説明

心電信号伝送装置

【課題】生体から取得した心電信号を心電計に確実に伝送させる。
【解決手段】心電計接続部200は心電図を作成する心電計に接続される。多芯電線300はその一端が心電計接続部200に接続されその他端が生体から心電信号を取得するための電極が接続される心電誘導電線50に接続される。多芯電線300と心電誘導電線50との接続は中継部400で行われ、多芯電線300と心電誘導電線50との接続部分が収納される。中継部400は外部ノイズの侵入を防止する電磁遮蔽が施され、心電信号の伝送状態を目視するための表示ランプ450を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体から取得した心電信号を心電計に確実に伝送させることができる心電信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心臓疾患の診断には、たとえば下記特許文献1に開示されているような心電計を用いる。心電計は、心電図を作成する心電計本体と、生体から心電信号を取得するための電極と、この電極を心電計本体に接続するためのコードとで構成される。
【0003】
心臓疾患を診断するために使用される心電図検査法にはさまざまなものがある。その心電図検査法の1つにホルター心電図検査法がある。ホルター心電図検査法は、24時間に亘って心電図を連続的に取得して、特に不整脈などの短時間では測定できない心臓疾患の診断に有効である。
【0004】
また、心臓疾患の診断ではないが、たとえば下記特許文献2に開示されているように、車のテスト走行中にドライバーの心電図を連続的に取得して、ドライバーのストレスを測定するようなことも試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−518153号公報
【特許文献2】特開2007−139499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ホルター心電図を取得する場合や、ドライバーのストレスを測定する場合には、測定期間中、心電信号が電極から心電計本体に確実に伝送されなければならない。コードが拾う外部ノイズやコードの接触不良により、電極と心電計本体との間で心電信号がうまく伝送されなかったときには心電信号を取り直さなければならないからである。
【0007】
したがって、本願発明は、生体から取得した心電信号を心電計に確実に伝送させることができる心電信号伝送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る心電信号伝送装置は、心電計接続部、多芯電線、中継部を備える。心電計接続部は心電図を作成する心電計に接続される。多芯電線はその一端が心電計接続部に接続されその他端が生体から心電信号を取得するための電極が接続される心電誘導電線に接続される。多芯電線と心電誘導電線との接続は中継部で行われ、多芯電線と心電誘導電線との接続部分が収納される。
【0009】
中継部は外部ノイズの侵入を防止する電磁遮蔽が施され、また、中継部は心電信号の伝送状態を目視するための表示ランプを備える。
【発明の効果】
【0010】
以上のように構成された本発明に係る心電信号伝送装置によれば、外部ノイズの侵入を防止でき、心電信号の伝送状態を目視できるので、生体から取得した心電信号を心電計に確実に伝送させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1に係る心電信号伝送装置の外観図である。
【図2】心電誘導電線を構成する芯電導体を示す図である。
【図3】心電誘導電線の形成過程の説明に供する図である。
【図4】心電誘導電線の形成過程の説明に供する図である。
【図5】心電誘導電線と電極との接続過程の説明に供する図である。
【図6】心電誘導電線と電極との接続過程の説明に供する図である。
【図7】心電誘導電線と電極との接続過程の説明に供する図である。
【図8】心電誘導電線と電極との接続過程の説明に供する図である。
【図9】中継部内での多芯電線と心電誘導電線との接続過程の説明に供する図である。
【図10】中継部を構成する基盤台の外観図である。
【図11】表示ランプの点灯状態を制御する点灯制御部の構成図である。
【図12】実施形態2に係る心電信号伝送装置の外観図である。
