説明

急結剤、吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法

【課題】トンネル等の吹付け作業で発生する粉塵の発生を抑え、高い急結性が得られ、強度発現性低下を解消する急結剤の提供。
【解決手段】CaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類、CaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類、CaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類、及び硫酸塩類を含有してなる急結剤。該急結剤と、セメントコンクリートとを含有してなる吹付け材料。セメントコンクリートがセメントとフライアッシュを含有してもよい。急結剤と、セメントコンクリートとを合流混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法。該吹付け材料をエア搬送して吹付けることを特徴とする吹付け工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルや法面等において露出した地山面へ吹付ける吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等露出した地山の崩落を防止するために急結剤をコンクリートに配合した急結コンクリートの吹付工法が行われている(特許文献1)。この工法は、通常、掘削工事現場に設置した、セメント、骨材、及び水の計量混合プラントで吹付コンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付コンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。急結剤としては、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩とアルカリ炭酸塩等との混合物、並びに、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ炭酸塩等の混合物や、カルシウムアルミネートと3CaO・SiOとの混合物等が知られている(特許文献2、3、4、5)。これらの急結剤は、セメントの凝結を促進させる働きがあり、いずれもセメントコンクリートと混合して地山面に吹付けられる。
【0003】
急結剤の添加方法は、通常、空気輸送による粉体混合のために、粉塵量が多くなるおそれがあった。そのため、作業環境が悪化する場合があり、吹付け時には保護眼鏡や防塵マスクなどを着用して作業する必要があり、粉塵量のより少ない工法が求められていた。粉塵発生量が少ない工法として、急結剤をスラリー化してセメントコンクリートに添加混合した後、更に、アルカリ金属アルミン酸塩の溶液を別途圧送し、混合し、吹付け施工する方法が提案されている(特許文献6)。この方法は、高アルカリの液体を使用するため、取り扱いにくく、吹付け時には保護眼鏡や手袋等が必要となり、作業性が低下するという課題があった。
【0004】
これに対して、急結剤をスラリー化し、かつ、セメントコンクリートにミョウバン類を配合することにより、作業環境を改善する急結施工方法が提案されている(特許文献7)。近年、作業性、粉塵低減効果を更に良くし、工期短縮の面で、急結性を向上する急結施工方法が提案されている(特許文献8)。
【0005】
しかしながら、近年、廃棄物を再利用する廃棄物循環型社会構築の気運が高まっており、フライアッシュの使用が「資源の有効な利用の促進に関する法律」(平成三年法律第四十八号、指定副産物としての石炭灰の有効利用の促進)等の形で推奨されている。大量のフライアッシュを混合した混合セメントにおいても、急結性や初期強度発現性の優れる材料の開発が待たれている。更に、湧水や地山面が悪化した状況下において急結剤に対する要求は益々高まっており、従来のセメントコンクリート向け急結剤の要求性能である、初期凝結時間の確保、粉塵低減効果についても更なる向上が求められている。
【0006】
本発明者は、前記課題や要求を種々検討した結果、特定の急結剤を使用して吹付け施工を行うことにより、前記課題や要求が解決できるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【0007】
【特許文献1】特公昭60−4149号公報
【特許文献2】特開昭64−051351号公報
【特許文献3】特公昭56−27457号公報
【特許文献4】特開昭61−026538号公報
【特許文献5】特開昭63−210050号公報
【特許文献6】特開平5−139804号公報
【特許文献7】特開平5−097491号公報
