説明

性能ベースの積載量管理のためのシステムと方法

運搬道路条件に基づき機械積載量を管理する方法は、作業環境において動作する機械に関連する性能データを収集する工程(310)と、収集された性能データに基づき機械の実際の有効積算勾配を決定する工程(320)と、を含む。有効積算勾配は目標有効積算勾配値(330)と比較され、実際の有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内にない場合、複数の積載量レベルと関連する有効積算勾配をシミュレートすることができる(340)。模擬有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内に入るようにさせる複数の積載量レベルの少なくとも1つを特定する(350)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には輸送管理に関し、より詳細には性能ベースの積載量管理のためのシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり抵抗はタイヤを一定速度で動かしておくのに必要な力を指す。言い換えると、転がり抵抗はタイヤを回転させるために打ち勝たれなければならない力を指す。多くの作業環境、特に、物品または材料を1つの場所から別の場所に輸送する車輪付き機械の運営に係わる環境では、機械の転がり抵抗を制限することは作業環境の効率と生産性を改善する重要部分である。例えば、機械に関連する転がり抵抗を低減することにより、機械を動かすために必要とされるエネルギー量を低減し、したがって機械の燃料効率を増加させる。さらに、転がり抵抗を低減することにより、機械駆動系部品に対する応力と歪を低減することができ、ひいては駆動系寿命を延長して早期部品故障に伴う費用を低減することができる。
【0003】
転がり抵抗に影響を与えるいくつかの要因としては、機械またはその構成部品の物理的特徴、機械が移動する道路または通路の表面、および/または機械/道路境界の特徴が挙げられる。例えば、転がり抵抗は、機械重量(積載量を含む)、機械速度、タイヤの空気圧および寸法などの機械の物理的特徴;道路表面密度、摩擦係数、道路勾配などの運搬道路の物理的特徴;および/または道路表面上の機械のタイヤの滑りなどの機械/道路境界の特徴に依存すると考えられる。上に特定された要因のうち、機械転がり抵抗を制御する最も早く最も費用がかからない方法の1つは機械の積載量を調節することによるものである。したがって、1つまたは複数の機械の健全性、寿命、および/または効率を改善するとともに道路の効率を増す目的で、機械の転がり抵抗を監視するとともに、監視された転がり抵抗を規制するために機械の積載量レベルを調整する方法が必要となるであろう。
【0004】
道路区間上で動作する機械の抵抗を監視するための従来の一方法はSchricker社による(特許文献1)に記載されている。(特許文献1)では、道路に沿って移動する1つまたは複数の機械から複数のパラメータを感知することにより道路の状態の変化を検出する方法について記載されている。1つまたは複数の機械のそれぞれの抵抗係数を計算するとともに一団の機械の平均抵抗係数を決定するために、感知されたパラメータを使用することができる。平均抵抗係数が閾値を越えた場合、道路区間の変化(すなわち、欠陥または故障)を特定および/または是正することができる。
【0005】
(特許文献1)に記載された方法などのいくつかの従来方法は、一団の機械の抵抗係数の変化に基づく道路条件の変化の検出を可能にするが、ある状況では制限されると考えられる。例えば、(特許文献1)のシステムは、機械転がり抵抗値の変化を検知し、場合によっては転がり抵抗を低減するために運搬道路の異常を特定し是正するように構成されるが、転がり抵抗を低減するために個々の機械または一群の機械の積載量に対する調整を指示することができない。しかしながら、運搬道路区間の異常の是正は通常、運搬道路区間の再整地(re−grading)または修理を必要とし、修理を完了するために運搬道路の閉鎖を必要とし、修理期間中の収益が失われることになる。多くの場合、失われた収益金額は、転がり抵抗の低減に伴う効率の改善より重要である。したがって、機械転がり抵抗を低減するための運搬道路に対する修理と改善はしばしば、費用が正当化されるまで遅らされる。その結果、機械の多くは転がり抵抗の増加にもかかわらず動作する必要があり、これは駆動系部品に対する過度の応力と歪の原因となり、部品の寿命低下につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,817,936号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
性能ベースの積載量管理のための本開示システムと方法は、上に述べられた問題の1つまたは複数を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様によると、本開示は運搬道路条件に基づき機械積載量を管理する方法に関する。本方法は、作業環境において動作する機械に関連する性能データを収集する工程と、収集された性能データに基づき機械の有効積算勾配(total effective grade)を決定する工程と、を含む。有効積算勾配と目標有効積算勾配値とを比較することができ、有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内にない場合、複数の積載量レベルに関連する機械有効積算勾配をシミュレートすることができる。模擬有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内に入るようにさせる複数の積載量レベルの少なくとも1つを特定することができる。
【0009】
別の態様によると、本開示は、運搬道路条件に基づき機械積載量を管理する方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータシステム上で使用するコンピュータ可読媒体に関する。本方法は、作業環境において動作する機械に関連する性能データを収集する工程と、収集された性能データに基づき機械の有効積算勾配を決定する工程と、を含む。有効積算勾配と目標有効積算勾配値とを比較することができ、有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内にない場合、複数の積載量レベルに関連する機械有効積算勾配をシミュレートすることができる。模擬有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内に入るようにさせる複数の積載量レベルの少なくとも1つを特定することができる。
【0010】
