説明

患者の非接触呼吸モニタリング

本発明は、患者の呼吸の検出のための方法に関し、当該方法は、患者に向けて電磁信号を放射するステップ、2チャネルドップラーレーダーセンサを用いて患者から反射される反射電磁信号を受信するステップ、反射電磁信号を変換して、第1信号を得るステップ、反射電磁信号を位相シフトし、位相シフトされた反射電磁信号を変換して、第2信号得るステップ、共通の第1時点の第1信号及び第2信号の時間微分によって定められる第1ベクトルを決定するステップ、共通の第2時点の第1信号及び第2信号の時間微分によって定められる第2ベクトルを決定するステップ、並びに、患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化のインジケータ値として、正規化された第1ベクトル及び正規化された第2ベクトルのスカラー積を計算するステップを有する。患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化は、好ましくは、前記インジケータ値が閾値を下回った場合、好ましくは0の値を下回った場合に示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の呼吸モニタリングの分野に関し、特に、ドップラーレーダー原理に基づく非接触の遠隔呼吸モニタリングのための吸息/呼息の信頼性が高いbreath-to-breath検出のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床環境において、呼吸活動(呼吸頻度)を監視することは非常に重要である。脈拍及び呼吸は、患者の健康状態を評価するために、最も重要な基本的なバイタルサインの1つである。集中治療室(ICU)環境において、脈拍及び呼吸は、それぞれ、心電図からのECG電極及び呼吸活動の間に測定される胸部インピーダンス変化を介して、日常的に測定される。
【0003】
ドップラーレーダーセンサは、呼吸及び心臓活動の非接触の測定のための将来性がある技術と考えられている。広範囲の研究活動が、60GHzを上回る周波数におけるレーダーシステムに重点をおいている。今日、主に25GHz以下の周波数範囲における自宅での活動検出のために、低出力かつ低コストのドップラーレーダーセンサが市販されている。これらのセンサは、遠隔バイタルサインモニタリングのための興味深い低コストのソリューションであるかもしれないが、最新技術の信号処理アプローチがこれらのセンサのためにほとんど適用可能でないので、それらはインテリジェント信号解析のための開発においてより多くの努力を必要とする。主な理由は、呼吸及び拍動する心臓によって引き起こされる胸部の動き幅と比較して、波長が大きい(約10...120 mm)ことである。
【0004】
ドップラーレーダーセンサでは、一般に、送信機/受信機ユニットは、目標に向けて連続的に電磁波を放射する。電磁波は、目標の場所で反射されて、送信機/受信機へと戻ってくる。受信信号を評価するために、2つのミキサー/受信機が用いられる。第1ミキサーは、アンテナにおいて直接受信された信号をダウンコンバートする。第2ミキサーは、アンテナ信号を、それが90°位相シフトされた後にダウンコンバートする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーダーセンサは、直接的な皮膚接触が必要とされないという利点を持つ。方向の変化と同様に運動の速度及び方向が被測定信号において符号化されるが、特に25GHz以下の動作周波数に対して、最高水準の検出スキームは、ほとんど適用可能でない。したがって、これらの信号の正確かつ信頼性が高い解読は難しい。しかしながら、臨床環境における呼吸活動の信頼性が高い快適な検出は、今日、達成されていない要求である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
信頼性が高く取扱いが容易なドップラーレーダー原理に基づいた患者の非接触の遠隔呼吸モニタリングのための方法及び装置を提供することが本発明の目的である。
【0007】
この目的は、患者の呼吸の検出のための方法によって達成され、当該方法は、
患者に向けて電磁信号を放射するステップ、
2チャネルドップラーレーダーセンサを用いて患者から反射される反射電磁信号を受信するステップ、
反射電磁信号を変換して、第1信号を得るステップ、
反射電磁信号を位相シフトし、位相シフトされた反射電磁信号を変換して、第2信号を得るステップ、
共通の第1時点の第1信号及び第2信号の時間微分によって定められる第1ベクトルを決定するステップ、
共通の第2時点の第1信号及び第2信号の時間微分によって定められる第2ベクトルを決定するステップ、並びに
