント周期時間を取得することが、発明者によって観察された。重度のSDBを有するREM睡眠は、CAPと同一の生理学的信号特性を有する。これに反して、安定した呼吸の期間は、非CAP EEGパターン、および呼吸と鼓動−鼓動心拍数変異(生理的呼吸洞性不整脈)との間の高周波数(0.1〜0.4Hz)結合と関連付けられ、1分間当たり8〜16呼吸の普通の大人の呼吸速度を反映する。この安定した呼吸動態は、従来採点されたデルタ睡眠またはデルタパワーから独立している。
【0079】
上記の2つ状態は、SDB独特のものではなく、健康な被験者にも存在する。増加したデルタパワーまたは従来ステージのスローウエーブスリープは普通、非CAP状態と関連付けられるが、臨床的に大人に見られる非CAP睡眠の大半は、ステージIIにおいて生じるので、この関連付けは必要とされない。EEGパワーと心拍数変異動態との相互関係は、前に記述され、増加するデルタパワーと減少する心拍数変異との間には明瞭な関連があった。しかし、EEG形態は、個人ごとに有意に変化し、薬物治療効果は、CAPおよび非CAPを正確に採点する難しさを増加させる、さらなる変化を導入し得る。本発明に従って決定されるように、ECGに基づく心肺結合は、EEG形態、標準的なステージング、またはCAP複合波のA段階の正確な形態から完全に独立した自動化された方法で計算される。EEGが薬物(例えばベンゾジアゼピン)または疾患(例えば痴呆)によって変えられるとき、この考慮は特に重要である。低いデルタパワーを有する被験者における非CAP挙動の存在は(例えばより年取った個人、図7)、デルタパワープロセスが、睡眠安定化メカニズムのより一般的なプロセスのただ1つのコンポーネントを反映することを暗示する。
【0080】
CAPは、睡眠中断刺激の範囲によって誘発され、非CAPは、睡眠安定のマーカであるので、相関的なECGに基づく心肺結合測定は、非侵襲性の、安価な、かつ容易に繰り返し可能な技術を使用する広い範囲の設定において有用性を有し得る。これらは、1)高い危険性のある人口におけるSDBに対する診断上の選別を容易にし、疾患の重さをたどり、処置に対するコンプライアンスに従い、そして処置効果を評価すること、2)例えば初期の不眠症、うつ病、および線維性筋肉痛におけるように、本質的に異常な睡眠および非REM睡眠のパーセンテージとしての増加したCAPを有すると知られている障害における睡眠の質を評価すること、そして3)不利な環境の中で、例えば微小重力、潜水艦の中、戦闘中、睡眠中における環境的ノイズの影響の評価中に睡眠の質をたどること、を含む。
【0081】
ECGに基づく心肺結合測定は、睡眠ステージまたは呼吸イベント検出器ではないが、この技術は、睡眠中に心肺結合の動的な測定を提供する。従って、視覚的に採点された睡眠状態との緊密な相互関係は期待されない。なぜならば、1)時間スケールが異なり、2)覚醒から睡眠および非REMからREM睡眠への移行境界、ならびにCAPから非CAPへの切り替わりの期間中においては、CAPと非CAPとの視覚的基準は適用が難しく、かつ不正確である可能性があり、3)著しく中断されたREM睡眠は、低周波数結合CAPタイプ特徴を帯び、そして4)重度の非REM睡眠時無呼吸は、標準的な基準によっては覚醒と採点されるが、本発明によっては低周波数範囲におけるパワーの超過として検出されるエポックにおいて生じ得るからである。これらの制限にもかかわらず、ECGに基づくCAP検出器の信頼度(すなわち0.75よりも大きいカッパ(kappa))は、最近の研究における広範囲な研修の後、優秀なスコアラ(scorer)間信頼度(すなわち0.80よりも大きい)と考えられたものと有利に比較される。しかし、上記の心肺結合検出の技術は、「CAPスコアラ」としてではなく、睡眠生理の継続的な動的推定量として最も適切に適用されることが強調されるべきである。
【0082】
概括すると、本発明は、単一または二重のリードECGから唯一引き出される分光写真の技術を含み、単一または二重のリードECGは、睡眠中に心肺結合の変化を動的にたどる。自然な移行が、健康と疾患の両方において、睡眠中に、高周波数(HF)と低周波数(LF)との心肺結合モードの間で観察される。これらの2つのECG派生状態は、きわめて特徴的、かつ予測可能なEEG、呼吸、および心拍数シグネチャを有し、HFおよびLF状態は、CAP/非CAP採点それぞれと相互に関係する。健康的な被験者は、高周波数結合の優勢を示し、一方、処置されていないSDBを有する被験者は、低周波数結合の優勢を示す。
【0083】
従って、ECGは、心肺相互作用に関して「隠された」情報を含む。ECG派生呼吸(EDR)信号に基づいて、鼓動−鼓動心拍数変異の分析と呼吸−呼吸動態とを組み合わせるフーリエ技術は、この情報を抽出し、心肺結合のスペクトル写真を生成する。臨床的使用に対するその可能性のほかに、結果は、従来の睡眠採点システムを補完し得る、「安定領域」における睡眠ステージングおよび類別の再考をも促す。
【0084】
図1〜図4および図6〜図11は、本発明の説明を可能にする概念的な例示である。本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせにおいて実装され得ることは理解されるべきである。そのような実施形態において、様々なコンポーネントおよびステップが、ハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアにおいて実装され、本発明の機能を実行する。つまり、同じピースのハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアのモジュールが、1つ以上の例示されたブロック(すなわちコンポーネントまたはステップ)を実行し得る。
【0085】
本発明は、本明細書に記述された機能性を実行することのできる1つ以上のコンピュータシステムにおいて実装され得る。図5を参照して、本発明を実装する際に有用である例のコンピュータシステム500が示されている。本発明の様々な実施形態が、この例のコンピュータシステム500の観点から記述されている。この記述を読んだ後、他のコンピュータシステムおよび/またはコンピュータアーキテクチャを使用して、本発明をいかに実装するかが、関連技術の当業者に明らかとなる。
【0086】
コンピュータシステム500は、1つ以上のプロセッサ、例えばプロセッサ504を含む。プロセッサ504は、通信インフラストラクチャ506(例えば通信バス、クロスオーババー、またはネットワーク)に接続される。
【0087】
コンピュータシステム500は、ディスプレイユニット530への表示のために、通信インフラストラクチャ506から(または示されていないフレームバッファから)グラフィックス、テキスト、および他のデータを転送するディスプレイインターフェース502を含み得る。
【0088】
コンピュータシステム500は、メインメモリ508、好ましくはアクセスメモリ(RAM)も含み、かつ二次的なメモリ510も含み得る。二次的なメモリ510は、例えば、ハードディスクドライブ512、および/または着脱可能な格納ドライブ514を含み、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光学的ディスクドライブ、その他を表す。着脱可能な格納ドライブ514は、周知の方法で、着脱可能な格納ユニット518から読み取り、かつ/またはこれに書き込む。着脱可能な格納ユニット518は、着脱可能な格納ドライブ514によって読み取られ、かつこれに書き込まれるフロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、光学的ディスク、その他を表す。理解されるように、着脱可能な格納ユニット518は、コンピュータソフトウェア(例えばプログラムまたは他の命令)および/またはデータをその中に格納するコンピュータ使用可能格納媒体を含む。
【0089】
代替の実施形態において、二次的なメモリ510は、コンピュータソフトウェアおよび/またはデータがコンピュータシステム500にロードされることを可能にする他の同様な手段を含み得る。そのような手段は、例えば着脱可能な格納ユニット522およびインターフェース520を含み得る。そのようなものの例は、プログラムカートリッジおよびカートリッジインターフェース、着脱可能なメモリチップ(例えばEPROM、またはPROM)および関連するソケット、ならびにソフトウェアおよびデータが着脱可能な格納ユニット522からコンピュータシステム500へ移転されることを可能にする他の着脱可能な格納ユニット522およびインターフェース520を含み得る。
【0090】
コンピュータシステム500は、通信インターフェース524も含み得る。通信インターフェース524は、ソフトウェアおよびデータがコンピュータシステム500と外部のデバイスとの間で移転されることを可能にする。通信インターフェース524の例は、モデム、ネットワークインターフェース(例えばイーサネット(登録商標)カード)、通信ポート、PCMCIAスロットおよびカード、その他を含み得る。通信インターフェース524を介して移転されたソフトウェアおよびデータは、通信インターフェース524によって受信されることのできる電子的、電磁的、光学的、または他の信号であり得る信号528の形である。これらの信号528は、通信経路(すなわちチャンネル)526を介して通信インターフェース524に提供される。通信経路526は信号528を搬送し、ワイヤまたはケーブル、光ファイバ、電話線、携帯電話リンク、RFリンク、フリースペースオプティクス、および/または他の通信チャンネルを使用して実装され得る。
【0091】
この文書において、用語「コンピュータプログラム媒体」および「コンピュータ使用可能な媒体」は、媒体、例えば着脱可能なユニット518、着脱可能な格納ユニット522、ハードディスクドライブ512にインストールされたハードディスク、および信号528を概略指すために使用される。これらのコンピュータプログラムプロダクトは、ソフトウェアをコンピュータシステム500に提供する手段である。本発明は、そのようなコンピュータプログラムプロダクトに向けられている。
【0092】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御論理またはコンピュータ読取可能プログラムコードとも呼ばれる)は、メインメモリ508および/または二次的なメモリ510に格納される。コンピュータプログラムは、通信インターフェース524を介しても受信され得る。そのようなコンピュータプログラムが、実行されたとき、コンピュータシステム500が、本明細書に論議されたように本発明を実装することを可能にする。特に、コンピュータプログラムは、実行されたとき、プロセッサ504が、本発明のプロセス、例えば上記の方法100、200、300、および400の様々なステップを実装することを可能にする。従って、そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム500のコントローラを表す。
【0093】
本発明が、ソフトウェアを使用して実装される実施形態において、ソフトウェアは、コンピュータプログラムプロダクトに格納され、かつ着脱可能な格納ドライブ514、ハードドライブ512、インターフェース520、または通信インターフェース524を使用してコンピュータシステム500にロードされ得る。制御論理(ソフトウェア)は、プロセッサ504によって実行されたとき、本明細書に記述されたように、プロセッサ504に本発明の機能を実行させる。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、例えば特定用途向け集積回路IC(ASIC)のようなハードウェアコンポーネントを使用して、主にハードウェアで実装される。本明細書に記述された機能を実行するための、ハードウェア状態マシンの実装は、関連技術における当業者には明らかである。
【0095】
さらに別の実施形態において、本発明は、ハードウェアとソフトウェアの両方の組み合わせを使用して実装される。
【0096】
特定の実施形態の前記の記述は、本発明の一般的な性質を非常に完全に明らかにするので、他の者たちは、当該技術内の知識(本明細書に引用され、かつ参考として援用された文書の内容を含む)を適用することによって、過度な実験をせず、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の実施形態を、様々な用途に対して容易に修正、かつ/または適合し得る。従って、本明細書に提示された教示および指針に基づいて、そのような適合および修正は、開示された実施形態の均等物の意味および範囲の範疇内であると意図される。本明細書の語法または用語は、記述のためであり、限定のためではないので、本明細書の用語または語法は、当業者の知識と組み合わせて、本明細書に提示された教示および指針に照らして当業者によって解釈されるべきであることは理解されるべきである。
