説明

応力緩和接続構造とこれを用いた耐震用緩衝装置およびその取付板

【課題】 衝撃力や集中応力を緩和する応力緩和接続構造と、この応力緩和接続構造を用いつつ、簡易な構成で全方向のズレを緩衝して、落橋を有効に防止する耐震用緩衝装置の提供。
【解決手段】 主桁3,5にブラケット13,13が設けられ、このブラケット13,13を架け渡すように連接部材11が応力緩和接続構造を介して設けられる。ブラケット13は、主桁3,5の垂直面に重ね合わされて固定される矩形板状の基板15と、この基板15から水平に延出する上下一対の取付板17,19とを備える。各取付板17,19の先端部には、取付穴23が形成されており、この取付穴23には、筒体25に収容された弾性材31が保持される。連接部材11の端部が、取付板17,19間に差し込まれ、取付板17,19間に取付ピン35が差し込まれることで、連接部材11がブラケット13,13間に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として道路橋や高速道路などの各種橋梁に適用され、特に橋桁間に設けられて地震時における落橋を防止するための耐震用緩衝装置に関するものである。また、そのような耐震用緩衝装置の橋桁への取付時に好適に用いられる応力緩和接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震時に橋脚から橋桁が落下するのを防止するために、隣接する橋桁同士を連結する落橋防止装置が知られている。従来の落橋防止装置は、下記特許文献1に開示されるように、橋桁と橋桁との間が、アイプレートで連結されるか(同文献中の図4参照)、PCケーブルで連結されるもの(同文献中の図1参照)が一般的である。
【特許文献1】特許第3113563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、アイプレートを用いた従来構成では、橋桁間の上下方向のズレには対応できても、構造上、左右(橋軸方向)および前後(橋幅方向)のズレには対応できなかった。また、PCケーブルを用いた従来構成では、構造が複雑で高コストとなるだけでなく、桁への取付部が大きくなり、施工性に問題があった。また、地震時の衝撃力や集中応力の緩和が十分に行えなかった。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、衝撃力や集中応力を緩和する応力緩和接続構造と、この応力緩和接続構造を用いつつ、簡易な構成で全方向のズレを緩衝して、落橋を有効に防止する耐震用緩衝装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、第一部材に第二部材を接続する構造であって、筒状に形成され、その内周面と外周面との間の領域に、軸方向へ沿って開口穴が形成され、外周部が前記第一部材に保持される弾性材と、この弾性材の内穴に通され、前記第二部材が保持される取付ピンとを備えることを特徴とする応力緩和接続構造である。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、弾性材の弾性変形により、第一部材側の弾性材の保持部と、第二部材側の取付ピンとの間に生じる応力を分散し緩和することができる。しかも、弾性材には、適宜の開口穴が形成されているので、弾性変形時の逃げが円滑になされることで弾性材の変形は容易になされる。また、第一部材と第二部材との間に力が作用する際には、その衝撃を緩和することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記弾性材は、円筒状で、前記開口穴としての貫通穴を周方向等間隔に複数形成されており、この弾性材は、同軸状に配置された円筒状の内筒と外筒との間に隙間なく設けられ、前記外筒が前記第一部材に保持される一方、前記内筒に通される前記取付ピンに前記第二部材が保持されることを特徴とする請求項1に記載の応力緩和接続構造である。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、内外二重の円筒間に弾性材を介在させ、その内筒に取付ピンが通されて、第一部材と第二部材とが接続される。この際、取付ピンまわりに第二部材を回転(揺動)可能に設けることも可能である。そして、弾性材の弾性変形により、第一部材側の弾性材の保持部と、第二部材側の取付ピンとの間に生じる応力を分散し緩和することができる。また、内筒と外筒との間に弾性材が保持されることで、両筒間で弾性材の変形がなされることとなり、両筒を介さない場合と比較して、応力をより分散し緩和することができる。しかも、弾性材には、複数の貫通穴が形成されているので、弾性変形時の逃げが円滑になされることで、前記応力の緩和を一層効果的になすことができる。また、第一部材と第二部材との間に力が作用する際には、その衝撃を緩和することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記弾性材は、円筒状で、前記開口穴としての貫通穴を周方向等間隔に複数形成されており、この弾性材は、前記第一部材に形成された取付穴にはめ込まれて保持され、その内穴またはそれに固定の内筒に前記取付ピンが通され、この取付ピンに前記第二部材が保持されることを特徴とする請求項1に記載の応力緩和接続構造である。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、弾性材の内穴に、または内穴に固定された内筒に取付ピンが通されて、第一部材と第二部材とが接続される。この際、取付ピンまわりに第二部材を回転(揺動)可能に設けることも可能である。そして、弾性材の弾性変形により、第一部材側の弾性材の保持部と、第二部材側の取付ピンとの間に生じる応力を分散し緩和することができる。また、弾性材を直接第一部材の取付穴にはめ込むことで、部品点数を減らし、コストの低減を図ることができる。さらに、製造が容易になる。しかも、弾性材には、複数の貫通穴が形成されているので、弾性変形時の逃げが円滑になされることで、前記応力の緩和を一層効果的になすことができる。また、第一部材と第二部材との間に力が作用する際には、その衝撃を緩和することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記弾性材には、空隙率が25〜35%となるように前記貫通穴が形成されたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の応力緩和接続構造である。