【図13】電極からの微弱信号を増幅する増幅器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る心電信号伝送装置の実施形態を実施形態1と実施形態2に分けて説明する。
【0013】
[実施形態1]
まず、実施形態1に係る心電信号伝送装置について説明する。
【0014】
(心電信号伝送装置の構成)
図1は、本実施形態に係る心電信号伝送装置の外観図である。心電信号伝送装置100は、心電計接続部200、多芯電線300、中継部400によって形成される。
【0015】
心電計接続部200は図示されていない心電計に接続される。多芯電線300はその一端が心電計接続部200に接続される。多芯電線300はその他端が心電誘導電線50に接続される。心電誘導電線50は生体から心電信号を取得する図示しない電極に接続される。多芯電線300と心電誘導電線50との接続は中継部400で行われる。
【0016】
電極は生体に取り付けられ、心臓が鼓動する際の心電信号を検出する。心電計は電極が検出した心電信号を時系列に並べて心電図を作成する装置である。
【0017】
多芯電線300は電磁遮蔽された10芯の丸型電線である。多芯電線300の一端には心電計に接続するため10個の接続部を備える10Pコネクタ210が接続される。また、多芯電線300の他端の10本の芯電線には10個の電極を接続する10本の心電誘導電線50が接続される。10本の芯電線と10本の心電誘導電線50との接続は中継部400内で行う。
【0018】
10Pコネクタ210の各接続部と多芯電線300の各芯電線とが接続される接続部分は絶縁樹脂220で覆って一体化する。10Pコネクタ210と多芯電線300との接続強度を増し、心電信号伝送装置100の使い勝手を良くするためである。
【0019】
中継部400は表示ランプ450を備える。表示ランプ450は、電極が生体に正しく取り付けられ、電極と心電計が心電信号伝送装置100に接触不良を起こすことなく接続され、生体からの心電信号が心電計に正常に伝送されているときには点灯する。また、表示ランプ450は、電極が生体に正しく取り付けられていなかったり、心電信号伝送装置100と電極または心電信号伝送装置100と心電計との間に接触不良が生じていたりして、生体からの心電信号が心電計に正常に伝送されていないときには点滅を繰り返す。なお、表示ランプ450は、中継部400内において多芯電線300と心電誘導電線50との接続に接触不良などの不具合が生じているときには点灯しない。したがって、表示ランプ450の点灯状態を目視することで心電信号が心電計に正常に伝送されている否かを確認できる。
【0020】
また、中継部400は外部ノイズの侵入を防止する電磁遮蔽が施されている。具体的には、中継部400を形成するケース内側に金属板、金属テープ、金属箔などの導電体を貼り付けてある。これらの導電体は接地する。これらの導電体によって外部から進入してくる電磁波を遮蔽する。中継部400は多芯電線300の各芯電線と各心電誘導電線50とを抵抗器を介して接続している(後述する)。このため、多芯電線300と心電誘導電線50との接続部分の距離が長くなり外部ノイズが侵入しやすくなっている。中継部400は以上の構成により外部ノイズの侵入を防止する。
【0021】
本実施形態に係る心電信号伝送装置は、概略以上のような構成を備えているので、生体から取得した心電信号を心電計に確実に伝送させることができる。
【0022】
本実施形態では、心電誘導電線50の構成を外部ノイズの影響を受けない構成とし、心電誘導電線50と電極との接続を曲げ応力や引っ張り力に対して強くなるように工夫している。また、中継部400で多芯電線300を心電誘導電線50に確実に接続するための工夫をしている。さらに、中継部400で外部ノイズの侵入を防止できる構造を採用している。そして、中継部400は心電信号の伝送状態により表示ランプ450の点灯状態を制御する点灯制御部を備えている。
【0023】
以下に、心電誘導電線50の構成、心電誘導電線50と電極との接続、中継部400内での多芯電線300と心電誘導電線50との接続、中継部400の構成、表示ランプ450の点灯状態を制御する点灯制御部の構成を説明する。
【0024】
(心電誘導電線の構成)
まず、心電誘導電線50の構成について説明する。図2は、心電誘導電線を構成する芯電導体を示す図である。