さらに別の態様によると、本開示は運搬経路管理システムに関する。運搬経路管理システムは、作業環境において動作する機械とデータ通信を行う状態監視システムであって、作業環境において動作する機械に関連する性能データを収集し、性能データに基づき機械の現在の有効積算勾配を監視するように構成された状態監視システム、を含む。運搬経路管理システムはまた、状態監視システムに通信で結合された性能シミュレータを含むことができる。性能シミュレータは有効積算勾配と目標有効積算勾配値とを比較するように構成されてよい。性能シミュレータは、有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内にない場合、複数の積載量レベルに関連する機械の有効積算勾配をシミュレートすることができる。性能シミュレータはまた、模擬有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内に入るようにさせる複数の積載量レベルの少なくとも1つを特定するように構成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示実施形態による例示的な作業環境を示す図である。
【図2】図1の作業環境に関連するある部品を説明する概略図である。
【図3】本開示実施形態による性能ベースの積載量管理のための例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1には、本開示実施形態による例示的な作業環境100を示す。作業環境100は、採鉱、建設、エネルギー探査および/または生成、製造、輸送、農業等の商業的または工業的タスク、あるいは他の産業タイプに関連する任意のタスクを実行するように協働するシステムと装置を含むことができる。図1に示す例示的な実施形態によると、作業環境100は、通信ネットワーク130を介し運搬経路管理システム135に結合される1つまたは複数の機械120a、120bを含む採鉱環境を含むことができる。作業環境100は、1つまたは複数の機械120a、120bの状態、健全性および性能に関連する情報を監視、収集、フィルタ処理するとともに、この情報を運搬経路管理システム135および/または加入者170等の1つまたは複数のバックエンドシステムまたはエンティティに配信するように構成されてよい。作業環境100は追加の部品および/または上に掲載されたものとは異なる部品を含んでよいと考えられる。
【0013】
図1に示すように、機械120a、120bは1つまたは複数の掘削機120aと1つまたは複数の輸送機械120bを含むことができる。掘削機120aは、鉱山から材料を取り出すとともにその材料を1つまたは複数の輸送機械120b上に載せるように構成された任意の機械を具現することができる。掘削機120aの非限定的な例としては、バケツタイプ掘削機、電磁気式リフト装置、バックホウローダ、ブルドーザ等が挙げられる。輸送機械120bは、例えば連接台車、ダンプカー、または材料を輸送するように構成された他の任意のトラックなど作業環境100内で材料を輸送するように構成された任意の機械を具現することができる。図1に示す機械の数、大きさおよびタイプはあくまで例示的であり、限定することを意図していない。したがって、作業環境100は、追加の機械、上に掲載されたものより少ない機械および/またはそれとは異なる機械を含んでよいと考えられる。例えば、作業環境100は、スキッドステアローダ、トラックタイプトラクタ、材料移動車両、または作業環境100の事業に寄与し得る他の好適な固定または移動式機械を含むことができる。
【0014】
一実施形態では、機械120a、120bのそれぞれは、機械120a、120bの1つまたは複数の部品に関連する情報を監視、収集、および/または配信するための搭載データ収集および通信装置を含むことができる。図2に示すように、機械120a、120bはそれぞれ、特には、通信線122を介し1つまたは複数のデータ収集器125に結合されたセンサおよび/または電子制御モジュール等の1つまたは複数の監視装置121;1つまたは複数の送受信器装置126;および/または機械120a、120bの操作に関連する情報を監視、収集および通信するための他の部品を含むことができる。機械120a、120bのそれぞれはまた、運搬経路管理システム135等の非搭載システムから情報、警報信号、オペレータ命令、または他のメッセージまたは命令を受信するように構成されてよい。上記部品は例示的であって、限定することを意図していない。したがって、本開示実施形態は、機械120a、120bのそれぞれが追加部品および/または上に掲載されたものとは異なる部品を含むことを想定している。
【0015】
監視装置121は、1つまたは複数の機械120a、120bに関連する性能データを収集するための任意の装置を含むことができる。例えば、監視装置121は、エンジンおよび/または機械の速度および/または場所;流体圧力、流速、温度、汚染レベル、および/または流体の粘度;電流および/または電圧レベル;流体(すなわち、燃料、油等)消費速度;荷重レベル(すなわち、積載値、最大積載量限界のパーセント値、積載量履歴、積載量分布等);変速機出力比、スリップ等;勾配;牽引データ;駆動軸トルク;計画され実行される保全および/または修理作業の間隔;および機械120a、120bの他の動作パラメータ等の、動作パラメータを測定するための1つまたは複数のセンサを含むことができる。
【0016】
一実施形態では、輸送機械120bはそれぞれ、駆動軸に加えられたトルクを監視するための少なくとも1つのトルクセンサ121aを含むことができる。あるいは、トルクセンサ121aは駆動軸上のトルクを計算または導出することができるパラメータを監視するように構成されてよい。
【0017】
1つまたは複数の監視装置121は作業環境100に関連するある環境特徴を監視するように構成されてよいと考えられる。例えば、1つまたは複数の機械120a、120bは、機械が移動する表面に関連する実際勾配を測定する傾斜計を含むことができる。
【0018】
データ収集器125は、監視装置121により収集された性能データを受信、収集、パッケージ化、および/または配信するように構成されてよい。本明細書で使用されるように用語「性能データ」は、1つまたは複数の機械120a、120bにあるいはその構成部品またはサブシステムの任意のものに関連する少なくとも1つの動作態様を示す任意のタイプのデータを指す。性能データの非限定的例としては、燃料レベル、油圧、エンジン温度、冷却材流量、冷却液温度、タイヤ空気圧等の健全性情報、あるいは機械120a、120bの1つまたは複数の部品またはサブシステムの健全性を示す他の任意のデータが挙げられる。代替案としておよび/または追加として、性能データは、エンジン出力状態(例えば、エンジンの運転、アイドル、オフ状態)、エンジン時間、回転速度、機械速度、機械の場所、動作中の機械の現在のギア等の状態情報、あるいは機械120a、120bの状態を示す他の任意のデータを含むことができる。任意選択的に、性能データはまた、作業進捗情報、荷重対容量比、シフト期間、運搬統計値(重量、積載量等)、燃料効率等のある生産性情報、あるいは機械120a、120bの生産性を示す他の任意のデータを含んでよい。代替案としておよび/または追加として、性能データは、機械120a、120bの1つまたは複数の態様または部品を制御するための制御信号を含むことができる。
【0019】