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、取付ピンと第一部材との間の応力緩和を好適に行うことができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、連結しようとする二つの部材にそれぞれブラケットを設け、前記応力緩和接続構造を用いて両端部が前記ブラケットに接続されて、前記ブラケット間を連結する耐震用緩衝装置であって、前記ブラケットは、水平に延出する取付板を有し、この取付板には上下方向へ沿って前記弾性材が設けられており、前記弾性材の内穴に上下方向へ沿って設けられる前記取付ピンにより、前記各ブラケットの取付板に揺動可能に保持される一対の第一リンク材と、この第一リンク材間に揺動可能に設けられる一以上の同種または複数種の第二リンク材とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の応力緩和接続構造を用いた耐震用緩衝装置である。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、リンク材の連結により左右に細長いリンク機構が構成され、隣接するリンク材同士は揺動可能である。これにより、前記リンク機構は、その左右両端部に配置した取付ピン間の左右方向の離隔寸法と、上下方向のズレとを変更するよう変形可能である。また、リンク機構は、その左右両端部に上下方向へ沿う取付ピンが通されてブラケットに保持され、取付ピンまわりに水平面内である程度回動可能に構成できる。このようにして地震時におけるズレを吸収可能に、リンク機構により二部材を連結できる。しかも、前記リンク機構は、弾性材を介して取付ピンによりブラケットに保持される。弾性材を介することで、地震時の衝撃を緩衝することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記第二リンク材の少なくとも一つは、丸棒または角棒の本体と、この本体の両端部に取り付けられる接続具とからなり、前記接続具には、前記本体の軸線に垂直方向に沿って軸穴が形成されており、前記本体は、隣接する第一リンク材または他の第二リンク材と前記軸穴に通される連結軸により揺動可能に保持されることを特徴とする請求項5に記載の耐震用緩衝装置である。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、第二リンク材の少なくとも一つが、棒状の本体と、その両端部に取り付けられる接続具とで構成されている。これにより、本装置を取り付ける際に妨げとなる壁(典型的には横桁)などがある場合に、その壁に本体と同じ径の穴または若干大きい穴を形成し、その穴に本体を通してリンク機構を構成すればよく、壁に大きい穴を形成する必要がない。また、本体は、長尺材を所望寸法に切り出して使用することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、連結しようとする二つの部材にそれぞれブラケットを設け、前記応力緩和接続構造を用いて両端部が前記ブラケットに接続されて、前記ブラケット間を連結する耐震用緩衝装置であって、前記ブラケットは、水平に延出する取付板を有し、この取付板には上下方向へ沿って軸線(前記筒状の弾性材の中心軸)を配置して前記弾性材が設けられており、左右一端部に上下方向へ沿ってピン穴が形成される一方、左右他端部に前後方向へ沿って軸穴が形成された一対の第一リンク棒と、左右両端部に前後方向へ沿って軸穴が形成された第二リンク棒と、左右方向外側に前記ピン穴を配置して、左右両端部に前記第一リンク棒を配置すると共に、その左右の第一リンク棒間に少なくとも一つの第二リンク棒を介在させて、各リンク棒を連なるよう配置した状態で、隣接する各リンク棒の対面する前記軸穴間に前後方向へ沿って設けられ、隣接するリンク棒同士を揺動可能に連結する連結軸とを備え、左右両端部に配置された各第一リンク棒のピン穴には、前記弾性材の内穴に上下方向へ沿って設けられる前記取付ピンが通されることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の応力緩和接続構造を用いた耐震用緩衝装置である。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、リンク棒の連結により左右に細長いリンク機構が構成され、隣接するリンク棒は、前後方向へ沿って配置される連結軸まわりに揺動可能である。これにより、前記リンク機構は、その左右両端部に配置したピン穴間の左右方向の離隔寸法と、上下方向のズレとを変更するよう変形可能である。また、リンク機構は、その左右両端部に配置されたピン穴に、上下方向へ沿う取付ピンが通されてブラケットに保持され、取付ピンまわりに水平面内である程度回動可能に構成できる。このようにして地震時におけるズレを吸収可能に、リンク機構により二部材を連結できる。しかも、前記リンク機構は、弾性材を介して取付ピンによりブラケットに保持される。弾性材を介することで、地震時の衝撃を緩衝することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、長手方向端部間に隙間を空けて突き合わせ配置された左右の主桁同士を連結することで、地震時の落橋を防止する耐震用緩衝装置であって、前記ブラケットは、左右の前記主桁にそれぞれ設けられ、前記各リンク棒は、長手方向両端部に板状部が設けられた棒材からなると共に、前記板状部の板面と垂直に前記軸穴または前記ピン穴が形成されており、前記第一リンク棒間には、奇数本の第二リンク棒が設けられ、各リンク棒は、前後互い違いに順次に配置されると共に、左右の第一リンク棒間を最大限に延ばした伸長状態よりも短縮した状態で、左右のブラケット間に保持されることを特徴とする請求項7に記載の耐震用緩衝装置である。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、コンパクトな構成で、橋梁の主桁間を前記リンク機構で連結して、橋脚からの橋桁の落下を防止することができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、連結しようとする二つの部材にそれぞれブラケットを設け、前記応力緩和接続構造を用いて両端部が前記ブラケットに接続されて、前記ブラケット間を連結する耐震用緩衝装置であって、前記ブラケットは、水平に延出する一枚の取付板を有し、この取付板には上下方向へ沿って軸線を配置して前記弾性材が設けられており、開放両端部が上下に配置された状態において、その開放両端部に上下方向に沿ってピン穴が形成されたU字具と、丸棒または角棒の本体と、この本体の両端部に取り付け可能とされ、前後方向へ沿って軸穴が形成された接続具とを有する第二リンク棒と、複数のリンクが結合されたチェーンまたは単一のリンクからなる補助リンク材と、この補助リンク材の一端部と前記第二リンク棒の軸穴とに、前後方向へ沿って設けられ、第二リンク棒と補助リンク材とを揺動可能に連結する連結軸とを備え、左右両端部に配置された各U字具には、補助リンク材の他端部のリンクが引っ掛けられ、U字具のピン穴には、前記弾性材の内穴に上下方向へ沿って設けられる前記取付ピンが通されることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の応力緩和接続構造を用いた耐震用緩衝装置である。