説明

急性伝染HIVエンベロープ・サイン

本発明は、一般的に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に、そして特に、患者においてHIVに対する免疫応答を誘導する方法に、そしてこうした方法で使用するのに適した免疫原に関する。本発明はまた、診断試験キットおよび該キットを用いる方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年3月27日出願の米国仮出願第60/907,259号から優先権を請求し、該出願の全内容は、本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、米国衛生研究所によって授与される助成金番号A10678501のもとに米国政府の援助を受けて作成された。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
技術分野
本発明は、一般的に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に、そして特に、患者においてHIVに対する免疫応答を誘導する方法に、そしてこうした方法で使用するのに適した免疫原に関する。本発明はまた、診断試験キットおよび該キットを用いる方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
HIVワクチンを開発するために、ウイルス送達は最も困難な問題の1つであり続けている(Gaschenら, Science 296:2354(2002))。HIV−1エンベロープに対する抗体は、感染前に前もって高レベルで存在した場合、そして抗体が曝露免疫不全ウイルス株に対して特異性を有する場合に、防御性であることが示されてきている(Mascolaら, Nat. Med. 6:207−210(2000); Mascolaら, J. Virology 73:4009−4018(1999))。慢性HIV感染被験体におけるウイルス多様性は非常に多様であるが、HIV−1伝染後のウイルス多様性は減少する(Zhangら, J. Virol. 67:33456−3356(1993); Zhuら, Science 261:1179−1181(1993); Ritolaら, J. Virol. 78:11208−11218(2004))。ドナーにおける稀な変異体がレシピエントに選択的に移動することもありうる(Wolinskyら, Science 255:1134−1137(2000))。
【0004】
急性HIV感染において、gagに比較して、HIV−1エンベロープにおいては、不釣り合いにより大きい多様性の喪失があり、伝染事象中に、envが仲介するウイルス選択があることが示唆される(Zhangら, J. Virol. 67:33456−3356(1993); Zhuら, Science 261:1179−1181(1993))。最近のデータによって、急性HIV感染中に、短くされた可変ループを持つ中和感受性envが選択的に伝染することが示されてきている(Derdeynら, Science 303:2019−2022(2004))。SIV急性感染中、B細胞が枯渇すると、SIV感染の制御が防止されることもまた示されてきている(Millerら, J. Virology e pub Feb. 28, 2007)。
【0005】
本発明は、少なくとも部分的に、達成された場合、HIVに対する有効なワクチンを生じうる、ワクチン設計基準の同定から生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gaschenら, Science 296:2354(2002)
【非特許文献2】Mascolaら, Nat. Med. 6:207−210(2000)
【非特許文献3】Mascolaら, J. Virology 73:4009−4018(1999)
【非特許文献4】Zhangら, J. Virol. 67:33456−3356(1993)
【非特許文献5】Zhuら, Science 261:1179−1181(1993)
【非特許文献6】Ritolaら, J. Virol. 78:11208−11218(2004)
【非特許文献7】Wolinskyら, Science 255:1134−1137(2000)
【非特許文献8】Derdeynら, Science 303:2019−2022(2004)
【非特許文献9】Millerら, J. Virology e pub Feb. 28, 2007
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一般的に、HIVに関する。本発明の特定の側面は、患者において、HIVに対する免疫応答を誘導する方法に、そしてこうした方法で使用するのに適した免疫原に関する。本発明のさらなる特定の側面は、診断試験キットに、そして該キットを用いる方法に関する。
【0008】
本発明の目的および利点は、以下の説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】患者コンセンサス100ブートストラップのMLツリー。
【図2】SGA由来エンベロープクローン。
【図3】ハミング距離頻度(hamming distance frequencies)のZ20ヒストグラム。
