説明

心音と姿勢を測定する装置

心音を監視するシステム。システムは、少なくとも1つの心音を表す電気信号を作成するように動作可能な埋込型心音センサ、心音信号を作成するために心音センサに結合された心音センサ・インタフェース回路、患者の姿勢を表す電気信号を作成するように動作可能な埋込型姿勢センサ、ならびに心音センサ・インタフェース回路および姿勢回路に結合されたコントローラ回路を備える。コントローラ回路は、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定するように動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
(優先権の主張)
参照によって本明細書に組み込まれている2005年1月18日出願の米国特許出願番号11/037275に対する優先権の利益が、本明細書によって主張される。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によって本明細書に組み込まれている以下の同時係属で共通に譲渡された2004年7月28日出願の米国特許出願番号10/900570、名称「DETERMINING A PATIENT’S POSTURE FROM MECHANICAL VIBRATIONS OF THE HEART」、2003年11月6日出願の米国特許出願番号10/703175、名称「A DUAL USE SENSOR FOR RATE RESPONSIVE PACING AND HEART SOUND MONITORING」、および2002年12月30日出願の米国特許出願番号10/334694、名称「METHOD AND APPARATUS FOR MONITORING OF DIASTOLIC HEMODYNAMICS」に関する。
【技術分野】
【0003】
この分野は、一般的には、埋込型医療装置に関し、具体的には、心臓の機械的機能を監視するシステムおよび方法に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0004】
埋込型医療装置(IMD)は、患者に埋め込まれるように設計された装置である。これらの装置のいくつかの例には、埋込型ペースメーカ、埋込型除細動器(ICD)などの心臓リズム管理(CRM)装置があり、さらにペーシングと除細動の組合せを含む装置がある。装置は通常、電気的治療を使用して患者を処置し、患者の状態を内部監視することにより患者の診断について医師または介護者を補助するために使用される。装置は、患者の内部の電気的心臓活動を監視するために感知増幅器に接続される電気リードを含み、しばしば、他の内部患者パラメータを監視するためにセンサを含むことがある。埋込型医療装置の他の例には、埋込型インシュリン・ポンプ、または医薬品を患者に投与するために植え込まれた装置がある。
【0005】
心音は患者の心臓の機械的活動に関連する。第1音(S1)は、僧帽弁と3尖弁をほぼ同時に閉じる間に心臓によって作られる音である。第2音(S2)は、心拡張期の開始を示す。第3音(S3)と第4音(S4)は、心拡張期中の左心室の充填圧力に関係する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本文書は、とりわけ、心音を監視するシステムおよび方法を議論する。1つのシステムの実施態様は、少なくとも1つの心音を表す電気信号を作成するように動作可能な埋込型心音センサ、心音信号を作成するために心音センサに結合された心音センサ・インタフェース回路、患者の姿勢を表す電気信号を作成するように動作可能な埋込型姿勢センサ、コントローラ回路を含む。コントローラ回路は、心音センサ・インタフェース回路と姿勢回路に結合され、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定するように動作可能である。
【0007】
1つの方法の実施形態は、埋込型医療装置を使用して少なくとも1つの心音を感知することと、埋込型医療装置を使用して患者の姿勢情報を決定することと、姿勢情報に対応する心音を測定することとを含む。
【0008】
この概要は、本特許出願の主題の概述を提供することを意図する。本発明の排他的または網羅的な説明を提供することを意図していない。詳細な記述は、本特許出願の主題に関するさらなる情報を提供するために包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の詳細な記述では、その一部を形成する添付の図面を参照し、本発明が実施されることが可能である特定の実施形態が、例示として示される。他の実施形態が使用されることが可能であり、本発明の範囲から逸脱せずに、構造上または論理上の変更が行われることが可能であることを理解されたい。
【0010】
心音の監視は、患者の心臓の状態を決定する際に介護者を補助する。たとえば、S3振幅の慢性的な変化は、左心室の硬さと拘束充填に相間する。うっ血性心疾患(CHF)の患者では、S3心音は、病気が進行するにつれ大きくなる。IMDは、心音などの内部患者パラメータを監視する際に介護者を補助するためにセンサを含む。しかし、心音の振幅は、患者の姿勢と共に変化する。本発明は、心音の改良された測定の必要性を認識した。
【0011】