【0097】
本発明の様々な実施形態が、上に記述されたが、それらは、限定するものとしてではなく、例として提示されたということは理解されるべきである。形式および詳細において様々な変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることは、関連する技術の当業者には明らかである。従って、本発明は、上記の例示的な実施形態のいかなるものによっても限定されるべきではなく、添付された特許請求の範囲およびそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の実施形態による、心肺結合を検出する動作の流れを例示する。
【図2】図2は、本発明の実施形態による、ECG派生呼吸を使用して心肺結合を定量化する動作の流れを例示する。
【図3】図3は、本発明の実施形態による、データ間隔シリーズから異常値を除去する動作の流れを例示する。
【図4】図4は、本発明の実施形態による、クロススペクトルパワーおよびコヒーレンスを計算する動作流れを例示する。
【図5】図5は、本発明の部分を実装するために有用な例のコンピュータシステムを例示する。
【図6】図6は、本発明の実施形態による、22歳の健康な女性の心肺結合分析を例示する。
【図7】図7は、本発明の実施形態による、56歳の健康な女性の心肺結合分析を例示する。
【図8】図8は、本発明の実施形態による、中枢性の無呼吸を診断するための心肺結合のスペクトル写真を例示する。
【図9】図9は、本発明の実施形態による、閉塞性無呼吸を診断するための心肺結合のスペクトル写真を例示する。
【図10】図10は、本発明の実施形態による、閉塞性睡眠障害呼吸を有する56歳の男性において心肺結合を使用して、安定および不安定な睡眠の検出を例示する。
【図11】図11は、本発明の実施形態による、正の気道圧によって処置された睡眠障害呼吸のスペクトル写真の表現を例示する。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は概略、生理学的なデータの分析に関し、さらに詳細には、コヒーレンスおよび/またはクロスパワー(cross−power)測定から睡眠病理学および生理学を非侵襲的に評価することに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
一般的人口の少なくとも5パーセントが、医学的に有意な睡眠障害で苦しみ、最も一般的であるものが、(睡眠時無呼吸としても知られている)睡眠障害呼吸である。主な公衆衛生の関心事として、睡眠障害は、過度な日中の眠気、ならびにそれに伴う、運転事故、高血圧症、心臓発作、卒中、うつ病、および注意欠如障害の危険性を助長する。睡眠障害の罹患率は、選択人口、例えば肥満、うっ血性の心不全、糖尿病、および腎不全を有する個人においてはさらに高い(30パーセントを超過する)。
【0003】
睡眠障害を検出する従来の診断システムは通常、睡眠に関する研究室における複雑な複数のチャンネルの読み取りおよび労働集約的な採点を含み、これらは、全体として相当な出費および患者の不快につながる。従来の睡眠診断システムの一例は、全睡眠ポリグラフである。睡眠ポリグラフ計は、睡眠障害呼吸の検出および数量化に対する貴重な標準であり、睡眠ステージング(staging)、呼吸異常(例えば無呼吸、呼吸低下、流量制限、周期的な呼吸、および脱飽和症状)の採点、ならびに四肢の動きを含む。睡眠障害の重さの通常のマーカ(marker)は、睡眠断片化指数、無呼吸−呼吸低下指数、呼吸妨害指数、覚醒頻度または指数、および酸素脱飽和指数である。
【0004】
従来の睡眠診断システムの多くの制限のうちの一つは、生理学的に恣意的な基準に基づいて「イベント」を退屈な手作業によって採点することへの依存である。これらのイベントと認知的かつ心臓脈管に関する結果との間には、普通の相互関係のみが見出され得る。従って、従来のシステムは、かなりの量の説明されない変動を事実上残し、睡眠障害による生理学的な影響を十分には説明し得ていない。従って、睡眠障害の睡眠生理に対する影響を評価する量的測定が、説明されていない変動のうちのいくらかを解明する際に有用である。処置効果を追跡するためには、生理学的状態の継続的なバイオマーカ(biomarker)が、特に有用であり得る。継続的なバイオマーカは、表面上微妙な睡眠障害疾患が生理学的には分裂的であるような人たちを見分けるためにも有用であり得る。そのような生理学的に分裂的な設定は、一次性のいびきを含み、一次性のいびきは、大人においては、過度な眠気と関連付けられ、子供においては、注意不足および/かつ活動過多の挙動と関連付けられる。
【0005】
現在、気流、呼吸努力、心電図(ECG)、および酸素測定の様々な組み合わせを含む限定された形態の睡眠試験の開発にもかかわらず、睡眠診断の迅速かつ正確なスループットは存在しない。このことは、重度かつ複雑な形態の睡眠時無呼吸が、死亡率と罹患率の両方に悪い影響を与え得るうっ血性の心不全および慢性の腎不全のような状態において特に問題である。従来の睡眠研究は非常に費用がかさむので、睡眠効果に関する情報は、神経学的および精神医学的診療において使用される薬物の承認前の評価においては、通常制限されている。
【0006】
睡眠障害呼吸における評価の補完的な範囲は、閉塞性疾患を非閉塞性疾患から区別することである。非閉塞性疾患の極端な形態は、標準的な睡眠研究(例えば中枢性の睡眠時無呼吸症候群およびチェーン−ストークス型呼吸)によって容易に識別される一方で、あらゆる度合いの生理学的異常の混合が、臨床的診療において見られ得る。さらに、生理は、体位、夜の時間効果、および睡眠ステージ効果に基づいて同じ夜の内に変化し得る。自然に生じるかまたは処置によって誘発される、閉塞性病理生理から中枢性の病理生理への生理学的切り替わりをたどる方法は、実用的な効用を有し得る。なぜならばこれら2つの状態に対する処置は異なるからである。
【0007】
閉塞性疾患は正の気道圧に対してよく応答し、一方、非閉塞性疾患はそのような治療に対してうまく応答せず、実際、空気圧によって実際より悪く見えることがあり得る。特定の病状を有する個人は、うっ血性心不全、慢性的腎不全、および卒中後の睡眠時無呼吸症候群を含むが、これらに限定されない混合生理的障害に対して危険性が高い。診断のレベルで疾患の病理生理学を評価する簡単な方法は、臨床的処置アプローチを修正することを可能にし、それによって中枢性の機能障害を向上させる治療が、過程においてより早く開始され得る。
【0008】
閉塞性の疾患は、(気道をサポートする)機械的な治療に応答し、非閉塞性疾患は(例えば、しかし限定されず酸素または二酸化炭素の吸入のような)制御特定アプローチに対して応答するので、これら2つのタイプの生理学的な異常は、治療結果の予後(治療の成否の予測)も可能にし得る。
【0009】
従って、睡眠を中断させる様々な刺激(例えば騒音、痛み、薬物、気分障害、障害のある呼吸)の存在、および睡眠状態の生理および安定性に対する影響を簡単に、安価に、繰り返し測定することを提供する技術を開発するニーズが存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(本発明の概要)
本発明は、睡眠の生理および病理を検出かつ評価する2つの生理学的信号の間の心肺結合の定量分析を実行する方法、システム、ならびにコンピュータプログラムプロダクトを提供する。本発明の実施形態に従って、R−R間隔シリーズが、対応する呼吸信号と組み合わされ、これら2つの信号のコヒーレントクロスパワーを決定する。コヒーレントクロスパワーは、心肺結合の測定を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書に取り入れられ、本明細書の一部分を形成する添付された図面は、本発明を例示し、記述と共に、本発明の原理を説明しかつ関連技術の当業者が本発明を作りかつ使用することを可能にするためにさらに役立つ。図面においては一般的に、同様な参照番号は、同一かもしくは機能的にまたは構造的に類似した要素を指す。さらに、一般的に、参照番号の最も左の数字で、該参照番号が最初に現れる図面が識別される。
【0012】
(本発明の詳細な記述)
本発明の実施形態に従って、睡眠の生理を検出しかつ評価する2つの生理学的な信号の間の心肺結合の定量分析を実行するために、方法、システム、およびコンピュータプログラムプロダクトが提供される。
【0013】
この明細書は、この発明の特徴を取入れる1つ以上の実施形態を開示する。記述された実施形態、および「一実施形態」、「1つの実施形態」、「例の実施形態」、その他への本明細書中での言及は、記述された実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、必ずしもすべての実施形態が該特定の特徴、構造、または特性を含み得るわけではないことを示す。さらに、そのような語句は必ずしも同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、1つの実施形態との関連で記述されるとき、そのような特徴、構造、または特性を他の実施形態との関連でもたらすことは、たとえ明確に述べられていないとしても、当業者の知識の範疇内であることは、当然のこととされる。
【0014】
睡眠は、周期的なステージ(すなわち急速眼球運動(REM)睡眠および非REM睡眠)、ならびに一連の前進的および退行的深さ(すなわち非REM睡眠におけるステージI〜IV)によって特徴付けられる複雑な状態である。非REM睡眠における周期的な交互パターン(CAP)の概念に基づいて認識されているが、臨床的な診療においては一般的に適用されていない安定範囲も存在する。CAPタイプ非REM睡眠は不安定であり、一方、非CAP非REM睡眠は安静であり、安定化の影響による非覚醒状態である。
【0015】
睡眠のステージおよび状態の分布は、睡眠を中断させる多くの外部的要因(例えば騒音、暑さ、寒さ、振動、気圧障害、動き、重力によるストレス、その他)、ならびに内部的な要因(例えば障害のある呼吸、痛み、発作、落ち着きのない脚、周期的な四肢および関連する運動、その他)によって変化し得る。さらに重要なことは、これらの要素はすべて、複数の測定(例えば脳の電気的作用、心拍数、呼吸、および血圧)における周期的な挙動によって特徴付けられる状態、CAPを誘発する。非CAP状態においては、生理学的な安定が存在する。
【0016】
睡眠障害呼吸(SDB)は、複数の生理的なシステム、例えば呼吸、心拍数、および脳波記録装置(EEG)作用における比較的低い周波数(すなわち0.01〜0.1ヘルツ(Hz))の周期的挙動の出現と関連付けられる。これらの病理学的な振動は、生理学的に不安定な睡眠挙動の周期、および呼吸駆動ECG変異の低周波数結合を表す。この状態において、EEGパターンは通常、CAP属性を表示する。
【0017】
それに反して、安定した呼吸の周期は、非CAP EEGパターン、および呼吸と鼓動−鼓動心拍数変異(例えば呼吸洞性不整脈)との間の高周波数(すなわち0.1〜0.4Hz)結合と関連している。SDBを有する患者において、自然かつ比較的突発な移行が、これら2つの状態の間で生じる傾向がある。
【0018】
以下により詳細に記述されているように、本発明は、CAPと非CAP状態との強い相互関係を示す心肺結合を定量化する技術および/または方法論を提供する。従って、本発明は、睡眠生理学および病理学のバイオマーカ、例えば不安定な睡眠挙動の期間に費やされた睡眠のパーセンテージを提供する。
【0019】
図1を参照して、流れ図100は、本発明の実施形態の一般的な動作の流れ図を表す。さらに詳細には、流れ図100は、被験者(例えば、患者、試験/実験室被験者など)から心肺結合を検出する制御流れの例を示す。
【0020】