【図4】均質(homogeneous)患者1012。
【図5】均質患者700010058。
【図6】不均質(heterogeneous)患者Z18。
【図7】不均質患者SC33。
【図8】不均質患者。
【図9】73人の不均質患者。
【図10】27人の患者は、複雑な多ピーク分布を有し、〜15%が不均質感染を示唆するハミング距離を有する。
【図11】SGA由来機能性エンベロープクローン。
【図12】相互情報サイン:各垂直線は、1人の人に相当し、得られた配列数を高さによって示す。各位におけるアミノ酸の破壊を色によって示す。11位は慢性においてより可変であり、そしてPおよびNを許容する。
【図13】シグナルペプチドにおける11位。
【図14】NNSSG_E_KMEKG。
【図15A】急性伝染サイン。
【図15B】急性伝染サイン。
【図15C】急性伝染サイン。
【図15D】急性伝染サイン。
【図15E】急性伝染サイン。
【図15F】急性伝染サイン。
【図15G】急性伝染サイン。
【図15H】急性伝染サイン。
【図15I】急性伝染サイン。
【図15J】急性伝染サイン。
【図15K】急性伝染サイン。
【図15L】急性伝染サイン。
【図15M】急性伝染サイン。
【図15N】急性伝染サイン。
【図15O】急性伝染サイン。
【図15P】急性伝染サイン。
【図15Q】急性伝染サイン。
【図15R】急性伝染サイン。
【図15S】急性伝染サイン。
【図15T】急性伝染サイン。
【図15U】急性伝染サイン。
【図15V】急性伝染サイン。
【図15W】急性伝染サイン。
【図15X】急性伝染サイン。
【図15Y】急性伝染サイン。
【図15Z】急性伝染サイン。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、本明細書記載(特に以下の実施例を参照されたい)の伝染サインを含有する伝染ウイルス由来のHIV Envおよびワクチン免疫原として該サインを用いる方法に関する。本発明はさらに、診断試験において診断ターゲットとして用いるための、示す感染サインを含有する伝染ウイルス由来のHIV Envに関する。さらに、本発明は、コンセンサスEnv内に取り込まれたHIV Env伝染サイン(すなわち伝染ウイルス配列サインのアミノ酸を、それ以外はM群コンセンサスであるかまたはサブタイプコンセンサスであるEnvの配列内に取り込んでもよい)に関する。さらに、本発明は、HIV伝染ウイルスコンセンサスEnv(伝染ウイルスサインを含む)に、そして免疫原として該Envを用いる方法に関する。さらに、本発明は、HIV伝染ウイルスコンセンサスEnv(伝染ウイルスサインを含む)に、そして試験のための診断ターゲットとして該Envを用いる方法に関する。
【0011】
本発明は、少なくとも部分的に、一連のHIV−1急性および初期伝染患者で行われた研究から生じる。これらの患者由来のエンベロープ配列を、慢性感染患者の対照群と比較した。伝染ウイルスにおいて、伝染の隘路が見出されてきており、患者の75%では、1つのウイルス種が伝染した証拠が、そして患者の約15%では、多数の株が伝染した証拠がある(Envにおける伝染サインが、どのウイルスが伝染するかに関与すると考えられる)。伝染ウイルスに特徴的であるが、慢性HIV株では特徴的でない伝染株エンベロープ・サインの同定が始まっている。本明細書に記載するのは、2つの初期伝染Envサイン、ならびにこれらのサインおよび伝染HIV−1株データベースを用いて、HIV−1ワクチン開発のために有効なHIV−1エンベロープ免疫原を設計する方法である。
【0012】
以下の基準を満たすワクチンは、HIV伝染を効率的に阻害すると予期されうる:
1.保存される機能性伝染エンベロープ三量体エピトープに結合する抗体の産生を誘導し;
2.数時間から数日以内に感染に応答しうるB細胞集団による抗体産生を誘導し;
3.粘膜表面で抗体産生を誘導し;
4.伝染部位で局所的に高力価の抗体を誘導し;そして
5.大規模なアポトーシスまたはアポトーシス仲介性免疫抑制を予防するかまたは制限する。
【0013】
一般の当業者に周知の方法を用いて、本発明の免疫原を化学的に合成し、そして精製することも可能である。また、周知の組換えDNA技術によって免疫原を合成してもよい。本発明の免疫原をコードする核酸を、例えばDNAワクチンの構成要素として用いてもよく、ここでコード配列は、裸のDNAとして投与されるか、または例えば免疫原をコードするミニ遺伝子がウイルスベクター中に存在してもよい。コード配列は、例えば、複製または非複製アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、弱毒化結核菌(mycobacterium tuberculosis)ベクター、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette Guerin)(BCG)ベクター、ワクシニアまたは修飾ワクシニアアンカラ(MVA)ベクター、別のポックスウイルスベクター、組換えポリオおよび他の腸管ウイルスベクター、サルモネラ属(Salmonella)種細菌ベクター、赤痢菌属(Shigella)種細菌ベクター、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス(VEE)ベクター、セムリキ森林ウイルスベクター、またはタバコモザイクウイルスベクター中に存在してもよい。コード配列はまた、例えばCMVプロモーターなどの活性プロモーターを含むDNAプラスミドとして発現されてもよい。また、他の生存ベクターを用いて、本発明の配列を発現してもよい。好ましくはヒト細胞における発現を最適化するコドンおよびプロモーターを用いて、免疫原をコードする核酸の細胞内に導入することによって、患者自身の細胞において、本発明の免疫原の発現を誘導してもよい。DNAワクチンを作製し、そして用いる方法の例は、例えば、米国特許第5,580,859号、第5,589,466号、および第5,703,055号に開示される。