本発明は、とりわけ、心音を監視するシステムと方法を議論する。図1は、IMD110を使用するシステム100の実施形態を示す。図示されたシステム100は、心臓の不整脈を処置するため、またはそうでない場合は心臓の機能を向上させるために使用されるシステム100の一部の一実施形態である。パルス生成器(PG)または他のIMD110が、心臓リード108または追加のリードによって、患者102の心臓105に結合される。IMD110の例には、非限定的に、ペーサ、除細動器、心臓再同期治療(CRT)装置、またはそのような装置の組合せがある。システム100はまた、無線周波数(RF)信号または他の遠隔測定信号を使用することによってなど、IMD110と通信するために無線通信信号160を提供するIMDプログラマまたは他の外部システム170をも含む。
【0012】
心臓リード108は、IMD110に結合される近位端部と、1つまたは複数の電極によって心臓105の1つまたは複数の部分に結合される遠位端部とを含む。電極は、通常、電気的除細動、ペーシング、再同期治療、またはその組合せを心臓106の少なくとも1つの室に送る。IMD110は、気密封止されたキャニスタまたは「カン」に封入される構成要素を含む。追加の電極が、心臓105の上またはその周りに配置された電極と関連して、単極ペーシングおよび/または除細動エネルギーを提供するために、カンの上、または絶縁ヘッダの上、あるいはIMD110の他の部分の上に配置される。また、1つまたは複数のリード108と電極は、心臓105の電気的活動を感知するためにも使用される。
【0013】
埋込型心音センサは、一般的には、検出された心音を電気信号に変換する埋込型音響センサである。音響センサの一例は、カンの内部に取り付けられた加速度計である。音響センサによって測定されたいくつかの心音の振幅は、通常、測定が行われるときの患者の姿勢と共に著しく変化する。これは、通常、心音情報の使用を混乱させる。
【0014】
図2は、19の個人から取られた心音データのグラフ200である。データは、個人が座位(s)、臥位(r)、左横臥位(lr)、右横臥位(rr)の4つの姿勢にある間、加速度計心音センサを使用したS3心音の測定である。個人は、座位にあるときは直立しており、臥位にあるときは0°から45°の角度にあった。左横臥位は、個人が左側を向いて横方向に臥位にあることを指し、右横臥位は、個人が右側を向いて横方向に臥位にあることを指す。心音センサは、胸部領域付近の胸の左側において個人に外部から取り付けられた。センサに対する力は、ミリ−Gsで測定された(「G」はG力、すなわち地球表面における重力によって生成される平均加速度を指す)。図示された測定は、ピーク間振幅である。
【0015】
グラフ200は、何人かの患者の姿勢の変化により、測定されたS3振幅が100%〜200%程度に大きく変化することがあることを示す。姿勢によるこれらの振幅変化は、心音センサと周囲の組織の結合の変化、および循環器系の血流動態の変化の両方によって生じる。循環器系の血流動態の変化により、組織の硬さが変化する。この組織は心音がセンサに伝播するための媒体であるので、組織の硬さが変化することにより、心音の振動が組織を通って進行してセンサに到達する能力が変化する。患者の姿勢が心音の測定について考慮されない場合、姿勢依存性は、CHFによるS3振幅の増大など、実際には病気の進行による心音の変化を隠す可能性がある。
【0016】
図3は、心音を監視するシステム300の実施形態の一部を示す。システム300は、埋込型心音センサ310、その心音センサ310に結合された心音センサ・インタフェース回路320、埋込型姿勢センサ330を含み、さらに心音センサ・インタフェース回路320と埋込型姿勢センサ330とに結合されたコントローラ回路340を含む装置を含む。埋込型心音センサ310は、患者の心臓の機械的活動に関連する少なくとも1つの心音を表す電気信号を作成するように動作可能である。いくつかの実施形態では、埋込型心音センサ310は加速度計を含む。いくつかの実施形態では、心音センサ310はひずみゲージを含む。いくつかの実施形態では、心音センサ310はマイクロフォンを含む。心音センサ・インタフェース回路320は、1つまたは複数の心音を表す信号をコントローラ回路340に提供する。信号の測定は、測定を感知された心臓消極に同期させるなど、生理学的事象に関連して行われる。心臓消極に関連して心音測定を実施する記述は、参照によって本明細書に組み込まれている米国特許出願番号10/334694、名称「Method and Apparatus for Monitoring of Diastolic Hemodynamics」において見られる。
【0017】
埋込型姿勢センサ330は、患者の姿勢を表す電気信号を作成するように動作可能である。いくつかの実施形態では、姿勢センサ330は、少なくとも1つのDC応答加速度計を含む。いくつかの実施形態では、姿勢センサ330は、多軸DC応答加速度計センサを含む。いくつかの実施形態では、姿勢センサ330は、機械的傾斜スイッチを含む。コントローラ回路340は、心音センサと姿勢センサを使用して少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定するように動作可能である。心音は、S1、S2、S3、S4心音の少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、心音の測定は、心音信号の振幅の測定を含む。いくつかの実施形態では、心音の測定は、心音が生じる時間ウィンドウ中に心音をサンプリングすることを含む。
【0018】
