説明

忌避性シリコーンゴム組成物

【課題】材料自体がゴキブリ等の害虫に対する十分な害虫忌避性を有するシリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】ポリオルガノシロキサンベースポリマーと、硬化剤と、必要に応じて各種添加剤等を配合し、均一に分散させたオキシム型液状シリコーンゴム組成物に、害虫忌避成分としてピレストロイド系化合物のアクリナトリンを、シリコーンゴムベースポリマー100重量部に対し0.01〜10重量部配合し、長期間にわたり害虫忌避効果が持続し、黄変等の問題も生じない忌避性シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴキブリ等の害虫に対する忌避効果の高いシリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から空気中の水分により常温で硬化してゴム弾性体となる、いわゆる縮合反応型液状シリコーンゴム組成物は良く知られており、建築、機械、電気等の各分野におけるシーリング材、工業用接着剤、ポッティング材、型取り材等として広く用いられている。このような、縮合反応型液状シリコーンゴム組成物は、硬化後、台所、洗面所、浴室等に使用されることがあるが、害虫に対する忌避効果がなく、不衛生な環境状態を招くことが指摘されていた。害虫に対する忌避効果を付与するため、特許文献1に示されるようなアクリナトリンを含む害虫防除塗料を塗布することが考えられる。しかしながら、このような害虫防除塗料では、水周りに使用場合、塗料自体の耐候性、耐久性に問題があり、忌避成分が流れ落ちる等、十分な持続性は得られないという問題がある。
【特許文献1】特開2003−73625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前述のような不衛生な環境状態を防止するため、材料自体が十分な害虫忌避性を有するシリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、害虫忌避成分としてピレストロイド系化合物の中でも特にアクリナトリンを選択使用し、且つ縮合反応型液状シリコーンゴムとしてオキシム型のものを採用した場合、長期間にわたり害虫忌避効果が持続し、黄変等の問題も生じないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち本発明は、オキシム型液状シリコーンゴム組成物にアクリナトリンを配合したことを特徴とする忌避性シリコーンゴム組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のオキシム型液状シリコーンゴム組成物は、(a) ポリオルガノシロキサンベースポリマーと、(b) 硬化剤と、必要に応じて各種添加剤等を配合し、均一に分散させたものである。(a) 成分のベースポリマーとしては両末端に水酸基を有するポリジオルガノシロキサンが用いられる。(b) 成分の硬化剤としては、まず架橋剤として、メチルトリ(アセトンオキシム)シラン、ビニルトリ(アセトンオキシム)シラン、メチルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシム)シラン等、およびその部分加水分解物が例示される。これらを使用する際には、1種類に限定される必要はなく、2種以上の併用も可能である。また、(b) 成分の硬化剤のうち、硬化用触媒としては、鉄オクトエート、コバルトオクトエート、マンガンオクトエート、スズナフテネート、スズカプリレート、スズオレエートのようなカルボン酸金属塩:ジメチルスズオレエート、ジメチルスズラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオレエート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジオクチルスズジラウレートのような有機スズ化合物が用いられる。(b) 成分の硬化剤のうち、上記架橋剤の配合量は(a) 成分のベースポリマー 100重量部に対し 0.1〜20重量部が好ましい。架橋剤の使用量が0.1 重量部未満では、硬化後のゴムに充分な強度が得られず、また20重量部を超えると得られるゴムが脆くなり、いずれも実用に耐え難い。また、硬化用触媒の配合量は(a) 成分のベースポリマー 100重量部に対し0.01〜5重量部が好ましい。これより少ない量では硬化用触媒として不十分であって、硬化に長時間を要し、また空気との接触面から遠い内部での硬化が不良となる。他方、これよりも多い場合には、保存安定性が低下してしまう。より好ましい配合量の範囲としては、0.1 〜3重量部の範囲である。
【0007】
本発明では、上記の通り、縮合反応型液状シリコーンゴム組成物として、オキシム型のものを用いた点に一つの特徴を有する。縮合反応型液状シリコーンゴムとして酢酸型やアルコール型のものを用いた場合、害虫忌避成分としてアクリナトリンを配合しても害虫忌避効果が小さく、また黄変等の問題を生ずることもある。
【0008】
