説明

急速凍結装置

【課題】凍結効率や歩留まりの向上を図り、コスト低減を図ると共に、柔らかくて形状が安定しないものでも良好に急速凍結させることができる急速凍結装置を提供する。
【解決手段】急速凍結装置11は、被凍結物17を収容する凹部13bを備えたトレイ13と、トレイ13を支持して水平方向に搬送する搬送用コンベア12と、該搬送用コンベア12の搬送方向上流側で、凹部内に被凍結物17を収容したトレイ13を搬送用コンベア12に支持させた状態で凹部内に低温液化ガスを供給するノズル15と、搬送用コンベア12の下流側で、低温液化ガスによって急速凍結された凍結物17を凹部内から回収する凍結物回収部16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急速凍結装置に係り、詳しくは、被凍結物を低温液化ガスに接触させて急速凍結させる急速凍結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の被凍結物を連続的に急速凍結させる装置として、被凍結物を載置した搬送用コンベヤを浸漬槽内の低温液化ガス中に通し、被凍結物を低温液化ガスに浸漬させることにより、被凍結物を急速凍結させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−535323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のものでは、被凍結物を載置した搬送用コンベヤを低温液化ガス中に通すことから、大量の低温液化ガスが必要であり、凍結作業終了後の低温液化ガスの処理に手間が掛かると共に、低温液化ガスを無駄に廃棄処分しなければならなかった。さらに、搬送用コンベヤが低温液化ガス中の低温部と常温部とを循環するために多大な熱ロスが発生し、また、低温液化ガスが気化する際の潜熱だけを利用していることから、低温液化ガスの利用効率が良くなかった。
【0005】
さらに、振動などで搬送用コンベヤ上から浸漬槽内に被凍結物が落下してしまうことがあり、搬送用コンベヤを低温液化ガス中に出入りさせるために搬送用コンベヤに傾斜を設ける必要があるため、傾斜部で被凍結物が搬送用コンベヤ上で転がってしまうと、浸漬時間に差異が生じて割れなどが発生することがあり、歩留まりが低下する原因ともなっていた。また、低温液化ガス中を通ることから、柔らかくて形状が安定しないもの、軽いものは、急速凍結させることができなかった。
【0006】
そこで本発明は、凍結効率や歩留まりの向上を図り、コスト低減を図ると共に、柔らかくて形状が安定しないものでも良好に急速凍結させることができる急速凍結装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の急速凍結装置は、被凍結物に低温液化ガスを接触させて急速凍結させて凍結物とする急速凍結装置において、前記被凍結物を収容する凹部を備えたトレイと、該トレイを支持して水平方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段の搬送方向上流側で、前記凹部内に前記被凍結物を収容した前記トレイを前記搬送手段に支持させた状態で前記凹部内に前記低温液化ガスを供給する低温液化ガス供給手段と、前記搬送手段の下流側で、前記低温液化ガスによって急速凍結された前記凍結物を前記凹部内から回収する凍結物回収部とを備えていることを特徴としている。
【0008】
また、前記低温液化ガス供給手段の下流側で、かつ、前記凍結物回収部の上流側に、前記搬送手段で搬送される前記トレイの上面を覆う蓋板を備えていると好ましく、前記トレイに、前記凹部を複数個設けたり、前記トレイを、前記搬送手段に着脱可能に載置させると最適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の急速凍結装置によれば、被凍結物を凹部に収容したトレイを搬送手段に載置し、被凍結物を収容した凹部内に低温液化ガスを供給することにより、被凍結物を凹部内で低温液化ガスに接触させて凍結させることができる。被凍結物は、凹部内に収容されているので搬送中にトレイから落下したり、移動したりすることがなく、凍結物の歩留まりを向上できるとともに、低温液化ガスは、被凍結物を凍結できる量だけを凹部内に供給すればよいため、低温液化ガスの使用量を少なくすることができ、コストの低減を図れる。さらに、従来は急速凍結させるのが困難だった柔らかいものや形状の安定しないものでも、形状を保った状態で良好に急速凍結させることができる。
