心臓の伝導ブロックを補償する、ナトリウムチャネル、カルシウムチャネルおよび/またはカリウムチャネルを有する生物学的バイパスブリッジ
本発明は、第1末端および第2末端を有するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジを提供し、両末端が、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、当該細胞は、ナトリウムチャネルを機能的に発現する。また、本発明は、バイパスブリッジを作製する方法、バイパスブリッジを心臓に移植する方法、および対象の心臓の損傷した伝導に関連する障害を治療する関連方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する発明は、米国国立保健研究所からのNIH助成金第HL-28958号による米国政府の支援を受けて実施された。したがって、米国政府は、本発明の特定の権利を有する。
【0002】
本出願は、全内容が参照によって本明細書に組み入れられている米国仮特許出願第60/704210号、2005年7月29日出願;第60/701312号、2005年7月21日出願;および第60/781723号、2006年3月14日出願の利益を主張する。
【0003】
本出願全体にわたり、種々の刊行物を参照し、それらの著者名および日付、特許番号、特許出願番号または特許公開番号を括弧内に示す。これらの刊行物を、特許請求の範囲の直前の明細書の末尾に、全て列挙する。本明細書において本発明を記載し、特許請求する時点におけるそれら刊行物中の現況技術を当業者に向けてより完全に記載するために、これらの刊行物の全体の開示が参照によって本出願に組み入れられている。しかし、本明細書への参考文献の引用を、そのような参考文献が本発明の先行技術であると認めるものであると解釈してはならない。
【0004】
本発明は、ナトリウムチャネルを機能的に発現するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジに関するものであり、当該経路の2つの末端は、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となる。
【背景技術】
【0005】
電子工学的ペースメーカーは、洞房結節、房室性の伝導またはその両方が停止した状況下で、規則的な心拍を提供する救命デバイスである。したがって、電子工学的ペースメーカー療法の主要な適応症の1つに、正常に機能する洞房結節の活動電位が、心室に伝播できないような高度心ブロックがある。その結果、心室停止および/または細動、そして死に至る。
【0006】
ペースメーカー細胞の機能障害または損失が、疾患または加齢によって生じる。例えば、急性心筋梗塞(MI)により、毎年数百万人が死亡し、生存者においては、一般的に筋細胞数および心臓のポンプ機能の著しい低下を誘発する。成体の心筋細胞は、ごく稀にしか分裂せず、筋細胞の損失に対する通常の応答として、代償性肥大および/またはうっ血性心不全が含まれ、うっ血性心不全は、顕著な年間死亡率を有する。骨髄由来および/または循環中のヒト間葉系幹細胞(hMSC)の心筋梗塞後の患者の心臓への送達により、機械的性能の何らかの改善が得られ(Strauerら、2002年;Perinら、2003年)、明白な毒性はなかったとの最近の報告がある。これらおよびその他の動物実験(Orlicら、2001年)から、hMSCは、心臓合胞体内に取り込まれ、次いで、新しい心臓細胞に分化して、機械的機能を回復すると推定される。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/704210号
【特許文献2】米国仮特許出願第60/701312号
【特許文献3】米国仮特許出願第60/781723号
【特許文献4】米国仮特許出願第60/ 号(未付与)、標題「Chimeric HCN Channels」、2006年7月21日出願
【特許文献5】米国特許出願第10/342506号
【特許文献6】米国仮特許出願第60/715934号
【特許文献7】米国特許第6783979号
【特許文献8】米国仮特許出願第11/・・・号(未付与)、標題「Tandem Cardiac Pacemaker Systems」、2006年7月21日出願
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
細胞治療の別の適用を、本明細書は記載し、これは、hMSC等の細胞を増殖させて、ギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジとすることになり、このバイパスブリッジを使用して、損傷した電気的な伝導を示す心臓の領域を横断してペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流を伝えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示する発明は、第1末端および第2末端を有するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジを提供し、両末端が、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、当該細胞は、ナトリウムチャネルを機能的に発現する。バイパスブリッジの特定の実施形態では、当該経路の細胞は、さらにペースメーカーイオンチャネルも機能的に発現し、これは、ペースメーカー電流を誘発し、その結果、当該細胞内でペースメーカー電流を誘発する。好ましい実施形態では、細胞の経路の第1末端は、心房に付着することができ、かつ第2末端は、心室に付着することができ、その結果、心房から心室への経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にする房室(AV)性のブリッジを形成する。
【0009】
また、本発明は、心臓に移植するためのバイパスブリッジを作製する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸、および所望によりペースメーカーイオンチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入し、そこでそれらを機能的に発現させるステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、心臓の2つの選択された部位に付着することができる第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップとを含み、当該細胞は、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続している。
【0010】
さらに、本発明は、バイパスブリッジを心臓に移植する方法も提供し、この方法は、(a)バイパスブリッジを、本明細書に開示する方法のうちのいずれかによって作製するステップと、(b)心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、(c)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、それによって、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にするバイパスブリッジを心臓に移植する。
【0011】
また、本発明は、対象の心臓の損傷した伝導に関連する障害を治療する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入するステップであって、当該細胞が、ナトリウムチャネルを機能的に発現するステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、当該細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、(c)それらの部位の間で伝導が損傷している心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、(d)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する。
【0012】
さらに、本発明は、対象の心臓の損傷した伝導および損傷した洞房結節の活動に関連する障害を治療する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルをコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入するステップであって、当該細胞が、ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルを機能的に発現するステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、当該細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、(c)それらの部位の間で伝導が損傷している心臓の左心房の第1部位、および第2部位を選択するステップと、(d)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、その結果、洞房結節が発生させたペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝播、ならびに/あるいは当該の2つの部位の間の細胞の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、第1末端および第2末端を有するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジを提供し、両末端が、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、当該細胞は、ナトリウムチャネルを機能的に発現する。バイパスブリッジの特定の実施形態では、当該経路の細胞は、さらにペースメーカーイオンチャネルも機能的に発現し、これは、ペースメーカー電流を誘発し、その結果、当該細胞内でペースメーカー電流を誘発する。好ましい実施形態では、細胞の経路の第1末端は、心房に付着することができ、かつ第2末端は、心室に付着することができ、その結果、心房から心室への経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にする房室(「AV」)性のブリッジを形成し、それによって、心室の収縮を刺激する。
【0014】
また、本発明は、第1末端および第2末端を有するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジも提供し、両末端が、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、当該細胞は、ナトリウムチャネルの代わりに、カリウムチャネルまたはカルシウムチャネルを機能的に発現する。ナトリウムチャネルを発現するバイパスブリッジについて本明細書で開示する実施形態は、カリウムチャネルまたはカルシウムチャネルを発現するバイパスブリッジにも同等に適用できる。
【0015】
当該経路に発展させるために使用することができる例示的な細胞として、これらに限定されないが、幹細胞、心筋細胞、少なくも1種の心臓のコネキシンを発現するように操作された繊維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞があげられる。好ましい実施形態では、幹細胞は、成体間葉系幹細胞(MSC)、または胚性幹細胞(ESC)であり、当該幹細胞は、実質的に分化できない。種々の実施形態では、MSCは、心臓にバイパスブリッジが導入されることになる対象に関して、自家性のもの、同種間のもの、または異種間のものであり、対象は、ヒトである。本明細書で使用する場合、「対象」とは、いずれかの動物または人工的に改変した動物を意味するものとする。動物として、これらに限定されないが、ヒト、非ヒトの霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、フェレット、マウス、ラットおよびモルモット等のげっ歯類、ならびにニワトリおよびシチメンチョウ等の鳥類があげられる。人工的に改変した動物として、これに限定されないが、ヒトの免疫系を有するSCIDマウスがあげられる。好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。
【0016】
即時バイパスブリッジのより好ましい実施形態では、幹細胞は、ヒト成体間葉系幹細胞(hMSC)、またはヒト胚性幹細胞(hESC)であり、当該幹細胞は、実質的に分化できない。その他の実施形態では、hMSCは、(a)CD29、CD44、CD54およびHLAクラスIの表面マーカーを発現するが、(b)CD14、CD34、CD45およびHLAクラスIIの表面マーカーを発現しない。追加の実施形態では、hMSCは、少なくとも9回、好ましくは、9〜12回継代されている。さらなる実施形態では、細胞は、少なくとも1種の心臓のコネキシンをさらに発現する。さらに別の実施形態では、少なくとも1種の心臓のコネキシンは、Cx43、Cx40またはCx45である。
【0017】
したがって、本発明は、機能性ナトリウムイオンチャネル、および所望によりペースメーカーチャネル、および所望によりまたは別法としてカリウムチャネルまたはカルシウムチャネルを組み入れたバイパス経路を心臓に構築する細胞治療の使用に基づくものである。バイパスブリッジを使用して、その間に損傷したペースメーカーおよび/または電気的な伝導が存在する心臓のいずれかの2つの部位の間に、ペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流を伝えることができる。例えば、バイパスを、AVブリッジとして使用して、病的なAV結節の機能を引き継ぐ、またはそれを補充することができる。ヒトMSCを、非生理活性のマトリックス上で培養して増殖させて、2つの末端を含有する細胞の条片または経路とすることができる。増殖が完了したら、経路の一方の端を、心臓の第1の選択部位、例として、心房に、例えば、縫合によって付着させることができ、かつ他方の端を、第2の選択部位、例として、心室に付着させることができる。AVブリッジとして使用するバイパスブリッジの場合、例えば、心房を活性化させる洞房結節が発生させたペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流は、人工的に構築した経路を横断して伝播して、心室を興奮させるであろう。このようにして、房室の活性化の正常な筋道が維持されるであろう。
【0018】
ヒトMSCは、これらに限定されないが、以下を含む、いくつかの方法で調製することができる:
1:追加の伝導の分子決定要因を組み入れない培養。この場合、ペースメーカー信号および/または電気信号を伝達するギャップ結合を形成する細胞自体の能力を、電気的な波を心臓の1つの部位から別の部位へ伝える手段として使用する;
2:心臓のコネキシンであるCx43、Cx40またはCx45のうちの少なくとも1種の遺伝子を導入するための細胞の形質移入、例として、エレクトロポレーションまたはウイルス感染による形質移入に続く培養によって、ギャップ結合の形成を増強し、それによって、ペースメーカー信号/電気信号の細胞から細胞への伝播を容易にする;
3:L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニットをコードする核酸を導入するための細胞の形質移入に続く培養によって、波面の電気的な伝播の可能性に加え、活動電位による能動的な伝播の可能性も高める;
4:ナトリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットをコードする核酸を導入するための細胞の形質移入に続く培養によって、波面の電気的な伝播またはカルシウム依存性の伝播の可能性に加え、ナトリウム依存性の活動電位による能動的な伝播の可能性も高める;
5:上記の3および/または4のカルシウムチャネルのサブユニットおよび/またはナトリウムチャネルのサブユニットをコードする核酸、ならびにカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットをコードする核酸を導入するための細胞の形質移入に続く培養によって、活動電位による能動的な伝播の可能性に加え、初期の静止電位ならびに再分極の電位-時間経過および不応性による追加の制御の可能性も高める;
6:ステップ2から5の組合せ。
【0019】
このように調製したhMSCからのバイパスブリッジの調製によって、心臓のいずれかの2つの選択部位の間のペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能になる。AVブリッジの場合、これは、信号の心房から心室への伝播を容易にするのみならず、心房から心室への収縮の十分な遅延も提供して、心室の充填および排出を最大化し、したがって、心臓の正常な活性化および収縮の筋道を模倣するであろう。さらに、バイパスブリッジの細胞、好ましくは、当該経路の一方の端の細胞にもまた、ペースメーカー電流チャネルをコードする核酸をさらに形質移入し、当該の形質移入細胞に、ペースメーカー電流を発現させる。カルシウム電流、ナトリウム電流、カリウム電流またはペースメーカー電流(If)の増加または減少を、これらの電流を運ぶイオンチャネルの発現を細胞内で増加または減少させることによって得ることができる。これらのアプローチは、洞房結節の疾患の状況で、心房の活動電位の開始を改善するための遺伝子治療および幹細胞技術と共に使用すると、電子工学的な置換術ではない、完全に生理的なシステムを提供する。したがって、本発明の実施形態では、バイパスブリッジは、ペースメーカーイオンチャネルをコードする1種または複数の遺伝子を発現し、それによって、ペースメーカー電流を誘発する。
【0020】
本発明の異なる実施形態では、イオンチャネル遺伝子またはコネキシン遺伝子をコードする核酸を、ウイルスベクターを用いる感染、プラスミドによる形質転換、コスミドによる形質転換、エレクトロポレーション、リポフェクション、形質移入化学試薬を使用する形質移入、熱ショックによる形質移入またはマイクロインジェクションによって、細胞に導入する。さらなる実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、またはレトロウイルスベクターである。
【0021】
即時バイパスブリッジの実施形態では、ナトリウムチャネルは、SKM-1チャネルである。特定の実施形態では、SKM-1チャネルは、アルファサブユニットを含む。その他の実施形態では、SKM-1チャネルは、アクセサリーサブユニットもさらに含む。追加の実施形態では、当該経路は、さらにカリウムチャネルも機能的に発現する。カリウムチャネルは、Kir2.1アルファサブユニットまたはKir2.2アルファサブユニットを含むことができ、アクセサリーサブユニットをさらに含むこともできる。バイパスブリッジの異なる実施形態では、当該経路の細胞は、さらにL型カルシウムチャネルも機能的に発現し、これは、アルファサブユニットおよびアクセサリーサブユニットを含むことができる。さらなる実施形態では、バイパスブリッジを形成する経路の細胞は、さらに少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数を機能的に発現し、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる。種々の実施形態では、当該の少なくとも1種のコネキシンが、Cx43、Cx40またはCx45である。
【0022】
ペースメーカーイオンチャネルを発現するバイパスブリッジの種々の実施形態では、当該ペースメーカーイオンチャネルは、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、またはその変異体もしくはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である。HCNチャネルは、HCN1、HCN2、HCN3またはHCN4のうちのいずれかであることができる。本発明の実施形態では、ペースメーカーチャネルを操作して、進行性に速度を低下させて動作させ、その結果、洞房結節およびプルキンエ系に類似する一次ペースメーカーおよび補助ペースメーカーに相当させる。好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルを、当該経路の第1末端の細胞内で発現させる。より好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルを発現する細胞は、第1末端から0.5mm延長した領域に位置する。
【0023】
過分極活性化カチオン電流は、If、IhまたはIqと呼ばれ、20年以上前に初めて心臓細胞および神経細胞で発見された(総説として、DiFranesco、1993年;Pape、1996年を参照)。これらの電流は、Na+イオンまたはK+イオンによって運ばれ、心臓および神経のペースメーカーの活動、静止電位の設定、入力コンダクタンスおよび長さ定数、ならびに樹状突起の統合を含む、広範な生理機能に寄与する(RobinsonおよびSiegelbaum、2003年;Bielら、2002年を参照)。イオンチャネルのサブユニットのうちの過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)ファミリーが、分子クローニングによって同定されており(総説として、Clapham、1998年;SantoroおよびTibbs、1999年;Bielら、2002年を参照)、非相同的に発現させると、4種の異なるHCNアイソフォームのそれぞれが、自然のIfの主要な特性を有するチャネルを生成することから、HCNチャネルがこの電流に関係がある分子であることが確認される。
【0024】
本明細書で使用する場合、「HCNチャネル」とは、過分極活性化カチオン電流の原因である過分極活性化環状ヌクレオチド依存性イオンチャネルを意味するものとし、この電流は、cAMPによって直接制御され、心臓および脳におけるペースメーカーの活動に寄与する。HCN1、HCN2、HCN3およびHCN4の4種のHCNアイソフォームが存在する。4種のアイソフォームの全てが、脳で発現する。また、HCN1、HCN2およびHCN4は、心臓でも顕著に発現し、HCN4およびHCN1は、洞房結節で優勢であり、HCN2は、心室特異的伝導系で優勢である。「mHCN」は、マウス(murineまたはmouse)のHCNを示し、「hHCN」は、ヒトのHCNを示す。
【0025】