コントローラ回路340は、姿勢センサ330によって提供された1つまたは複数の信号から患者の姿勢を検出するように動作可能である。コントローラ回路340は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、あるいはハードウエア、ソフトウエア、またはファームウエアの任意の組合せによって実施される1つまたは複数のアルゴリズムを実行することによって動作可能である。いくつかの実施形態では、コントローラ回路340は、たとえば患者が眠っている可能性が高いときなど、1日のある時間に関して心音の測定を実行する。いくつかの実施形態では、測定は、1時間ごとなど、1日にわたって時々または周期的に行われる。いくつかの実施形態では、測定は姿勢の変化に対して行われる。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、コントローラ回路は、患者が直立姿勢にある間、少なくとも1つの心音を測定するように動作可能である。いくつかの実施形態では、コントローラ回路340は、直立姿勢が患者において検出されるときのみ、心音の測定を実行する。直立姿勢は、たとえば、立っている姿勢または座っている姿勢を指す。いくつかの実施形態では、装置は、コントローラ回路340に結合されたメモリ回路をさらに含み、コントローラ回路340は、直立姿勢が検出されるときのみ、心音の測定を記憶する。
【0020】
いくつかの実施形態では、コントローラ回路は、複数の姿勢の心音を測定するように動作可能である。心音の測定は、患者の姿勢に対応して行われる。いくつかの実施形態では、心音の測定は、患者の姿勢に対応して記憶される。たとえば、コントローラ回路340は、患者が仰臥位置にあるときに行われた1セットの心音の測定を記憶し、また患者が直立位置にあるときに行われた1セットの心音の測定を記憶する。他の例では、コントローラ回路340は、患者が横臥位置にあるとき、および患者が直立位置にあるときに行われた心音の測定を記憶する。いくつかの実施形態では、心音の測定は、姿勢に従って分類される、または「ビン化される」。次いで、心音の傾向が、同じ「ビン」において測定を比較することによって決定される。したがって、様々な姿勢から1セットの心音の測定を解釈することに関連する問題が回避される。
【0021】
いくつかの実施形態では、スケーリング・ファクタが、心音の測定に適用される。スケーリング・ファクタは、姿勢の関数として決定される。スケーリング・ファクタは、姿勢に付随する変化を除去するために、心音の測定に適用される。たとえば、直立位置にある患者のS2心音が、横臥位置にある患者のS2心音の振幅の2分の1を有することが判明した場合、直立心音の測定は、2のスケーリング・ファクタを乗算され、一方、横臥心音の測定は、1のスケーリング・ファクタを乗算される、すなわち変更されない。姿勢に付随する変化がスケーリングにより除去される場合、心音の傾向は、特定の姿勢またはビンに関係なく、測定を直接比較することによって決定することができる。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、心音は、着座、横臥、仰臥の姿勢に従って、さらに左右の側方向きに従って記憶される。いくつかの実施形態では、システム300によって検出された姿勢の数は、埋込型姿勢センサ330の性能によって限定されることがある。たとえば、姿勢センサ330は、直立姿勢と仰臥姿勢の違いを検出することのみができる。他の例では、姿勢センサ330は、いくつかの姿勢の1つを15°の精度で検出することができるだけである。そのような場合、コントローラ回路340は、水平から測定して0°から30°として仰臥を定義し、30°から60°として横臥を定義し、60°から90°として直立を定義するようにプログラムされる。他の例では、姿勢センサ330は、患者の側方向きを検出することができないこともある。姿勢センサの使用は、センサを患者に対して較正することを含む。介護者が、患者を異なる姿勢におき、その姿勢を検出するためにセンサの応答を較正することが可能である。
【0023】
心音の測定は、動きや話すなどの他の非心臓振動からの雑音の影響を受けやすい。いくつかの実施形態によれば、心音センサ310が、非心臓振動からの機械的干渉を検出するために使用される。コントローラ回路340は、心音の測定が実施される前に、干渉レベルが閾値干渉レベルより低いことを判定するために、心音センサ310によって提供された信号を使用する。いくつかの実施形態では、コントローラ回路340は、心音が生じる時間ウィンドウ外の心音信号を監視することによって、干渉レベルを判定する。いくつかの実施形態では、コントローラ回路340は、ある時間期間にわたって心音信号を平均することを含む方法によって干渉レベルを判定する。いくつかの実施形態では、コントローラ回路340は、心音に関連するスペクトル成分を干渉音から抽出するためなど、心音信号のデジタル信号処理(DSP)を含む方法によって干渉レベルを判定する。
【0024】
患者の非活動期間中に測定が行われると、心音の測定は、患者の動きのアーティファクトからの雑音や干渉はその影響を受けにくい。患者が活動していないことを判定するために、装置のいくつかの実施形態は、加速度計(心音センサと同じ加速度計または異なる速度計とすることができる)など、埋込型活動センサをさらに含む。活動センサは、患者の物理的な活動のレベルを検出する。コントローラ回路340は、患者の活動レベルが規定の活動閾値より低いとき、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定するように動作可能である。たとえば、コントローラ回路340が15分ごとに心音の測定を取り入れるように動作可能である場合、コントローラ回路340は、測定を実施する前に、患者が直立位置にあるか、および活動していないかをまず判定する。いくつかの実施形態では、活動センサは、心音センサ310とは異なる。他の実施形態では、活動センサは、心音センサ310と同じであり、患者の活動は、活動信号を隔離するために信号処理によって判定される。