データ収集器125は、機械の動作中に通信線122を介し1つまたは複数の監視装置から性能データを受信し、通信ネットワーク130を介し運搬経路管理システム135に受信データを送信することができる。代替案としてまたは追加として、データ収集器125は、運搬経路管理システム135へのその後の送信のために、所定期間の間受信データをメモリ内に格納することができる。例えば、機械と運搬経路管理システム135間の通信路が一時的に利用不可能となった場合、性能データをメモリに格納することができ、通信路が復元されるとその後検索し送信することができる。
【0020】
通信ネットワーク130は、機械120a、120bと運搬経路管理システム135等の非搭載システムとの間の双方向通信を提供する任意のネットワークを含むことができる。例えば通信ネットワーク130は、例えば衛星通信システム等の無線ネットワーキングプラットホームにわたって機械120a、120bと運搬経路管理システム135とを通信で結合することができる。代替案としておよび/または追加として、通信ネットワーク130は、1つまたは複数の機械120a、120bと運搬経路管理システム135とを通信で結合するための適切な1つまたは複数の広帯域通信プラットホーム(例えば、セルラー、ブルートゥース、マイクロ波、ポイントツーポイント無線、ポイントツーマルチポイント無線、マルチポイントツーマルチポイント無線、または多くの部品をネットワーク化するための他の任意の適切な通信プラットホーム等)を含むことができる。衛星無線通信ネットワークとして通信ネットワーク130を例示したが、通信ネットワーク130は例えばイーサネット(登録商標)、光ファイバー、導波管等の有線ネットワーク、あるいは他の任意のタイプの有線通信ネットワークを含んでよいと考えられる。
【0021】
運搬経路管理システム135は、1つまたは複数の個々の機械の性能または動作を監視、解析、および/または制御することにより運搬経路の性能を改善するように協働する1つまたは複数のハードウェア部品および/またはソフトウェアアプリケーションを含むことができる。例えば、運搬経路管理システム135は、機械120a、120bから収集した性能データを収集、配信、解析、および/または管理するための状態監視システム140を含むことができる。運搬経路管理システム135はまた、機械駆動系に関連する駆動軸トルクを決定し、有効積算勾配(total effective grade)を推定し、運搬道路の有効積算勾配を計算し、および/または機械または機械駆動系の性能を示すことができる他の適切な特徴を決定するためのトルク推定器150を含むことができる。運搬経路管理システム135はまた、作業環境100内で動作する機械の性能ベースのモデルをシミュレートするとともに、作業環境生産性を改善するために機械120a、120bの動作パラメータおよび/または運搬経路の物理的特徴を調整する性能シミュレータ160を含むことができる。
【0022】
状態監視システム140は、機械120a、120bに関連する性能データを受信、解析、送信、および/または配信するように構成された任意のコンピュータシステムを含むことができる。状態監視システム140は、通信ネットワーク130を介し1つまたは複数の機械120に通信で結合されてよい。状態監視システム140は、機械120a、120bのそれぞれに関連する性能データを収集し広めるように構成された集中型サーバおよび/またはデータベースを具現することができる。収集されると、状態監視システム140は、データタイプ、優先度等に従って性能データを分類および/またはフィルタ処理する。重大または最優先データの場合には、状態監視システム140は、遠隔設備が重大事象を経験したことを示す「緊急」または「重大」メッセージを1人または複数の作業現場要員(例えば、修理技術者、プロジェクト管理者等)に送信するように構成されてよい。例えば、機械が使えなくされるか、非認可作業領域に入るか、あるいは重大なエンジン動作条件を経験した場合、状態監視システム140は、プロジェクト管理者、現場職長、シフト管理者、機械オペレータ、および/または修理技術者に機械に関する潜在的な問題を示すメッセージ(テキストメッセージ、電子メール、ページング等)を送信することができる。
【0023】
状態監視システム140は、ある開示実施形態による処理を実行するハードウェアおよび/またはソフトウェア部品を含むことができる。例えば、図2に例示されるように、状態監視システム140は、1つまたは複数の送受信器装置126、中央処理装置(CPU)141、通信インターフェース142、記憶装置143、ランダムアクセスメモリ(RAM)モジュール144および読み取り専用メモリ(ROM)モジュール145などの1つまたは複数のコンピュータ可読メモリ装置、表示装置147、および/または入力装置148を含むことができる。上記部品は例示的であり、限定することを意図していない。さらに、状態監視システム140は上に掲載されたものの代替および/または追加部品を含んでよいと考えられる。
【0024】
CPU141は、ある開示実施形態による1つまたは複数の処理を実行するために命令を実行しデータを処理する1つまたは複数の処理装置であってよい。例えば、CPU141は、状態監視システム140が機械120a、120bのデータ収集器125から性能データを要求および/または受信することを可能にするソフトウェアを実行することができる。CPU141はまた、収集された性能データを記憶装置143に格納するソフトウェアを実行することができる。さらに、CPU141は、状態監視システム140が1つまたは複数の機械120a、120bから収集された性能データを解析し、機械に関する潜在的問題を特定する診断および/または予後解析を行い、あらゆる潜在的問題を機械オペレータまたは加入者170に通知し、および/または機械性能を改善するための勧告を含むカスタマイズ作業分析報告を提供する、ことを可能にするソフトウェアを実行することができる。
【0025】
CPU141は、状態監視システム140に関連する1つまたは複数の部品間の通信媒体を提供するように構成することができる共通情報バス146に接続されてよい。例えば、共通情報バス146は、複数の装置との間で情報を通信するための1つまたは複数の部品を含むことができる。一実施形態によると、CPU141は、共通情報バス146を使用して、メモリに格納されたコンピュータプログラム命令にアクセスすることができる。CPU141は、次に、以下に説明されるように、ある開示実施形態による方法を実行するために例えば記憶装置143、RAM144、および/またはROM145等のコンピュータ可読媒体装置に格納された一連のコンピュータプログラム命令を実行することができる。
【0026】
通信インターフェース142は、送受信器装置126を介し状態監視システム140と遠隔システム(例えば、機械120a、120b)間の双方向データ通信用に構成された1つまたは複数の構成要素を含むことができる。例えば、通信インターフェース142は、1つまたは複数の変調器、復調器、マルチプレクサ、デマルチプレクサ、ネットワーク通信装置、無線装置、アンテナ、モデム、あるいは状態監視システム140と遠隔システムまたは部品間の双方向通信インターフェースを支援するように構成された他の任意の装置を含むことができる。