【0025】
図2に示すように、芯電導体20は芯となる支持体10を中心軸とする。支持体10は長い繊維を撚った撚り糸のようなものである。支持体10の外周に直径が0.1mm程度の細い導線を10本程度束ねた巻き線15が巻回してある。巻き線15は支持体10に横巻きまたは斜め横巻きされている。芯電導体20は支持体10が繊維を撚った撚り糸であるので、引っ張り強度は20Kg以上ある。また、支持体10の外周に巻き線15が横巻きまたは斜め横巻きしてあるので、曲げ方向に軟らかく、芯電導体20は激しい屈曲にも耐えられる。したがって、芯電導体20は屈曲に対する柔らかさと耐性、引っ張り強度に優れ、心電誘導電線50の芯線として好都合である。
【0026】
次に、図3に示すように、図2に示した芯電導体20の外表面にやや固めの絶縁性樹脂25を被覆する。絶縁性樹脂25はポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、塩化ビニール樹脂などを用いる。
【0027】
そして、図4に示すように、絶縁性樹脂25の外表面にビニールカーボン樹脂30などの導電性樹脂を薄く被服して外部からの電磁波を遮蔽できるようにする。さらに、ビニールカーボン樹脂30の外表面に直径が0.1mm程度の細い導線を10本程度束ねた巻き線35を巻回する。巻き線35は電磁遮蔽体40を形成する。巻き線35はビニールカーボン樹脂30の外表面を横巻きまたは斜め横巻きに巻き上げる。そして、電磁遮蔽体40の外表面に軟質の絶縁ビニール樹脂45などの絶縁樹脂を被服すると心電誘導電線50が形成される。
【0028】
心電誘導電線50の芯線である芯電導体20は、ビニールカーボン樹脂30と電磁遮蔽体40とによって2重に電磁遮蔽される。このため、心電信号を伝送する芯電導体20は、外部からの電磁波を完全に遮蔽でき、外部ノイズの侵入を防止することができる。心電誘導電線50は、巻き線15、巻き線35を横巻きまたは斜め横巻きしてあるので、曲げ方向に軟らかく、激しい屈曲に耐えられる。
【0029】
(心電誘導電線と電極との接続)
次に、心電誘導電線と電極との接続について説明する。
【0030】
心電誘導電線と電極とを接続するときには、図5に示すように、まず、心電誘導電線50の先端部分の絶縁ビニール樹脂45、電磁遮蔽体40、ビニールカーボン樹脂30を同時に25mm程度剥離して芯電導体20を露出させる。
【0031】
次に、芯電導体20の絶縁性樹脂25を15mm程度剥離して芯電導体20を露出させる。芯電導体20は、図2に示すように、支持体10を中心軸として巻き線15が横巻きまたは斜め横巻きされているものである。
【0032】
そして、芯電導体20を電極の接続端子500の圧着端子カシメ穴に差し込んで、図6に示すように、芯電導体20の挿入部分を接続端子500の上下から押しつぶす。これにより、芯電導体20と電極の接続端子500とが賢固に接続され、心電誘導電線50と電極とが繋がる。
【0033】
次に、心電誘導電線50と接続端子500との接続部分を絶縁樹脂60で一体化する。この接続部分の一体化は成形金型を用いて行うと良い。
【0034】
さらに、次に、図7に示すように、心電誘導電線50と電極の接続端子500との接続部分を覆うように軟質の樹脂65を成形被服する。軟質の樹脂65で接続部分を覆うと、心電誘導電線50と接続端子500との接続部分は賢固で、心電誘導電線50側は柔らかくなるので取り扱いの感じが良くなる。
【0035】
また、芯電導体20の巻き線15は、横巻きまたは斜め横巻きされているので、芯電導体20は曲げ方向に軟らかく、激しい屈曲にも耐えられる。したがって、芯電導体20と接続端子500との接続部分は反複屈曲に優れた接続部分となる。
【0036】
さらに、図8に示したように、芯電導体20を接続端子500の圧着端子カシメ穴に差し込む前に、長めに露出させた芯電導体20を結んだり、または、丸く絡めたりして瘤状の繋留止70を作り、繋留止70から突き出た芯電導体20を接続端子500の圧着端子カシメ穴に差し込んで、図6に示すように芯電導体20の挿入部分を接続端子500の上下から押しつぶしても良い。
【0037】
そして、心電誘導電線50と接続端子500との接続部分を絶縁樹脂60で一体化するようにすれば、心電誘導電線50と接続端子500の双方向からの引っ張り強度は増す。また、強い屈曲を繰り返しても誘導電線50が接続端子500から脱絡したり断線したりすることはない。