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、リンク棒の連結により左右に細長いリンク機構が構成され、隣接する第二リンク棒と補助リンク材とは、前後方向へ沿って配置される連結軸まわりに揺動可能である。また、U字具と補助リンク材とは、チェーン状に結合されることで互いに揺動可能とされる。これにより、前記リンク機構は、その左右両端部に配置したピン穴間の左右方向の離隔寸法と、上下方向のズレとを変更するよう変形可能である。また、リンク機構は、その左右両端部に配置されたピン穴に、上下方向へ沿う取付ピンが通されてブラケットに保持され、取付ピンまわりに水平面内である程度回動可能に構成できる。このようにして地震時におけるズレを吸収可能に、リンク機構により二部材を連結できる。しかも、前記リンク機構は、弾性材を介して取付ピンによりブラケットに保持される。弾性材を介することで、地震時の衝撃を緩衝することができる。
【0023】
さらに、請求項10に記載の発明は、前記ブラケットの取付板であって、板面に垂直に貫通穴が形成されており、この貫通穴に前記弾性材がその軸線を板面に垂直にはめ込まれて設けられたことを特徴とする請求項5から請求項9までのいずれかに記載の耐震用緩衝装置に使用される取付板である。
【0024】
請求項10に記載の発明によれば、取付板の貫通穴に直接弾性材がはめ込まれることで、部品点数を減らし、コストの低減を図ることができる。また、製造が容易とされる。前記取付板は、垂直な板面に溶接など水平に固定されて使用されるが、垂直面となる板片から分離されていることで、その持ち運びが容易とされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の応力緩和接続構造によれば、地震時の衝撃や応力集中を有効に緩和できる。また、本発明の耐震用緩衝装置によれば、簡易な構成で全方向のズレを緩衝して、落橋を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の応力緩和接続構造とこれを用いた耐震用緩衝装置の一実施例について、図面に基づき更に詳細に説明する。
図1は、本発明の耐震用緩衝装置が取り付けられた橋梁の一実施例を示す概略構造図である。また、図2は、図1のA―A断面図であり、図3は図1のB―B断面図である。
【0027】
本実施例の応力緩和接続構造を用いた耐震用緩衝装置1は、地震時における落橋防止装置であり、特に、道路橋や高速道路などの各種橋梁に適用される。典型的には、I型断面の鈑桁を使用した桁橋に使用される。
図示例の橋梁は、少なくとも前後(橋幅方向)両端部に、左右方向(橋軸方向)に沿ってI型鋼からなる主桁(橋桁)3(5),3(5)が設けられ、この主桁上に道路が構築されている。また、この道路の前後両端部には、左右方向に沿って車両防護柵7が設けられる。
【0028】
隣接する主桁3,5は、その長手方向端部において、若干の隙間を空けて突き合わされた状態で配置され、橋脚9上に保持されている。隣接する主桁3,5同士は、例えば、x=50〜150mmの隙間を空けて橋脚9に載せ置かれている。
【0029】
隣接する主桁3,5同士は、連接部材11にて連結される。
連接部材11を保持するために各主桁3,5の前後両側面にはブラケット13が設けられ、左右の各主桁3,5のブラケット13,13間を架け渡すように、連接部材11が応力緩和接続構造を介して設けられる。
【0030】
図4は、この応力緩和接続構造の主要部を示す斜視図であり、筒体25(内筒27,外筒29)に収容された円筒状弾性材31が、前記ブラケット13から水平に延びる取付板17(19)の先端部に設けられた状態を示している。また、図5は、取付板17,19の先端部の一部断面図であり、前記ブラケット13への前記連接部材11の取付状態を示している。
【0031】
ブラケット13は、主桁3,5の垂直面に重ね合わされて固定される矩形板状の基板15と、この基板15から水平に延出する上下一対の取付板17,19とを備える。取付板17,19は、上下に離間して平行に設けられており、図2に示すように、取付板17,19の先端部は平面視略三角形状に形成されている。本実施例では、各取付板17,19の先端部内側に、円板状の補強材21が固定されている(図5)。つまり、上側取付板17の下面と、下側取付板19の上面にそれぞれ補強材21が固定されている。
【0032】
各取付板17,19の先端部には、上下方向に沿って取付穴23が貫通して形成されており、前記補強材21にも、前記取付穴23に連続して上下方向に沿って穴24が貫通して形成されている。取付板17,19の取付穴23は丸穴とされる。また、補強材21には、丸穴24が形成されており、後述する取付ピン35が通される。上下に配置された取付板17,19の各取付穴23,23および補強材21,21の各穴24,24は同軸上に設けられている。取付板17,19の各取付穴23には、応力緩和接続構造を介して連接部材11の端部が接続される。そのために、取付板17,19の各取付穴23,23には、金属製の筒体25に収容された弾性材31が保持されている。
【0033】
弾性材31は、その材質を特に問わないが、本実施例では合成ゴム製の円筒状とされる。弾性材31の周壁には、周方向等間隔に軸方向に沿って開口穴33が多数形成されており、本実施例では、この開口穴33は、弾性材31の上下端面に開口する円形の貫通穴33とされる。また、この貫通穴33は、その中心が弾性材31の周壁の厚さ方向中央に位置するように形成されている。本実施例の弾性材31は、空隙率が25〜35%となるように、前記貫通穴33が形成されている。また、弾性材31の硬さは適宜に設定されるが、本実施例では例えば70〜80度程度とされる。
【0034】
筒体25は、同軸上に配置される円筒状の内筒27と外筒29とから構成され、弾性材31は内筒27と外筒29との間に収容される。外筒29の一端部には、径方向外側へ延出して鍔部29aが形成されている。
【0035】
筒体25の軸寸法は、取付板17,19の厚さに対応している。また、内筒27の外径は、弾性材31の内径に対応しており、外筒29の内径は、弾性材31の外径に対応している。これにより、弾性材31は、圧縮されることなく内筒27と外筒29との間に隙間なく収容され保持される。
【0036】
弾性材31は、この筒体25に収容された状態で、ブラケット13の取付板17,19の各取付穴23,23にそれぞれはめ込まれて保持される。この際、上下の取付板17,19に設けられた各弾性材31,31は、同一軸線上に配置される。
