説明

急結性コンクリートの吹付け方法及びそれに用いる吹付け装置

【課題】 粉塵低減効果や急結材とコンクリートの混合性が向上し、初期強度が増進し、吹付け時の閉塞によるトラブルを低減する急結性コンクリートの吹付け方法及びそれに用いる吹付け装置を提供する。
【解決手段】 混練したコンクリートを第一合流管1まで輸送し、第一合流管の枝管2から圧縮空気と水の混合物を供給して圧送コンクリートとし、該コンクリートを第二合流管3へ圧送するとともに、第二合流管の枝管4から急結材を圧送供給して急結性コンクリートとし、吹付けノズル5より吹付ける急結性コンクリートの吹付け方法、第一合流管の枝管2から供給される圧縮空気と水の混合物の圧力が0.1〜2MPaである該吹付け方法、第一合流管1と第二合流管3に供給する圧縮空気の総量が、大気圧換算値で0.5〜30m3/分である該吹付け方法、並びに、該吹付け方法で使用する吹付け装置を構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急結性コンクリートの吹付け方法及びそれに用いる吹付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削工事における地山の補強や、掘削面の安定化のためにコンクリートの吹付け方法が行われており、例えば、ピストンポンプなどにより送られるコンクリートを輸送する輸送管内に、コンプレッサーから送られる圧縮空気を供給し、コンクリートを空気輸送するとともに、急結材を供給してコンクリートと急結材を混合した後、吹付けノズルよりコンクリートを吹付ける方法が一般的に行われている。
【0003】
そして、コンクリートを、例えば、ピストンポンプにより輸送管を介し、合流管まで輸送し、該合流管の枝管に、コンプレッサーから送られる圧縮空気を供給し、該コンクリートを輸送管を介し合流管へ空気輸送するとともに、該合流管の枝管に急結材供給設備より空気輸送される急結材を供給してコンクリートと急結材を混合した後、輸送管内を輸送し吹付けノズルよりコンクリートを吹付け面に吹付ける方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、吹付け機から吹付けノズルにドライミックスコンクリートを圧送する、材料ホースの途中に連結された材料圧送管の外周部に、環状の急結材圧力調整タンクを取り付け、該急結材圧力調整タンクの直前部に、エア圧力調整タンクを取り付け、これら各タンクの前側面外方部から複数本の急結材添加管とエア圧送管を各々分岐せしめると共に、それらの管の先端部を上記材料圧送管に対して傾斜状態で接続し、該急結材添加管内に噴霧ノズルを設け、上記急結材圧力調整タンクとエア圧力調整タンクに各々急結材ホースとエアホースを接続した吹付けコンクリートにおける液状混和剤の添加装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、これらの吹付け方法は、第一合流管の枝管に圧縮空気のみを供給する方法であり、より粉塵低減効果の向上が望まれていた。
【0006】
さらに、管内を圧送するコンクリートと急結材に、水を供給して、粉体急結材とコンクリートを混合する吹付けコンクリートの施工方法が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、この吹付方法は、充分な粉塵低減効果が得られず、より粉塵低減効果の向上が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開2000−297600号公報
【特許文献2】特公平06−004981号公報
【特許文献3】特開2004−092211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、粉塵低減効果の向上である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、混練したコンクリートを第一合流管1まで輸送し、第一合流管の枝管2から圧縮空気と水の混合物を供給して圧送コンクリートとし、該コンクリートを第二合流管3へ圧送するとともに、第二合流管の枝管4から急結材を圧送供給して急結性コンクリートとし、吹付けノズル5より吹付ける急結性コンクリートの吹付け方法であり、混練したコンクリートを第一輸送管6を介して第一合流管1まで輸送し、第一合流管の枝管2から圧縮空気と水の