流れ図100の制御流れは、ステップ101から始まり、直接ステップ103に向かう。ステップ103では、一組の間隔呼吸データ(本明細書中においては「呼吸シリーズ」と称される)が、生理学的な信号からアクセスされる。生理学的信号は、心電図(ECGまたはEKG)であり得、以下にさらに詳細に記述されるように、代理呼吸信号がそれから獲得される。しかし、生理学的な信号は、被験者における呼吸動態を表す任意のタイプの信号であり得る。従って、呼吸データシリーズは、例えば鼻サーミスタ、強制発振、音響反射技術、鼻カニューレ圧力トランスデューサシステム、インピーダンス/インダクタンス/圧力胸部および/または腹部エフォートバンド(effort band)などから引き出され得る。
【0021】
ステップ106において、間隔心拍数データのセット(本明細書中においては「R−R間隔シリーズ」と称される)は、生理学的信号からアクセスされる。1つの実施形態において、心拍数生理学的信号は、ステップ103において上に記述された呼吸間隔信号を提供する同じ生理学的な信号である。別の実施形態において、心拍数生理学的信号は、呼吸信号を提供する生理学的信号とは異なる。さらに、心拍数生理学的信号は、呼吸信号を提供する生理学的信号と同じタイプの信号(例えば両方ともECG)か、または異なるタイプの信号(例えば心拍数間隔シリーズに対してはECG、呼吸シリーズに対しては鼻カニューレ圧力トランスデューサ鼻サーミスタ流れ)であり得る。
【0022】
従って、心拍数生理学的信号は、心拍数間隔データ(すなわちR−R間隔またはR−R等価間隔)のシリーズの派生を可能にする任意のタイプの信号である。従って、心拍数生理学的信号は、被験者において心拍数動態を表す任意のタイプの信号であり得る。そのような信号は、例えばECG、血圧、パルスドップラー流れ(例えば超音波記録を介して検知された)、別の電気的信号(例えばEEG)からのECG信号などから引き出され得る。
【0023】
それらの源にかかわらず、心拍数間隔シリーズおよび呼吸シリーズは一時的に整列させられ、心肺結合を決定しなければならない。1つの実施形態において、正常な洞性(N)鼓動は、心拍数間隔シリーズから選択され、正常−正常(NN)心拍数データのシリーズ(本明細書中においては、「NN間隔シリーズ」と称される)を生み出す。従って、呼吸シリーズは、NN間隔シリーズと一時的に整列させられる。
【0024】
ステップ109において、クロススペクトルパワーおよびコヒーレンスが、心拍数間隔シリーズ(またはNN間隔シリーズ)と呼吸シリーズの両方を使用して、計算される。ステップ112において、コヒーレンスとクロススペクトルパワーの計算結果の積が、一組のコヒーレントクロスパワー計算結果を導くために取られる。ステップ115において、コヒーレントクロスパワー計算が、心肺結合を決定するために使用される。以下により詳細に記述されるように、心肺結合は、診断的評価、例えばSDBスクリーニングなどに対する1つ以上の検出閾値と比較され得る。後に、制御流れが、ステップ195において示されるように終わる。従って、本発明は、例えばSDBをスクリーニングするために、SDBの生理学的な影響を評価するために、および/またはSDBを処置する様々なアプローチの治療効果をモニタするためなどに使用され得る、心肺結合の完全に自動化された定量分析を提供する。
【0025】
図2を参照して、流れ図200は、本発明の別の実施形態の一般的な動作の流れを表す。さらに詳細には、流れ図200は、ECG派生呼吸(EDR)を使用することによって心肺結合の量を定め、呼吸と関連する心電軸においてR−R変異および変動を統合する制御流れの例を示す。
【0026】
流れ図200の制御流れは、ステップ201から始まり、ステップ203に直接向かう。ステップ203において、ECG信号またはECGデータのセットが評価される。1つの実施形態において、表面ECGデータは、格納媒体から検索される。別の実施形態において、表面ECGデータは、ECGモニタリングデバイスから直接的に取得される。例えば、ECGデータは、リアルタイムにまたは別の方法で、またはGE Marquette Medical Systems (Milwaukee、WI)もしくは他の出所から入手可能であるようなECGモニタからのホルターモニタまたは記録から取得され得る。
【0027】
単一のまたは2つのリードECG信号が、ECGモニタリングデバイスから直接的に取得される。1つのリードを使用する場合、皮膚センサまたは電極は、V2胸位置に、またはこの近くに置かれるべきである。2つのリードを使用する場合は、好ましくは電極を互いに比較的直交させて配置する。しかし、他の胸位置が、単一のまたは2つのリードECGデータを取得するために使用され得る。
【0028】
ステップ206において、ECGデータが、正常(N)または位置異常としてECGデータから心拍数(すなわち、R−R間隔)を検出し、かつ分類するために分析される。自動化された鼓動検出およびアノテーション(annotation)ルーチンまたは機能が、ホルター記録からのデジタル化されたECGデータを処理するために使用される。ルーチンは、デジタル化されたデータから心拍数を検出し、かつ分類する(すなわち明示する)。出力は、アノテーションされた心拍数の時間シリーズ(すなわち「R−R間隔シリーズ」)である。このシリーズは次に、正常−正常洞性鼓動(すなわち「NN間隔シリーズ」)のみを保持するように処理される。
【0029】
ステップ209において、ECGデータは分析され、NN間隔シリーズと関連付けられるQRS振幅変化(すなわち「EDRシリーズ」)の時間シリーズを抽出する。QRS複合波における振幅変化(正常な鼓動からの)は、呼吸の間、電極に対する心電軸における移行が原因である。これらの振幅変化から、代理呼吸信号(すなわちEDR)が引き出される。NN間隔シリーズを抽出するために使用されたのと同じ機能またはルーチンが、心拍数に対するQRS振幅を測定し、かつ継続的なEDR信号を生み出すためにも使用される。
【0030】
ステップ212において、NN間隔シリーズおよび関連するEDRシリーズが分析され、誤った検出または逃した検出を原因とする異常値を検出し、かつ/または除去する。例えば、ステップ206の間、自動化された鼓動検出機能は、誤った検出を生成し得るか、またはNN間隔シリーズに対する正常なデータポイント(従って関連するEDRシリーズ)を検出することができないことがあり得る。図3を参照して以下にさらに詳細に記述されているように、スライディングウインドウ(sliding window)平均フィルタが、異常値を除去するために使用される。
【0031】
ステップ215において、フィルタがかけられたNN間隔シリーズおよびフィルタがかけられたEDRシリーズが再びサンプリングされる。再サンプリング率は、対象の部類に依存し、以下のステップに記述されたスペクトル計算結果に対するデータシリーズを最適化するように選択される。例えば、人である対象に対しては、両シリーズは2Hzで再びサンプリングされる。未熟児または新生児である対象(約1歳に満たない)に対しては、4Hz再サンプリング率が使用される。なぜならば、新生児は通常、大人の心拍数の約2倍である心拍数を有するからである。人ではない対象(例えば実験室のネズミ)に対しては、20Hz再サンプリング率が使用される。
【0032】
ステップ218においては、クロススペクトルパワーおよびコヒーレンスが、再びサンプリングされたNN間隔シリーズと再びサンプリングされたEDRシリーズの両方から選択されたデータの重複するウインドウに対して計算される。高速フーリエ変換が使用され、2つの信号に対するクロススペクトルパワーとコヒーレンスの計算結果を計算する。図4を参照して、以下にさらに詳細に記述されるように、複数の重複するウインドウが使用され、FFT計算を実行する。
【0033】
ステップ221において、「コヒーレントクロスパワー」のデータシリーズが、ステップ218からのコヒーレンスとクロススペクトルパワーの計算結果の積から計算される。各ウインドウに対して、コヒーレンスとクロススペクトルパワーの積が使用され、データの各ウインドウに対してコヒーレントクロスパワーを計算する。
【0034】
コヒーレントクロスパワー計算が、0〜0.01Hzの範囲内に該当する場合、それは超低周波数(VLF)帯内にあるものと考えられる。コヒーレントクロスパワーが、0.01〜0.1Hzの範囲内に該当する場合、それは低周波数(LF)帯内にあるものと考えられる。コヒーレントクロスパワーが、0.1〜0.4Hzの範囲内に該当する場合、それは高周波数(HF)帯内にあるものと考えられる。VLF、LFおよびHF決定をするとき、各帯における1つ以上の周波数ビン(bin)が使用されて計算される。最大のパワーを有する2つのビンが使用される。
【0035】
ステップ224において、「心肺結合」が、コヒーレントクロスパワーから決定される。心肺結合は、様々な診断適用に対する検出閾値と比較され得る。例えば、心肺結合は、睡眠の質、例えばCAP作用、非CAP作用、覚醒および/またはREM作用などを検出または評価するために、予め定義された検出閾値と比較され得る。
【0036】
CAP作用に対して、コヒーレントクロスパワーが使用され、LF帯におけるコヒーレントクロスパワーの、HFにおけるそれに対する割合を計算する。低周波数帯におけるコヒーレントクロスパワーの超過は、EEG(すなわちCAP)における周期的な挙動、および呼吸の周期的なパターンと関連付けられる。検出閾値は、最小LFパワーに対しては0.2であり、最小LF/HF割合に対しては、2.0であり得る。
【0037】
非CAPに対して、コヒーレントクロスパワーが使用され、LF帯におけるコヒーレントクロスパワーの、HFにおけるそれに対する割合を計算する。高周波数帯におけるコヒーレントクロスパワーの超過は、生理学的呼吸洞性非CAP不整脈、安定した非周期的呼吸パターン、および非CAP EEGと関連付けられる。検出閾値は、最小HFパワーに対しては0.02であり、最大LF/HF割合に対しては、1.5であり得る。
【0038】
覚醒および/またはREM作用に対して、VLF帯におけるコヒーレントクロスパワーの、LFおよびHFにおいて組み合わされたパワーに対する割合は、覚醒および/またはREMの検出を可能にする。VLF帯におけるコヒーレントクロスパワーの超過は、覚醒および/またはREMと関連付けられる傾向がある。検出閾値は、最小VLFパワーに対しては0.05であり、最大VLF対(LF+HF)割合に対しては0.2であり得る。有意な睡眠障害呼吸を有する人たちにおいては、REM睡眠は普通、CAP生理学と極めて類似し、しばしばこれとは見分けがつかないコヒーレントクロスパワー特性を有している。
【0039】
心肺結合定量化および分析が完了すると、制御流れは、ステップ295に示されるように終了する。
【0040】
ステップ212を参照して上述されているように、NN間隔シリーズおよびそれらと関連するEDRシリーズは分析され、誤った検出または逃した検出を原因とする異常値を検出かつ/または除去する。図3を参照して、流れ図300は、データシリーズから異常値を除去するための、本発明の実施形態の一般的な動作の流れを表す。さらに詳細には、流れ図300は、異常値をフィルタするためにスライディングウインドウ平均を使用する制御流れの1つの例を示す。
【0041】
流れ図300の制御流れは、ステップ301から始まり、直接ステップ303へ向かう。ステップ303において、生理学的に不可能または実行不可能として決定される、NN間隔シリーズにおけるすべてのデータポイントは、演繹的に除外される。演繹的除外閾値は、対象部類によって異なる。演繹的除外閾値は、0.4秒よりも小さいNN間隔、または2.0秒よりも大きいNN間隔であり得る。
【0042】
ステップ306において、ウインドウサイズは、平均を開始するように設定される。ウインドウサイズは、41データポイントに対して設定され得る。次に、第1のウインドウ(すなわち41データポイントの第1のセット)は、NNシリーズから選択される。
【0043】
ステップ309において、基準ポイントは、ウインドウ内から選択される。例えば、中央(または21)データポイントは、基準ポイントとして選択され得る。
【0044】
ステップ312において、基準ポイントに先行する20ポイント、および基準ポイントの後の20ポイントは平均される。ステップ315において、ステップ312において計算された平均値に基づいて、基準ポイントが、予め定義された閾値に等しいかまたは超過するかどうかが決定される。基準ポイント除外閾値は、20パーセントに設定され得る。
【0045】
ステップ318において、基準ポイントは、それが基準ポイント除外閾値を満足する場合、データシリーズから除外される。例えば、基準ポイント除外閾値が、20パーセントに設定され、基準ポイントが、平均値から20パーセント以上外れる場合、基準ポイントは除外される。
【0046】
