説明

急硬化材および高浸透性注入材

【課題】混合前の各成分液では硬化時間が遅く、それぞれを混合することにより一定時間経過後に強度発現を生じ、初期強度および長期強度発現性が良好であり、長時間にわたって地盤中へ高い浸透性を有し、反応後は地盤を安定させる急硬化材、および当該急硬化材を含む成分A液と主硬化成分を含む成分B液を混合してなる注入材を提供すること。
【解決手段】12CaO・7Al23の含有率が50重量%以上であるカルシウムアルミネートと石膏とを3/7〜7/3の重量比率で混合した混合物100重量部に対し、アルミン酸ナトリウムを0.5〜5重量部混合した粉体からなることを特徴とする急硬化材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルやダムなどの構造物周辺の不安定な地盤を強化安定させる地盤注入材に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルやダムなどの構造物を付設する場合、周囲の地盤が不安定である場合には、地盤を強化した後に構造物の施工を行う。地盤の強化には、硬化成分を含む液体状のものを地盤中へ注入し強化安定を図る。
【0003】
注入材として使用される材料は、有機系と無機系のもの材料があり、有機系では、アクリルアミド、尿素ホルマリン、ウレタン等があり、短時間で強度発現する。しかしながら有機系の材料は、有害な有機成分が微量溶出し、地下水へ汚染することが懸念されている。
【0004】
無機系の材料は、セメントを主成分とするスラリーと、急硬化材を成分とするスラリーを注入箇所まで圧送し、地盤に浸透注入させる。この注入材には、ある程度浸透した後に、硬化が始まることが求められている。この場合、各スラリーのみではほとんど硬化せず、もしくは数時間から数日硬化せず、両材料を混合することにより、すみやかにもしくは数分から数時間後にゲル化し、硬化が開始される材料が求められる。
急硬化材には、珪酸ナトリウム、カルシウムアルミネートが用いられている。急硬化材に珪酸ナトリウムを使用した場合には、初期強度発現性は高いが、長期強度発現性が悪く、ゲルタイムの調整が困難である。また、地盤が高いアルカリ性になることに加え、ナトリウムが溶出する為、長期の耐久性も悪い。
また、普通ポルトランドセメント等を使用したセメントスラリーと急硬化材を使用する注入材は、砂質土に注入する場合、セメント粒子が概して大きいため砂粒子間を通ることができず、また、急結成分と併用すると水和反応が著しく速くなって浸透中に硬化し易く、これが目詰まりして、地盤中への浸透性が著しく劣る。
【0005】
特許文献1には、カルシウムアルミネートを主成分とするセメント用の急結材が記載されている。主としてモルタルコンクリートの急結材であり、注入材に用するものではない。この急結材を水セメント比が大きい注入材として使用した場合には、急結性能が不十分である。
特許文献2には、カルシウムアルミネート、石膏およびスケール発生防止剤を含有する注入材が記載されている。この成分を含有するA液と、セメントを含むB液を混合し、地盤中へ注入することで急結させ、地盤を固化する。スケール発生防止剤としてミョウバン、アルミニウム塩や鉄塩が挙げられている。特許文献3には、カルシウムアルミネート、石膏、硫酸アルミニウムを含有する注入材が記載されており、特許文献2と同様である。これらの引用文献2及び3に記載されているアルミニウム塩や鉄塩等が存在すると、A液単独の可使時間としては長くなるが、A液のカルシウムアルミネートと石膏とが水和反応するため、時間経過につれゲルタイムが短くなり、強度が低下する等、長時間にわたって性能を保持できない。
【特許文献1】特許第3205672号公報
【特許文献2】特開2001−164249号公報
【特許文献3】特開2001−164248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、混合前の各成分液では硬化時間が遅く、それぞれを混合することにより一定時間経過後に強度発現を生じ、初期強度および長期強度発現性が良好であり、長時間にわたって地盤中へ高い浸透性を有し、反応後は地盤を安定させる急硬化材、および当該急硬化材を含む成分A液と主硬化成分を含む成分B液を混合してなる注入材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究した結果、12CaO・7Al23のを特定量含有するカルシウムアルミネートと石膏とを一定比で配合し、かつさらにアルミン酸ナトリウムを一定量混合した成分A液と、スラグを含む主硬化材と分散剤と水からなる成分B液を注入箇所で混合し注入することで、浸透途中で硬化して目詰まりを起こし難く、高い浸透能力を有し、且つ初期から長期にわたって良好な強度発現を持つ注入材を見出した。また、製造後数10分経過後でもゲル化時間が変化しないことも見出した。