【特許文献8】特開2003−81664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、CaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類、CaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類、CaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類、及び硫酸塩類を含有してなる急結剤であり、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類、及び硫酸塩類を含有してなる急結剤であり、該急結剤と、セメントコンクリートとを含有してなる吹付け材料であり、セメントコンクリートがセメントとフライアッシュを含有してなる該吹付け材料であり、セメントコンクリートが、セメント100質量部とフライアッシュ50〜150質量部を含有してなる該吹付け材料であり、セメントが、普通ポルトランドセメントである該吹付け材料であり、セメントコンクリート中の水が、セメントとフライアッシュの合計100質量部に対して60〜90質量部である該吹付け材料であり、急結剤が、セメントとフライアッシュの合計100部に対して15部以上含有してなる該吹付け材料であり、該急結剤と、セメントコンクリートとを合流混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法であり、該吹付け材料をエア搬送して吹付けることを特徴とする吹付け工法であり、CaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類、CaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類、CaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類を別個にブレーン比表面積3,000cm/g以上に粉砕した後に、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類、及び硫酸塩類を混合してなることを特徴とする急結剤の製造方法であり、該製造方法により製造してなる急結剤と、セメントコンクリートとを合流混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法であり、セメントコンクリートがセメントとフライアッシュを含有してなる該吹付け工法であり、セメントコンクリート中の水が、セメントとフライアッシュの合計100質量部に対して60〜90質量部である該吹付け工法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、トンネル等の吹付け作業で発生する粉塵の発生を抑え、高い急結性が得られ、強度発現性低下を解消する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。セメントコンクリートは、セメントペースト、モルタル、コンクリートを総称する。
【0011】
本発明で使用するカルシウムアルミネート類は、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融等の熱処理をして得られる。カルシウムアルミネート類は、CaOとAlとを主たる成分とし、水和活性を有する物質の総称である。カルシウムアルミネート類は、CaOやAlの一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物であっても良く、CaOとAlとを主成分とするものに、これらが固溶した物質であっても良い。カルシウムアルミネート類の粒度は、急結性や初期強度発現性の点で、ブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)3,000cm/g以上が好ましく、5,000cm/g以上がより好ましい。3,000cm/g未満では、急結剤とセメントコンクリートを混合した吹付け材料の急結性や初期強度発現性が低下する場合がある。
【0012】
カルシウムアルミネート類は、非晶質、結晶質いずれも使用可能であり、非晶質のものが好ましい。本発明では、カルシウムアルミネート類のCaO/Alモル比が理想量になるよう調整し、混合、粉砕したものを電気炉で溶融し、急冷したものを用いる。
【0013】
CaO/Alモル比測定は、蛍光X線で行う。CaO/Alモル比測定は、急冷したカルシウムアルミネート類を再度溶融し、ガラスビード(徐冷したガラス)を調整することによって、測定する。
【0014】
本発明で使用するカルシウムアルミネート類は、3種類のカルシウムアルミネート類A〜Cを併用する。カルシウムアルミネート類AのCaO/Alモル比は、2.00〜2.60であり、2.15〜2.45がより好ましく、2.20〜2.40が最も好ましい。カルシウムアルミネート類BのCaO/Alモル比は、1.50〜1.95であり、1.55〜1.85がより好ましく、1.60〜1.80が最も好ましい。カルシウムアルミネート類CのCaO/Alモル比は、1.20〜1.45であり、1.25〜1.35がより好ましく、1.27〜1.33が最も好ましい。