【0025】
患者が活動していないことは、1日のこの時間によって判定または推測することもできる。したがって、いくつかの実施形態では、装置は、時計回路をさらに含み、コントローラ回路340は、患者が眠っている可能性が高いとき、心音を測定するように動作可能である。
【0026】
患者が活動していないことは、他の生理学的パラメータから判定することもできる。たとえば、患者の心拍数が低いことは、患者が活動していないことを示す。したがって、いくつかの実施形態で、装置は、少なくとも1つの埋込型心臓信号感知回路をさらに含む。心臓信号感知回路は、少なくとも1つの固有心臓信号を検出するように動作可能であり、コントローラ回路340は、患者の心拍数が規定の心拍数閾値より低いとき、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定するように動作可能である。
【0027】
いくつかの実施形態では、患者が活動していないことは、心音自体から判定される。コントローラ回路340は、心音を検出するが、患者が活動していないことを心音が示すまで、測定を待機し、心音を記憶する。いくつかの実施形態では、コントローラは、心音の間の時間期間が閾値期間より長いとき、すなわち心音によって判定される心臓が閾値率より低いとき、心音の測定を実施して記憶する。
【0028】
患者が活動していないことは、患者の呼吸数から決定することもできる。したがって、いくつかの実施形態では、埋込型医療装置は、被験者の経胸腔的インピーダンス信号を提供するために、経胸腔的インピーダンス測定回路をさらに含む。コントローラ回路340は、経胸腔的インピーダンス信号から呼吸容積を判定し、患者の呼吸数が規定の呼吸数閾値より低いとき、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定するように動作可能である。経胸腔的インピーダンスを測定することによって肺換気容積を監視する方法の例示が、参照によって本明細書に組み込まれているHartleyら、米国特許第6076015号、名称「RATE ADAPTIVE CARDIAC RHYTHM MANAGEMENT DEVICE USING TRANSTHORACIC IMPEDANCE」に記載されている。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、患者の健康の測定を実施するために、1つまたは複数の心音の測定が、経胸腔的インピーダンスセンサまたは心臓信号センサなど、1つまたは複数の他の生理学的センサの1つまたは複数の測定と組み合わされる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の心音の測定は、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する他の生理学的センサの1つまたは複数の測定と組み合わされる。そのような実施形態の例として、うっ血性心疾患の患者の状態を追跡するために、心音の測定の傾向は、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する経胸腔的インピーダンス測定と組み合わせることができる。他の例として、経胸腔的インピーダンス測定回路は、近DCの経胸腔的インピーダンスの測定を実施し、コントローラは、少なくとも1つの感知された患者の姿勢と心音の測定に対応する、近DCの経胸腔的インピーダンス測定を実施するように動作可能である。近DCの経胸腔的インピーダンスを監視する方法の例示が、参照によって本明細書に組み込まれているStahmannら米国特許出願番号10/921503、名称「THORACIC IMPEDANCE DETECTION WITH BLOOD RESISTIVITY COMPENSATION」に記載されている。生理学的センサの測定の他の例には、被験者の血液のヘマトクリットの測定を使用すること、または心臓内の血液の抵抗の測定を使用することがある。
【0030】
図4は、心音を監視するシステム400の実施形態の一部を示す。システム400は、埋込型装置405と、その埋込型装置405と通信するように動作可能な外部装置410とを含む。埋込型装置405は、心音センサ415と心音センサ・インタフェース回路420を含み、さらにコントローラ回路430に結合された姿勢センサ425を含む。コントローラ回路430は、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定するように動作可能である。埋込型装置405は、メモリ回路435、感知回路440、治療回路445を含む。メモリ回路435は心音の測定を記憶する。感知回路440は、被験者の心臓から心臓信号を感知するために、1つまたは複数の心臓リードに結合される。電気的除細動、ペーシング、再同期治療、またはその組合せを心臓の少なくとも1つの室に提供するために、治療回路445が1つまたは複数の心臓リードに取り付けられる。
【0031】
