説明

心電検出装置

【課題】簡易な構成によって合理的に各種の高周波ノイズを抑制することが可能な心電検出装置を提供する。
【解決手段】心電センサの信号供給部2,3では、電圧フォロア回路20において、オペアンプ20の非反転入力端子(+)に接続された電極導体部15と、反転入力端子(−)に接続された寄生導体部30とがほぼ同電位となり、電極導体部15からグランドへの漏れ電流をガードする。そして、電極導体部15と寄生導体部30との間に生じる寄生容量によって、オペアンプ22の反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)とに並列接続されたキャパシタCsが形成されるので、そのインピーダンスによってカットオフ周波数以上の高周波信号が電圧フォロア回路20から出力されずに済み、これにより、専用のローパスフィルタを別途設けることなく、同様の効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を用いて心電を検出する心電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の心電検出装置では、利用者の人体のうち心臓を挟む各部と電極との間で静電容量結合することで生じる微弱な電圧変化を表す信号(生体信号)を、電圧フォロア回路によって安定的に取り出し、その出力信号を検知できる程度にまで増幅する構成が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、電圧フォロア回路は、図6に示すように、オペアンプ101の出力が反転入力端子(−)に直結されてなる回路であり、オペアンプ101の非反転入力端子(+)側の入力電圧が増幅されない(増幅率が1となる)代わりに、出力インピーダンスを下げる特性を有する。これにより、後段のインピーダンスの低い回路に生体信号を安定供給することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−194137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、オペアンプ101の非反転入力端子(+)には、生体信号とともに高周波ノイズも入力されることが多いため、従来の心電検出装置では、このような高周波ノイズが大きい場合に、後段の回路にて生体信号が高周波ノイズに埋もれてしまい、検出精度が低下する可能性があった。
【0006】
具体的には、後段の差動増幅回路によって、電極の数に対応する個々のオペアンプ101の出力側から入力される信号の差を増幅することで、同相の高周波ノイズを相殺して生体信号だけを取り出すことができても、位相が異なる高周波ノイズを相殺できないという問題があり、これにより、S/N比の低下をもたらす可能性があった。
【0007】
このため、従来の心電検出装置では、S/N比を向上させるために、差動増幅回路によって増幅された高周波ノイズを取り除くためのローパスフィルタを、別途設ける必要があり、これにより、後段の回路における構成部品が増加してしまう問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために、簡易な構成によって合理的に各種の高周波ノイズを抑制することが可能な心電検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた発明である心電検出装置は、利用者の人体のうち心臓を挟む各部との間でそれぞれ静電容量結合する複数の電極と、各電極に対応して設けられ、静電容量結合によって電極に生じる電圧変化を表す信号が非反転入力端子に入力される電圧フォロア回路と、電圧フォロア回路からの出力信号に基づいて、利用者の心電を検出する心電検出手段とを備えて構成される。
【0010】
本発明では、この構成において、電極と非反転入力端子とを接続する導線を電極導線として、電圧フォロア回路の出力側から反転入力端子への帰還経路上に設けられ、電極および電極導線からなる電極導体部との間で寄生容量を生成させる寄生導体部をさらに備えて構成した。
【0011】
このように構成された心電検出装置では、電圧フォロア回路において、非反転入力端子側に接続された電極導体部と、反転入力端子側に接続された寄生導体部とが理論上、同電位となるため、電極導体部からグランド等の部位への漏れ電流をガードすることができる。
【0012】
また、このように漏れ電流をガードするだけでなく、電極導体部と寄生導体部との間に生じる寄生容量によって、非反転入力端子と反転入力端子とに並列接続されたキャパシタが形成され、これにより、周波数が高くなるほど出力レベル(換言すれば、電圧フォロア回路への入力レベル)が下がるローパスフィルタ効果をもたらすことになる。
理想的には電極導体部と寄生導体部との電位がほぼ等しいので寄生容量は生じないと考えてもよいが、厳密には微少な電位差があればキャパシタが形成され、周波数が高くなるとその影響が無視できなくなり、ローパスフィルタ効果をもたらすことになる。
【0013】
