説明

息力測定方法

【課題】携行可能で初期設定可能な表示器と設定手段を有する息力測定装置を提供する。
【解決手段】マイクロフォンを備えた携帯端末を用いて呼気の息力を測定することと、測定された呼気の息力をグラフ表示するとともに、その値が所定の範囲内にない場合には、再測定を求めるためのメッセージを表示することと、所定の時刻に音または振動によるアラームを発報するとともに、息力測定プログラムの起動と息力測定を求めるためのメッセージを表示することによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気の息力を測定する息力測定方法に係り、特にマイクロフォンを備えた携帯端末を用いて、呼気の息力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息は、ピークフローメータを使用して症状を把握し、吸入ステロイドを中心とした適切な治療を継続することによって、多くの場合において症状をコントロールし、発作による緊急外来の利用や入院などを防ぐことができる疾病である。
【0003】
この時に症状の把握のために使用される指標は、ピーク呼気流量(PEF)であり、最大吸気状態から最大限の努力をして個人が肺から空気を吐き出すことのできる最大流量として定義される。即ち、PEF値は、ユーザの肺換気機能を把握するための測定値であり、PEF値が所定のしきい値より大きい場合は、患者であるユーザの気道が広く、小さい場合は気道が狭い状態であると考えられる。そして、ピークフローメータは、PEF値をリットル/分で測定するものである。
【0004】
一方、発作による緊急外来の利用や入院などを防ぐために、特許文献1のようなネブライザシステムや特許文献2のような医用遠隔システムが提案されている。
【0005】
特許文献1は、在宅医療を行なう患者に効率的で最適なサービスを提供することのできるネブライザシステムに関するものであり、ステップS30においてネプライザ1を用いて測定したPEF値を、ステップS225においてPC3を用いて健康サーバ5に送信することが記載されている。
【0006】
特許文献2は、喘息や糖尿病のような慢性疾患の患者が自ら実行して疾患症状の安定化を図る一連の医学的処置である患者自己管理プログラムを、医療機関へ入院したり連日に亘り通院したりする必要なく、例えば患者の自宅にて実行する用途に最適な構成に関するものであり、段落[0007]には、多くの臨床医が毎日のPEF測定によって喘息の発生を早期に警告することができることを認識していることが記載され、また、段落[0050]には、ピークフローメータ1a−2が患者のピークフロー値(PEF)を測定し、電話回線等の通信路を介して送信する機能を有することが記載されている。
【0007】
さらに、特許文献2の段落[0059]には、ピークフローメータ1a−2内部に無線通信や携帯電話機能を備えることにより、モジュラージャックの接続自体も省略することが出来ることが記載され、また、段落[0062]には、患者が旅行等で移動した際にも移動先でテレメディスンを実行することが出来ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−159332
【特許文献2】特開2004−041472
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“ディジーズ・マネジメント・レポーターNo.2”、[online]、2004年8月、株式会社損保ジャパン総合研究所、[2010年11月11日検索]、インターネット<URL:http://www.sj-ri.co.jp/research/healthcare_socials/pdf/dmr-2.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のネプライザ1は携行するには大きすぎるため、外出中に外出先でPEF値を測定することは困難であるという問題点を有し、特許文献2のピークフローメータ1a−2は、携行可能な大きさではあるが、携帯電話のように日常的に携行するような機器ではなくディジーズマネジメント用の専用機器であるため、始めは良くても日数の経過と共に携行することの煩わしさが強まるという問題点を有する。
【0011】
これらの問題点に関連する内容について、上記提案とほぼ同時期に発行された非特許文献1に記載されている。即ち、2頁の右欄の表2「小児と成人のピークフロー日誌継続率」には、成人の12週間継続率(75.0%)と24週間継続率(56.3%)、および小児の12週間継続率(63.6%)と24週間継続率(27.3%)が記載されている。このデータは、ピークフロー値管理を開始した時点から約半年経過すると、成人では約半数まで、小児では約4分の1まで、継続率が低下することを示している。