【0008】
即ち、本発明は、12CaO・7Al23の含有率が50重量%以上であるカルシウムアルミネートと石膏とを3/7〜7/3の重量比率で混合した混合物100重量部に対し、アルミン酸ナトリウムを0.5〜5重量部混合した粉体からなることを特徴とする急硬化材を提供するものである。
また、本発明は、上記急硬化材と遅延剤と水からなる成分A液と、少なくともスラグを含む主硬化材と分散剤と水からなる成分B液を混合してなることを特徴とする注入材を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、急硬化材を含む成分A液と、スラグ等の潜在水硬性物質を硬化成分とする主硬化材を含む成分B液が、それぞれ単独の状態では硬化反応は著しく遅く、また強度も低いが、両液を混合することにより急硬化成分による硬化材の硬化が適度な急速性を呈する反応となることに加え、注入材中の硬化成分が凝集し難いため、注入浸透中に目詰まりが起こり難く、地盤深部まで満遍なく浸透できかつ一定時間経過後早期に強度発現を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の急硬化材は、カルシウムアルミネートと石膏とアルミン酸ナトリウムを混合した粉体からなる。さらに、当該急硬化材は、スラグ含有物を硬化成分とする注入材用であることが好ましい。
本発明の急硬化材に用いるカルシウムアルミネートは、化学成分としてのCaOとAl23の含有モル比が1.5〜2、好ましくは1.6〜1.8の混合物又は組成物を、例えば約1300℃以上の温度で焼成し、望ましくは徐冷することによって得ることができる。その主な鉱物組成としてはCaO・Al23(以下、CA)、12CaO・7Al23(以下、C12A7)、3CaO・Al23(以下、C3A)等の1種又は2種以上を有し、特に12CaO・7Al23の含有率が50重量%以上含むものである。
ここでカルシウムアルミネートに含まれるCaOとAl23の含有モル比が1.5〜2から外れると、結晶質として比較的安定なC12A7成分が形成され難くなる。また、冷却過程で急冷すると非晶質相が支配的に形成されるので好ましくない。
【0011】
該カルシウムアルミネートの鉱物組成としての各成分の含有割合は、成分A液と成分B液混合後も高い浸透性を有する注入材を得るために、C12A7成分が50重量%以上が好ましく、さらに60重量%以上、特に75重量%以上が好ましい。該カルシウムアルミネート中に、C12A7成分が50重量%以上含まれると、1日程度の初期強度発現性に優れ、かつ長期にわたって強度発現する。
なお、他のCA成分やC3A成分等の含有率は特に限定されないが、該カルシウムアルミネート中に、CA成分の含有率が高くなると初期強度が悪くなり、C3A成分の含有率が高くなると長期強度が悪くなる。また、非晶質の含有率が高くなると、非晶質は反応活性が高い為、水と混合した後の液の安定性が悪くなる。さらに、C3A成分および非晶質の含有率が高くなると、成分A液と成分B液を混合後直ちに反応が開始されるため、瞬結化したり、反応生成物による粘性の上昇および注入材の粒子径の増大し、浸透性が著しく低下する。また、カルシウムアルミネートを粉体のままで長期間放置すると空気中の水分と反応するため性能が劣化して保存期間が短くなる。
【0012】
本発明の急硬化材に用いる石膏は、特に限定されず、無水石こう、半水石こう、ニ水石こうから選ばれる1種又2種以上を用いることができる。
本発明の急硬化材に用いるカルシウムアルミネートと石膏の混合比率は3/7〜7/3が好ましく、4/6〜7/3がより好ましい。この範囲内であればエトリンガイトの生成に必要十分な量となり、注入材として反応後の強度特性も良好なものとなる。石膏とカルシウムアルミネートを含む成分A液と水硬性成分を含む成分B液を混練すると急速に反応し、エトリンガイト等を生成し、早期のゲル化を実現させる。
【0013】