したがって、本発明によれば、後段の差動増幅回路やローパスフィルタによって、必ずしも高周波ノイズを取り除くことなく、電圧フォロア回路の前段に導体を付加するだけで、同相ノイズおよび位相の異なるノイズを取り除き、しかも漏れ電流をガードすることが可能となり、ひいては、簡易な構成によって合理的に各種の高周波ノイズを抑制することができる。
【0014】
なお、寄生導体部は、電極導体部と同じ回路面上に形成され、この電極導体部の周囲に設けられたガード導線、及びそのガード導線と電極導体部との間に設けられた絶縁層からなるガード導線層として構成されてもよいし、電極のうち人体との接触面の反対側面に対向配置された第1のガード導体、及びその第1のガード導体と電極導体部との間に設けられた絶縁層からなる第1のガード導体層として構成されてもよい。また、第1のガード導体に接続された第2のガード導体、及びその第2のガード導体と電極導体部との間に設けられた絶縁層からなる第2のガード導体層として構成されてもよいし、電極導線を第2のガード導体と共に挟むように配置された第3のガード導体、及びその第3のガード導体と電極導体部との間に設けられた絶縁層からなる第3のガード導体層として構成されてもよい。あるいは、これらを選択的に有する構成であってもよい。
【0015】
つまり、寄生導体部は、ガード導線および第1〜第3のガード導体に加えて、電極導体部と第1及び第2のガード導体との間、第3のガード導体と電極導体部との間に適宜、絶縁層を設けて構成することにより、寄生容量を容易に増加させつつ、上記の漏れ電流をより効果的に抑制することができる。
【0016】
また、寄生容量が大きすぎる場合に調節するには、絶縁層の少なくとも一部をメッシュ状に形成するとよい。つまり、このように形成することで、電極導体部と寄生導体部との間に空気が含まれるので、絶縁層の比誘電率を小さくすることができ、ひいては、寄生容量が小さくなるように調節することができる。
【0017】
ところで、本発明の心電検出装置では、寄生導体部によって理論上、電極導体部からグランド等の部位への漏れ電流をガードすることが可能となるが、実際には少量の漏れ電流を誘引する寄生容量が発生する場合がある。つまり、寄生容量は、電極導体部と寄生導体部との間の他に、電極導体部とグランド等の部位との間にも発生する可能性がある。
【0018】
このような問題に対しては、電圧フォロア回路の入力電圧のうちこれらの寄生容量による電圧降下分を補償する帰還増幅部を、電圧フォロア回路の出力側から非反転入力端子への帰還経路上に設けるとよい。この構成により、帰還増幅手段により増幅された電圧分が寄生容量による電圧降下分を相殺するので、電圧フォロア回路の入力電圧と出力電圧とを等しくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が適用された心電センサの全体構成を示す説明図である。
【図2】本発明が適用された心電センサの主要部における回路構成を示す説明図である。
【図3】電圧フォロア回路におけるローパスフィルタ効果の原理を示す説明図である。
【図4】寄生導体部の構成を示す説明図である。
【図5】キャパシタCsが390pFのときの各周波数fに対する増幅度を示すシミュレーション結果である。
【図6】電圧フォロア回路を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[心電センサの概要]
図1は、本発明が適用された心電センサの概略構成を示す説明図である。なお、本実施形態の心電センサ1は、ベッドに寝ている人(利用者)の心筋の活動電位(心電)を継続的に計測することで、利用者の体調管理に供するために用いられる。
【0021】
図1に示すように、心電センサ1は、ベッドのマットレス上に設けられた一対の電極10,11と、個々の電極10,11にそれぞれ接続された信号供給部2,3と、信号供給部2,3からの入力信号の差を増幅して出力する差動増幅回路5と、差動増幅回路5からの入力信号をサンプリングして、アナログ−デジタル変換を行うAD変換器7と、AD変換器7にてアナログからデジタルに変換された信号に基づいて、利用者の心電を再現するための各種処理を実行する制御装置9とを備えている。
【0022】
このうち、電極10,11は、銅等の導電性の高い金属を含む導電布、又は薄く柔軟性のあるシート状の金属板等からなり、利用者の背中との間で静電容量結合することにより、キャパシタCを形成する。そして、利用者の背中のうち心臓を挟む二点の各部においてキャパシタCを形成し、その電位差によって人体の心臓を含む経路に微弱電流が流れるようになっている。つまり、このときの微弱電流が、電極10,11の電位差に対応した値となり、その電位差によって利用者の心電を検出することになる。
【0023】
[信号供給部の構成]
続いて、信号供給部2,3の回路構成について説明する。なお、図2は、本発明が適用された心電センサの主要部における回路構成を示す説明図である。
【0024】
但し、信号供給部2と信号供給部3の構成上の相違点は、それぞれ接続されている電極10,11が異なる点と、電圧フォロア回路20にて取り出された電圧信号が、信号供給部2では差動増幅回路5の非反転入力端子(+)に入力され、信号供給部3では差動増幅回路5の反転入力端子(−)に入力される点だけであり、その他の点は同様の構成であるため、以下では、信号供給部2についてのみ説明する。