【0012】
また、非特許文献1の3頁の左欄には、「管理プログラムの実施を通じて明らかにされた課題」として、「ピークフロー値の測定を中断してしまうケースとしては、症状が落ち着いたから測定しなくなるケースが多」いことと「小児参加者の家族から「子供が言うことを聞かずピークフロー値の測定が開始できない」との声が多く寄せられた」ことが記載されている。なお、これらの問題点が上記提案によってどの程度解消されたか不明である。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、マイクロフォンを備えた携帯端末を用いることによって、患者の負担感を解消して継続率を向上させることが可能な呼気の息力測定方法を提供することを目的とする。ここで、息力とは、ピークフローと相関する物理量と1秒間の最大呼気流量と相関する物理量を示すものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明は、マイクロフォンを備えた携帯端末を用いて、呼気の息力を測定する息力測定方法であって、設定画面表示手段が、前記呼気の息力を測定するために必要な複数の初期設定項目を表示するとともに、その中の1つに対して初期設定を開始するための入力を待つ設定画面表示ステップと、初期設定手段が、前記入力に基づいて前記複数の初期設定項目の中の1つに対する初期設定値を記憶する初期設定ステップと、前記設定画面表示ステップと前記初期設定ステップを繰り返すことによって、前記複数の初期設定項目のそれぞれに対する複数の初期設定値を全て記憶した後に、測定画面表示手段が、記憶された前記複数の初期設定値の少なくとも1つを表示するとともに、前記呼気の息力の測定を開始するための入力を待つ測定画面表示ステップと、息力測定手段が、前記入力に基づいて前記呼気の息力を測定する息力測定ステップと、測定結果表示手段が、測定された前記呼気の息力を表示するとともに、再測定を開始するための入力を待つ測定結果表示ステップと、を有することを特徴とする息力測定方法を提供する。
【0015】
本発明においては、前記複数の初期設定項目は、身長と年齢と性別を含み、前記初期設定ステップは、身長設定手段が、被験者によって入力された前記被験者の身長を記憶する身長設定ステップと、年齢設定手段が、前記被験者によって入力された前記被験者の年齢を記憶する年齢設定ステップと、性別設定手段が、前記被験者によって入力された前記被験者の性別を記憶する性別設定ステップと、を含み、さらに、標準値演算手段が、前記身長と前記年齢と前記性別に基づいて前記呼気の息力の標準値を算出してその結果を記憶する標準値演算ステップを含むのが好ましい。
前記複数の初期設定項目は、さらに、前記被験者の平常時の状態を示す自己標準値を含み、前記初期設定ステップは、さらに、自己標準値設定手段が、事前に前記被験者の呼気流量を連続的に測定し、この連続的に測定された呼気流量のピーク値を算出し、この測定から算出までを2回繰り返して高い方のピーク値を自己標準値として記憶する自己標準値設定ステップを含むのが好ましい。
前記息力測定ステップは、呼気流量測定手段が、測定開始から測定終了までの間連続的に呼気流量を測定する呼気流量測定ステップと、ピーク値演算手段が、連続的に測定された呼気流量のピーク値を算出するピーク値演算ステップを含むのが好ましい。
【0016】
本発明においては、測定画面表示ステップと測定結果表示ステップは、前記複数の初期設定値の少なくとも1つを変更するために、設定画面表示ステップに進む操作手段をそれぞれ有するのが好ましい。
設定画面表示ステップと測定画面表示ステップと測定結果表示ステップは、関連情報表示ステップに進む操作手段をそれぞれ有し、関連情報表示ステップでは、関連情報表示手段が、前記呼気の息力の測定に関連するリンク先のアドレスを表示するのが好ましい。
測定結果表示ステップでは、さらに、測定された前記呼気の息力が前記自己標準値を基準とした所定の範囲内にない場合には、測定結果表示手段が、再測定を求めるためのメッセージを表示するのが好ましい。
測定結果表示ステップでは、さらに、測定された前記呼気の息力が前記自己標準値を超える場合には、測定結果表示手段が、前記自己標準値の再設定を求めるためのメッセージを表示するのが好ましい。
測定結果表示ステップでは、さらに、測定結果表示手段が、測定された前記呼気の息力の経時変化を示すグラフを表示するのが好ましい。