患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化のインジケータ値として、正規化された第1ベクトル及び正規化された第2ベクトルのスカラー積を計算するステップ、
を有する。
【0008】
したがって、患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化の検出を可能にする基準を提供することが本発明の重要なアイデアである。この基準は、正規化された第1ベクトル及び正規化された第2ベクトルのスカラー積に基づき、それらは、それぞれ、共通の第1時点又は第2時点の第1信号及び第2信号の時間微分によって決定される。このようにして、呼息及び吸息運動のbreath-to-breath情報を提供するために30GHz以下の周波数で好ましくは動作するドップラーレーダーセンサによって分析された胸部運動の方向変化を検出することを可能にするインジケータ値が提供される。
【0009】
本発明はいくつかの利点を提供する。2チャネルレーダーを用いた呼吸の間の胸部運動の方向変化の信頼性が高い測定が実行されることができ、吸息/呼息のbreath-to-breath検出を可能にする。さらに、吸息運動及び呼息運動の個別の評価が実行されることができる。このようにして、遠隔呼吸モニタリングの誤警報率は顕著に低減されることができる。さらに、ドップラーレーダー原理に基づく遠隔呼吸モニタリングのための呼吸速度検出の向上した精度が達成される。
【0010】
さらに、低い処理パワーの方法が提案されるので、本方法は、低コストで簡潔な態様において達成されることができる。運動方向を特徴づけるための明確な基準が提供されるので、不明確なドップラー信号モルフォロジの解読は不要であり、ハードウェアで定義されるパラメータは必要ない。
【0011】
第1ベクトル及び第2ベクトルをそれぞれ構築するための第1時点及び第2時点を決定するために、本発明の好ましい実施の形態によれば、第1信号及び第2信号において同時に満たされる特定の基準によって定義される特徴的な時点が決定される。好ましくは、この特定の基準は、それぞれ、第1信号又は第2信号の時間微分の検出された零交差点である。さらに、本発明の好ましい実施の形態によれば、第1ベクトルは、それぞれ第1の検出された零交差点と第2の検出された零交差点との間の期間中の2つの信号の時間微分をとることによって構築される。第2ベクトルは、それぞれ、第2零交差点と検出された零交差点との間の期間中の2つの信号の時間微分をとることによって構築される。両方の場合において、第1信号の時間微分は第1ベクトル座標としてとられ、そして、第2信号の時間微分は第2ベクトル座標としてとられる。
【0012】
一般に、インジケータ値は、患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化を検出するために異なる態様で用いられることができる。しかしながら、本発明の好ましい実施の形態によれば、インジケータ値は、事前に決められた閾値と比較される。好ましくは、0の閾値が用いられる。
【0013】
このようにして、本発明による基準が2つの異なる時点の被測定信号の時間微分から定められる2つのベクトルのスカラー積に基づいて計算されるので、吸息から呼息への変化又はその逆の変化は、確実に検出されることができる。正規化されたベクトルのスカラー積が1より小さい場合、運動方向が変化して、呼息/吸息の異なる胸部運動を表す。理想的な場合において、ベクトルは互いに反対向きであり、これは、ベクトル間の角度が180°であり、したがってスカラー積が-1であることを意味する。実際的な応用では、呼吸運動が純粋に対称的でないことが起こるだろう。これらの場合において、ベクトルは互いに正確に反対方向を向かず、180°未満の角度を示す。したがって、0の閾値と同じである90°の最小値が好ましい。さらに、患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化が、インジケータ値が閾値を下回る場合に示されることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の好ましい実施の形態によれば、第1ベクトル、第2ベクトル、並びに、患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化のインジケータ値としての正規化された第1ベクトル及び正規化された第2ベクトルのスカラー積は、好ましくは事前に決められた時間間隔で、連続して決定される。
【0015】
このようにして、被測定信号は、胸部運動の方向変化のために、準連続的にスキャンされることができる。
【0016】
さらに、本発明の好ましい実施の形態によれば、2つの異なる時点T1及びT2の渦巻き運動