【0015】
本発明のカルシウムアルミネート類は、CaO/Alモル比によってカルシウムアルミネート類A〜Cの3種類に分け、カルシウムアルミネート類A〜Cを個別にブレーン値3,000cm/g以上に粉砕することが好ましい。その後、粉砕されたカルシウムアルミネート類A、カルシウムアルミネート類B、カルシウムアルミネート類C、硫酸塩類を混合することが好ましい。カルシウムアルミネート類をモル比によってカルシウムアルミネート類A〜Cの3種類に分けることなく、一括混合し、粉砕すると、CaO/Alモル比の大きいカルシウムアルミネート類が粉砕されにくいので、吹付け材料の急結性や初期強度発現性が低下する場合がある。
【0016】
例えば、CaO/Alモル比2.00〜2.60のカルシウムアルミネート類は吹付け後の初期の強度発現性の向上といった効果がある。例えば、CaO/Alモル比1.50〜1.95のカルシウムアルミネート類は吹付け後の強度発現性の向上といった効果がある。例えば、CaO/Alモル比1.20〜1.45のカルシウムアルミネート類はコンクリートの長期強度発現性の向上、フライアッシュのポゾラン反応の促進といった効果がある。
【0017】
本発明で使用するカルシウムアルミネート類の好ましい混合比(質量比)としては、CaO/Alモル比が2.00〜2.60のカルシウムアルミネート類をAとし、CaO/Alモル比がCaO/Alモル比が1.50〜1.95のカルシウムアルミネート類をBとし、CaO/Alモル比が1.20〜1.45のカルシウムアルミネート類をCとした場合、A:B:C=1:1.5〜2.5:1.5〜2.5の混合比が好ましく、1:1.8〜2.3:1.8〜2.3の混合比がより好ましく、1:2:2の混合比が最も好ましい。カルシウムアルミネート類Aが該混合比から外れると吹付けの付着性状が低下し、セメントやフライアッシュへの反応を阻害し、長期強度が不足する場合がある。カルシウムアルミネート類Bが該混合比から外れると初期の強度性状が低下する場合がある。カルシウムアルミネート類Cが該混合比から外れると長期の強度性状が低下する場合がある。
【0018】
本発明で使用する硫酸塩類は、急結性吹付けセメントコンクリートの凝結性や強度発現性を向上するものである。硫酸塩類としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、ミョウバン類、及び石膏類等が挙げられる。使用する目的に応じてこれらのうちの一種又は二種以上の併用することが可能である。これらの中では、初期強度発現性や急結性が十分に得られ、現場施工に適している点で、石膏が好ましい。石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられる。
【0019】
硫酸塩類の使用量は、カルシウムアルミネート類100部に対して、50〜150部が好ましく、80〜120部がより好ましい。20部未満では、急結性吹付けセメントコンクリートの施工性や凝結性が低下し、長期強度発現性を促進しにくい場合があり、50部を超えると初期凝結が遅れ、初期強度発現性が低下する場合がある。
【0020】
本発明で使用する急結剤は、必要に応じて、更に、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、オキシカルボン酸類、保水性物質、減水剤、水を使用することも可能である。
【0021】
急結剤の使用量は、セメントとフライアッシュの合計100部に対して、10部以上が好ましく、15部以上がより好ましく、20部以上が最も好ましい。10部未満では急結性吹付けセメントコンクリートの初期凝結、強度発現性を促進しにくい場合がある。急結剤の使用量は、30部以下が好ましく、25部以下がより好ましい。30部を超えると強度性状やコストの点で、好ましくない場合がある。
【0022】
本発明で使用するセメントとしては、通常市販されている普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメントや、これら各種ポルトランドセメントに高炉スラグ等を混合した各種混合セメントなどが挙げられる。これらを微粉末化して使用することも可能である。これらの中では、普通ポルトランドセメントが好ましい。
【0023】
本発明で使用するフライアッシュは、石炭火力発電所で微粉炭を燃焼する際に溶融された灰分を冷却した球状粒子を主成分とする粉末であり、これらを電気集塵機等で捕集した副産物である。フライアッシュの中では、品質にばらつきが少ない点で、JIS A 6201に規定される品質のものが好ましく、II種相当品以上の品質のものがより好ましい。
【0024】
フライアッシュの比重は、2.0〜2.5が好ましく、2.1〜2.4がより好ましい。フライアッシュのブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)は3,000cm/g以上が好ましく、3,500cm/g以上がより好ましい。フライアッシュの45μmふるい残分は、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。フライアッシュの比重、ブレーン値、45μmふるい残分が上記範囲外では、強度発現性が不足する場合がある。