また、カルシウムアルミネートと石膏の混合物は、浸透性を良好なものとする為、粉体のブレーン比表面積が5000〜10000cm2/gの範囲内であることが好ましく、さらに6000〜9000cm2/gの範囲内であることが好ましい。5000cm2/gを下回ると注入材粒子が地盤中への間隙を通過することができず、また10000cm2/gを超えると反応活性が高くなるため、スラリーA液作製直後およびスラリーA液とB液混合後には直ちに反応が開始され、反応生成物による粘性の上昇および注入材の粒子径の増大のため、施工性及び浸透性が著しく低下する。
【0014】
本発明の急硬化材に用いるアルミン酸ナトリウムは、石膏とカルシウムアルミネートの反応を抑制することができる。石膏とカルシウムアルミネートと水の混合物は、このスラリー自身でエトリンガイトを生成するため、混合直後から反応を開始し、セメントとの反応有効成分が時間と共に減少していく。このスラリーにアルミン酸ナトリウムを混合すると、アルミニウムイオンとナトリウムイオンの作用によりこの反応を抑制することが出来る。このためセメントとの硬化反応有効成分が長時間にわたり残存する。
【0015】
アルミン酸ナトリウムの添加量は、カルシウムアルミネートと石膏の混合物100重量部に対して0.5〜5重量部添加するのが好ましく、0.75〜3重量部がより好ましい。0.5重量部より少ないと、A液単独の反応が急速に進むためセメントとの硬化成分が減少し、セメントスラリーと混合した注入材の強度特性が悪くなる。5重量部よりも多いと、硬化遅延となるため、短期の強度発現が悪くなる。
【0016】
本発明における注入材は、上記急硬化材と遅延剤と水からなる成分A液と、少なくともスラグを含んだ主硬化材と分散剤と水からなる成分B液を混合してなる。
それぞれ単独の状態では硬化反応は著しく遅く、また強度も低いが、両液を混合することにより一定時間経過後急硬化材が硬化材の硬化を急速に反応させ、早期に強度発現を得ることができる。
さらに、少なくとも一日強度で1N/mm2以上必要であり、2液混合後のゲルタイムは施工状況に応じた所望の時間を確保できれば良い。
【0017】
本発明における注入材の特性として、2液混合後目的の注入範囲に浸透後地盤中へ留まり、そこで強度発現する必要がある。2液混合後に一定時間経過後急速に反応して可塑状態となり、このときの可塑状態になるまでの時間は2液の成分、注入する圧力や注入範囲等によって設定されるが、初期の設定した可塑状態までの時間が各液作製直後に2液混合した場合と時間経過して2液混合した場合でも変化しないことが好ましい。この時間の差が大きすぎるとすると地盤を改良する範囲が変り、安定して十分な補強ができず、また、砂地盤の間隙に注入されるため強度としてはこれら軟弱地盤を強化する必要がある。一方で、2液混合後、作業工程中に急速に反応しすぎて可塑すると注入作業が困難となるため、一定時間経過後急速に反応して可塑状態になることが好ましい。
【0018】
本発明に用いる成分A液は、上記急硬化材と遅延剤と水からなる。上記急硬化材100重量部に対して水を100〜1000重量部添加するものが好ましい。添加する水が上記100重量部を下回ると、スラリーの粘性が上昇し、施工性が著しく低下する。一方で1000重量部超えると、水硬性成分に対する硬化促進の為の有効成分が少なくなる為、注入した注入材が未硬化のまま流冒したり、初期から長期にわたって強度発現が低迷することがある。
【0019】
本発明に用いる遅延剤は、種類について特に限定されないが、例えばモルタルやコンクリートで使用できるもので良く、遅延剤の種類としてクエン酸、グルコン酸、酒石酸等のカルボン酸やグルコース、マルトース、デキストリン等の多糖類、二糖類、単糖類等を1種または2種以上混合して使用することができる。遅延剤は、急硬化材のスラリーと水硬性成分のスラリーを混合した後の急速な反応を抑制し、また急硬化材のスラリーの安定性を高くすることができる。この急速な反応は液状から可塑状態とり、浸透中の注入材はそこで地盤中に留まる。
本発明に用いる遅延剤は、添加量の増加とともにゲルタイムは長くなるが、注入方法によって添加量を決定する。特に、遅延剤の添加量は、上記急硬化材100重量部に対して0.01〜5重量部添加し、より好ましくは0.05〜3重量部添加する。0.01重量部未満ではスラリーの安定性が悪くなり、時間経過と共にセメントに対する急硬化材の有効成分が減少し、水硬性成分のスラリー混合後の強度発現性は低いものとなる5重量部をこえると、初期強度が著しく低下する。
【0020】
本発明に用いる成分B液は、主硬化材と分散剤(減水剤)と水からなるものであることが好ましい。主硬化材には、少なくとも潜在水硬性物質であるスラグを含む主硬化成分を含み、さらに施工性や浸透性を高めるためにモルタルやコンクリート用の混和材・剤を添加してもよい。