は、それぞれ、

によって計算され、ここで、

は第1ベクトル、

は第2ベクトル、そして

は、それぞれ、時点T1及びT2において第1信号及び第2信号の時間微分から構築されるベクトルである。この渦巻き運動は、対象(すなわち胸部)の速度の符号及びセンサ-対象間の距離に依存する。この追加の特徴は、以下でさらに詳しく述べられるように、検出の信頼性を改善するために好ましくは用いられる。
【0017】
2チャネルドップラーレーダーセンサが用いられるので、反射された電磁信号は、変換される前に、好ましくは90°位相シフトされる。さらに、本発明の好ましい実施の形態によれば、検出された運動変化に基づいて、患者の呼吸速度が示される。
【0018】
上述の目的は、患者の非接触の呼吸モニタリングのための装置によってさらに満たされ、当該装置は、患者から反射された反射電磁信号を受信するための2チャネルドップラーレーダーセンサを有し、この2チャネルドップラーレーダーセンサは、反射電磁信号を変換して、第1信号を得て、反射電磁信号を位相シフトし、位相シフトされた反射電磁信号を変換して、第2信号を得るように適応され、当該装置には、計算ユニットが設けられ、この計算ユニットは、共通の第1時点の第1信号及び第2信号の時間微分によって定められる第1ベクトルを決定し、共通の第2時点の第1信号及び第2信号の時間微分によって定められる第2ベクトルを決定し、患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化のインジケータ値として、正規化された第1ベクトル及び正規化された第2ベクトルのスカラー積を計算するように適応される。
【0019】
本発明による装置の好ましい実施の形態は、一般に、上述の本発明による方法の好ましい実施の形態に関連する。
【0020】
特に、本発明の好ましい実施の形態によれば、計算ユニットは、インジケータ値を事前に決められた閾値と比較し、インジケータ値が閾値を下回る場合に、患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化を示すように適応される。さらに、患者の呼息から吸息への又はその逆の示された変化に基づいて呼吸速度を表示するためのディスプレイが設けられることが好ましい。
【0021】
本説明において、測定された及び/又は計算されたデータの平均算出は詳述されないが、そのような平均算出は、データ処理の任意の段階において実行されることができ、本発明に完全に包含されることが理解されることが強調されるべきである。
【0022】
本発明の好ましいアプリケーションは、臨床及び自宅環境におけるスポットチェック非接触呼吸努力モニタリング、臨床及び自宅環境における連続的な非接触の呼吸速度モニタリング、ストレスリラクセーション、並びに、コンピュータ断層撮影(CT)における呼吸ゲートである。
【0023】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載される実施の形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】周期的な呼吸の間に測定される2つのドップラーレーダーセンサの生信号及び参照としてrespiバンドによって測定される呼吸の間の呼吸努力を示す図。
【図2】考慮中の動きの間の方向変化の検出のためのフローチャート。
【図3】予想されるドップラーレーダー信号、両方のセンサチャネルの時間微分及び計算されたベクトルの第1シミュレーションを示す図。
【図4】予想されるドップラーレーダー信号、両方のセンサチャネルの時間微分及び計算されたベクトルの第2シミュレーションを示す図。
【図5】本発明の好ましい実施の形態の基準よる零交差点の検出を示す図。
【図6】区域1及び2の図2からの信号の微分のx-yプロットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
2チャネルドップラーレーダーセンサに由来する2つのセンサ信号は、以下の式によってモデル化されることができる。

【0026】
余弦係数は、反射された電磁波の局所的な振幅を表す。個別のチャネルの異なる感度のために、信号振幅a及びbは異なる。変化するセンサ/対象距離Dk(t)の影響は、指数係数γによってモデル化される。位相差2Φ1は、使用される特定のドップラーセンサによって決定される。時間的に変化する位相Θk(t)

は、ドップラーシフトに関連する速度成分vk(t)で運動するN個の反射体からの信号の和としてのドップラー効果及びt=0でのセンサ/反射体距離Ξkに関連する。以下において、1つの動く反射体が分析され、これは、関数D(t)及びΘ(t)が単純化されることを意味する。
センサ/反射体距離D(t)及び位相Θ(t)は、

によって線形に関連している。
【0027】
等速度vで移動している1つの反射体では、式(3)は周知のドップラーレーダー式である。
【0028】
図1は、周期的な呼吸の間に2チャネルドップラーセンサによって測定される生信号を上及び中央図に示す。センサは胸郭の運動を検出した。参照として、誘導性呼吸曲線記録に基づくセンサ(respiバンドセンサ)が用いられ、それは、呼吸努力及び速度を測定するための確立されている方法である。参照信号は下図に示される。
【0029】
上及び中央図で分かるように、レーダ信号モルフォロジは非常に複雑であり、下図の参照信号との直接的な相関はない。呼吸努力センサの周期性は、呼吸サイクル間の運動方向と同様にドップラーセンサから容易に導き出すことができない。この情報は、周波数ドメインにおいて最高水準のスキームによって抽出されることができない。
【0030】
以下に記載される本発明の好ましい実施の形態によって、運動の方向に関する情報は、特に電磁波の波長λと比較して小さい運動に対して、2チャネルドップラーレーダーセンサから抽出されることができる。連続する検出された動き位相の間の方向変化の評価を可能にする明確な基準が提供される。
【0031】
図2は、呼吸速度の測定の精度を改善するための本発明の好ましい実施の形態に従う基準によるフローチャートを示し、これは、零交差検出スキームによる複数の呼吸サイクルを包含する事前に決められた時間ウィンドウの分析を想定する。このフローチャートによる方向変化のための方法は、以下の通りである。
ステップ1: 事前に決められた時間ウィンドウ(例えば1分)の間の時間微分の零交差点の時点Tiの検出。
ステップ2: 連続して検出された零交差点の時間差の計算: DTk=Ti+1-Ti
ステップ3: 連続して検出された零交差点の方向変化の基準の確認。
ステップ4: 基準を満たしていないDTkを除去する。
ステップ5: TDkからインターバルRRkの間の呼吸速度を計算する。
ステップ6: 生理学的制約に基づいて異常値RRkを除去する。
ステップ7: 時間ウィンドウの間の平均を計算し、結果を示す。
【0032】
以下において、本発明の好ましい実施の形態による、3つの検出された零交差点の間の2つの時間区域間の運動の方向変化の検出のための基準が説明される。3つの検出された零交差点は、測定された生信号x1及びx2を2つの区域1及び2に分割する。基準は、これらの2つの区域1及び2の間の測定された信号x1及びx2の時間微分から定められる2つのベクトルのスカラー積に基づいて計算される。正規化されたベクトルのスカラー積が負である場合、運動方向は変化しており、呼息/吸息の異なる胸部運動を表す。