【0027】
1つまたは複数のコンピュータ可読媒体装置は、状態監視システム140のCPU141により使用される情報、命令、および/またはプログラムコードを格納するように構成された記憶装置143、RAM144、ROM145、および/または他の任意の磁気データ、電子データ、フラッシュデータ、または光学データコンピュータ可読媒体装置を含むことができる。記憶装置143は、磁気ハードドライブ、光ディスクドライブ、フロッピードライブ、フラッシュドライブ、あるいは他の任意のこのような情報格納装置を含むことができる。ランダムアクセスメモリ(RAM)モジュール144は、CPU141により情報と命令を格納する任意の動的記憶装置を含むことができる。RAM144は、CPU141により実行される命令の実行中に一時変数または他の中間情報を格納するために使用されてもよい。動作中に、オペレーティングシステム(図示せず)のいくつかの部分またはすべての部分をRAM144内に積荷することができる。さらに、読み取り専用メモリ(ROM)モジュール145は、CPU141により情報と命令を格納するための任意の静的記憶装置を含むことができる。
【0028】
状態監視システム140は、機械120a、120bのそれぞれに関連する性能データを解析するように構成されてよい。一実施形態によると、状態監視システム140は、それぞれの機械に関連する閾値(これらは工場設定であってもよいし、製造者推奨であってよいし、および/またはユーザ設定であってもよい)に基づいて1つまたは複数の機械120a、120bに関連する性能データを解析するための診断ソフトウェアを含むことができる。例えば、状態監視システム140に関連する診断ソフトウェアは、特定の機械から受信されたエンジン温度測定値と当該機械の所定の限界エンジン温度とを比較することができる。測定されたエンジン温度が限界温度を越えた場合、状態監視システム140は、警報を発生し、機械オペレータ、現場管理者、修理技術者、配送係、または他の任意の適正エンティティのうちの1つまたは複数に通知することができる。
【0029】
別の実施形態によると、状態監視システム140は1つまたは複数の機械120a、120bに関連する生産性を監視し解析するように構成されてよい。例えば、状態監視システム140は、それぞれの機械に関連するユーザ定義の生産性閾値に基づき1つまたは複数の機械120a、120bに関連する性能データを解析する生産性ソフトウェアを含むことができる。生産性ソフトウェアは、それぞれの機械120a、120bに関連する生産性レベルを監視するとともに、オペレータまたは機械の生産性データを定期的に受け取るプロジェクト管理者、機械オペレータ、修理技術者、または他の任意のエンティティ(例えば、人事部、オペレータ訓練・認証事業部等)のために生産性報告を生成するように構成されてよい。例示的な一実施形態によると、生産性ソフトウェアは、機械に関連する生産性レベル(例えば、特定の機械により移動された材料の量)とそれぞれの機械に対し設定された所定生産性割り当てとを比較することができる。生産性レベルが所定割り当て未満であった場合、機械の生産性不足を示す生産性通知を生成して機械オペレータおよび/またはプロジェクト管理者に提供することができる。状態監視システム140は、個々の機械の生産性に基づき作業環境の生産性を決定し評価することができる。
【0030】
状態監視システム140は、1つまたは複数の他のバックエンドシステムとデータ通信を行ってもよいし、詳細解析のためにある性能データをこれらのシステムに配信するように構成されてよい。例えば、状態監視システム140は、トルク推定器150に通信で結合されてもよいし、機械駆動軸に関連する性能データをトルク推定器150に提供するように構成されてもよい。
【0031】
代替案としてまたは追加として、状態監視システム140は性能シミュレータ160とデータ通信を行ってもよいし、詳細解析のために性能データを性能シミュレータ160に提供するように構成されてもよい。トルク推定器150と性能シミュレータ160は、状態監視システム140の外部のスタンドアロンシステムとして例示されたが、トルク推定器150と性能シミュレータ160の内の1つまたは両方は状態監視システム140のサブシステムとして含まれてよいと考えられる。
【0032】
トルク推定器150は、状態監視システム140からある性能データを受信/収集し、受信された性能データに基づき1つまたは複数の機械120a、120bに関連する駆動軸トルクを決定するように構成されたハードウェアまたはソフトウェアモジュールを含むことができる。トルク推定器150はトルクセンサ121aにより収集された性能データに基づき駆動軸トルクを決定するように構成されてよい。代替案としてまたは追加として、駆動軸トルクは、機械の性能データと既知の設計パラメータとに基づいて推定されてよい。例えば、エンジン動作速度と作動ギアとに基づき、トルク推定器150は電子参照テーブルにアクセスし、この参照テーブルを使用して特定の積載重量における機械の駆動軸トルクを推定することができる。
【0033】
推定機械駆動軸トルクが決定されると、トルク推定器150は1つまたは複数の機械の有効積算勾配を推定することができる。例えば、トルク推定器150は、次のような有効積算勾配(TEG:total effective grade)値を推定することができる。
【0034】
【数1】

【0035】
式中、RPは機械牽引力を指し、GMWは総機械重量を指し、MAは機械の加速を指し、AGはその機械が位置する地形の実際勾配を指す。搭載データ監視装置121を使用して総機械重量と機械加速を監視することができる。機械に関連する監視GPSデータに基づき実際勾配を推定することができる。例えば、搭載GPS装置から集められた高精度GPSデータから導出される機械の緯度、経度および高度に基づいて実際勾配を決定することができる。一実施形態によると、位置の垂直変化(GPSデータに関連する高度データに基づく)と位置の水平変化(GPSデータに関連する緯度と経度のデータに基づく)との比を計算することにより実際勾配を決定することができる。代替案としてまたは追加として、実際勾配は、例えば傾斜計等の搭載データ監視装置を使用して計算されてよい。牽引力は次のように決定することができる。
【0036】
【数2】

【0037】
式中、DATは機械駆動軸に加えられるトルクを指し、LPTRは低動力伝達系減少係数を指し、PTEは動力伝達系の効率を指し、TDRRはタイヤの動的回転半径を指す。牽引力の実時間計算中にギアの変化を監視することにより低動力伝達系減少を決定することができる。機械から収集された実時間性能データに基づき動力伝達系効率を計算することができる。監視されたタイヤ空気圧、速度および総機械重量に基づきタイヤ動的回転半径を推定することができる。
【0038】
有効積算勾配が決定されると、トルク推定器150は1つまたは複数の機械120a、120bに関連する転がり抵抗を決定することができる。転がり抵抗値は次のように計算することができる。
RR=TEG−(AG+EL) 式3