【0010】
さらに、搬送手段の中間部に、トレイの上面を覆う蓋板を設けることにより、低温液化ガスが気化した低温ガスの冷熱も利用できるため、低温液化ガスの潜熱と顕熱とを有効に利用して冷却効率を向上させることができ、液面に浮上するような軽いものでも凍結させることができるとともに、低温液化ガスの使用量を更に低減することができる。また、被凍結物の大きさに応じて一つのトレイに複数の凹部を設けておくことにより、大量の被凍結物を効率よく凍結させることができる。また、搬送手段に対してトレイを着脱可能に形成しておくことにより、トレイを搬送手段から取り外して簡単に洗浄することができ、食料品を急速凍結させるものでも衛生面の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一形態例を示す急速凍結装置の断面正面図である。
【図2】同じく急速凍結装置の平面図である。
【図3】同じく急速凍結装置の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図3は、本発明の急速凍結装置の一形態例を示すもので、本形態例の急速凍結装置11は、水平方向に配置された搬送手段であるエンドレスの搬送用コンベヤ12と、該搬送用コンベヤ12上に載置される複数のトレイ13,13と、搬送用コンベヤ12の長手方向中間部に配置された蓋板14と、該蓋板14よりも搬送用コンベヤ12の上流側に設けられた低温液化ガス供給手段である低温液化ガス供給用のノズル15と、蓋板14よりも搬送用コンベヤ12の下流側に設けられた凍結物回収部16とを備えている。
【0013】
搬送用コンベヤ12は、一対のローラ12a,12aの両端部に、一対のベルト12b,12bをそれぞれ掛け渡したものであって、各トレイ13は、幅方向の両側部13a,13aが前記一対のベルト12b,12b上にそれぞれ載置されることにより、ベルト12b,12b上に着脱可能に載置され、ベルト12b,12bの移動に伴って上流側から下流側に向かって搬送される。
【0014】
トレイ13は、被凍結物17を収容可能な形状の凹部13bを複数箇所に備えたものであって、本形態例では、搬送用コンベヤ12の進行方向と直交する方向、即ち幅方向に4個、搬送方向に3列の計12箇所の凹部13bが設けられている。このトレイ13は、低温脆化し難いステンレス鋼などの金属や、シリコン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂で形成することができる。
【0015】
蓋板14は、搬送用コンベヤ12で搬送されるトレイ13の上面を覆うように設けられており、トレイ13の上面と蓋板14の下面との間には、凹部13b内の低温液化ガスが気化した低温ガスを逃がすための小さな隙間が設けられている。
【0016】
ノズル15は、蓋板14の上流端に近接した位置に設けられており、1列分の凹部13bに同時に低温液化ガスを供給できるように、トレイ幅方向の4箇所に並んで配置されている。また、ノズル15に低温液化ガスを供給する配管には、低温液化ガスの供給量を調節する手段、例えば自動開閉弁が設けられており、凹部13bの大きさ及び収容した被凍結物17の種類に応じて開弁時間を調整することにより、被凍結物17を急速凍結するのに必要十分な量の低温液化ガスを凹部13b内に供給できるように形成されている。
【0017】
上述のように形成された急速凍結装置11は、各凹部13b内に被凍結物17を収容したトレイ13を搬送用コンベヤ12に載置し、あるいは、搬送用コンベヤ12に載置したトレイ13の各凹部13b内に被凍結物17を投入し、搬送用コンベヤ12のベルト12b,12bの進行によってノズル15の下方に位置した各凹部13b内に、各ノズル15から所定量の低温液化ガス、通常は液化窒素をそれぞれ供給する。これにより、被凍結物17が低温液化ガスに接触して急速に冷却される。
【0018】
このとき、ノズル15の下流側に近接して蓋板14を配置しておくことにより、低温液化ガスが供給された凹部13bが短時間で蓋板14の下方に移動し、凹部13bの上方が蓋板14で覆われた状態になるため、凹部13b内で気化した低温ガスを外部にほとんど放出することなく、トレイ13の上面と蓋板14の下面との間に低温ガスを保持できる。
【0019】
これにより、低温ガスによる冷却効果も期待できるので、低温液化ガスの潜熱と顕熱とを有効に利用して被凍結物17を急速に冷却することができ、液面から突出した部分も低温ガスによって効果的に冷却することができる。
