説明

心臓血管疾患の危険率を低減するためのラビシア・プミラ抽出物

心臓血管疾患の危険率又は進行を低減できる、薬用植物を原料とする医薬としての又は植物性薬剤としての、ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物が開示される。この抽出物は、インスリン抵抗性、肥満、代謝症候群、糖尿病及び加齢に関連した病態生理学的変化に影響を及ぼす因子に対処する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、マレーシア特許出願番号PI 20054784に開示される方法等により調製された、ラビシア・プミラの葉の標準化された水性抽出物の、薬用植物を原料とする医薬としての又は植物性薬剤としての、より具体的には、特に女性におけるインスリン抵抗性、肥満、代謝症候群、糖尿病及び加齢に関連した病態生理学的変化(多様な関連遺伝子の調節を含む)に影響を及ぼす因子に対処することにより心臓血管疾患の危険率又は進行を低減するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
急速な都市化及び変化する生活様式に伴って、心臓血管疾患(CVD)は現在、多くの国において主要な死因である。多くの因子が、人がCVDを発病し得る度合いに影響を及ぼすとして知られており、これらの因子には、年齢、性別、遺伝的性質、及び生活様式、とりわけ食習慣が含まれる。
【0003】
運動及びバランスのとれた食事等の健康的な生活習慣が最良且つ最も効果的なCVDの予防方法であるとはいえ、女性にとってはエストロゲンが、心臓血管の健康だけでなく骨量及び精神的な認知の保護及び維持において著しい役割を果たすことが知られている。しかし、これらの保護的効果は、女性が閉経、又は卵巣の外科的切除若しくはこれに続く化学療法及び骨盤の放射線療法等の医学的治療の結果である早発閉経に入ると実質的に低減される可能性がある。平均して、CVDによる女性の死亡率は乳がんの5倍である。
【0004】
生活様式ではあっても、薬理学的な介入又は薬用植物療法等の補完医学の使用により、CVDを遅延させ、さらには予防することができる。多くの研究によって、心臓血管の健康を維持するための、大豆タンパク質等の栄養補助食品、緑茶、並びにジノステマ(Gynostemma)、ロディオラ(Rhodiola)及びガノデルマ(Ganoderma)等の漢方薬の有益な効果及び使用が裏付けられている。
【0005】
ラビシア・プミラ、又はより一般的には「カチプ・ファティマ」(セルソー・ファティマ(Selusoh Fatimah)、ランプット・シティ・ファティマ(Rumput Siti Fatimah)、アカー・ファティマ(Akar Fatimah)、カチット・ファティマ(Kachit Fatimah)、カチップ・ファティマ(Kachip Fatimah)、カチップ・パティマ(Kachip Patimah)、クンチ・ファティマ(Kunchi Fatimah)、ポコック・フィンガン(Pokok pinggang)、ランプット・パリス(Rumput palis)、タダー・マタ・ハリ(Tadah mata hari)、マタ・ペランドック・リンバ(Mata pelandok rimba)、ブンガ・ベランカス・フータン(Bunga belangkas hutan)としても知られている)は、Burkhill(1993)に開示されるように、マレーの薬用植物である。現在は栽培が可能であるが、この草本性の灌木は、マレーシア半島及びカリマンタンのみにおける林床にて野生で生育するものを見いだすことができる。400年間以上にわたり、この植物の煎じ汁は、出産を容易にするために、分娩後において膣及び胃の筋肉を引き締め、これらを整え、体力の回復を補助するために慣習的に服用される。更なる使用には、月経期間の調節、生理痛の緩和、鼓腸の治療、赤痢の治療及び「骨の病」の治療が含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の主たる目的は、心臓血管疾患の危険率又は進行、及び年齢に関連した健康問題を低減することのできる、ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物の使用の提供である。
【0007】
本発明のさらに別の目的は、病態生理学的変化に影響を及ぼすための、前記標準化された水性抽出物の使用の提供である。
【0008】
本発明の上記の及びその他の目的は、以下の提供によって達成される。
【0009】
ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物が心臓血管疾患の危険率又は進行及び年齢に関連した健康問題を低減することを特徴とする、前記抽出物の経口的に十分な量における使用。
【0010】
並びに、インスリン抵抗性、肥満、代謝症候群、糖尿病及び加齢に関連した遺伝子の調節を含む病態生理学的変化に影響を及ぼすような、ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物を摂取させたラットにおける体重変化を示す。
【図2】ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物を摂取させたラットの子宮の完全性を示す。
【図3】ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物を摂取させたラットのグルコース利用を示す。
【図4】ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物を摂取させたラットにおける血漿レプチン濃度を示す。
【図5】ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物を摂取させたラットにおける脂肪組織中でのレプチンの発現を示す。
【図6】ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物を摂取させたラットにおける肝臓組織中でのレプチンの発現を示す。
【図7】ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物を摂取させたラットにおけるアディポネクチン濃度を示す。
【図8】ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物を摂取させたラットにおける脂肪組織中でのアディポネクチン濃度を示す。
【図9】ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物を摂取させたラットにおける脂肪組織中でのPPAR−ガンマの発現を示す。
【図10】ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物を摂取させたラットにおける肝臓組織中でのPPAR−ガンマの発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、マレーシア特許出願番号PI 20054784に開示される方法等により調製された、ラビシア・プミラの葉の標準化された水性抽出物の、薬用植物を原料とする医薬としての又は植物性薬剤としての、特に女性におけるインスリン抵抗性、肥満、代謝症候群、糖尿病及び加齢に関連した、多様な関連遺伝子の調節を含む病態生理学的変化に影響を及ぼす因子に対処することにより、心臓血管疾患の危険率又は進行を低減するための、使用に関する。
【0013】
ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物の葉は、薬理学的療法に取って代わることを意図しているのではなく、むしろ、健康的な生活習慣と、特にきちんと服用した場合の、この抽出物の累積的且つ有益な及び予防的な効果とが、健康の維持において有益である可能性があり、したがって、特に女性におけるCVDの危険率及び年齢に関連した健康問題を低減できると強調することを意図している。
【実施例】
【0014】
(例1)
1つの例において、ラットにおけるアディポカイン、グルコース利用、体重及び子宮の完全性に対する抽出物の効果が研究された。
【0015】
卵巣切除されたスプラーグ・ドーリー・ラットを、ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物の用量10〜50mg/kg/日により30日間にわたり毎日処置した。抽出物を蒸留水2〜3ml中に溶解し、ラットに経口胃内投与により摂取させた。研究の終了時に、尾静脈から採取した血液を使用してグルコース濃度を決定した。その後、動物を屠殺し、脂肪、骨格筋及び肝臓組織を切除して遺伝子発現の研究に備えて速やかに処理した。分析するまでの間、血漿を−80℃において凍結保存した。組織学的検査に備えて処理する前に、子宮の重量を記録した。酵素又は放射免疫測定キットを使用することによって、血漿サンプル中におけるインスリン及びアディポカインホルモンの濃度を決定した。
【0016】
エストロゲン欠乏ラットは体重の有意な増加を示したが、抽出物を付与したラットにおいては、使用された抽出物の量と軽減された体重増加との間に用量関係性が観察された(図1)。
【0017】
処置した動物における子宮の完全性が、抽出物の用量が増加するにつれて回復することが見いだされた(図2)。
【0018】
対照群と比較して、抽出物を付与した動物は、エストロゲン補充された動物に匹敵するグルコース利用の改善を示した(図3)。抽出物を付与したラットにおいて、血漿レプチン濃度(図4)、並びに脂肪(図5)及び肝臓組織(図6)のレプチン遺伝子の発現が有意に増加した。
【0019】
同様に、抽出物を摂取させたラットは、血漿アディポネクチンがより高く(図7)、脂肪組織におけるアディポネクチン遺伝子の発現が増加していた(図8)。PPAR−ガンマ遺伝子の発現についても、抽出物を付与したラットの脂肪(図9)及び肝臓組織(図10)において同様により高かった。
【0020】
(例2)
別の例において、48〜55歳の健康な女性の志願者116人を使用して二重盲検プラセボ対照試験を実施した。対象は、1日当たり140mg又は280mg又は560mgの抽出物又はプラセボを360日間にわたり服用した。脂質特性において全般的な改善があり、トリグリセリド(p=0.003)及びアポリポタンパク質B(p=0.006)について統計的に有意であった(表1)。
【0021】
【表1】