一般的に、スラグ以外の主硬化成分としては、水と反応して硬化する水硬性物質を挙げることが出来る。主硬化成分は、C12A7を含有するカルシウムアルミネートと石膏がエトリンガイト等へ急速に反応するための刺激材であるとともに、それ自身が水和反応し強度発現する。水硬性物質として普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメントを使用することができるが、スラグを含ませずにポルトランドセメント等のみを使用した場合、シルト質のような土粒子の小さい地盤中への注入は困難となる。また、これらポルトランドセメント等の粒子径を小さくすると地盤中に広い範囲で浸透させることができるが、セメントのみでは粒子同士が凝集しやすく、凝集によって浸透性を阻害する。また普通ポルトランドセメントやそれよりも水和活性の高い水硬性物質のみの使用では注入浸透中に凝結し易く、これが地盤浸透時に目詰まりを起こし、深部まで注入材が浸透し難くなることがある。よって、本発明では、微粒子でも凝集が起こりにくく、潜在水硬性物質であるスラグを含有する主硬化成分を使用する。
【0021】
本発明のスラグを含む主硬化成分におけるスラグは、セメント100重量部に対し、350〜900重量部配合するのが好ましい。
本発明に用いるスラグの種類は特に限定されず、例えば高炉スラグ、下水溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰溶融スラグ、転炉スラグ、脱リンスラグ等が挙げられ、これらのスラグ微粉末を用いることができる。
本発明に用いる主硬化成分のブレーン比表面積は、8000〜12000cm2/gが好ましく、8000cm2/g未満では、浸透性が著しく低下する。また、12000cm2/gを超えるとスラリーの粘性が高くなるため、圧送性、浸透性が低下する。
【0022】
本発明に用いる成分B液に含まれる水の量は、主硬化成分100重量部に対して60〜1000重量部、さらに100〜500重量部が好ましい。添加する水が60重量部未満では、粘性が高くなり浸透が困難となる。一方で1000重量部を超えると、急硬化材と混合後の硬化強度が著しく悪くなる。
【0023】
B液に含まれる分散剤(減水剤)は、特に限定されず、例えば、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む減水剤等が挙げられる。
分散剤は地盤への浸透性に支障をきたさないようにするため、セメント100重量部に対し、0.05〜5重量部、さらに0.5〜3重量部添加するのが好ましい。
また、主硬化材は、主硬化成分と共に、モルタルやコンクリートで使用可能な他の混和材・剤を適宜含むものであっても良い。このような混和材・剤として、例えばシリカフューム等のポゾラン等の潜在水硬性物質、石粉、樹脂エマルション、膨張材、起泡剤、発泡剤、防錆剤、顔料、繊維、撥水剤、防水材、消泡剤、硬化促進剤、粉塵低減剤、収縮低減剤、増粘剤、水中不分離性混和剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を本発明による効果を阻害しない範囲で使用することができる。
【0024】
成分A液と成分B液の混合比率は、所望のゲルタイムを確保し、且つ良好な施工性を得る上で、容積比で25:75〜75:25が好ましく、40:60〜60:40がより好ましい。
【0025】
成分A液と成分B液の混合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、それぞれのミキサーに混練、調整した後に、成分A液と成分B液を別々に圧送し、Y字管で混合する方法や二重管を用い内管と外管に別々に圧送し二重管の先端部で合流させる方法等いずれの方法も使用できる。即ち、単管ロッド工法、単管ストレーナ工法、二重管単相ストレーナ工法、及び二重管複相ストレーナ工法等の現在使用されている注入工法に本発明の注入材が使用できる。これらの中では、単管ロッド工法や単相ストレーナ工法に比べ、均一な改良体を形成できる点で、二重管単相ストレーナ工法又は二重管複相ストレーナ工法を使用することが好ましい。
【実施例】
【0026】
使用した材料である、主成分(カルシウムアルミネート及び石膏)と添加剤を含む急硬化材と遅延剤と水からなる成分A液(A液ともいう)および少なくともスラグを含む主硬化材と分散剤と水からなる成分B液(B液ともいう)を表1に示す。