また、外筒29の鍔部29aは、取付板17,19の上下方向外側の面へ配置される。つまり、上側取付板17には、外筒29の鍔部29aが上側に配置された状態で筒体25が取り付けられ、下側取付板19には、外筒29の鍔部29aが下側に配置された状態で筒体25が取り付けられる。
【0037】
そして、各取付板17,19間に連接部材11の一端部が差し込まれて、取付板17,19間に取付ピン35が差し込まれることで、連接部材11がブラケット13に回動(揺動)可能に保持される。取付ピン35の外径は、内筒27の内径に対応しており、取付ピン35は内筒27に回転可能に保持される。
【0038】
本実施例の連接部材11は、その左右両端部同士が近接・離間可能とされ、たるめることができる構成である。本実施例の連接部材11は、両端に配置される第一リンク棒41,41と、この第一リンク棒41,41間に配置される一または複数本の第二リンク棒45とが連結されて構成される。本実施例では、5本の第二リンク棒45が第一リンク棒41,41間に設けられる。
【0039】
各リンク棒41,45は、中央部分が丸棒状とされ、その両端部42,43,46が円板状に形成されている。そして、円板状部42,43,46の厚さは、丸棒状部の外径と同じ寸法とされている。
第一リンク棒41の一端部に形成された円板状部42の板面は、水平面とされ、他端部43に形成された円板状部43の板面は垂直面とされる。また、第二リンク棒45の両端部に形成された円板状部46,46の板面は、共に垂直面とされる。そして、各リンク棒41,45の両端部の円板状部42,43,46には、次に述べるように、板面に垂直な穴が形成されている。
【0040】
すなわち、第一リンク棒41の一端部42には、上下方向に沿って円形のピン穴42aが貫通形成されている。また、第一リンク棒41の他端部43および第二リンク棒45の両端部46,46には、前後方向に沿って円形の軸穴(不図示)が貫通形成されている。第一リンク棒41の両端部42,43に形成されたピン穴42aと軸穴とは、90度向きが異なっている。
【0041】
本実施例では、第一リンク棒41の一端部のピン穴42aと他端部の軸穴(不図示)の離隔距離と、第二リンク棒45の両端部46,46の軸穴同士の離隔距離は同じとされる。また、各リンク棒41,45の中央部分の外径は、同じ寸法とされ、各リンク棒41,45の両端部の円板状部42,43,46の外径および厚さも同じ寸法とされる。さらに、第一リンク棒41のピン穴42aおよび軸穴と、第二リンク棒45の軸穴は、それぞれ同じ径とされる。
【0042】
各リンク棒41,45は、互い違いに連結され、本実施例では、リンク棒41,45同士の連結部分が一直線上に連なるように連結される。つまり、図2に示すように、左右両端に第一リンク棒41,41が一端部円板状部42を左右方向外側へ向けた状態でそれぞれ配置され、この第一リンク棒41,41間に2本の第二リンク棒45B,45Dが互いに離間した状態で設けられる。
【0043】
そして、左端の第一リンク棒41の他端部円板状部43と第二リンク棒45Bの左側の円板状部46に、手前側から第二リンク棒45Aの円板状部46,46がそれぞれ重ね合わされて、各軸穴に連結軸51が差し込まれる。同様に、右端の第一リンク棒41と第二リンク棒45Dとの間に、第二リンク棒45Eが取り付けられる。
また、第二リンク棒45Bの右側の円板状部46と第二リンク棒45Dの左側の円板状部46に、手前側から第二リンク棒45Cの円板状部46,46がそれぞれ重ね合わされて、各軸穴に連結軸51が差し込まれる。
これにより、各リンク棒41,45同士は、連結軸51まわりに互いに揺動可能に保持される。
【0044】
本実施例では、連結軸51としてボルトが使用される。このボルト51は、六角形状の頭部から丸棒状の軸部が延出しており、この軸部の先端部にネジが形成されている。
ボルト51は、重ね合わされた各リンク棒41,45の円板状部43,46の軸穴に差し込まれて、軸部の先端部に平座金を介してナット53がねじ込まれる。また、ナット53の脱落防止のため、ボルト51の先端部に径方向に沿って割りピン(不図示)が差し込まれる。
【0045】
連接部材11の両端に設けられた第一リンク棒41の一端部42は、それぞれブラケット13の上下の取付板17,19(補強材21,21)間に差し込まれる。そして、取付ピン35が、取付板17,19間に上下方向に沿って差し込まれることで第一リンク棒41がブラケット13に水平面内で揺動可能に保持される。これにより、ブラケット13,13間に連接部材11が架け渡されるように設けられる。
また、本実施例では、各取付板17,19と第一リンク棒41の一端部42との間に補強材21が設けられている。この補強材21は、各取付板17,19と第一リンク棒41の一端部42との隙間を無くすためのスペーサーの役目を果すと共に、取付ピン35の変形を防止する。
【0046】
本実施例では、取付ピン35としてボルトが使用される。このボルト35は、上記ボルト51と同様の構成とされ、軸部に平座金37が通された状態で取付穴23に差し込まれ、軸部の先端部には平座金38を介してナット36がねじ込まれる。ところで、外筒29の鍔部29aは、取付板17の上面および取付板19の下面にそれぞれ当接している。そして、取付ピン35が取付板17,19間に設けられた状態では、各平座金37,38が外筒29,29の鍔部29a,29aに当接している。
【0047】
このようにして連接部材11がブラケット13,13間に取り付けられるが、その状態では、連接部材11は、たるまされた短縮状態とされる。そして、連接部材11は、最大限伸びた状態において、主桁3,5が橋脚9から脱落しないように長さが設定される。連接部材11の長さは、特に問わないが、本実施例では、伸長状態で両端の第一リンク棒41,41のピン穴42a,42aの中心間距離が2m80cmとされ、2m30cmにたるませた状態でブラケット13,13間に取り付けられる。
【0048】
ところで、連接部材11は、図1に示すように、両端の第一リンク棒41,41と、中央の第二リンク棒45Cが同じ高さとなるように、たるまされた状態でブラケット13,13間に取り付けられる。
つまり、連接部材11がブラケット13,13間に取り付けられた状態では、左右両端の第一リンク棒41,41は水平状態とされる。また、左端の第一リンク棒41に連結される第二リンク棒45Aとこの第二リンク棒45Aに連結される第二リンク棒45B、および右端の第一リンク棒41に連結される第二リンク棒45Eおよびこの第二リンク棒45Eに連結される第二リンク棒45Dは、それぞれVの字状に配置される。
そして、第二リンク棒45Bと第二リンク棒45Dに連結される中央の第二リンク棒45Cは、水平状態に配置される。
これにより、荷重が作用した場合でも、中央の第二リンク棒45Cが跳ね上がることがない。
【0049】