【0025】
この信号供給部2は、利用者の心筋の活動によって電極10に生じる電圧変化を表す信号(電圧信号)を安定的に取り出すための電圧フォロア回路20と、S/N比の低下を防止するための寄生導体部30と、漏れ電流等による電圧降下を補償するための帰還増幅部40とを備えている。
【0026】
電圧フォロア回路20は、図3(a)に示すように、オペアンプ22の出力が反転入力端子(−)に直結されてなる回路であり、オペアンプ22の非反転入力端子(+)側の入力電圧が増幅されない(増幅率が1となる)代わりに、出力インピーダンスを下げる特性を有する。
【0027】
オペアンプ22は、その非反転入力端子(+)側に電極10が接続されている。さらに、その両者を接続する導線(以下「電極導線」)12の経路上には、電極10とグランドとを短絡させる高インピーダンスの抵抗Rがさらに接続されており、電極10に対する入力インピーダンスを高くすることで電極10からの入力信号(電圧信号)の影響を少なく検知できるようにしている。なお、以下では、電極10および電極導線12を電極導体部15と総称する。
【0028】
寄生導体部30は、図4に示すように、電極導体部15と同じ回路面(例えば同一基板)上に形成されたガード導線32と、電極10のうち人体との接触面の反対側面に対向するように(例えば基板の裏面に)配置された第1のガード導体41と、第1のガード導体と同じ回路面にて接続された第2のガード導体42と、電極導線12を第2のガード導体42と挟むように配置された第3のガード導体43と、各回路面間に設けられた絶縁層35,36とを備える。なお、以下では、第1のガード導体41および第2のガード導体42をガード導体部34と総称する。
【0029】
絶縁層35,36は、例えばポリイミド等の絶縁材料によってメッシュ状(網目状)に形成されてなり、絶縁層35が電極導体部15およびガード導線32とガード導体部34との間に設けられ、絶縁層36が第3のガード導体43と電極導線12との間に設けられている。換言すれば、第3のガード導体43が絶縁層36を介して電極導線12上に接着されている。
【0030】
ガード導線32は、電極導体部15の周囲に設けられ、電極導体部15に非接触となるように所定距離だけ離れて配置されている。ガード導体部34は、絶縁層35の厚みdだけ離間して電極導体部15と平行に配置されている。第3のガード導体43は、絶縁層36の厚みdだけ離間して電極導線12と平行に配置されている。
【0031】
そして、これらガード導線32、ガード導体部34、及び、第3のガード導体43は、電極導体部15からグランド等の部位への漏れ電流をガードするために、電圧フォロア回路20の出力側からオペアンプ22の反転入力端子(−)への帰還経路上に接続され、電極導体部15の電位と理論上、ほぼ同電位となるようにされている(図2参照)。
【0032】
つまり、電圧フォロア回路20では、オペアンプ22の非反転入力端子(+)への入力電圧と、オペアンプ22の出力電圧とが等しくなると考えられるからである。
但し、信号供給部2では、寄生導体部30が電極導体部15と平行に配置されていることから、電極導体部15と寄生導体部30との間に寄生容量が生じる。このため、図3(b)に示すように、オペアンプ22の反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)とに並列接続されたキャパシタCsが形成される。
【0033】
そして、キャパシタCsのインピーダンスZは、1/(jωCs)であり、周波数をfとすると、ω=2πfであることから、周波数fが高くなるほどインピーダンスZが下がるので、周波数fが高くなるほど、オペアンプ22の非反転入力端子(+)への入力電圧が下がり、オペアンプ22の出力電圧が下がることになる。これにより、電圧フォロア回路20への入力信号のうち、高周波数の入力信号を取り除くことが可能なローパスフィルタ効果がもたらされる。
【0034】
例えば、電極導体部15とガード導体部34との間に絶縁層35が設けられてなるコンデンサを考え、図3(b)に示す等価回路による増幅度(電圧利得)について、各種のキャパシタCsの条件を変更してシミュレーションを行った。図5は、キャパシタCsが390pFのときの各周波数fに対する増幅度を示すシミュレーション結果である。
【0035】
図5に示すように、増幅度における最大利得から3dB(1/√2)低くなるときの周波数をカットオフ周波数とすると、キャパシタCsが390pFのときのカットオフ周波数は、約980Hzとなる。
【0036】
このようにキャパシタCsの値を変更しながら同様のシミュレーションを行いつつ、人体の心電における周波数範囲が0.05〜100Hz程度(例えば、心電R波では10〜30Hz程度)であることを考慮すると、心電を検出するためには、キャパシタCsを580nF以下程度にする必要があることが確認された。なお、寄生容量が大きくなるにつれて、カットオフ周波数が低下することを補足しておく。