さらに、前記呼気の息力を忘れずに測定させるために、報知手段が、所定の時刻に音または振動によるアラームを発報するとともに、本発明の実施形態に係る息力測定方法をCPUに実行させるためのプログラムについて、その起動を求めるためのメッセージを表示する報知ステップを有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マイクロフォンを備えた携帯端末を用いて呼気の息力を測定することによって、外出中に外出先で息力を容易に測定することができるだけでなく、ディジーズマネジメント用の専用機器をわざわざ携行する必要がなくなるため、ピークフロー日誌継続率の低下を防ぐ効果が期待できる。
【0018】
また、測定された呼気の息力をグラフ表示するとともに、その測定結果が自己標準値を基準とした所定の範囲内にない場合には、再測定を求めるためのメッセージを表示することによって、マイクロフォンに呼気が少ししか当たらなかったり呼気とは無関係な大きな音が入ったりすることによる測定ミスを防ぐことができる。
【0019】
さらに、所定の時刻に音または振動によるアラームを発報することによって、呼気の息力を忘れずに測定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯端末の斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係る携帯端末の回路構成を示すブロック図であり、(b)は、携帯端末の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る息力測定方法を示すフロー図である。
【図4】図3に示す初期設定ステップを表わすフロー図である。
【図5】図3に示す息力測定ステップを表わすフロー図である。
【図6】図3に示す関連情報表示ステップを表わすフロー図である。
【図7】(a)〜(d)は、図3に示すそれぞれのステップにおけるタッチパネルの表示状態を表わす平面図である。
【図8】(a)〜(d)は、図4に示すそれぞれのステップにおけるタッチパネルの表示状態を表わす平面図である。
【図9】図6に示すそれぞれのステップにおけるタッチパネルの表示状態を表わす平面図である。
【図10】呼気の息力の経時変化を示すグラフである。
【図11】マイクロフォンに呼気を当てる時の携帯端末の把持方法を示す立体図。
【図12】(a)〜(e)は、アラーム設定のそれぞれのステップにおけるタッチパネルの表示状態を表わす平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付の図面と表に示す好適実施形態に基づいて、本発明の実施形態に係る息力測定方法を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯端末の斜視図であり、図2(a)は、本発明の実施形態に係る携帯端末の回路構成を示すブロック図であり、(b)は、携帯端末の機能構成を示すブロック図である。
【0023】
携帯端末10の回路は、CPU10aとメモリ10bとマイクロフォン12とタッチパネル14とホームボタン16から構成される。CPU10aは、プログラムによって様々な数値計算や情報処理、機器制御などを行うための電子部品である。メモリ10bは、CPU10aが処理すべきデジタルデータをある期間だけ保持するための電子部品である。マイクロフォン12は、音を電気信号に変換するための電子部品であり、通常は携帯端末10を用いて電話する際の音声信号の入力装置である。タッチパネル14は、タッチスクリーンやタッチ画面などとも呼ばれ、液晶パネルのような表示装置とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた電子部品であり、画像情報を画面上に表示する出力装置であると同時に、画面上の表示を押すことで機器を操作する入力装置である。ホームボタン16は、アプリケーションの使用中に1回押して、最後に表示したホーム画面に戻し、もう1回押して、ホーム画面の1ページ目に戻すためのボタンである。
【0024】
CPU10aとメモリ10bとマイクロフォン12とタッチパネル14とホームボタン16とが複合的に組み合わされて、本発明の実施形態に係る息力測定方法の各ステップが実行される。即ち、各ステップの実行主体は、CPU10aとメモリ10bとマイクロフォン12とタッチパネル14とホームボタン16とが複合的に組み合わされて構成されたものである。なお、各ステップの実行主体については、各ステップについての具体的な説明の中で説明する。
【0025】