【0025】
フライアッシュの使用量は、セメント100部に対して、50〜150部が好ましく、70〜120部がより好ましい。50部未満では粉塵量やリバウンド率が多くなる場合や、フライアッシュを大量消費しない点で、好ましくない場合があり、150部を超えると強度発現性が不足する場合がある。
【0026】
本発明で使用するセメントコンクリートはセメントとフライアッシュと骨材とを含有するものである。ここで、骨材としては、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましい。骨材の最大寸法は吹付けができれば特に限定されるものではない。細骨材としては、砕砂、川砂、山砂、海砂、石灰砂、及び珪砂等が挙げられる。粗骨材としては、砕石、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が挙げられる。
【0027】
本発明で使用する水の量は、強度発現性、施工性の点で、セメントとフライアッシュの合計100部に対して、50〜95部が好ましく、60〜90部がより好ましい。60部未満では、施工性が低下し、フライアッシュの大量使用が難しいため、好ましくない場合があり、90部を超えるとセメントコンクリートの強度発現性の点で、好ましくない場合がある。
【0028】
本発明の急結剤を用いた吹付け工法においては、従来の吹付け設備等が使用可能である。例えば、吹付けセメントコンクリートの圧送にはシンテック社製、商品名「MKW−25SMT」等が、急結剤の圧送には急結剤圧送装置「ナトムクリート」等がそれぞれ使用可能である。
【0029】
本発明の急結剤を用いた吹付け工法としては、要求される物性、経済性、及び施工性等に応じた種々の吹付け工法が可能である。本発明の急結剤を用いた吹付け工法としては、乾式吹付け工法、湿式吹付け工法、いずれの工法も可能である。
【0030】
乾式吹付け工法としては、例えば、セメント、フライアッシュ、細骨材、及び粗骨材を加えて混合したドライコンクリートを圧縮空気により搬送し、途中にY字管を設け、その一方から急結剤添加装置により圧送した急結剤や、水ポンプにより圧送した水を合流混合して乾式急結性吹付けセメントコンクリートとしたものを吹付ける方法が挙げられる。
【0031】
湿式吹付け工法としては、例えば、セメント、フライアッシュ、細骨材、粗骨材、及び水を加えて混練し、ポンプ圧送し、途中にY字管を設け、その一方から急結剤供給装置により圧送した急結剤を合流混合して湿式吹付けコンクリートとしたものを吹付ける方法が挙げられる。
【0032】
本発明の急結剤を用いた吹付け工法においては、通常、吹付け圧力は0.2〜0.5MPaが好ましく、吹付け速度は4〜20m/hが好ましい。
【0033】
急結剤を圧送する圧送空気の圧力は、セメントコンクリートが急結剤の圧送管内に混入した時に圧送管内が閉塞しないように、セメントコンクリートの圧送圧力より0.01〜0.3MPa大きいことが好ましい。
【0034】
実験例1
CaO原料とAl原料からカルシウムアルミネート類を製造した。このカルシウムアルミネート類を混合し、表1に示す混合比からなるカルシウムアルミネート類を調製した。セメント100部とフライアッシュ100部からなる結合材を調製した。カルシウムアルミネート類100部と石膏100部からなる急結剤を調製した。砂/結合材比=3、水/結合材比=75%のモルタルを調製した。結合材100部に対して、急結剤を15部添加し、急結性モルタルとした。急結性モルタルの凝結時間と圧縮強度を測定した。結果を表1に併記した。
【0035】
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3,200cm/g、比重3.16
フライアッシュ:JISII種品、市販品、ブレーン値4,000cm/g、45μmふるい残分22%、比重2.30
細骨材:新潟県糸魚川市姫川水系川砂、表乾状態、比重2.62
CaO原料:生石灰、CaO含有量98%
Al原料:ボーキサイト、Al含有量84.54%
カルシウムアルミネート類A:CaO/Alモル比2.30、非晶質、ブレーン値6,500cm/g、カルシウムアルミネート類のCaO/Alモル比が特定の値になるように、CaO原料とAl原料を混合し、粉砕し、電気炉で溶融し、急冷したもの
カルシウムアルミネート類B:CaO/Alモル比1.70、非晶質、ブレーン値6,500cm/g、カルシウムアルミネート類のCaO/Alモル比が特定の値になるように、CaO原料とAl原料を混合し、粉砕し、電気炉で溶融し、急冷したもの
カルシウムアルミネート類C:CaO/Alモル比1.30、非晶質、ブレーン値6,500cm/g、カルシウムアルミネート類のCaO/Alモル比が特定の値になるように、CaO原料とAl原料を混合し、粉砕し、電気炉で溶融し、急冷したもの