ステップ321において、基準ポイントは、それが基準ポイント除外閾値を満足しない場合、データシリーズの中に残る。例えば、基準ポイント除外閾値が20パーセントに設定され、基準ポイントが、平均値の20パーセントよりも少なく外れる場合、基準ポイントは、データセットの中に残る。
【0047】
ステップ324はおいて、データシリーズは、追加的なデータが、処理のために入手可能かどうかを決定するためにチェックされる。追加的なデータが入手可能である場合、ステップ327において、ウインドウは、1つデータポイントを繰り上げられ、制御流れはステップ309に戻り、異常値に対する捜索を繰り返す。そうでない場合、制御流れは、ステップ395において示されるように終了する。
【0048】
上記のパラメータ(すなわち演繹的除外閾値、ウインドウサイズ、基準ポイント除外閾値)は例として提供され、心肺結合の定量化を最適化するために、オペレータによって望み通りに調節され得る。
【0049】
ステップ218を参照して上に記述されたように、クロススペクトルパワーおよびコヒーレンスは、NN間隔シリーズとそれらと関連するEDRシリーズの両方から選択されたデータの重複するウインドウに対して計算される。これら2つの信号のクロススペクトルパワーおよびコヒーレンスは、1,024コヒーレンスウインドウ内の3つの重複する512サンプルサブウインドウに適用されたFFTを使用して、1,024サンプル(例えば約8.5分)ウインドウ上で計算され得る。図4を参照して、流れ図400は、クロススペクトルパワーおよびコヒーレンスを計算するための、本発明の実施形態の一般的な動作の流れを表す。さらに詳細には、流れ図400は、2つのデータシリーズのクロススペクトルパワーおよびコヒーレンスを計算するためにFFTを使用する制御流れの例を示す。
【0050】
流れ図400の制御流れは、ステップ401から始まり、直接ステップ403に向かう。ステップ403において、データのウインドウは選択される。
【0051】
ステップ406において、FFTは、選択されたウインドウ内において実行される。3つのFFTが、選択されたウインドウ内において実行され得る。第1のFFTが、選択されたウインドウの最初で、第2の変換が中央で、そして最後の変換が最後で実行される。各FFTに対して、周波数ビンのサイズは、512データポイントである。ウインドウ内増分は、第1、第2および第3FFTに対して256ポイントである。従って、サブウインドウは、50パーセントだけ重複する。
【0052】
ステップ409において、FFT計算の個々の結果は、組み合わされて平均が取られ、クロススペクトルパワーとコヒーレンス値を決定する。換言すれば、各1,024ウインドウに対して、3つのFFT計算は、組み合わされて平均が取られ、データのウインドウに対するクロススペクトルパワーとコヒーレンスを決定する。
【0053】
ステップ412において、追加的なデータが、さらなるFFT計算のために入手可能かどうかが決定される。追加的なデータが入手可能である場合、ステップ415において、データの次のウインドウが選択され、制御流れがステップ406に戻り、選択された1,024コヒーレンスウインドウ内の3つの重複する512サンプルサブウインドウに、FFTを適用する。換言すれば、前の1,024ウインドウ(ステップ403で選択された)は、256サンプル(例えば約2.1分)だけ進められ、3つのFFT計算が実行される。
【0054】
NNおよびEDRデータシリーズ全体に対する計算が完成すると、制御流れは、ステップ495において示されたように終了する。
【0055】
上に論議されたように、心肺結合は、SDBおよび睡眠に対するその影響(例えばCAPで費やされた睡眠時間の比率)を検出、または評価するためにも使用され得る。SDBに対して、コヒーレントクロスパワーが、LF帯におけるコヒーレントクロスパワーの、HFにおけるそれに対する割合を計算するために使用される。LF帯におけるコヒーレントクロスパワーの超過は、CAP、周期的な呼吸、およびEEG CAPと関連付けられる。検出閾値は、最小LFパワーに対しては0.2、最小LF/HF割合に対しては50であり得る。
【0056】
本発明の実施形態に従って、図6は、22歳の健康な成人女性の心肺結合分析を例示する。詳細には、図6は、22歳の被験者に対する、睡眠ステージ、デルタパワー、CAPステージ、低周波数対高周波数コヒーレントクロスパワーの割合、および心肺結合スペクトル写真それぞれを分析する5つのパネル602〜610を含む。パネル602〜610に対する横座標は、時間で区分された時間を表す。パネル602、606、および608の縦座標に沿って、表記「W」は、覚醒ステージで費やされた時間を表し、「R」は、REM睡眠で費やされた時間を表し、「C」は、CAPステージで費やされた時間を表し、かつ「NC」は、非CAPステージで費やされた時間を表す。図6に例示された調査を通して、被験者の体位は仰向けであった。
【0057】
パネル610は、7時間の睡眠にわたる心肺結合スペクトル写真を示し、各周波数でのコヒーレントクロスパワーの大きさは、ピークの高さによって示されている。睡眠スペクトル写真は、スペクトル写真のピークの2つの明瞭な帯によって表された、高周波数と低周波数結合状態の間での自然な切り替わりを明らかにしている。
【0058】
パワー割合に対する適切な閾値を使用して(上記のように)、睡眠実証非CAP、CAP、および覚醒/REM状態が、心肺結合スペクトル写真(パネル610)から識別され得る。パネル602は、30秒エポックで採点された通常の睡眠ステージを示す。睡眠ステージは、30秒エポックで採点され、ECG派生コヒーレントクロスパワーは、2.1分毎に計算される。30秒直線補間が、各採点エポックに対応するスペクトルパワーを計算するために使用される。
【0059】
CAP採点(非CAP、CAP、および覚醒/REM状態を区別するための)は、パネル604〜608を参照して説明され得る。例えば、パネル606におけるCAP採点は、睡眠ポリグラフ採点(例えばパネル602)から独立して決定される。CAPの採点に対する標準的なエポック継続時間は通常、60秒である。状態検出を向上させるために採点は修正され、30秒エポックで睡眠ポリグラフスクリーンを観察し、かつ各エポックをCAPまたは非CAPとして指定することによる30秒指定を可能にする。指定に関して曖昧さまたは難しさがある場合は、エポック継続時間は、60秒に変えられ、状態決定をし得る。
【0060】
CAPシーケンスは、少なくとも2つの連続周期を含み、各CAP周期は、2つのコンポーネント、段階Aおよび段階Bを含む。段階Aは、EEG過渡状態を含み、段階Bは、2つの連続したA段階を分離するデルタ/シータ作用の間隔として定義される。各段階の継続時間は、2〜60秒に及ぶ。機能的に、CAPは、より高い覚醒レベル(段階A)とより低いレベル(段階B)との間を交互する睡眠不安定の状態である。重度の睡眠障害呼吸を有する被験者は、低周波数結合およびCAPで費やされた睡眠時間の比率の増加を有し(例えば非CAPを犠牲にして、80%より大きい)、無呼吸、呼吸低下、および流れ制限がB段階中に通常生じる。
【0061】
段階A特性は、ステージI睡眠において、断続的なアルファリズム、および頂点シャープウエーブのシーケンスを含む。段階Aは、アルファおよびベータリズムを有するかまたは有しない、2つ以上のK−複合波のシーケンスを有することによっても特徴付けられる。段階Aは、バックグランド作用と比較して少なくとも三分の一の振幅の相違を示すデルタバーストを含む。スローウエーブスリープ、筋緊張の一時的な向上または筋電図記録作用の出現、身体の動き、体位の変化、および心拍数の加速で生じるとき、減少した振幅、スリープスピンドルの消失およびデルタ作用を有するEEG周波数の増加によって特徴付けられる、ステージIおよびIIにおけるまたはステージIIIおよびIVの終わりでの微小覚醒の過渡的差動段階も、段階Aは含む。
【0062】
より速い形態とよりゆっくりとした形態との比率に基づいて、A段階のさらなる分離がある。例えば、A1 CAPは、ステージIにおけるアルファリズム、ステージIIにおけるK−複合波、ならびにステージIIIおよびIVにおけるデルタバーストを含む、同期させられたEEGパターンによって支配される。A2 CAPは、同期と非同期の両方の証拠を有するが、EEG非同期の量は、A段階継続時間総計の三分の二を超過しない。A2 CAPの特徴は、アルファおよびベータ作用を有するK−複合波、Kアルファ、およびスローウェーブ同期を有する微小覚醒を含む。A3 CAPは、圧倒的に、EEG非同期(例えば段階Aの継続時間の三分の二よりも大きい)、ならびに筋緊張の強力な作動および心肺機能に関するパラメータと結合された覚醒および微小覚醒を示す。
【0063】
A1 CAPはまれであり、普通は生理学的であり、特に、デルタ睡眠への出入の移行中、およびREM睡眠期間の前の短い時間に見られる。A2 CAPおよびA3 CAPはしばしば病的であり、睡眠中断状態と関連付けられる。
【0064】
図6に戻って参照すると、パネル604は、C4−A1 EEG合成写真(μV2)からの秒ごとのデルタパワーを示す。パネル606は、睡眠状態非CAP、CAP、覚醒、およびREMに対するEEGに基づく手動CAP採点を示す。パネル606のCAP採点は、パネル602の典型的な睡眠ステージと共にグラフで表され、直接的な可視的比較を可能にする。CAP検出(パネル608)は、非CAPエポックごとの検出に対して最大の感応性および特異性を与えるパワー閾値を使用することによって、最初に非CAPを検出することによって実行され得る。詳細には、所与の最小高周波数パワーおよび設定値よりも低い低対高割合が必要とされる。エポックが非CAPとして検出されない場合、CAP検出基準が、エポックごとの検出に対して最大の感応性および特異性を与える閾値を使用することによって適用される。ここで、所与の最小低周波数パワーおよび設定値より高い低対高割合が必要である。最後に、エポックが非CAPとしてもCAPとしても検出されない場合、覚醒/REMが、そのエポックごとの検出に対して最大の感応性および特異性を与える閾値を使用することによって検出される。この検出に対して、最小の超低周波数パワー、ならびに超低周波数の、低周波数および高周波数のパワーの組み合わせに対する最小の割合が必要である。平均して、エポックの小さなパーセンテージ(約4%)は、非CAP、CAPまたは覚醒/REMとして検出可能ではなく、「その他」として分類され得る。
【0065】
パネル608は、睡眠状態を検出するために使用される低周波数(0.01〜0.1Hz)対高周波数(0.1〜0.4Hz)コヒーレントクロスパワーの割合(低/高割合)を示す。非CAP、CAP、および組み合わされた覚醒/REMの3つの睡眠状態の各々に対して、分離したレシーバ−オペレータ曲線が、パワー割合閾値の範囲で計算され、その状態に対して最大の組み合わされた感応性および特異性を与える閾値が、その状態を検出するために最適として選択された。睡眠期間の第2の半期間には、非CAP睡眠と相互関連する増加したデルタパワーおよび高周波数結合の周期が継続的に生じる。
【0066】
図7は、56歳の健康な女性の心肺結合分析を例示する。パネル702〜710は、図6のパネル602〜610と比較可能であり、睡眠スペクトル写真がパネル710に記述されている。被験者の体位は、図7に例示された検査を通して仰向けであった。
【0067】
パネル704は、デルタパワーにおける予期される年齢関連の減少、および採点されたスローウエーブスリープを示す。より若い個人に対するこの衰退にもかかわらず、睡眠期間にわたる心肺結合プロフィール(パネル704〜710によって示されるような)は、CAPおよび非CAPそれぞれでたどる低周波数と高周波数結合状態との間での同じタイプの切り替わりパターンを保持する。
【0068】
図6および図7に示されるように、図6および図7からの両被験者は、体位、年齢、従来の睡眠ステージング、およびデルタパワーから独立して生じる低周波数と高周波数との間の結合状況の自然な推移を実証する。これらの際立つ状態は、特徴的かつ予期可能なEEG、呼吸、および心拍数変異シグネチャ(signature)を有し、標準的な睡眠ステージングから独立して生じるが、CAP採点と相互に関連する。
【0069】
心肺結合は、前記睡眠の質、SDBなどの生理学的な影響を評価するためにも使用され得る。心肺結合は、前記睡眠の質、SDBなどの処置への様々なアプローチの治療的効果をモニタするためにも使用され得る。ここで、上記のように、本発明は、例えばSDBのECGパラメータに対する機械的および自動的効果の使用を組み合わせる。