図3は、本発明の実施形態に係る息力測定方法を示すフロー図であり、図4は、図3に示す初期設定ステップを表わすフロー図であり、図5は、図3に示す息力測定ステップを表わすフロー図であり、図6は、図3に示す関連情報表示ステップを表わすフロー図である。また、図7(a)〜(d)は、図3に示すそれぞれのステップにおけるタッチパネルの表示状態を表わす平面図であり、図8(a)〜(d)は、図4に示すそれぞれのステップにおけるタッチパネルの表示状態を表わす平面図であり、図9は、図6に示すそれぞれのステップにおけるタッチパネルの表示状態を表わす平面図である。これらの図に基づいて、本発明の実施形態に係る息力測定方法の各ステップについて具体的に説明する。
【0026】
本発明の実施形態に係る携帯端末10のメモリ10bには、本発明の実施形態に係る息力測定方法をCPUに実行させるためのプログラムが保存されている。携帯端末10のタッチパネル14を操作することによって、このプログラムが起動されると、ロード画面表示手段20が、図7(a)に示すロード画面を表示する(ステップS20)。そして、呼気の息力を測定するために必要な複数の初期設定項目について、少なくとも1つの設定が済んでいない場合にはステップS30に進み、全ての設定が済んでいる場合にはステップS50に進む(ステップS22)。
【0027】
未設定項目がある場合には、設定画面表示手段30が、図7(b)に示す設定画面を表示する(ステップS30)。そして、エリア102、エリア104、エリア106、エリア108のいずれかにタッチした場合にはS40に進み、アイコン156にタッチした場合にはS80に進む(ステップS32)。なお、ステップS32では、アイコン152とアイコン154は動作しないように設計されている。
【0028】
初期設定手段40は、身長設定手段40a、年齢設定手段40b、性別設定手段40c、標準値演算手段40d、および自己標準値設定手段40eから構成される。エリア102、エリア104、エリア106、エリア108のいずれにタッチしたのかによって条件分岐を行い、エリア102にタッチした場合にはS404に進み、エリア104にタッチした場合にはS406に進み、エリア106にタッチした場合にはS408に進み、エリア108にタッチした場合にはS412に進む(ステップS402)。
【0029】
S404では、身長設定手段40aが、図8(a)に示す設定画面を表示し、エリア110にタッチした時のエリア112とエリア114の中央に位置する値を身長設定値として、メモリ10bに記憶させる(ステップS404)。身長設定値は、デフォルト値を165とし、90〜199の範囲から選択される。即ち、エリア112にタッチしたまま上下方向にスライドすることによって、上位2桁9〜19を選択し、エリア114にタッチしたまま上下方向にスライドすることによって、下位1桁0〜9を選択することができる。
【0030】
S406では、年齢設定手段40bが、図8(b)に示す設定画面を表示し、エリア110にタッチした時のエリア116とエリア118の中央に位置する値を年齢設定値として、メモリ10bに記憶させる(ステップS406)。年齢設定値は、デフォルト値を25とし、0〜99の範囲から選択される。即ち、エリア116にタッチしたまま上下方向にスライドすることによって、上位1桁0〜9を選択し、エリア118にタッチしたまま上下方向にスライドすることによって、下位1桁0〜9を選択することができる。
【0031】
S408では、性別設定手段40cが、図8(c)に示す設定画面を表示し、エリア110にタッチした時のエリア120の中央に位置する値を性別設定値として、メモリ10bに記憶させる(ステップS408)。性別設定値は、デフォルト値を男性とし、エリア120にタッチしたまま上下方向にスライドすることによって、女性を選択することができる。
【0032】
S404、S406、S408において設定された身長、年齢、性別の各初期設定値に基づいて、標準値演算手段40dが標準値を算出し、その算出結果をメモリ10bに記憶させる(ステップS410)。標準値の算出方法は、年齢設定値と身長設定値の両方が標準値一覧表の範囲内に含まれる場合には、表中の年齢設定値と身長設定値の組み合わせに最も近い値を標準値とし、年齢設定値と身長設定値の少なくとも一方が標準値一覧表の範囲内に含まれない場合には、所定の数式による演算結果を標準値とする。
【0033】
より具体的には、性別設定値が男性の場合、年齢選択範囲0〜99と身長選択範囲90〜199の中で、年齢設定値が6〜18でかつ身長設定値が100〜185の場合には表1に示す男児の標準値一覧表を適用し、年齢設定値が19〜85でかつ身長設定値が145〜195の場合には表3に示す成人の標準値一覧表の左側を適用して、年齢設定値に最も近い値と身長設定値に最も近い値の組み合わせが示す表中の値を標準値とする。例えば、22歳で157cmの場合には、20歳で155cmに近似して呼気の息力の標準値を525L/分とし、23歳で158cmの場合には、25歳で160cmに近似して呼気の息力の標準値を569L/分とする。