【0038】
万が一、心電誘導電線50と接続端子500が賢固に接続されなかったとしても、繋留止70の絶縁樹脂60内での繋留作用によって、心電誘導電線50が接続端子500から抜けたりすることは起こらない。また、屈曲を頻繁に繰り返したり、強く引っ張ったりしても、心電誘導電線50と接続端子500の接続は充分に保持され、芯電導体20の接続箇所が接続端子500から抜けて不具合が発生することはない。
【0039】
(中継部内での多芯電線と心電誘導電線との接続)
次に、中継部400内での多芯電線300と心電誘導電線50との接続について説明する。図9は、中継部内での多芯電線と心電誘導電線との接続過程の説明に供する図である。
【0040】
図9に示すように、多芯電線300の10本の各芯電線310に10本の心電誘導電線50が接続される。図9では、理解しやすいように、多芯電線300の1本の芯電線310と1本の心電誘導電線50を接続する場合を例示する。
【0041】
多芯電線300と心電誘導電線50との接続に際して、多芯電線300の芯電線(銅線)を露出させ、心電誘導電線50の芯電導体20の接続部を露出させる。そして、100KΩの抵抗器80を多芯電線300の芯電線と心電誘導電線50の芯電導体20に接続する。多芯電線300の芯電線と抵抗器80との接続は、芯電線を接続部品85の圧着端子カシメ穴に挿入し、また、抵抗器80の一端子を接続部品85の圧着端子カシメ穴に挿入し、接続部品85の両端を上下から押しつぶすことによって行う。抵抗器80と芯電導体20との接続は、抵抗器80の一端子を接続部品95の圧着端子カシメ穴に挿入し、また、芯電導体20を接続部品95の圧着端子カシメ穴に挿入し接続部品95の両端を上下から押しつぶすことによって行う。
【0042】
なお、多芯電線300の芯電線と心電誘導電線50の芯電導体20に接続する100KΩの抵抗器80は、心拍が停止してAEDを用いたとき(瞬時高電圧5000Vが生体に印加される)、または、高周波電気メスを用いたときなどには、生体には高電圧が印加されるため、印加された高電圧が直接心電計に入り込むことを阻止する役割を果たす。
【0043】
また、抵抗器80の片方の端子にトロイダルコア90を装着する。トロイダルコア90は、心電誘導電線50、中継部400内、多芯電線300において自己発生した電磁波を除去するために装着する。心電誘導電線50の全体は外部からの電磁波障害を完全に遮蔽できるが、心電誘導電線50および多芯電線300が心電図の取得時に折り曲げられるので、このときに電線自体に自己電磁波が生じ、これがノイズとなって心電信号に悪影響を与える。トロイダルコアはこれを防止する。
【0044】
(中継部の構成)
次に、中継部400の構成について説明する。図10は、中継部400を構成する基盤台440の外観図である。
【0045】
基盤台440は長方形であり一方向に直線的に伸びる6本の凹状の溝部445を備える。各溝部445には、多芯電線300の芯電線と心電誘導電線50との接続部分が収納される。6本の溝部445を形成する壁446は、多芯電線300の芯電線と心電誘導電線50との接続部分間で絶縁距離を取るために一定の厚みを有している。
【0046】
2個の基盤台440が積層され一方の基盤台440に蓋460を被せる。2個の基盤台440は溝部445を同じ方向に向けて積層する。蓋460は溝部445が開放されている基盤台440に被せる。図10では、2個の基盤台440の一方とこの基盤台440に被せる蓋460を示してある。
【0047】
多芯電線300の10本の芯電線には10本の心電誘導電線50が接続される。そのため、各芯電線には心電誘導電線50との接続部分が存在する。多芯電線300を形成する10本の芯電線と10本の心電誘導電線50との接続部分は、2個の基盤台440の溝部445に1つずつ分配される。
【0048】
胸部に取り付ける6個の電極に繋がる接続部分は1つの基盤台440の溝部445に収納して固定される。足部、手部に取り付ける4個の電極に繋がる接続部分はもう1つの基盤台440の溝部445に収納して固定される。
【0049】