石膏:市販無水石膏粉砕品、ブレーン値5,900cm/g
【0036】
<測定方法>
凝結時間:急結性モルタルを土木学会基準「吹付けコンクリート用急結剤品質規格(JSCED−102)」に準じて測定
圧縮強度:急結性モルタルをJIS R 5201に準じて測定
ブレーン値:JIS R5201の7.1(比表面積試験)に準じて測定
45μmふるい残分:JIS A6201の付属書1に準じて測定
【0037】
【表1】





【0038】
表1より、カルシウムアルミネート類において、混合比A:B:C=1:1.5〜2.5:1.5〜2.5の範囲を外れると、本発明の効果が得られない場合がある。CaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類Aを含有しない場合、凝結時間が遅い結果となり、吹付けができない状態になった。CaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類Aが少ない場合、凝結時間は向上するが、材齢1時間から材齢28日までの強度が低下した。CaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類Bが少ない場合、材齢1日まで強度発現が遅れた。CaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類Bが多い場合、長期強度が低下した。CaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類Cが少ない場合、凝結時間が早まるが、材齢28日になっても、圧縮強度が増進せず、セメントやフライアッシュの反応を促進できなかった。CaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類Cが多い場合、凝結時間や材齢3時間までの強度が低下した。
【0039】
実験例2
カルシウムアルミネート類A:カルシウムアルミネート類B:カルシウムアルミネート類Cの混合比が1:2:2であるカルシウムアルミネート類を使用し、セメント100部と表1に示す量のフライアッシュからなる結合材を調製したこと以外は、実験例1と同様に行った。フライアッシュを添加しないモルタルの水/セメント比は60%とした。結果を表2に併記した。
【0040】
【表2】





【0041】
表2より、本発明は、良好な強度発現性を示した。フライアッシュの使用量が、セメント100部に対して150部以下であれば、急結性吹付けコンクリートの一般規格である1日強度5N/mm、28日強度18N/mmを満足する結果が得られた。
【0042】
実験例3
カルシウムアルミネート類A:カルシウムアルミネート類B:カルシウムアルミネート類Cの混合比が1:2:2であるカルシウムアルミネート類を使用し、セメント100部と表1に示す量のフライアッシュからなる結合材を調製した。結合材360kg/m、細骨材1,075kg/m、粗骨材731kg/m、及び水202kg/mとして吹付けコンクリートを調製し、この吹付けコンクリートを吹付け圧力0.4MPa、吹付け速度10m/hの条件下で、コンクリート圧送機「MKW−25SMT」によりポンプ圧送した。一方、結合材100部に対して、15部の急結剤を、圧送圧力0.5MPaの条件下で、急結剤添加装置「ナトムクリート」を用いて空気圧送した。この急結剤をY字管の一方から吹付けコンクリートに混合し、急結性吹付けコンクリートとした。この急結性吹付けコンクリートについてコンクリート圧縮強度、リバウンド率、粉塵量を測定した。結果を表3に示した。
【0043】
<使用材料>
粗骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂利、表乾状態、比重2.64、最大寸法10mm
【0044】
<測定方法>
コンクリート圧縮強度:材齢1時間の圧縮強度は、幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から急結性吹付けコンクリートで被覆し、型枠の裏側よりピンを引き抜き、その時の引き抜き強度を求め、(圧縮強度)=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から圧縮強度を算出した。材齢1日以降の圧縮強度は、幅50cm×長さ50cm×厚さ20cmの型枠に急結性吹付けコンクリートを吹付け、採取した直径5cm×長さ10cmの供試体を20トン耐圧機で測定し、圧縮強度を求めた。
リバウンド率:急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、鉄板でアーチ状に作成した高さ3.5m、幅2.5mの模擬トンネルに吹付けた。その後、(リバウンド率)=(模擬トンネルに付着せずに落下した急結性吹付けコンクリートの量)/(模擬トンネルに吹付けた急結性吹付けコンクリートの量)×100(%)で算出した。