HCNチャネルは、電位開口型K+(Kv)チャネルと同様、4つのサブユニットを有し、各サブユニットは、6つの膜貫通セグメントであるS1〜S6を有する。正に荷電したS4ドメインが、主要な電位センサーを形成し、S5およびS6は、これら2つを連結するS5-S6リンカーと一緒になって、イオン透過経路を含有するポアドメイン、およびイオンの流れを制御するゲートを形成する(Larsson、2002年)。HCNチャネルに関する変異の研究は、S4電位センサー、電位感知のポアの開閉との共役に結びつけられているS4-S5リンカー、ポアを形成するS5、S6およびS5-S6リンカー、C-リンカー、ならびにC末端の環状ヌクレオチド結合ドメイン(CNBD)の変異が、HCNチャネルの活性に影響する点で特に重要である可能性があることを示している。変異HCNを発現するバイパスブリッジの実施形態では、当該変異HCNチャネルは、野生型HCNチャネルと比較した場合、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、保存または増強されたcAMP応答性、および保存または増強された神経液性応答からなる群から選択される改善された特徴を提供する。また、ペースメーカー活動を細胞内で誘発するための変異HCNチャネルは、米国仮特許出願第60/781723号(2006年3月14日出願)、および本出願と同時出願(2006年7月21日)の第60/ 号(未付与)、標題「Chimeric HCN Channels」にも記載されている。また、変異HCNチャネルは、米国特許出願第10/342506号でも議論されている。上記の出願の全内容は、参照によって本明細書に組み入れられている。
【0026】
本発明の特定の実施形態では、変異HCNチャネルは、S4電位センサー、S4-S5リンカー、S5、S6、S5-S6リンカーおよび/またはCリンカー、ならびにCNBDにおいて少なくとも1つの変異を保有し、これらの変異の結果、上記で議論した改善された特徴のうちの1種または複数が得られる。その他の実施形態では、HCN変異体は、E324A-HCN2、Y331A-HCN2、R339A-HCN2またはY331A,E324A-HCN2である。好ましい実施形態では、変異HCNチャネルは、E324A-HCN2である。
【0027】
上記の変異に加えて、異なるHCNアイソフォームにおける多くの変異が報告されている。これらとして、電位の感知および活性化におけるE324残基、Y331残基およびR339残基の役割をより詳細に調査するために、Chenら(2001年a)が作製したHCN2におけるR318Q、W323A、E324A、E324D、E324K、E324Q、F327A、T330AおよびY331A、Y331D、Y331F、Y331K、D332A、M338A、R339A、R339C、R339D、R339EならびにR339Qがあげられる。また、Chenら(2001年b)は、mHCN1におけるR538EおよびR591Eの変異も報告しており;Tsangら(2004年)は、mHCN1におけるG231AおよびM232Aを報告しており;Vemanaら(2004年)は、mHCN2におけるR247C、T249C、K250C、I251C、L252C、S253C、L254C、L258C、R259C、L260C、S261C、C318S、S338Cを報告しており;MacriおよびAccili(2004年)は、mHCN2におけるS306Q、Y331DおよびG404Sを報告しており;かつDecherら(2004年)は、mHCN2におけるY331A、Y331D、Y331S、R331FD、R339E、R339Q、I439A、S441A、S441T、D443A、D443C、D443E、D443K、D443N、D443R、R447A、R447D、R447E、R447Y、Y449A、Y449D、Y449F、Y449G、Y449W、Y453A、Y453D、Y453F、Y453L、Y453W、P466Q、P466V、Y476A、Y477AおよびY481Aを報告している。上記の刊行物の全ての全内容が、参照によって本明細書に組み入れられている。上記に列挙した報告されている変異のうちの特定のものが、単独または組合せで、生物学的ペースメーカーを生み出す場合に、HCNチャネルに有利な特徴を与えることができる。本明細書に開示する発明は、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現および/または向上した安定性、保存された環状性の間隔応答性、ならびに/あるいは保存もしくは増強された神経液性応答を提供することによって等、チャネルのペースメーカー活動を改善させる、単独または組合せでのHCNチャネルの全ての変異を包含する。
【0028】
本明細書では、変異を受けたアミノ酸残基の1文字略語、ポリペプチド内の当該残基の位置、および当該残基が変異したアミノ酸残基の1文字略語を提供する表示によって、変異を識別する。したがって、例えば、E324Aは、324位のグルタミン残基(E)がアラニン(A)に変異した変異ポリペプチドを識別する。Y331A,E324A-mHCN2は、一方は331位のチロシン(Y)がアラニン(A)に変異し、他方は324位のグルタミン酸残基がアラニンに変異した、二重変異を有するマウスHCN2を示す。
【0029】
一般的にいうと、HCNポリペプチドは、3つの主要なドメイン、すなわち、(1)細胞質側のアミノ末端ドメイン;(2)膜にまたがるドメインおよびそれらを連結する領域;ならびに(3)細胞質側のカルボキシ末端ドメインに分かれる。N末端ドメインが、チャネルの活性化において主要な役割を担っている様子はない(Bielら、2002年)。しかし、膜にまたがるドメインおよびそれらを連結する領域が、ゲーティングの動態の決定において重要な役割を担っており、CNBDが、交感神経系および副交感神経系にチャネルが応答する能力の大きな原因であり、交感神経系および副交感神経系はそれぞれ、細胞性のcAMPのレベルを上昇および低下させる。
【0030】
HCNキメラを発現するバイパスブリッジの実施形態では、キメラのHCNチャネルは、好ましくは、野生型HCNチャネルと比較した場合、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、保存または増強されたcAMP応答性、および保存または増強された神経液性応答からなる群から選択される改善された特徴を提供する。ペースメーカー活動を細胞内で誘発するためのHCNキメラは、米国仮特許出願第60/715934号(2005年9月9日出願)、および本出願と同時出願(2006年7月21日)の第60/ 号(未付与)、標題「Chimeric HCN Channels」に詳細に記載されおり、これら両方の全内容は、参照によって本明細書に組み入れられている。
【0031】
本明細書で使用する場合、「HCNキメラ」または「キメラのHCNチャネル」とは、2種以上のHCNチャネルのアイソフォームの部分を含むHCNチャネルを意味するものとする。したがって、例えば、あるキメラは、HCN1の部分と、HCN2またはHCN3またはHCN4の部分等とを含むことができる。好ましい実施形態では、当該部分は、アミノ末端部分、膜貫通部分およびカルボキシ末端部分である。その他の好ましい実施形態では、当該部分は、ヒトHCNアイソフォームに由来する。その上、HCNキメラは、異なる動物種に由来するHCNチャネルの部分を含むイオンチャネルも包含する。したがって、バイパスブリッジの種々の実施形態では、HCNキメラの少なくとも1つの部分が、ある動物種に由来し、これは、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来する動物種とは異なる。例えば、チャネルの1つの部分は、ヒトに由来することができ、別の部分は、非ヒトに由来することができる。
【0032】
即時バイパスブリッジの追加の実施形態では、HCNキメラは、mHCN112、mHCN212、mHCN312、mHCN412、mHCN114、mHCN214、mHCN314、mHCN414、hHCN112、hHCN212、hHCN312、hHCN412、hHCN114、hHCN214、hHCN314またはhHCN414である。異なる実施形態では、HCNキメラは、mHCN112、mHCN212、mHCN312、mHCN412、mHCN114、mHCN214、mHCN314、mHCN414、hHCN112、hHCN212、hHCN312、hHCN412、hHCN114、hHCN214、hHCN314またはhHCN414である。好ましい実施形態では、HCNキメラは、配列番号 (図2を参照)に記載の配列を有するhHCN212である。さらに別の好ましい実施形態では、HCNキメラは、配列番号 (図3を参照)に記載の配列を有するmHCN212である。
【0033】
本明細書で使用する場合、「HCNXYZ」(ただし、X、YおよびZは、整数1、2、3または4のいずれか1つであり、X、YおよびZの少なくとも1つは、その他の数の少なくとも1つとは異なる数である)という用語は、XYZの順で近接する3つの部分を含むキメラのHCNチャネルのポリペプチドを意味するものとし、Xは、N末端部分であり、Yは、膜内部分であり、Zは、C末端部分であり、かつ数X、YおよびZは、当該部分が由来するHCNチャネルを示す。例えば、HCN112は、HCN1からのN末端部分および膜内部分、ならびにHCN2からのC末端部分を有するHCNキメラである。
【0034】
バイパスブリッジの特定の実施形態では、HCNキメラは、アミノ末端部分と膜内部分とカルボキシ末端部分とを含み、これらはこの順で近接しており、各部分は、HCNチャネルの一部またはHCNチャネルの変異体の一部であり、かつ1つの部分は、あるHCNチャネルまたはあるHCNチャネルの変異体に由来し、これは、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来するHCNチャネルまたはHCNチャネルの変異体とは異なる。したがって、種々の実施形態では、キメラの少なくとも1つの部分が、野生型HCNチャネルからの部分と比較した場合、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、保存または増強されたcAMP応答性、および保存または増強された神経液性応答からなる群から選択される改善された特徴を提供する変異を含有する、あるHCNチャネルに由来する。特定の実施形態では、変異HCNチャネルは、S4電位センサー、S4-S5リンカー、S5、S6およびS5-S6リンカー、CリンカーならびにCNBDからなる群から選択されたチャネルの領域に変異を含有する。その他の実施形態では、変異部分は、配列番号 (図1を参照)に記載の配列を有するmHCN2に由来し、E324A-mHCN2、Y331A-mHCN2、R339A-mHCN2またはY331A,E324A-mHCN2を含む。好ましい実施形態では、変異部分は、E324A-mHCN2を含む。
【0035】
HCNチャネルのペースメーカー活動を、HCNチャネルをそのベータサブユニットであるMiRP1と同時発現させることによって増強させることができ、MiRP1は、発現した電流の大きさを増加させ、かつ/または活性化の動態を速める。全内容が参照によって本明細書に組み入れられている米国特許第6783979号およびQuら(2004年)を参照されたい。
【0036】
本明細書に開示するバイパスブリッジの特定の実施形態では、ペースメーカー電流は、電子工学的な伝導によって伝えられる。その他の実施形態では、ペースメーカー電流は、活動電位によって能動的に伝播する。さらなる実施形態では、活動電位は、ナトリウム依存性の活動電位である。追加の実施形態では、経路の細胞は、さらにL型カルシウムチャネルを機能的に発現し、活動電位は、カルシウム依存性の活動電位である。
【0037】
また、本発明は、(a)本明細書に開示するバイパスブリッジのうちのいずれかを包装材料内に含有する包装材料を含むキットも提供する。また、キットは、バイパスブリッジを心臓に移植するためのラベルおよび指示も含有することができ、それによって、対象の心臓の損傷した伝導に関連する障害、または対象の心臓の損傷した伝導および損傷した洞房結節の活動の両方に関連する障害を治療する。
【0038】
また、本発明は、(1)本明細書に開示するバイパスブリッジのうちのいずれかと、(2)電子工学的ペースメーカーおよび/または生物学的ペースメーカーとを含むタンデム型のペースメーカーシステムも提供し、バイパスブリッジは、電子工学的ペースメーカーおよび/または生物学的ペースメーカーと併行して動作して、心臓の律動の状態を、生物学的ペースメーカーまたは電子工学的ペースメーカーを単独で使用する場合と比較して、より効果的に治療する。種々の実施形態では、バイパスブリッジは、AVブリッジである。生物学的ペースメーカーまたは電子工学的ペースメーカーは、正常な安静時の洞房結節のペースメーカーレベルのペーシングレベル、それにほぼ等しいレベル、それを上回るレベル、またはそれを下回るレベルを有することができる。生物学的ペースメーカーまたは電子工学的ペースメーカーを、本明細書に記載するAVブリッジと併行して使用する実施形態では、自然のAV結節を、切断する場合がある。バイパスブリッジを含むタンデム型ペースメーカーシステムのさらなる詳細は、米国仮特許出願第60/701312号(2005年7月21日出願);第60/781723号(2005年3月14日出願)、および2006年7月21日に本出願と同時出願の第11/ 号(未付与)、標題「Tandem Cardiac Pacemaker Systems」に見出すことができる。上記の出願の全内容が、参照によって本明細書に組み入れられている。
【0039】
また、本発明は、心臓に移植するためのバイパスブリッジを作製する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入し、そこで機能的に発現させるステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、心臓の2つの選択された部位に付着することができる第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップとを含み、当該細胞は、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続している。この方法のある実施形態は、ペースメーカーイオンチャネルをコードする核酸を、当該経路の細胞に形質移入するステップもさらに含み、当該核酸を機能的に発現させ、その結果、当該細胞内でペースメーカー電流を誘発する。好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルは、当該経路の第1末端の細胞内で発現する。より好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルを発現する細胞は、第1末端から0.5mm延長した領域に位置する。これらの実施形態では、形質移入を第1末端部分に制限するために、ペースメーカーチャネル遺伝子を第1末端に導入するのに使用する形質移入の方法を、局所的に適用してもよいし、物理的な障壁を使用して当該経路の遠位の部分から隔ててもよい。
【0040】
種々の実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルは、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、またはその変異体もしくはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である。即時方法の好ましい実施形態では、細胞は、hMSCまたはhESCであり、当該細胞は、実質的に分化できない。さらなる実施形態では、ヒト成体間葉系幹細胞は、(a)CD29、CD44、CD54およびHLAクラスIの表面マーカーを発現するが、(b)CD14、CD34、CD45およびHLAクラスIIの表面マーカーを発現しない。さらに別の実施形態では、ヒト成体間葉系幹細胞は、少なくとも9回継代されている。
【0041】
バイパスブリッジを作製するための即時方法の追加の実施形態では、少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入し、そこで発現させるステップもさらに含み、その結果、バイパスブリッジの心臓への移植によって、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる。
【0042】
バイパスブリッジを作製するための即時方法の変法は、(a)細胞を増殖させて、心臓の2つの選択された部位に付着することができる第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、当該細胞は、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、その後の(b)ナトリウムチャネルをコードする核酸、および所望によりその他のイオンチャネル遺伝子および/またはペースメーカーチャネル遺伝子を、細胞に形質移入し、そこでそれらを機能的に発現させるステップとを含む。
【0043】
さらに、本発明は、バイパスブリッジを心臓に移植する方法も提供し、この方法は、(a)細胞の経路を含むバイパスブリッジを、本明細書に開示する方法のうちのいずれかによって作製するステップと、(b)心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、(c)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、それによって、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にするバイパスブリッジを心臓に移植する。その他の実施形態は、ペースメーカーイオンチャネルをコードする核酸を、当該経路の細胞に形質移入するステップもさらに含み、当該核酸を機能的に発現させ、その結果、当該細胞内でペースメーカー電流を誘発する。好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルは、当該経路の第1末端の細胞内で発現する。より好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルを発現する細胞は、第1末端から0.5mm延長した領域に位置する。その他の実施形態では、第1部位は心房内にあり、第2部位は心室内にあり、その結果、心房から心室への経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝播が可能となる。即時方法の異なる実施形態では、洞房結節、電子工学的ペースメーカー、生物学的ペースメーカー、またはバイパスブリッジ内のペースメーカー電流を発現する細胞が、ペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流を、心房において発生させる。さらなる実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルは、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、またはその変異体もしくはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である。
【0044】
即時方法の追加の実施形態では、バイパスブリッジの経路の細胞は、幹細胞、心筋細胞、少なくも1種の心臓のコネキシンを発現するように操作された繊維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞である。種々の実施形態では、幹細胞は、成体MSCまたはESCであり、当該細胞は、実質的に分化できない。好ましい実施形態では、幹細胞は、hMSCまたはhESCであり、当該幹細胞は、実質的に分化できない。その他の実施形態では、少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入し、そこで発現させるステップもさらに含み、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる。さらなる実施形態では、当該の少なくとも1種のコネキシンが、Cx43、Cx40またはCx45である。
【0045】
また、本発明は、対象の心臓の損傷した伝導に関連する障害を治療する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入するステップであって、当該細胞が、ナトリウムチャネルを機能的に発現するステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、当該細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、(c)それらの部位の間で伝導が損傷している対象の心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、(d)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する。
【0046】
本明細書で使用する場合、障害を「治療する」とは、障害に苦しむ対象に、障害および/またはその症状の減弱、寛解または後退を経験させることを意味するものとする。種々の実施形態では、障害および/またはその症状の再発を阻止する。好ましい実施形態では、対象は、障害および/またはその症状から治癒する。核酸を「機能的に発現する」とは、当該核酸が導入されている細胞またはその他の生物学的な系が、当該核酸がコードする機能的なポリペプチドを産生することを意味するものとする。また、コードされるポリペプチド自体についても、機能的に発現するという。
【0047】
さらに、本発明は、対象の心臓の損傷した伝導および損傷した洞房結節の活動に関連する障害を治療する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルをコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入するステップであって、当該細胞が、ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルを機能的に発現するステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、当該細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、(c)それらの部位の間で伝導が損傷している心臓の左心房の第1部位、および第2部位を選択するステップと、(d)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、その結果、洞房結節が発生させたペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝播、ならびに/あるいは当該の2つの部位の間の細胞の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する。
【0048】
即時方法の実施形態では、細胞は、hMSCまたはhESCであり、当該幹細胞は、実質的に分化できない。種々の実施形態では、少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、当該経路の細胞に形質移入し、そこで発現させるステップもさらに含み、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる。さらなる実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルは、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、またはその変異体もしくはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である。
【0049】