【0022】
この結果はさらに、ラビシア・プミラの水性抽出物は、特にきちんと服用した場合に、心臓血管の健康を維持でき、したがって、特に女性におけるCVDの危険率及び年齢に関連した健康問題を低減できるという主張を裏付ける。
(参考文献)
【0023】
言うまでもなく、上記は本発明の例示によるものであり、本発明に対する上記の全ての及び他の改変及び変更は、当業者に明白である通り、本明細書で特許請求した発明の広い範囲及び領域に含まれると考えられる、ということが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラビシア・プミラの標準化された水性抽出物が心臓血管疾患の危険率又は進行及び年齢に関連した健康問題を低減することを特徴とする、前記抽出物の経口的に十分な量における使用。
【請求項2】
経口的に服用される前記抽出物の量が100〜500mg/日の範囲である、請求項1に記載の標準化された水性抽出物の使用。
【請求項3】
前記抽出物が、インスリン抵抗性、肥満、代謝症候群、糖尿病及び加齢に関連した遺伝子の調節を含む病態生理学的変化に影響を及ぼす、請求項1又は2に記載の標準化された水性抽出物の使用。
【請求項4】
前記抽出物の100〜500mg/日が、脂質、アポリポタンパク質及び内皮の機能に対する生化学的マーカーの低減を引き起こす、請求項1から3までのいずれか一項に記載の標準化された水性抽出物の使用。
【請求項5】
前記抽出物の10〜50mg/kg体重/日が哺乳動物におけるアディポカイン濃度及び関連遺伝子の発現を調節する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の標準化された水性抽出物の使用。
【請求項6】
前記抽出物の10〜50mg/kg体重/日が哺乳動物においてグルコース利用を改善し、体重を調節する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の標準化された水性抽出物の使用。
【請求項7】
前記抽出物の10〜50mg/kg体重/日が哺乳動物における子宮壁の完全性を維持する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の標準化された水性抽出物の使用。
【請求項8】
前記抽出物が、特に女性における、心臓血管疾患の危険率及び年齢に関連した健康問題を低減する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の標準化された水性抽出物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−515389(P2011−515389A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500716(P2011−500716)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【国際出願番号】PCT/MY2008/000129
【国際公開番号】WO2009/116848
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(506083615)ガバメント オブ マレーシア アズ リプリゼンティッド バイ ザ ミニストリー オブ サイエンス、テクノロジー アンド イノベイション、マレーシア (2)
【Fターム(参考)】