【0070】
心肺結合で評価され得る睡眠の生理の補完的な範囲は、閉塞性が優勢である疾患を非閉塞性が優勢である疾患から区別することである。この情報は、低周波数心肺結合から取得されたスペクトルのピークのスペクトル分散および数から抽出され得る。これは、図8および図9を参照して説明され得、これらの両方ともが、心肺結合のスペクトル写真を例示する。図8は、中枢性の無呼吸を診断するためのスペクトル写真800を例示する。図9は、閉塞性の無呼吸を診断するためのスペクトル写真900を例示する。
【0071】
閉塞性の疾患に対しては(図9に示されるように)、上部気道の機構が、呼吸イベントの正確なタイミングを可能にせず、結果として複数のスペクトルのピーク、広い結合スペクトル、または両方を生じる。非閉塞性の疾患に対しては(図8に示されるように)、呼吸制御の振動は、普通狭いスペクトル分散を有する単一の優勢な振動数を生じる。混合疾患を有する患者において1つの病理生理に主として的を合わせた処置は、他のパターンが優勢となる変換を生じることが予期され得、そのような動態は、心肺結合評価によって取得され得る。
【0072】
図10は、閉塞性の睡眠障害呼吸を有する56歳の男性において、ECGに基づく心肺結合技術を使用して、安定した睡眠、および不安定な睡眠を検出する例を提供する。被験者の体位は、図10において例示された検査を通して仰向けであった。
【0073】
パネル1002−1010は、図6を参照して上に記述されたパネル602〜610と比較可能である。パネル1002は、従来の睡眠ステージングを示し、パネル1006は、CAPステージングを示し、パネル1008は、低(Lo)対高(Hi)周波数結合割合を示す。パネル1010は、心肺結合スペクトル写真を示す。
【0074】
手動で採点された不安定な(すなわちCAP)睡眠および安定した(すなわち非CAP)睡眠と相互に関連する低周波数結合および高周波数結合の交互する期間は、図10において容易に見られる。継続的な正の気道圧(CPAP)治療は、時間「4」から前方に適用され、生理学的挙動において明瞭な変化を生じ、非CAPおよび高周波数結合の目だった増加がある。治療の開始の前に「覚醒」と採点された期間のほとんどは、実際は重度の睡眠無呼吸である。ほぼ「3:00:00」の覚醒中に観察された高周波数結合は、「2:55:00」から「3:15:00」にかけての信号ドロップアウトが原因である。
【0075】
図11は、正の気道圧によって処置された睡眠障害呼吸のスペクトル写真の表現の例を提供する。フレーム1100Aは、正の気道圧(PAP)のみでの間、低周波数(0.01〜0.1Hz)心肺結合(矢印1112)と関連する持続的な周期的呼吸および優勢なCAP生理学を示す。通気のない口と鼻のマスクおよび追加的な配管を使用して、100ミリリットルのデッドスペース(dead space)をPAPに追加すると、高周波数(0.01〜0.4Hz)心肺結合を有する非CAP作用(矢印1114)の出現によって証明される心肺機能に関する制御の目だった向上を生じることを、フレーム1100Bは示す。
【0076】
パネル1102A〜Bは、従来の睡眠ステージを示し、パネル1104A〜Bは、30秒平均EEGデルタパワー(μV2)を示す。パネル1108A〜Bは、ECG派生心肺結合方法を使用して取得されたCAPおよび非CAP睡眠状態を示す。パネル1110A〜Bのスペクトル写真は、図11に例示された検査の過程にわたって、各周波数での心肺結合の大きさを示す。スペクトルの下の黒い三角形は、個々の周期的呼吸イベントを示す。これらのイベントは、覚醒された(CAP)睡眠と関連する病理学的な、持続された低周波数心肺結合と相互に関連する。
【0077】
こうして、SDBの成功した処置は、組み合わされた診察的および治療的(「裂けた」夜)検査(図10参照)からの上記例において見られるように、低周波数結合から高周波数結合への切り替えと関連付けられる。図11のフレーム1100Aを参照して、低周波数結合は、うっ血性の心不全を有する患者における正の気道圧プラス酸素治療にもかかわらず、継続する。生理学的デッドスペースを正の気道圧治療に追加するための技術の適用は、高周波数結合および非CAP EEGの出現を生じる(図11のフレーム1100Bを参照)。
【0078】
従って、本発明に従って測定されるように、睡眠中の心肺結合は、健康および疾患における動的な変化を示し、これは、高周波数結合と低周波数結合との間の自発的かつ比較的突然な推移の状況として明瞭である。安定した(高周波数結合)睡眠と不安定な(低周波数結合)睡眠の2つの状態の間での重複の欠如は、驚きである(図6〜図11参照)。安定した睡眠は、呼吸異常の非存在(または進行性の流れ制限の非存在)、および非CAP EEGの存在によって特徴付けられる。逆に、不安定な睡眠は、進行性の流れ制限、覚醒、回復呼吸、およびCAP−EEGのシーケンスによって特徴付けられる。睡眠時無呼吸における生理学的に不安定な睡眠中、異常な呼吸周期によって誘発される再発性の覚醒は、低周波数スペクトル(0.01〜0.1Hz)範囲において心拍数とECG派生呼吸信号との結合を一貫して生成し、20〜100秒の通常の呼吸イベント周期時間を取得することが、発明者によって観察された。重度のSDBを有するREM睡眠は、CAPと同一の生理学的信号特性を有する。これに反して、安定した呼吸の期間は、非CAP EEGパターン、および呼吸と鼓動−鼓動心拍数変異(生理的呼吸洞性不整脈)との間の高周波数(0.1〜0.4Hz)結合と関連付けられ、1分間当たり8〜16呼吸の普通の大人の呼吸速度を反映する。この安定した呼吸動態は、従来採点されたデルタ睡眠またはデルタパワーから独立している。
【0079】
上記の2つ状態は、SDB独特のものではなく、健康な被験者にも存在する。増加したデルタパワーまたは従来ステージのスローウエーブスリープは普通、非CAP状態と関連付けられるが、臨床的に大人に見られる非CAP睡眠の大半は、ステージIIにおいて生じるので、この関連付けは必要とされない。EEGパワーと心拍数変異動態との相互関係は、前に記述され、増加するデルタパワーと減少する心拍数変異との間には明瞭な関連があった。しかし、EEG形態は、個人ごとに有意に変化し、薬物治療効果は、CAPおよび非CAPを正確に採点する難しさを増加させる、さらなる変化を導入し得る。本発明に従って決定されるように、ECGに基づく心肺結合は、EEG形態、標準的なステージング、またはCAP複合波のA段階の正確な形態から完全に独立した自動化された方法で計算される。EEGが薬物(例えばベンゾジアゼピン)または疾患(例えば痴呆)によって変えられるとき、この考慮は特に重要である。低いデルタパワーを有する被験者における非CAP挙動の存在は(例えばより年取った個人、図7)、デルタパワープロセスが、睡眠安定化メカニズムのより一般的なプロセスのただ1つのコンポーネントを反映することを暗示する。
【0080】
CAPは、睡眠中断刺激の範囲によって誘発され、非CAPは、睡眠安定のマーカであるので、相関的なECGに基づく心肺結合測定は、非侵襲性の、安価な、かつ容易に繰り返し可能な技術を使用する広い範囲の設定において有用性を有し得る。これらは、1)高い危険性のある人口におけるSDBに対する診断上の選別を容易にし、疾患の重さをたどり、処置に対するコンプライアンスに従い、そして処置効果を評価すること、2)例えば初期の不眠症、うつ病、および線維性筋肉痛におけるように、本質的に異常な睡眠および非REM睡眠のパーセンテージとしての増加したCAPを有すると知られている障害における睡眠の質を評価すること、そして3)不利な環境の中で、例えば微小重力、潜水艦の中、戦闘中、睡眠中における環境的ノイズの影響の評価中に睡眠の質をたどること、を含む。
【0081】
ECGに基づく心肺結合測定は、睡眠ステージまたは呼吸イベント検出器ではないが、この技術は、睡眠中に心肺結合の動的な測定を提供する。従って、視覚的に採点された睡眠状態との緊密な相互関係は期待されない。なぜならば、1)時間スケールが異なり、2)覚醒から睡眠および非REMからREM睡眠への移行境界、ならびにCAPから非CAPへの切り替わりの期間中においては、CAPと非CAPとの視覚的基準は適用が難しく、かつ不正確である可能性があり、3)著しく中断されたREM睡眠は、低周波数結合CAPタイプ特徴を帯び、そして4)重度の非REM睡眠時無呼吸は、標準的な基準によっては覚醒と採点されるが、本発明によっては低周波数範囲におけるパワーの超過として検出されるエポックにおいて生じ得るからである。これらの制限にもかかわらず、ECGに基づくCAP検出器の信頼度(すなわち0.75よりも大きいカッパ(kappa))は、最近の研究における広範囲な研修の後、優秀なスコアラ(scorer)間信頼度(すなわち0.80よりも大きい)と考えられたものと有利に比較される。しかし、上記の心肺結合検出の技術は、「CAPスコアラ」としてではなく、睡眠生理の継続的な動的推定量として最も適切に適用されることが強調されるべきである。
【0082】
概括すると、本発明は、単一または二重のリードECGから唯一引き出される分光写真の技術を含み、単一または二重のリードECGは、睡眠中に心肺結合の変化を動的にたどる。自然な移行が、健康と疾患の両方において、睡眠中に、高周波数(HF)と低周波数(LF)との心肺結合モードの間で観察される。これらの2つのECG派生状態は、きわめて特徴的、かつ予測可能なEEG、呼吸、および心拍数シグネチャを有し、HFおよびLF状態は、CAP/非CAP採点それぞれと相互に関係する。健康的な被験者は、高周波数結合の優勢を示し、一方、処置されていないSDBを有する被験者は、低周波数結合の優勢を示す。
【0083】
従って、ECGは、心肺相互作用に関して「隠された」情報を含む。ECG派生呼吸(EDR)信号に基づいて、鼓動−鼓動心拍数変異の分析と呼吸−呼吸動態とを組み合わせるフーリエ技術は、この情報を抽出し、心肺結合のスペクトル写真を生成する。臨床的使用に対するその可能性のほかに、結果は、従来の睡眠採点システムを補完し得る、「安定領域」における睡眠ステージングおよび類別の再考をも促す。
【0084】
図1〜図4および図6〜図11は、本発明の説明を可能にする概念的な例示である。本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせにおいて実装され得ることは理解されるべきである。そのような実施形態において、様々なコンポーネントおよびステップが、ハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアにおいて実装され、本発明の機能を実行する。つまり、同じピースのハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアのモジュールが、1つ以上の例示されたブロック(すなわちコンポーネントまたはステップ)を実行し得る。
【0085】
本発明は、本明細書に記述された機能性を実行することのできる1つ以上のコンピュータシステムにおいて実装され得る。図5を参照して、本発明を実装する際に有用である例のコンピュータシステム500が示されている。本発明の様々な実施形態が、この例のコンピュータシステム500の観点から記述されている。この記述を読んだ後、他のコンピュータシステムおよび/またはコンピュータアーキテクチャを使用して、本発明をいかに実装するかが、関連技術の当業者に明らかとなる。
【0086】
コンピュータシステム500は、1つ以上のプロセッサ、例えばプロセッサ504を含む。プロセッサ504は、通信インフラストラクチャ506(例えば通信バス、クロスオーババー、またはネットワーク)に接続される。
【0087】
コンピュータシステム500は、ディスプレイユニット530への表示のために、通信インフラストラクチャ506から(または示されていないフレームバッファから)グラフィックス、テキスト、および他のデータを転送するディスプレイインターフェース502を含み得る。
【0088】