本発明は、即時型の発明のバイパスブリッジを含む多様なキットに加えて、バイパスブリッジを作製するための方法、バイパスブリッジを心臓に移植する方法、および障害を治療する方法を包含し、それらは、本明細書に開示するバイパスブリッジの異なる実施形態のそれぞれに対応する。これらのキットおよび方法の変法は、必ずしも本明細書で個別に詳細に記載されているとは限らないが、当業者には、バイパスブリッジの異なる実施形態の開示に基づけば、それらを容易に明らかにし、理解できるであろう。したがって、本明細書に記載する種々の実施形態を、適宜、本発明のバイパスブリッジ、キットおよび方法に同等に適用することができる。
【0050】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提示し、いかなる場合においても、実施例に続く特許請求の範囲に記載する本発明を制限する意図はなく、そのように解釈してはならない。これらの実施例は、組換え核酸ベクターの構築、宿主細胞へのそのような組換えベクターの形質移入、および形質移入細胞における遺伝子の機能的な発現に使用する方法等の当業者に周知の実験方法の詳細な説明を含まない。そのような従来法の詳細な説明は、全内容が本明細書に組み入れられているSambrookら(1989年)を含む、多数の刊行物に提供されている。
【実施例1】
【0051】
ギャップ結合共役ヒト間葉系幹細胞の培養
細胞培養
ヒト間葉系幹細胞(hMSC;間葉系幹細胞、ヒト骨髄;Poietics(商標))を、Clonetics/BioWhittaker(Walkersville、メリーランド州、米国)から購入し、間葉系幹細胞(MSC)増殖培地で培養し、継代2〜4回後に使用した。単離および精製したhMSCは、独特の特性、すなわち、正常な核型およびテロメラーゼ活性を失うことなく、多数(12)回培養することができる(van den Bosら、1997年;Pittengerら、1999年)。
【0052】
ラットCx40、ラットCx43またはマウスCx45を形質移入したHeLa細胞を、hMSCと共に同時培養した。形質移入HeLa細胞の産生、特徴付けおよび培養条件は、過去に記載されている(Elfgangら、1995年;Valiunasら、2000年;2002年)。
【0053】
抗コネキシン抗体、免疫蛍光標識化および免疫ブロット解析
Cx40、Cx43およびCx45の市販され入手可能なマウス抗コネキシンモノクロナール抗体およびマウス抗コネキシンポリクロナール抗体(Chemicon International製、Temecula、カリフォルニア州)を、以前の記載(LaingおよびBeyer、1995年)に従って、免疫染色および免疫ブロットに使用した。フルオレセイン結合ヤギ抗マウスIgGまたはフルオレセイン結合ヤギ抗ウサギIgG(ICN Biomedicals,Inc.製、Costa Mesa、カリフォルニア州)を、二次抗体として使用した。
【0054】
ギャップ結合の電気生理学的測定
付着細胞を有するカバーガラスを、NaCl、150;KCl、10;CaCl2、2;Hepes、5(pH 7.4);グルコース、5(それぞれ、mM)を含有する浴溶液を用いて室温(〜22℃)で灌流した実験チャンバーに移動させた。パッチピペットを、アスパラギン酸カリウム、120;NaCl、10;MgATP、3;Hepes、5(pH 7.2);EGTA、10(pCa〜8)(それぞれ、mM)を含有し、0.22μmのポアでろ過した溶液で充填した。充填後、ピペットの抵抗を測定すると、1〜2MΩであった。実験を、二重電位固定を使用して細胞対上で行った。この方法によって、膜電位(Vm)の制御および関連する接合部の電流(Ij)の測定が可能となった。
【0055】
色素流動研究
ギャップ結合チャネルを介する色素の移動を、細胞対を使用して調査した。Lucifer Yellow (LY;Molecular Probes製)を、2mMの濃度に達するまでピペット溶液に溶解させた。16ビット、64000ピクセルの白黒濃淡のデジタルCCDカメラ(LYNXX 2000T、SpectraSource Instruments製、Westlake Village、カリフォルニア州)を使用して、蛍光色素の細胞から細胞への広がりの像を撮影した(Valiunasら、2002年)。非相同的な対を用いた実験では、LYを、Cell Tracker Greenでタグ化した細胞に常に注入した。注入細胞のLYに由来する蛍光強度は、Cell Tracker Greenからの初めの蛍光よりも10〜15倍高かった。
【0056】
ヒトMSCがコネキシンを発現する。
コネキシンであるCx43およびCx40は、典型的な点状の染色によって証明されるように、密接な細胞から細胞への接触領域に沿って、かつ培養により単層として増殖したhMSCの細胞質の領域内に免疫局在した(図4AおよびB)。また、Cx45の染色も検出されたが、Cx43およびCx40の染色とは異なり、細胞内のコネキシンの分布の典型的なものではなかった。むしろ、その特徴は、微細な顆粒状の細胞質性および網様の染色であり、膜に結合するプラークは容易には観察されなかった(図4C)。これは、Cx45チャネルの存在の可能性を排除するわけではなく、Cx43およびCx40のホモタイプ、ヘテロタイプおよびヘテロマーのチャネルと比較して、Cx45チャネルの数が少ないことを意味する。図4Dは、イヌ心室筋細胞およびhMSCのCx43ポリクロナール抗体を用いたウエスタンブロット解析を示し、これは、Cx43のhMSC中の存在をさらに証明している。
【0057】
hMSCと種々の細胞系との間のギャップ接合部の共役
hMSC間のギャップ接合部の共役を、図5に示す。hMSCの対の間で記録した接合部の電流は、準対称的(図5A)および非対照的(図5B)な電位依存性を示し、これらは、振幅は等しいが、符号が反対の、20mVずつ増加させる±10mVから±110mVまでの対称的な10秒の接合部を越える電位の段階(Vj)に応答して生じたものである。これらの挙動は、Cx43およびCx40を同時発現する細胞で典型的に観察される(Valiunasら、2001年)。
【0058】
図5Cは、hMSC対から得たデータの概要を示す。規準化した瞬時(gj,inst、○)および定常状態(gj,ss、●)のコンダクタンスの値をVjに対してプロットした(それぞれ、各Vj段階の初めおよび終わりに決定した)。左のパネルは、5つのhMSC対からの準対称的な関係を示す。実線の曲線は、データのボルツマンの式への最良のフィッティングを示し、それは、以下のパラメーターを有する:負/正のVjのそれぞれについて、非活性化半量電位、Vj,0=-70/65mV;最小gj、gj,min=0.29/0.34;最大gj、gj,max=0.99/1.00;ゲーティング電荷、z=2.2/2.3。6つの非対照的な場合からのプロットの概要を、右のパネルに示す。gj,ssは、負のVjでは、S字型を示して減少し、正のVjに対しては、電位感受性の低下を示した。負のVjでのボルツマンフィッティングは、以下の値を示した:Vj,0=-72mV、gj,min=0.25、gj,max=0.99、z=1.5。
【0059】
図5DおよびEは、hMSC対からの典型的なマルチチャネル記録を示す。120mMアスパラギン酸Kをピペット溶液として使用して、チャネルを、28〜80pSの範囲の単位コンダクタンスで観察した。〜50pSのコンダクタンスでのチャネルの動作(図5Dを参照)は、Cx43のホモタイプのチャネルについて過去に公表された値(Valiunasら、1997年;2002年)と一致する。このことは、その他のチャネルの型の存在を締め出すわけではなく、hMSCにおいてはCx43が機能的なチャネルを形成することを示唆するに過ぎない。
【0060】
共役の性質をさらに定義するために、hMSCを、Cx43、Cx40およびCx45を安定に形質移入したヒトHeLa細胞と共に同時培養した(Elfgangら、1995年)ところ、hMSCは、全てのこれらの形質移入体と共役できることを見出した。図6Aは、hMSCとHeLaCx43との細胞対の間で記録した接合部の電流の例を示し、これは、一連(±10mVから±110mVまで)の対称的な接合部を越える電位の段階(Vj)に応答した、対称的および非対称的な電位依存性電流を現した。準対称的な記録は、優位な機能的なチャネルは、ホモタイプのCx43であることを示唆し、非対称的な記録は、hMSCにおける別のコネキシン(免疫組織化学が示すように、多分Cx40であろう。図4を参照)の活性を示唆し、これは、ヘテロタイプまたはヘテロマーの形態のいずれか、あるいは両方であろう。これらの記録は、形質移入細胞、すなわち、Cx40およびCx43のへテロタイプおよび混合(ヘテロマー)の形態について公表された記録(Valiunasら、2000年;2001年)に類似する。また、hMSCとCx40を形質移入したHeLa細胞との同時培養(図6B)も、hMSCにおけるCx43およびCx40の同時発現と一致する対称的および非対称的な電位依存性接合部電流を示し、これは、Cx43 HeLa-hMSC対のデータに類似した。hMSCと共役した、Cx45を形質移入したHeLa細胞は、Cx45(HeLa)側が負である場合には、明白な電位ゲーティングを有する非対称的な接合部電流を常に生じた(図6C)。これは、Cx43およびCx40の両方が、Cx45とヘテロタイプのチャネルを形成すると、非対称的な電流を発生させることから、hMSCにおける優位なチャネルの形態がCx43およびCx40である(Valiunasら、2000年;2001年)ことと一致する。これは、hMSCにおいて機能するチャネルとして、Cx45を排除するわけではなく、Cx45は、hMSCにおいては、細胞から細胞への共役に副次的に寄与することを示す。Cx45の免疫染色において可視化したプラークを認めないこと(図7)は、この解釈をさらに支持するものである。
【0061】
hMSCと形質移入HeLa細胞との間の対からのgj,ss対Vjのプロットの概要を、図6Dに示す。左のパネルは、hMSC-HeLaCx43対からの結果を示す。対称的なデータ(●、4つの標本)の場合、ボルツマンフィッティング(実線)から以下のパラメーターを得た:負/正のVjについて、Vj,0=-61/65mV、gj,min=0.24/0.33、gj,max=0.99/0.99、z=2.4/3.8。非対称的なデータ(○、3つの標本)の場合、負のVjの値でのボルツマンフィッティング(実線)は、以下のパラメーターの値を示した:Vj,0=-70mV、gj,min=0.31、gj,max=1.00、z=2.2。中央のパネルは、hMSC-HeLaCx40対からのデータを示し、3つの対称的(●)および2つの非対称的(○)なgj,ss-Vjの関係を含む。実線は、対称的なデータのボルツマンフィッティングに対応し(負/正のVjについて、Vj,0=-57/76mV、gj,min=0.22/0.29、gj,max=1.1/1.0、z=1.4/2.3)、破線は、非対称的なデータのフィッティングである(負/正のVjについて、Vj,0=-57/85mV、gj,min=0.22/0.65、gj,max=1.1/1.0、z=1.3/2.2)。hMSC-HeLaCx45細胞対からの6回の完了した実験からのデータを、右のパネルに示す。gj,ss対Vjのプロットは、非対称性が強く、正のVjの値でのデータのボルツマンの式への最良のフィッティングは、以下のパラメーターの値を示した:Vj,0=31mV、gj,min=0.07、gj,max=1.2、z=1.8。
【0062】
図6Eは、Lucifer YellowのhMSCからhMSCへ(上のパネル)、HeLaCx43からhMSCへ(中央のパネル)、およびhMSCからHeLaCx43へ(下のパネル)の移動を示す。細胞対の接合部のコンダクタンスを、以前に記載された方法(Valiunasら、2002年)によって同時に測定したところ、それぞれ、〜13、〜16および〜18nSのコンダクタンスを示した。Lucifer Yellowの移動は、HeLa細胞中でのホモタイプのCx43または同時発現したCx43およびCx40に関して過去に報告されたもの(Valiunasら、2002年)に類似した。Cell Tracker Green(Molecular Probe製)を、2つの細胞集団のうちの1つに常に使用して、非相同的な対の同定を可能にした(Valiunasら、2000年)。Lucifer Yellowを、細胞トレーサーを含有する細胞に常に送達した。Cell Tracker Greenが発生させた強度は、Cell Tracker Greenの蛍光を発する細胞に送達したLucifer Yellowの濃度によって発生した蛍光強度よりも10〜15倍弱かった。
【0063】
また、図7に示すように、ヒトMSCを、成体イヌ心室筋細胞と共に同時培養した。図7Aに示すように、Cx43の免疫染色を、桿状の心室筋細胞とhMSCとの間に検出した。hMSCは、心筋細胞と電気的に共役する。巨視的(図7B)およびマルチチャネル(図7C)の両方の記録を得た。図7Bの接合部の電流は、非対称的であり、図7Cの接合部の電流は、ホモタイプCx43チャネルまたはヘテロタイプCx43-Cx40チャネルまたはホモタイプCx40チャネルの動作の結果、典型的に生じる大きさの範囲の単一の現象を示す(Valiunasら、2000年;2001年)。また、コンダクタンスがホモタイプまたはヘテロタイプの形態と同一またはそれに類似するヘテロマーの形態も可能である。
【0064】
細胞対の研究によって、hMSCと、その他のhMSCと(13.8±2.4nS、n=14)、HeLaCx43と(7.9±2.1nS、n=7)、HeLaCx40と(4.6±2.6nS、n=5)、HeLaCx45と(11±2.6nS、n=5)、および心室筋細胞と(1.5±1.3nS、n=4)の有効な共役が実証された。
【0065】
これらのデータは、MSCが多くの組織の電気的な合胞体に容易に統合して、修復を促進するまたは治療的送達システムのための基質として役立つはずであることを示唆する。特に、データは、hMSCの心臓組織の修復のための治療的基質としての使用の可能性を支持している。また、血管平滑筋細胞または内皮細胞等のその他の合胞体も、Cx43およびCx40の偏在性から、hMSCと共役することができるはずである(Wangら、2001年;Beyer、1993年)。したがって、また、それらの合胞体も、hMSCに基づく治療学の対象となることができる。例えば、hMSCに形質移入して、イオンチャネルを発現させることができ、次いで、これらのイオンチャネルは、周囲の合胞体組織に影響を及ぼすことができる。または、hMSCに形質移入して、ギャップ結合を透過することが可能な小型の治療的分子を産生する遺伝子を発現させて、レシピエントの細胞に影響を及ぼすことができる。さらに、短期の治療の目的で、レシピエントの細胞に送達するために、小型の分子をhMSCに直接積むこともできる。そのようなアプローチの成功は、レシピエントの細胞への治療薬の送達のための最終的な導管としてのギャップ結合チャネルによって決まる。最初のアプローチの実現可能性は、HCN2形質移入hMSCを自然と律動を生じるイネの心臓に送達することにより、本明細書で実証されている。
【実施例2】
【0066】
心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したイオンチャネル
本明細書で先に記載したように、hMSCは、物理的に接続している細胞の経路が、電気信号を電気的な伝導によって伝えるのを可能にするギャップ結合を形成する。ギャップ結合の形成を増強するために、心臓のコネキシンであるCx43、Cx40またはCx45のうちの少なくとも1種をコードする1種または複数の核酸を細胞内で機能的に発現させることによって、電気信号の細胞から細胞への伝播を容易にすることができる。また、ナトリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニット、あるいはL型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニットをコードする1種または複数の核酸を細胞内で発現させると、波面の電気的な伝播の可能性に加え、ナトリウム依存性またはカルシウム依存性の活動電位による能動的な伝播の可能性も高まる。その上、細胞内のカリウムチャネルの発現は、活動電位による能動的な伝播の可能性を高め、さらに、初期の静止電位ならびに再分極の電位-時間経過および不応性を制御する手段も提供する。
【0067】
SKM-1ナトリウムチャネルおよびL型カルシウムチャネルの生物物理学的な特性を評価して、心臓バイパスブリッジにおける活動電位の提供に関して、それらの適性を調査した。アフリカツメガエルの卵母細胞中で測定したSKM-1ナトリウムチャネルの不活性化の特性を、図8に示し、アフリカツメガエルの卵母細胞中でのSKM-1チャネルのI-V関係を、図9に示す。CaV1.2、アルファ2およびガンマ、P1.b、ならびに赤色蛍光レポーターを、HEK293細胞内で同時発現させた。図10は、赤色蛍光細胞内で記録したCa2+電流を示す。
【0068】
SKM-1ナトリウムチャネルおよびL型カルシウムチャネルを使用して、バイパスブリッジの伝導性を「微調整」して、これが必要とされる範囲に収める。本明細書に記載するバイパスブリッジの一実施形態は、AVブリッジである。ナトリウムチャネルは、通常非常に迅速な伝導に関わるのに対して、AVバイパスは、最も効率的に動作するには、より緩慢に伝導する必要があることから、ナトリウムチャネルのAVブリッジへの組入れは、反直感的とみなされるかもしれない。しかし、細胞間の共役の程度を操作することができるので、普通であれば迅速に伝播するチャネルを使用して、このようなチャネルにより緩慢な伝導を期待することが可能である。内向きカルシウム電流の場合、カルシウムチャネルの組入れは、心臓の活動電位のプラトーを上昇させ、再分極および不応性を延長させるであろう。その上、カリウムチャネルの機能的な発現は、再分極を加速させ、したがって、不応性を短縮することができる。したがって、ナトリウム電流、カルシウム電流およびカリウム電流、ならびに細胞共役を操作することによって、心臓の電気的な活動の特徴を、それに対応して操作することが可能である。
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1A】マウスおよびヒトのHCN2ポリペプチド配列のアライメントを示す図である。マウスHCN2ポリペプチド配列とヒトHCN2ポリペプチド配列とを、最大の一致となるようにアライメントさせている。mHCN2およびhHCN2のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号 および配列番号 に記載する。
【図1B】マウスおよびヒトのHCN2ポリペプチド配列のアライメントを示す図である。マウスHCN2ポリペプチド配列とヒトHCN2ポリペプチド配列とを、最大の一致となるようにアライメントさせている。mHCN2およびhHCN2のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号 および配列番号 に記載する。
【図2】ヒトHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を示す図である。陰影をつけた配列のN末端部分は、hHCN2に由来し、下線を引いた膜貫通部分は、hHCN1に由来し、(陰影も下線もない)C末端部分は、hHCN2に由来する。hHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を、配列番号 に記載する。最大の一致となるようにアライメントさせた場合、この889個のアミノ酸長のキメラhHCN212の配列は、893残基のオーバーラップにおいて、863個のアミノ酸長のmHCN212の配列と91.2%の同一性を示す。
【図3】マウスHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を示す図である。陰影をつけた配列のN末端部分は、マウスHCN2に由来し、下線を引いた膜貫通部分は、マウスHCN1に由来し、(陰影も下線もない)C末端部分は、マウスHCN2に由来する。マウスHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を、配列番号 に記載する。最大の一致となるようにアライメントさせた場合、この863個のアミノ酸長のキメラmHCN212の配列は、893残基のオーバーラップにおいて、889個のアミノ酸長のhHCN212の配列と91.2%の同一性を示す。
【図4】図4A:ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。Cx43免疫染色。図4B:ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。Cx40の免疫染色。図4C:ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。Cx45の免疫染色。図4D:ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。イヌ心室筋細胞およびhMSCにおけるCx43の免疫ブロット解析。心室細胞またはhMSCからの全細胞可溶化液(120μg)をSDSで分解し、メンブランに移動させ、Cx43抗体を用いてブロットした。分子量マーカーを示す。
【図5A】hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。対称的な双極性パルスプロトコール(10秒、±10mVから±110mVまで、Vh=0mV)を使用してhMSCから誘発されたギャップ結合電流(Ij)は、非対称的な電位依存性電流非活性化を示した。
【図5B】hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。対称的な双極性パルスプロトコール(10秒、±10mVから±110mVまで、Vh=0mV)を使用してhMSCから誘発されたギャップ結合電流(Ij)は、非対称的な電位依存性電流非活性化を示した。
【図5C】hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。規準化した瞬時(○)および定常状態(●)のgjのVjに対するプロットの概要。左のパネル、5つの対からの準対称的な関係;実線、ボルツマンフィッティング:負/正のVjについて、Vj,0=-70/65mV、gj,min=0.29/0.34、gj,max=0.99/1.00、z=2.2/2.3。右のパネル、6つの対からの非対称的な関係;負のVjでのボルツマンフィッティング:Vj,0=-72mV、gj,min=0.25、gj,max=0.99、z=1.5。
【図5D】hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。hMSCの対からの単一チャネルの記録。パルスプロトコール(V1およびV2)、およびVjを±80mVに維持した間の細胞対から記録した、関連するマルチチャネル電流(I2)。別々の電流の段階は、単一チャネルの開口および閉鎖を示す。破線:電流レベルゼロ。右手側の全ての点の電流ヒストグラムは、〜50pSのコンダクタンスを示す。
【図5E】hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。hMSCの対からの単一チャネルの記録。パルスプロトコール(V1およびV2)、およびVjを±80mVに維持した間の細胞対から記録した、関連するマルチチャネル電流(I2)。別々の電流の段階は、単一チャネルの開口および閉鎖を示す。破線:電流レベルゼロ。右手側の全ての点の電流ヒストグラムは、〜50pSのコンダクタンスを示す。