【0033】
式1, 2及び3に基づいて、信号x1及びx2の時間微分は、

によって与えられる。
【0034】
2つのベクトルは、

によって、3つの検出された零交差点間の2つの区域の間に定義される。
【0035】
第1ベクトルr1は、第1及び第2の検出された零交差点間の期間において2つの信号x1及びx2の時間微分をとることによって構築される。第2ベクトルr2は、第2及び第3の検出された零交差点間の期間において2つの信号x1及びx2の時間微分をとることによって構築される。両方の場合において、信号x1の時間微分は、第1ベクトル座標としてとられて、信号x2の時間微分は、第2ベクトル座標としてとられる。
【0036】

であることを示すために、ベクトルr1及びr2は、周期的な運動の式1及び2から明確に計算されなければならない。
【0037】

に基づく。
【0038】
同じ計算が、第2期間[T1-Tend]に対して実行される。ベクトル成分が、

によって与えられることが示される。
【0039】
ここで、対称的な運動に対して、

であることは明らかである。
【0040】
これは、ベクトルが互いに反対向きであり、スカラー積が-1であり、ベクトル間の角度が180°であることを意味する。実際的な応用では、呼吸運動が純粋に対称的でないことが起こるだろう。これらの場合において、ベクトルは互いに正確に反対方向を向かず、180°未満の角度を示す。好ましい基準によれば、90°の最小値が提案される。
【0041】
これらの新たな軸性ベクトルに基づいて、これらの2つのポイント周辺の軸性ベクトルr1, r2の渦巻き運動は、基準の変化を含めて、区域ごとに別々に、