2個の基盤台440の溝部445に多芯電線300の芯電線と心電誘導電線50との接続部分が収納されると、溝部445が開放されている基盤台440に蓋460を被せる。2個の基盤台440が積層され蓋460が被せられると、これらはケースに収納される。ケースは、その内壁または外側に外部ノイズの侵入を防止する電磁遮蔽を施す。たとえば、ケースの内側または外側に金属板、金属テープ、金属箔などの導電体を貼り付ける。これらの導電体によって外部から進入してくる電磁波を遮蔽する。
【0050】
また、ケースには、表示ランプ450の点灯を制御する点灯制御部(電池を備えた基板)が収容される。点灯制御部は多芯電線300の芯電線と心電誘導電線50との接続部分との電磁的な絶縁を図るために、接続部分の電磁遮蔽とは別に、独立した電磁遮蔽ができるようにしてある。たとえば、点灯制御部の外側を金属板、金属テープ、金属箔などの導電体で覆う。
【0051】
(点灯制御部の構成)
次に、表示ランプ450の点灯状態を制御する点灯制御部の構成を説明する。図11は、表示ランプ450の点灯状態を制御する点灯制御部600の構成図である。
【0052】
点灯制御部600は、ノイズ除去部610、増幅部620、心電信号レベル比較部630を有する。
【0053】
ノイズ除去部610は、電極が取得した心電信号に含まれるノイズを除去する回路である。ノイズとしては、AEDを用いたときに生体に印加される電圧、高周波電気メスを用いたときに生体に印加される電圧などがある。
【0054】
増幅部620は、ノイズが除去された心電信号を増幅する回路である。
【0055】
心電信号レベル比較部630は、増幅された心電信号の電圧レベルを心電信号レベル比較部630に記憶されている複数の電圧と比較する回路である。
【0056】
心電信号レベル比較部630は、第1の電圧として、電極が生体に正しく取り付けられているときに取得される心電信号の電圧レベルに一定の定数(増幅率)を掛けた電圧を記憶する。また、第2の電圧として、第1の電圧よりも低い電圧であって電極が生体に正しく取り付けられていないとき、および、心電信号伝送装置100と電極または心電信号伝送装置100と心電計との間に接触不良があることを検出できる電圧を記憶する。第3の電圧として、第2の電圧よりもかなり低く、ほぼ0ボルトに近い電圧を記憶する。
【0057】
(点灯制御部の動作)
心電信号レベル比較部630は、増幅された心電信号の電圧レベルが第1の電圧と同等以上の電圧レベルであれば、表示ランプ450を点灯させる。
【0058】
心電図測定をしている施術者は、表示ランプ450の点灯を見て、電極が生体に正しく取り付けられ、電極と心電計が心電信号伝送装置100に接触不良を起こすことなく接続され、生体からの心電信号が心電計に正常に伝送されていることを認識できる。
【0059】
また、心電信号レベル比較部630は、増幅された心電信号の電圧レベルが第1の電圧よりも低く第2の電圧と同等以上の電圧レベルであれば、表示ランプ450を点滅させる。
【0060】
心電図測定をしている施術者は、表示ランプ450の点滅を見て、電極が生体に正しく取り付けられていなかったり、心電信号伝送装置100と電極または心電信号伝送装置100と心電計との間に接触不良が生じていたりして、生体からの心電信号が心電計に正常に伝送されていないことを認識できる。
【0061】
さらに、心電信号レベル比較部630は、増幅された心電信号の電圧レベルが第3の電圧よりも低い電圧レベルであれば、表示ランプ450を消灯させる。
【0062】
心電図測定をしている施術者は、表示ランプ450の消灯を見て、中継部400内において多芯電線300と心電誘導電線50との接続に接触不良などの不具合が生じていることを認識できる。
【0063】
以上のように、実施形態1に係る心電信号伝送装置によれば、電磁遮蔽がされているので外部ノイズの侵入を防止でき、また、心電信号の伝送状態を目視できるので、生体から取得した心電信号を心電計に確実に伝送させることができる。したがって、本実施形態に係る心電信号伝送装置は、長時間に亘って心電信号を取得しなければならないような心電図検査法において非常に有効である。
【0064】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る心電信号伝送装置について説明する。実施形態2に係る心電信号伝送装置は、実施形態1に係る心電信号伝送装置の10Pコネクタ210をUSBコネクタに代え、さらに中継部400に増幅器を設けたものである。USBコネクタを使用したことと、中継部に増幅器を設けたこと以外は、実施形態1と同じである。