【0034】
また、年齢設定値が0〜5の場合には数1に示す式を適用し、年齢設定値が86〜99の場合には数2に示す式を適用して演算し、その結果の小数第1位を四捨五入した整数値を標準値とする。ここで、Hは身長設定値(cm)であり、Aは年齢設定値である。なお、年齢設定値が6〜18でかつ身長設定値が90〜99、186〜199の場合、および年齢設定値が19〜85でかつ身長設定値が90〜144、196〜199の場合のそれぞれに適用される式については、記載を省略する。
【0035】
【数1】


【数2】

【0036】
さらに、性別設定値が女性の場合、年齢選択範囲0〜99と身長選択範囲90〜199の中で、年齢設定値が6〜18でかつ身長設定値が95〜175の場合には表2に示す女児の標準値一覧表を適用し、年齢設定値が19〜85でかつ身長設定値が130〜180の場合には表3に示す成人の標準値一覧表の右側を適用する。
【0037】
また、年齢設定値が0〜5の場合には数3に示す式を適用し、年齢設定値が86〜99の場合には数4に示す式を適用する。ここで、Hは身長設定値(cm)であり、Aは年齢設定値である。なお、年齢設定値が6〜18でかつ身長設定値が90〜94、176〜199の場合、および年齢設定値が19〜85でかつ身長設定値が90〜129、181〜199の場合のそれぞれに適用される式については、記載を省略する。
【0038】
【数3】


【数4】

【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
標準値は、身長、年齢、性別に基づく統計データから算出した平均的な値であるのに対して、自己標準値は、追加治療薬を使用せず喘息症状が無い状態での2週間の最高測定値であり、少なくとも2週間毎に再設定する必要がある。S412では、自己標準値設定手段40eが、図8(d)に示す設定画面を表示し、被験者の呼気流量を連続的に測定し、この連続的に測定された呼気流量のピーク値を算出する。そして、再度被験者の呼気流量を連続的に測定し、再度呼気流量のピーク値を算出し、1回目のピーク値と2回目のピーク値のうち高い方のピーク値を自己標準値として、メモリ10bに記憶させる(ステップS412)。なお、本発明の実施形態に係る携帯端末10のマイクロフォン12に呼気を当てる方法、および呼気による音を呼気流量に換算する方法については後述する。
【0043】
図4における記載は省略するが、S404、S406、S408、S412でもS32と同様に、アイコン156にタッチした場合にはS80に進み、アイコン152とアイコン154は動作しないように設計されている。
【0044】
呼気の息力を測定するために必要な全ての初期設定項目について、設定が終了すると、測定画面表示手段50が、図7(c)に示す測定画面を表示する(ステップS50)。例えば、被験者が22歳で身長157cmの男性である場合には、呼気の息力の標準値は525L/分となるので、これをグラフ上に表示する。また、S412で設定した自己標準値が580L/分であったとすると、同様にこれをグラフ上に表示すると同時に、自己標準値の0〜60%(0〜348L/分)を赤色に、60〜80%(348〜464L/分)を黄色に、80〜100%(464〜580L/分)を緑色に、目盛の周辺を帯状に着色する。即ち、本発明は、標準値を参考にしながら自己標準値に基づく日常管理を行うものである。
【0045】
そして、図示しない開始ボタンにタッチした場合にはS60に進み、アイコン154にタッチした場合にはS30に戻り、アイコン156にタッチした場合にはS80に進む(ステップS52)。なお、ステップS52では、アイコン152は動作しないように設計されている。
【0046】
息力測定手段60は、呼気流量測定手段60aとピーク値演算手段60bから構成される。S602では、呼気流量測定手段60aが、被験者の呼気流量を連続的に測定する(ステップS602)。測定中は、連続的に測定する呼気流量をリアルタイムにグラフ表示してもよい。そして、図示しない終了ボタンにタッチした場合、または所定の時間が経過した場合にはS604に進む。なお、本発明の実施形態に係る携帯端末10のマイクロフォン12に呼気を当てる方法、および呼気による音を呼気流量に換算する方法については後述する。
【0047】