式中、ELは機械の効率損失を指す。効率損失は、入力電力効率と出力電力効率との差として推定することができ、特定のエンジン動作速度と荷重条件における経験的な試験データに基づいて推定することができる。説明したように、実際勾配は、収集されたGPSデータに関連する計算に基づき決定することができ、および/または搭載傾斜計を使用して監視することができる。
【0039】
性能シミュレータ160は、様々な動作または環境条件下の機械120a、120bの性能をシミュレートするように構成されてよい。模擬性能結果に基づいて、性能シミュレータ160は、機械120a、120bおよび/または作業環境100の所望の性能を達成するための1つまたは複数の機械動作条件(例えば、速度、ギア選択、エンジンRPM等)、および/または運搬道路パラメータ(例えば、実際勾配、転がり抵抗、表面密度、表面摩擦等)を決定することができる。
【0040】
性能シミュレータ160は、部品または機械シミュレーションソフトウェアを含む任意のタイプのコンピュータシステムであってよい。シミュレーションソフトウェアは、機械の実時間動作から収集された経験的なデータに基づいて機械またはその構成部品の任意のものに対応する解析モデルを構築するように構成されてよい。モデルが構築されると、性能シミュレータ160は、特定の動作条件(例えば、荷重条件、環境条件、地形条件、運搬経路設計条件等)下でモデルを解析し、特定条件に基づき機械の模擬性能データを生成することができる。
【0041】
一実施形態によると、性能シミュレータ160は、それぞれの機械120a、120bに関連する理想設計モデルを含むことができる。これらの理想モデルは、理想/設計性能データ(すなわち、(理想動作条件下で)設計されるような機械の性能に基づくデータ)を生成するために電子的にシミュレートされてよい。機械が老化するにつれ機械に関連する部品が通常の摩耗、ストレス、および/または動作中の機械に対する損傷により非理想的振る舞いを呈し始め得ることを当業者は認識するであろう。これらの非理想に合致するより現実的な性能シミュレーションを提供するために、理想モデルは、機械120a、120bから収集された実際の性能データに基づいて編集されてよく、こうしてそれぞれの機械および/またはその個々の部品の実際的または経験的モデルを生成することができる。
【0042】
性能シミュレータ160はまた、機械120a、120bのそれぞれに関連する実際の性能ベースのモデルを含むことができる。上記理想設計モデルと同様に、これらの性能ベースのモデルは様々な実際の動作条件下で機械の性能と生産性を予測するために電子的にシミュレートされてよい。しかしながら、上記理想モデルとは対照的に、性能シミュレータは各機械から収集された特定の性能データに基づき性能ベースのモデルを生成するように構成されてよい。性能シミュレータ160は、各模擬条件に関連する速度、トルク出力、エンジン状態、燃料消費速度、温室効果ガス排出レベル、運搬経路完成時間等を決定するために機械動作条件下で運搬車120bの実際のモデルをシミュレートすることができる。代替案としてまたは追加として、性能シミュレータ160は、所望閾値動作範囲内で1つまたは複数の機械を動作させる1つまたは複数の運搬道路パラメータを特定するために、運搬道路面に関連する様々な物理条件(例えば、勾配レベル、摩擦レベル、平滑度、密度、硬度、水分含有量等)下で運搬車120bの実際のモデルをシミュレートするように構成されてよい。それゆえ、性能シミュレータ160は、運搬道路上で操作される1つまたは複数の機械に関連する実際の性能データに基づき運搬道路設計をカスタマイズするための解決策を鉱山オペレータと運搬道路設計者に提供することができる。
【0043】
性能シミュレータ160は、予想的な運搬道路設計に関連する運搬道路パラメータを受信するように構成されてよい。例えば、見込みの鉱山環境のための運搬道路の設計に先立って、性能シミュレータ160は加入者170から1つまたは複数の運搬道路パラメータを受信することができる。運搬道路パラメータは、例えば、運搬道路開始点(例えば、鉱石貯蔵場における);運搬道路終点(例えば、輸送または処理施設における);初期の運搬道路勾配;予備運搬道路の経路;運搬道路予算;あるいは、運搬道路を設計する際に加入者170により定義されてよい他の任意のパラメータ等の運搬道路を設計するのに使用し得る任意のパラメータを含むことができる。
【0044】
性能シミュレータ160は、ユーザが様々な運搬道路設計条件下で1つまたは複数の機械に対応する理想および/または性能ベースのソフトウェアモデルをシミュレートできるように構成されてよい。例えば、運搬車に関連するソフトウェアモデルを使用して、性能シミュレータ160は、運搬車に提示される有効積算勾配および/または転がり抵抗を変化させることにより複数の運搬道路勾配における運搬車の動作をシミュレートすることができる。上記式を使用して、性能シミュレータは、運搬車に提示される各有効積算勾配および/または転がり抵抗値に対応する実際勾配を決定し、1つまたは複数の運搬道路設計に関連する道路勾配に基づいて機械性能の傾向を特定することができる。加入者170は、機械の模擬性能が所望性能特性を呈するところの勾配率を特定することにより運搬道路設計の実際勾配を選択することができる。例えば、燃料消費量および/または温室効果ガス排出レベルを最小化することが優先事項である鉱山環境では、性能シミュレータ160は、機械に最小量の燃料を消費させる運搬道路勾配を特定することができる。代替案としておよび/または追加として、部品寿命を延長することにより機械維持および修繕費を制限することが重大である鉱山環境では、性能シミュレータ160は、機械の駆動系に対し最小量の応力および歪を生成する運搬道路勾配を特定することができる。
【0045】
運搬道路勾配に加えて、性能シミュレータ160はまた、他の運搬道路条件下で運搬車の動作をシミュレートするように構成されてよい。例えば、転がり抵抗は、運搬道路面密度、水分レベル、および摩擦に依存し得るタイヤおよび/または変速機スリップにより影響を受けると考えられる。したがって、性能シミュレータ160は、機械の所望性能レベルを特定するために、機械に提示された転がり抵抗レベルを変化させることにより1つまたは複数の機械の性能をシミュレートすることができる。
【0046】
所望機械性能、有効積算勾配および/またはそれに関連する転がり抵抗値が特定されると、性能シミュレータ160は所望の機械性能と転がり抵抗に適合する1つまたは複数の運搬道路設計を生成することができる。例えば、性能シミュレータ160は、特定の運搬道路勾配に対して所望機械性能を機械に達成させるように、1つの運搬道路勾配に対する特定の運搬道路面密度、摩擦、および最大許容水分レベルを規定することができる。これらのパラメータは機械の所望勾配レベルに依存して調整されてよい。したがって、勾配レベルが増加することによりタイヤおよび/または変速機スリップの可能性を増加させるので、運搬道路面密度、摩擦および最大許容水分レベルは勾配レベル増加を補うように調整されてよい。
【0047】