【0065】
(心電信号伝送装置の構成)
図12は、本実施形態に係る心電信号伝送装置の外観図である。心電信号伝送装置100は、心電計接続部700、多芯電線300、中継部400によって形成される。
【0066】
心電計接続部700は図示されていない心電計または心電計として機能するPC(パーソナルコンピュータ)に接続される。多芯電線300はその一端が心電計接続部700に接続される。多芯電線300はその他端が後述の増幅器を介して心電誘導電線50に接続される。心電誘導電線50は生体から心電信号を取得する図示しない電極に接続される。多芯電線300と心電誘導電線50との接続は中継部400内に設けた増幅器で行われる。
【0067】
電極は生体に取り付けられ、心臓が鼓動する際の心電信号を検出する。心電計は電極が検出した心電信号を時系列に並べて心電図を作成する装置である。
【0068】
多芯電線300は電磁遮蔽された10芯の丸型電線である。多芯電線300の一端には心電計に接続するためのUSBコネクタ710が接続される。また、多芯電線300の他端の10本の芯電線には増幅器を介して10個の電極を接続する10本の心電誘導電線50が接続される。10本の芯電線と増幅器の接続、増幅器と10本の心電誘導電線50との接続は、増幅器が形成された極薄の平板状の基板が備える10個の端子で行われる。図9に示した接続部品95が取り外された状態で、基板が備える10個の端子において、多芯電線300の10本の各芯電線310と心電誘導電線50の芯電導体20が接続される。
【0069】
中継部400は表示ランプ450を備える。表示ランプ450は、電極が生体に正しく取り付けられ、電極と心電計が心電信号伝送装置100に接触不良を起こすことなく接続され、生体からの心電信号が心電計に正常に伝送されているときには点灯する。また、表示ランプ450は、電極が生体に正しく取り付けられていなかったり、心電信号伝送装置100と電極または心電信号伝送装置100と心電計との間に接触不良が生じていたりして、生体からの心電信号が心電計に正常に伝送されていないときには点滅を繰り返す。なお、表示ランプ450は、中継部400内において多芯電線300と心電誘導電線50との接続に接触不良などの不具合が生じているときには点灯しない。したがって、表示ランプ450の点灯状態を目視することで心電信号が心電計に正常に伝送されている否かを確認できる。
【0070】
また、中継部400は外部ノイズの侵入を防止する電磁遮蔽が施されている。具体的には、中継部400を形成するケース内側に金属板、金属テープ、金属箔などの導電体を貼り付けてある。これらの導電体は接地する。これらの導電体によって外部から進入してくる電磁波を遮蔽する。中継部400は多芯電線300の各芯電線と各心電誘導電線50とを増幅部及び抵抗器を介して接続している(後述する)。このため、多芯電線300と心電誘導電線50との接続部分の距離が長くなり外部ノイズが侵入しやすくなっている。中継部400は以上の構成により外部ノイズの侵入を防止する。
【0071】
本実施形態に係る心電信号伝送装置は、概略以上のような構成を備えているので、生体から取得した心電信号を増幅させて心電計に確実に伝送させることができる。
【0072】
本実施形態では、心電誘導電線50の構成を外部ノイズの影響を受けない構成とし、心電誘導電線50と電極との接続を曲げ応力や引っ張り力に対して強くなるように工夫している。また、中継部400で多芯電線300を心電誘導電線50に確実に接続するための工夫をしている。さらに、中継部400で外部ノイズの侵入を防止できる構造を採用している。そして、中継部400は微弱な心電信号を増幅しディジタル化してUSBコネクタ710に出力する後述する増幅器を備えている。さらに、中継部400は心電信号の伝送状態により表示ランプ450の点灯状態を制御する点灯制御部を備えている。
【0073】
図13は、心電信号検出電極からの微弱な心電信号を増幅する増幅器の構成を示すブロック図である。この増幅器は中継部400内に設ける。まず、図10を参照して中継部の構成から説明する。
【0074】
(中継部の構成)