【図6A】hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。hMSC-HeLaCx43対において、一連の5秒電位段階(Vj)に応答して誘発されたIj。上、対称的な電流の非活性化;下、非対称的な電流の電位依存性。
【図6B】hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。hMSC-HeLaCx40対からの巨視的なIjの記録は、対称的(上のパネル)および非対称的(下のパネル)な電位依存性の非活性化を示す。
【図6C】hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。Cx45側が相対的に負である場合、hMSC-HeLaCx43対からの非対称的なIjは、電位依存性のゲーティングを示す。hMSCから記録したIj。
【図6D】hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。hMSCと形質移入したHeLa細胞との間の対からのgj,ss対Vjのプロット。左のパネル、hMSC-HeLaCx43対、準対称的な関係(●)および非対称的な関係(○);実線および破線は、ボルツマンフィッティングである(詳細は本文を参照)。中央のパネル、hMSC-HeLaCx40対からの対称的な関係(●)および非対称的な関係(○);実線および破線は、ボルツマンフィッティングに対応する(詳細は本文を参照)。右のパネル、hMSC-HeLaCx45細胞対からの非対称的な関係;実線、正のVjでのボルツマンフィッティング(詳細は本文を参照)。
【図6E】hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。細胞対における細胞から細胞へのLucifer Yellow(LY)の広がり:hMSCからhMSCへ(上のパネル)、HeLaCx43からhMSCへ(中央のパネル)、およびhMSCからHeLaCx43へ(下のパネル)。全ての場合に、2mM LYを含有するピペットを、全細胞配置の左手側の細胞に付着させた。色素注入12分後に撮影した落射蛍光顕微鏡による顕微鏡写真は、LYの隣接する(右手の)細胞への広がりを示している。同時に測定した接合部のコンダクタンスは、それぞれの対で、〜13nS、〜16nSおよび〜18nSのgjを示した。全ての実験において、Cell Tracker Greenを使用して、hMSCからHeLa細胞、またはHeLa細胞からhMSCを区別した。
【図7A】hMSC-イヌ心室細胞対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。筋細胞を12から72時間の間に播種し、hMSCと共に6から12時間同時培養してから、共役を測定した。hMSC-イヌ心室細胞対の場合のCx43の局在化。Cx43の大部分が、心室細胞の末端に局在化し、Cx43の少量は、外側の境界に沿って存在した。強力なCx43の染色が、桿状の心室細胞(中央の細胞)の末端とhMSC(右の細胞)の間に検出された。左側では、心室細胞とhMSC細胞との間には、Cx43の染色は検出されていない。
【図7B】hMSC-イヌ心室細胞対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。筋細胞を12から72時間の間に播種し、hMSCと共に6から12時間同時培養してから、共役を測定した。上、hMSC-イヌ心室筋細胞対の位相差顕微鏡写真。下、単極パルスプロトコール(V1およびV2)、および非対称的な電位依存性を示す関連する巨視的な接合部の電流(I2)。
【図7C】hMSC-イヌ心室細胞対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。筋細胞を12から72時間の間に播種し、hMSCと共に6から12時間同時培養してから、共役を測定した。上、対称的な二相性の60mVパルスによって誘発されたマルチチャネル電流。破線、電流レベルゼロ。点線、チャネルの開口および閉鎖を示す別々の電流の段階を示す。電流ヒストグラムは、〜40から50pSのコンダクタンスを生じた。下、Vjを60mVに維持した間のマルチチャネルの記録。電流ヒストグラムは、48〜64pSのいくつかのコンダクタンスを示し、84pSから99pSのコンダクタンスを有するいくつかの現象(矢印)を伴い、これは、Cx43チャネル、ヘテロタイプCx43-Cx40チャネルおよび/またはホモタイプCx40チャネルの動作に類似する。
【図8】図8A:心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したナトリウムチャネルの不活性化の特性を示す図である。アフリカツメガエルの卵母細胞中で測定したSKM-1ナトリウムチャネルの不活性化の特性を示している。保持電位は、-100mVから-55mVに及び、試験電位は、+30mVであった。図8B:心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したナトリウムチャネルの不活性化の特性を示す図である。アフリカツメガエルの卵母細胞中で測定したSKM-1ナトリウムチャネルの不活性化の特性を示している。11個の卵母細胞から得た平均不活性化曲線。
【図9】図9A:心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したナトリウムチャネルのI-V関係を示す図である。アフリカツメガエルの卵母細胞中で記録したSKM-1チャネルのI-V関係を、ここに示す。-80mVの保持電位から10mVずつ増加させる-70mVと+50mVとの間の電位までで記録した生データ。図9B:心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したナトリウムチャネルのI-V関係を示す図である。アフリカツメガエルの卵母細胞中で記録したSKM-1チャネルのI-V関係を、ここに示す。ピーク内向きI-V関係。
【図10】心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したカルシウムチャネルの生物物理学的な特性を示す図である。CaV1.2、アルファ2およびガンマ、P1.b、ならびに赤色蛍光レポーターを、HEK293細胞内で同時発現させた。Ca2+電流を、赤色蛍光細胞内で記録した。細胞を、-50mVで保持した。試験パルス(60ミリ秒)は、10mV間隔の-40mVから+50mVまでであった。
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する発明は、米国国立保健研究所からのNIH助成金第HL-28958号による米国政府の支援を受けて実施された。したがって、米国政府は、本発明の特定の権利を有する。
【0002】
本出願は、全内容が参照によって本明細書に組み入れられている米国仮特許出願第60/704210号、2005年7月29日出願;第60/701312号、2005年7月21日出願;および第60/781723号、2006年3月14日出願の利益を主張する。
【0003】
本出願全体にわたり、種々の刊行物を参照し、それらの著者名および日付、特許番号、特許出願番号または特許公開番号を括弧内に示す。これらの刊行物を、特許請求の範囲の直前の明細書の末尾に、全て列挙する。本明細書において本発明を記載し、特許請求する時点におけるそれら刊行物中の現況技術を当業者に向けてより完全に記載するために、これらの刊行物の全体の開示が参照によって本出願に組み入れられている。しかし、本明細書への参考文献の引用を、そのような参考文献が本発明の先行技術であると認めるものであると解釈してはならない。
【0004】
本発明は、ナトリウムチャネルを機能的に発現するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジに関するものであり、当該経路の2つの末端は、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となる。
【背景技術】
【0005】
電子工学的ペースメーカーは、洞房結節、房室性の伝導またはその両方が停止した状況下で、規則的な心拍を提供する救命デバイスである。したがって、電子工学的ペースメーカー療法の主要な適応症の1つに、正常に機能する洞房結節の活動電位が、心室に伝播できないような高度心ブロックがある。その結果、心室停止および/または細動、そして死に至る。
【0006】
ペースメーカー細胞の機能障害または損失が、疾患または加齢によって生じる。例えば、急性心筋梗塞(MI)により、毎年数百万人が死亡し、生存者においては、一般的に筋細胞数および心臓のポンプ機能の著しい低下を誘発する。成体の心筋細胞は、ごく稀にしか分裂せず、筋細胞の損失に対する通常の応答として、代償性肥大および/またはうっ血性心不全が含まれ、うっ血性心不全は、顕著な年間死亡率を有する。骨髄由来および/または循環中のヒト間葉系幹細胞(hMSC)の心筋梗塞後の患者の心臓への送達により、機械的性能の何らかの改善が得られ(Strauerら、2002年;Perinら、2003年)、明白な毒性はなかったとの最近の報告がある。これらおよびその他の動物実験(Orlicら、2001年)から、hMSCは、心臓合胞体内に取り込まれ、次いで、新しい心臓細胞に分化して、機械的機能を回復すると推定される。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/704210号
【特許文献2】米国仮特許出願第60/701312号
【特許文献3】米国仮特許出願第60/781723号
【特許文献4】米国仮特許出願第60/ 号(未付与)、標題「Chimeric HCN Channels」、2006年7月21日出願
【特許文献5】米国特許出願第10/342506号
【特許文献6】米国仮特許出願第60/715934号
【特許文献7】米国特許第6783979号
【特許文献8】米国仮特許出願第11/・・・号(未付与)、標題「Tandem Cardiac Pacemaker Systems」、2006年7月21日出願
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
細胞治療の別の適用を、本明細書は記載し、これは、hMSC等の細胞を増殖させて、ギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジとすることになり、このバイパスブリッジを使用して、損傷した電気的な伝導を示す心臓の領域を横断してペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流を伝えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示する発明は、第1末端および第2末端を有するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジを提供し、両末端が、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、当該細胞は、ナトリウムチャネルを機能的に発現する。バイパスブリッジの特定の実施形態では、当該経路の細胞は、さらにペースメーカーイオンチャネルも機能的に発現し、これは、ペースメーカー電流を誘発し、その結果、当該細胞内でペースメーカー電流を誘発する。好ましい実施形態では、細胞の経路の第1末端は、心房に付着することができ、かつ第2末端は、心室に付着することができ、その結果、心房から心室への経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にする房室(AV)性のブリッジを形成する。
【0009】
また、本発明は、心臓に移植するためのバイパスブリッジを作製する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸、および所望によりペースメーカーイオンチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入し、そこでそれらを機能的に発現させるステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、心臓の2つの選択された部位に付着することができる第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップとを含み、当該細胞は、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続している。
【0010】
さらに、本発明は、バイパスブリッジを心臓に移植する方法も提供し、この方法は、(a)バイパスブリッジを、本明細書に開示する方法のうちのいずれかによって作製するステップと、(b)心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、(c)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、それによって、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にするバイパスブリッジを心臓に移植する。
【0011】
また、本発明は、対象の心臓の損傷した伝導に関連する障害を治療する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入するステップであって、当該細胞が、ナトリウムチャネルを機能的に発現するステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、当該細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、(c)それらの部位の間で伝導が損傷している心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、(d)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する。
【0012】
さらに、本発明は、対象の心臓の損傷した伝導および損傷した洞房結節の活動に関連する障害を治療する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルをコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入するステップであって、当該細胞が、ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルを機能的に発現するステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、当該細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、(c)それらの部位の間で伝導が損傷している心臓の左心房の第1部位、および第2部位を選択するステップと、(d)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、その結果、洞房結節が発生させたペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝播、ならびに/あるいは当該の2つの部位の間の細胞の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、第1末端および第2末端を有するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジを提供し、両末端が、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、当該細胞は、ナトリウムチャネルを機能的に発現する。バイパスブリッジの特定の実施形態では、当該経路の細胞は、さらにペースメーカーイオンチャネルも機能的に発現し、これは、ペースメーカー電流を誘発し、その結果、当該細胞内でペースメーカー電流を誘発する。好ましい実施形態では、細胞の経路の第1末端は、心房に付着することができ、かつ第2末端は、心室に付着することができ、その結果、心房から心室への経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にする房室(「AV」)性のブリッジを形成し、それによって、心室の収縮を刺激する。
【0014】
また、本発明は、第1末端および第2末端を有するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジも提供し、両末端が、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、当該細胞は、ナトリウムチャネルの代わりに、カリウムチャネルまたはカルシウムチャネルを機能的に発現する。ナトリウムチャネルを発現するバイパスブリッジについて本明細書で開示する実施形態は、カリウムチャネルまたはカルシウムチャネルを発現するバイパスブリッジにも同等に適用できる。
【0015】
当該経路に発展させるために使用することができる例示的な細胞として、これらに限定されないが、幹細胞、心筋細胞、少なくも1種の心臓のコネキシンを発現するように操作された繊維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞があげられる。好ましい実施形態では、幹細胞は、成体間葉系幹細胞(MSC)、または胚性幹細胞(ESC)であり、当該幹細胞は、実質的に分化できない。種々の実施形態では、MSCは、心臓にバイパスブリッジが導入されることになる対象に関して、自家性のもの、同種間のもの、または異種間のものであり、対象は、ヒトである。本明細書で使用する場合、「対象」とは、いずれかの動物または人工的に改変した動物を意味するものとする。動物として、これらに限定されないが、ヒト、非ヒトの霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、フェレット、マウス、ラットおよびモルモット等のげっ歯類、ならびにニワトリおよびシチメンチョウ等の鳥類があげられる。人工的に改変した動物として、これに限定されないが、ヒトの免疫系を有するSCIDマウスがあげられる。好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。
【0016】
即時バイパスブリッジのより好ましい実施形態では、幹細胞は、ヒト成体間葉系幹細胞(hMSC)、またはヒト胚性幹細胞(hESC)であり、当該幹細胞は、実質的に分化できない。その他の実施形態では、hMSCは、(a)CD29、CD44、CD54およびHLAクラスIの表面マーカーを発現するが、(b)CD14、CD34、CD45およびHLAクラスIIの表面マーカーを発現しない。追加の実施形態では、hMSCは、少なくとも9回、好ましくは、9〜12回継代されている。さらなる実施形態では、細胞は、少なくとも1種の心臓のコネキシンをさらに発現する。さらに別の実施形態では、少なくとも1種の心臓のコネキシンは、Cx43、Cx40またはCx45である。
【0017】
したがって、本発明は、機能性ナトリウムイオンチャネル、および所望によりペースメーカーチャネル、および所望によりまたは別法としてカリウムチャネルまたはカルシウムチャネルを組み入れたバイパス経路を心臓に構築する細胞治療の使用に基づくものである。バイパスブリッジを使用して、その間に損傷したペースメーカーおよび/または電気的な伝導が存在する心臓のいずれかの2つの部位の間に、ペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流を伝えることができる。例えば、バイパスを、AVブリッジとして使用して、病的なAV結節の機能を引き継ぐ、またはそれを補充することができる。ヒトMSCを、非生理活性のマトリックス上で培養して増殖させて、2つの末端を含有する細胞の条片または経路とすることができる。増殖が完了したら、経路の一方の端を、心臓の第1の選択部位、例として、心房に、例えば、縫合によって付着させることができ、かつ他方の端を、第2の選択部位、例として、心室に付着させることができる。AVブリッジとして使用するバイパスブリッジの場合、例えば、心房を活性化させる洞房結節が発生させたペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流は、人工的に構築した経路を横断して伝播して、心室を興奮させるであろう。このようにして、房室の活性化の正常な筋道が維持されるであろう。
【0018】
ヒトMSCは、これらに限定されないが、以下を含む、いくつかの方法で調製することができる:
1:追加の伝導の分子決定要因を組み入れない培養。この場合、ペースメーカー信号および/または電気信号を伝達するギャップ結合を形成する細胞自体の能力を、電気的な波を心臓の1つの部位から別の部位へ伝える手段として使用する;
2:心臓のコネキシンであるCx43、Cx40またはCx45のうちの少なくとも1種の遺伝子を導入するための細胞の形質移入、例として、エレクトロポレーションまたはウイルス感染による形質移入に続く培養によって、ギャップ結合の形成を増強し、それによって、ペースメーカー信号/電気信号の細胞から細胞への伝播を容易にする;
3:L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニットをコードする核酸を導入するための細胞の形質移入に続く培養によって、波面の電気的な伝播の可能性に加え、活動電位による能動的な伝播の可能性も高める;
4:ナトリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットをコードする核酸を導入するための細胞の形質移入に続く培養によって、波面の電気的な伝播またはカルシウム依存性の伝播の可能性に加え、ナトリウム依存性の活動電位による能動的な伝播の可能性も高める;
5:上記の3および/または4のカルシウムチャネルのサブユニットおよび/またはナトリウムチャネルのサブユニットをコードする核酸、ならびにカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットをコードする核酸を導入するための細胞の形質移入に続く培養によって、活動電位による能動的な伝播の可能性に加え、初期の静止電位ならびに再分極の電位-時間経過および不応性による追加の制御の可能性も高める;
6:ステップ2から5の組合せ。
【0019】
このように調製したhMSCからのバイパスブリッジの調製によって、心臓のいずれかの2つの選択部位の間のペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能になる。AVブリッジの場合、これは、信号の心房から心室への伝播を容易にするのみならず、心房から心室への収縮の十分な遅延も提供して、心室の充填および排出を最大化し、したがって、心臓の正常な活性化および収縮の筋道を模倣するであろう。さらに、バイパスブリッジの細胞、好ましくは、当該経路の一方の端の細胞にもまた、ペースメーカー電流チャネルをコードする核酸をさらに形質移入し、当該の形質移入細胞に、ペースメーカー電流を発現させる。カルシウム電流、ナトリウム電流、カリウム電流またはペースメーカー電流(If)の増加または減少を、これらの電流を運ぶイオンチャネルの発現を細胞内で増加または減少させることによって得ることができる。これらのアプローチは、洞房結節の疾患の状況で、心房の活動電位の開始を改善するための遺伝子治療および幹細胞技術と共に使用すると、電子工学的な置換術ではない、完全に生理的なシステムを提供する。したがって、本発明の実施形態では、バイパスブリッジは、ペースメーカーイオンチャネルをコードする1種または複数の遺伝子を発現し、それによって、ペースメーカー電流を誘発する。