S604では、ピーク値演算手段60bが、連続的に測定された呼気流量のピーク値を算出する(ステップS604)。図5における記載は省略するが、S602、S604でもS52と同様に、アイコン154にタッチした場合にはS30に戻り、アイコン156にタッチした場合にはS80に進み、アイコン152は動作しないように設計されている。
【0048】
呼気の息力測定が終了すると、測定結果表示手段70が、図7(d)に示す測定結果表示画面を表示する(ステップS70)。例えば、測定結果が560L/分であったとすると、標準値や自己標準値の表示と混同しないようにこれをグラフ上に表示すると同時に、その数値を表示する。また、測定結果が前記自己標準値を基準とした所定の範囲内にない場合には、測定結果表示手段70が、再測定を求めるためのメッセージを表示してもよい。例えば、測定結果が自己標準値の80〜100%を示す緑色の範囲にない場合には、マイクロフォンに呼気が少ししか当たらなかったり呼気とは無関係な大きな音が入ったりすることによる測定ミスがなかったとは断言できないので、このような場合には再測定するのが望ましい。さらに、測定結果が自己標準値を超える場合には、測定結果表示手段70が、再測定を求めるためのメッセージに加えて自己標準値の再設定を求めるためのメッセージを表示してもよい。
【0049】
そして、エリア122にタッチした場合にはS60に戻り、アイコン154にタッチした場合にはS30に戻り、アイコン156にタッチした場合にはS80に進む(ステップS72)。なお、ステップS72では、アイコン152は動作しないように設計されている。
【0050】
上記実施形態の説明において、ステップS50で表示される図7(c)の測定画面のグラフとステップS70で表示される図7(d)の測定結果表示画面のグラフは、呼気の息力の経時変化を示すグラフではないが、これの代わりに、図10のような経時変化を示すグラフでもよい。この場合には、過去の測定結果と今回の測定結果とをその場で比較して、再測定するか否か判断することができる。
【0051】
本発明の息力測定プログラムの動作中にアイコン156にタッチすると、関連情報表示手段80が、図9に示す関連情報表示画面を表示する(ステップS802)。この画面には、呼気の息力の測定に関連するリンク先のアドレスが記載されており、例えば、アレルギー遠隔教育学院では、免疫アレルギー疾患等の予防や治療における知識を、わかりやすい動画による解説と資料を使った講義をe−ラーニングとして受講できるので、免疫アレルギー疾患等の予防や治療に関する知識を深めるのに効果的である。そして、アイコン152にタッチした場合にはS50に戻り、アイコン154にタッチした場合にはS30に戻る(ステップS804)。なお、ステップS804では、アイコン156は動作しないように設計されている。
【0052】
図3〜6における記載は省略するが、本発明の息力測定プログラムの終了方法は、周知の方法を用いている。例えば、iPhoneではホームボタン16の押下により、任意のタイミングで終了させることができる。
【0053】
本発明の実施形態に係る携帯端末10のマイクロフォン12に呼気を当てる方法は、マイクロフォン12の位置によって携帯端末10の機種毎に異なるが、例えば、iPhone4では図11に示すように親指とその他の指との間に携帯端末10を把持し、マイクロフォン12が取り付けられている携帯端末10の左側下部の近くに被験者の口を正対させ、最大に吸気した後に最強の呼気を携帯端末10の左側下部に当てる。この時、呼気流量を一定に保っていても、途中で口の大きさ、即ち、呼気の出口の断面積が変化してしまうと、呼気流速が変化し、マイクロフォン12に発生する雑音成分が増減してしまう。また、前回の測定と今回の測定とで呼気流量に変化がなくても、測定の度に口の大きさが変化してしまうと測定結果が異なってしまう。
【0054】
この問題を解消する必要がある場合には、マウスピースを使用するのが好ましい。マウスピースは、ピークフローメータやネブライザ用の部品として市販されているが、円形または長円形などの断面を有する樹脂製パイプであり、これを口にくわえて息を吐くことによって、口の大きさの変化による測定誤差を排除することができる。
【0055】
本発明の実施形態に係る携帯端末10のマイクロフォンに当てられた呼気による音を呼気流量に換算する方法は、既存のピークフローメータを基準として比較測定し、同じ強さの呼気を測定した時に既存のピークフローメータと同じ呼気流量が表示されるように換算テーブルを作成しておくものである。
【0056】