【0014】
本発明には、免疫学的に有効な量の本発明の免疫原、または該免疫原をコードする核酸配列を、薬学的に許容されうる送達系中に含む組成物が含まれる。免疫不全ウイルス感染の予防および/または治療のために、該組成物を用いてもよい。アジュバント(例えばミョウバン、AS021(GSK由来)オリゴCpG、MF59またはEmulsigen)、乳化剤、薬学的に許容されうるキャリアーまたはワクチン組成物中でルーチンに提供される他の成分を用いて、本発明の組成物を配合してもよい。最適な配合物は、一般の当業者によって容易に設計可能であり、そしてこれには、即時放出および/または持続放出用の、そして全身免疫の誘導および/または局所粘膜免疫の誘導用の配合物が含まれてもよい(例えば配合物を鼻内投与用に設計してもよい)。皮下、鼻内、直腸内、膣内、経口、筋内、または他の非経口もしくは経腸経路、あるいはその組み合わせを含む、任意の好適な経路によって、本組成物を投与してもよい。免疫応答を誘導するのに十分な量で、例えば単一用量または多数用量として、免疫原を投与してもよい。最適免疫スケジュールは、一般の当業者によって容易に決定可能であり、そして患者、組成物および求める効果で多様でありうる。
【0015】
本発明の組成物および投与措置の例には、例えば、抗体のためのDNAプライム組換え水疱性口内炎(Vesicular stomatitis)ウイルス・ブーストおよび組換えエンベロープ・タンパク質ブースト、またはDNAプライム組換えアデノウイルス・ブーストおよびエンベロープ・タンパク質ブーストとして発現される、コンセンサスもしくはモザイクgag遺伝子、およびコンセンサスもしくはモザイクnef遺伝子、およびコンセンサスもしくはモザイクpol遺伝子、および伝染サインを含むコンセンサスEnvもしくは伝染サインを含むモザイクEnv、または伝染サインを含む野生型伝染ウイルスEnv、あるいは抗体誘導のみのため、アジュバント中のタンパク質として組換え体エンベロープのみが含まれる(米国出願第10/572,638号およびPCT/US2006/032907を参照されたい)。
【0016】
本発明は、本発明の免疫原両方および/または該免疫原をコードする核酸および/または上述のベクター中のミニ遺伝子として発現される免疫原の直接の使用を意図する。例えば、免疫原をコードするミニ遺伝子を初回刺激および/またはブーストとして用いてもよい。
【0017】
本開示を読むと、全エンベロープ遺伝子を用いてもよいし、またはその部分を(すなわちミニ遺伝子として)用いてもよいことが理解されるであろう。発現されたタンパク質の場合、タンパク質サブユニットを用いてもよい。
【0018】
本発明にしたがって、HIV−1に対する防御抗体の誘導を達成するため、HIVワクチン設計において、以下を用いてもよい:
1.以下の実施例に示す伝染サインを含有する野生型伝染HIV−1株由来のHIV env構築物での免疫。
【0019】
2. CONS(Liaoら, Virology 353:268−82(2006))、あるいはより新しいm群コンセンサス、2003年CONT、またはCONA 2003、CONB 2003、またはCONC 2003などのサブタイプコンセンサスEnvなどの慢性HIV−1配列から発展している、コンセンサスHIV−1 Env内へのこれらの伝染サインの取り込み。ロスアラモスHIV配列データベース由来の2003年より後の配列から得られる、これらのコンセンサス配列のより後の型を用いてもよい。他のサブタイプ・コンセンサス遺伝子、例えばクレードAE_01、AG組換え体、G、F等由来のものもまた用いてもよい。
【0020】
3.個々の患者由来のコンセンサス配列のみに基づく伝染単離体envコンセンサスの発展。これは伝染HIVデータベースに非B配列を付加することを必要とする−これらの配列は、HIV AIDSワクチン免疫学センターによって生成されている。
【0021】
4.実施例に記載する任意のEnvの発現は、これらが最も天然のコンホメーションにあることを必要としうる。したがって、ウイルス様粒子中のgp140C(切断突然変異体)F(融合ドメイン欠失)型として、gp140C型として、gp160型として(Sailajaら, Virology Feb 2, 2007 e pub.)、またはgp140のC末端でGCN4三量体化モチーフを用いた安定化三量体として(Pancera, J. Virol. 79:9954−9969(2005))、Envを発現してもよい。
【0022】
5.あるいは、伝染サインがEnv安定化中和エピトープ上で与えられるならば、安定化エピトープを含有するEnv部分をサブユニットとして発現し、そして免疫に用いてもよい。