ところで、本実施例の耐震用緩衝装置1は、図2および図3に示すように、各主桁3,5の前後両側面に取り付けられ、一方の装置1の基板15から他方の装置1の基板15へボルト61が差し込まれて、他方側からナット62がねじ込まれ固定される。これにより、主桁3,5の前後両側面に耐震用緩衝装置1,1が設けられる。
【0050】
このような構成の耐震用緩衝装置1を取り付けることで、橋脚9からの主桁3,5の脱落が防止される。たとえば、地震時において、隣接する主桁3,5同士が左右方向(橋軸方向)に離間しようとしても、連接部材11が架け渡されていることで、連接部材11はたるんだ状態から伸長状態となり隣接する主桁3,5同士は一定以上離間することがない。これにより、主桁3,5が橋脚9から脱落することがない。また、上述したように、連接部材11が最大限伸長した状態で、主桁3,5が橋脚9から脱落することはない。
【0051】
また、主桁3,5同士が上下方向にズレる場合でも、連接部材11の各リンク棒41,45同士が、連結軸51まわりに上下方向に回転することで対応することができる。
さらに、主桁3,5同士が前後方向(橋幅方向)にズレる場合でも、第一リンク棒41の一端部42がブラケット13に対して取付ピン35まわりに前後方向に回転することで対応することができる。
【0052】
このように、本実施例の耐震用緩衝装置1は、主桁3,5のあらゆる方向のズレに対応することができ、落橋を防止することができる。
しかも、本実施例では、連接部材11とブラケット13との接続構造を簡略化したことで、ブラケット13を小さくすることができ、施工性がよい。
【0053】
ところで、本実施例では、第一リンク棒41の一端部42は、応力緩和接続構造を介してブラケット13に接続されている。第一リンク棒41の一端部42に差し込まれる取付ピン35は、弾性材31を介して取付板17,19の取付穴23に差し込まれており、取付ピン35と取付穴23との間には弾性材31が介在している。これにより、図6(a)に示すように、取付ピン35と取付穴23との接触幅が広がり、発生する応力w1を緩和することができる。これに対して、図6(b)に示すように、取付ピン35が取付穴23の外周部に直接接触する場合、応力w2が集中してしまいブラケット13が破損するおそれがある。このように、本実施例では、応力緩和接続構造を介してブラケット13に第一リンク棒41を接続していることで、地震時の衝撃などの応力が分散し、ブラケット13の破損を防止することができる。なお、取付ピン35の直径を内筒27の内径に近づければより好ましい。
【0054】
しかも、本実施例では、弾性材31に貫通穴33が形成されていることで、取付ピン35が弾性材31に接触した場合に、貫通穴33が変形し弾性材31が逃げることで、貫通穴33の無い弾性材31の場合に比べてさらに応力を分散することができる。
また、本実施例では、弾性材31を筒体25に収容した状態で取付板17,19の取付穴23に設けていることで、さらに応力が分散される。
なお、本実施例では、応力緩和接続構造を用いていることで、ブラケット13の取付板17,19に補強材21を必ずしも設ける必要はない。
【0055】
ところで、連接部材11を構成するリンク棒は、上記形状に限定されない。
図7は、連接部材の変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0056】
たとえば、連接部材11のうち、両端に設けられる第一リンク棒71,71は、上記第一リンク棒41と同様の形状とし、この第一リンク棒71,71間に設けられる第二リンク棒75の形状を変更することができる。
本変形例の場合、第二リンク棒75は2種類の形状からなる。すなわち、端部二股第二リンク棒75A,75C,75Eと、アイバー状第二リンク棒75B,75Dの二種類から構成される。
【0057】
第一リンク棒71,71間に互いに離間した状態で設けられるアイバー状第二リンク棒75B,75Dは、中央部分が丸棒状とされ、その両端部76,76が円板状に形成されており、図1の実施例における第二リンク棒45と同様の形状とされる。
【0058】
そして、第一リンク棒71とアイバー状第二リンク棒75B,75Dとの間、およびアイバー状第二リンク棒75Bとアイバー状第二リンク棒75Dとの間にそれぞれ設けられる端部二股第二リンク棒75A,75C,75Eは、中央部が丸棒状とされ、その両端部77,77が二股分かれした形状とされる。
【0059】
具体的には、この両端部77は、前後に平行に設けられる一対の円板状部77a,77aから構成される。各円板状部77aの板面は、垂直面とされ、この円板状部77aには、板面に垂直に軸穴(不図示)が形成されている。なお、一対の円板状部77a,77aの軸穴は同軸上に形成されている。
【0060】
本変形例の場合、端部二股第二リンク棒75A,75C,75Eの二股部77に、第一リンク棒71の他端部72、およびアイバー状第二リンク棒75B,75Dの円板状部76がそれぞれ差し込まれて、上記実施例と同様に、連結軸79により揺動可能に連結されて連接部材11が構成される。そして、この連接部材11が、上記実施例と同様に、たるまされた状態でブラケット13,13間に架け渡すように取り付けられる。
【0061】
次に、本発明の耐震用緩衝装置の別の実施例について説明する。
本実施例の耐震用緩衝装置1は、前後に離間して設けられた主桁3(5),3(5)同士を架け渡すように横桁が設けられた橋桁に好適に使用され、以下、横桁が設けられた箇所に取り付けられる場合について説明する。なお、本実施例の耐震用緩衝装置は、基本的には、上記実施例の耐震用緩衝装置と同様の構成であるので、同じ部材には同じ符号を付して説明する。
【0062】
図8は、本発明の耐震用緩衝装置が取り付けられた橋梁の別の実施例を示す概略縦断面図である。また、図9は図8のC―C断面図であり、図10は図8のD―D断面図である。
【0063】
本実施例の耐震用緩衝装置は、上記実施例と同様に、隣接する主桁3,5にブラケット13がそれぞれ取り付けられ、このブラケット13,13同士を架け渡すように連接部材11が設けられる構成とされる。なお、本実施例の耐震用緩衝装置は、前記実施例と同様に、各主桁3,5の前後両側面に取り付けられる。
【0064】
本実施例のブラケット13は、主桁3,5の垂直面に重ね合わされて固定される矩形板状の基板15と、この基板15から水平に延出する取付板81とを備える。本実施例では、基板15に取付板81が一枚のみ設けられている。また、本実施例の取付板81は、平面視略三角形状とされており、その頂部が円弧状に形成されている。
【0065】
図11は、取付板81の先端部の一部断面図であり、前記ブラケット13への前記連接部材11の取付状態を示している。
【0066】
取付板81の先端部には、上下方向に沿って円形の取付穴83が貫通して形成されている。取付板81には、前記実施例と同様に、応力緩和接続構造を介して連接部材11の端部が接続される。