マイクロフォンに当てられた呼気による音を呼気流量に換算する方法について、特公平1−18735にはマイクロフォンに風が衝突するとその風速に比例して雑音成分が出力されることを利用して呼気流速を知り、断面積との積によって呼気流量を測定することが記載されている。具体的には、既知の断面積を有する筒状ケースの中心軸近傍に、防風スクリーンを装着していないマイクロフォンと防風スクリーンを装着したマイクロフォンとを配置し、減算器を用いてそれら2つの信号間で減算することにより音声信号をキャンセルして、呼気流が流れたことによる雑音成分のみを取り出す。そして、風速と等価雑音レベルの関係を示すグラフに基づいて、等価雑音レベルを風速に換算後、その換算結果と筒状ケースの断面積との積によって呼気流量を算出する。
【0057】
これに対して、本発明では携帯端末に備えられたマイクロフォンをそのまま用いているので、使用するマイクロフォンが1つである点と音声信号をキャンセルするための減産器を使用しない点、即ち、専用機器を要しない点で相違する。その理由は、本発明の目的が、患者の負担感を解消して継続率を向上させることであり、測定器として測定結果の絶対的な精度を追求する代わりに、同一被験者による再現精度を確保した上で測定の簡便性を追求したからである。従って、前述のように、本発明の実施形態に係る息力測定方法は、統計データから算出した平均的な値である標準値に基づいて日常管理を行うものではなくて、追加治療薬を使用せず喘息症状が無い状態での2週間の最高測定値である自己標準値に基づいて日常管理を行うものである。
【0058】
また、特開2004−317191には空気流により発生する音に基づいて風量を測定する方法が記載されている。具体的には、笛、風車、吹流し等を使用して空気流を音響に変換し、その音響をマイクロフォンが収集する。そして、音量−風速テーブルに基づいて、音量から風速を求め、これと吹出口の断面積等から風量を演算する。
【0059】
これに対して、本発明では携帯端末に備えられたマイクロフォンに当たった時の呼気の音を直接収集しているので、空気流を音響に変換する手段を使用しない点、即ち、専用機器を要しない点で相違する。その理由も上記と同様である。
【0060】
本発明ではマイクロフォンを備えた携帯端末をそのまま用いているので、その携帯端末に標準的に備えられているアラーム機能を使用して、呼気の息力を忘れずに測定させるために、所定の時刻に音または振動によるアラームを発報するとともに、息力測定プログラムの起動と息力測定を求めるためのメッセージを表示することができる。
【0061】
図12(a)〜(e)は、アラーム設定のそれぞれのステップにおけるタッチパネルの表示状態を表わす平面図であり、図12(a)に示すステップでは、アラーム設定手段が、設定済みのアラームがないことを示す画面を表示する。この画面でエリア172にタッチすると図12(b)に示すステップに進む。図12(b)に示すステップでは、アラーム設定手段が、追加するアラームの繰り返しやラベルやアラーム発報時刻に関する設定内容を示す画面を表示する。この画面でエリア176にタッチすると図12(c)に示すステップに進む。図12(c)に示すステップでは、アラーム設定手段が、追加するアラームの繰り返し曜日を示す画面を表示する。この画面でエリア186のそれぞれにタッチしてチェックマークを入れた後に、エリア184にタッチして図12(b)に示すステップに進む。
【0062】
次に、この画面でエリア178にタッチすると図12(d)に示すステップに進む。図12(d)に示すステップでは、アラーム設定手段が、追加するアラームのラベルを示す画面を表示する。この画面でエリア188に所定のメッセージを入力した後に、エリア184にタッチして図12(b)に示すステップに進む。そして、この画面でエリア180と182を上下方向にドラッグしてアラーム発報時刻を設定した後に、エリア174にタッチすると、アラーム設定手段が、追加するアラームの繰り返しやラベルやアラーム発報時刻に関する設定内容をメモリ10bに記憶させた後に、図12(e)に示すステップに進む。図12(e)に示すステップでは、アラーム設定手段が、設定済みのアラームが4つあることを示す画面を表示する。
【0063】
以上、本発明の実施形態に係る息力測定方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0064】
10 携帯端末
12 CPU
14 メモリ
16 マイクロフォン
18 タッチパネル
20 ロード画面表示手段
30 設定画面表示手段
40 初期設定手段
40a 身長設定手段
40b 年齢設定手段
40c 性別設定手段
40d 標準値演算手段
40e 自己標準値設定手段
50 測定画面表示手段
60 息力測定手段