性能シミュレータ160は、異なる運搬道路設計間の費用対効果関係を決定するように構成されてよい。例えば、運搬道路勾配を増加させることにより、運搬道路の必要な長さを短縮させ、可能性として運搬道路建設および維持費を低減することができる。しかしながら運搬道路の勾配の増加は、機械駆動系にかかり得る応力と歪の増加により機械維持および修繕費の増加をもたらすかもしれない。さらに、タイヤおよび/変速機スリップはより険しい勾配上で頻繁に発生し得るので、運搬道路の長さの短縮の結果としての運搬道路建設費の節約は、スリップを低減することを目的とした改善の実施(例えば、運搬道路面密度を増加させる、土壌中の過剰水分を制限するために運搬道路排水を増加するなど)に伴う費用の増加により相殺されるかもしれない。性能シミュレータ160は、各運搬道路設計に関連する潜在的な費用対効果をコンパイルすることができる。
【0048】
性能シミュレータ160はまた、部品故障を予測しおよび/または機械の特定部品またはサブシステムの残り寿命を推定するために、実際の機械モデル(すなわち、実際の機械データから導出または生成されたモデル)をシミュレートする診断および/または予後シミュレーションツールを含むことができる。例えば、エンジンおよび/または変速機に関連する性能データに基づき、性能シミュレータ160は、エンジン、駆動系、差動ブレーキ、あるいは機械の他の部品またはサブシステムの残り寿命を予測することができる。したがって、性能シミュレータ160は、1つまたは複数の運搬道路パラメータの変化が1つまたは複数のこれらの部品の寿命にどのように影響を与え得るかを予測することができる。例えば、性能シミュレータ160は、特定の運搬道路区間の勾配が1.5%低減されることによりエンジン、変速機または他の駆動系部品への歪を低減した場合に駆動系の残り寿命が15%増加し得るということを推定することができる。性能シミュレータ160は、鉱山オペレータ、プロジェクト管理者、機械オペレータ、および/または作業環境100の保守部門にこのデータを定期的に報告することができる。
【0049】
性能シミュレータ160は、作業環境100において動作する1つまたは複数の機械の積載量要件165を生成するように構成されてよい。一実施形態によると、積載量要件165は、1つまたは複数の機械120a、120bおよび/または作業環境100の性能を高めるまたは増強する1つまたは複数の機械120a、120bの荷重限界を含むことができる。例えば、性能シミュレータ160は、高い転がり抵抗レベルを有する機械を特定し、この機械に関連する性能データに基づき、機械が目標転がり抵抗値の閾値範囲内で動作できるようにする機械の最適積載量限界を決定することができる。性能シミュレータ160は、目標転がり抵抗の目標に適合するのに必要な積載量限界を規定する機械の積載量要件165を生成することができる。
【0050】
積載量要件165は、その積載量レベルが機械の最大積載量レベルより低くなるように変更または指定された機械を記載する紙ベースの報告または電子報告を含むことができる。したがって、積載量要件165は、機械に関連する最大荷重レベル未満で積荷されるように性能シミュレータ160が指定した任意の機械に関連付けられてよい。一実施形態によると、積載量要件165は電子的に(電子メール、テキストメッセージ、ファクシミリ等を使用して)、あるいは他の任意の適切な様式を介し配信されてよい。
【0051】
性能シミュレータ160は、積載量要件データの1人または複数の指定加入者170に積載量要件165を提供することができる。加入者170の例としては、積載量要件165内に挙げられた1つまたは複数の輸送機械120bのオペレータ、輸送機械120bに積荷することに関与する1つまたは複数の機械(例えば、自動ローダー(コンベヤーベルト、バケット等)、掘削機120a等)のオペレータ、プロジェクト管理者、鉱山所有者、修理技術者、シフト管理者、人事管理部門要員、あるいは積載量要件165を受信するように指定されてよい他の任意の人物またはエンティティが挙げられる。
【0052】
状態監視システム140、トルク推定器150、および/または性能シミュレータ160の1つまたは複数は、単一の統合型ソフトウェアパッケージまたはハードウェアシステムとして含まれてよいと考える。代替案としてまたは追加として、これらのシステムは、他のシステムの1つまたは複数の動作を容易にするように相互作用または協働するように構成された個別のスタンドアロンモジュールを具現することができる。例えば、トルク推定器150は性能シミュレータ160とは別のスタンドアロンシステムとして図示され説明されたが、トルク推定器150は、性能シミュレータ160と同じコンピュータシステム上で動作するように構成されたソフトウェアモジュールとして含まれてもよいと考えられる。
【0053】
本開示実施形態による処理と方法は、実時間データ監視および収集能力と性能解析およびシミュレーションツールとを組み合わせるシステムを提供することにより、作業環境100内で動作する1つまたは複数の機械120a、120bの実時間性能に基づく運搬経路の最適化を可能にする。詳細には、本明細書に記載の特徴と方法は、プロジェクト管理者、設備所有者、および/または鉱山オペレータが、高い転がり抵抗条件を有する機械を効果的に特定し、有効積算勾配および/または機械の転がり抵抗を規制する積載量制限を設定または調整するためにこれら機械に関連する性能データを解析できるようにする。任意選択的に、本明細書に記載の特徴と方法は、低い性能のあらゆる潜在的原因を診断および/または是正するように構成されてよい。図3には、運搬経路管理システム135により実行され得る例示的な性能ベースの積載量規制方法を示すフローチャート300を提供する。
【0054】
図3には、機械性能に基づき機械積載量を管理するための例示的な方法を示すフローチャート300を示す。図3に示すように、運搬経路上で動作する少なくとも1つの機械から性能データを収集することができる(工程310)。例えば、運搬経路管理システム135の状態監視システム140は、作業環境100において動作する各機械から性能データを受信/収集することができる。一実施形態によると、状態監視システム140は、機械120a、120bのそれぞれに関連するデータ収集器125からこのデータを自動的に受信することができる。代替案としてあるいは追加として、状態監視システム140は機械120a、120bのそれぞれにデータ要求を行い、この要求に応答した各機械から性能データを受信することができる。
【0055】
機械性能データが収集されると、機械性能データに基づき、機械に関連する有効積算勾配および/または転がり抵抗を決定することができる(工程320)。一実施形態によると、機械性能データの収集後、状態監視システム140は駆動軸性能データをトルク推定器150に提供することができる。例えば、状態監視システム140は、トルクセンサ121aから収集された駆動軸トルクデータをトルク推定器150に配信することができる。状態監視システム140により収集された駆動軸トルクデータと他の性能データ(例えば、機械重量、機械加速、機械の動力伝達系効率、機械のタイヤの動的回転半径等)に基づき、トルク推定器150は機械に関連する牽引力を決定することができる。牽引力が決定されると、トルク推定器150は有効積算勾配および/または機械に関連する転がり抵抗を計算することができる。状態監視システム140は機械120a、120bのそれぞれの動作中に性能データを収集するので、トルク推定器150は各機械の有効積算勾配および/または転がり抵抗を実時間で決定するように構成されてよいと考えられる。