具体的には、取付板81の取付穴83には、前記実施例と同様に、金属製の筒体25に収容された弾性材31がはめ込まれている。この筒体25および弾性材31の構成は、前記実施例と同様の構成とされる。そして、この取付板81に連接部材11の一端部が配置されて、上下方向に沿って取付ピン35が差し込まれることで、連接部材11がブラケット13に回動(揺動)可能に保持される。
【0067】
本実施例の連接部材11は、前記実施例と同様に、その左右両端部同士が近接・離間可能とされ、たるめることができる構成とされる。
本実施例の連接部材11は、両端に配置されるU字具85,85と、中央に配置される第二リンク棒87と、前記U字具85と第二リンク棒87の端部とを接続する補助リンク材89,89とから構成される。
【0068】
U字具85は、丸棒材を屈曲して形成されており、その開放両端部91,91は、円板状に形成されている。
具体的には、U字具85の開放両端部91,91は、上下に配置された状態において板面が水平面となる円板状に形成されている。このU字具85の各円板状部91には、板面に垂直にピン穴93が形成されている。つまり、U字具85の各円板状部91,91には、上下方向に沿って円形のピン穴93,93が貫通形成されている。なお、各円板状部91のピン穴93は、同軸上に形成されている。また、U字具85の円板状部91の厚みは、丸棒状部の外径と同じ寸法とされる。さらに、本実施例のU字具85および取付ピン35として、シャックルを用いることができる。すなわち、前記U字具85としてシャックルのU字金具を用い、前記取付ピン35としてシャックルの棒金具を用いることができる。
【0069】
第二リンク棒87は、棒状の本体95と、その両端部に設けられる接続具97とを備える(図12参照)。本実施例の本体95は丸棒状とされ、その両端部には、外周面にネジ99,99が形成されている。また、本体95の両端部には、前記ネジ部99,99より若干軸方向内側に、工具で掴むための矩形状の平坦面101,101が径方向両端部に形成されている。
【0070】
接続具97は、基端側が本体95のネジ部99にねじ込まれる円筒部103とされ、先端側が円筒部103から先端側へ二股分かれした形状とされる。
具体的には、接続具97の先端側は、前後に平行に設けられる一対の板状部105,105から構成され、各板状部105,105の板面は垂直面とされる。本実施例では、接続具97の各板状部105,105は、円板状に形成されており、この円板状部105,105には、板面に垂直に円形の軸穴(不図示)が貫通形成されている。つまり、接続具97の円板状部105には、前後方向に沿って軸穴が形成されている。なお、一対の円板状部105,105の軸穴は同軸上に形成されている。
【0071】
接続具97は、その円筒部103が本体95の各端部のネジ部99にねじ込まれて本体95に取り付けられ、本体95の左右両端部にそれぞれ取り付けられる。この際、本体95の各ネジ部99には、予めナット107がねじ込まれており、このナット107は、接続具97の円筒部103に押圧するように設けられて、接続具97のゆるみ止め(止めナット)として作用する。
【0072】
補助リンク材89は、長円環状の2つのリンク109,109がチェーン状に結合されて構成される。
【0073】
図12は、本実施例の耐震用緩衝装置が、横桁の設けられた橋桁に取り付けられる工程を示す図である。
【0074】
U字具85、第二リンク棒87および補助リンク材89からなる連接部材11を各主桁3,5に固定されたブラケット13,13間に取り付ける場合、まず、横桁111に穴113をあける。この横桁111の穴113は、第二リンク棒87の本体95の直径より若干大きい径とし、好ましくは、本体95の直径より10mm程度大きい径とする。
【0075】
また、本実施例では、横桁111に補強板115が取り付けられる。補強板115は、図示例では、円板形状とされ、その中心には、横桁111の穴113と同径の丸穴117が貫通形成されている。補強板115は、その丸穴117と、横桁111の穴113とが同軸上となるように横桁111の両側面に配置されて、横桁111に溶接で固定される。
【0076】
次に、U字具85に補助リンク材89の一方のリンク109を引っ掛け、この状態で、U字具85をその開放両端部91,91間にブラケット13の取付板81を挟み込むように配置する。そして、U字具85のピン穴93に取付ピン35を差し込む。つまり、U字具85の円板状部91,91間を架け渡すように取付ピン35を上下方向に沿って差し込む。この際、取付ピン35は、取付板81に設けられた弾性材31にも通される。
【0077】
本実施例では、前記実施例と同様に、取付ピン35にボルトが使用され、このボルト35の先端部にナット36がねじ込まれる。これにより、ブラケット13にU字具85が取り付けられ、ひいては連接部材11がブラケット13,13間に取り付けられる。なお、ボルト35の先端部には、ナット36の抜け止めとして、径方向に沿ってピン119が差し込まれている。なお、U字具85の一方のピン穴93の内周面にネジ溝を形成し、他方のピン穴93から差し込まれたボルト35の先端部を一方のピン穴93にねじ込むようにしてもよい。
【0078】
次に、第二リンク棒87の本体95を横桁111の穴113に通して、本体95の両端部に接続具97を取り付ける。
そして、第二リンク棒87の接続具97の円板状部105,105間に補助リンク材89の他方のリンク109を差し込み、接続具97の円板状部105,105間を架け渡すように、前後方向に沿って連結軸51を差し込む。この際、連結軸51は、他方のリンク109にも通される。本実施例では、前記実施例と同様に、連結軸51にボルトが使用され、ボルト51の先端部にナット53がねじ込まれる。これにより、第二リンク棒87に補助リンク材89が接続される。このようにU字具85、補助リンク材89および第二リンク棒87が接続されて、連接部材11が構成される。
【0079】
連接部材11がブラケット13,13間に取り付けられた状態では、連接部材11はたるまされた短縮状態とされる。本実施例では、図8に示すように、補助リンク材89の2つのリンク109,109がV字状に配置されて、第二リンク棒87が水平に配置される。この際、第二リンク棒87とU字具85は、ほぼ同じ高さ位置とされる。また、前記実施例と同様に、連接部材11は、最大限伸びた状態において、主桁3,5が橋脚9から脱落しないように長さが設定される。
【0080】
本実施例の耐震用緩衝装置1が取り付けられることで、前記実施例と同様に、橋脚9からの主桁3,5の脱落が防止される。
つまり、隣接する主桁3,5同士が左右方向に離間しようとすれば、連接部材11がたるんだ状態から伸長状態となって隣接する主桁3,5同士が一定以上離間することがなく、主桁3,5が橋脚9から脱落することがない。