【0020】
本発明の異なる実施形態では、イオンチャネル遺伝子またはコネキシン遺伝子をコードする核酸を、ウイルスベクターを用いる感染、プラスミドによる形質転換、コスミドによる形質転換、エレクトロポレーション、リポフェクション、形質移入化学試薬を使用する形質移入、熱ショックによる形質移入またはマイクロインジェクションによって、細胞に導入する。さらなる実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、またはレトロウイルスベクターである。
【0021】
即時バイパスブリッジの実施形態では、ナトリウムチャネルは、SKM-1チャネルである。特定の実施形態では、SKM-1チャネルは、アルファサブユニットを含む。その他の実施形態では、SKM-1チャネルは、アクセサリーサブユニットもさらに含む。追加の実施形態では、当該経路は、さらにカリウムチャネルも機能的に発現する。カリウムチャネルは、Kir2.1アルファサブユニットまたはKir2.2アルファサブユニットを含むことができ、アクセサリーサブユニットをさらに含むこともできる。バイパスブリッジの異なる実施形態では、当該経路の細胞は、さらにL型カルシウムチャネルも機能的に発現し、これは、アルファサブユニットおよびアクセサリーサブユニットを含むことができる。さらなる実施形態では、バイパスブリッジを形成する経路の細胞は、さらに少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数を機能的に発現し、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる。種々の実施形態では、当該の少なくとも1種のコネキシンが、Cx43、Cx40またはCx45である。
【0022】
ペースメーカーイオンチャネルを発現するバイパスブリッジの種々の実施形態では、当該ペースメーカーイオンチャネルは、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、またはその変異体もしくはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である。HCNチャネルは、HCN1、HCN2、HCN3またはHCN4のうちのいずれかであることができる。本発明の実施形態では、ペースメーカーチャネルを操作して、進行性に速度を低下させて動作させ、その結果、洞房結節およびプルキンエ系に類似する一次ペースメーカーおよび補助ペースメーカーに相当させる。好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルを、当該経路の第1末端の細胞内で発現させる。より好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルを発現する細胞は、第1末端から0.5mm延長した領域に位置する。
【0023】
過分極活性化カチオン電流は、If、IhまたはIqと呼ばれ、20年以上前に初めて心臓細胞および神経細胞で発見された(総説として、DiFranesco、1993年;Pape、1996年を参照)。これらの電流は、Na+イオンまたはK+イオンによって運ばれ、心臓および神経のペースメーカーの活動、静止電位の設定、入力コンダクタンスおよび長さ定数、ならびに樹状突起の統合を含む、広範な生理機能に寄与する(RobinsonおよびSiegelbaum、2003年;Bielら、2002年を参照)。イオンチャネルのサブユニットのうちの過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)ファミリーが、分子クローニングによって同定されており(総説として、Clapham、1998年;SantoroおよびTibbs、1999年;Bielら、2002年を参照)、非相同的に発現させると、4種の異なるHCNアイソフォームのそれぞれが、自然のIfの主要な特性を有するチャネルを生成することから、HCNチャネルがこの電流に関係がある分子であることが確認される。
【0024】
本明細書で使用する場合、「HCNチャネル」とは、過分極活性化カチオン電流の原因である過分極活性化環状ヌクレオチド依存性イオンチャネルを意味するものとし、この電流は、cAMPによって直接制御され、心臓および脳におけるペースメーカーの活動に寄与する。HCN1、HCN2、HCN3およびHCN4の4種のHCNアイソフォームが存在する。4種のアイソフォームの全てが、脳で発現する。また、HCN1、HCN2およびHCN4は、心臓でも顕著に発現し、HCN4およびHCN1は、洞房結節で優勢であり、HCN2は、心室特異的伝導系で優勢である。「mHCN」は、マウス(murineまたはmouse)のHCNを示し、「hHCN」は、ヒトのHCNを示す。
【0025】
HCNチャネルは、電位開口型K+(Kv)チャネルと同様、4つのサブユニットを有し、各サブユニットは、6つの膜貫通セグメントであるS1〜S6を有する。正に荷電したS4ドメインが、主要な電位センサーを形成し、S5およびS6は、これら2つを連結するS5-S6リンカーと一緒になって、イオン透過経路を含有するポアドメイン、およびイオンの流れを制御するゲートを形成する(Larsson、2002年)。HCNチャネルに関する変異の研究は、S4電位センサー、電位感知のポアの開閉との共役に結びつけられているS4-S5リンカー、ポアを形成するS5、S6およびS5-S6リンカー、C-リンカー、ならびにC末端の環状ヌクレオチド結合ドメイン(CNBD)の変異が、HCNチャネルの活性に影響する点で特に重要である可能性があることを示している。変異HCNを発現するバイパスブリッジの実施形態では、当該変異HCNチャネルは、野生型HCNチャネルと比較した場合、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、保存または増強されたcAMP応答性、および保存または増強された神経液性応答からなる群から選択される改善された特徴を提供する。また、ペースメーカー活動を細胞内で誘発するための変異HCNチャネルは、米国仮特許出願第60/781723号(2006年3月14日出願)、および本出願と同時出願(2006年7月21日)の第60/ 号(未付与)、標題「Chimeric HCN Channels」にも記載されている。また、変異HCNチャネルは、米国特許出願第10/342506号でも議論されている。上記の出願の全内容は、参照によって本明細書に組み入れられている。
【0026】
本発明の特定の実施形態では、変異HCNチャネルは、S4電位センサー、S4-S5リンカー、S5、S6、S5-S6リンカーおよび/またはCリンカー、ならびにCNBDにおいて少なくとも1つの変異を保有し、これらの変異の結果、上記で議論した改善された特徴のうちの1種または複数が得られる。その他の実施形態では、HCN変異体は、E324A-HCN2、Y331A-HCN2、R339A-HCN2またはY331A,E324A-HCN2である。好ましい実施形態では、変異HCNチャネルは、E324A-HCN2である。
【0027】
上記の変異に加えて、異なるHCNアイソフォームにおける多くの変異が報告されている。これらとして、電位の感知および活性化におけるE324残基、Y331残基およびR339残基の役割をより詳細に調査するために、Chenら(2001年a)が作製したHCN2におけるR318Q、W323A、E324A、E324D、E324K、E324Q、F327A、T330AおよびY331A、Y331D、Y331F、Y331K、D332A、M338A、R339A、R339C、R339D、R339EならびにR339Qがあげられる。また、Chenら(2001年b)は、mHCN1におけるR538EおよびR591Eの変異も報告しており;Tsangら(2004年)は、mHCN1におけるG231AおよびM232Aを報告しており;Vemanaら(2004年)は、mHCN2におけるR247C、T249C、K250C、I251C、L252C、S253C、L254C、L258C、R259C、L260C、S261C、C318S、S338Cを報告しており;MacriおよびAccili(2004年)は、mHCN2におけるS306Q、Y331DおよびG404Sを報告しており;かつDecherら(2004年)は、mHCN2におけるY331A、Y331D、Y331S、R331FD、R339E、R339Q、I439A、S441A、S441T、D443A、D443C、D443E、D443K、D443N、D443R、R447A、R447D、R447E、R447Y、Y449A、Y449D、Y449F、Y449G、Y449W、Y453A、Y453D、Y453F、Y453L、Y453W、P466Q、P466V、Y476A、Y477AおよびY481Aを報告している。上記の刊行物の全ての全内容が、参照によって本明細書に組み入れられている。上記に列挙した報告されている変異のうちの特定のものが、単独または組合せで、生物学的ペースメーカーを生み出す場合に、HCNチャネルに有利な特徴を与えることができる。本明細書に開示する発明は、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現および/または向上した安定性、保存された環状性の間隔応答性、ならびに/あるいは保存もしくは増強された神経液性応答を提供することによって等、チャネルのペースメーカー活動を改善させる、単独または組合せでのHCNチャネルの全ての変異を包含する。
【0028】
本明細書では、変異を受けたアミノ酸残基の1文字略語、ポリペプチド内の当該残基の位置、および当該残基が変異したアミノ酸残基の1文字略語を提供する表示によって、変異を識別する。したがって、例えば、E324Aは、324位のグルタミン残基(E)がアラニン(A)に変異した変異ポリペプチドを識別する。Y331A,E324A-mHCN2は、一方は331位のチロシン(Y)がアラニン(A)に変異し、他方は324位のグルタミン酸残基がアラニンに変異した、二重変異を有するマウスHCN2を示す。
【0029】
一般的にいうと、HCNポリペプチドは、3つの主要なドメイン、すなわち、(1)細胞質側のアミノ末端ドメイン;(2)膜にまたがるドメインおよびそれらを連結する領域;ならびに(3)細胞質側のカルボキシ末端ドメインに分かれる。N末端ドメインが、チャネルの活性化において主要な役割を担っている様子はない(Bielら、2002年)。しかし、膜にまたがるドメインおよびそれらを連結する領域が、ゲーティングの動態の決定において重要な役割を担っており、CNBDが、交感神経系および副交感神経系にチャネルが応答する能力の大きな原因であり、交感神経系および副交感神経系はそれぞれ、細胞性のcAMPのレベルを上昇および低下させる。
【0030】
HCNキメラを発現するバイパスブリッジの実施形態では、キメラのHCNチャネルは、好ましくは、野生型HCNチャネルと比較した場合、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、保存または増強されたcAMP応答性、および保存または増強された神経液性応答からなる群から選択される改善された特徴を提供する。ペースメーカー活動を細胞内で誘発するためのHCNキメラは、米国仮特許出願第60/715934号(2005年9月9日出願)、および本出願と同時出願(2006年7月21日)の第60/ 号(未付与)、標題「Chimeric HCN Channels」に詳細に記載されおり、これら両方の全内容は、参照によって本明細書に組み入れられている。
【0031】
本明細書で使用する場合、「HCNキメラ」または「キメラのHCNチャネル」とは、2種以上のHCNチャネルのアイソフォームの部分を含むHCNチャネルを意味するものとする。したがって、例えば、あるキメラは、HCN1の部分と、HCN2またはHCN3またはHCN4の部分等とを含むことができる。好ましい実施形態では、当該部分は、アミノ末端部分、膜貫通部分およびカルボキシ末端部分である。その他の好ましい実施形態では、当該部分は、ヒトHCNアイソフォームに由来する。その上、HCNキメラは、異なる動物種に由来するHCNチャネルの部分を含むイオンチャネルも包含する。したがって、バイパスブリッジの種々の実施形態では、HCNキメラの少なくとも1つの部分が、ある動物種に由来し、これは、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来する動物種とは異なる。例えば、チャネルの1つの部分は、ヒトに由来することができ、別の部分は、非ヒトに由来することができる。
【0032】
即時バイパスブリッジの追加の実施形態では、HCNキメラは、mHCN112、mHCN212、mHCN312、mHCN412、mHCN114、mHCN214、mHCN314、mHCN414、hHCN112、hHCN212、hHCN312、hHCN412、hHCN114、hHCN214、hHCN314またはhHCN414である。異なる実施形態では、HCNキメラは、mHCN112、mHCN212、mHCN312、mHCN412、mHCN114、mHCN214、mHCN314、mHCN414、hHCN112、hHCN212、hHCN312、hHCN412、hHCN114、hHCN214、hHCN314またはhHCN414である。好ましい実施形態では、HCNキメラは、配列番号 (図2を参照)に記載の配列を有するhHCN212である。さらに別の好ましい実施形態では、HCNキメラは、配列番号 (図3を参照)に記載の配列を有するmHCN212である。
【0033】
本明細書で使用する場合、「HCNXYZ」(ただし、X、YおよびZは、整数1、2、3または4のいずれか1つであり、X、YおよびZの少なくとも1つは、その他の数の少なくとも1つとは異なる数である)という用語は、XYZの順で近接する3つの部分を含むキメラのHCNチャネルのポリペプチドを意味するものとし、Xは、N末端部分であり、Yは、膜内部分であり、Zは、C末端部分であり、かつ数X、YおよびZは、当該部分が由来するHCNチャネルを示す。例えば、HCN112は、HCN1からのN末端部分および膜内部分、ならびにHCN2からのC末端部分を有するHCNキメラである。
【0034】
バイパスブリッジの特定の実施形態では、HCNキメラは、アミノ末端部分と膜内部分とカルボキシ末端部分とを含み、これらはこの順で近接しており、各部分は、HCNチャネルの一部またはHCNチャネルの変異体の一部であり、かつ1つの部分は、あるHCNチャネルまたはあるHCNチャネルの変異体に由来し、これは、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来するHCNチャネルまたはHCNチャネルの変異体とは異なる。したがって、種々の実施形態では、キメラの少なくとも1つの部分が、野生型HCNチャネルからの部分と比較した場合、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、保存または増強されたcAMP応答性、および保存または増強された神経液性応答からなる群から選択される改善された特徴を提供する変異を含有する、あるHCNチャネルに由来する。特定の実施形態では、変異HCNチャネルは、S4電位センサー、S4-S5リンカー、S5、S6およびS5-S6リンカー、CリンカーならびにCNBDからなる群から選択されたチャネルの領域に変異を含有する。その他の実施形態では、変異部分は、配列番号 (図1を参照)に記載の配列を有するmHCN2に由来し、E324A-mHCN2、Y331A-mHCN2、R339A-mHCN2またはY331A,E324A-mHCN2を含む。好ましい実施形態では、変異部分は、E324A-mHCN2を含む。
【0035】
HCNチャネルのペースメーカー活動を、HCNチャネルをそのベータサブユニットであるMiRP1と同時発現させることによって増強させることができ、MiRP1は、発現した電流の大きさを増加させ、かつ/または活性化の動態を速める。全内容が参照によって本明細書に組み入れられている米国特許第6783979号およびQuら(2004年)を参照されたい。
【0036】
本明細書に開示するバイパスブリッジの特定の実施形態では、ペースメーカー電流は、電子工学的な伝導によって伝えられる。その他の実施形態では、ペースメーカー電流は、活動電位によって能動的に伝播する。さらなる実施形態では、活動電位は、ナトリウム依存性の活動電位である。追加の実施形態では、経路の細胞は、さらにL型カルシウムチャネルを機能的に発現し、活動電位は、カルシウム依存性の活動電位である。
【0037】
また、本発明は、(a)本明細書に開示するバイパスブリッジのうちのいずれかを包装材料内に含有する包装材料を含むキットも提供する。また、キットは、バイパスブリッジを心臓に移植するためのラベルおよび指示も含有することができ、それによって、対象の心臓の損傷した伝導に関連する障害、または対象の心臓の損傷した伝導および損傷した洞房結節の活動の両方に関連する障害を治療する。
【0038】
また、本発明は、(1)本明細書に開示するバイパスブリッジのうちのいずれかと、(2)電子工学的ペースメーカーおよび/または生物学的ペースメーカーとを含むタンデム型のペースメーカーシステムも提供し、バイパスブリッジは、電子工学的ペースメーカーおよび/または生物学的ペースメーカーと併行して動作して、心臓の律動の状態を、生物学的ペースメーカーまたは電子工学的ペースメーカーを単独で使用する場合と比較して、より効果的に治療する。種々の実施形態では、バイパスブリッジは、AVブリッジである。生物学的ペースメーカーまたは電子工学的ペースメーカーは、正常な安静時の洞房結節のペースメーカーレベルのペーシングレベル、それにほぼ等しいレベル、それを上回るレベル、またはそれを下回るレベルを有することができる。生物学的ペースメーカーまたは電子工学的ペースメーカーを、本明細書に記載するAVブリッジと併行して使用する実施形態では、自然のAV結節を、切断する場合がある。バイパスブリッジを含むタンデム型ペースメーカーシステムのさらなる詳細は、米国仮特許出願第60/701312号(2005年7月21日出願);第60/781723号(2005年3月14日出願)、および2006年7月21日に本出願と同時出願の第11/ 号(未付与)、標題「Tandem Cardiac Pacemaker Systems」に見出すことができる。上記の出願の全内容が、参照によって本明細書に組み入れられている。
【0039】
また、本発明は、心臓に移植するためのバイパスブリッジを作製する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入し、そこで機能的に発現させるステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、心臓の2つの選択された部位に付着することができる第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップとを含み、当該細胞は、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続している。この方法のある実施形態は、ペースメーカーイオンチャネルをコードする核酸を、当該経路の細胞に形質移入するステップもさらに含み、当該核酸を機能的に発現させ、その結果、当該細胞内でペースメーカー電流を誘発する。好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルは、当該経路の第1末端の細胞内で発現する。より好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルを発現する細胞は、第1末端から0.5mm延長した領域に位置する。これらの実施形態では、形質移入を第1末端部分に制限するために、ペースメーカーチャネル遺伝子を第1末端に導入するのに使用する形質移入の方法を、局所的に適用してもよいし、物理的な障壁を使用して当該経路の遠位の部分から隔ててもよい。
【0040】
種々の実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルは、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、またはその変異体もしくはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である。即時方法の好ましい実施形態では、細胞は、hMSCまたはhESCであり、当該細胞は、実質的に分化できない。さらなる実施形態では、ヒト成体間葉系幹細胞は、(a)CD29、CD44、CD54およびHLAクラスIの表面マーカーを発現するが、(b)CD14、CD34、CD45およびHLAクラスIIの表面マーカーを発現しない。さらに別の実施形態では、ヒト成体間葉系幹細胞は、少なくとも9回継代されている。
【0041】
バイパスブリッジを作製するための即時方法の追加の実施形態では、少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入し、そこで発現させるステップもさらに含み、その結果、バイパスブリッジの心臓への移植によって、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる。
【0042】
バイパスブリッジを作製するための即時方法の変法は、(a)細胞を増殖させて、心臓の2つの選択された部位に付着することができる第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、当該細胞は、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、その後の(b)ナトリウムチャネルをコードする核酸、および所望によりその他のイオンチャネル遺伝子および/またはペースメーカーチャネル遺伝子を、細胞に形質移入し、そこでそれらを機能的に発現させるステップとを含む。
【0043】
さらに、本発明は、バイパスブリッジを心臓に移植する方法も提供し、この方法は、(a)細胞の経路を含むバイパスブリッジを、本明細書に開示する方法のうちのいずれかによって作製するステップと、(b)心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、(c)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、それによって、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にするバイパスブリッジを心臓に移植する。その他の実施形態は、ペースメーカーイオンチャネルをコードする核酸を、当該経路の細胞に形質移入するステップもさらに含み、当該核酸を機能的に発現させ、その結果、当該細胞内でペースメーカー電流を誘発する。好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルは、当該経路の第1末端の細胞内で発現する。より好ましい実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルを発現する細胞は、第1末端から0.5mm延長した領域に位置する。その他の実施形態では、第1部位は心房内にあり、第2部位は心室内にあり、その結果、心房から心室への経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝播が可能となる。即時方法の異なる実施形態では、洞房結節、電子工学的ペースメーカー、生物学的ペースメーカー、またはバイパスブリッジ内のペースメーカー電流を発現する細胞が、ペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流を、心房において発生させる。さらなる実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルは、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、またはその変異体もしくはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である。