混合物を供給して圧送コンクリートとし、該コンクリートを第二輸送管7を介して第二合流管3へ圧送するとともに、第二合流管の枝管4から急結材を供給して急結性コンクリートし、第三輸送管8を介して吹付ノズル5より吹付ける該吹付け方法であり、第一合流管の枝管2から供給される圧縮空気と水の混合物の圧力が0.1〜2MPaである該吹付け方法であり、第一合流管1と第二合流管3に供給する圧縮空気の総量が、大気圧換算値で0.5〜30m3/分である該吹付け方法であり、該吹付け方法で使用する吹付け装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明法によれば、粉塵低減効果が向上し、また、急結材とコンクリートの混合性が向上し、初期強度が増進するという効果を奏するものであり、圧縮空気と混合する水の量を調整することにより、吹付け時の閉塞によるトラブルを低減するといった効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、混練したコンクリートを、輸送管や合流管を介して急結材と混合し、吹付ける吹付け方法であり、該方法で使用する吹付け装置である。
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0012】
図1は、本発明法で用いるコンクリートの吹付装置の一構成例を示したものである。
【0013】
本発明で、コンクリートは、例えば、市販のミキサーにより練り混ぜた後、ピストンポンプに供給し、ピストンポンプにより第一輸送管6内を輸送し、第一合流管1まで輸送する。
本発明で使用するコンクリートは、通常のコンクリートが使用可能であり特に限定されるものではない。
また、鋼繊維を含有したコンクリートも使用可能である。
コンクリート中のセメント量は特に限定されるものではないが、通常、セメント単位量で600kg/m3以下である。
【0014】
第一合流管1で、輸送したコンクリートと、圧縮空気と水の混合物を合流混合して圧送コンクリートとする。
【0015】
圧縮空気と水の混合物は、第一合流管1でコンクリートと合流する。
【0016】
圧縮空気の供給量は特に限定されるものではないが、通常、4〜14m3/分が好ましい。4m3/分未満ではコンクリートの圧送性が悪く、施工性が悪くなる場合があり、14m3/分を超えると圧縮空気による発塵が増え、粉塵量が増加する場合がある。
【0017】
水の供給量は、コンクリートの圧送量により変化し一義的に決定することはできないが、1〜50リットル/分が好ましい。1リットル/分未満では水を併用する効果がない場合があり、50リットル/分を超えると水が多すぎて強度が低下する場合がある。
【0018】
本発明のコンクリートの吹付け方法においては、第一合流管の枝管2に供給される圧縮空気と水の混合物の圧力は、0.1〜2MPaが好ましく、0.3〜0.8MPaがより好ましい。0.1MPa未満では圧が低く添加されやすすぎるためエアが多く入り粉じんが多くなる場合があり、20MPaを超えると圧が高過ぎるため添加されにくく効果が出にくい場合がある。
【0019】
第一合流管1において、圧縮空気と水の混合物が供給された圧送コンクリートを、圧縮空気の膨張とその流れにより、第二輸送管7内を速度を速め、分散しながら第二合流管3まで圧送する。
【0020】
第二合流管3で、圧送された圧送コンクリートと、圧送された急結材とを合流混合して急結性コンクリートとする。
【0021】
急結材は、急結材供給装置(図示せず)により、急結材輸送配管を介し第二合流管の枝管4から第二合流管3まで圧送される。
急結材輸送配管としては、例えば、口径が3/4B又は1Bのホースを用いることが可能である。
【0022】
急結材としては、公知の粉状体、液状、又はスラリー状のもの、例えば、カルシウムアルミネート類や、アルミン酸ナトリウムや硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、またはこれらと炭酸塩とを主成分としたもの、さらに、これらの混合物等が挙げられる。
急結材の量はコンクリート中のセメント100部に対し、15部以下が好ましい。15部を超えて使用しても、その添加効果が得られない場合がある。
【0023】
急結材が添加された急結性コンクリートは、第三輸送管8内を圧縮空気の膨張とその流れにより急結材と混合されながら圧送され、吹付けノズル5より排出され、吹付け面である地山等へ吹付けられる。