また、隣接する主桁3,5同士が上下方向にズレる場合には、補助リンク材89がU字具85に対して回転すると共に、連結軸51まわりに第二リンク棒87に対しても回転することで対応することができる。
さらに、隣接する主桁3,5同士が前後方向(橋幅方向)にズレる場合には、U字具85がブラケット13に対して取付ピン35まわりに前後方向に回転することで対応することができる。
【0081】
このように、本実施例の耐震用緩衝装置1は、前記実施例と同様に、主桁のあらゆる方向のズレに対応することができ、落橋を防止することができる。また、前記実施例と同様に、応力緩和接続構造を介して連接部材11のU字具85がブラケット13に接続されていることで、ブラケット13の破損を防止することができる。
【0082】
なお、図8において二点鎖線で示すように、橋の床版などに左右に離間してそれぞれチェーン121,121の一端部を固定して吊り下げ、各チェーン121の他端部に設けられたフックで第二リンク棒87を吊るすようにしても構わない。これにより、第二リンク棒87が確実に水平に保たれ、かつ位置決めが行なわれる。この際、チェーン121は、地震などがおきて第二リンク棒87が移動する必要がある場合に、自然に切断される強度とする。
【0083】
本実施例の耐震用緩衝装置1において、連接部材11の第二リンク棒87の両端部が、着脱可能な構成とされていることで、横桁111にあける穴113の径を小さくすることが可能となる。つまり、横桁111には、第二リンク棒87の本体95の直径と同じか若干大きい穴をあけるだけでよく、橋桁の耐久性に影響を与えることはない。
【0084】
なお、前記取付工程は適宜変更可能である。たとえば、先に、第二リンク棒87の本体95を横桁111の穴113に通して、本体95の両端部に接続具97を取り付けると共に、接続具97に補助リンク材89およびU字具85を接続する。そして、U字具85とブラケット13を接続した後に、ブラケット13を各主桁3,5に固定するようにしても構わない。
【0085】
ところで、ブラケット13の基板15は、強度との関係上、取り付ける場所に応じて大きさが異なるが、取付板81はその大きさがほぼ共通とされる。そこで、基板15と取付板81とを分割した状態としておき、現場において基板15に取付板81を溶接で固定することも可能である。
また、本実施例において、補助リンク材89のリンク109の数は、適宜変更可能である。さらに、本実施例では、前記実施例と同様に、取付板81の取付穴83の周囲に円環状の補強材を取り付けるようにしてもよい。
【0086】
本発明の応力緩和接続構造およびこれを利用した耐震用緩衝装置は、上記実施例に限らず、適宜変更可能である。
たとえば、第一リンク棒41,41間に設けられる第二リンク棒45の本数は適宜変更可能である。但し、本実施例のように連接部材11の両端に設けられた第一リンク棒41,41の前後方向の位置を同じにするために、第一リンク棒41,41間に設けられる第二リンク棒45は奇数本とするのが好ましい。
【0087】
また、本発明の応力緩和接続構造は、第一部材と第二部材とを接続する構造であり、本実施例では、第一部材をブラケット13とし、第二部材を連接部材11として、筒体25に収容された弾性材31をブラケット13側に設けた。しかしながら、第一部材を連接部材11とし、第二部材をブラケット13として、筒体25に収容された弾性材31を第一リンク棒41のピン穴42aまたはU字具85のピン穴93に設けるようにすることも可能である。さらに、ブラケット13および第一リンク棒41の両方に弾性材31を設けるようにすることも可能である。
【0088】
また、橋幅によっては主桁は、前後両端部だけでなく、中央にも設けられて3列とされたり、それ以上となる場合もある。このような場合には、隣接する橋桁の前後面にそれぞれ本実施例の耐震用緩衝装置を取り付けることができる。
【0089】
さらに、上記実施例では、弾性材31の貫通穴33の断面形状を円形としたが、楕円形や四角形、菱形などの多角形状としてもよい。また、リンク棒同士を連結する連結軸は、リンク棒の端部に一体に形成された構成であってもよい。
【0090】
さらに、本実施例では、耐震用緩衝装置を主桁同士の連結に使用したが、主桁と橋脚との連結に使用することも可能であり、その使用場所および方法は適宜変更可能である。
【0091】
また、上記各実施例では、筒体25に収容された弾性材31をブラケット13の取付板17,19,81の取付穴23,83に設けたが、筒体25の外筒29を省略することも可能である。たとえば、図13に示すように、弾性材31の上下端部を径方向外側へ若干拡径して鍔部123,123を形成する。図示例では、軸方向外側へ行くに従って径方向外側へ拡径する円錐台状の鍔部123とされている。また、取付板17,19,81の取付穴23,83の上下端部を、弾性材31の鍔部123に対応した円錐台状の傾斜面125とする。
【0092】
そして、弾性材31を取付板17,19,81の取付穴23,83にはめ込めばよい。つまり、弾性材31の鍔部123を圧縮した状態で取付板17,19,81の取付穴23,83にはめ込み、鍔部123を取付穴23の傾斜面125に当接するようにすればよい。これにより、弾性材31が取付板17,19,81の取付穴23,83に位置決めされて設けられる。この際、取付板17,19,81の取付穴23,83の内周面に接着剤を塗布しておいてもよい。
【0093】
さらに、上記各実施例における耐震用緩衝装置において、連接部材11およびブラケットの構成は、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の耐震用緩衝装置が取り付けられた橋梁の一実施例を示す概略構造図である。
【図2】図1のA―A断面図である。
【図3】図1のB―B断面図である。
【図4】応力緩和接続構造の主要部を示す斜視図である。
【図5】取付板の先端部の一部断面図である。
【図6】応力集中の状態を示す概略参考図である。
【図7】連接部材の変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図8】本発明の耐震用緩衝装置が取り付けられた橋梁の別の実施例を示す概略縦断面図である。
【図9】図8のC―C断面図である。
【図10】図8のD―D断面図である。
【図11】取付板の先端部の一部断面図である。
【図12】前記別の実施例の耐震用緩衝装置を横桁の設けられた橋桁に取り付ける工程を示す図である。
【図13】弾性材の取付板への取り付けの別の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1 耐震用緩衝装置
3,5 主桁
9 橋脚
11 連接部材
13 ブラケット
17,19 取付板
23 取付穴
25 筒体
27 内筒
29 外筒
31 弾性材
33 開口穴
