説明

恒温槽、記録装置

【課題】加熱炉の保温性を考慮した記録装置を提供すること。
【解決手段】板状部材で覆われた空間内で加温された気体を保持する恒温槽であって、前記板状部材は、前記空間に接する第1板状部材と、第2板状部材と、前記第1板状部材と前記第2板状部材とを接続する接続部と、を備え、前記第1板状部材と前記接続部との接触部分の少なくとも一部が前記空間よりも外側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温槽、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録装置の一例としての写真現像焼付装置は、被記録媒体の一例としての印画紙を乾燥させるための恒温槽の一例である乾燥ユニットを備えていた。そして、水洗いされた印画紙を乾燥ユニット内に導入することにより、印画紙を乾燥させていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−83059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乾燥ユニットは、熱による剛性維持のために金属材料で組み立てられていた。しかしながら、金属材料は比較的熱伝導率が高いため、乾燥ユニットの内部の熱が金属部材を介して外部に逃げやすくなり、乾燥ユニットの内部の保温性が低下し、乾燥ユニット内の温度を一定に保つことが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる恒温槽は、板状部材で覆われた空間内で加温された気体を保持する恒温槽であって、前記板状部材は、前記空間に接する第1板状部材と、第2板状部材と、前記第1板状部材と前記第2板状部材とを接続する接続部と、を備え、前記第1板状部材と前記接続部との接触部分の少なくとも一部が前記空間よりも外側に設けられたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、空間の熱は、第1板状部材を経由して接続部に向かって放出されるが、第1板状部材と接続部との接触部分の少なくとも一部が空間よりも外側に設けられている。換言すれば、空間は、前記接触部分の一部よりも内側に設けられる。従って、空間の熱が第1板状部材を経由して接続部から放熱される熱流路が狭くなるため、空間から板状部材の外部への熱放出が抑制され、空間内の温度を一定に保つことができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる恒温槽では、側面視において、前記空間と前記接続部に接続された前記第1板状部材の前記接触部分との重なり合う部分が前記第1板状部材の板厚分であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1板状部材を経由して接続部から放熱される熱流路が第1板状部材の板厚分となるため、さらに、熱流路が狭くなり、熱放出を効率よく抑制することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる恒温槽では、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に断熱層を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、さらに、断熱性能が高まり、空間における保温性を向上させることができる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかる記録装置は、上記の恒温槽を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、保温性が高い恒温槽によって、例えば、記録媒体に記録された印刷物等の乾燥が効率よく実施され、品位の高い記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】記録装置の構成を示す概略図。
【図2】恒温槽の構成を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせている。
【0016】
まず、記録装置の構成について説明する。なお、本実施形態の記録装置では、産業用ラベルプリンターの構成を例に挙げて説明する。図1は、記録装置の構成を示す概略図である。図1に示すように、記録装置1は、記録媒体としてのロール紙Pを搬送する搬送部30と、搬送されるロール紙Pに機能液を塗布する記録ヘッド40と、記録ヘッド40を走査させるキャリッジ2と、ロール紙Pに塗布された機能液を乾燥させる乾燥部20等を備えている。
【0017】
搬送部30は、ロール紙Pを供給する供給ローラー31と、描画されたロール紙Pを巻き取って除材する除材ローラー32と、ロール紙Pを供給ローラー31側から除材ローラー32へ送る第1ローラー13及び第2ローラー14と、ロール紙Pの搬送を補助する補助ローラー15等を有している。そして、記録ヘッド40に対向してプラテン4が配置されている。当該プラテン4にはロール紙Pを負圧によって吸着する吸着装置が接続されており、ロール紙Pをプラテン4の面に吸着させることができる。
【0018】
記録ヘッド40は、例えば、インクジェットヘッドを備え、ロール紙Pに対して機能液を液滴として吐出して記録を実行することができるように構成されている。記録ヘッド40は、主走査軸と、主走査軸に直交する副走査軸とを有するキャリッジ2に固定され、キャリッジ2を移動させることにより、記録ヘッド40を所定の位置に移動させることができる。
【0019】
次に、乾燥部20の構成について説明する。乾燥部20は、空気を加温する熱源(図示せず)と、熱源によって加温された空気を保持する恒温槽5とを備える。熱源は、例えば、熱風発生機やニクロム線などである。本実施形態では、熱源によって加温された空気が恒温槽5内(空間11)に供給されるように構成されている。
【0020】