【0024】
本発明においては、第一合流管1と第二合流管3に供給する圧縮空気の総量は、大気圧換算値で8〜18m3/分が好ましく、9〜13m3/分がより好ましい。8m3/分未満では空気量が不足し、吹付け面に対するコンクリートの圧密が不足し、強度が得にくい場合があり、また、コンクリートの圧送性が悪くなり、配管内でコンクリートが閉塞したりする場合があり、18m3/分を超えると圧送空気量が過剰なため、リバウンドや粉塵が多くなる場合がある。
【0025】
本発明において使用する輸送管の材質は特に限定されるものではないが、通常、ゴム又は鉄が使用される。
また、合流管の材質は特に限定されるものではないが、通常、鉄が使用される。
【0026】
本発明においては、第二輸送管7として、内径が55〜105mm、長さが12m以下のものを用い、第三輸送管8として、内径が55〜105mm、長さが6m以下のものを用いることが好ましく、第二輸送管7として、長さが7m以下のものを用い、第三輸送管8として、長さが3m以下のものを用いることがより好ましい。第二輸送管7と第三輸送管8の内径と長さがこの範囲外であると、第一合流管の枝管2に供給される圧縮空気の圧力や、圧縮空気の総量を適正な範囲に調整することが困難となる場合がある。例えば、第二輸送管7と第三輸送管8の内径が55mmより小さいと、コンクリートの輸送抵抗が大き過ぎて、特に流動性の低いコンクリートを用いると輸送管内で閉塞する場合があり、比較的柔らかい、流動性の高いコンクリートしか用いることができなくなる場合があり、逆に、第二輸送管7や第三輸送管8の内径が105mmより大きいと、輸送管中の空気の体積率が大きくなり、急結材のロスが大きくなると共に、多量の圧縮空気が必要となり、コンプレッサーを大型化する必要を生じ装置コストがアップする。また、第二輸送管7の長さが12mを超えると、コンクリートの輸送抵抗が大きくなり、特に流動性の低いコンクリートを用いると輸送管内で閉塞する場合があり、比較的柔らかい流動性の高いコンクリートしか用いることができなくなる場合があり、第三輸送管8の長さが6mを超えると、コンクリートの輸送抵抗が大きくなると共に、吹付けノズル5からコンクリートが排出されるまでの時間が長くなることによりコンクリートの硬化が進み、吹付けノズル5内でコンクリートが閉塞しやすくなる場合がある。
【0027】
なお、第二輸送管7や第三輸送管8は、場合によっては省略することも可能であり、第一合流管1、第二合流管3、及び吹付けノズル5をそれぞれ直結することも可能である。
【0028】
本発明に使用されるピストンポンプは、市販ものが使用でき、代表的な例としてはコンクリートの吐出能力が最大で25m3/h程度で、ピストンの速度によりコンクリートの吐出量を調整できるものが好ましい。
【0029】
吹付けノズル5は、一般にその口径が出口部に進むに従い絞られるテーパ管が使用され、そのテーパ角は0.5度程度あれば良い。また、吹付けノズル5の出口部の口径は50mm程度のものが好適である。
【実施例】
【0030】
以下、実験例により本発明を詳細に説明する。
【0031】
実験例1
図1に示すコンクリートの吹付け装置を組んだ。
なお、第二輸送管7と第三輸送管8の内径は65mmとし、管の長さは、第一輸送管6は15m、第二輸送管7は3m、及び第三輸送管8は1mとした。
また、吹付けノズル5は、入口径65mmから出口径50mmに絞ったものを使用した。
吹付けに使用したコンクリートは、各材料の単位量をセメント400kg/m3 、水200kg/m3、及び細骨材率63%とし、さらに、減水剤をセメント100部に対して、1.0部使用した。
このコンクリートのスランプ値は18cmであった。
急結材はコンクリート中のセメント100部に対して、9部使用し、第一合流管の枝管2へ供給する水の量は5リットル/分とした。
表1に示す圧縮空気と水の混合物の圧力、圧縮空気の総量で、コンクリートの吹付けを行い、粉塵量、リバウンド率、及び圧縮強度を測定し、輸送性と仕上げ面の評価を行った。結果を表1に併記する。
なお、比較のため、圧縮空気と水の混合物の代わりに圧縮空気のみを供給した場合、第一合流管に混合物の代わりに急結材を、第二合流管の枝管に急結材の代わりに水を5リットル/分供給した比較例も同様に行った。結果を表1に併記する。
【0032】
<使用材料>