なお、ゲルタイムを調整するため、遅延剤として、混和材を成分A液に添加した。また、主硬化材は、セメント100重量部に対してスラグを重量比で400重量部混合したものをボールミルで粉砕し,所定の粒度となるように調整したものを使用した。
【0027】
カルシウムアルミネートは、CaCO3とAl23を混合粉砕して電気炉で1400℃で焼成して、徐冷したものを用いた。この焼成徐冷物は、X線回折の結果、結晶質C12A7含有率が75%、非晶質含有率が25%であった。また、焼成徐冷物に添加する焼成非晶質(非晶質100%)は、1400℃から水で急冷したものを使用した。
なお、焼成徐冷物中のC12A7と非晶質の含有率は、C12A7含有量100%の粉末と非晶質含有量100%の粉末を一定の比率で混合してものを用いて検量線を作成して本実施例で用いたカルシウムアルミネート中の含有量を測定した。
【0028】
【表1】

【0029】
(実施例1)
急硬化材を含むA液及び主硬化材を含むB液を同量混合してなるスラリーについて測定した。測定は、A液を作製直後にB液と混合したのもの(A作製直後)と、作製したA液を30分練り置きさせた後にB液と混合したもの(A作製後30分経過)について実施した。
各試料を作製後、ゲル化するまでの時間をゲルタイムとして測定し、さらに混合した液をモールドに充填し、所定期間湿空養生にて養生し、JIS A 1216の「土の一軸圧縮試験方法」で材齢1日後の一軸圧縮強さを測定した。
急硬化材を含むA液の配合を表2に示し、主硬化材を含むB液の配合を表3に示す。主硬化材として、ブレーン比表面積が8120cm2/gの物を使用した。
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
実施例1の結果を表4に示す。
本発明における注入材は、ゲルタイムが確保でき、材齢1日の一軸圧縮強さが1N/mm2以上認められるものを良好とした。A液作製直後にB液を混合したものとA液作製後30分経過後にB液を混合したものとの差が少ないものほどより良好である。
【0034】
C12A7含有率が約50%以上のカルシウムアルミネートと石膏を混合したもの100重量部に対してアルミン酸ナトリウムを0.5〜5重量部添加すると、混練直後から混練30経過後までほぼ性能が変らない、もしくは劣化の割合が小さい。
しかしながら、カルシウムアルミネート中のC12A7含有率が50%を下回ると、混練後30分経過した時のゲルタイムが大幅に短くなる。また他の添加剤を使用すると、混練後時間経過すると性能が変化する。
【0035】
(実施例2)
表5および表6に示す配合で浸透性の試験を実施した。浸透性の試験は、直径50mmの下部に小穴のあいたビニール袋に珪砂(6号)を20cm詰め、上部からA液B液を混合した注入材100mLを注ぎ込み、浸透状態を観察した。
【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【0038】
【表7】

【0039】
実施例2の結果を表7に示す。C12A7含有率が50%以上のカルシウムアルミネートの急硬化材(配合p)とブレーン比表面積が6250〜12000cm2/gの主硬化材(配合B〜E)を混合した注入材で浸透性が見られ、ブレーン比表面積が8120〜10000cm2/gでより高い浸透性が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
12CaO・7Al23の含有率が50重量%以上であるカルシウムアルミネートと石膏とを3/7〜7/3の重量比率で混合した混合物100重量部に対し、アルミン酸ナトリウムを0.5〜5重量部混合した粉体からなることを特徴とする急硬化材。
【請求項2】
スラグ含有物を主硬化材とする注入材用である請求項1記載の急硬化材。
【請求項3】
請求項1記載の急硬化材と遅延剤と水からなる成分A液と、少なくともスラグを含む主硬化材と分散剤と水からなる成分B液を混合してなることを特徴とする注入材。
【請求項4】
主硬化材のブレーン比表面積が8000cm2/g以上であることを特徴とする請求項3記載の注入材。

【公開番号】特開2007−137745(P2007−137745A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337069(P2005−337069)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】