一実施形態では、コントローラ回路430は、時間の経過にわたって心室拡張期血流動態性能を監視する目的で、心音センサ415を使用してS3心音を測定する。姿勢センサ425を監視することによって、コントローラ回路430は、患者の姿勢による測定の変動を低減させるために、患者が直立姿勢にある間、S3心音を測定する。S3心音の測定に基づいて、コントローラ回路430は、治療回路445を使用して、たとえばペーシング再同期治療など、少なくとも1つの治療の実施を制御する。
【0032】
埋込型装置405は、通信回路450をさらに含む。外部装置410は、無線周波数(RF)または他の遠隔測定信号を使用することによって、埋込型装置405と無線で通信する。埋込型装置405は、心音情報を外部装置410に伝達する。いくつかの実施形態では、外部装置410は、病院のコンピュータ・ネットワークまたはインターネットなどのコンピュータ・ネットワークの一部である、またはそれと通信する。いくつかの実施形態によれば、外部装置410は、心音の情報と姿勢の情報に基づいて警告を伝達するように動作可能である。いくつかの実施形態では、警告は、音響警告または視覚警告の表示を含む。いくつかの実施形態では、警告は、ネットワークを介して介護者に通信される。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、外部装置410は、感知された患者の姿勢に関する心音情報を表示するように動作可能なディスプレイを含む。いくつかの実施形態では、心音情報は、患者の姿勢に関する心音情報の傾向を含む。傾向情報は、患者または被験者の病気の状況を表す傾向を確立するのに有用である。この状況は、悪化状況または回復状況の表示とすることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、傾向情報は、全体的に単一の姿勢に対応する心音情報から完全になる。いくつかの実施形態では、傾向情報は、横臥位姿勢から直立姿勢の範囲など、ある範囲の姿勢に対応する心音情報からなる。いくつかの実施形態では、傾向は、各姿勢について維持される。いくつかの実施形態では、姿勢に付随する心音の変化は、1つまたは複数のスケーリング・ファクタを使用することによって除去され、心音情報は、単一の傾向に組み合わされる。いくつかの実施形態では、心音情報の1つまたは複数の傾向は、埋込型装置405、外部装置410、またはその両方において維持される。いくつかの実施形態では、仰臥、着座、横臥の姿勢のそれぞれについての別個の傾向など、複数の別個の傾向についての心音情報の分析が、警告を生成するかに関して単一の決定を形成するために組み合わされる。いくつかの実施形態では、分析は、1つまたは複数の他の生理学的センサの1つまたは複数の測定と組み合わされる。これらの分析は、埋込型装置405、外部装置410、またはその両方において行うことができる。
【0035】
図5は、心音を監視する方法500の実施形態のブロック図である。510において、埋込型医療装置を使用して少なくとも1つの心音が感知される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心音を感知することは、S1、S2、S3、S4の心音の少なくとも1つを感知することを含み、少なくとも1つの心音の測定は、心拍数が規定の心拍数閾値より低いときに実施される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心音の測定は、患者の活動レベルが規定の活動閾値より低いときに実施される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心音の測定は、機械的干渉レベルが閾値より低いときに実施される。
【0036】
520において、患者の姿勢情報が、埋込型医療装置を使用して決定され、530において、心音は、姿勢情報に対応して測定される。いくつかの実施形態では、姿勢情報に対応する少なくとも1つの心音を測定することは、それぞれの姿勢に対応して心音を測定することと、心音の測定を特定の姿勢に関係付けることとを含む。いくつかの実施形態では、それぞれの姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定することは、少なくとも1つスケーリング・ファクタを姿勢の関数として少なくとも1つの心音の測定に適用することを含む。いくつかの実施形態では、患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定することは、たとえば直立姿勢など、患者が特定の姿勢にあることを条件として心音を測定することを含む。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定することは、姿勢に関する心音の少なくとも1つの傾向を測定することを含む。いくつかの実施形態では、心音傾向情報は、他の生理学的センサからの測定の傾向と組み合わされる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの心音の測定の傾向情報は、患者の姿勢に対応して記憶される。いくつかの実施形態では、方法500は、傾向情報を表示用外部装置に通信することをさらに含む。
【0038】
本明細書の一部を形成する添付の図面は、例示としてであって限定としてではなく、主題が実施されることが可能である特定の実施形態を示す。図示された実施形態は、当業者が本明細書において開示された教示を実施するのを可能にするように十分に詳細に記述される。構造上および論理上の代用と変更が本開示の範囲から逸脱せずに行われることが可能であるように、他の実施形態が、使用され導出される。したがって、本詳細な記述は、限定的に捕らえられるべきではなく、様々な実施形態の範囲は、添付の請求項、ならびにそのような主張が適格である全範囲の等価物によってのみ確定される。