【0056】
機械の有効積算勾配および/または転がり抵抗と目標有効積算勾配および/または転がり抵抗値とをそれぞれ比較することができる(工程330)。例えば、トルク推定器150および/または性能シミュレータ160はそれぞれ、機械の測定転がり抵抗値と目標転がり抵抗値とを比較するように構成されてよい。本明細書で使用される用語「目標転がり抵抗」は、ユーザにより設定されてよい「所定の転がり抵抗値」を指す。一実施形態によると、機械の所望の性能目標に関連する転がり抵抗を定義する目標転がり抵抗は、ユーザにより選択される任意の値を含むことができる。例えば、目標転がり抵抗は、機械をその最も効率的な動作領域で動作させる転がり抵抗値として設定されてよい。あるいはまたは追加として、目標転がり抵抗は、機械に、燃料消費量および/または機械の温室効果ガス排出レベルを最小にさせる転がり抵抗値として設定されてよい。目標転がり抵抗は機械毎または機械の種類毎に異なってよく、経験的試験および/または機械のこれまでの動作を介し決定されてよいと考えられる。
【0057】
ある状況では、目標有効積算勾配および/または転がり抵抗に関連して閾値または「バッファ」範囲を設定することができる。これは、機械の有効積算勾配および/または転がり抵抗の小さなおよび/または一時的な偏差(オペレータエラー等による)が警報条件を引き起こすのを防ぐのに特に有利であろう。閾値範囲は、測定された有効積算勾配および/または転がり抵抗が目標転がり抵抗値から外れてよい許容可能な範囲としてユーザにより設定されてよい。
【0058】
測定された有効積算勾配および/または転がり抵抗が目標有効積算勾配および/または転がり抵抗値の閾値範囲内にそれぞれある(機械が所望の動作範囲内で動作していることを示す)場合(工程330:Yes)、処理は工程310に進み、機械の性能データを監視し続けることができる。一方、測定された有効積算勾配および/または転がり抵抗が目標有効積算勾配および/または転がり抵抗値の閾値範囲内にない(機械が所望の動作範囲の外で動作していることを示す)場合(工程330:No)、性能シミュレータ160は、機械の有効積算勾配および/または転がり抵抗を複数の異なる積載量レベルでシミュレートすることができる(工程340)。例えば、測定された有効積算勾配および/または転がり抵抗が目標有効積算勾配および/または転がり抵抗値の閾値範囲の上限より大きい(機械の所望の性能を維持するために許容できるものより大きな抵抗を機械が運搬道路上で経験しているかもしれないことを示す)場合、性能シミュレータ160は、複数の低減された積載量条件下で機械の性能をシミュレートすることができる。
【0059】
性能シミュレータ160は、模擬有効積算勾配および/または転がり抵抗が閾値範囲内に入るようにする1つまたは複数の積載量レベルを特定することができる(工程350)。一実施形態によると、性能シミュレータ160は、不適合の有効積算勾配および/または転がり抵抗値に関連する積載量レベルから始めることにより積載量レベルを段階的に下げ、各傾斜積載値における機械の性能をシミュレートすることができる。性能シミュレータ160は、模擬有効積算勾配および/または転がり抵抗値が目標有効積算勾配および/または転がり抵抗値の閾値範囲内に入る最初の積載量レベルを特定することができる。
【0060】
別の実施形態によると、性能シミュレータ160は、極めて低い積載値で始め、積載値を段階的に増加し、各傾斜積載値において機械の性能をシミュレートすることができる。性能シミュレータ160は、模擬有効積算勾配および/または転がり抵抗値が目標有効積算勾配および/または転がり抵抗値の閾値範囲に入る最初の積載量レベルを特定することができる。
【0061】
性能シミュレータ160は、模擬有効積算勾配および/または転がり抵抗値が目標有効積算勾配および/または転がり抵抗値の閾値範囲内に入る積載量レベルの検出後にでさえ追加の積載量レベル条件下で機械の性能をシミュレートするように構成されてよいと考えられる。例えば、性能シミュレータ160は、目標有効積算勾配および/または転がり抵抗値に収束する有効積算勾配および/または転がり抵抗値を発見するために追加の積載量レベル条件下で機械の性能をシミュレートするように構成されてよい。
【0062】
一実施形態によると、性能シミュレータ160は各模擬積載量レベルにおける機械の生産性を推定することができる。あるいはまたは追加として、性能シミュレータ160は模擬積載量レベル毎に部品残り寿命を推定することができる。生産性および部品寿命情報は、加入者170に提供される積載量要件165中に要約された費用対効果解析の一部として提供されてよい。その結果、加入者170は、各積載量調整が特定の機械の生産性と耐久性にどのように影響を与え得るかをより効果的に評価することができる。
【0063】
1つまたは複数の積載量レベルが特定されると、性能シミュレータ160は模擬性能データに基づき機械の積載量限界を設定することができる(工程360)。例えば、性能シミュレータ160は、機械の積載量限界を、目標有効積算勾配および/または転がり抵抗に最も近い模擬有効積算勾配および/または転がり抵抗に関連する積載値として設定することができる。代替案としておよび/または追加として、生産性を最大にすることが優先事項である作業環境では、性能シミュレータ160は、機械の積載量限界を、目標有効積算勾配および/または転がり抵抗の閾値範囲内に入る模擬有効積算勾配および/または転がり抵抗に関連する最大積載量限界として設定するように構成されてよい。
【0064】
性能シミュレータ160は、積載量要件165を生成し、積載量要件を1人または複数の加入者170に提供するように構成されてよい(工程370)。積載量要件165は、加入者170に1つまたは複数の機械120a、120bに関連する積載量限界を通知する任意の種類の信号またはメッセージを具現することができる。例えば、性能シミュレータ160は、機械、あるいは機械に積荷することに関与する他の任意の機械に関連する表示操作卓上に積載量限界データを出力することができる。あるいはまたは追加として、性能シミュレータ160は、積載量限界を示す電子メッセージ(例えば、ページング、テキストメッセージ、ファックス、電子メール等)を、それぞれの機械オペレータおよび/またはプロジェクト管理者、運搬道路発送係、掘削機および/またはローダーのオペレータ、または加入者として設定された他の任意の人物またはエンティティに提供することができる。積載量通知に応答して、加入者170は、各機械が所望性能レベルに従って動作することを確実にするために各機械の積載量を制限する適切な対応措置を取ることができる。
【0065】