コンピュータシステム500は、メインメモリ508、好ましくはアクセスメモリ(RAM)も含み、かつ二次的なメモリ510も含み得る。二次的なメモリ510は、例えば、ハードディスクドライブ512、および/または着脱可能な格納ドライブ514を含み、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光学的ディスクドライブ、その他を表す。着脱可能な格納ドライブ514は、周知の方法で、着脱可能な格納ユニット518から読み取り、かつ/またはこれに書き込む。着脱可能な格納ユニット518は、着脱可能な格納ドライブ514によって読み取られ、かつこれに書き込まれるフロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、光学的ディスク、その他を表す。理解されるように、着脱可能な格納ユニット518は、コンピュータソフトウェア(例えばプログラムまたは他の命令)および/またはデータをその中に格納するコンピュータ使用可能格納媒体を含む。
【0089】
代替の実施形態において、二次的なメモリ510は、コンピュータソフトウェアおよび/またはデータがコンピュータシステム500にロードされることを可能にする他の同様な手段を含み得る。そのような手段は、例えば着脱可能な格納ユニット522およびインターフェース520を含み得る。そのようなものの例は、プログラムカートリッジおよびカートリッジインターフェース、着脱可能なメモリチップ(例えばEPROM、またはPROM)および関連するソケット、ならびにソフトウェアおよびデータが着脱可能な格納ユニット522からコンピュータシステム500へ移転されることを可能にする他の着脱可能な格納ユニット522およびインターフェース520を含み得る。
【0090】
コンピュータシステム500は、通信インターフェース524も含み得る。通信インターフェース524は、ソフトウェアおよびデータがコンピュータシステム500と外部のデバイスとの間で移転されることを可能にする。通信インターフェース524の例は、モデム、ネットワークインターフェース(例えばイーサネット(登録商標)カード)、通信ポート、PCMCIAスロットおよびカード、その他を含み得る。通信インターフェース524を介して移転されたソフトウェアおよびデータは、通信インターフェース524によって受信されることのできる電子的、電磁的、光学的、または他の信号であり得る信号528の形である。これらの信号528は、通信経路(すなわちチャンネル)526を介して通信インターフェース524に提供される。通信経路526は信号528を搬送し、ワイヤまたはケーブル、光ファイバ、電話線、携帯電話リンク、RFリンク、フリースペースオプティクス、および/または他の通信チャンネルを使用して実装され得る。
【0091】
この文書において、用語「コンピュータプログラム媒体」および「コンピュータ使用可能な媒体」は、媒体、例えば着脱可能なユニット518、着脱可能な格納ユニット522、ハードディスクドライブ512にインストールされたハードディスク、および信号528を概略指すために使用される。これらのコンピュータプログラムプロダクトは、ソフトウェアをコンピュータシステム500に提供する手段である。本発明は、そのようなコンピュータプログラムプロダクトに向けられている。
【0092】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御論理またはコンピュータ読取可能プログラムコードとも呼ばれる)は、メインメモリ508および/または二次的なメモリ510に格納される。コンピュータプログラムは、通信インターフェース524を介しても受信され得る。そのようなコンピュータプログラムが、実行されたとき、コンピュータシステム500が、本明細書に論議されたように本発明を実装することを可能にする。特に、コンピュータプログラムは、実行されたとき、プロセッサ504が、本発明のプロセス、例えば上記の方法100、200、300、および400の様々なステップを実装することを可能にする。従って、そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム500のコントローラを表す。
【0093】
本発明が、ソフトウェアを使用して実装される実施形態において、ソフトウェアは、コンピュータプログラムプロダクトに格納され、かつ着脱可能な格納ドライブ514、ハードドライブ512、インターフェース520、または通信インターフェース524を使用してコンピュータシステム500にロードされ得る。制御論理(ソフトウェア)は、プロセッサ504によって実行されたとき、本明細書に記述されたように、プロセッサ504に本発明の機能を実行させる。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、例えば特定用途向け集積回路IC(ASIC)のようなハードウェアコンポーネントを使用して、主にハードウェアで実装される。本明細書に記述された機能を実行するための、ハードウェア状態マシンの実装は、関連技術における当業者には明らかである。
【0095】
さらに別の実施形態において、本発明は、ハードウェアとソフトウェアの両方の組み合わせを使用して実装される。
【0096】
特定の実施形態の前記の記述は、本発明の一般的な性質を非常に完全に明らかにするので、他の者たちは、当該技術内の知識(本明細書に引用され、かつ参考として援用された文書の内容を含む)を適用することによって、過度な実験をせず、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の実施形態を、様々な用途に対して容易に修正、かつ/または適合し得る。従って、本明細書に提示された教示および指針に基づいて、そのような適合および修正は、開示された実施形態の均等物の意味および範囲の範疇内であると意図される。本明細書の語法または用語は、記述のためであり、限定のためではないので、本明細書の用語または語法は、当業者の知識と組み合わせて、本明細書に提示された教示および指針に照らして当業者によって解釈されるべきであることは理解されるべきである。
【0097】
本発明の様々な実施形態が、上に記述されたが、それらは、限定するものとしてではなく、例として提示されたということは理解されるべきである。形式および詳細において様々な変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることは、関連する技術の当業者には明らかである。従って、本発明は、上記の例示的な実施形態のいかなるものによっても限定されるべきではなく、添付された特許請求の範囲およびそれらの均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明の実施形態による、心肺結合を検出する動作の流れを例示する。
【図2】図2は、本発明の実施形態による、ECG派生呼吸を使用して心肺結合を定量化する動作の流れを例示する。
【図3】図3は、本発明の実施形態による、データ間隔シリーズから異常値を除去する動作の流れを例示する。
【図4】図4は、本発明の実施形態による、クロススペクトルパワーおよびコヒーレンスを計算する動作流れを例示する。
【図5】図5は、本発明の部分を実装するために有用な例のコンピュータシステムを例示する。
【図6】図6は、本発明の実施形態による、22歳の健康な女性の心肺結合分析を例示する。
【図7】図7は、本発明の実施形態による、56歳の健康な女性の心肺結合分析を例示する。
【図8】図8は、本発明の実施形態による、中枢性の無呼吸を診断するための心肺結合のスペクトル写真を例示する。
【図9】図9は、本発明の実施形態による、閉塞性無呼吸を診断するための心肺結合のスペクトル写真を例示する。
【図10】図10は、本発明の実施形態による、閉塞性睡眠障害呼吸を有する56歳の男性において心肺結合を使用して、安定および不安定な睡眠の検出を例示する。
【図11】図11は、本発明の実施形態による、正の気道圧によって処置された睡眠障害呼吸のスペクトル写真の表現を例示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に対して睡眠の質を評価するコンピュータベースのシステムであって、該システムは、
該被験者から観測された2つの生理学的な信号の間の心肺結合を検出する手段と、
低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、睡眠呼吸障害が閉塞性睡眠障害か、または非閉塞性睡眠障害かどうかを決定する手段と
を備えている、システム。
【請求項2】
前記評価する手段は、
前記スペクトル特性が、複数のスペクトルのピークまたは広い結合スペクトルのうちの少なくとも1つを含むとき、前記睡眠呼吸障害を閉塞性睡眠障害として識別する手段を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記評価する手段は、
前記スペクトル特性が、単一の優勢な周波数、または狭いスペクトル分散のうちの少なくとも1つを含むとき、前記呼吸障害を非閉塞性睡眠障害として識別する手段を備えている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記検出する手段は、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスする手段と、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスする手段であって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、手段と、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出する手段と
を備えている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記検出する手段は、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスする手段と、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスする手段であって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、手段と、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出する手段と
を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
被験者に対して睡眠の質を評価するコンピュータベースのシステムであって、該システムは、
該被験者から観測された2つの生理学的な信号の間の心肺結合を検出する手段と、
該心肺結合のグラフィカル表現を生み出す手段であって、該グラフィカル表現は、高齢化または病理学的状態のうちの少なくとも1つを検出する際の使用のために構成されている、手段と
を備えている、システム。
【請求項7】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の逆のまたは治療の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記グラフィカル表現は、低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、閉塞性睡眠障害または非閉塞性睡眠障害のいずれかとして睡眠呼吸障害を識別する際の使用のために構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記検出する手段は、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスする手段と、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスする手段であって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、手段と、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出する手段と
を備えている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
被験者に対して睡眠の質をコンピュータに評価させるために、媒体に埋め込まれたコンピュータ読取可能なプログラムコード機能を有するコンピュータ使用可能な該媒体を備えているコンピュータプログラムプロダクトであって、該コンピュータプログラムプロダクトは、
該被験者から観測された2つの生理学的信号の間の心肺結合を検出するための、第1のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、睡眠呼吸障害が閉塞性睡眠障害または非閉塞性睡眠障害のいずれであるかを決定するための、第2のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と