【0039】
本発明の主題のそのような実施形態が、単に便宜上「本発明」という用語によって、また2つ以上の概念が実際に開示される場合、本出願の範囲をあらゆる単一の発明または発明概念に任意に限定することを意図せずに、個々におよび/またはまとめて本明細書において言及されている。したがって、特定の実施形態が本明細書において図示され記述されたが、同じ目的を達成するように計算されたあらゆる構成が、示された特定の実施形態の代用とすることが可能であることを理解されたい。本開示は、様々な実施形態のあらゆるおよびすべての適合、または変形、あるいは組合せを網羅することを意図する。上記の実施形態、および具体的に本明細書において記述されなかった他の実施形態の組合せは、上記の記述をレビューする際に当業者には明らかになるであろう。
【0040】
本開示の要約書は、37C.F.R.§1.72(b)に準拠するように提供され、読者が技術的な開示の本質を迅速に確認することを可能にする要約書を必要とする。これは、請求項の範囲または意味を解釈または限定するために使用されるものではないことを理解して提示される。さらに、以上の詳細な記述では、様々な特徴は、開示を整理する目的で単一の実施形態に共にグループ分けされることが理解できる。この開示方法は、主張された実施形態が各請求項において明示的に述べられたものより多くの特徴を必要とするという意図を反映すると解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、本発明の主題は、単一の開示された実施形態におけるすべての特徴未満に存在する。したがって、以下の請求項は、本明細書では詳細な記述に組み込まれ、各請求項はそれ自体が独立する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】埋込型医療装置を使用するシステムの実施形態を示す図である。
【図2】心音データのグラフである。
【図3】心音を監視するシステムの実施形態の一部を示す図である。
【図4】心音を監視するシステムの他の実施形態の一部を示す図である。
【図5】心音を監視する方法の実施形態のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓の機械的活動に関連する心音の少なくとも1つを表す電気信号を作成するように動作可能である埋込型心音センサと、
心音信号を作成するために、前記心音センサに結合された心音センサ・インタフェース回路と、
患者の姿勢を表す電気信号を作成するように動作可能な埋込型姿勢センサと、
前記心音センサ・インタフェース回路と前記姿勢回路に結合され、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する前記少なくとも1つの心音を測定するように動作可能なコントローラ回路と
を備える装置を備えるシステム。
【請求項2】
前記コントローラが、直立姿勢において前記心音を測定するように動作可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラが、複数の姿勢において前記心音を測定するように動作可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記装置が、前記コントローラに結合された記憶回路をさらに含み、前記コントローラが、患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音の測定を記憶するように動作可能である請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラが、スケーリング・ファクタを少なくとも1つの心音の測定に適用するように動作可能であり、前記スケーリング・ファクタが患者の姿勢の関数である請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記装置が時計回路をさらに含み、前記コントローラ回路が、患者が横臥姿勢にあるとき、1日のある時間において心音を測定するように動作可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラ回路が、心音の測定が実施される前に、干渉が閾値レベルより低いことを判定するために前記埋込型心音センサによって提供された前記電気信号を使用するように動作可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記装置が、少なくとも1つの固有心臓信号を検出するように動作可能な少なくとも1つの埋込型心臓信号感知回路をさらに含み、前記コントローラが、患者の心拍数が規定の心拍数閾値より低いとき、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する前記少なくとも1つの心音を測定するように動作可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記装置が、埋込型活動センサをさらに含み、前記コントローラが、患者の活動レベルが規定の活動閾値より低いとき、少なくとも1つの感知された患者の姿勢に対応する前記少なくとも1つの心音を測定するように動作可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記装置が、被験者の経胸腔的インピーダンス信号を提供するために、埋込型経胸腔的インピーダンス