基盤台440は長方形であり一方向に直線的に伸びる6本の凹状の溝部445を備える。各溝部445には、多芯電線300の芯電線と心電誘導電線50とが収納される。6本の溝部445を形成する壁446は、多芯電線300の芯電線と心電誘導電線50との接続部分間で絶縁距離を取るために一定の厚みを有している。
【0075】
2個の基盤台440が積層され一方の基盤台440に蓋460を被せる。2個の基盤台440は溝部445を同じ方向に向けて積層する。蓋460は溝部445が開放されている基盤台440に被せる。図10では、2個の基盤台440の一方とこの基盤台440に被せる蓋460を示してある。
【0076】
多芯電線300の10本の芯電線には、図13で示す構成の増幅器750が接続される。また、増幅器750の端子には10本の心電誘導電線50が接続される。したがって、多芯電線300を形成する10本の芯電線と10本の心電誘導電線50は増幅器750を介して接続される。
【0077】
胸部に取り付ける6個の電極に繋がる接続部分は1つの基盤台440の溝部445に収納して固定される。足部、手部に取り付ける4個の電極に繋がる接続部分はもう1つの基盤台440の溝部445に収納して固定される。
【0078】
2個の基盤台440の溝部445に多芯電線300の芯電線と心電誘導電線50を収納し、増幅器750を形成した極薄の基板を溝部445に載せて、溝部445が開放されている基盤台440に蓋460を被せる。2個の基盤台440が積層され蓋460が被せられると、これらはケースに収納される。ケースは、その内壁または外側に外部ノイズの侵入を防止する電磁遮蔽を施す。たとえば、ケースの内側または外側に金属板、金属テープ、金属箔などの導電体を貼り付ける。これらの導電体によって外部から進入してくる電磁波を遮蔽する。
【0079】
また、ケースには、表示ランプ450の点灯を制御する点灯制御部(電池を備えた基板)が収容される。点灯制御部は増幅器750を形成した極薄の基板と多芯電線300の芯電線、基板と心電誘導電線50との接続部分との電磁的な絶縁を図るために、接続部分の電磁遮蔽とは別に、独立した電磁遮蔽ができるようにしてある。たとえば、点灯制御部の外側を金属板、金属テープ、金属箔などの導電体で覆う。
【0080】
極薄の基板に形成した増幅器750は、図13に示すように、アナログ増幅器760とA/D変換器770を有する。アナログ増幅器760はオペアンプを用いた増幅率の大きなアンプであり、合計10個の電極から出力される微弱電流を合計10個のオペアンプで数ボルト程度の電流に増幅する。A/D変換部770は、アナログ増幅器760で増幅された心電信号を10個のA/Dコンバータでディジタル信号に変換する。変換されたディジタル信号は、心電計、または、心電計の機能を有するPCに取り付けたUSBコネクタを介して伝送される。心電計、または、心電計の機能を有するPCは、伝送されるディジタル信号に基づいて心電図を作成する。なお、増幅器750は、4個のオペアンプ及び4個のA/D変換器を持つものを一方の基盤台に収納し、6個のオペアンプ及び6個のA/D変換器を持つものを他方の基盤台に収納し、2個の基盤台440のそれぞれに1台ずつ増幅器を収納させる。
【0081】
以上のように、実施形態2に係る心電信号伝送装置によれば、電磁遮蔽がされているので外部ノイズの侵入を防止でき、また、心電信号の伝送状態を目視できるので、生体から取得した心電信号を心電計に確実に伝送させることができる。さらに、USBコネクタを用いているので、一般的に用いられているPCでも容易に心電図を作成させることができる。また、微弱な心電信号を増幅して出力できるので、より安定した出力を得ることができる。したがって、本実施形態に係る心電信号伝送装置は、長時間に亘って心電信号を取得しなければならないような心電図検査法において非常に有効である。
【符号の説明】
【0082】
20 芯電導体、
50 心電誘導電線、
80 抵抗器、
100 心電信号伝送装置、
200 心電計接続部、
210 10Pコネクタ、
220 絶縁樹脂、
300 多芯電線、
400 中継部、
440 基盤台、
445 溝部、
450 表示ランプ、
460 蓋、
500 接続端子、
600 点灯制御部、
610 ノイズ除去部、
620 増幅部、
630 心電信号レベル比較部、
700 心電計接続部、
710 USBコネクタ、
750 増幅器、
760 アナログ増幅器、