【0044】
即時方法の追加の実施形態では、バイパスブリッジの経路の細胞は、幹細胞、心筋細胞、少なくも1種の心臓のコネキシンを発現するように操作された繊維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞である。種々の実施形態では、幹細胞は、成体MSCまたはESCであり、当該細胞は、実質的に分化できない。好ましい実施形態では、幹細胞は、hMSCまたはhESCであり、当該幹細胞は、実質的に分化できない。その他の実施形態では、少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入し、そこで発現させるステップもさらに含み、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる。さらなる実施形態では、当該の少なくとも1種のコネキシンが、Cx43、Cx40またはCx45である。
【0045】
また、本発明は、対象の心臓の損傷した伝導に関連する障害を治療する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入するステップであって、当該細胞が、ナトリウムチャネルを機能的に発現するステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、当該細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、(c)それらの部位の間で伝導が損傷している対象の心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、(d)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、その結果、当該の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する。
【0046】
本明細書で使用する場合、障害を「治療する」とは、障害に苦しむ対象に、障害および/またはその症状の減弱、寛解または後退を経験させることを意味するものとする。種々の実施形態では、障害および/またはその症状の再発を阻止する。好ましい実施形態では、対象は、障害および/またはその症状から治癒する。核酸を「機能的に発現する」とは、当該核酸が導入されている細胞またはその他の生物学的な系が、当該核酸がコードする機能的なポリペプチドを産生することを意味するものとする。また、コードされるポリペプチド自体についても、機能的に発現するという。
【0047】
さらに、本発明は、対象の心臓の損傷した伝導および損傷した洞房結節の活動に関連する障害を治療する方法も提供し、この方法は、(a)ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルをコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入するステップであって、当該細胞が、ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルを機能的に発現するステップと、(b)形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、当該細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、(c)それらの部位の間で伝導が損傷している心臓の左心房の第1部位、および第2部位を選択するステップと、(d)経路の第1末端を第1部位に、かつ経路の第2末端を第2部位に付着させるステップとを含み、その結果、洞房結節が発生させたペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝播、ならびに/あるいは当該の2つの部位の間の細胞の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する。
【0048】
即時方法の実施形態では、細胞は、hMSCまたはhESCであり、当該幹細胞は、実質的に分化できない。種々の実施形態では、少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、当該経路の細胞に形質移入し、そこで発現させるステップもさらに含み、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる。さらなる実施形態では、ペースメーカーイオンチャネルは、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、またはその変異体もしくはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である。
【0049】
本発明は、即時型の発明のバイパスブリッジを含む多様なキットに加えて、バイパスブリッジを作製するための方法、バイパスブリッジを心臓に移植する方法、および障害を治療する方法を包含し、それらは、本明細書に開示するバイパスブリッジの異なる実施形態のそれぞれに対応する。これらのキットおよび方法の変法は、必ずしも本明細書で個別に詳細に記載されているとは限らないが、当業者には、バイパスブリッジの異なる実施形態の開示に基づけば、それらを容易に明らかにし、理解できるであろう。したがって、本明細書に記載する種々の実施形態を、適宜、本発明のバイパスブリッジ、キットおよび方法に同等に適用することができる。
【0050】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提示し、いかなる場合においても、実施例に続く特許請求の範囲に記載する本発明を制限する意図はなく、そのように解釈してはならない。これらの実施例は、組換え核酸ベクターの構築、宿主細胞へのそのような組換えベクターの形質移入、および形質移入細胞における遺伝子の機能的な発現に使用する方法等の当業者に周知の実験方法の詳細な説明を含まない。そのような従来法の詳細な説明は、全内容が本明細書に組み入れられているSambrookら(1989年)を含む、多数の刊行物に提供されている。
【実施例1】
【0051】
ギャップ結合共役ヒト間葉系幹細胞の培養
細胞培養
ヒト間葉系幹細胞(hMSC;間葉系幹細胞、ヒト骨髄;Poietics(商標))を、Clonetics/BioWhittaker(Walkersville、メリーランド州、米国)から購入し、間葉系幹細胞(MSC)増殖培地で培養し、継代2〜4回後に使用した。単離および精製したhMSCは、独特の特性、すなわち、正常な核型およびテロメラーゼ活性を失うことなく、多数(12)回培養することができる(van den Bosら、1997年;Pittengerら、1999年)。
【0052】
ラットCx40、ラットCx43またはマウスCx45を形質移入したHeLa細胞を、hMSCと共に同時培養した。形質移入HeLa細胞の産生、特徴付けおよび培養条件は、過去に記載されている(Elfgangら、1995年;Valiunasら、2000年;2002年)。
【0053】
抗コネキシン抗体、免疫蛍光標識化および免疫ブロット解析
Cx40、Cx43およびCx45の市販され入手可能なマウス抗コネキシンモノクロナール抗体およびマウス抗コネキシンポリクロナール抗体(Chemicon International製、Temecula、カリフォルニア州)を、以前の記載(LaingおよびBeyer、1995年)に従って、免疫染色および免疫ブロットに使用した。フルオレセイン結合ヤギ抗マウスIgGまたはフルオレセイン結合ヤギ抗ウサギIgG(ICN Biomedicals,Inc.製、Costa Mesa、カリフォルニア州)を、二次抗体として使用した。
【0054】
ギャップ結合の電気生理学的測定
付着細胞を有するカバーガラスを、NaCl、150;KCl、10;CaCl2、2;Hepes、5(pH 7.4);グルコース、5(それぞれ、mM)を含有する浴溶液を用いて室温(〜22℃)で灌流した実験チャンバーに移動させた。パッチピペットを、アスパラギン酸カリウム、120;NaCl、10;MgATP、3;Hepes、5(pH 7.2);EGTA、10(pCa〜8)(それぞれ、mM)を含有し、0.22μmのポアでろ過した溶液で充填した。充填後、ピペットの抵抗を測定すると、1〜2MΩであった。実験を、二重電位固定を使用して細胞対上で行った。この方法によって、膜電位(Vm)の制御および関連する接合部の電流(Ij)の測定が可能となった。
【0055】
色素流動研究
ギャップ結合チャネルを介する色素の移動を、細胞対を使用して調査した。Lucifer Yellow (LY;Molecular Probes製)を、2mMの濃度に達するまでピペット溶液に溶解させた。16ビット、64000ピクセルの白黒濃淡のデジタルCCDカメラ(LYNXX 2000T、SpectraSource Instruments製、Westlake Village、カリフォルニア州)を使用して、蛍光色素の細胞から細胞への広がりの像を撮影した(Valiunasら、2002年)。非相同的な対を用いた実験では、LYを、Cell Tracker Greenでタグ化した細胞に常に注入した。注入細胞のLYに由来する蛍光強度は、Cell Tracker Greenからの初めの蛍光よりも10〜15倍高かった。
【0056】
ヒトMSCがコネキシンを発現する。
コネキシンであるCx43およびCx40は、典型的な点状の染色によって証明されるように、密接な細胞から細胞への接触領域に沿って、かつ培養により単層として増殖したhMSCの細胞質の領域内に免疫局在した(図4AおよびB)。また、Cx45の染色も検出されたが、Cx43およびCx40の染色とは異なり、細胞内のコネキシンの分布の典型的なものではなかった。むしろ、その特徴は、微細な顆粒状の細胞質性および網様の染色であり、膜に結合するプラークは容易には観察されなかった(図4C)。これは、Cx45チャネルの存在の可能性を排除するわけではなく、Cx43およびCx40のホモタイプ、ヘテロタイプおよびヘテロマーのチャネルと比較して、Cx45チャネルの数が少ないことを意味する。図4Dは、イヌ心室筋細胞およびhMSCのCx43ポリクロナール抗体を用いたウエスタンブロット解析を示し、これは、Cx43のhMSC中の存在をさらに証明している。
【0057】
hMSCと種々の細胞系との間のギャップ接合部の共役
hMSC間のギャップ接合部の共役を、図5に示す。hMSCの対の間で記録した接合部の電流は、準対称的(図5A)および非対照的(図5B)な電位依存性を示し、これらは、振幅は等しいが、符号が反対の、20mVずつ増加させる±10mVから±110mVまでの対称的な10秒の接合部を越える電位の段階(Vj)に応答して生じたものである。これらの挙動は、Cx43およびCx40を同時発現する細胞で典型的に観察される(Valiunasら、2001年)。
【0058】
図5Cは、hMSC対から得たデータの概要を示す。規準化した瞬時(gj,inst、○)および定常状態(gj,ss、●)のコンダクタンスの値をVjに対してプロットした(それぞれ、各Vj段階の初めおよび終わりに決定した)。左のパネルは、5つのhMSC対からの準対称的な関係を示す。実線の曲線は、データのボルツマンの式への最良のフィッティングを示し、それは、以下のパラメーターを有する:負/正のVjのそれぞれについて、非活性化半量電位、Vj,0=-70/65mV;最小gj、gj,min=0.29/0.34;最大gj、gj,max=0.99/1.00;ゲーティング電荷、z=2.2/2.3。6つの非対照的な場合からのプロットの概要を、右のパネルに示す。gj,ssは、負のVjでは、S字型を示して減少し、正のVjに対しては、電位感受性の低下を示した。負のVjでのボルツマンフィッティングは、以下の値を示した:Vj,0=-72mV、gj,min=0.25、gj,max=0.99、z=1.5。
【0059】
図5DおよびEは、hMSC対からの典型的なマルチチャネル記録を示す。120mMアスパラギン酸Kをピペット溶液として使用して、チャネルを、28〜80pSの範囲の単位コンダクタンスで観察した。〜50pSのコンダクタンスでのチャネルの動作(図5Dを参照)は、Cx43のホモタイプのチャネルについて過去に公表された値(Valiunasら、1997年;2002年)と一致する。このことは、その他のチャネルの型の存在を締め出すわけではなく、hMSCにおいてはCx43が機能的なチャネルを形成することを示唆するに過ぎない。
【0060】
共役の性質をさらに定義するために、hMSCを、Cx43、Cx40およびCx45を安定に形質移入したヒトHeLa細胞と共に同時培養した(Elfgangら、1995年)ところ、hMSCは、全てのこれらの形質移入体と共役できることを見出した。図6Aは、hMSCとHeLaCx43との細胞対の間で記録した接合部の電流の例を示し、これは、一連(±10mVから±110mVまで)の対称的な接合部を越える電位の段階(Vj)に応答した、対称的および非対称的な電位依存性電流を現した。準対称的な記録は、優位な機能的なチャネルは、ホモタイプのCx43であることを示唆し、非対称的な記録は、hMSCにおける別のコネキシン(免疫組織化学が示すように、多分Cx40であろう。図4を参照)の活性を示唆し、これは、ヘテロタイプまたはヘテロマーの形態のいずれか、あるいは両方であろう。これらの記録は、形質移入細胞、すなわち、Cx40およびCx43のへテロタイプおよび混合(ヘテロマー)の形態について公表された記録(Valiunasら、2000年;2001年)に類似する。また、hMSCとCx40を形質移入したHeLa細胞との同時培養(図6B)も、hMSCにおけるCx43およびCx40の同時発現と一致する対称的および非対称的な電位依存性接合部電流を示し、これは、Cx43 HeLa-hMSC対のデータに類似した。hMSCと共役した、Cx45を形質移入したHeLa細胞は、Cx45(HeLa)側が負である場合には、明白な電位ゲーティングを有する非対称的な接合部電流を常に生じた(図6C)。これは、Cx43およびCx40の両方が、Cx45とヘテロタイプのチャネルを形成すると、非対称的な電流を発生させることから、hMSCにおける優位なチャネルの形態がCx43およびCx40である(Valiunasら、2000年;2001年)ことと一致する。これは、hMSCにおいて機能するチャネルとして、Cx45を排除するわけではなく、Cx45は、hMSCにおいては、細胞から細胞への共役に副次的に寄与することを示す。Cx45の免疫染色において可視化したプラークを認めないこと(図7)は、この解釈をさらに支持するものである。
【0061】
hMSCと形質移入HeLa細胞との間の対からのgj,ss対Vjのプロットの概要を、図6Dに示す。左のパネルは、hMSC-HeLaCx43対からの結果を示す。対称的なデータ(●、4つの標本)の場合、ボルツマンフィッティング(実線)から以下のパラメーターを得た:負/正のVjについて、Vj,0=-61/65mV、gj,min=0.24/0.33、gj,max=0.99/0.99、z=2.4/3.8。非対称的なデータ(○、3つの標本)の場合、負のVjの値でのボルツマンフィッティング(実線)は、以下のパラメーターの値を示した:Vj,0=-70mV、gj,min=0.31、gj,max=1.00、z=2.2。中央のパネルは、hMSC-HeLaCx40対からのデータを示し、3つの対称的(●)および2つの非対称的(○)なgj,ss-Vjの関係を含む。実線は、対称的なデータのボルツマンフィッティングに対応し(負/正のVjについて、Vj,0=-57/76mV、gj,min=0.22/0.29、gj,max=1.1/1.0、z=1.4/2.3)、破線は、非対称的なデータのフィッティングである(負/正のVjについて、Vj,0=-57/85mV、gj,min=0.22/0.65、gj,max=1.1/1.0、z=1.3/2.2)。hMSC-HeLaCx45細胞対からの6回の完了した実験からのデータを、右のパネルに示す。gj,ss対Vjのプロットは、非対称性が強く、正のVjの値でのデータのボルツマンの式への最良のフィッティングは、以下のパラメーターの値を示した:Vj,0=31mV、gj,min=0.07、gj,max=1.2、z=1.8。
【0062】
図6Eは、Lucifer YellowのhMSCからhMSCへ(上のパネル)、HeLaCx43からhMSCへ(中央のパネル)、およびhMSCからHeLaCx43へ(下のパネル)の移動を示す。細胞対の接合部のコンダクタンスを、以前に記載された方法(Valiunasら、2002年)によって同時に測定したところ、それぞれ、〜13、〜16および〜18nSのコンダクタンスを示した。Lucifer Yellowの移動は、HeLa細胞中でのホモタイプのCx43または同時発現したCx43およびCx40に関して過去に報告されたもの(Valiunasら、2002年)に類似した。Cell Tracker Green(Molecular Probe製)を、2つの細胞集団のうちの1つに常に使用して、非相同的な対の同定を可能にした(Valiunasら、2000年)。Lucifer Yellowを、細胞トレーサーを含有する細胞に常に送達した。Cell Tracker Greenが発生させた強度は、Cell Tracker Greenの蛍光を発する細胞に送達したLucifer Yellowの濃度によって発生した蛍光強度よりも10〜15倍弱かった。
【0063】
また、図7に示すように、ヒトMSCを、成体イヌ心室筋細胞と共に同時培養した。図7Aに示すように、Cx43の免疫染色を、桿状の心室筋細胞とhMSCとの間に検出した。hMSCは、心筋細胞と電気的に共役する。巨視的(図7B)およびマルチチャネル(図7C)の両方の記録を得た。図7Bの接合部の電流は、非対称的であり、図7Cの接合部の電流は、ホモタイプCx43チャネルまたはヘテロタイプCx43-Cx40チャネルまたはホモタイプCx40チャネルの動作の結果、典型的に生じる大きさの範囲の単一の現象を示す(Valiunasら、2000年;2001年)。また、コンダクタンスがホモタイプまたはヘテロタイプの形態と同一またはそれに類似するヘテロマーの形態も可能である。
【0064】
細胞対の研究によって、hMSCと、その他のhMSCと(13.8±2.4nS、n=14)、HeLaCx43と(7.9±2.1nS、n=7)、HeLaCx40と(4.6±2.6nS、n=5)、HeLaCx45と(11±2.6nS、n=5)、および心室筋細胞と(1.5±1.3nS、n=4)の有効な共役が実証された。
【0065】
これらのデータは、MSCが多くの組織の電気的な合胞体に容易に統合して、修復を促進するまたは治療的送達システムのための基質として役立つはずであることを示唆する。特に、データは、hMSCの心臓組織の修復のための治療的基質としての使用の可能性を支持している。また、血管平滑筋細胞または内皮細胞等のその他の合胞体も、Cx43およびCx40の偏在性から、hMSCと共役することができるはずである(Wangら、2001年;Beyer、1993年)。したがって、また、それらの合胞体も、hMSCに基づく治療学の対象となることができる。例えば、hMSCに形質移入して、イオンチャネルを発現させることができ、次いで、これらのイオンチャネルは、周囲の合胞体組織に影響を及ぼすことができる。または、hMSCに形質移入して、ギャップ結合を透過することが可能な小型の治療的分子を産生する遺伝子を発現させて、レシピエントの細胞に影響を及ぼすことができる。さらに、短期の治療の目的で、レシピエントの細胞に送達するために、小型の分子をhMSCに直接積むこともできる。そのようなアプローチの成功は、レシピエントの細胞への治療薬の送達のための最終的な導管としてのギャップ結合チャネルによって決まる。最初のアプローチの実現可能性は、HCN2形質移入hMSCを自然と律動を生じるイネの心臓に送達することにより、本明細書で実証されている。
【実施例2】
【0066】
心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したイオンチャネル
本明細書で先に記載したように、hMSCは、物理的に接続している細胞の経路が、電気信号を電気的な伝導によって伝えるのを可能にするギャップ結合を形成する。ギャップ結合の形成を増強するために、心臓のコネキシンであるCx43、Cx40またはCx45のうちの少なくとも1種をコードする1種または複数の核酸を細胞内で機能的に発現させることによって、電気信号の細胞から細胞への伝播を容易にすることができる。また、ナトリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニット、あるいはL型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニットをコードする1種または複数の核酸を細胞内で発現させると、波面の電気的な伝播の可能性に加え、ナトリウム依存性またはカルシウム依存性の活動電位による能動的な伝播の可能性も高まる。その上、細胞内のカリウムチャネルの発現は、活動電位による能動的な伝播の可能性を高め、さらに、初期の静止電位ならびに再分極の電位-時間経過および不応性を制御する手段も提供する。
【0067】
SKM-1ナトリウムチャネルおよびL型カルシウムチャネルの生物物理学的な特性を評価して、心臓バイパスブリッジにおける活動電位の提供に関して、それらの適性を調査した。アフリカツメガエルの卵母細胞中で測定したSKM-1ナトリウムチャネルの不活性化の特性を、図8に示し、アフリカツメガエルの卵母細胞中でのSKM-1チャネルのI-V関係を、図9に示す。CaV1.2、アルファ2およびガンマ、P1.b、ならびに赤色蛍光レポーターを、HEK293細胞内で同時発現させた。図10は、赤色蛍光細胞内で記録したCa2+電流を示す。
【0068】
SKM-1ナトリウムチャネルおよびL型カルシウムチャネルを使用して、バイパスブリッジの伝導性を「微調整」して、これが必要とされる範囲に収める。本明細書に記載するバイパスブリッジの一実施形態は、AVブリッジである。ナトリウムチャネルは、通常非常に迅速な伝導に関わるのに対して、AVバイパスは、最も効率的に動作するには、より緩慢に伝導する必要があることから、ナトリウムチャネルのAVブリッジへの組入れは、反直感的とみなされるかもしれない。しかし、細胞間の共役の程度を操作することができるので、普通であれば迅速に伝播するチャネルを使用して、このようなチャネルにより緩慢な伝導を期待することが可能である。内向きカルシウム電流の場合、カルシウムチャネルの組入れは、心臓の活動電位のプラトーを上昇させ、再分極および不応性を延長させるであろう。その上、カリウムチャネルの機能的な発現は、再分極を加速させ、したがって、不応性を短縮することができる。したがって、ナトリウム電流、カルシウム電流およびカリウム電流、ならびに細胞共役を操作することによって、心臓の電気的な活動の特徴を、それに対応して操作することが可能である。