を備えている、コンピュータプログラムプロダクト。
【請求項12】
前記第2のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能は、
前記スペクトル特性が、複数のスペクトルのピークまたは広い結合スペクトルのうちの少なくとも1つを含むとき、前記睡眠呼吸障害を閉塞性睡眠障害として識別するコンピュータ読取可能なプログラムコード機能を備えている、請求項11に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項13】
前記第2のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能は、
前記スペクトル特性が、単一の優勢な振動数または狭いスペクトル分散のうちの少なくとも1つを含むとき、前記睡眠呼吸障害を非閉塞性睡眠障害として識別するコンピュータ読取可能なプログラムコード機能を備えている、請求項12に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項14】
前記第1のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能は、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的データの第1のシリーズにアクセスするコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスするコンピュータ読取可能なプログラムコード機能であって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、コンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の心肺結合を検出するコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と
を備えている、請求項13に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項15】
被験者に対して睡眠の質を評価する際に使用するためのデータをコンピュータに提供させるために、媒体に埋め込まれたコンピュータ読取可能なプログラムコード機能を有するコンピュータ使用可能な該媒体を備えているコンピュータプログラムプロダクトであって、該コンピュータプログラムプロダクトは、
該被験者から観測された2つの生理学的信号の間の心肺結合を検出するための、第1のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
該心肺結合のグラフィカル表現を生み出す第2のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能であって、該グラフィカル表現は、高齢化または病理学的状態のうちの少なくとも1つを検出する際の使用のために構成されている、第2のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と
を備えている、コンピュータプログラムプロダクト。
【請求項16】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項17】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の逆のまたは治療の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項18】
前記グラフィカル表現は、低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、閉塞性睡眠障害または非閉塞性睡眠障害のいずれかとして睡眠呼吸障害を識別する際の使用のために構成されている、請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項19】
前記第1のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能は、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的データの第1のシリーズにアクセスするコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスするコンピュータ読取可能なプログラムコード機能であって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、コンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の心肺結合を検出するコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と
を備えている、請求項18に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項20】
被験者に対して睡眠の質を評価する方法であって、該方法は、
該被験者から観測された2つの生理学的な信号の間の心肺結合を検出することと、
低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、睡眠呼吸障害が閉塞性睡眠障害か、または非閉塞性睡眠障害かどうかを決定することと
を包含する、方法。
【請求項21】
前記評価するステップは、
前記スペクトル特性が、複数のスペクトルのピークまたは広い結合スペクトルのうちの少なくとも1つを含むとき、前記睡眠呼吸障害を閉塞性睡眠障害として識別することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記評価するステップは、
前記スペクトル特性が、単一の優勢な周波数、または狭いスペクトル分散のうちの少なくとも1つを含むとき、前記呼吸障害を非閉塞性睡眠障害として識別することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記検出するステップは、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスすることと、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスすることであって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、ことと、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出することと
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記検出するステップは、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスすることと、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスすることであって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、ことと、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出することと
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
被験者に対して睡眠の質を評価するコンピュータベースの方法であって、該方法は、
該被験者から観測された2つの生理学的な信号の間の心肺結合を検出することと、
該心肺結合のグラフィカル表現を生み出すことであって、該グラフィカル表現は、高齢化または病理学的状態のうちの少なくとも1つを検出する際の使用のために構成されている、ことと
を包含する、方法。
【請求項26】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の逆のまたは治療の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記グラフィカル表現は、低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、閉塞性睡眠障害または非閉塞性睡眠障害のいずれかとして睡眠呼吸障害を識別する際の使用のために構成されている、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記検出するステップは、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスすることと、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスすることであって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、ことと、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出することと
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記グラフィカル表現を適用して、CAP状態、非CAP状態、覚醒状態、またはREM状態を検出することをさらに包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項1】
被験者に対して睡眠の質を評価するコンピュータベースのシステムであって、該システムは、
該被験者から観測された2つの生理学的な信号の間の心肺結合を検出する手段と、
低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、睡眠呼吸障害が閉塞性睡眠障害か、または非閉塞性睡眠障害かどうかを決定する手段と
を備えている、システム。
【請求項2】
前記評価する手段は、
前記スペクトル特性が、複数のスペクトルのピークまたは広い結合スペクトルのうちの少なくとも1つを含むとき、前記睡眠呼吸障害を閉塞性睡眠障害として識別する手段を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記評価する手段は、
前記スペクトル特性が、単一の優勢な周波数、または狭いスペクトル分散のうちの少なくとも1つを含むとき、前記呼吸障害を非閉塞性睡眠障害として識別する手段を備えている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記検出する手段は、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスする手段と、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスする手段であって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、手段と、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出する手段と
を備えている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記検出する手段は、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスする手段と、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスする手段であって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、手段と、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出する手段と
を備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
被験者に対して睡眠の質を評価するコンピュータベースのシステムであって、該システムは、
該被験者から観測された2つの生理学的な信号の間の心肺結合を検出する手段と、
該心肺結合のグラフィカル表現を生み出す手段であって、該グラフィカル表現は、高齢化または病理学的状態のうちの少なくとも1つを検出する際の使用のために構成されている、手段と
を備えている、システム。