セメント :普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積値3,200cm2/g、比重3.16
細骨材 :新潟県姫川産川砂、表面水率4.0%、比重2.61
粗骨材 :新潟県姫川産川砂利、表乾状態、比重2.65、最大寸法10mm
急結材 :カルシウムアルミネート系急結材、市販品
減水剤 :ポリカルボン酸系高性能減水剤、市販品
【0033】
<評価方法>
粉塵量 :吹付け10分後に吹付け場所より3mの定位置で測定
リバウンド率:調製した急結性コンクリートを10m3/hの吹付け速度で1m3吹付けし、吹付け終了後、付着せずに床面に敷いたビニールシートに落下したコンクリートの量を測定し、リバウンド率=(吹付けの際に付着せずに落下したコンクリートの質量)/(吹付けに使用したコンクリートの総質量)×100(%)の式から算出
輸送性 :コンクリートの輸送状況を観察した。合流管や輸送管が詰まらない場合を○、詰まり気味でありコンクリートが断続的に排出される場合を△、合流管や輸送管が詰まって吹付けができない場合を×とした。
仕上げ面 :吹付けコンクリートの仕上げ面、コンクリートの厚さが均一で平滑な場合を○、コンクリートの仕上げ面が凸凹している場合を×とした。
圧縮強度 :材齢1時間と1日の圧縮強度は、幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から吹付けコンクリートで被覆し、型枠の裏面よりピンを引き抜き、そのときの引き抜き強度を求め、圧縮強度=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から算出、また、材齢7日と28日の圧縮強度は、幅50cm×長さ50cm×厚さ20cmの型枠にコンクリートを吹付け、採取した直径5cm×長さ10cmの供試体を20トン耐圧機で測定。
【0034】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るコンクリートの吹付け装置の一構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 第一合流管
2 第一合流管の枝管
3 第二合流管
4 第二合流管の枝管
5 吹付けノズル
6 第一輸送管
7 第二輸送管
8 第三輸送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練したコンクリートを第一合流管1まで輸送し、第一合流管の枝管2から圧縮空気と水の混合物を供給して圧送コンクリートとし、該コンクリートを第二合流管3へ圧送するとともに、第二合流管の枝管4から急結材を圧送供給して急結性コンクリートとし、吹付けノズル5より吹付けることを特徴とする急結性コンクリートの吹付け方法。
【請求項2】
混練したコンクリートを第一輸送管6を介して第一合流管1まで輸送し、第一合流管の枝管2から圧縮空気と水の混合物を供給して圧送コンクリートとし、該コンクリートを第二輸送管7を介して第二合流管3へ圧送するとともに、第二合流管の枝管4から急結材を供給して急結性コンクリートし、第三輸送管8を介して吹付ノズル5より吹付けることを特徴とする急結性コンクリートの吹付け方法。
【請求項3】
第一合流管の枝管2から供給される圧縮空気と水の混合物の圧力が0.1〜2MPaであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の急結性コンクリートの吹付け方法。
【請求項4】
第一合流管1と第二合流管3に供給する圧縮空気の総量が、大気圧換算値で0.5〜30m3/分であることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちの一項に記載の急結性コンクリートの吹付け方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちの一項に記載の急結性コンクリートの吹付け方法で使用する吹付け装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−183357(P2006−183357A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379272(P2004−379272)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】