【0020】
ベルト12b,12bの進行によって蓋板14の下方を通過することで被凍結物17が凍結した凍結物を凹部13b内に収容した状態のトレイ13は、凍結物回収部16で搬送用コンベヤ12から取り外され、次の工程、例えば、凍結物の包装工程などに送られ、トレイ13から凍結物を回収して個別に包装したり、凹部13b内に凍結物を収容した状態のトレイ全体を包装したりする。凍結物を回収した空のトレイ13は、搬送用コンベヤ12の上流側に戻すことによって再利用することができ、再利用する際に消毒や洗浄を行うことにより、食品を急速凍結させる場合の衛生面での問題はない。
【0021】
このようにして被凍結物17を低温液化ガスに接触させて被凍結物17を急速凍結する際に、被凍結物17に対応した形状の凹部13b内に被凍結物17を収容し、該凹部13b内に低温液化ガスを供給して被凍結物17を低温液化ガスに接触させることにより、従来に比べて、遙かに少量の低温液化ガスで、被凍結物17を確実に凍結させることができ、冷却効率を向上させることができると共に、装置の小型化を図ることができる。また、従来のように搬送用コンベヤ12に傾斜部を設けなくてもよく、被凍結物17は凹部13b内に収容された状態となっていることから、被凍結物17やトレイ13が搬送用コンベヤ12上から落下したり、位置がずれたりすることがなく、被凍結物17を確実に凍結させることができ、歩留まりの向上を図ることができる。
【0022】
さらに、凹部13bを、被凍結物17の形状に対応した形状に形成することにより、被凍結物17が柔らかくて形状が安定しないものであっても、形状を保った状態で良好に急速凍結させることができ、比重が小さくて低温液化ガスの液面に浮上してしまうような軽いものであっても、蓋板14を設けることによって確実に急速凍結させることができる。したがって、生牡蠣のように柔らかいものや、納豆やいくらなどの形状の安定しないもの、ホイップクリームやスポンジケーキなどの軽いものでも、確実に急速凍結させることができる。
【0023】
なお、急速凍結装置は、搬送用コンベヤの最上流部と最下流部との間を断熱構造を備えたトンネル内に配置することができ、トンネルの形状によっては蓋板を省略しても前記同様の効果を得ることができる。トレイの形状は任意であり、搬送用コンベヤに固定しておくことも可能である。また、トレイに設ける凹部の数は、トレイの大きさや被凍結物の大きさに応じて適宜設定することができる。さらに、ノズルの位置や設置数も任意であり、複数のノズルから一つの凹部に低温液化ガスを供給することもできる。また、ノズルから供給する低温液化ガスは、凹部の壁に沿って被凍結物に当たらないように低温液化ガスを流し込む状態でもよく、上方からシャワーのように被凍結物に低温液化ガスを浴びせる状態でもよい。さらに、搬送手段は、トレイを水平方向に保って搬送することができれば、任意の搬送手段を用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
11…急速凍結装置、12…搬送用コンベヤ、12a…ローラ、12b…ベルト、13…トレイ、13a…側部、13b…凹部、14…蓋板、15…ノズル、16…凍結物回収部、17…被凍結物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被凍結物に低温液化ガスを接触させて急速凍結させて凍結物とする急速凍結装置において、前記被凍結物を収容する凹部を備えたトレイと、該トレイを支持して水平方向に搬送する搬送手段と、該搬送手段の搬送方向上流側で、前記凹部内に前記被凍結物を収容した前記トレイを前記搬送手段に支持させた状態で前記凹部内に前記低温液化ガスを供給する低温液化ガス供給手段と、前記搬送手段の下流側で、前記低温液化ガスによって急速凍結された前記凍結物を前記凹部内から回収する凍結物回収部とを備えている急速凍結装置。
【請求項2】
前記低温液化ガス供給手段の下流側で、かつ、前記凍結物回収部の上流側に、前記搬送手段で搬送される前記トレイの上面を覆う蓋板を備えている請求項1記載の急速凍結装置。
【請求項3】
前記トレイは、前記凹部を複数個備えている請求項1又は2記載の急速凍結装置。
【請求項4】
前記トレイは、前記搬送手段に着脱可能に載置される請求項1乃至3のいずれか1項記載の急速凍結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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