60a 呼気流量測定手段
60b ピーク値演算手段
70 測定結果表示手段
80 関連情報表示手段
80a アドレス表示手段
102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122 エリア
152、154、156 アイコン
172、174、176、178、180、182、184、186、188 エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロフォンを備えた携帯端末を用いて、呼気の息力を測定する息力測定方法であって、
設定画面表示手段が、前記呼気の息力を測定するために必要な複数の初期設定項目を表示するとともに、その中の1つに対して初期設定を開始するための入力を待つ設定画面表示ステップと、
初期設定手段が、前記入力に基づいて前記複数の初期設定項目の中の1つに対する初期設定値を記憶する初期設定ステップと、
前記設定画面表示ステップと前記初期設定ステップを繰り返すことによって、前記複数の初期設定項目のそれぞれに対する複数の初期設定値を全て記憶した後に、測定画面表示手段が、記憶された前記複数の初期設定値の少なくとも1つを表示するとともに、前記呼気の息力の測定を開始するための入力を待つ測定画面表示ステップと、
息力測定手段が、前記入力に基づいて前記呼気の息力を測定する息力測定ステップと、
測定結果表示手段が、測定された前記呼気の息力を表示するとともに、再測定を開始するための入力を待つ測定結果表示ステップと、を有することを特徴とする息力測定方法。
【請求項2】
前記複数の初期設定項目は、身長と年齢と性別を含み、
前記初期設定ステップは、身長設定手段が、被験者によって入力された前記被験者の身長を記憶する身長設定ステップと、年齢設定手段が、前記被験者によって入力された前記被験者の年齢を記憶する年齢設定ステップと、性別設定手段が、前記被験者によって入力された前記被験者の性別を記憶する性別設定ステップと、を含み、さらに、標準値演算手段が、前記身長と前記年齢と前記性別に基づいて前記呼気の息力の標準値を算出してその結果を記憶する標準値演算ステップを含む請求項1に記載の息力測定方法。
【請求項3】
前記複数の初期設定項目は、さらに、前記被験者の平常時の状態を示す自己標準値を含み、
前記初期設定ステップは、さらに、自己標準値設定手段が、事前に前記被験者の呼気流量を連続的に測定し、この連続的に測定された呼気流量のピーク値を算出し、この測定から算出までを2回繰り返して高い方のピーク値を自己標準値として記憶する自己標準値設定ステップを含む請求項2に記載の息力測定方法。
【請求項4】
前記息力測定ステップは、呼気流量測定手段が、測定開始から測定終了までの間連続的に呼気流量を測定する呼気流量測定ステップと、ピーク値演算手段が、連続的に測定された呼気流量のピーク値を算出するピーク値演算ステップを含む請求項1〜3のいずれかに記載の息力測定方法。
【請求項5】
測定画面表示ステップと測定結果表示ステップは、前記複数の初期設定値の少なくとも1つを変更するために、設定画面表示ステップに進む操作手段をそれぞれ有する請求項1〜4のいずれかに記載の息力測定方法。
【請求項6】
設定画面表示ステップと測定画面表示ステップと測定結果表示ステップは、関連情報表示ステップに進む操作手段をそれぞれ有し、
関連情報表示ステップでは、関連情報表示手段が、前記呼気の息力の測定に関連するリンク先のアドレスを表示する請求項1〜5のいずれかに記載の息力測定方法。
【請求項7】
測定結果表示ステップでは、さらに、測定された前記呼気の息力が前記自己標準値を基準とした所定の範囲内にない場合には、測定結果表示手段が、再測定を求めるためのメッセージを表示する請求項3に記載の息力測定方法。
【請求項8】
測定結果表示ステップでは、さらに、測定された前記呼気の息力が前記自己標準値を超える場合には、測定結果表示手段が、前記自己標準値の再設定を求めるためのメッセージを表示する請求項7に記載の息力測定方法。
【請求項9】
測定結果表示ステップでは、さらに、測定結果表示手段が、測定された前記呼気の息力の経時変化を示すグラフを表示する請求項7または8に記載の息力測定方法。
【請求項10】
さらに、前記呼気の息力を忘れずに測定させるために、報知手段が、所定の時刻に音または振動によるアラームを発報する報知ステップを有する請求項1〜9のいずれかに記載の息力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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