770 A/D変換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電計に接続される心電計接続部と、
その一端が前記心電計接続部に接続されその他端が生体から心電信号を取得するための電極が接続される心電誘導電線に接続される多芯電線と、
前記多芯電線と前記心電誘導電線との接続部分を収納する中継部と、を備え、
前記中継部は外部ノイズの侵入を防止する電磁遮蔽が施されたことを特徴とする心電信号伝送装置。
【請求項2】
前記中継部は、前記接続部分に、前記心電誘導電線からの微弱心電信号を増幅してディジタル化する増幅器を備え、ディジタル化された信号は前記多芯電線に伝送されることを特徴とする請求項1に記載の心電信号伝送装置。
【請求項3】
前記中継部の電磁遮蔽は、
前記中継部形成するケース内側に金属板、金属テープ、金属箔などの導電体を貼り付けることによって行うことを特徴とする請求項1または2に記載の心電信号伝送装置。
【請求項4】
前記中継部は、
心電信号の伝送状態を表示する表示ランプを備え、
前記表示ランプの点灯を制御する点灯制御部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の心電信号伝送装置。
【請求項5】
前記点灯制御部は、心電信号のノイズを除去するノイズ除去部、ノイズが除去された後の心電信号を増幅する増幅部、増幅した心電信号を記憶されている電圧レベルと比較する心電信号レベル比較部を有し、
前記心電信号レベル比較部は、前記生体からの心電信号が前記心電計に正常に伝送されているときには前記表示ランプを点灯し、前記生体からの心電信号が前記心電計に正常に伝送されていないときには前記表示ランプを点滅し、前記電極と前記心電計との間に接触不良が生じていて前記生体からの心電信号が前記心電計に伝送されないときには前記表示ランプを消灯することを特徴とする請求項4に記載の心電信号伝送装置。
【請求項6】
前記心電誘導電線は、
芯となる支持体の外周に導線が巻回された芯電導体を有し、
前記芯電導体が絶縁性樹脂で被覆され、さらに前記絶縁性樹脂が導電性樹脂で被覆され、前記導電性樹脂の外周に導線が巻回され、さらに前記導線が絶縁性樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の心電信号伝送装置。
【請求項7】
前記多芯電線と前記心電誘導電線との接続部分は、
前記多芯電線と前記心電誘導電線との間に高電圧の侵入を阻止する抵抗器が接続され、
前記抵抗器の一端子には電磁波を除去するためのトロイダルコアが装着されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の心電信号伝送装置。
【請求項8】
前記多芯電線と前記心電誘導電線との接続部分は、
前記中継部内に備える基盤台の溝部に収納されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の心電信号伝送装置。
【請求項9】
前記絶縁性樹脂は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(
PS)、塩化ビニール樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の心電信号伝送装置。
【請求項10】
前記導電性樹脂は、導電性カーボンが添加されたビニールカーボン樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の心電信号伝送装置。
【請求項11】
前記心電誘導電線と前記電極との接続部分は、前記心電誘導電線の前記芯電導体で形成した瘤状の繋留止を有し、樹脂で一体化されることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の心電信号伝送装置。
【請求項12】
前記心電計接続部は、10PのコネクタまたUSBコネクタであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の心電信号伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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