【0023】
6.免疫系のT細胞アームによるEnv認識は、HIVワクチン設計に重要である(Weaverら, J. Virol. 80:6745−56(2006))。したがって、これらのサインまたはこれらのサインを含有するコンセンサスEnvを含む野生型伝染Envは、特定のT細胞エピトープのT細胞認識を安定化し、そしてT細胞ワクチン設計に好適でありうる。
【0024】
7. T細胞は、HIVゲノム全体の免疫原性エピトープを認識し(Letvinら, Nat. Med. 9:861−866(2003))、そしてしたがって、伝染ウイルスの全ゲノム配列を伝染HIVデータベース内に包含すると、HIVゲノム全体に由来するT細胞エピトープを含む完全HIVワクチンの設計が促進されそして可能になりうる。
【0025】
上記に示すように、本発明はまた、診断ターゲットおよび診断試験にも関する。例えば、伝染ウイルスサインを含有するエンベロープを、哺乳動物細胞の一過性または安定トランスフェクションによって発現してもよい(または例えば組換えワクシニアウイルスタンパク質として発現してもよい)。該タンパク質を、ELISA、Luminexビーズ試験、または他の診断試験において用いて、HIV感染の最初期段階での患者由来の生物学的試料において、伝染ウイルスに対する抗体を検出してもよい。
【0026】
本発明の特定の側面は、以下の限定されない実施例により詳細に記載されうる。(2006年12月22日出願の米国出願第10/572,638号、および2006年8月23日出願の国際特許出願第PCT/US2006/032907号もまた参照されたい。)
【実施例】
【0027】
HIV−1伝染ウイルスのエンベロープの性質決定は、エンベロープに基づく有効なワクチンの設計に非常に重要である。192人の個体由来の4260のBクレードenv配列をコドン並列させ、過剰突然変異(hypermutated)配列または100塩基より大きいギャップを含む配列を削除した。これらの配列を試験、検証および初期セットに分けた。頑強なサブタイプ内Bクレードを探すため、セットの患者コンセンサス配列に基づいて、尤度ツリー(likelihood tree)を生成した:特定の試料、特に米国およびトリニダード由来のCHAVI試料は、ツリー中で、別個の地理的系譜を有した(図1)。
【0028】
試験セットは、検出可能なHIV特異的免疫を含まない26人のFeibig II、急性試料(Feibigら, AIDS 17:1871−1875(2003))、抗体+であった14人のFeibig III、急性HIV感染(AHI)試料、および40人のマッチする慢性患者からなる。試料の第二のセットを検証セット用に用いた:再び、HIV特異的免疫前の26人のFiebig I−II AHI試料、抗体陽性であった14人のFeibig III−IV AHI、およびロスアラモス・データベース由来の38人のBクレード慢性患者(Baileyら, J. Virol. 80:4758−62(2006))。
【0029】
図2は、2人のAHI患者由来の単一ゲノム増幅エンベロープクローンを示す。患者あたりおよそ40のクローンを生成し、そしてこれらは非常に近い相同性を示し、クローン中に数アミノ酸の相違しかなかった。
【0030】
初期感染におけるウイルス進化をモデリングするために、所定の世代数に関して予期される最大距離を計算するため、そして進化のシミュレーションを算出するため、以下の仮定を用いた:
・各世代で、各細胞は6つの細胞を感染させる
・突然変異率はμ=3.4x10−5
・世代時間は2日間
・ハミング距離(HD)頻度はポワソン分布にしたがい、λ=NBxμであり、式中、NBは配列の長さ(塩基数)である
図3〜9は、これらの分析の結果を示す。
【0031】
「均質患者」に関しては、73/100試料がコンピューターシミュレーションに基づくモデルとよく適合可能であり、そして単一ウイルスが感染を達成するのと一致する:
−ハミング距離分布において観察される単一ピーク
−比較的均質である
−Fiebig病期に基づいた、感染からの概算日数以内のMRAからの概算日数
しかし、急性感染においては「選択的スイープ」の徴候が見出された:
−多くの試料が、感染からの概算時間より新しい、概算される最も新しい共通祖先(MRA)を有する
・19/21の病期IV〜VI試料が、3週間前より新しい、最も新しい共通祖先(MRA)を有する。
【0032】
・6/11の病期III試料が、2週間前より新しいMRAを有する。
【0033】
−いくつかの試料は、残りの多様性を考慮すると予期されない、大量の同一配列を有する。
【0034】
ここで提示される問題は、MRAまでの概算日数がしばしば、Fiebig病期を考慮して感染から予期される日数未満であるのはなぜかである。2つの説明があると考えられる。モデルとなる仮定が、MRAからの日数の一貫した過小評価を生じるバイアスを生じさせるか、または選択的スイープが実在しうる;すなわち、急性感染中は、ウイルスターゲット細胞特異性、新規組織の浸潤、またはHIV特異的免疫応答前の生得的免疫のような圧から生じる、異なる系譜の連続増殖が一般的でありうる。
【0035】
試料中で観察される最大ハミング距離を考慮して、このレベルの多様性を得るために共有祖先から進化するのに何日が必要であるかに関する概算を行った:
世代段階あたり、10%の極端な選択および90%の中性ドリフトを仮定し(恣意的)、そして
2,500〜3,500の範囲のNBに関して世代あたりに予期されるドリフトを算出する。
【0036】
各患者に関して、観察される多様性を達成するのに必要な最小日数の概算を行う。この概算がFiebig病期と適合しない場合、この症例は、1つより多い変異体が伝染している不均質感染の優れた候補である:〜15/100症例。図10は、これらの方法を用いた不均質感染を示す。
【0037】
図11は、ワクチン開発で使用可能な初期急性HIV感染患者に由来する、単一ゲノム増幅機能性エンベロープクローンを示す。
【0038】
伝染ウイルスサインに関するこの伝染ウイルスデータセットの分析
陽性関連は、試験セットにおけるq<0.50、および検証セットにおけるp<0.05を必要とする。初期分析のため、2つの分析法を用いた:
−アミノ酸位、ならびに急性(または急性+初期)配列および慢性配列状態間の相互情報、ならびに
−急性または慢性伝染状態と関連する患者コンセンサス・ツリー内の変化パターン。
【0039】
相互情報分析(Korberら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7176−7180(1993); Korberら, AIDS Res. Human Retrovirol. 8:1549−1560(1992))のため、各位のアミノ酸および急性または慢性の分類間の相互情報の計算を行った。モンテカルロ統計を用いた:
−開始前に患者あたり等しい数の配列を有するように置換を用いて、各患者をリサンプリングし、
−10,000ランダム化で患者分類をシャッフルして、各場合にランダム化データの相互情報を再計算して、そして
−クレード内の分類をシャッフルして関連性(非独立)試料を少なくとも部分的に計上する。
【0040】
最後に、q値の決定を行って、多数の試験に取り組む。図12、13は、HIV−1 vpu遺伝子ともまた重複する、HIV−1 Envのシグナル配列において、これらの方法を用いて伝染Envを示す。図13に示すように、この伝染サインは、HIV Env切断速度に影響を及ぼし、そしてしたがって、伝染ウイルスの表面上により多くのEnvを提供しうると仮定される。あるいは、この突然変異は、Vpuが仲介するCD4下方調節をHIV−1が達成する能力を改変しうる(Butticazら, J. Virol. 1502−1505(2007))。
【0041】
第二に、各人由来のコンセンサス配列のみを用いて、最大尤度ツリー分析を使用し、これは、慢性または急性配列まで伸長したツリー中の枝に沿って特徴的なアミノ酸変化があるかどうかを尋ねた(Bhattacharyaら, Science 315:1583−1586(2007)を参照されたい)。図14は、HIV−1 EnvのV1領域における伝染サインを示す。このサインは、伝染HIVビリオンの中和感度に影響を及ぼすことも可能であり、そしてまた、CCR5共受容体への結合に関して、HIV V3ループの曝露に影響を及ぼし、したがって伝染HIV株を伝染により「適合」させうると仮定される。
【0042】
gp41がgp120と会合すると考えられる部位に近いC1領域で、別のサインが見出された: ENVTE_N_FNMWKアミノ酸N@Env gp160中の108位。この配列は、急性伝染HIVにおいてNになる。この突然変異は、gp41−gp120相互作用の安定化に影響を及ぼしうる。
【0043】
これらの分析の有用性
伝染単離体データセットを用いて行うことが可能なさらなる分析には:
コンセンサスだけでなく、損なわれていない(intact)配列セットに関する完全MLツリー補正関連分析(Bhattacharyaら, Science 315:1583−1586(2007)の適応);
重要なタンパク質−タンパク質相互作用:
CCR5結合、
gp120/gp41相互作用、および
交差反応性中和抗体結合部位
に関与することが知られる非連続アミノ酸の組み合わせの分析;
タンパク質表面上で近接するアミノ酸の組み合わせの分析;
リスク要因、地理的位置、サンプリングの年などの、潜在的な交絡要因に関して統計的に調節する共変数分析;および
選択の役割、多様化速度、および不均質対均質急性感染試料、隘路の性質、ならびに感染初期の組換えの影響を定義する患者内研究
が含まれる。
【0044】
上記に引用するすべての文書および他の情報供給源は、その全体が本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において、免疫応答を誘導する方法であって、前記哺乳動物に、前記誘導を達成するのに十分な量で、伝染HIVエンベロープ(Env)配列サインを含む免疫原を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