測定回路をさらに含み、前記コントローラが、少なくとも1つの感知された患者の姿勢と前記測定された心音に対応する前記経胸腔的インピーダンス測定を実施するように動作可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記経胸腔的インピーダンス測定回路が、近DCの経胸腔的インピーダンスの測定を実施し、前記コントローラが、少なくとも1つの感知された患者の姿勢と前記測定された心音に対応する前記近DCの経胸腔的インピーダンス測定を実施するように動作可能である請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記装置が、外部装置と通信するために通信回路を含む埋込型装置であり、システムが前記外部装置をさらに含み、前記外部装置が、感知された患者の姿勢に関する心音情報を表示するためにディスプレイを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記心音情報が、患者の姿勢に関する心音情報の少なくとも1つの傾向を含む請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記装置が、外部装置と通信するために通信回路を含む埋込型装置であり、システムが前記外部装置をさらに含み、前記外部装置が、コンピュータ・ネットワークと通信する請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記外部装置が、前記心音信号と前記患者の姿勢を含む情報に基づいて警告を伝達するように動作可能である請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラ回路が、姿勢に従って前記心音を分類するために分類モジュールを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラ回路が、特定の患者の姿勢を条件として心音の測定を開始する請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記特定の患者の姿勢が、直立の患者の姿勢を含む請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
埋込型医療装置を使用して少なくとも1つの心音を感知するステップと、
前記埋込型医療装置を使用して患者の姿勢情報を決定するステップと、
前記姿勢情報に対応する前記心音を測定するステップとを備える、方法。
【請求項20】
前記姿勢情報に対応する少なくとも1つの心音を測定するステップが、それぞれの姿勢に対応する心音を測定することと、心音の測定を姿勢に関係付けることとを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
それぞれの姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定するステップが、少なくとも1つのスケーリング・ファクタを少なくとも1つの心音の測定に適用することを含み、前記スケーリング・ファクタが姿勢の関数である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
対応する心拍数が規定の心拍数閾値より高いとき、少なくとも1つの心音の測定を排除することを備える請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を測定することが、前記患者が特定の姿勢にあることを条件として前記心音を測定することを含む請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記特定の姿勢が直立姿勢である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
患者の活動レベルが特定の活動閾値より高いとき、少なくとも1つの心音の測定を排除することを備える請求項19に記載の方法。
【請求項26】
機械的干渉レベルが閾値を超えるとき、少なくとも1つの心音の測定を排除することを備える請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記患者の姿勢に対応する少なくとも1つの心音を前記測定することが、姿勢に関する心音の傾向を測定することを含む請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記患者の姿勢に対応する前記少なくとも1つの心音の測定の傾向情報を記憶することをさらに備える請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記傾向情報を表示用外部装置に伝達することをさらに含む請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−526453(P2008−526453A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551478(P2007−551478)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/001801
【国際公開番号】WO2006/078757
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(505003528)カーディアック・ペースメーカーズ・インコーポレーテッド (466)
【Fターム(参考)】