本発明に用いるアクリナトリンとは、化学名が(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル=(Z)−(1R,3S)−2,2−ジメチル−3−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエトキシカルボニル)ビニル]シクロプロパンカルボキシラートで表されるピレスロイド系化合物であり、ピレスロイド系化合物の中でも揮発性が低い部類に属する。
【0009】
本発明において、アクリナトリンの配合量は、シリコーンゴムベースポリマー100重量部に対し0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。0.01重量部より少ないと害虫忌避効果が小さく、10重量部より多いと硬化後のゴム状弾性体の機械的特性が著しく低下する。
【0010】
尚、本発明のシリコーンゴム組成物には、充填剤、顔料、耐熱性向上剤、難燃剤等を随時付加的に配合してもよく、本発明の効果を損なわない範囲で他のポリオルガノシロキサンを併用してもよい。このようなものとしては、通常、煙霧質シリカ、沈殿法シリカ、けいそう土等の補強性充填剤、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、マイカ、クレイ、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、水酸化セリウム、ガラスビーズ、ポリジメチルシロキサン、アルケニル基含有ポリシロキサン等が例示される。
【0011】
特に微粉末状のシリカの使用が好ましく、シリコーンゴムベースポリマー100重量部に対し5〜50重量部程度配合される。使用するシリカとしては、未処理のものでも、ヘキサメチルジシラザン等で表面処理したもの、疎水化処理したものでもよい。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例について説明する。尚、以下の例中における「部」は、すべて「重量部」を示すものとする。
【0013】
実施例1、比較例1〜2
分子鎖両末端がシラノール基で封鎖された25℃における粘度が10,000cPであるポリジメチルシロキサン100部に、充填剤としてポリジメチルシロキサンで表面処理された比表面積が200m2/gの煙霧質シリカ(日本アエロジル(株)製AEROSIL(r)200)30部、架橋剤としてメチルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン8部、硬化用触媒としてジブチルスズジラウレート 0.2部、アクリナトリン0.125部を配合し混合し、試験用シリコーンシーラント(7×7cm)を作製した(オキシム型;実施例1)。
【0014】
一方、架橋剤としてメチルトリアセトキシシラン及びメチルトリメトキシシランを用いた比較用のシリコーンシーラントを作製した(酢酸型;比較例1、アルコール型;比較例2)。
【0015】
これらの試験用シリコーンシーラントを使用して、忌避性試験を行った。試験方法は以下の通りである。
[試験方法]
(株)日本環境衛生センターの試験方法(検体を処理したシェルター中への供試虫の潜伏状況から効力を判定する方法)に準じた。
【0016】
即ち、高さ20cm、横26cm、縦15cmの紙製で内部を樹脂加工した容器中に、7×7cmの試験試料および5×5cmの未処理試料(アクリナトリン無配合品)を対にして置いた。試料の上に同じ大きさのベニア板の4辺に角材を貼り付け、試料面とベニア板との間に5mmの隙間が出来るようにしたシェルターを置いた。容器の中央部には水を含ませた脱脂綿と固型飼料を置き、供試虫が自由に摂取出来るようにした。供試虫の逃亡を防止するため、容器内壁にワセリンを薄く塗った後、供試虫(チャバネゴキブリ)20匹を入れた。試験開始24時間後処理区、無処理区のシェルターに潜伏するゴキブリの数を計数し、次式によって忌避効果を判定した。試験は光源、温湿度差、個体差等によるバラツキを考慮して、3回の繰り返しを行い、その合計値により忌避率を算出したが、試験区のうち1区でも処理区の数が無処理区の数を超えるものがある時は、忌避効果は認められぬものとして全体の忌避率は0%とした。
【0017】
忌避率=(1−処理区のゴキブリ数/対照区のゴキブリ数)×100
結果を表1に示す。
【0018】
また、試験用シリコーンシーラントについて、60日経過後の変色の度合いを目視観察したところ、オキシム型(実施例1)は変色がなかったのに対し、酢酸型(比較例1)はややピンクがかっており、アルコール型(比較例2)はやや黄色変していた。
【0019】
【表1】

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシム型液状シリコーンゴム組成物にアクリナトリンを配合したことを特徴とする忌避性シリコーンゴム組成物。

【公開番号】特開2009−185142(P2009−185142A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25018(P2008−25018)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】