【0037】
このように決定したキャパシタCsを得るために、円状の電極10の直径を20mm、矩形状の電極導線12の幅を1mmとした場合、円状のガード導線32を内径22mm、外径26mmで電極10を囲み、円状の第1のガード導体41の直径を26mm、矩形状の第2及び第3のガード導体42,43の幅を5mmとし、さらに、電極導線12の長さを120mmとした場合、絶縁層35,36の厚みdをそれぞれ44.8μmに設定した。例えば、絶縁層35,36は、厚み23.4μmのポリイミド2枚が厚み21.4μmの接着剤で接合されて構成されてもよい。
【0038】
なお、これらの設定には、真空の誘電率をε0、絶縁層35,36の比誘電率をεr、電極10の面積をSel、電極導線12の面積をSli、絶縁層35,36の厚み(導体間隔)をdとして、キャパシタCs(寄生容量)が次式(1)の関係性を有することを前提とする。
【0039】
Cs=(ε0×εr×Sel)/d + 2×(ε0×εr×Sli)/d …(1)
但し、ここでは、絶縁層35,36をメッシュ状に形成することによって、絶縁層35,36の比誘電率εrを小さくし、キャパシタCs(寄生容量)を調節している。ここで、電極導体部15とガード導線32との間隔は大きく、また、電極導体部15の形状がシート状のため、電極導体部15とガード導線32とにおいて互いに対向する面の面積が小さく、これらの間隔および面積についてはほとんど無視できるものとしている。
【0040】
また、例えばオペアンプ22はシート状の基板ではなく、通常硬い回路基板上に配置され、そのため、電極導線12からオペアンプ22までの経路上に、基板レイアウトの制約からガード導線32、ガード導体部34、及び、第3のガード導体43のうち少なくともいずれか一つが設置できない場合がある。このとき、電極導線12とグランド電位との間に寄生容量(漏れ電流)が発生し、これらの寄生容量により、オペアンプ22の非反転入力端子(+)への入力電圧が下がることになる。
【0041】
このため、信号供給部2が負帰還増幅器として作用し、その特性として利得(増幅度)が下がることにつながるので、その低下分を補償するために正帰還回路として作用するように帰還増幅部40が設けられている。
【0042】
帰還増幅部40は、上記の寄生容量により低下する利得に相当する増幅度を有する増幅器45の他、増幅器45から電圧フォロア回路20の入力側に直流成分の電流が流れ込まないようにコンデンサ47を備え、増幅器45の入力側が電圧フォロア回路20の出力側に接続され、増幅器45の出力側がコンデンサ47を介して電圧フォロア回路20の入力側に接続されて構成されている。
【0043】
[まとめ・効果]
以上説明したように、信号供給部2,3では、電圧フォロア回路20において、オペアンプ22の非反転入力端子(+)に接続された電極導体部15と、反転入力端子(−)に接続された寄生導体部30とがほぼ同電位となり、電極導体部15からグランドへの漏れ電流を抑制することが可能となる。
【0044】
また、信号供給部2,3は、電極導体部15と寄生導体部30との間に生じる寄生容量によって、オペアンプ22の反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)とに並列接続されたキャパシタCsが形成されるように構成されているため、キャパシタCsのインピーダンスZによって、カットオフ周波数以上の高周波信号が電圧フォロア回路20から出力されずに済む。
【0045】
さらに、心電センサ1では、信号供給部2,3からの出力信号であって、カットオフ周波数以下の同相ノイズが、差動増幅回路5によって相殺されるため、S/N比をより向上することが可能となる。
【0046】
また、心電センサ1では、電圧フォロア回路20において、電極導線12とグランド電位間に生じる寄生容量による電圧降下分が、帰還増幅部40による正帰還の増幅によって相殺されるように構成されているため、電圧フォロア回路20の増幅率を1に保ちつつ、出力インピーダンスを下げることができる。
【0047】
したがって、心電センサ1によれば、信号供給部2,3および差動増幅回路5によって、同相ノイズおよび位相の異なるノイズの入力を共に抑制することが可能となり、専用のローパスフィルタを設けることなく、簡易な構成によって合理的に高周波ノイズを抑制し、利用者の心電を精度よく検出することができる。
【0048】
[発明との対応]
なお、本実施形態において、差動増幅回路5、AD変換器7、及び、制御装置9が心電検出手段、第1のガード導体41およびそれに対応する絶縁層35の一部が第1のガード導体層、第2のガード導体42およびそれに対応する絶縁層35の一部が第2のガード導体層、第3のガード導体43および絶縁層36が第3のガード導体層に相当する。
【0049】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態の心電センサ1は、ベッドにシート状の電極10,11を設けて構成されているが、ベッドに限らず、自動車の座席やマッサージ装置等の椅子に設けられてもよい。