上記方法に関連するいくつかの態様と特徴は、運搬経路管理システム135の1つまたは複数の特定の構成要素により実行されるものとして説明できるが、これらの特徴は任意の好適なコンピュータシステムにより実行されてよいと考えられる。さらに、図3の工程の順序はあくまで例示的であり、いくつかの工程は図3に示された他の工程の前または後あるいはほぼ同時に実行されてよいと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示実施形態による方法とシステムは、作業環境100の性能および/または生産性を改善する各機械の目標積載量レベルを特定するために、実時間機器監視システムと性能ベースの解析およびシミュレーションツールとを組み合わせる運搬経路管理解決策を提供することができる。本明細書に記載の処理と特徴を採用する作業環境は、高い転がり抵抗値を有する機械を検知し、機械の実時間動作中に各機械から収集された性能データを使用し、所望の性能目標を達成するために積載量レベルを推定する自動システムを提供する。
【0067】
開示された実施形態は、採鉱作業のための運搬経路を含む作業環境に関連して説明されたが、他の機械または一団の機械の生産性に悪影響を及ぼす機械を特定することが有利と考えられる任意の作業環境に適用可能である。一実施形態によると、本開示の運搬経路管理システムとその関連方法は、一団の機械に関連する性能データを監視し一団の機械に関る潜在的問題を診断するネットワーク接続された工事現場環境の一部として実施されてよい。それゆえ、運搬経路管理システムは、1つまたは複数の機械に関連する実時間性能データを使用することにより作業環境の健全性と生産性の両方の監視を可能にする。
【0068】
性能ベースの積載量管理のための本開示のシステムと方法はいくつかの利点を有すると考えられる。例えば、本明細書に記載のシステムと方法は、機械転がり抵抗の変化に基づき機械積載量レベルを迅速に調整する解決策を提供する。機械に積荷することに先立って機械積載量を作業環境要員に通知することにより機械積載量を迅速かつ容易に調整することができるので、運搬道路の生産性を最大にするために迅速な性能調整に依存する作業環境は、転がり抵抗を低減するために運搬道路区間の再設計に依存する従来システムによるものより効率的であると考えられる。
【0069】
さらに、本開示の性能ベースの積載量管理システムは著しいコスト優位性を有することができる。例えば、1つまたは複数の機械に関連する転がり抵抗の偏差を検出し、目標転がり抵抗レベルを満足するために機械積載量レベルを迅速に変更するシステムを提供することにより、いくつかの従来システムにより必要とされるような運搬道路に対する高価でかつ侵襲的な変更を必要とせずに所望の機械性能レベルを達成することができる。
【0070】
本開示の範囲から逸脱することなく、性能ベースの積載量管理のための本開示のシステムと方法に対し様々な変形と修正をなし得ることは当業者に自明である。本開示の他の実施形態は本明細書の考察と本開示の実行から当業者に自明である。本明細書と例はあくまで例示的であると考えられ、本開示の真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬道路条件に基づき機械積載量を管理する方法であって、
作業環境において動作する機械に関連する性能データを収集する工程(310)と、
収集された性能データに基づき機械の実際の有効積算勾配を決定する工程(320)と、
実際の有効積算勾配と目標有効積算勾配値とを比較する工程(330)と、
実際の有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内にない場合、複数の積載量レベルで有効積算勾配をシミュレートする工程(340)と、
模擬有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内に入るようにさせる複数の積載量レベルの少なくとも1つを特定する工程(350)と、を含む方法。
【請求項2】
機械の積載量限界を、複数の積載量レベルの少なくとも1つの最大積載量レベルとして設定する工程(360)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
機械の積載量限界を示す積載量通知を生成する工程と、
積載量加入者に積載量通知を提供する工程(370)と、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
模擬有効積算勾配データを出力する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
有効積算勾配をシミュレートする工程は、
収集された性能データに基づき機械のソフトウェアモデルを生成することと、
生成されたソフトウェアモデルを使用して機械の動作をシミュレートすることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の積載量レベルのそれぞれに対し、機械の生産性レベルを決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の積載量レベルのそれぞれに対し、機械の1つまたは複数の駆動系部品に関連する寿命を推定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
作業環境(100)において動作する機械とデータ通信を行う状態監視システム(140)であって、
作業環境において動作する機械(120a、120b)に関連する性能データを収集し、
性能データに基づき機械の実際の有効積算勾配を監視するように構成された状態監視システムと、
状態監視システムに通信で結合された性能シミュレータ(160)であって、
実際の有効積算勾配と目標有効積算勾配値とを比較し、
実際の有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内にない場合、複数の積載量レベルと関連する有効積算勾配をシミュレートし、
模擬有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内に入るようにさせる複数の積載量レベルの少なくとも1つを特定するように構成された性能シミュレータと、を含む運搬経路管理システム(135)。
【請求項9】
性能シミュレータはさらに、機械の積載量限界を、模擬有効積算勾配が目標有効積算勾配値の閾値範囲内に入るようにさせる複数の積載量レベルの少なくとも1つの最大積載量レベルとして設定するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
性能シミュレータはさらに、機械の積載量限界を示す積載量通知を生成し(165)、積載量通知を積載量加入者(170)に提供するように構成される、請求項8に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−501264(P2011−501264A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528901(P2010−528901)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/011683
【国際公開番号】WO2009/048624
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】