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1A】マウスおよびヒトのHCN2ポリペプチド配列のアライメントを示す図である。マウスHCN2ポリペプチド配列とヒトHCN2ポリペプチド配列とを、最大の一致となるようにアライメントさせている。mHCN2およびhHCN2のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号 および配列番号 に記載する。
【図1B】マウスおよびヒトのHCN2ポリペプチド配列のアライメントを示す図である。マウスHCN2ポリペプチド配列とヒトHCN2ポリペプチド配列とを、最大の一致となるようにアライメントさせている。mHCN2およびhHCN2のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号 および配列番号 に記載する。
【図2】ヒトHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を示す図である。陰影をつけた配列のN末端部分は、hHCN2に由来し、下線を引いた膜貫通部分は、hHCN1に由来し、(陰影も下線もない)C末端部分は、hHCN2に由来する。hHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を、配列番号 に記載する。最大の一致となるようにアライメントさせた場合、この889個のアミノ酸長のキメラhHCN212の配列は、893残基のオーバーラップにおいて、863個のアミノ酸長のmHCN212の配列と91.2%の同一性を示す。
【図3】マウスHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を示す図である。陰影をつけた配列のN末端部分は、マウスHCN2に由来し、下線を引いた膜貫通部分は、マウスHCN1に由来し、(陰影も下線もない)C末端部分は、マウスHCN2に由来する。マウスHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を、配列番号 に記載する。最大の一致となるようにアライメントさせた場合、この863個のアミノ酸長のキメラmHCN212の配列は、893残基のオーバーラップにおいて、889個のアミノ酸長のhHCN212の配列と91.2%の同一性を示す。
【図4】図4A:ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。Cx43免疫染色。図4B:ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。Cx40の免疫染色。図4C:ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。Cx45の免疫染色。図4D:ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。イヌ心室筋細胞およびhMSCにおけるCx43の免疫ブロット解析。心室細胞またはhMSCからの全細胞可溶化液(120μg)をSDSで分解し、メンブランに移動させ、Cx43抗体を用いてブロットした。分子量マーカーを示す。
【図5A】hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。対称的な双極性パルスプロトコール(10秒、±10mVから±110mVまで、Vh=0mV)を使用してhMSCから誘発されたギャップ結合電流(Ij)は、非対称的な電位依存性電流非活性化を示した。
【図5B】hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。対称的な双極性パルスプロトコール(10秒、±10mVから±110mVまで、Vh=0mV)を使用してhMSCから誘発されたギャップ結合電流(Ij)は、非対称的な電位依存性電流非活性化を示した。
【図5C】hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。規準化した瞬時(○)および定常状態(●)のgjのVjに対するプロットの概要。左のパネル、5つの対からの準対称的な関係;実線、ボルツマンフィッティング:負/正のVjについて、Vj,0=-70/65mV、gj,min=0.29/0.34、gj,max=0.99/1.00、z=2.2/2.3。右のパネル、6つの対からの非対称的な関係;負のVjでのボルツマンフィッティング:Vj,0=-72mV、gj,min=0.25、gj,max=0.99、z=1.5。
【図5D】hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。hMSCの対からの単一チャネルの記録。パルスプロトコール(V1およびV2)、およびVjを±80mVに維持した間の細胞対から記録した、関連するマルチチャネル電流(I2)。別々の電流の段階は、単一チャネルの開口および閉鎖を示す。破線:電流レベルゼロ。右手側の全ての点の電流ヒストグラムは、〜50pSのコンダクタンスを示す。
【図5E】hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。hMSCの対からの単一チャネルの記録。パルスプロトコール(V1およびV2)、およびVjを±80mVに維持した間の細胞対から記録した、関連するマルチチャネル電流(I2)。別々の電流の段階は、単一チャネルの開口および閉鎖を示す。破線:電流レベルゼロ。右手側の全ての点の電流ヒストグラムは、〜50pSのコンダクタンスを示す。
【図6A】hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。hMSC-HeLaCx43対において、一連の5秒電位段階(Vj)に応答して誘発されたIj。上、対称的な電流の非活性化;下、非対称的な電流の電位依存性。
【図6B】hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。hMSC-HeLaCx40対からの巨視的なIjの記録は、対称的(上のパネル)および非対称的(下のパネル)な電位依存性の非活性化を示す。
【図6C】hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。Cx45側が相対的に負である場合、hMSC-HeLaCx43対からの非対称的なIjは、電位依存性のゲーティングを示す。hMSCから記録したIj。
【図6D】hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。hMSCと形質移入したHeLa細胞との間の対からのgj,ss対Vjのプロット。左のパネル、hMSC-HeLaCx43対、準対称的な関係(●)および非対称的な関係(○);実線および破線は、ボルツマンフィッティングである(詳細は本文を参照)。中央のパネル、hMSC-HeLaCx40対からの対称的な関係(●)および非対称的な関係(○);実線および破線は、ボルツマンフィッティングに対応する(詳細は本文を参照)。右のパネル、hMSC-HeLaCx45細胞対からの非対称的な関係;実線、正のVjでのボルツマンフィッティング(詳細は本文を参照)。
【図6E】hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。細胞対における細胞から細胞へのLucifer Yellow(LY)の広がり:hMSCからhMSCへ(上のパネル)、HeLaCx43からhMSCへ(中央のパネル)、およびhMSCからHeLaCx43へ(下のパネル)。全ての場合に、2mM LYを含有するピペットを、全細胞配置の左手側の細胞に付着させた。色素注入12分後に撮影した落射蛍光顕微鏡による顕微鏡写真は、LYの隣接する(右手の)細胞への広がりを示している。同時に測定した接合部のコンダクタンスは、それぞれの対で、〜13nS、〜16nSおよび〜18nSのgjを示した。全ての実験において、Cell Tracker Greenを使用して、hMSCからHeLa細胞、またはHeLa細胞からhMSCを区別した。
【図7A】hMSC-イヌ心室細胞対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。筋細胞を12から72時間の間に播種し、hMSCと共に6から12時間同時培養してから、共役を測定した。hMSC-イヌ心室細胞対の場合のCx43の局在化。Cx43の大部分が、心室細胞の末端に局在化し、Cx43の少量は、外側の境界に沿って存在した。強力なCx43の染色が、桿状の心室細胞(中央の細胞)の末端とhMSC(右の細胞)の間に検出された。左側では、心室細胞とhMSC細胞との間には、Cx43の染色は検出されていない。
【図7B】hMSC-イヌ心室細胞対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。筋細胞を12から72時間の間に播種し、hMSCと共に6から12時間同時培養してから、共役を測定した。上、hMSC-イヌ心室筋細胞対の位相差顕微鏡写真。下、単極パルスプロトコール(V1およびV2)、および非対称的な電位依存性を示す関連する巨視的な接合部の電流(I2)。
【図7C】hMSC-イヌ心室細胞対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。筋細胞を12から72時間の間に播種し、hMSCと共に6から12時間同時培養してから、共役を測定した。上、対称的な二相性の60mVパルスによって誘発されたマルチチャネル電流。破線、電流レベルゼロ。点線、チャネルの開口および閉鎖を示す別々の電流の段階を示す。電流ヒストグラムは、〜40から50pSのコンダクタンスを生じた。下、Vjを60mVに維持した間のマルチチャネルの記録。電流ヒストグラムは、48〜64pSのいくつかのコンダクタンスを示し、84pSから99pSのコンダクタンスを有するいくつかの現象(矢印)を伴い、これは、Cx43チャネル、ヘテロタイプCx43-Cx40チャネルおよび/またはホモタイプCx40チャネルの動作に類似する。
【図8】図8A:心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したナトリウムチャネルの不活性化の特性を示す図である。アフリカツメガエルの卵母細胞中で測定したSKM-1ナトリウムチャネルの不活性化の特性を示している。保持電位は、-100mVから-55mVに及び、試験電位は、+30mVであった。図8B:心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したナトリウムチャネルの不活性化の特性を示す図である。アフリカツメガエルの卵母細胞中で測定したSKM-1ナトリウムチャネルの不活性化の特性を示している。11個の卵母細胞から得た平均不活性化曲線。
【図9】図9A:心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したナトリウムチャネルのI-V関係を示す図である。アフリカツメガエルの卵母細胞中で記録したSKM-1チャネルのI-V関係を、ここに示す。-80mVの保持電位から10mVずつ増加させる-70mVと+50mVとの間の電位までで記録した生データ。図9B:心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したナトリウムチャネルのI-V関係を示す図である。アフリカツメガエルの卵母細胞中で記録したSKM-1チャネルのI-V関係を、ここに示す。ピーク内向きI-V関係。
【図10】心臓バイパスブリッジに組み入れるのに適したカルシウムチャネルの生物物理学的な特性を示す図である。CaV1.2、アルファ2およびガンマ、P1.b、ならびに赤色蛍光レポーターを、HEK293細胞内で同時発現させた。Ca2+電流を、赤色蛍光細胞内で記録した。細胞を、-50mVで保持した。試験パルス(60ミリ秒)は、10mV間隔の-40mVから+50mVまでであった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1末端および第2末端を有するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジであって、両末端が、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、前記の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、前記細胞が、ナトリウムチャネルを機能的に発現するバイパスブリッジ。
【請求項2】
前記経路の細胞が、さらに、ペースメーカー電流を誘発するペースメーカーイオンチャネルを機能的に発現し、その結果、前記細胞内でペースメーカー電流を誘発する、請求項1に記載のバイパスブリッジ。
【請求項3】
前記第1末端が心房に付着することができ、かつ前記第2末端が心室に付着することができ、その結果、心房から心室への経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にする、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項4】
前記細胞が、幹細胞、心筋細胞、少なくも1種の心臓のコネキシンを発現するように操作された繊維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞である、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項5】
前記幹細胞が、成体間葉系幹細胞または胚性幹細胞である、請求項4に記載のバイパスブリッジ。
【請求項6】
前記幹細胞が、ヒト成体間葉系である、請求項5に記載のバイパスブリッジ。
【請求項7】
前記ナトリウムチャネルが、SKM-1チャネルである、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項8】
前記SKM-1チャネルが、アルファサブユニットを含む、請求項7に記載のバイパスブリッジ。
【請求項9】
前記SKM-1チャネルが、アクセサリーサブユニットをさらに含む、請求項8に記載のバイパスブリッジ。
【請求項10】
前記経路の細胞が、さらに、カリウムチャネルを機能的に発現する、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項11】
前記カリウムチャネルが、Kir2.1アルファサブユニットまたはKir2.2アルファサブユニットを含む、請求項10に記載のバイパスブリッジ。
【請求項12】
前記カリウムチャネルが、アクセサリーサブユニットをさらに含む、請求項11に記載のバイパスブリッジ。
【請求項13】
前記経路の細胞が、さらに、L型カルシウムチャネルを機能的に発現する、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項14】
前記L型カルシウムチャネルが、アルファサブユニットおよびアクセサリーサブユニットを含む、請求項11に記載のバイパスブリッジ。
【請求項15】
前記経路の細胞が、さらに、少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数を機能的に発現し、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項16】
前記の少なくとも1種の心臓のコネキシンが、Cx43、Cx40またはCx45である、請求項15に記載のバイパスブリッジ。
【請求項17】
前記ペースメーカーイオンチャネルが、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネルまたはそのキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である、請求項2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項18】
前記ペースメーカーイオンチャネルを、前記経路の第1末端の細胞内で発現させる、請求項17に記載のバイパスブリッジ。
【請求項19】
前記ペースメーカーイオンチャネルを発現する細胞が、前記第1末端から0.5mm延長した領域に位置する、請求項18に記載のバイパスブリッジ。
【請求項20】
前記キメラHCNチャネルが、野生型HCNチャネルと比較した場合、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、保存または増強されたcAMP応答性、および保存または増強された神経液性応答からなる群から選択された改善された特徴を提供する、請求項17に記載のバイパスブリッジ。
【請求項21】
前記HCNキメラが、2種以上のHCNチャネルのアイソフォームに由来する部分を含む、請求項17に記載のバイパスブリッジ。
【請求項22】
前記部分が、アミノ末端部分、膜貫通部分およびカルボキシ末端部分である、請求項21に記載のバイパスブリッジ。
【請求項23】
前記HCNキメラの少なくとも1つの部分が、ある動物種に由来し、これは、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来する動物種とは異なる、請求項21に記載のバイパスブリッジ。
【請求項24】
前記HCNキメラが、mHCN112、mHCN212、mHCN312、mHCN412、mHCN114、mHCN214、mHCN314、mHCN414、hHCN112、hHCN212、hHCN312、hHCN412、hHCN114、hHCN214、hHCN314またはhHCN414である、請求項21に記載のバイパスブリッジ。
【請求項25】
前記HCNキメラが、配列番号 に記載の配列を有するhHCN212である、請求項24に記載のバイパスブリッジ。
【請求項26】
前記HCNキメラが、配列番号 に記載の配列を有するmHCN212である、請求項24に記載のバイパスブリッジ。
【請求項27】
前記HCNキメラの少なくとも1つの部分が、野生型HCNチャネルと比較した場合、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、保存または増強されたcAMP応答性、および保存または増強された神経液性応答からなる群から選択された改善された特徴を提供する変異を含有するHCNチャネルに由来する、請求項21に記載のバイパスブリッジ。
【請求項28】
前記HCNチャネルが、配列番号 に記載の配列を有するmHCN2に由来し、E324A-mHCN2、Y331A-mHCN2、R339A-mHCN2またはY331A,E324A-mHCN2を含む変異チャネルである、請求項17に記載のバイパスブリッジ。
【請求項29】
前記変異HCNチャネルが、E324A-mHCN2である、請求項28に記載のバイパスブリッジ。
【請求項30】
前記ペースメーカー電流が、電子工学的な伝導によって伝えられる、請求項19に記載のバイパスブリッジ。
【請求項31】
前記ペースメーカー電流が、活動電位によって能動的に伝播する、請求項17に記載のバイパスブリッジ。
【請求項32】
前記活動電位が、ナトリウム依存性の活動電位である、請求項31に記載のバイパスブリッジ。
【請求項33】
前記経路の細胞が、さらに、L型カルシウムチャネルを機能的に発現し、前記活動電位が、カルシウム依存性の活動電位である、請求項31に記載のバイパスブリッジ。
【請求項34】
心臓に移植するためのバイパスブリッジを作製する方法であって、
(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入し、そこで機能的に発現させるステップと、
(b)前記形質移入細胞を増殖させて、心臓の2つの選択された部位に付着することができる第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップと
を含み、前記細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続している方法。
【請求項35】
ペースメーカーイオンチャネルをコードする核酸を、前記経路の細胞に形質移入するステップをさらに含み、前記核酸を機能的に発現させ、その結果、前記細胞内でペースメーカー電流を誘発する、バイパスブリッジを作製するための請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が、ヒト成体間葉系幹細胞である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、前記細胞に形質移入し、そこで発現させるステップをさらに含み、その結果、バイパスブリッジの心臓への移植が、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる、請求項34または35に記載の方法。
【請求項38】
前記ペースメーカーイオンチャネルが、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、あるいはその変異体またはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である、請求項41に記載の方法。
【請求項39】
バイパスブリッジを心臓に移植する方法であって、
(a)バイパスブリッジを、請求項34に記載の方法によって作製するステップと、
(b)心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、
(c)前記経路の第1末端を前記第1部位に、かつ前記経路の第2末端を前記第2部位に付着させるステップと
を含み、
それによって、前記の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にする方法。
【請求項40】
前記ペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流が、洞房結節または電子工学的ペースメーカーによって、心房において生じる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ペースメーカーイオンチャネルをコードする核酸を、前記経路の細胞に形質移入するステップをさらに含み、前記核酸を機能的に発現させ、その結果、前記細胞内でペースメーカー電流を誘発する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ペースメーカーイオンチャネルを、前記経路の第1末端の細胞内で発現させる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ペースメーカーイオンチャネルを発現する細胞が、前記第1末端から0.5mm延長した領域に位置する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1部位が心房内にあり、前記第2部位が心室内にあり、その結果、心房から心室への経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝播が可能となる、請求項39または41に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞が、幹細胞、心筋細胞、コネキシンを発現するように操作された繊維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞である、請求項39または41に記載の方法。