また、乾燥部20は、ロール紙Pが搬送される搬送経路上に配置されている。本実施形態の乾燥部20は、ロール紙Pの搬送方向において記録ヘッド40よりも下流側に配置されている。これにより、記録後のロール紙P上の機能液を積極的に乾燥させることができる。なお、乾燥部20は、ロール紙Pの搬送方向において記録ヘッド40よりも上流側に配置してもよい。この場合には、記録前の段階でロール紙Pを加熱することができ、記録を実行した際のロール紙P上の機能液の乾燥を促進させることができる。さらには、乾燥部20を、ロール紙Pの搬送方向において記録ヘッド40に対して上流側及び下流側の両方に配置してもよい。この場合には、記録前の段階でロール紙P上の機能液の乾燥を促進させるとともに、記録後のロール紙P上の機能液を効率よく乾燥させることができる。
【0021】
次に、恒温槽の構成について説明する。図2は、恒温槽の構成を示す側断面図である。恒温槽5は、加温された空気が保持される空間11を覆う板状部材21を備えている。板状部材21は、空間11に接する第1板状部材6と、第2板状部材7と、第1板状部材6と第2板状部材7とを接続する接続部8と、を備え、第1板状部材6と接続部8との接触部分18の少なくとも一部が空間11よりも外側に設けられている。
【0022】
本実施形態の恒温槽5は、6つの板状部材21が接続された6面体を成している。そして、互いに形状が異なる第1板状部材6A,6Bを有している。第1板状部材6Aは、第1板状部材6Aの端部でほぼ直角に折り曲げられた第1折り曲げ部6aを有し、第1板状部材6Aの端部が接続部8の一方の面にねじ等で接続されている。第1板状部材6Bは、第1板状部材6Bの端部でほぼ直角に折り曲げられた第1折り曲げ部6aと、第1折り曲げ部6aよりさらに第1板状部材6Bの先端部でほぼ直角に折り曲げられた第2折り曲げ部6bと、第2折り曲げ部6bよりさらに第1板状部材6Bの先端部でほぼ直角に折り曲げられた第3折り曲げ部6cとを有し、第1板状部材6Bの端部が接続部8の一方の面にねじ等で接続されている。
【0023】
一方、第2板状部材7は、平坦形状が維持され、接続部8の他方の面にねじ等で接続されている。そして、板状部材21同士が接合部材12によって接合されている。これにより、複数の板状部材21によって密閉された空間11が形成される。板状部材21同士の接合では、側面視において、空間11と接続部8に接続された第1板状部材6の接触部分18とが重なり合う部分が第1板状部材6の板厚分となるように接合する。これにより、空間11から接続部8に向けて伝わる熱経路の広さを抑えることができる。
【0024】
さらに、恒温槽5は、第1板状部材6と第2板状部材7との間に断熱層を備えている。本実施形態では、第1板状部材6と第2板状部材7との間に断熱材9を備えている。断熱材9は、例えば、ウレタンなどである。これにより空間11の温度を一定に保持することができる。なお、断熱層としては、例えば、空気層であってもよい。このようにしても、空気が断熱効果を有するため、空間11内の温度を一定に保持することができる。
【0025】
従って、上記実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0026】
恒温槽5の空間11内の加温された空気の熱は、第1板状部材6から接続部8へ、接続部8から第2板状部材7に伝わり、恒温槽5の外へ逃げていく。しかしながら、本実施形態では、第1板状部材6から接続部8へ熱が伝わる熱経路が、第1板状部材6の板厚分であるため、狭くなっている。このため、恒温槽5の外部へ放出する熱量が抑制され、空間11内の温度を一定に保持することができる。
【0027】
なお、上記の形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0028】
(変形例1)上記実施形態では、板状部材21の第1板状部材6A,6Bが互いに異なる形状であったが、これに限定されず、第1板状部材6A,6Bのいずれの形状だけを適宜選択してもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【0029】
(変形例2)上記実施形態では、恒温槽5を有する乾燥部20を備えた記録装置1としての産業用ラベルプリンターを例に説明したが、これに限定されない。例えば、インクジェットプリンター、ラインプリンター、写真現像焼付装置、複写機、ファクシミリ等に対して恒温槽5を有する乾燥部20を適宜適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…記録装置、5…恒温槽、6A,6B…第1板状部材、7…第2板状部材、8…接続部、9…断熱層としての断熱材、11…空間、18…接触部分、20…乾燥部、21…板状部材、40…記録ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材で覆われた空間内で加温された気体を保持する恒温槽であって、
前記板状部材は、
前記空間に接する第1板状部材と、
第2板状部材と、
前記第1板状部材と前記第2板状部材とを接続する接続部と、を備え、
前記第1板状部材と前記接続部との接触部分の少なくとも一部が前記空間よりも外側に設けられたことを特徴とする恒温槽。
【請求項2】
請求項1に記載の恒温槽において、
側面視において、前記空間と前記接続部に接続された前記第1板状部材の前記接触部分との重なり合う部分が前記第1板状部材の板厚分であることを特徴とする恒温槽。
【請求項3】
請求項1または2に記載の恒温槽において、
前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に断熱層を備えたことを特徴とする恒温槽。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の恒温槽を備えた記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−116035(P2012−116035A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266225(P2010−266225)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】