と定義される。ここで、M1及びM2ベクトルは、運動の開始の近くにとられなければならない時点T1及びT2における2つの区域のx1及びx2の微分から構築される。これらの指標は、各々の運動の回転方向の測度を与える。
【0042】
渦巻き運動ベクトルは、速度の符号及びセンサ-対象間距離によって決まる。この追加の特徴は、検出の信頼性を改善する。
【0043】
以下において、対称的な胸部運動をモニタリングする24GHzドップラーレーダーの数値シミュレーションが説明される。図3及び4は、式1, 2及び3に基づくシミュレーションの結果を示す。この場合には、90°の位相差がセンサチャネル間に仮定された。胸部速度は、2sのサイクル周期及び3mm/sの振幅を有する余弦関数によってモデル化された。提案された手順によるr1, r2ベクトルが期間[0.5 1.5]及び[1.5 2.5]に対して計算され、そして渦巻き運動が計算された。渦巻き運動の値が図に示され、そして、より良好な解読のために、2つの区域のx-y-プロットの中で、ベクトルr1, r2の両方の周辺の「渦巻き運動」を視覚化するために、[0.5 1.4]及び[1.5 2.4]からのみ軌跡が示される。ベクトルr1及びr2は互いに反対向きであり、同様に、基準によって提案されるように、渦巻き運動の符号は異なる。
【0044】
以下において、休止位相の検出(図2のフローチャートにおけるステップ3)のための測定例が説明される。図5は、現実の測定からの休止位相の検出を示す。参照として、胸部外周の変化を検出するために高感度である誘導性脈波検査に基づくセンサが用いられた(下図)。下図の垂直ラインは、この方法による外周の胸部変化の検出された休止ポイントを示す。8sから10sのシーケンスの間のみ呼吸サイクルが検出されず、これは、呼吸運動に重ね合わされる胸部運動によって生じた場合がある。休止位相を検出するためのアプローチの更なる詳細は、"J. Muehlsteff, J.A.J. Thijs, R. Pinter, The use of a two-channel Doppler Radar Sensor for the detection of heart motion phases, 2006, IEEE EMBC 2006, Conference Proceedings"において見つけることができ、この文献は参照として本明細書に組み込まれる。
【0045】
図3の区域1〜2の間の動き方向を検出するためのアプローチは以下の通りである。
【0046】
図6において、動き方向のためのコンセプトが、図5のデータの区域1及び2に対して示される。左図において、生信号の時間微分のx-yプロットが示され、このプロットから、提案された方法に従ってベクトルが計算された。図6の右図で分かるように、ベクトル間の角度は、90°より大きくて、2つの連続する区域が異なる動き方向を示し、したがって、呼息及び吸息活動を表すことを示す。
【0047】
本発明が、図面及び上述の説明において詳細に図示されて説明されたが、そのような図示及び説明は、解説又は例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。
【0048】
開示された実施の形態の他のバリエーションは、図面、詳細な説明及び添付の請求の範囲の検討から、請求された発明を実施する際に当業者によって理解され遂行されることができる。請求の範囲において、「有する」「含む」などの用語は他の要素又はステップを除外せず、単数表現は複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項中に挙げられていることは、利益を得るためにそれらの手段の組み合わせを用いることができないことを意味しない。請求項中の任意の参照符号は、範囲を制限するものとして解釈されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の呼吸の検出のための方法であって、当該方法は、
前記患者に向けて電磁信号を放射するステップ、
前記患者から反射される反射電磁信号を受信するステップ、
前記反射電磁信号を変換して、第1信号を得るステップ、
前記反射電磁信号を位相シフトし、位相シフトされた反射電磁信号を変換して、第2信号を得るステップ、
共通の第1時点の前記第1信号及び前記第2信号の時間微分によって定められる第1ベクトルを決定するステップ、
共通の第2時点の前記第1信号及び前記第2信号の時間微分によって定められる第2ベクトルを決定するステップ、並びに
前記患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化のインジケータ値として、正規化された第1ベクトル及び正規化された第2ベクトルのスカラー積を計算するステップ、
を有する方法。
【請求項2】
前記第1ベクトル及び前記第2ベクトルをそれぞれ構築するための前記第1時点及び前記第2時点を決定するために、前記第1信号及び前記第2信号において同時に満たされる特定の基準によって定められる特徴的な時点が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特定の基準が、それぞれ前記第1信号又は前記第2信号の時間微分の検出された零交差点である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インジケータ値が、事前に決められた閾値と比較される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記事前に決められた閾値が0である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記インジケータ値が前記閾値を下回る場合に前記患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化が示される、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1ベクトル、前記第2ベクトル、及び、前記患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化のインジケータ値としての前記正規化された第1ベクトルと前記正規化された第2ベクトルとのスカラー積が、好ましくは事前に決められた期間において、連続的に決定される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
2つの異なる時点T1及びT2の渦巻き運動

が、それぞれ、

によって計算され、ここで、

は前記第1ベクトル、

は前記第2ベクトル、

は、それぞれ、時点T1及びT2における前記第1信号及び前記第2信号の時間微分から構築されるベクトルである、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
呼吸速度が示される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
患者の非接触の呼吸モニタリングのための装置であって、当該装置は、
前記患者から反射された反射電磁信号を受信するための2チャネルドップラーレーダーセンサを有し、
当該2チャネルドップラーレーダーセンサは、前記反射電磁信号を変換して、第1信号を得て、前記反射電磁信号を位相シフトし、位相シフトされた反射電磁信号を変換して、第2信号を得て、
当該装置には計算ユニットが設けられ、当該計算ユニットは、
共通の第1時点の前記第1信号及び前記第2信号の時間微分によって定められる第1ベクトルを決定し、共通の第2時点の前記第1信号及び前記第2信号の時間微分によって定められる第2ベクトルを決定し、前記患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化のインジケータ値として、正規化された第1ベクトル及び正規化された第2ベクトルのスカラー積を計算する、装置。
【請求項11】
前記計算ユニットが、前記インジケータ値を事前に決められた閾値と比較し、前記インジケータ値が前記閾値を下回る場合に、前記患者の呼息から吸息への変化又はその逆の変化を示す、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記患者の呼息から吸息への又はその逆の示された変化に基づいて呼吸速度を表示するためのディスプレイが設けられる、請求項10又は請求項11に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−519656(P2011−519656A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508027(P2011−508027)
【出願日】平成21年5月4日(2009.5.4)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051800
【国際公開番号】WO2009/136337
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】