【請求項46】
前記幹細胞が、成体間葉系幹細胞または胚性幹細胞であり、実質的に分化できない、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記幹細胞が、ヒト成体間葉系幹細胞またはヒト胚性幹細胞である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、前記経路の細胞に形質移入し、そこで発現させるステップをさらに含み、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる、請求項39または41に記載の方法。
【請求項49】
前記の少なくとも1種の心臓のコネキシンが、Cx43、Cx40またはCx45である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ペースメーカーイオンチャネルが、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、あるいはその変異体またはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
対象の心臓の損傷した伝導に関連する障害を治療する方法であって、
(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入するステップであって、前記細胞が、ナトリウムチャネルを機能的に発現するステップと、
(b)前記形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、前記細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、
(c)それらの部位の間で伝導が損傷している心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、
(d)前記経路の第1末端を前記第1部位に、かつ前記経路の第2末端を前記第2部位に付着させるステップと
を含み、
その結果、前記の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する方法。
【請求項52】
対象の心臓の損傷した伝導および損傷した洞房結節の活動に関連する障害を治療する方法であって、
(a)ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルをコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入するステップであって、前記細胞が、ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルを機能的に発現するステップと、
(b)前記形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、前記細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、
(c)それらの部位の間で伝導が損傷している心臓の左心房の第1部位、および第2部位を選択するステップと、
(d)前記経路の第1末端を前記第1部位に、かつ前記経路の第2末端を前記第2部位に付着させるステップと
を含み、
その結果、洞房結節によって生じるペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝播、ならびに/あるいは前記の2つの部位の間の細胞の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する方法。
【請求項53】
前記細胞が、ヒト成体間葉系幹細胞またはヒト胚性幹細胞であり、実質的に分化できない、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも1種のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入し、そこで発現させるステップをさらに含み、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる、請求項51または52に記載の方法。
【請求項55】
前記ペースメーカーイオンチャネルが、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、あるいはその変異体またはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
間葉系幹細胞を増殖させて、2つの末端を有する条片とし、ナトリウムチャネルをコードする核酸を前記間葉系幹細胞に形質移入し、それによって、前記間葉系幹細胞に前記ナトリウムチャネルを機能的に発現させることによって作製する房室性のバイパス経路であって、前記条片を心臓に付着させて、心臓の心房と心臓の心室との間に経路を生み出すことができ、前記経路が、電気信号を伝播することができる房室性のバイパス経路。
【請求項1】
第1末端および第2末端を有するギャップ結合連結細胞の経路を含むバイパスブリッジであって、両末端が、心臓の2つの選択された部位に付着することができ、その結果、前記の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、前記細胞が、ナトリウムチャネルを機能的に発現するバイパスブリッジ。
【請求項2】
前記経路の細胞が、さらに、ペースメーカー電流を誘発するペースメーカーイオンチャネルを機能的に発現し、その結果、前記細胞内でペースメーカー電流を誘発する、請求項1に記載のバイパスブリッジ。
【請求項3】
前記第1末端が心房に付着することができ、かつ前記第2末端が心室に付着することができ、その結果、心房から心室への経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にする、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項4】
前記細胞が、幹細胞、心筋細胞、少なくも1種の心臓のコネキシンを発現するように操作された繊維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞である、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項5】
前記幹細胞が、成体間葉系幹細胞または胚性幹細胞である、請求項4に記載のバイパスブリッジ。
【請求項6】
前記幹細胞が、ヒト成体間葉系である、請求項5に記載のバイパスブリッジ。
【請求項7】
前記ナトリウムチャネルが、SKM-1チャネルである、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項8】
前記SKM-1チャネルが、アルファサブユニットを含む、請求項7に記載のバイパスブリッジ。
【請求項9】
前記SKM-1チャネルが、アクセサリーサブユニットをさらに含む、請求項8に記載のバイパスブリッジ。
【請求項10】
前記経路の細胞が、さらに、カリウムチャネルを機能的に発現する、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項11】
前記カリウムチャネルが、Kir2.1アルファサブユニットまたはKir2.2アルファサブユニットを含む、請求項10に記載のバイパスブリッジ。
【請求項12】
前記カリウムチャネルが、アクセサリーサブユニットをさらに含む、請求項11に記載のバイパスブリッジ。
【請求項13】
前記経路の細胞が、さらに、L型カルシウムチャネルを機能的に発現する、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項14】
前記L型カルシウムチャネルが、アルファサブユニットおよびアクセサリーサブユニットを含む、請求項11に記載のバイパスブリッジ。
【請求項15】
前記経路の細胞が、さらに、少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数を機能的に発現し、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる、請求項1または2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項16】
前記の少なくとも1種の心臓のコネキシンが、Cx43、Cx40またはCx45である、請求項15に記載のバイパスブリッジ。
【請求項17】
前記ペースメーカーイオンチャネルが、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネルまたはそのキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である、請求項2に記載のバイパスブリッジ。
【請求項18】
前記ペースメーカーイオンチャネルを、前記経路の第1末端の細胞内で発現させる、請求項17に記載のバイパスブリッジ。
【請求項19】
前記ペースメーカーイオンチャネルを発現する細胞が、前記第1末端から0.5mm延長した領域に位置する、請求項18に記載のバイパスブリッジ。
【請求項20】
前記キメラHCNチャネルが、野生型HCNチャネルと比較した場合、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、保存または増強されたcAMP応答性、および保存または増強された神経液性応答からなる群から選択された改善された特徴を提供する、請求項17に記載のバイパスブリッジ。
【請求項21】
前記HCNキメラが、2種以上のHCNチャネルのアイソフォームに由来する部分を含む、請求項17に記載のバイパスブリッジ。
【請求項22】
前記部分が、アミノ末端部分、膜貫通部分およびカルボキシ末端部分である、請求項21に記載のバイパスブリッジ。
【請求項23】
前記HCNキメラの少なくとも1つの部分が、ある動物種に由来し、これは、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来する動物種とは異なる、請求項21に記載のバイパスブリッジ。
【請求項24】
前記HCNキメラが、mHCN112、mHCN212、mHCN312、mHCN412、mHCN114、mHCN214、mHCN314、mHCN414、hHCN112、hHCN212、hHCN312、hHCN412、hHCN114、hHCN214、hHCN314またはhHCN414である、請求項21に記載のバイパスブリッジ。
【請求項25】
前記HCNキメラが、配列番号 に記載の配列を有するhHCN212である、請求項24に記載のバイパスブリッジ。
【請求項26】
前記HCNキメラが、配列番号 に記載の配列を有するmHCN212である、請求項24に記載のバイパスブリッジ。
【請求項27】
前記HCNキメラの少なくとも1つの部分が、野生型HCNチャネルと比較した場合、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、保存または増強されたcAMP応答性、および保存または増強された神経液性応答からなる群から選択された改善された特徴を提供する変異を含有するHCNチャネルに由来する、請求項21に記載のバイパスブリッジ。
【請求項28】
前記HCNチャネルが、配列番号 に記載の配列を有するmHCN2に由来し、E324A-mHCN2、Y331A-mHCN2、R339A-mHCN2またはY331A,E324A-mHCN2を含む変異チャネルである、請求項17に記載のバイパスブリッジ。
【請求項29】
前記変異HCNチャネルが、E324A-mHCN2である、請求項28に記載のバイパスブリッジ。
【請求項30】
前記ペースメーカー電流が、電子工学的な伝導によって伝えられる、請求項19に記載のバイパスブリッジ。
【請求項31】
前記ペースメーカー電流が、活動電位によって能動的に伝播する、請求項17に記載のバイパスブリッジ。
【請求項32】
前記活動電位が、ナトリウム依存性の活動電位である、請求項31に記載のバイパスブリッジ。
【請求項33】
前記経路の細胞が、さらに、L型カルシウムチャネルを機能的に発現し、前記活動電位が、カルシウム依存性の活動電位である、請求項31に記載のバイパスブリッジ。
【請求項34】
心臓に移植するためのバイパスブリッジを作製する方法であって、
(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入し、そこで機能的に発現させるステップと、
(b)前記形質移入細胞を増殖させて、心臓の2つの選択された部位に付着することができる第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップと
を含み、前記細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続している方法。
【請求項35】
ペースメーカーイオンチャネルをコードする核酸を、前記経路の細胞に形質移入するステップをさらに含み、前記核酸を機能的に発現させ、その結果、前記細胞内でペースメーカー電流を誘発する、バイパスブリッジを作製するための請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が、ヒト成体間葉系幹細胞である、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、前記細胞に形質移入し、そこで発現させるステップをさらに含み、その結果、バイパスブリッジの心臓への移植が、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる、請求項34または35に記載の方法。
【請求項38】
前記ペースメーカーイオンチャネルが、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、あるいはその変異体またはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である、請求項41に記載の方法。
【請求項39】
バイパスブリッジを心臓に移植する方法であって、
(a)バイパスブリッジを、請求項34に記載の方法によって作製するステップと、
(b)心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、
(c)前記経路の第1末端を前記第1部位に、かつ前記経路の第2末端を前記第2部位に付着させるステップと
を含み、
それによって、前記の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導を可能にする方法。
【請求項40】
前記ペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流が、洞房結節または電子工学的ペースメーカーによって、心房において生じる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ペースメーカーイオンチャネルをコードする核酸を、前記経路の細胞に形質移入するステップをさらに含み、前記核酸を機能的に発現させ、その結果、前記細胞内でペースメーカー電流を誘発する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ペースメーカーイオンチャネルを、前記経路の第1末端の細胞内で発現させる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ペースメーカーイオンチャネルを発現する細胞が、前記第1末端から0.5mm延長した領域に位置する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1部位が心房内にあり、前記第2部位が心室内にあり、その結果、心房から心室への経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝播が可能となる、請求項39または41に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞が、幹細胞、心筋細胞、コネキシンを発現するように操作された繊維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞である、請求項39または41に記載の方法。
【請求項46】
前記幹細胞が、成体間葉系幹細胞または胚性幹細胞であり、実質的に分化できない、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記幹細胞が、ヒト成体間葉系幹細胞またはヒト胚性幹細胞である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
少なくとも1種の心臓のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、前記経路の細胞に形質移入し、そこで発現させるステップをさらに含み、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる、請求項39または41に記載の方法。
【請求項49】
前記の少なくとも1種の心臓のコネキシンが、Cx43、Cx40またはCx45である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ペースメーカーイオンチャネルが、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、あるいはその変異体またはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
対象の心臓の損傷した伝導に関連する障害を治療する方法であって、
(a)ナトリウムチャネルをコードする核酸を、細胞に形質移入するステップであって、前記細胞が、ナトリウムチャネルを機能的に発現するステップと、
(b)前記形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、前記細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、
(c)それらの部位の間で伝導が損傷している心臓の第1部位および第2部位を選択するステップと、
(d)前記経路の第1末端を前記第1部位に、かつ前記経路の第2末端を前記第2部位に付着させるステップと
を含み、
その結果、前記の2つの部位の間の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する方法。
【請求項52】
対象の心臓の損傷した伝導および損傷した洞房結節の活動に関連する障害を治療する方法であって、
(a)ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルをコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入するステップであって、前記細胞が、ナトリウムチャネルおよびペースメーカーイオンチャネルを機能的に発現するステップと、
(b)前記形質移入細胞を増殖させて、第1末端および第2末端を有する細胞の経路とするステップであって、前記細胞が、電気伝導性のギャップ結合を介して物理的に相互接続しているステップと、
(c)それらの部位の間で伝導が損傷している心臓の左心房の第1部位、および第2部位を選択するステップと、
(d)前記経路の第1末端を前記第1部位に、かつ前記経路の第2末端を前記第2部位に付着させるステップと
を含み、
その結果、洞房結節によって生じるペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝播、ならびに/あるいは前記の2つの部位の間の細胞の経路を横断するペースメーカー信号/ペースメーカー電流および/または電気信号/電流の伝導が可能となり、それによって、対象を治療する方法。
【請求項53】
前記細胞が、ヒト成体間葉系幹細胞またはヒト胚性幹細胞であり、実質的に分化できない、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも1種のコネキシン、L型カルシウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するアルファサブユニット、あるいはカリウムチャネルの、アクセサリーサブユニットを有するまたは有しないアルファサブユニットのうちの1種または複数をコードする少なくとも1種の核酸を、細胞に形質移入し、そこで発現させるステップをさらに含み、その結果、再分極の電位-時間経過および/または心臓の不応性を変化させる、請求項51または52に記載の方法。
【請求項55】
前記ペースメーカーイオンチャネルが、(a)過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネル、あるいはその変異体またはキメラ、および(b)MiRP1ベータサブユニットのうちの少なくとも1種である、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
間葉系幹細胞を増殖させて、2つの末端を有する条片とし、ナトリウムチャネルをコードする核酸を前記間葉系幹細胞に形質移入し、それによって、前記間葉系幹細胞に前記ナトリウムチャネルを機能的に発現させることによって作製する房室性のバイパス経路であって、前記条片を心臓に付着させて、心臓の心房と心臓の心室との間に経路を生み出すことができ、前記経路が、電気信号を伝播することができる房室性のバイパス経路。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−508538(P2009−508538A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524019(P2008−524019)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028587
【国際公開番号】WO2007/027315
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(306018457)ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク (25)
【出願人】(503035992)ザ・リサーチ・ファウンデーション・オブ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028587
【国際公開番号】WO2007/027315
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(306018457)ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク (25)
【出願人】(503035992)ザ・リサーチ・ファウンデーション・オブ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク (7)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]