35 取付ピン
41 第一リンク棒(第一リンク材)
42a ピン穴
45 第二リンク棒(第二リンク材)
51 連結軸
81 取付板
83 取付穴
85 U字具(第一リンク材)
87 第二リンク棒(第二リンク材)
89 補助リンク材(第二リンク材)
93 ピン穴
95 本体
97 接続具
111 横桁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材に第二部材を接続する構造であって、
筒状に形成され、その内周面と外周面との間の領域に、軸方向へ沿って開口穴が形成され、外周部が前記第一部材に保持される弾性材と、
この弾性材の内穴に通され、前記第二部材が保持される取付ピンと
を備えることを特徴とする応力緩和接続構造。
【請求項2】
前記弾性材は、円筒状で、前記開口穴としての貫通穴を周方向等間隔に複数形成されており、
この弾性材は、同軸状に配置された円筒状の内筒と外筒との間に隙間なく設けられ、
前記外筒が前記第一部材に保持される一方、前記内筒に通される前記取付ピンに前記第二部材が保持される
ことを特徴とする請求項1に記載の応力緩和接続構造。
【請求項3】
前記弾性材は、円筒状で、前記開口穴としての貫通穴を周方向等間隔に複数形成されており、
この弾性材は、前記第一部材に形成された取付穴にはめ込まれて保持され、その内穴またはそれに固定の内筒に前記取付ピンが通され、この取付ピンに前記第二部材が保持される
ことを特徴とする請求項1に記載の応力緩和接続構造。
【請求項4】
前記弾性材には、空隙率が25〜35%となるように前記貫通穴が形成された
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の応力緩和接続構造。
【請求項5】
連結しようとする二つの部材にそれぞれブラケットを設け、前記応力緩和接続構造を用いて両端部が前記ブラケットに接続されて、前記ブラケット間を連結する耐震用緩衝装置であって、
前記ブラケットは、水平に延出する取付板を有し、この取付板には上下方向へ沿って前記弾性材が設けられており、
前記弾性材の内穴に上下方向へ沿って設けられる前記取付ピンにより、前記各ブラケットの取付板に揺動可能に保持される一対の第一リンク材と、
この第一リンク材間に揺動可能に設けられる一以上の同種または複数種の第二リンク材と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の応力緩和接続構造を用いた耐震用緩衝装置。
【請求項6】
前記第二リンク材の少なくとも一つは、丸棒または角棒の本体と、この本体の両端部に取り付けられる接続具とからなり、
前記接続具には、前記本体の軸線に垂直方向に沿って軸穴が形成されており、前記本体は、隣接する第一リンク材または他の第二リンク材と前記軸穴に通される連結軸により揺動可能に保持される
ことを特徴とする請求項5に記載の耐震用緩衝装置。
【請求項7】
連結しようとする二つの部材にそれぞれブラケットを設け、前記応力緩和接続構造を用いて両端部が前記ブラケットに接続されて、前記ブラケット間を連結する耐震用緩衝装置であって、
前記ブラケットは、水平に延出する取付板を有し、この取付板には上下方向へ沿って軸線を配置して前記弾性材が設けられており、
左右一端部に上下方向へ沿ってピン穴が形成される一方、左右他端部に前後方向へ沿って軸穴が形成された一対の第一リンク棒と、
左右両端部に前後方向へ沿って軸穴が形成された第二リンク棒と、
左右方向外側に前記ピン穴を配置して、左右両端部に前記第一リンク棒を配置すると共に、その左右の第一リンク棒間に少なくとも一つの第二リンク棒を介在させて、各リンク棒を連なるよう配置した状態で、隣接する各リンク棒の対面する前記軸穴間に前後方向へ沿って設けられ、隣接するリンク棒同士を揺動可能に連結する連結軸とを備え、
左右両端部に配置された各第一リンク棒のピン穴には、前記弾性材の内穴に上下方向へ沿って設けられる前記取付ピンが通される
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の応力緩和接続構造を用いた耐震用緩衝装置。
【請求項8】
長手方向端部間に隙間を空けて突き合わせ配置された左右の主桁同士を連結することで、地震時の落橋を防止する耐震用緩衝装置であって、
前記ブラケットは、左右の前記主桁にそれぞれ設けられ、
前記各リンク棒は、長手方向両端部に板状部が設けられた棒材からなると共に、前記板状部の板面と垂直に前記軸穴または前記ピン穴が形成されており、
前記第一リンク棒間には、奇数本の第二リンク棒が設けられ、
各リンク棒は、前後互い違いに順次に配置されると共に、左右の第一リンク棒間を最大限に延ばした伸長状態よりも短縮した状態で、左右のブラケット間に保持される
ことを特徴とする請求項7に記載の耐震用緩衝装置。
【請求項9】
連結しようとする二つの部材にそれぞれブラケットを設け、前記応力緩和接続構造を用いて両端部が前記ブラケットに接続されて、前記ブラケット間を連結する耐震用緩衝装置であって、
前記ブラケットは、水平に延出する一枚の取付板を有し、この取付板には上下方向へ沿って軸線を配置して前記弾性材が設けられており、
開放両端部が上下に配置された状態において、その開放両端部に上下方向に沿ってピン穴が形成されたU字具と、
丸棒または角棒の本体と、この本体の両端部に取り付け可能とされ、前後方向へ沿って軸穴が形成された接続具とを有する第二リンク棒と、
複数のリンクが結合されたチェーンまたは単一のリンクからなる補助リンク材と、
この補助リンク材の一端部と前記第二リンク棒の軸穴とに、前後方向へ沿って設けられ、第二リンク棒と補助リンク材とを揺動可能に連結する連結軸とを備え、
左右両端部に配置された各U字具には、補助リンク材の他端部のリンクが引っ掛けられ、U字具のピン穴には、前記弾性材の内穴に上下方向へ沿って設けられる前記取付ピンが通される
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の応力緩和接続構造を用いた耐震用緩衝装置。
【請求項10】
前記ブラケットの取付板であって、
板面に垂直に貫通穴が形成されており、この貫通穴に前記弾性材がその軸線を板面に垂直にはめ込まれて設けられた
ことを特徴とする請求項5から請求項9までのいずれかに記載の耐震用緩衝装置に使用される取付板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−120285(P2007−120285A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141458(P2006−141458)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(390038830)昭和機械商事株式会社 (18)
【Fターム(参考)】