粉塵量:急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、模擬トンネルに吹付けた。その後、吹付け場所より3mの定位置で粉塵量を測定した。
【0045】
【表3】





【0046】
表3の結果より、本願発明は、粉塵量やリバウンド量を減少し、圧縮強度を満足した結果が得られた。フライアッシュが50〜150部であれば、更に、リバウンド量を減少し、圧縮強度を満足した結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の急結剤を用いることにより、フライアッシュを大量消費し、資源の有効な利用の促進に配慮でき、粉塵の発生量を少なくできる。更に、吹付け初期に高い強度が得られるために安全性も向上する。
【0048】
本発明の吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法を採用することによって、トンネル等の吹付け作業で発生する粉塵の発生を抑えて作業性を向上し、湧水や地山面が悪化した状況下においても、高い急結性が得られ、強度発現性低下を解消する効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類、CaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類、CaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類、及び硫酸塩類を含有してなる急結剤。
【請求項2】
ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類、及び硫酸塩類を含有してなる急結剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の急結剤と、セメントコンクリートとを含有してなる吹付け材料。
【請求項4】
セメントコンクリートがセメントとフライアッシュを含有してなる請求項3記載の吹付け材料。
【請求項5】
セメントコンクリートが、セメント100質量部とフライアッシュ50〜150質量部を含有してなる請求項3又は4記載の吹付け材料。
【請求項6】
セメントが、普通ポルトランドセメントである請求項3〜5のうちの1項記載の吹付け材料。
【請求項7】
セメントコンクリート中の水が、セメントとフライアッシュの合計100質量部に対して60〜90質量部である請求項3〜6のうちの1項記載の吹付け材料。
【請求項8】
急結剤が、セメントとフライアッシュの合計100部に対して15部以上含有してなる請求項3〜7のうちの1項記載の吹付け材料。
【請求項9】
請求項1又は2記載の急結剤と、セメントコンクリートとを合流混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法。
【請求項10】
請求項3〜8のうちの1項記載の吹付け材料をエア搬送して吹付けることを特徴とする吹付け工法。
【請求項11】
CaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類、CaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類、CaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類を別個にブレーン比表面積3,000cm/g以上に粉砕した後に、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が2.00〜2.60であるカルシウムアルミネート類、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が1.50〜1.95であるカルシウムアルミネート類、ブレーン比表面積が3,000cm/g以上でありCaO/Alモル比が1.20〜1.45であるカルシウムアルミネート類、及び硫酸塩類を混合してなることを特徴とする急結剤の製造方法。
【請求項12】
請求項11の製造方法により製造してなる急結剤と、セメントコンクリートとを合流混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法。
【請求項13】
セメントコンクリートがセメントとフライアッシュを含有してなる請求項11又は12記載の吹付け工法。
【請求項14】
セメントコンクリート中の水が、セメントとフライアッシュの合計100質量部に対して60〜90質量部である請求項11〜13のうちの1項記載の吹付け工法。

【公開番号】特開2011−219302(P2011−219302A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89631(P2010−89631)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】