前記伝染HIV Env配列サインがコンセンサスEnv中に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コンセンサスEnvがM群コンセンサスEnvである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記伝染HIV Env配列サインが、HIV Env切断速度に影響を及ぼすか、またはVpuが仲介するCD4下方調節をHIVが達成する能力を改変する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記伝染HIV Env配列サインがHIV Envのシグナル配列中にある、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記伝染HIV Env配列サインがHIV−EnvのV1領域中にある、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記伝染HIV Env配列サインが、伝染HIVビリオンの中和感受性またはCCRS共受容体への結合のためのHIV V3ループの曝露に影響を及ぼす、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記伝染HIV Env配列サインがHIV ENVのC1領域中にある、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記伝染HIV Env配列サインが、gp41−gp120相互作用の安定性に影響を及ぼす、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
伝染HIV Env配列サインおよびキャリアーの混合物を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図15F】
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【図15G】
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【図15H】
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【図15I】
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【図15J】
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【図15K】
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【図15L】
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【図15O】
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【図15P】
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【図15Q】
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【図15R】
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【図15S】
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【図15T】
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【図15U】
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【図15V】
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【図15W】
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【図15X】
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【図15Y】
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【図15Z】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図15M】
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【図15N】
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【公表番号】特表2010−530356(P2010−530356A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500974(P2010−500974)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/003965
【国際公開番号】WO2008/118470
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【出願人】(591101777)デューク ユニバーシティ (10)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【出願人】(509269849)ザ・ユニバーシティ・オブ・アラバマ・アット・バーミンガム・リサーチ・ファウンデーション (1)
【出願人】(500459410)ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (16)
【Fターム(参考)】