【請求項7】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の逆のまたは治療の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記グラフィカル表現は、低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、閉塞性睡眠障害または非閉塞性睡眠障害のいずれかとして睡眠呼吸障害を識別する際の使用のために構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記検出する手段は、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスする手段と、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスする手段であって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、手段と、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出する手段と
を備えている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
被験者に対して睡眠の質をコンピュータに評価させるために、媒体に埋め込まれたコンピュータ読取可能なプログラムコード機能を有するコンピュータ使用可能な該媒体を備えているコンピュータプログラムプロダクトであって、該コンピュータプログラムプロダクトは、
該被験者から観測された2つの生理学的信号の間の心肺結合を検出するための、第1のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、睡眠呼吸障害が閉塞性睡眠障害または非閉塞性睡眠障害のいずれであるかを決定するための、第2のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と
を備えている、コンピュータプログラムプロダクト。
【請求項12】
前記第2のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能は、
前記スペクトル特性が、複数のスペクトルのピークまたは広い結合スペクトルのうちの少なくとも1つを含むとき、前記睡眠呼吸障害を閉塞性睡眠障害として識別するコンピュータ読取可能なプログラムコード機能を備えている、請求項11に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項13】
前記第2のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能は、
前記スペクトル特性が、単一の優勢な振動数または狭いスペクトル分散のうちの少なくとも1つを含むとき、前記睡眠呼吸障害を非閉塞性睡眠障害として識別するコンピュータ読取可能なプログラムコード機能を備えている、請求項12に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項14】
前記第1のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能は、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的データの第1のシリーズにアクセスするコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスするコンピュータ読取可能なプログラムコード機能であって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、コンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の心肺結合を検出するコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と
を備えている、請求項13に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項15】
被験者に対して睡眠の質を評価する際に使用するためのデータをコンピュータに提供させるために、媒体に埋め込まれたコンピュータ読取可能なプログラムコード機能を有するコンピュータ使用可能な該媒体を備えているコンピュータプログラムプロダクトであって、該コンピュータプログラムプロダクトは、
該被験者から観測された2つの生理学的信号の間の心肺結合を検出するための、第1のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
該心肺結合のグラフィカル表現を生み出す第2のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能であって、該グラフィカル表現は、高齢化または病理学的状態のうちの少なくとも1つを検出する際の使用のために構成されている、第2のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と
を備えている、コンピュータプログラムプロダクト。
【請求項16】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項17】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の逆のまたは治療の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項18】
前記グラフィカル表現は、低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、閉塞性睡眠障害または非閉塞性睡眠障害のいずれかとして睡眠呼吸障害を識別する際の使用のために構成されている、請求項15に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項19】
前記第1のコンピュータ読取可能なプログラムコード機能は、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的データの第1のシリーズにアクセスするコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスするコンピュータ読取可能なプログラムコード機能であって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、コンピュータ読取可能なプログラムコード機能と、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の心肺結合を検出するコンピュータ読取可能なプログラムコード機能と
を備えている、請求項18に記載のコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項20】
被験者に対して睡眠の質を評価する方法であって、該方法は、
該被験者から観測された2つの生理学的な信号の間の心肺結合を検出することと、
低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、睡眠呼吸障害が閉塞性睡眠障害か、または非閉塞性睡眠障害かどうかを決定することと
を包含する、方法。
【請求項21】
前記評価するステップは、
前記スペクトル特性が、複数のスペクトルのピークまたは広い結合スペクトルのうちの少なくとも1つを含むとき、前記睡眠呼吸障害を閉塞性睡眠障害として識別することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記評価するステップは、
前記スペクトル特性が、単一の優勢な周波数、または狭いスペクトル分散のうちの少なくとも1つを含むとき、前記呼吸障害を非閉塞性睡眠障害として識別することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記検出するステップは、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスすることと、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスすることであって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、ことと、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出することと
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記検出するステップは、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスすることと、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスすることであって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、ことと、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出することと
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
被験者に対して睡眠の質を評価するコンピュータベースの方法であって、該方法は、
該被験者から観測された2つの生理学的な信号の間の心肺結合を検出することと、
該心肺結合のグラフィカル表現を生み出すことであって、該グラフィカル表現は、高齢化または病理学的状態のうちの少なくとも1つを検出する際の使用のために構成されている、ことと
を包含する、方法。
【請求項26】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記グラフィカル表現は、薬物または非薬理学的干渉の逆のまたは治療の効果を決定する際の使用のために構成されている、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記グラフィカル表現は、低周波数心肺結合のスペクトル特性を評価し、閉塞性睡眠障害または非閉塞性睡眠障害のいずれかとして睡眠呼吸障害を識別する際の使用のために構成されている、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記検出するステップは、
前記被験者の呼吸動態を表す生理学的なデータの第1のシリーズにアクセスすることと、
該被験者の心拍数動態を表す生理学的データの第2のシリーズにアクセスすることであって、該第2のシリーズは、該第1のシリーズと一時的に整列させられる、ことと、
該第1のシリーズと該第2のシリーズとの間の前記心肺結合を検出することと
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記グラフィカル表現を適用して、CAP状態、非CAP状態、覚醒状態、またはREM状態を検出することをさらに包含する、請求項25に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−501060(P2009−501060A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521475(P2008−521475)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/026591
【国際公開番号】WO2007/008706
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(307020338)ベス イスラエル デアコネス メディカル センター, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/026591
【国際公開番号】WO2007/008706
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(307020338)ベス イスラエル デアコネス メディカル センター, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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