また、上記実施形態の寄生導体部30は、ガード導線32を有して構成されているが、電極導体部15とガード導線32との間で生成される寄生容量が両者15,32の形状によっては非常に小さい値となるため、ガード導線32を別構成としてもよい。なお、心電センサ1は、必ずしもガード導線32を備えなければならないわけではない。
【0051】
また、上記実施形態の電極10,11は、シート状に形成されているが、これに限らず、例えばより厚みを有する形状であってもよい。なお、第1のガード導体41の形状は、電極10,11の形状に対応する形状であればよい。
【0052】
また、上記実施形態の心電センサ1は、二つの電極10,11を備える構成であるが、これに限定されるものではなく、人体のうち心臓を挟む各部との間でそれぞれ静電容量結合する3つ以上の電極を備えてもよい。なお、この場合、電圧フォロア回路20および寄生導体部30の数も、電極の数に対応して増やせばよい。
【0053】
また、上記実施形態の寄生導体部30は、ガード導線32とガード導体部34と第3のガード導体43とを有して構成されているが、これに限らず、例えばガード導体部34と第3のガード導体43とのいずれか一方だけを有する構成であってもよい。但し、ガード導線32と電極導体部15との間に絶縁層を設けることにより、ガード導線32だけを有する構成であってもよい。なお、この絶縁層およびガード導線32がガード導線層に相当する。
【0054】
また、上記実施形態の信号供給部2,3は、帰還増幅部40を有して構成されているが、寄生容量による電圧フォロア回路の入力電圧の減少分が無視できるほど小さければ、帰還増幅部40を省略してもよい。
【0055】
なお、上記実施形態の絶縁層35,36は、メッシュ状に形成し、電極導体部15と寄生導体部30との間の比誘電率εrを下げることにより、寄生容量の大きさを調整し、心電センサ1の薄型化を図っているが、これに限定されるものではなく、例えば、メッシュ状ではなく隙間が埋まった形状でもよいし、絶縁層35,36の厚みdを変化させることにより対応してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…心電センサ、2,3…信号供給部、5…差動増幅回路、7…AD変換器、9…制御装置、10,11…電極、12…電極導線、15…電極導体部、20…電圧フォロア回路、22…オペアンプ、30…寄生導体部、32…ガード導線、34…ガード導体部、35…絶縁層、36…絶縁層、40…帰還増幅部、41…第1のガード導体、42…第2のガード導体、43…第3のガード導体、45…増幅器、47…コンデンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の人体のうち心臓を挟む各部との間でそれぞれ静電容量結合する複数の電極と、
前記各電極に対応して設けられ、前記静電容量結合によって前記電極に生じる電圧変化を表す信号が非反転入力端子に入力される電圧フォロア回路と、
前記電圧フォロア回路からの出力信号に基づいて、前記利用者の心電を検出する心電検出手段と、
前記電極と前記非反転入力端子とを接続する導線を電極導線として、前記電圧フォロア回路の出力側から反転入力端子への帰還経路上に設けられ、前記電極および前記電極導線からなる電極導体部との間で寄生容量を生成させる寄生導体部と、
を備えることを特徴とする心電検出装置。
【請求項2】
前記寄生導体部は、
前記電極導体部と同じ回路面上に形成され、該電極導体部の周囲に設けられたガード導線、及び該ガード導線と前記電極導体部との間に設けられた絶縁層からなるガード導線層と、
前記電極のうち人体との接触面の反対側面に対向配置された第1のガード導体、及び該第1のガード導体と前記電極導体部との間に設けられた絶縁層からなる第1のガード導体層と、
前記第1のガード導体に接続された第2のガード導体、及び該第2のガード導体と前記電極導体部との間に設けられた絶縁層からなる第2のガード導体層と、
前記電極導線を前記第2のガード導体と共に挟むように配置された第3のガード導体、及び該第3のガード導体と前記電極導体部との間に設けられた絶縁層からなる第3のガード導体層と、
のうち少なくとも一つを有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の心電検出装置。
【請求項3】
前記絶縁層の少なくとも一部は、メッシュ状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の心電検出装置。
【請求項4】
前記電圧フォロア回路の出力側から非反転入力端子への帰還経路上に設けられ、該電圧フォロア回路の入力電圧のうち寄生容量による電圧降下分を補償する帰還増幅部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の心電検出装置。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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